説明

フロピリジニル置換1,4−ジヒドロピリジン誘導体およびその使用方法

本発明は、プロテインチロシンキナーゼ阻害活性を有する新規4−(フロ[3,2−c]ピリジン−2−イル)−1,4−ジヒドロピリジン誘導体に、その製造方法に、及びc−Met媒介性の疾病もしくはc−Met媒介性の状態、特に癌および他の増殖性疾患の処置用のその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインチロシンキナーゼ阻害活性を有する、新規4−(フロ[3,2−c]ピリジン−2−イル)−1,4−ジヒドロピリジン誘導体に、その製造方法に、及びc−Met媒介性の疾病もしくはc−Met媒介性の状態、特に癌および他の増殖性疾患の処置のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、最も一般的な広範囲にわたる疾病のうちの1つである。2002年には世界中で440万人以上の人々が、乳癌、大腸癌、卵巣癌、肺癌または前立腺癌と診断され、250万人以上の人々がこれらの破壊的な病気により死亡した(Globocan 2002 Report, http://www-dep.iarc.fr/globocan/down loads.htm)。合衆国だけでも、2005年には125万以上の癌による新たなケースおよび500 000の死が予測された。この新たなケースの大多数は、大腸癌(〜100 000)、肺癌(〜170 000)、乳癌(〜210 000)および前立腺癌(〜230 000)であると見積もられた。癌の発生率と罹患率の両方が、平均1.4%の増加率を反映し、次の10年で約15%増加すると予測されている(American Cancer Society, Cancer Facts and Figures 2005; http://www.cancer.org/docroot/STT/content/STT_1x_Cancer_Facts_Figures_2007.asp)。
【0003】
癌が生じ得る様式には多くの様式が存在し、このことが、癌治療が困難であることの理由の1つである。1つの様式に、腫瘍性タンパク質による細胞の形質転換があり、それは、正常な細胞性タンパク質から遺伝子突然変異により生じ、結果的に、これらタンパク質の非生理的な活性化をもたらす。多くの腫瘍性タンパク質が生じるタンパク質ファミリーの1つは、チロシンキナーゼ(例えば、srcキナーゼ)であり、とりわけ受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。過去20年で、多数の研究成果により、受容体チロシンキナーゼ(RTK)が媒介するシグナル伝達が哺乳動物細胞増殖の調節に重要であることを実証した。近年では、抗腫瘍化物質(anti-tumourigenic agent)としてのチロシンキナーゼ小分子阻害剤を用いた臨床で、結果が得られた。
【0004】
c−Met受容体もまた受容体チロシンキナーゼである。その発癌能は、そのN末端で二量化ドメインと融合したMet遺伝子のキナーゼドメインを含む変異型Metが、化学的に誘導されたヒト骨肉種細胞系から単離された1980年代初頭に同定された[C.S. Cooper et al., Nature 311: 29-33 (1984)]。
【0005】
細胞性Metタンパク質は、一本鎖の190kdの前駆体として合成されるヘテロ二量体の膜貫通タンパク質である[G.A. Rodrigues et al., Mol. Cell Biol. 11: 2962-70 (1991)]。この前駆体は、細胞内でアミノ酸残基307番目の後ろで切断され、50kdのα鎖と145kdのβ鎖を形成し、それが、ジスルフィド架橋により連結される。α鎖は完全に細胞外にあるが、β鎖は原形質膜に及んでいる。β鎖はN末端のsemaドメインから成り、α鎖と共にリガンド結合を媒介する。β鎖の外部ドメインの残部は、システインに富んだドメインと4個の免疫グロブリンドメインとから成り、膜貫通領域および細胞内ドメインが続く。細胞内ドメインは、膜近傍ドメイン、キナーゼドメイン、及び下流のシグナル伝達を媒介するC末端ドメインを含む。リガンドが結合すると、該受容体は二量体化し、キナーゼドメインは、その膜近傍領域(Y1003)、キナーゼの活性化ループ(Y1234およびY1235)及びカルボキシ末端ドメイン(Y1349およびY1356)のチロシン自己リン酸化工程のカスケードにより活性化される。リン酸化されたY1349およびY1356は、下流のc−Metシグナル伝達に必要なアダプタータンパク質を結合するためのマルチ・サブストレート・ドッキングサイト(multi-substrate docking site)を含む[C. Ponzetto et al., Cell 77: 261-71 (1994)]。c−Metシグナル伝達のための最も重要な基質の1つは、スキャホールディング・アダプタータンパク質Gab1であり、それは、独特の持続型細胞内シグナルを引き起こす通常とは異なるリン酸チロシン結合部位(mbsと称される:met結合部位)を介して、Y1349またはY1356のいずれかに結合する。別の重要な基質は、アダプタータンパク質Grb2である。これらのアダプターは、細胞状況に応じて、ERK/MAPK、PI3K/Akt、Ras、JNK、STAT、NFκBおよびβ−カテニンを介してシグナル伝達する経路のような様々な細胞内シグナル経路の活性化を媒介する。
【0006】
c−Metは、スキャッター因子としても知られている肝細胞増殖因子(HGF)、および唯一公知の生物学的に活性なリガンドであるそのスプライスバリアントにより独特に活性化される[L. Naldini et al., Oncogene 6: 501-4 (1991)]。HGFは、プラスミノーゲンファミリーのプロテイナーゼとの類似性を明らかにする明らかに異なる構造を有する。HGFはアミノ末端に続く、4個のクリングル・ドメインと、酵素的に不活性なセリンプロテアーゼ相同ドメインとから成る。c−Metと同じく、HGFは不活性な一本鎖前駆体(pro−HGF)として合成され、それはセリンプロテアーゼ(例えば、プラスミノーゲンアクチベーターおよび凝固因子)により細胞外で切断され、ジスルフィド連結型の活性α鎖およびβ鎖ヘテロ二量体に変換される。HGFはヘパラン硫酸プロテオグリカンと高アフィニティーで結合し、HGFを主として細胞外マトリックスと結びつけ、その拡散を制限する。結晶構造分析は、HGFが二量体を形成し、c−Metと結合する際に、その受容体の二量体化を誘導することを示す。
【0007】
HGFは間葉細胞により発現され、広域に、特に上皮細胞に発現されるc−Metへの結合により、上皮、内皮、ニューロン及び造血細胞を含む様々な組織で多面的な効果を生じる結果となる。その効果は、一般に以下の現象の1つ又は全てを含む:i)有糸分裂の刺激;HGFは肝細胞に対するその有糸分裂促進活性により同定された;ii)浸潤および遊走の刺激;独立した実験アプローチにより、HGFは細胞移動(「スキャッタリング」)の誘導に基づいてスキャッター因子といて同定された;そして、iii)形態形成(管形成)の刺激。HGFは、コラーゲンマトリックス中のイヌ腎臓細胞からの分枝管形成を誘導する。さらに、遺伝子改変マウスおよび細胞培養実験からの証拠により、c−Metが生存レセプターとして働くこと、および細胞をアポトーシスから保護することが示された[N. Tomita et al., Circulation 107: 1411-1417 (2003); S. Ding et al., Blood 101: 4816-4822 (2003); Q. Zeng et al., J. Biol. Chem. 277: 25203-25208 (2002); N. Horiguchi et al., Oncogene 21: 1791-1799 (2002); A. Bardelli et al., Embo J. 15: 6205-6212 (1996); P. Longati et al., Cell Death Differ. 3: 23-28 (1996); E.M. Rosen, Symp. Soc. Exp. Biol. 47: 227-234 (1993)]。これらのHGFによる生物学的プロセスの協調的作用は、結果として「浸潤性増殖」と称されるある特異的な遺伝子プログラムとなる。
【0008】
通常の状況下では、c−MetおよびHGFはマウスの胚発生に、特に腎臓および肝臓の発生に、そして四肢の体節由来の筋芽細胞の指向性の遊走に、必須である。c−MetまたはHGF遺伝子の遺伝子破壊は、結果的に、その独特の相互作用を示す同一の表現型となる。この成体におけるc−Met/HGFの生理学的役割は、十分には理解されていないが、実験的証拠は、それらが創傷治療、組織再生、造血および組織ホメオスタシスに関与することを示唆する。
【0009】
腫瘍性タンパク質TPR−METの同定は、c−Metが腫瘍形成(tumourigenesis)に役割を有し得るという最初のヒントであった。さらなる実質的な証拠は、多くの異なる実験アプローチから導かれる。c−MetまたはHGFのヒトまたはネズミ細胞系における過剰発現が、ヌードマウスで発現される場合に、発癌性および転移性表現型(metastatic phenotype)を誘導する。トランスジェニックのc−MetまたはHGFの過剰発現は、マウスで腫瘍形成を誘導する。
【0010】
最も興味深いことに、c−Metのミスセンス突然変異または該受容体を活性化する突然変異が、弧発性および遺伝性乳頭状腎臓癌(hereditary papillary kidney carcinomas:HPRC)および肺癌、胃癌、肝臓癌、頭頚部癌、卵巣癌および脳腫瘍のような他の癌で同定された。意義深いことに、HRPCファミリーにおける特定のc−Met突然変異が疾患を分離し、c−Met活性化とヒトの癌との因果関係を形成する[L. Schmidt et al., Nat. Genet. 16: 68-73 (1997); B. Zbar et al., Adv. Cancer Res. 75: 163-201 (1998)]。最も強い形質転換活性を有する活性化変異は活性化ループ内(D1228N/HおよびY1230H/D/C)、および隣接するP+1ループ内(M1250T)に位置する。付加的なより弱い変異が、触媒ループ付近および該キナーゼドメインのAローブ内に見出された。さらに、肺の腫瘍において、幾つかの突然変異がc−Metの膜近傍ドメイン内で見出され、それらは該キナーゼを直接活性化するのではなく、該タンパク質をユビキチン化やその後の分解に対して耐性にすることで該タンパク質をむしろ安定化させる[M. Kong-Beltran et al., Cancer Res. 66: 283-9 (2006); T.E. Taher et al., J. Immunol. 169: 3793-800 (2002); P. Peschard et al., Mol. Cell 8: 995-1004 (2001)]。興味深いことに、c−Metの体細胞突然変異は、さまざなま癌で増大した攻撃的で広域の転移と関係する。生殖系および体細胞突然変異の頻度は低いが(5%以下)、別の主だった機構が観察され、それは突然変異が存在しない状況下で、パラクリン機構またはオートクリン機構によるc−Metシグナル伝達の脱制御をもたらす。パラクリン活性化は間葉細胞に由来する腫瘍、例えば生理的にHGFを産生する骨肉腫または横紋筋肉腫や、外胚葉起源のグリア芽腫および乳癌(mamma carcinoma)で観察された。
【0011】
しかしながら、ほとんどのケースは、結腸、膵臓、胃、胸部、前立腺、卵巣および肝臓の癌腫で観察されるようにc−Metが過剰発現する癌腫である。過剰発現は、例えば、胃および肺腫瘍細胞系で観察されるように遺伝的増幅により生じ得る。ごく最近では、c−Metの過剰発現が、EGF受容体阻害に対する耐性を獲得した肺腫瘍細胞系で検出された[J.A. Engelmann et al., Science 316: 1039-1043 (2007)]。c−Metを過剰発現する幾つかの上皮性腫瘍は、HGFを共発現し、結果的にオートクリンc−Met/HGF刺激性のループをもたらし、それにより間質細胞誘導性HGFの必要性を迂回する。
【0012】
一般に、ヒトの癌におけるc−Metの異常な活性化は、特定の機構に関係なく、予後不良を典型的に伴うことが見出された[J.G. Christensen et al., Cancer Lett. 225: 1-26 (2005)]。
【0013】
概括すれば、重要な癌標的としてc−Metを確認する非常に多くのインビトロおよびインビボ研究が行われ、全体的なリストはhttp://www.vai.org/metで概観することができる[C. Birchmeier et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4: 915-25 (2003)]。ヒト腫瘍での異常なc−Metシグナル伝達を弱めるために、幾つかの戦略が続けられ、とりわけ、HGFアンタゴニストや小分子阻害剤が挙げられる。多くの小分子阻害剤が現在臨床開発にあり、例えばARQ−197(Arqule)、foretinib(XL-880、Exelixis/GSK)およびPH−2341066(Pfizer)があり、それらは、最近概説された[J.J. Cui, Expert Opin. Ther. Patents 17: 1035-45 (2007)]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】C.S. Cooper et al., Nature 311: 29-33 (1984)
【非特許文献2】G.A. Rodrigues et al., Mol. Cell Biol. 11: 2962-70 (1991)
【非特許文献3】C. Ponzetto et al., Cell 77: 261-71 (1994)
【非特許文献4】L. Naldini et al., Oncogene 6: 501-4 (1991)
【非特許文献5】N. Tomita et al., Circulation 107: 1411-1417 (2003)
【非特許文献6】S. Ding et al., Blood 101: 4816-4822 (2003)
【非特許文献7】Q. Zeng et al., J. Biol. Chem. 277: 25203-25208 (2002)
【非特許文献8】N. Horiguchi et al., Oncogene 21: 1791-1799 (2002)
【非特許文献9】A. Bardelli et al., Embo J. 15: 6205-6212 (1996)
【非特許文献10】P. Longati et al., Cell Death Differ. 3: 23-28 (1996)
【非特許文献11】E.M. Rosen, Symp. Soc. Exp. Biol. 47: 227-234 (1993)
【非特許文献12】L. Schmidt et al., Nat. Genet. 16: 68-73 (1997)
【非特許文献13】B. Zbar et al., Adv. Cancer Res. 75: 163-201 (1998)
【非特許文献14】M. Kong-Beltran et al., Cancer Res. 66: 283-9 (2006)
【非特許文献15】T.E. Taher et al., J. Immunol. 169: 3793-800 (2002)
【非特許文献16】P. Peschard et al., Mol. Cell 8: 995-1004 (2001)
【非特許文献17】J.A. Engelmann et al., Science 316: 1039-1043 (2007)
【非特許文献18】J.G. Christensen et al., Cancer Lett. 225: 1-26 (2005)
【非特許文献19】C. Birchmeier et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4: 915-25 (2003)
【非特許文献20】J.J. Cui, Expert Opin. Ther. Patents 17: 1035-45 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明により解決される技術的課題は、c−Metキナーゼに対する強力な阻害活性を有する代替的な化合物を提供することであり、かくして、c−Met媒介性の疾患、特に癌および他の増殖性疾患の処置に対する新たな治療オプションを提示することであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
カルシウムアゴニストもしくはアンタゴニスト活性を有する心臓血管作用薬として有用な、4位に二環式ヘテロアリール基を有する1,4−ジヒドロピリジン誘導体は、EP 0 217 530-A1 およびEP 0 630 895-A1で分かる。心臓血管疾患の処置に役立つステロイド性受容体およびカルシウムチャネル活性の両方のモジュレーターとしての3−シアノ−4−(ヘテロ)アリール−1,4−ジヒドロピリジンは、WO 2006/066011-A2に記載されている。最近、c−Metキナーゼ阻害活性を有する幾つかの3−シアノ−4−ヘテロアリール−1,4−ジヒドロピリジンがWO 2008/071451-A1に開示された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1つの態様において、本発明は、一般式(I)の4−(フロ[3,2−c]ピリジン−2−イル)−1,4−ジヒドロピリジン誘導体に関する:
【化1】

(I)
[式中、
は、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルカルボニル、ベンジルおよびベンゾイルであり、ここで、前記ベンジルおよびベンゾイル基のフェニル部分はそれぞれ、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、エチル、メトキシ、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群より独立して選択される1個または2個の残基で置換されていてもよく、
は、シアノであり、
は、3個までのフッ素原子で置換されていてもよい(C−C)−アルキルであるか、または、
とRは連結し、それらが結合している炭素原子と一緒になって下記式
【化2】

(式中、
nは、1または2の整数であり、
Aは、−CH−、−O−または−NR−であり、ここで、
は、水素もしくは(C−C)−アルキルであり、
Eは、−O−、−NH−または−NCH−であり、および、
は、水素またはメチルである。)
の縮合環を形成してよく、
は、水素、(C−C)−アルキルまたはシクロプロピルであり、
は、3個までのフッ素原子により置換されていてもよい(C−C)−アルキルであるか、または、
フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、エチル、メトキシ、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群より独立して選択される1個または2個の残基でそれぞれ置換されていてもよいフェニルもしくはピリジルであるか、または、
とRは連結し、それらが結合している窒素原子および炭素原子と一緒になって式
【化3】

(式中、Gは、−CH−または−O−である。)
の縮合環を形成する。]。
【0018】
本発明の化合物は、その塩、水和物および/または溶媒和物で存在してもよい。
【0019】
本発明の目的に関して、は、好ましくは本発明に関する化合物の医薬上許容される塩である(例えば、S. M. Berge et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19を参照のこと)。
【0020】
医薬上許容される塩は、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸、例えば、塩酸, 臭化水素酸, 硫酸, リン酸, メタンスルホン酸, エタンスルホン酸, ベンゼンスルホン酸, トルエンスルホン酸, ナフタレンスルホン酸, 酢酸, プロピオン酸, 乳酸, 酒石酸, リンゴ酸, クエン酸, フマル酸, マレイン酸 および安息香酸の酸付加塩を含む。
【0021】
医薬上許容される塩はまた、通常の塩基の塩、例えば例示としてまた好ましくはアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩)、およびアンモニアまたは有機アミンから誘導されるアンモニウム塩、例えば例示としてまた好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、コリン、エチレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、ジヒドロアビエチルアミン、アルギニンおよびリジンを含む。
【0022】
本発明の化合物またはそれらの塩の水和物は、該化合物または該塩と水との化学量論組成物、例えば半水和物、一水和物または二水和物である。
【0023】
本発明の化合物またはそれらの塩の溶媒和物は、該化合物または該塩と溶媒との化学量論組成物である。
【0024】
本発明の化合物は、不斉中心または束縛回転のいずれかの性質によって、異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)の形態で存在してもよい。不斉中心が(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置であるいずれの異性体で存在してもよい。
【0025】
また、2つ以上の不斉中心が本発明の化合物に存在する場合、例示された構造の幾つかのジアステレオマーおよびエナンチオマーがしばしば存在し得ること、および、純粋なジアステレオマーおよび純粋なエナンチオマーが好ましい実施形態を表すことは理解されるであろう。
【0026】
分離されている、純粋、部分的に純粋である、又はジアステレオ異性であるかラセミ混合であるかに関わらず、本発明の化合物のすべての異性体が、本発明の範囲内に包含される。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当分野で公知の標準的な技術によって実施することができる。例えば、ジアステレオ異性体混合物はクロマトグラフ処理または結晶化によって個々の異性体に分離することができるし、またラセミ化合物はキラル相に対するクロマトグラフ処理または分割のいずれかにより分離することができる。
【0027】
加えて、上記化合物のすべての可能な互変異性型は本発明に含まれる。
【0028】
特に明記しない限り、以下の定義は本明細書および特許請求の範囲を通じて置換基および残基に適用される。
【0029】
(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルはそれぞれ、1〜6個、1〜5個および1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝飽和炭化水素基を表す。1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル基が好ましい。非限定的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル基、sec−ブチル、tert−ブチル、1−エチルプロピル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルおよびイソヘキシルを含む。これはアルキルカルボニル基その他の基にも同じく適用される。
【0030】
(C−C)−アルキルカルボニルは、カルボニル基[−C(=O)−]を介して分子の残部と結合する1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル基である。非限定的な例は、アセチル、n−プロピオニル、n−ブチリル、イソブチリル、n−ペンタノイル、ピバロイル、n−ヘキサノイルおよびn−ヘプタノイルを含む。
【0031】
本明細書に関し、簡潔のために、単数形の用語を複数形の用語に優先して用いるが、特に明記しない限り、一般に複数形を含むことを意味する。例えば、「患者の疾患を処置する方法であって、該患者に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む」との発現は、1以上の疾患の同時処置、および1以上の式(I)の化合物の投与を含むことを意味する。
【0032】
好ましい実施形態において、本発明は一般式(I)の化合物に関する:
式中、
は、水素、メチル、アセチルまたはベンゾイルであり、
は、シアノであり、
は、メチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルあるか、または、
とRは連結し、それらが結合する炭素原子と一緒になって式
【化4】

[式中、Rは、水素またはメチルである。]
の縮合環を形成するか、
は、水素またはメチルであり、
は、3個までのフッ素原子で置換されていてもよい(C−C)−アルキルであるか、または、フルオロ、クロロ、メチルおよびトリフルオロメチルからなる群より独立して選択される1個または2個の残基で置換されていてもよいフェニルであるか、または、
とRは連結し、それらが結合する窒素原子および炭素原子と一緒になって式
【化5】

の縮合モルホリン環を形成する。
【0033】
特に好ましい実施形態において、本発明は、一般式(I)の化合物に関する:
式中、
は、水素またはベンゾイルであり、
は、シアノであり、
は、メチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルであるか、または、
とRは連結し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式
【化6】

の縮合ラクトン環を形成するか、
は、水素であり、および、
は、メチル、ジフルオロメチルもしくはトリフルオロメチルであるか、またはフルオロもしくはクロロで置換されていてもよいフェニルである。
【0034】
残基それぞれの組合せ又は好ましい組合せで具体的に示される残基の定義は、要すれば、残基について示される特定の組合せにかかわりなく、他の組合せの残基の定義で置き換えられる。上記の好ましい範囲のうちで2つまたはそれ以上の組合せが特に好ましい。
【0035】
他の実施形態において、本発明は、一般式(I)の化合物を製造する方法に関し、
式中、Rは水素であり、かつRは水素、(C−C)−アルキルカルボニルまたは置換されていてもよいベンゾイルであり、
式(II)
【化7】

(II)
[式中、
1Aは、Rと同定義の(C−C)−アルキルカルボニルまたは置換されていてもよいベンゾイルである。]
で示されるフロピリジニルアルデヒトを、
[A]式(III)
【化8】

(III)
[式中、Rは上記と同意義である]
で示されるシアノケトンもしくはそのナトリウムエノラートと、酸、酸/塩基の組合せおよび/または脱水剤の存在下で反応させ、式(IV)
【化9】

(IV)
[式中、R1AおよびRは上記と同意義である]
で示される化合物を得て、次いで、後者を式(V)
【化10】

(V)
[式中、RおよびRは上記と同意義である。]
で示されるエナミンか、もしくは、式(VI)
【化11】

(VI)
[式中、RおよびRは上記と同意義である。]
で示されるケトンと、アンモニア供給源、例えば酢酸アンモニウムと組合せて縮合させ、式(I−A)
【化12】

(I−A)
[式中、R1A、R、RおよびRは上記と同意義である。]
で示される化合物を生成するか、あるいは、
[B]式(VI)
【化13】

(VI)
[式中、RおよびRは上記と同意義である。]
で示されるケトンと、所定の酸、塩基および/または脱水剤の存在下で反応させ、式(VII)
【化14】

(VII)
[式中、R1A、RおよびRは上記と同意義である。]
で示される化合物を得て、次いで、後者を式(VIII)
【化15】

(VIII)
[式中、Rは上記と同意義である。]
で示されるエナミノニトリルと、所定の酸の存在下で縮合させ、式(I−A)
【化16】

(I−A)
[式中、R1A、R、RおよびRは上記と同意義である。]
で示される化合物を、また生成し、
続いて、所望によりアシル基R1Aを加水分解し、式(I−B)
【化17】

(I−B)
[式中、R、RおよびRは上記と同意義である。]
で示されるアミン化合物を得て、ならびに、
続いて、所望により要すれば(i)化合物(I−A)および(I−B)を、好ましくはクロマトグラフ法を用いて分離し、それら各々のエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーを得ること、および/または、(ii)化合物(I−A)および(I−B)を、その対応する溶媒および/または酸もしくは塩基で処理し、それら各々の水和物、溶媒和物、塩および/または前記塩の水和物もしくは溶媒和物に変換することを特徴とする、方法に関する。
【0036】
プロセスの変法[A](II)+(III)→(IV)、(IV)+(V)/(VI)→(I−A)および[B](II)+(VI)→(VII)、(VII)+(VIII)→(I−A)は両方とも、上記の2つの別個の工程で、またはワンポット手法を用いることで、即ちそれぞれの中間化合物(IV)および(VII)の明確な単離を行うことなく、実施し得る。個々の反応体の反応性に応じて、幾つかの場合には、式(I−A)の化合物を製造するために、化合物(II)、(III)および(V)/(VI)[A]または(II)、(VI)および(VIII)[B]の1フラスコ/3化合物縮合反応を実施することも可能であり得る(1,4−ジヒドロピリジンの合成については、一般に、例えばD.M. Stout, A.I. Meyers, Chem. Rev. 1982, 82, 223-243; H. Meier et al., Liebigs Ann. Chem. 1977, 1888; H. Meier et al., ibid. 1977, 1895; H. Meier et al., ibid. 1976, 1762; F. Bossert et al., Angew. Chem. 1981, 93, 755を参照のこと)。
【0037】
反応(IV)+(VI)→(I−A)のための適切なアンモニア供給源は、例えば、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムまたは硫酸水素アンモニウムであり、好ましくは酢酸アンモニウムである。
【0038】
工程(II)+(III)→(IV)、(IV)+(V)/(VI)→(I−A)、(II)+(VI)→(VII)、及び(VII)+(VIII)→(I−A)のプロセスは、一般に、不活性溶媒中、大気圧下で+20℃から溶媒の沸点までの温度範囲で実施される。
【0039】
この目的に適した溶媒は、例えば、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールまたはn−ペンタノール、炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンまたはキシレン、ハロ炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンまたはクロロトルエン、エーテル類、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンまたは1,2−ジメトキシエタンまたは他の溶媒、例えばアセトニトリルまたは酢酸である。これらの溶媒の混合物を用いることも同様に可能である。反応(II)+(III)→(IV)、および(II)+(VI)→(VII)は、ジクロロメタン、トルエン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールまたはn−ペンタノール中で、大気圧下、各還流温度で好ましくは実施される:反応(IV)+(V)/(VI)→(I−A)および(VII)+(VIII)→(I−A)は、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、キシレン、酢酸またはそれらの混合物中で、また大気圧下、還流温度で好ましくは実施される。
【0040】
反応(II)+(III)→(IV)は、酸、酸/塩基の組合せおよび/または不活性脱水剤、例えばモレキュラーシーブの存在下で、有利に実施され得る。適切な酸触媒の例には、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエン−スルホン酸である。適切な塩基は、具体的にはピペリジンまたはピリジンである。成分の反応性に応じて、変換(II)+(VI)→(VII)は、さらなる補助試薬なしで実施することができ、または、慣用のアミン塩基、例えばピペリジンによって、酸、例えば酢酸によって、および/または脱水剤、例えばモレキュラーシーブによって促進することができる。同様に、反応(IV)+(V)/(VI)→(I−A)、および(VII)+(VIII)→(I−A)は、さらなる触媒なしで、又は付加的な酸の補助により実施することができ、後者の場合、酢酸が、酸性触媒と溶媒または共溶媒として好ましくは用いられる。
【0041】
1Aが所望により置換されたベンゾイル基である場合には、開裂反応(I−A)→(I−B)が、化合物(I−A)を高温度(例えば+50℃〜+120℃)で強酸に、例えば塩化水素または臭化水素に、氷酢酸溶液中で曝すことにより好ましくは実施される。R1Aが(C−C)−アルキルカルボニル基である場合には、加水分解は通常、塩基性条件下、プロトン性もしくは水相溶性溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンまたは1,2−ジメトキシエタン中で、0℃〜+60℃の温度範囲で、化合物(I−A)を水性アルカリ水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムで処置することによって実施される。
【0042】
別には、式(I−A)の化合物[式中、Rはシアノであり、かつRおよびRは共に所望により、互いに同じフルオロ置換(C−C)アルキル残基(すなわち、対称性の1,4−ジヒドロピリジンの下位構造を有する式(I−A)の化合物)を表す]は、式(II)
【化18】

(II)
[式中、R1Aは上記と同意義である]
のフロピリジニルアルデヒドを、酸存在下で、式(V−A)
【化19】

(V−A)
[式中、R3Aは、3個までのフッ素原子で所望により置換されている(C−C)アルキルを表す。]
のシアノ−エナミン同等物2個を用いて縮合することにより、式(I−A1)
【化20】

(I−A1)
[式中、R1AおよびR3Aは上記と同意義である。]
の化合物を得ることができる。
【0043】
縮合反応(II)+(VA)→(I−A1)は通常、アルコール類のようなプロトン性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールまたはn−ペンタノール、もしくは酢酸中で実施される。これら溶媒の混合物を用いることも同様に可能である。この変換に有益な酸触媒の例としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp−トルエン−スルホン酸がある。好ましくは、酢酸は、酸性触媒としてかつ溶媒または共溶媒として同時に用いられる。工程(II)+(V−A)→(I−A1)のプロセスは、一般に、大気圧下、+20℃〜+150℃、好ましくは+80℃〜+125℃の温度範囲で実施される。
【0044】
式(I−A2)
【化21】

(I−A2)
[式中、R1A、Rおよびnは、上記と同意義であり、および
は、−O−またはNR−を表し、ここで、Rは上記と同意義である。]
を有する本発明の化合物は、式(II)
【化22】

(II)
[式中、R1Aは上記と同意義である。]
のフロピリジニルアルデヒドと、式(VIII)
【化23】

(VIII)、
[式中、Rは上記と同意義である。]
のエナミノニトリル、および式(IX)
【化24】

(IX)
[式中nおよびAは上記と同意義であり、
は(C−C)−アルキルを表し、および
PGは、適切なヒドロキシ−もしくはアミノ−保護基、例えばアセチル、トリメチルシリル、テトラヒドロピラニル、tert−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルのそれぞれであってよい。]
のケトエステルとの3成分縮合反応によって、式(X)
【化25】

(X)
[式中、R1A、R、n、A、TおよびPGは上記と同意義である。]
の中間体化合物を得て、次いで、脱保護し、環化して標的化合物の式(I−A2)を得ることによっても製造することができる。
【0045】
縮合反応(II)+(VIII)+(IX)→(X)は、好ましくは、アルコール溶媒、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールまたはn−ペンタノール中で、所望により酢酸のような酸触媒と組合せて実施される。変換は、一般的には+20℃〜+150℃の温度範囲で、好ましくは+80℃〜+125℃の温度範囲で、大気圧下にて実施される。
【0046】
工程(X)→(I−A2)プロセスにおける保護基PGの除去は、当分野で周知の標準的な方法により一般的に行われる[例えば、T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Pro-tective Groups in Organic Synthesis, Wiley, New York, 1999を参照のこと]。ヒドロキシ保護基として、アセチルが好ましくは用いられる。この場合、脱保護および後のラクトン形成[(I−A2)中、A=O]はワンポット手順で、すなわち、脱保護された中間体を単離することなく、化合物(X)を強酸、例えば塩化水素、臭化水素またはトリフルオロ酢酸の水溶液を用い、高温(例えば+50℃〜+120℃まで)で処置することによって実施してもよい。
【0047】
窒素保護に関し、好ましくは、tert−ブトキシカルボニル(Boc)がPG基として用いられる。無水塩化水素またはトリフルオロ酢酸を用いた標準的な処置による脱保護および中間体アミン塩を通常の塩基に曝すことによるラクタム(lactame)(I−A2)[A=NR]への最終的な環化は、同じくワンポット手順を用いて実施されてもよいし、または2つの別個の工程で実施されてもよい。
【0048】
式(I−C)
【化26】

(I−C)
[式中、R1A、R、RおよびGは上記と同意義である。]
を有する本発明の化合物は、式(XI)
【化27】

(XI)
[式中、Gは上記と同意義である。]
の化合物を、式(VIII)のエナミノニトリルに換えて用いることにより上記の縮合反応に近似する方法で製造することができる[変換(VII)+(VIII)→(I−A)および(II)+(VIII)+(IV)→(X)→(I−A2)をそれぞれ参照のこと]。この反応の上記で特定されたパラメータ、例えば溶媒および酸触媒は、同様に用いることができる。
【0049】
次いで、化合物(I−C)は、所望により対応する式(I−D)
【化28】

(I−D)
[式中、R、RおよびGは上記と同意義である。]
の4−アミノフロピリジニル誘導体に、アシル基R1Aの加水分解除去により変換してもよい[変換(I−A)→(I−B)を参照のこと]。
【0050】
式(XI)の環外エナミンは、式(XII)のラクタムから出発し、
【化29】

(XII)
[式中、Gは上記と同意義である。]
最初に、式(XIII)
【化30】

(XIII)
[式中、Gは上記と同意義である。]
のそのラクタムエーテル誘導体を介して、式(XIV)
【化31】

(XIV)
[式中、Tは、(C−C)−アルキルまたはベンジルを表す。]
のシアノ酢酸塩と縮合させ、式(XV)
【化32】

(XV)
[式中、GおよびTは上記と同意義である。]
の化合物を得て、エステル開裂および脱カルボキシル反応により、式(XI)のシアノエナミンを得る[以下の反応スキーム5を参照のこと]。この中間体は、通常、原材料(crude material)溶液として、すなわちさらに単離および精製することなく後の反応に用いられる。
【0051】
式(I)の化合物(式中、Rは(C−C)−アルキルまたはシクロプロピルである)は、式(I−A)の化合物を式(XVI)
4A−Z (XVI)
[式中、R4Aは、(C−C)−アルキルまたはシクロプロピルであり、および
Zは、脱離基、例えばハロゲン、メシラート、トリフレート、トシル酸塩または硫酸塩である。]
の化合物と塩基の存在下で反応させ、式(I−E)
【化33】

(I−E)
[式中、R1A、R、R、R4AおよびRは上記と同意義である。]
の化合物を得て、次いで、それを所望により加水分解して、式(I−F)
【化34】

(I−F)
[式中、R、R、R4AおよびRは上記と同意義である。]
の4−アミノフロピリジニル誘導体を得ることにより、製造することができる[変換(I−A)→(I−B)を参照のこと。]。
【0052】
アルキル化反応(I−A)+(XVI)→(I−E)のための不活性溶媒は、例えば、エーテル類、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンまたは1,2−ジメトキシエタン、炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンまたはシクロヘキサン、ハロ−炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンまたはクロロトルエン、あるいは他の溶媒、例えばアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、Nメチル−ピロリジノン(NMP)またはピリジンがある。これらの溶媒の混合物を用いることも、可能である。好ましくは、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはそれらの混合物が用いられる。
【0053】
工程(I−A)+(XVI)→(I−E)のプロセスに適切な塩基は、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたは炭酸セシウム、アルカリ金属水素化物、例えば水素化ナトリウムまたは水素化カリウム、立体障害性の(sterically hindered)アルカリアルコキシド、例えばナトリウムもしくはカリウムtert−ブトキシド、立体障害性のアルカリアミド、例えばリチウム、ナトリウムもしくはカリウム・ビス(トリメチルシリル)アミド、またはリチウム・ジイソプロピルアミド、あるいは有機アミン、例えばトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンまたはピリジンがある。炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウムまたはトリエチルアミンが好ましくは用いられる。
【0054】
反応(I−A)+(XVI)→(I−E)は、一般に、大気圧下で、−20℃〜+100℃の温度範囲で、好ましくは0℃〜+50℃で行われる。
【0055】
式(I)の化合物(式中、Rは(C−C)−アルキルまたは所望により置換されているベンジルである)は、式(I−B)、(I−D)または(I−F)の化合物を、それぞれ式(XVII)
【化35】

(XVII)
[式中、 R1Bは、水素、(C−C)−アルルまたはRについて上記定義の所望により置換されているフェニルである。]
のアルデヒドと、適切な還元剤、例えばホウ素水素ナトリウムの存在下で反応させ、式(I−G)
【化36】

(I−G)
[式中、R1B、R、R、RおよびRは上記と同意義である。]
の化合物を得ることにより製造することができる。
【0056】
この変換は通常、プロトン性溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはそれらの混合物中で、0℃〜+50℃の温度範囲の気圧下で行われる。この種類のN−アルキル化反応で一般に用いられる還元剤は、所望により酸触媒、例えば酢酸と組合せて、アルカリ・ボロハイドライド誘導体、例えばナトリウム・ボロハイドライド、カリウム・ボロハイドライド、ナトリウム・シアノホウ水素化ナトリウムまたはナトリウム三アセトキシ−ボロハイドライドである。
【0057】
式(II)、(III)、(V)、(V−A)、(VI)、(VIII)、(IX)、(XII)、(XIV)、(XVI)および(XVII)の化合物は、いずれも商業的に入手可能であるか、文献公知であるか、または、文献に記載の標準的な方法の適用により容易に入手可能な出発物質から製造することができる(さらに参照のため、下記の実験のセクションを参照のこと)。
【0058】
本発明の化合物の製造は、以下の合成スキーム1〜5によって例示し得る。より詳細な手順は、以下に、実施例を記載する実験のセクションで示す。
【0059】
スキーム1
【化37】

【0060】
スキーム2
【化38】

【0061】
スキーム3
【化39】

【0062】
スキーム4
【化40】

【0063】
スキーム5
【化41】

【0064】
使用の方法
本発明の化合物は、受容体チロシンキナーゼ、特にc−Met受容体チロシンキナーゼの活性または発現を阻害するために用い得る。従って、式(I)の化合物は、治療剤として有用であろう。したがって、別の実施形態では、本発明は、その必要のある患者におけるc−Metキナーゼ活性に関連する疾患またはc−Metキナーゼ活性により媒介される疾患を処置する方法であって、有効量の上記の式(I)の化合物を該患者に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態において、c−Metキナーゼ活性に関連する疾患は、細胞増殖性疾患、特に癌である。
【0065】
本明細書全体を通じて用いる用語「処置する」または「処置」は慣用的に用いられ、例えば、疾病または疾患の状態、例えば癌腫の状態に対抗する、状態を改善、軽減、緩和、改善することを目的とした被検体の管理または看護である。
【0066】
用語「被検体」または「患者」は、細胞増殖性疾患に罹患し得るまたは本発明の化合物の投与による利益を得ることができるであろう生物、例えばヒトおよび非ヒト動物を含む。好ましくは、ヒトには、本明細書に記載の細胞増殖性疾患または関連状態に罹患している又は罹患する傾向のあるヒトが含まれる。用語「非ヒト動物」は、脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばヒト以外の霊長類、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコおよび齧歯動物、例えばマウス、ならびに非哺乳動物、例えばニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0067】
用語「c−Metに関連する疾患またはc−Metキナーゼ活性により媒介される疾患」は、c−Met活性、例えばc−Metの機能亢進に付随する又は関係する疾患、又はこれらの疾病に付随する状態を含む。「c−Metに関連する疾患またはc−Metにより媒介される疾患」の例には、異常に高い量のc−Metまたはc−Metにおける突然変異によるc−Metの過剰刺激の結果生じる疾患、または異常に高い量のc−Metまたはc−Metにおける突然変異による異常に高い程度のc−Met活性の結果生じる障害を含む。
【0068】
用語「c−Metの機能亢進」は、c−Metを通常、発現しない細胞でのc−Metの発現または通常、活性なc−Metを有さない細胞によるc−Met活性を意味するか、又は望ましくない細胞増殖を導く増大したc−Met発現またはc−Metの恒常的な活性化を導く突然変異を意味する。
【0069】
用語「細胞増殖性疾患」は、細胞の望ましくない増殖または制御されていない増殖が関与する疾患を含む。本発明の化合物は、細胞増殖および/または細胞分裂を予防する、阻害する、ブロックする、低下させる、減少させる、制御するためなどに、および/またはアポトーシスを生じさせるために利用し得る。本方法は、その必要のある被検体、例えば哺乳動物、例えばヒトに、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、異性体、多形体、代謝物質、水和物もしくは溶媒和物を、疾患を処置するか又は予防するのに効果な量で投与することを含む。
【0070】
本発明の内容において細胞増殖性疾患または高増殖性疾患(hyper-proliferative disorder)は、限定するものではないが、例えば、乾癬、ケロイドおよび皮膚に影響を及ぼす他の過形成、子宮内膜症、骨の疾患、血管新生もしくは血管増殖性の疾患、肺高血圧症、線維症障害、メサンギウム細胞増殖性疾患、結腸ポリープ、多発性嚢胞腎疾患、良性前立腺肥大症(BPH)および固形腫瘍、例えば乳癌、気道癌、脳腫瘍、生殖器の癌、消化管癌、尿路の癌、眼の癌、肝臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌およびそれらの遠隔転移癌を含む。疾患には、リンパ腫、肉腫および白血病も含まれる。
【0071】
乳癌の例は、限定するものではないが、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性腺管癌(ductal carcinoma in situ)および非浸潤性小葉癌を含む。
【0072】
呼吸気管の癌の例は、限定するものではないが、小細胞および非小細胞性肺癌ならびに気管支腺腫および胸膜肺芽細胞腫を含む。
【0073】
脳腫瘍は、限定するものではないが、脳幹グリオーマおよび視床下部グリオーマ、小脳星状細胞腫および脳星状細胞腫、グリア芽細胞腫、髄芽細胞腫、上衣細胞腫ならびに神経外胚葉性腫瘍および松果体部腫瘍を含む。
【0074】
雄の生殖器の腫瘍は、限定するものではないが、前立腺癌および精巣癌を含む。雌の生殖器の腫瘍は、限定するものではないが、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、膣癌および外陰部癌ならびに子宮肉腫を含む。
【0075】
消化管の腫瘍は、限定するものではないが、肛門癌、結腸直腸癌、大腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌および唾液腺癌を含む。
【0076】
尿路の腫瘍は、限定するものではないが、膀胱癌、陰茎癌、腎臓癌、腎盂癌、尿管癌、尿道癌、ならびに遺伝性と散発性乳頭腎臓癌を含む。
【0077】
眼の癌は、限定するものではないが、眼内黒色腫および網膜芽細胞腫を含む。
【0078】
肝癌の例は、限定するものではないが、原発性肝細胞癌(繊維層板型の有無を問わず肝細胞癌)、胆管癌(肝内胆管癌)、および混合型の肝細胞性胆管癌を含む。
【0079】
皮膚癌は、限定するものではないが、扁平上皮癌、カポージ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌および非黒色腫皮膚癌を含む。
【0080】
頭頚部癌は、限定するものではないが、喉頭癌、下咽頭癌、鼻咽頭癌、口咽頭癌、口唇癌と口腔癌および扁平上皮癌を含む。
【0081】
リンパ腫は、限定するものではないが、AIDS関連のリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン病および中枢神経系のリンパ腫を含む。
【0082】
肉腫は、限定するものではないが、軟部組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉腫を含む。
【0083】
白血病は、限定するものではないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病およびヘアリーセル白血病を含む。
【0084】
線維症増殖性疾患(Fibrotic proliferative disorder)、すなわち細胞外マトリックスの異常な形成であって、本発明の化合物および方法により処置され得る疾患は、限定するものではないが、肺線維症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肝硬変、および腎疾患を含むメサンギウム細胞増殖性疾患、例えば糸球体腎炎、糖尿病ネフロパシー、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症候群、移植拒絶反応および糸球体症を含む。
【0085】
本発明の化合物を投与することにより処置され得るヒトまたは他の哺乳動物における他の状態は、腫瘍成長、網膜症、例えば糖尿病性網膜症、虚血性網膜静脈閉塞、未熟児網膜症および加齢性黄斑変性、関節リウマチ、乾癬および表皮下水疱形成を伴う水疱性疾患、例えば類天疱瘡、多形紅斑や疱疹状皮膚炎を含む。
【0086】
本発明の化合物は、気道および肺の疾患、消化管の疾病ならびに膀胱および胆管の疾病を予防および処置するために用い得る。
【0087】
上記の疾患は、ヒトでよく特徴づけられているが、哺乳動物を含み、他の動物にも類似の病因が存在し、それらは、本発明の医薬組成物を投与することにより処置され得る。
【0088】
式(I)の化合物は、唯一の医薬として投与されてもよいし、または、組合せにより許容できない副作用を生じない1以上の更なる治療薬と組合せて投与されてもよい。この併用療法は、式(I)の化合物および1以上の更なる治療薬を含有する単一医薬剤形の投与、ならびに、式(I)の化合物および各付加的な治療剤をそれ自体別個の医薬剤形で投与することを含む。例えば、式(I)の化合物および治療薬は、単一の経口投薬組成物、例えば錠剤もしくはカプセル剤で一緒に患者に投与することができ、または各医薬を別個の投薬剤形で投与してもよい。
【0089】
別個の投薬剤形を用いる場合、式(I)の化合物および1以上の付加的な治療薬は、本質的に同じ時に(例えば、同時に)または独立して時間差で(例えば連続して)投与してもよい。
【0090】
特に、他の抗腫瘍薬、例えばアルキル化剤、代謝拮抗物質、植物由来の抗腫瘍薬、ホルモン療法薬、トポイソメラーゼ阻害剤、カンプトセシン誘導体、キナーゼ阻害剤、標的薬物(targeted drug)、抗体、インターフェロンおよび/または生体応答修飾物質、抗血管新生化合物(anti-angiogenic compound)および他の抗腫瘍剤との固定さらた組合せもしくは分離した組合せで用いてよい。これに関して、以下は本発明の化合物と組合せて用いることができる二次試薬の例の非制限的な例を列記する:
【0091】
・アルキル化剤は、限定するものではないが、ナイトロジェンマスタードN−酸化物、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロマイド、アルトレタミン、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、フォテムスチン、グルホスファミド、マホスファミド、ベンダムスチンおよびミトラクトールを含む;プラチナ調整アルキル化化合物(platinum-coordinated alkylating)は、限定するものではないが、シスプラチン、カルボプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンおよびサトラプラチンを含む;
【0092】
・代謝拮抗物質は、限定するものではないが、メトトレキサート、6−メルカプトプリン・リボシド、メルカプトプリン、5−フルオロウラシル単独、またはロイコボリン、テガフール、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、ゲムシタビン、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルチニン、エチニルシチジン、シトシンアラビノシド、ヒドロキシウレア、メルファラン、ネララビン、ノラトレキシド、オクホスファート、ペメレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、トリアピン、トリメトレキセート、ビダラビン、ビンクリスチンとビノレルビンとの組合せを含む;
【0093】
・ホルモン療法薬剤は、限定するものではないが、エクセメスタン、リュープロン、アナストロゾール、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、ホルメスタン、11−ベータ ヒドロキシステロイド・デヒドロゲナーゼ1抑制剤、17−アルファ・ヒドロキシラーゼ/17,20リアーゼ抑制剤、例えばアビラテロン(abiraterone)アセテート酢酸塩、5−アルファ・レダクターゼ抑制剤、例えばフィナステリドおよびエプリステリド、抗卵胞ホルモン、例えばクエン酸タモキシフェンおよびフルベストラント、トレルスター、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、レトロゾール、抗アンドロゲン、例えばビカルタミド、フルタミド、ミフェプリストーン、ニルタミド、カソデックス、および抗プロゲステロンおよびそれらの組合せを含む;
【0094】
・植物由来の抗腫瘍物質は、例えば、分裂抑制因子、例えばエポチロン、例えばサゴピロン(sagopilone)、イクサベピロンおよびエポチロンB、ビンブラスチン、ビンフルニン、ドセタキセル、およびパクリタキセルから選択されるものを含む;
【0095】
・細胞障害性トポイソメラーゼ阻害試薬は、限定するものではないが、アクラルビシン、ドキソルビシン、アモナファイド、ベロテカン、カンプトセシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、ジフロモテカン、イリノテカン、トポテカン、エドテカリン、エピムビシン(epimbicin)、エトポシド、エキサテカン、ジャイマテカン(gimatecan)、ラルトテカン(lurtotecan)、ミトキサントロン、ピラムビシン(pirambicin)、ピキサントロン、ルビテカン(rubitecan)、ソブゾキサン、タフルポシド(tafluposid)とその組合せを含む;
【0096】
・免疫学的に活性な物質は、インターフェロン、例えばインターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ−1aおよびインターフェロンガンマ−n1、および他の免疫賦活薬、例えば、L19−IL2および他のIL2誘導体、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、テラシス(TheraCys)、ウベニメクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、メラノーマワクチン(Corixa)、モルグラモスチム、サルグラモスチム、タソネルミン、テセロイキン、チマファシン(thymafasin)、トシツモマブ、ビルリジン(Virulizin)、エピラツズマブ、ミツモマブ(mitumomab)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)およびプロベンジを含む;
【0097】
・生体応答修飾物質は、生命体の防御機構または生体反応、例えば組織細胞の生存、成長または組織細胞が抗腫瘍活性を有するようになる分化をモディファイする薬剤であり;そのような薬剤は、例えば、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニール、プロミューン(ProMune)およびウベニメクスを含む;
【0098】
・抗血管新生合成物は、限定するものではないが、アシトレチン、アフリバーセプト、アンギオスタチン、アプリジン、アセンタール(asentar)、アキシチニブ、ベバシズマブ、ブリバニブアラニナート、シレンジタイド、コンブレタスタチン、エンドスタチン、フェンレチニド、ハロフジノン、パゾパニブ、ラニビズマブ、レビマスタット(rebimastat)、レセチン(recentin)、レゴラフェニブ(regorafenib)、レモバブ、レブリミド、ソラフェニブ、スクアラミン、スニチニブ、テラチニブ(telatinib)、サリドマイド、ウクライン(ukrain)、バタラニブおよびビタキシン(vitaxin)を含む;
【0099】
・抗体は、限定するものではないが、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、チシリムマブ(ticilimumab)、イピリムブマブ、ルミリキシマブ、カツマキソマブ、アタシセプト(atacicept)、オレゴボマブおよびアレムツズマブを含む;
【0100】
・VEGF抑制剤、例えばソラフェニブ、レゴラフェニブ(regorafenib)、ベバシズマブ、スニチニブ、レセンチン(recentin)、アキシチニブ、アフリバーセプト、テラチニブ(telatinib)、ブリバニブ・アラニナト、バタラニブ、パゾパニブおよびラニビズマブなど;
・EGFR(HER1)抑制剤、例えばセツキシマブ、パニツムマブ、ベクチビックス、ゲフィチニブ、エルロチニブおよびザクチマ(Zactima)など;
・HER2抑制剤、例えばラパチニブ、トラツズマブ(tratuzumab)およびペルツズマブなど;
・mTOR抑制剤、例えばテムシロリムス、シロリムス/ラパマイシンおよびエベロリムスなど;
・c−Met阻害剤;
・P13KおよびAKT阻害剤;
・CDK抑制剤、例えばロスコビチンおよびフラボピリドール;
【0101】
・紡錘体集合チェックポイント阻害剤および標的化された有糸分裂阻害剤、例えば、PLK阻害剤、オーロラ阻害剤(例えばヘスペラジン(hesperadin))、チェックポイントキナーゼ阻害剤およびKSP阻害剤;
・HDAC阻害剤、例えば、パノビノスタット(panobinostat)、ボリノスタット、MS275、ベリノスタット(belinostat)およびLBH589;
・HSP90およびHSP70阻害剤;
・プロテアソーム阻害剤、例えば、ボルテゾミブおよびカーフィルゾミブ;
・セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、MEK阻害剤およびRaf阻害剤、例えば、ソラフェニブ;
・ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ティピファニブ;
【0102】
チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ダサチニブ、ニトリビブ(nilotibib)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ボスチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、セディラニブ、アキシチニブ、アフリバーセプト、テラチニブ(telatinib)、イマチニブ・メシラート、ブリバニブ・アラニナト、パゾパニブ、ラニビズマブ、バタラニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベクチビックス、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、トラツズマブ(tratuzumab)、ペルツズマブおよびc−Kit阻害剤を含む;
・ビタミンD受容体アゴニスト;
・Bcl−2タンパク質阻害剤、例えば、オバトクラクス(obatoclax)、オブリメルセンナトリウムおよびゴシポール;
【0103】
・CD(Cluster of differentiation)20受容体アンタゴニスト、例えば、リツキシマブ;
・リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、例えば、ゲムシタビン;
・腫瘍壊死アポトーシス誘導リガンド受容体1アゴニスト、例えば、マパツムマブ;
・5−ヒドロキシトリプタミン受容体アンタゴニスト、例えば、rEV598、キサリプロデン(xaliprode)、パロノセトロン塩酸塩、グラニセトロン、ジンドール(Zindol)およびAB−1001;
・インテグリン阻害剤、例えばアルファ5−ベータ1インテグリン阻害剤、例えばE7820、JSM6425、ボロシキシマブ(volociximab)およびエンドスタチン;
【0104】
・アンドロゲン受容体アンタゴニスト、例えば、デカン酸ナンドロロン、フルオキシメステロン、アンドロイド、プロスト−エイド(Prost-aid)、アンドロムスチン(andromustine)、ビカルタミド、フルタミド、アポ−シプロテロン、アポ−フルタミド、酢酸クロルマジノン、アンドロクル(Androcur)、タビ(tabi)、酢酸シプロテロンおよびニルタミドを含む;
・アロマターゼ阻害薬、例えばアナストロゾール、レトロゾール、テストラクトン、エクセメスタン、アミノグルテチミドおよびホルメスタン;
・マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;
【0105】
・他の活性化合物、例えば、アリトレチノイン、アンプリゲン(Ampligen)、アトラセンタン、ベキサロテン、ボルテゾミブ、ボセンタン、カルシトリオール、エクシスリンド、フォテムスチン、イバンドロン酸、ミルテホシン、ミトキサントロン、I−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルボアミド、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、タザロテン、ベルケイド、硝酸ガリウム、カンホスファミド(canfosfamide)、ダリナパルシン(darinaparsin)およびトレチノインを含む。
【0106】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、化学療法(すなわち細胞毒性物質)、抗ホルモン療法および/または標的療法、例えば他のキナーゼ阻害剤(例えばEGFR阻害剤)、mTOR阻害剤と血管形成阻害剤と組合せて用いてもよい。
【0107】
本発明の化合物は、放射線療法および/または外科的処置と合わせて癌治療に用いられてもよい。
【0108】
さらに、式(I)の化合物は、それ自体で又は組成物で、研究および診断に、或いは分析標準試料およびその他の類似物として利用されてもよく、それらは当分野で周知である。
【0109】
医薬組成物および処置方法
別の態様において、本発明は、医薬上許容される担体と共に、以上で定義した式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0110】
さらに別の態様において、本発明は、医薬組成物を製造する方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの上記定義の式(I)の化合物を、少なくとも1つの医薬上許容される担体と組合せる工程、および得られた組合せを適切な投与形式にする工程を含む。
【0111】
式(I)の活性成分は、全身および/または局所的に作用してもよい。このために、適切な様式で、例えば経口、非経口、経肺、経鼻、舌下、舌、頬側、直腸内、経皮、結膜、経耳(otically)にて投与されてよく、または移植片またはステントとして投与されてもよい。
【0112】
これらの投与経路について、式(I)の活性成分は、適切な投与形態で投与され得る。
【0113】
有用な経口投与形態は、活性成分を迅速に放出する投与形態および/またはモディファイされた形態、例えば、錠剤(素錠(non-coated tablet)およびコーティング錠剤、例えば腸溶コーティング剤)、カプセル剤、糖衣錠、顆粒剤、ペレット、粉剤、エマルジョン、懸濁剤、溶液およびエアゾールを含む。
【0114】
非経口適用は、吸収工程を回避して(静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内で)、或いは吸収を包含して(筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹膜内で)行われ得る。有用な非経口投与形態は、溶液、懸濁剤、エマルジョン、凍結乾燥および無菌粉末の形態の注射および注入製造を含む。
【0115】
他の投与経路に適切な形態は、例えば、吸入医薬形態(粉吸入器、ネブライザーを含む)、点鼻薬、溶液もしくはスプレー、舌(lingually)、舌下または頬側に投与される錠剤もしくはカプセル剤、坐薬、耳および眼への製剤、膣カプセル剤、水性懸濁剤(ローション剤、振盪水剤)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、ミルク、ペースト、消毒用散布剤、移植片またはステントを含む。
【0116】
好ましい実施形態において、上記定義の式(I)の化合物を含む医薬組成物は、経口投与に適切な形態で提供される。別の好ましい実施形態において、上記定義の式(I)の化合物を含む医薬組成物は、静脈内投与に適切な形態で提供される。
【0117】
式(I)の活性成分は、それ自体は公知の方法で、列記した投与形態にすることができる。これは、不活発な無毒の医薬上適切な賦形剤を用いて行われる。これらは、とりわけ、担体(例えば微結晶セルロース)、溶剤(例えば液体ポリエチレングリコール)、乳化剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、分散剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然の生体高分子(例えばアルブミン)、安定剤(例えばアスコルビン酸のような酸化防止剤)、着色剤(例えば酸化鉄のような無機顔料)または味覚および/または匂いの矯正薬を含む。
【0118】
別の実施形態において、本発明は、有効な量の上記定義の式(I)の化合物を、処置を必要とする患者に投与することを含む、患者における細胞増殖性疾患を処置する方法を提供する。特定の実施形態において、細胞増殖性疾患は癌である。
【0119】
さらに別の態様において、本発明は、細胞増殖性疾患の処置または予防のための医薬組成物を製造するための、上記定義の式(I)の化合物の使用を提供する。特定の実施形態において、細胞増殖性疾患は癌である。
【0120】
本発明の化合物が医薬としてヒトおよび動物に投与される場合、それらは、それ自体で与えられても、または、例えば、医薬上許容される担体と組合せて0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を含む医薬組成物として与えられてもよい。
【0121】
選択された投与経路に関わらず、本発明の化合物は、適切な水和形で用いられてよく、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に公知の通常の方法により医薬上許容される剤形に製剤化される。
【0122】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量のレベルおよびタイムコースは、具体的な患者、組成物および投与形式について、患者に有毒でなく患者において所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために、変更することができる。例示的な投薬範囲は、1日あたり0.01〜100mg/kgまたは1日あたり0.1〜150mg/kgまでである。
【0123】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、通常の癌化学療法薬を用いた併用療法で用いることができる。白血病および他の腫瘍のための通常の治療計画は、放射線、薬物または両方の組合せを含む。
【0124】
治療上有効な抗増殖性の量または本発明の化合物の予防に有効な抗増殖性の量の決定は、医師または獣医師(「主治医」)により、当業者として公知技術を用いて、また類似の状況下で得られた結果を観察することにより容易に決定できる。投薬量は、主治医の判断で、患者の要求;処置される状態の重篤度および用いられる具体的な化合物に応じて変更される。治療上有効な抗増殖性の量もしくは投薬量および予防上有効な抗増殖性の量もしくは投薬量を決定する際に、多くの因子が主治医により考慮され、限定するものではないが、関与する特定の細胞増殖性疾患;特定の試薬およびその投与様式および投与経路の薬力学的特徴;所望の処置のタイムコース;哺乳動物種;そのサイズ、年および一般的な健康状態;関与する特定の疾病;疾患の関与の程度もしくは重篤度;個々の患者の応答性;投与される具体的な化合物;投与様式;投与される調製物の生物学的利用能の特徴;選択される投薬レジメン;併用療法の種類(すなわち、本発明の化合物の同時投与される治療薬との相互作用);および他の関連する状態を含む。
【0125】
処置は、より少ない投薬量で始めてよく、その化合物の最適な用量未満であってよい。その後、投薬量は、その状況下での至適効果が達されるまで、少量ずつ増加させ得る。便利のために、要すれば、総日投薬量を分けて、一日の間に部分ごとに投与してもよい。本発明の化合物の治療上有効な抗増殖性の量および予防上有効な抗増殖性の量は、1日あたり体重1キログラムにつき約0.01ミリグラム(mg/kg/day)〜約100mg/kg/日の範囲で変更されるであろう。
【0126】
本発明の化合物の好ましい用量は、患者が許容することができ、重大な副作用か生じない最大量である。例示として、本発明の化合物は、体重1kgあたり約0.01mg〜約100mg、体重1kgあたり約0.01mg〜約10mgまたは体重1kgあたり約0.1mg〜約10mgの用量で投与される。前述の値の範囲の間の値もまた、発明の一部であることを意図する。
【0127】
以下の試験および実施例でのパーセンテージは、特に明記しない限り、重量あたり;重量部である。液体/液体溶液に関して記載される溶媒の比率、希釈率および濃度はそれぞれ容積あたりである。
【0128】
A.実施例
略語および頭文字
【表1】

【0129】
LC−MSおよびGC−MS方法:
方法1(LC−MS):
装置:HPLC Waters Alliance 2795を備えたMicromass ZQ ;カラム: Phenomenex Synergi 2.5μ MAX-RP 100A Mercury、20 mm × 4 mm;溶出液A:1 Lの水 + 0.5 mL の50% ギ酸、溶出液B:1 L のアセトニトリル + 0.5 mL の50% ギ酸;勾配:0.0分 90% A → 0.1分 90% A → 3.0分 5% A → 4.0分 5% A → 4.01 分 90% A;流速: 2 mL/分;オーブン: 50℃;UV 検出: 210 nm。
【0130】
方法2(LC−MS):
装置: HPLC Waters UPLC Acquityを備えたMicromass Quattro Premier;カラム: Thermo Hypersil GOLD 1.9μ、50 mm × 1 mm;溶出液A: 1 Lの水 + 0.5 mL の50% ギ酸、溶出液B: 1 L のアセトニトリル + 0.5 mL の50% ギ酸;勾配: 0.0分 90% A → 0.1分 90% A → 1.5分 10% A → 2.2分 10% A;オーブン: 50℃;流速: 0.33 mL/分; UV 検出: 210 nm。
【0131】
方法3(LC−MS):
装置:HPLC Agilent 1100 Seriesを備えたMicromass Quattro Micro;カラム:Thermo Hypersil GOLD 3μ、20 mm × 4 mm;溶出液A: 1 L の水 + 0.5 mL の50% ギ酸、溶出液B: 1 L のアセトニトリル + 0.5 mL の50% ギ酸;勾配: 0.0分 100% A → 3.0分 10% A → 4.0分 10% A → 4.01分 100% A (流速 2.5 mL/分) → 5.00分 100% A;オーブン: 50℃; 流速: 2 mL/分; UV検出: 210 nm。
【0132】
方法4(LC−MS):
装置:Waters Acquity SQD UPLC System;カラム: Waters Acquity UPLC HSS T3 1.8μ、50 mm × 1 mm; 溶出液A: 1 L の水 + 0.25 mL の99% ギ酸、溶出液B: 1 L のアセトニトリル + 0.25 mL の99% ギ酸;勾配: 0.0分 90% A → 1.2分 5% A → 2.0分 5% A; オーブン: 50℃; 流速: 0.40 mL/分; UV検出: 210-400 nm。
【0133】
方法5(GC−MS):
装置: Micromass GCT, GC 6890;カラム: Restek RTX-35、15 m × 200 μm × 0.33 μm; 一定流量のヘリウム: 0.88 mL/分; オーブン: 70℃; 注入口: 250℃; 勾配: 70℃、 30℃/分 → 310℃ (3分維持)。
【0134】
出発物質および中間体:
実施例1A
フロ[3,2−c]ピリジン−4−アミン
【化42】

65.3 g (425 mmol)の4-クロロフロ[3,2-c]ピリジン [CAS Reg.-No. 31270-80-1]を、オートクレーブ中600 ml アンモニア水溶液(35%)に懸濁した。2 gの塩化銅(I)を添加した後、反応混合物を20 時間、150℃にて攪拌した。室温にまで冷却した後、混合物をジクロロメタン (3 × 400 ml)で抽出した。合した有機相を、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、そして減圧下にて濃縮して、標記の粗化合物46.6 g (理論で82%) (含有量 >95%、GCによる)を得て、さらに精製することなく次の工程に用いた。
【0135】
実施例2A
N−(フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル)ベンズアミド
【化43】

42.2 g (315 mmol)のフロ[3,2-c]ピリジン-4−アミン (実施例1A) を、500 mlの乾燥ピリジン中に溶解した。71.3 g (315 mmol)の安息香酸無水物を滴加した後、反応混合物を、還流まで3時間加熱した。室温にまで冷却した後、混合物を5000 ml の水に注いだ。得られた沈殿物をろ過し、水で洗浄し乾燥させて、褐色固体として71.3 g (理論で95%) の標記化合物を得て、さらに精製することなく次の工程に用いた[J.B.M. Rewinkel et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 9, 2837-2842 (1999)を参照のこと]。
LC-MS (方法4): Rt = 0.67 分; MS (ESIpos): m/z = 239 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.03 (s, 1H), 8.30 (d, 1H), 8.11-8.02 (m, 3H), 7.63 (m, 1H), 7.60-7.50 (m, 3H), 6.92 (s, 1H) ppm。
【0136】
実施例3A
N−(2−ホルミルフロ[3,2−c]ピリジン−4−イル)ベンズアミド
【化44】

7.13 g (30 mmol)のN-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル)ベンズアミド (実施例2A) を、不活性ガス雰囲気下で150 mlの乾燥THF中に溶解した。−78℃で、26.4 ml (66 mmol)のn-ブチルリチウム溶液(ヘキサン中2.5 M)を滴加し、混合物を30分間この温度で攪拌した。次いで、5.1 ml (66 mmol)の乾燥N,N-ジメチルホルムアミドを滴加した。添加完了後に、混合物を室温にまでゆっくり温め、300 ml の飽和塩化アンモニウム水溶液を添加した。300 mlのジエチルエーテルで抽出した後、有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、減圧下にて濃縮して、褐色固体を得た。この物質を、シリカゲルに対するクロマトグラフィー(溶出ジクロロメタン/メタノール 99:1 v/v)にて精製し、5.2 g (理論で65%) の標記化合物を薄黄色固形物として得た [J.B.M. Rewinkel et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 9, 2837-2842 (1999)を参照のこと]。
LC-MS (方法4): Rt = 0.80 分; MS (ESIpos): m/z = 267 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.34 (s, 1H), 9.90 (s, 1H), 8.49 (d, 1H), 8.11 (m, 2H), 8.01 (s, 1H), 7.70-7.62 (m, 2H), 7.57 (m, 2H) ppm。
【0137】
実施例4A
N−{2−(2−シアノ−3−オキソブタ−1−エン−1−イル)フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル}ベンズアミド
【化45】

4Åのモレキュラーシーブを含有する乾燥ジクロロメタン (35 ml) 中の1.50 g (5.63 mmol)のN-(2-ホルミルフロ[3,2-c]ピリジン-4-イル)ベンズアミド (実施例3A)、0.65 g (6.2 mmol)のナトリウム (1Z)-1−シアノプロパ−1−エン−2−オレート、0.4 ml (7.04 mmol) の酢酸および56μl (0.56 mmol) のピペリジンの混合物を、還流下で1時間攪拌した。冷却した後、50 ml の重炭酸ナトリウム水溶液を添加し、その混合物を室温で1時間攪拌した。モレキュラーシーブを濾過して除き、濾液を減圧下にて濃縮した。残渣を酢酸エチルで処理し、飽和炭酸ナトリウム水溶液で処理した。有機層を分離し、水で洗浄し、乾燥させ、減圧下にて濃縮して標記化合物(1.5 g、理論で80%)を薄黄色固形物として得て、さらに精製することなく次の工程に用いた。
LC-MS (方法3): Rt = 1.91 分; MS (ESIpos): m/z = 332 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.34 (br. s, 1H), 8.47 (d, 1H), 8.41 (s, 1H), 8.11 (m, 2H), 7.93 (s, 1H), 7.66 (m, 2H), 7.57 (m, 2H), 2.55 (br. m, 3H) ppm。
【0138】
実施例5A
3−アミノ−3−(4−フルオロフェニル)プロパ−2−エンニトリル
【化46】

乾燥THF(2 ml)中の0.390 ml (2.78 mmol) ジイソプロピルアミン溶液を、不活性ガス雰囲気下で-70℃にまで冷却し、1.74 ml (2.78 mmol) n-ブチルリチウム溶液(ヘキサン中1.6 M )を滴加した。次いで、乾燥THF(2 ml)中の129μl (2.45 mmol) アセトニトリル 溶液を10分かけてゆっくり加えた。得られた溶液を、30分間-70℃でさらに攪拌し、乾燥THF(2ml)中の200 mg (1.635 mmol) の4-フルオロベンゾニトリル溶液を加えた。その混合物を室温にまで温め、1時間攪拌した後、水(4 ml)をゆっくり加えた。その混合物をジクロロメタン (50 ml)で数回抽出した。合した有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下にて濃縮して、標記の粗化合物244 mg (理論で92%) を得て、さらに精製することなく次の工程に用いた。
LC-MS (方法4): Rt = 0.81 分; MS (ESIpos): m/z = 163 (M+H)+.
【0139】
実施例6A
3−アミノ−3−(4−クロロフェニル)プロパ−2−エンニトリル
【化47】

標記化合物を、実施例5Aで記載した手順に従い、4−クロロベンゾニトリル (500 mg, 3.598 mmol) を用いて調製し、組成生物598 mg (理論で93%) を得て,さらに精製することなく次の工程に用いた。
GC-MS (方法5): Rt = 6.38 分; MS (EIpos): m/z = 178 (M)+.
【0140】
実施例7A
5−メトキシ−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン
【化48】

ジクロロメタン (70 ml) 中の1.2 g (11.9 mmol)のモルホリン-3−オン溶液を、0℃にまで冷却し、25 g (238 mmol) の乾燥炭酸ナトリウムで処理した。10分間0℃で攪拌した後、6.14 g (41.5 mmol) トリメチルオキソニウムテトラフルオロホウ酸塩を0℃で添加した。その混合物を室温にまで温め、6時間攪拌した。水(100 ml)を加え、有機層を分離した。水相をジクロロメタンで数回抽出し、合した有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下にて濃縮した。このようにして得られた粗生成物を、さらに精製することなく次の工程に用いた。
GC-MS (方法5): Rt = 3.36 分; MS (ESIpos): m/z = 116 (M+H)+.
【0141】
実施例8A
tert−ブチル(2E/Z)−シアノ(モルホリン−3−イリデン)エタノエート
【化49】

THF(25ml)中の0.48 g (4.17 mmol) の5-メトキシ-3,6-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジン(実施例7A) および0.61 g (4.34 mmol) のtert-ブチル シアノ酢酸塩の混合物を、還流下で12時間攪拌した。その混合物を、次いで、室温にまで冷却し、減圧下にて濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー (シリカゲル、溶出液、シクロヘキサン/酢酸エチル 3:1) により精製し、標記化合物を白色固体として得た(0.269 g、理論で27%)。
LC-MS (方法2): Rt = 0.99 分; MS (ESIpos): m/z = 225 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO−d6): δ = 10.02 (br. s, 1H), 4.47 (s, 2H), 3.84 (t, 2H), 3.37 (m, 2H), 1.44 (s, 9H) ppm.
【0142】
調製例:
実施例1
N−{2−[3,5−ジシアノ−2−(ジフルオロメチル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−4−イル]フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル}ベンズアミド
【化50】

2-プロパノール (1 ml) 中の200 mg (0.604 mmol) のN-{2-(2-シアノ-3−オキソブタ−1−エン−1-イル)フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例4A) および285 mg (2.41 mmol)の3-アミノ-4,4-ジフルオロブタ−2−エンニトリル [アセトニトリルと2,2-ジフルオロアセトニトリルとのソープ反応により得ることができる。Org. React. 15, 1 (1967), ibid. 31, 1 (1984)を参照のこと] の混合物を、還流温度で12時間攪拌した。冷却の際に、混合物を減圧下にて濃縮し、残渣を分取RP−HPLC(アセトニトリル/水 + 0.1% TFA 勾配, 最終混合物90:10 v/v) で直接精製し、176 mg (理論で67% )の標記化合物のラセミ体を得た。
LC-MS (方法2): Rt = 0.97 分; MS (ESIpos): m/z = 432 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.40 (br. s, 1H), 10.37 (s, 1H), 8.36 (d, 1H), 8.08 (m, 2H), 7.72 (m, 1H), 7.67 (m, 1H), 7.57 (m, 2H), 7.12 (s, 1H), 6.87 (t, 1H, 2JH,F = 51.8 Hz), 5.24 (s, 1H), 2.15 (s, 3H) ppm.
【0143】
実施例2
N−{2−[3,5−ジシアノ−2−(4−フルオロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−4−イル]フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル}ベンズアミド
【化51】

酢酸 (2 ml) 中の200 mg (0.604 mmol)のN-{2-(2-シアノ-3−オキソブタ−1−エン−1-イル)フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 4A) および117 mg (0.724 mmol)の3-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)プロパ-2−エンニトリル (実施例 5A) の混合物を、30分間110℃で攪拌した。冷却の際に、その混合物を減圧下にて濃縮し、残渣を分取RP-HPLC (アセトニトリル/水+ 0.1% TFA 勾配, 最終混合物90:10 v/v) にて直接精製し、235 mg (理論で82%)の標記化合物のラセミ体を得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.99 分; MS (ESIpos): m/z = 476 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.32 (br. s, 1H), 10.02 (s, 1H), 8.35 (d, 1H), 8.09 (m, 2H), 7.73-7.62 (m, 4H), 7.57 (m, 2H), 7.45-7.35 (m, 2H), 7.08 (s, 1H), 5.16 (s, 1H), 2.15 (s, 3H) ppm.
【0144】
実施例3
N−{2−[3,5−ジシアノ−2−(4−クロロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−4−イル]フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル}ベンズアミド
【化52】

酢酸(2 ml)中の200 mg (0.604 mmol)のN-{2-(2-シアノ-3−オキソブタ−1−エン−1-イル)フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 4A) および129 mg (0.724 mmol) の3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロパ-2−エンニトリル (実施例 6A) の混合物を、30分間110℃で攪拌した。冷却の際に、その混合物を減圧下で濃縮し、残渣を分取RP-HPLC (アセトニトリル/水 + 0.1% TFA勾配、最終混合物90:10 v/v)により直接精製し、標記化合物のラセミ体を得た。
LC-MS (方法4): Rt = 1.04 分; MS (ESIpos): m/z = 492 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.29 (br. s, 1H), 10.04 (s, 1H), 8.35 (d, 1H), 8.09 (m, 2H), 7.73-7.61 (m, 6H), 7.57 (m, 2H), 7.06 (s, 1H), 5.16 (s, 1H), 2.15 (s, 3H) ppm.
【0145】
実施例4
N−[2−(3,5−ジシアノ−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−4−イル)フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル]ベンズアミド
【化53】

酢酸 (4.5 ml) 中の69 mg (0.260 mmol)のN-(2-ホルミルフロ[3,2-c]ピリジン-4-イル)ベンズアミド (実施例 3A) および43 mg (0.52 mmol)の(2Z)-3-アミノブタ−2−エンニトリルの混合物を、45分間110℃で攪拌した。冷却の際に、その反応混合物を減圧下にて濃縮し、残渣を酢酸エチルおよび飽和炭酸ナトリウム水溶液で処理した。その有機層を分離し、塩水および水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下にて濃縮し、標記化合物(45 mg, 理論で43%) を薄黄色固形物として得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.84 分; MS (ESIpos): m/z = 396 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.05 (s, 1H), 9.74 (s, 1H), 8.30 (d, 1H), 8.09 (m, 2H), 7.65-7.50 (m, 4H), 6.80 (s, 1H), 4.94 (s, 1H), 2.07 (s, 6H) ppm.
【0146】
実施例5
4−(4−アミノフロ[3,2−c]ピリジン−2−イル)−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化54】

酢酸 (3 ml)中の43 mg (0.11 mmol) のN-[2-(3,5-ジシアノ-2,6-ジメチル-1,4-ジヒドロピリジン-4-イル)フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル]ベンズアミド (実施例 4) 溶液を、0.2 mlの塩酸 (37%) で処理し、100℃で24 時間攪拌した。次いで、0.2 mlの塩酸 (37%) をさらに加え、攪拌を100℃で48 時間継続した。冷却の際に、飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え、中性のpH にした。この混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を塩水および水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下にて濃縮した。その粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー (シリカ、溶出液 ジクロロメタン/メタノール 10:1 v/v) により精製し、標記化合物(5.6 mg、理論で18%)を白色固体として得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.54 分; MS (ESIpos): m/z = 292 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 9.68 (s, 1H), 7.77 (d, 1H), 6.88 (s, 1H), 6.79 (d, 1H), 6.48 (s, 2H), 4.81 (s, 1H), 2.06 (s, 6H) ppm.
【0147】
実施例6
4−(4−アミノフロ[3,2−c]ピリジン−2−イル)−2−(ジフルオロメチル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化55】

標記化合物を、実施例5に記載の手順に従って、176 mg (0.41 mmol) のN-{2-[3,5-ジシアノ-2-(ジフルオロメチル)-6-メチル-1,4-ジヒドロピリジン-4-イル]フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 1) により調製し、22 mg (理論で16%) のラセミ生成物をRP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配、最終混合物100% メタノール)の精製の後に得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.56 分; MS (ESIpos): m/z = 328 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 10.28 (s, 1H), 7.79 (d, 1H), 6.97 (s, 1H), 6.86 (t, 1H, 2JH,F = 51.84 Hz), 6.81 (d, 1H), 6.54 (br. s, 2H), 5.06 (s, 1H), 2.13 (s, 3H) ppm.
【0148】
実施例7
N−{2−[3,5−ジシアノ−2−メチル−6−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロピリジン−4−イル]フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル}ベンズアミド
【化56】

2-プロパノール (1 ml)中の200 mg (0.604 mmol)のN-{2-(2-シアノ-3−オキソブタ−1−エン-1-イル)フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 4A) および329 mg (2.41 mmol) の(2E)-3-アミノ-4,4,4-トリフルオロブタ−2−エンニトリル [CAS Reg.-No. 33561-24-9;A.W. Lutz, 米国特許第3,635,977号に従って、また、C.G. Krespan, J. Org. Chem. 34, 42-45 (1969) に従って調製される] の混合物を、還流温度で12 時間攪拌した。冷却の際に、混合物を減圧下にて濃縮し、その残渣を分取RP-HPLC (アセトニトリル/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物90:10 v/v) により直接精製し、171 mg (理論で63%) の標記化合物のラセミ体を得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.95 分; MS (ESIpos): m/z = 450 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.29 (br. s, 1H), 10.59 (s, 1H), 8.36 (d, 1H), 8.09 (m, 2H), 7.72-7.62 (m, 2H), 7.57 (m, 2H), 7.09 (s, 1H), 5.31 (s, 1H), 2.17 (s, 3H) ppm.
【0149】
実施例8
4−(4−アミノフロ[3,2−c]ピリジン−2−イル)−2−メチル−6−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化57】

標記化合物を、実施例5に記載の手順に従って、140 mg (0.31 mmol) のN-{2-[3,5-ジシアノ-2-メチル-6-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロピリジン-4-イル]フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 7) により調製し、29 mg (理論で27%) のラセミ生成物を、RP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール)の後に得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.62 分; MS (ESIpos): m/z = 346 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 10.64 (br. s, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.02 (s, 1H), 6.84 (d, 1H), 6.64 (br. s, 2H), 5.15 (s, 1H), 2.15 (s, 3H) ppm.
【0150】
実施例9
4−(4−アミノフロ[3,2−c]ピリジン−2−イル)−2−(4−フルオロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化58】

標記化合物を、実施例5に記載の手順に従って、235 mg (0.494 mmol) のN-{2-[3,5-ジシアノ-2-(4-フルオロ-フェニル)-6-メチル-1,4-ジヒドロピリジン-4-イル]フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 2) により調製し、52.4 mg (理論で28%) のラセミ生成物を、RP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール)による精製の後に得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.69 分; MS (ESIpos): m/z = 372 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 9.96 (s, 1H), 7.79 (d, 1H), 7.65 (m, 2H), 7.40 (m, 2H), 7.01 (s, 1H), 6.86 (d, 1H), 6.66 (br. s, 2H), 4.98 (s, 1H), 2.13 (s, 3H) ppm.
【0151】
実施例10
4−(4−アミノフロ[3,2−c]ピリジン−2−イル)−2−(4−クロロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化59】

標記化合物を、実施例5に記載の手順に従って、197 mg (0.40 mmol)のN-{2-[3,5-ジシアノ-2-(4-クロロフェニル)-6-メチル-1,4-ジヒドロピリジン-4-イル]フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 3) により調製し、47 mg (理論で30%) のラセミ生成物をRP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール)による精製の後に得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.75 分; MS (ESIpos): m/z = 388 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 10.09 (s, 1H), 8.51 (br. s, 2H), 7.89 (d, 1H), 7.64 (m, 4H), 7.35 (d, 1H), 7.33 (s, 1H), 5.20 (s, 1H), 2.15 (s, 3H) ppm.
【0152】
実施例11
N−{2−[3,5−ジシアノ−2,6−ビス(ジフルオロメチル)−1,4−ジヒドロピリジン−4−イル]フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル}ベンズアミド
【化60】

酢酸 (1.3 ml)中の200 mg (0.75 mmol) のN-(2-ホルミルフロ[3,2-c]ピリジン-4-イル)ベンズアミド (実施例 3A) 溶液を、1-ブタノール (1.0 ml)中の200 mg (1.69 mmol) の3-アミノ-4,4-ジフルオロブタ−2−エンニトリル [アセトニトリルと2,2-ジフルオロアセトニトリルとのソープ反応により得ることができる、Org. React. 15, 1 (1967), ibid. 31, 1 (1984) を参照のこと] 溶液で処理した。その混合物を、還流温度まで2 時間加熱した。冷却の際に、反応混合物を減圧下にて濃縮し、その残渣を酢酸エチルおよび飽和重炭酸ナトリウム水溶液で処理した。その有機層を分離し、塩水および水で洗浄して、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下にて濃縮した。その残渣を分取RP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール) により精製し、28 mg (理論で8%) の標記化合物を得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.94 分; MS (ESIpos): m/z = 468 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.29 (br. s, 1H), 11.02 (br. s, 1H), 8.36 (d, 1H), 8.09 (m, 2H), 7.67 (m, 2H), 7.56 (m, 2H), 7.11 (s, 1H), 6.89 (t, 2H), 5.43 (s, 1H) ppm.
【0153】
実施例12
N−[2−(7,9−ジシアノ−6−メチル−1,3,4,8−テトラヒドロピリド[2,1−c][1,4]オキサジン−8−イル)フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル]ベンズアミド
【化61】

6 M 塩酸 (21 ml) 中の162 mg (0.724 mmol) のtert-ブチル (2E/Z)-シアノ(モルホリン-3-イリデン)エタノエート (実施例 8A) 混合物を、100℃まで1 時間加熱した。室温まで冷却した後、溶液を減圧下にて濃縮し、残留した固体を酢酸 (4 ml)中に溶解した。200 mg (0.604 mmol) のN-{2-(2-シアノ-3−オキソブタ−1−エン−1-イル)フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 4A) を加え、混合物を100℃ で0.5 時間攪拌した。冷却の際に、反応混合物を減圧下にて濃縮し、その残渣を酢酸エチルおよび飽和重炭酸ナトリウム水溶液で処理した。その有機層を分離し、塩水および水で処理し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下にて濃縮した。その残渣を、分取RP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール) により精製し、161 mg (理論で58%) の標記化合物のラセミ体を得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.87 分; MS (ESIpos): m/z = 438 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.30 (br. s, 1H), 8.34 (d, 1H), 7.66 (m, 2H), 7.57 (m, 2H), 7.00 (s, 1H), 5.07 (s, 1H), 4.63-4.51 (m, 2H), 4.0-3.6 (m, 4H), 2.28 (s, 3H) ppm.
【0154】
実施例13
N−[2−(5−シアノ−3,6−ジメチル−4,7−ジヒドロ[1,2]オキサゾロ[5,4−b]ピリジン−4−イル)フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル]ベンズアミド
【化62】

2-プロパノール (2 ml) 中の200 mg (0.604 mmol) のN-{2-(2-シアノ-3−オキソブタ−1−エン−1-イル)フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル}ベンズアミド (実施例 4A)、59 mg (0.604 mmol) の3-メチル-1,2-オキサゾール−5−アミン、および微量の粉末4Åモレキュラーシーブの混合物を、90℃ で12 時間攪拌した。冷却の際に、混合物を減圧下にて濃縮し、その残渣を分取RP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール) により直接精製し、64 mg (理論で26%) の標記化合物のラセミ体を得た。
LC-MS (方法3): Rt = 1.68 分; MS (ESIpos): m/z = 412 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.3 (br. s, 1H), 11.1 (s, 1H), 8.31 (d, 1H), 8.08 (m, 2H), 7.66 (m, 2H), 7.56 (m, 2H), 6.96 (s, 1H), 5.41 (s, 1H), 2.18 (s, 3H), 1.97 (s, 3H) ppm.
【0155】
実施例14
N−[2−(3−シアノ−2−メチル−5−オキソ−1,4,5,7−テトラヒドロフロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル]ベンズアミド
【化63】

1-プロパノール (4 ml) 中の200 mg (0.75 mmol) のN-(2-ホルミルフロ[3,2-c]ピリジン-4-イル)ベンズアミド (実施例 3A)、85 mg (1.033 mmol) の3-アミノブタ−2−エンニトリル および177 mg (0.939 mmol) のエチル 4-(アセトキシ)-3-オキソ-ブタノエート [Tetrahedron 1978, 34, 1453-1455] を90℃ で12 時間攪拌した。次いで、濃塩酸 (185 μl) および水(560 μl) を加え、攪拌を100℃で20 分間継続した。冷却の際に、反応混合物を減圧下にて濃縮し、その残渣を酢酸エチルおよび飽和重炭酸ナトリウム水溶液で処理した。その有機層を分離し、塩水および水で処理し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下にて濃縮した。その残渣を、分取RP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール) により精製し、96 mg (理論で31%) の標記化合物のラセミ体を得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.74 分; MS (ESIpos): m/z = 413 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.02 (br. s, 1H), 10.37 (br. s, 1H), 8.28 (d, 1H), 8.08 (m, 2H), 7.63 (m, 1H), 7.54 (m, 3H), 6.75 (s, 1H), 5.05-4.85 (m, 3H), 2.15 (s, 3H) ppm.
【0156】
実施例15
N−{2−[3−シアノ−2−(4−フルオロフェニル)−5−オキソ−1,4,5,7−テトラヒドロフロ[3,4−b]ピリジン−4−イル]フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル}ベンズアミド
【化64】

標記化合物を、実施例14に記載の手順に従って、200 mg (0.75 mmol) のN-(2-ホルミルフロ[3,2-c]ピリジン-4-イル)ベンズアミド (実施例 3A)、167 mg (1.033 mmol) の3-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)プロパ-2−エンニトリル (実施例 5A) および177 mg (0.939 mmol) のエチル 4-(アセトキシ)-3-オキソ-ブタノエート [Tetrahedron 1978, 34, 1453-1455] から調製し、193 mg (理論で52%)のラセミ生成物を、RP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール)による精製後に得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.89 分; MS (ESIpos): m/z = 493 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.33 (br. s, 1H), 10.33 (br. s, 1H), 8.33 (d, 1H), 8.09 (m, 2H), 7.73-7.62 (m, 4H), 7.57 (m, 2H), 7.42 (m, 2H), 7.04 (s, 1H), 5.23 (s, 1H), 5.04-4.92 (m, 2H) ppm.
【0157】
実施例16
N−{2−[3−シアノ−2−(4−クロロフェニル)−5−オキソ−1,4,5,7−テトラヒドロフロ[3,4−b]ピリジン−4−イル]フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル}ベンズアミド
【化65】

標記化合物を、実施例14に記載の手順に従って、200 mg (0.75 mmol) のN-(2-ホルミルフロ[3,2-c]ピリジン-4-イル)ベンズアミド (実施例 3A)、184 mg (1.033 mmol) の3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロパ-2−エンニトリル (実施例 6A) および177 mg (0.939 mmol) のエチル 4-(アセトキシ)-3-オキソ-ブタノエート [Tetrahedron 1978, 34, 1453-1455] から調製し、124 mg (理論で29%) のラセミ生成物を、RP-HPLC (メタノール/水 + 0.1% TFA勾配, 最終混合物100% メタノール)による精製の後に得た。
LC-MS (方法2): Rt = 1.04 分; MS (ESIpos): m/z = 509 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.33 (br. s, 1H), 10.66 (s, 1H), 8.33 (d, 1H), 8.08 (m, 2H), 7.70-7.62 (m, 6H), 7.57 (m, 2H), 7.04 (s, 1H), 5.24 (s, 1H), 5.04-4.92 (m, 2H) ppm.
【0158】
実施例17
N−[2−(3,5−ジシアノ−1,2,6−トリメチル−1,4−ジヒドロピリジン−4−イル)フロ[3,2−c]ピリジン−4−イル]ベンズアミド
【化66】

DMF (1.4 ml) 中の100 mg (0.253 mmol) のN-[2-(3,5-ジシアノ-2,6-ジメチル-1,4-ジヒドロピリジン-4-イル)フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル]ベンズアミド (実施例 4) 溶液を、0℃にまで冷却し、99 mg (0.30 mmol) の炭酸セシウムをこの温度で加えた。30分間の攪拌の後、19 μl (0.30 mmol) のヨウ化メチルを室温で滴加し、混合物を室温で一晩攪拌した。この後、さらなるヨウ化メチル (20 μl) を加え、室温での攪拌をさらに48時間継続した。その反応混合物を次いで濾過し、その濾液を分取RP-HPLC (アセトニトリル/水 + 0.1% TFA, アイソクラチック 40:60 v/v) により直接精製し、5.6 mg (理論で5%) の標記化合物を得た。
LC-MS (方法4): Rt = 0.72 分; MS (ESIpos): m/z = 410 (M+H)+
1H-NMR (400 MHz, アセトニトリル-d3): δ = 8.24 (m, 1H), 8.15 (m, 2H), 8.04 (br. s, 1H), 7.66 (m, 1H), 7.56 (m, 3H), 7.04 (s, 1H), 4.81 (s, 1H), 4.13 (s, 3H), 2.09 (s, 6H) ppm.
【0159】
以下の化合物は、実施例5に記載の手順に類似する手順で対応するベンズアミド(それぞれ、実施例11、12、14および16) から調製し;精製は、アセトニトリル/水 + 0.1% TFA勾配を用いた分取RP-HPLC により行った。
【表2】

【0160】
【表3】


1) 分取RP-HPLC [カラム: Sunfire C18、5 μm、19 mm x 150 mm;溶出: 水/メタノール/1% 水性アンモニア、アイソクラチック 56:30:14 v/v/v; 流速:25 ml/分; 温度: 40℃; UV 検出: 210 nm]によるさらなる精製の後。
2) 分取薄層クロマトグラフィー (シリカゲル; 溶出:ジクロロメタン/メタノール + 0.1% トリエチルアミン 10:1 v/v)によるさらなる精製の後。
【0161】
B.生物活性の評価
本発明化合物の活性の実証は、当分野で周知のインビトロ、エクスビボおよびインビボ・アッセイを通じて行うことができる。例えば、本発明化合物の活性を実証するために、以下のアッセイを用いることができる。
【0162】
c−Met受容体チロシンキナーゼ活性アッセイ(NADHリードアウト):
組換えヒトc−Metタンパク質(Invitrogen, Carlsbad, California, USA) を用いる。キナーゼ反応のための基質として、ペプチド KKKSPGEYVNIEFG (JPT, Germany) を用いる。このアッセイのために、1 μL の51倍濃縮したDMSO中の試験化合物溶液を、白色384ウェルのマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One, Frickenhausen, Germany)にピペットで移す。アッセイ緩衝液 [3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸 (MOPS)、50 mM、pH 7;MgCl2、10 mM;ウシ血清アルブミン(BSA)、0.01%;Triton X 100、0.01%;DTT、2 mM]中のc-Met溶液(終濃度30 nM)およびピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼ(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany; 終濃度8 mg/L) を25 μL加え、混合物を室温で5分間インキュベートする。次いで、キナーゼ反応は、アッセイ緩衝液中のアデノシン三リン酸(ATP、終濃度30μM)、基質(終濃度100μM)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH、終濃度50μM)およびジチオスレイトール(DTT、終濃度2mM))溶液25μLの添加により開始し、結果として得られる混合物を100分の反応時間の間32℃でインキュベートする。
【0163】
その後、リン酸化された基質の量を、NADH蛍光の減少の測定によって評価する。従って、340nmでの励起後の465nmの蛍光発光を、フルオレセンスリーダー、例えばTecan Ultra (Tecan, Mnnnedorf, Switzerland)にて測定する。データを規格化する(阻害剤なしでの酵素活性 = 0%阻害;酵素なしでの、他の全てのアッセイ成分 = 100%阻害)。通常、試験化合物は、同じマイクロタイタープレート上で1nM〜10μMの範囲で9つの異なる濃度(10μM、3.1μM、1.0μM、0.3μM、0.1μM、0.03μM、0.01μM、0.003μM、0.001μM;希釈系列は51倍濃縮したストック溶液レベルで1:3の連続希釈によりアッセイ前に調製される)に関し、各濃度についてデュプリケート(二重)で試験される。
【0164】
このアッセイで試験したところ、本発明の化合物は10μM未満の、好ましくは1μM未満のIC50値でc−Metチロシンキナーゼ活性を阻害する能力を実際に示した。
【0165】
幾つかの代表的なIC50値を以下の表に示す:
【表4】

【0166】
c−Met受容体チロシンキナーゼのホモジニアス時間分解蛍光アッセイ(homogeneous time-resolved fluorescence assay (代替的手段形式):
昆虫細胞(SF21)で発現され、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィーおよび連続サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200)により精製されたN末端His6タグ付き組換えヒトc-Metキナーゼドメイン(アミノ酸960-1390)を用いる。あるいは、商業的に入手可能なc−Met(Millipore)を用いることができる。キナーゼ反応のための基質として、ビオチン化したポリ−Glu,Tyr(4:1)コポリマー(# 61GT0BLC, Cis Biointernational, Marcoule, France) を用いる。
【0167】
アッセイのために、100倍濃縮したDMSO中の試験化合物溶液50nLを、黒色の低容量384ウェルのマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One, Frickenhausen, Germany)にピペットで移す。アッセイ緩衝液[25 mMのHepes/NaOH、pH 7.5;5 mMのMgCl2;5 mMのMnCl2;2 mMのジチオスレイトール;0.1% (v/v)のTween 20 (Sigma);0.1% (w/v) のウシ血清アルブミン]中のc−Met溶液2μLを加え、混合物を22℃で15分間インキュベートし、試験化合物と酵素を予め結合させた後に、キナーゼ反応を開始する。次いで、キナーゼ反応は、アッセイ溶液中のアデノシン三リン酸溶液(ATP、16.7μM:アッセイ容量5μL中の終濃度は10μMである)および基質(2.27μg/mL、アッセイ容量5μL中の終濃度は1.36μg/mL〜30nMである)の溶液3μLを添加することにより開始され、得られた混合物を30分の反応時間の間22℃でインキュベートする。このアッセイでのc−Metの濃度は、酵素ロットの活性に応じて調整され、直線の範囲でアッセイするよう適宜選択され;典型的な酵素濃度は、約0.03nM(5μLのアッセイ容量での終濃度)の範囲である。この反応は、EDTA水溶液[50mMのHEPES/NaOH中の100mMのEDTA、0.2%(w/v)ウシ血清アルブミン、pH 7.5]中のHTRF検出試薬[40nM のストレプトアビジン-XLentおよび2.4nMのPT66-Eu-キレート、ユウロピウム-キレート標識した抗ホスホチロシン抗体(パーキンエルマー)]の溶液5μLを添加することにより停止される。
【0168】
得られる混合物を、22℃で1時間インキュベートし、ビオチン化したリン酸化ペプチドとストレプトアビジン−XLentおよびPT66-Eu−キレートとを結合させる。その後、リン酸化された基質の量を、PT66-Eu-キレートからストレプトアビジン-XLentへの共鳴エネルギー移動を測定することにより評価する。従って、350nmでの励起後に620nmと665nmとの蛍光放出を、HTRFリーダー、例えばRubystar(BMG Labtechnologies、Offenburg、Germany)またはViewlux (Perkin-Elmer)で測定する。665nmの発光と622nmの発光の比を、リン酸化された基質の量の評価基準とする。データは規準化する(阻害剤なしでの酵素活性 = 0%阻害;酵素なしでの、他の全てのアッセイ成分 = 100%阻害)。通常、試験化合物は、同じマイクロタイタープレート上で1nM〜20μMの範囲で10の異なる濃度(20μM、6.7μM、2.2μM、0.74μM、0.25μM、82nM、27nM、9.2nM、3.1nMおよび1nM;希釈系列は100倍濃縮したストック溶液レベルで1:3の連続希釈によりアッセイ前に調製される)に関し、各濃度についてデュプリケート(二重)で試験され、IC50値は自作(inhouse)のソフトウェアを用いて4パラメータ・フィッティングにより算出する。
【0169】
このアッセイで試験したところ、本発明の化合物は10μM未満、好ましくは1μM未満のIC50値でc-Metチロシンキナーゼ活性を阻害する能力を実際に示した。
【0170】
幾つかの代表的なIC50値を以下の表に示す:
【表5】

【0171】
ホスフォ−c−Metアッセイ:
これは、細胞ベースのELISA様アッセイであり[Meso Scale Discovery (MSD), Gaithersburg, MD, USA] 、成長因子刺激を行わずMKN-45腫瘍細胞(胃癌、ATCCから購入される)を用いる。細胞を、1日目に96ウェルプレート中、完全成長培地にプレーティングする(10 000 細胞/ウェル)。2日目、無血清培地中で2時間薬物処理した後、細胞を洗浄し、次いで溶解し(MSD推奨の溶解緩衝液を60μl/ウェル用いる)、−80℃で凍結する。また2日目に、MSDホスフォ−Metプレート上の非特異的な抗体−結合部位をMSDブロッキング溶液Aで4℃にて一晩ブロックする。3日目に、凍結した溶解液を氷上で融解させ、溶解液25μlをMSDホスフォMetプレートに移し、Tris緩衝塩溶液+0.05% Tween20(TBST)で1回洗浄した後に1時間シェイクする。未結合のタンパク質を除去した後、抗体希釈緩衝液(MSDプロトコルに基づく)中のMSDのSulfa-TAG抗−Met抗体を終濃度5nMでプレートに加え、1時間シェイクする。次いで、プレートをTBST緩衝液で3回洗浄し、その後、1×MSDリード緩衝液を加える。次いで、そのプレートをMSDディスカバリー・ワークステーション(Discovery Workstation)機で読み込む。10μMのリファレンス化合物(最小のシグナル)および薬物処理していないDMSOウェル(最大のシグナル)を含む、生データを、IC50値決定のためにアナライズ5プログラムに入力する。
【0172】
細胞のホスフォ−c−Metアッセイ:
384ウェルのマイクロタイタープレートに播種されたヒト胃腺癌細胞(MKN45、ATCCから購入される)(9000細胞/ウェル)を、25μlの完全成長培地中、5% CO2にて37℃で24時間インキュベートする。2日目に、0.1%FCSを含む低血清培地中で2時間薬物処理した後に、細胞を洗浄し溶解する。溶解液を、c−Met捕捉抗体(capture antibody)[Mesoscale Discovery (MSD), Gaithersburg, MD, USAから購入される]を予め結合させた、BSAブロックしたプレートに移し、Tris緩衝塩溶液+0.05% Tween 20(TBST)を用いて1回洗浄した後に、1時間シェイクする。MSDプロトコルに従い、スルファ−TAG抗−ホスフォ−c−Met検出抗体を、抗体希釈緩衝液中、終濃度5nMでプレートに加え、室温で1時間シェイクする。Tris緩衝液でウェルを洗浄した後、1×リーディング緩衝液を加え、プレートをSector Imager 6000(Mesoscaleから購入される)で測定する。IC50値はMarquardt-Levenberg-フィットを用いて用量応答曲線から算出する。
【0173】
インビトロ・腫瘍細胞増殖アッセイ:
本発明化合物を試験するために用いた付着性の腫瘍細胞増殖アッセイは、Promegaにより開発されたCell Titre-Glo と称されるリードアウト[B.A. Cunningham,「A Growing Issue: Cell Proliferation Assays. Modern kits ease quantification of cell growth」、The Scientist 2001, 15 (13), 26;S.P. Crouch et al., 「The use of ATP bioluminescence as a measure of cell proliferation and cytotoxicity」、Journal of Immunological Methods 1993, 160, 81-88]を含む。
【0174】
H460細胞(肺癌、ATCCから購入される)は、10%ウシ胎児血清を含む完全培地中、3000細胞/ウェルにて96ウェル・プレートにプレーティングし、37℃で24時間インキュベートする。プレーティング後24時間に、試験化合物を、連続希釈で0.2%終濃度のDMSO中10nM〜20μMの終濃度範囲で加える。試験化合物の添加後、細胞を完全増殖培地中、37℃で72時間インキュベートする。4日目に、Promega Cell Titre-Glo Luminescent(登録商標)アッセイキットを用いて、細胞を溶解し、100μlの基質/緩衝混合液を各ウェルに加えて混合し、室温で8分間インキュベートする。試料を、ルミノメーターで読み込み、各ウェル中の生細胞の数に相当する、各ウェルの細胞溶解物中に存在するATP量を各ウェル測定する。インキュベート24時間で読み出した値を、0日として減算する。IC50値の決定のために、直線回帰分析を用いて、このアッセイ形式を用いた細胞増殖を50%阻害する結果となる薬物濃度を決定することができる。このプロトコルは、目的とする種々の細胞系に適用することができ、それは、限定するものではないが、CAKI-1、MNK-45、GTL-16、HCC2998、K562、H441、K812、MEG01、SUP15およびHCT116を含む。
【0175】
本発明を具体的な実施形態に関して開示したが、本発明の意図および範囲を逸脱することなく、本発明の他の実施形態および変法が考案され得ることは当業者には明らかである。特許請求の範囲が、そのような全ての実施形態および均等物を含むように構成することを意図する。
【0176】
C.医薬組成物に関する実施例
本発明に係る医薬組成物は、以下のように例示し得る:
滅菌静脈内注射液:
所望の本発明の化合物の5mg/mlの溶液は、注射可能な無菌水を用いて製造でき、pHは必要に応じて調整される。溶液は、無菌の5%デキストロースを用いて1〜2mg/mlまで投与のために希釈されて、約60分にわたって静脈内(i.v.)点滴として投与される。
【0177】
静脈内(i.v.)投与のための凍結乾燥粉剤:
滅菌調製物は、(i)100〜1000mgの凍結乾燥粉末としての本発明の所望の化合物、(ii)32〜327mg/mlのクエン酸ナトリウム、および(iii)300〜3000mgのデキストラン40を用いて調製することができる。この製剤は、滅菌の注射可能な塩または5%デキストロースを用いて10〜20mg/mlの濃度に再構成し、さらに塩または5%デキストロースを用いて希釈し、0.2〜0.4mg/mlの濃度にして、静脈内ボーラスとしてか、もしくは15〜60分の静脈点滴により投与される。
【0178】
筋肉内懸濁液:
以下の溶液または懸濁液を筋肉内注射のために調製することができる:
本発明の所望の水不溶性化合物50mg/ml;5mg/mlのナトリウムカルボキシメチルセルロース;4mg/mLのTWEEN80;9mg/mlの塩化ナトリウム;9mg/mlのベンジルアルコール。
【0179】
ハードシェル・カプセル剤:
多数の単位カプセル剤は、標準的な2ピースのハードゼラチンカプセルの各々に100mgの粉末の活性成分、150mgのラクトース、50mgのセルロースおよび6mgのステアリン酸マグネシウムを充填することにより調製される。
【0180】
ソフトゼラチン・カプセル剤:
大豆油、綿実油またはオリーブ油のような消化可能な油中の活性成分の混合物を調製し、容積式ポンプにより融解ゼラチンに注入し、100mgの活性成分を含有するソフトゼラチン・カプセル剤を形成する。そのカプセル剤を洗浄し乾燥させる。活性成分を、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびソルビトールの混合液中に溶解し、水混和性医薬混合物を製造することができる。
【0181】
錠剤:
大多数の錠剤は、その用量単位が100mgの活性成分、0.2mgのコロイド状二酸化ケイ素、5mgのステアリン酸マグネシウム、275mgの微結晶性セルロース、11mgの澱粉および98.8mgのラクトースとなるよう、従来の手順により製造される。適当な水性および非水性コーティングを適用して嗜好性を増大させ、エレガンスと安定性を向上させ、又は吸収を遅延させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、水和物および/または溶媒和物:
【化1】

(I)
[式中、
は水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルカルボニル、ベンジルまたはベンゾイルであり、ここで、前記ベンジルおよびベンゾイル基のフェニル部分はそれぞれ、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、エチル、メトキシ、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群より独立して選択される1個または2個の残基で置換されていてもよく、
はシアノであり、
は3個までのフッ素原子で置換されていてもよい(C−C)−アルキルであるか、または、
とRは連結して、それらが結合している炭素原子と一緒になって式
【化2】

(式中、
nは1または2の整数であり、
Aは−CH−、−O−または−NR−であり、ここで、Rは、水素もしくは(C−C)−アルキルであり、
Eは−O−、−NH−または−NCH−であり、および、
は水素またはメチルである。)
の縮合環を形成してよく、
は水素、(C−C)−アルキルまたはシクロプロピルであり、
は3個までのフッ素原子により置換されていてもよい(C−C)−アルキルであるか、または、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、エチル、メトキシ、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群より独立して選択される1個または2個の残基でそれぞれ置換されていてもよいフェニルもしくはピリジルであるか、または、
とRは連結し、それらが結合している窒素原子および炭素原子と一緒になって式
【化3】

(式中、Gは−CH−または−O−である。)
の縮合環を形成する。]。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、水和物および/または溶媒和物であって、
は水素、メチル、アセチルまたはベンゾイルであり、
はシアノであり、
はメチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルあるか、または、
とRは連結し、それらが結合する炭素原子と一緒になって式
【化4】

[式中、Rは、水素またはメチルである。]
の縮合環を形成するか、
は水素またはメチルであり、
は3個までのフッ素原子で置換されていてもよい(C−C)−アルキルであるか、または、フルオロ、クロロ、メチルおよびトリフルオロメチルからなる群より独立して選択される1個または2個の残基で置換されていてもよいフェニルであるか、または、
とRは連結し、それらが結合する窒素原子および炭素原子と一緒になって式
【化5】

の縮合モルホリン環を形成する。
【請求項3】
請求項1または2に記載の式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、水和物および/または溶媒和物であって、
は水素またはベンゾイルであり、
はシアノであり、
はメチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルであるか、または、
とRは連結し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式
【化6】

の縮合ラクトン環を形成するか、
は水素であり、および、
はメチル、ジフルオロメチルもしくはトリフルオロメチルであるか、またはフルオロもしくはクロロで置換されていてもよいフェニルである。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の式(I)で示される化合物を製造する方法であって、
式中、Rは水素であり、かつRは水素、(C−C)−アルキルカルボニルまたは置換されていてもよいベンゾイルであり、
式(II)
【化7】

(II)
[式中、
1Aは請求項1〜3のRと同定義の(C−C)−アルキルカルボニルまたは置換されていてもよいベンゾイルである。]
で示されるフロピリジニルアルデヒトを、

[A]式(III)
【化8】

(III)
[式中、Rは請求項1〜3と同意義である]
で示されるシアノケトンもしくはそのナトリウムエノラートと、酸、酸/塩基の組合せおよび/もしくは脱水剤の存在下で反応させ、式(IV)
【化9】

(IV)
[式中、R1AおよびRは、上記と同意義である]
で示される化合物を得て、次いで式(V)
【化10】

(V)
[式中、RおよびRは、請求項1〜3と同意義である。]
で示されるエナミンか、もしくは、式(VI)
【化11】

(VI)
[式中、RおよびRは、請求項1〜3と同意義である。]
で示されるケトンと、アンモニア供給源、例えば酢酸アンモニウムと組合せて縮合させ、式(I−A)
【化12】

(I−A)
[式中、R1A、R、RおよびRは、上記と同意義である。]
で示される化合物を生成するか、あるいは、

[B]式(VI)
【化13】

(VI)
[式中、RおよびRは、請求項1〜3と同意義である。]
で示されるケトンと、所定の酸、塩基および/または脱水剤の存在下で反応させ、式(VII)
【化14】

(VII)
[式中、R1A、RおよびRは、上記と同意義である。]
で示される化合物を得て、次いで式(VIII)
【化15】

(VIII)
[式中、Rは請求項1〜3と同意義である。]
で示されるエナミノニトリルと、所定の酸の存在下で縮合させ、式(I−A)
【化16】

(I−A)
[式中、R1A、R、RおよびRは、上記と同意義である。]
で示される化合物をまた生成し、

続いて、所望によりアシル基R1Aを加水分解し、式(I−B)
【化17】

(I−B)
[式中、R、RおよびRは、上記と同意義である。]
で示されるアミン化合物を得て、ならびに、
続いて、所望により要すれば(i)化合物(I−A)および(I−B)を、好ましくはクロマトグラフ法を用いて分離し、それら各々のエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーを得る、および/または、(ii)化合物(I−A)および(I−B)を、その対応する溶媒および/または酸もしくは塩基で処理し、それら各々の水和物、溶媒和物、塩および/または前記塩の水和物もしくは溶媒和物に変換することを特徴とする、方法。
【請求項5】
疾病の処置または予防のための、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
細胞増殖性疾患の処置または予防のための医薬組成物の製造のための、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項7】
細胞増殖性疾患が癌である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容される塩、水和物および/または溶媒和物、および医薬上許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
1つ以上のさらなる治療剤を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
さらなる治療剤が抗腫瘍剤である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
細胞増殖性疾患の処置または予防のための、請求項8〜10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
哺乳動物の細胞増殖性疾患を処置または予防する方法であって、その必要のある哺乳動物に、治療上有効量の請求項1〜3のいずれかに記載の1つ以上の化合物、または請求項8〜10のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
細胞増殖性疾患が癌である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
癌が、乳癌、呼吸器系癌、脳腫瘍、生殖器官の癌、消化管癌、尿路の癌、眼の癌、肝臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、または固形癌の遠隔転移である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物または請求項8〜10のいずれかに記載の医薬組成物が、外科手術または放射線治療と併せて投与される、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2013−511484(P2013−511484A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539293(P2012−539293)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067506
【国際公開番号】WO2011/061157
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(507113188)バイエル・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】