説明

フロントフェンダー内部のパネル構造

【課題】強度および剛性を損なわずに溶接箇所を削減し、生産性を向上可能であるとともに、より大容量のウインドウォッシャータンクを容易に取付けできるフロントフェンダー内部のパネル構造を提供する。
【解決手段】ダッシュサイドパネル(5)の前側に接合されるダッシュサイドフロントパネル(7)の上縁部(71)のエンジン室(2)側に、サスペンションアッパーブラケット(8)の縁部(81)が重合されるとともに、前記上縁部のフェンダー(10)側に、カウルサイドパネル(6)の下縁部(61)が重合され、前記3枚のパネル(6,7,8)の重合部(61,71,81)がスポット溶接(w)により一体に接合されている。また、前記重合部を跨ぎ、前記パネル(61,71)と前記フロントフェンダー(10)との間に画成された空間(100)にウインドウォッシャータンク(20)が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントフェンダー内部のパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員室の前方にエンジン室を備えた自動車では、エンジン室と乗員室とがダッシュパネルによって画成され、ダッシュパネルの上部には、フロントウインドウ開口の下縁を画成すべく車幅方向に延在するカウルトップパネルとその前方のカウルアッパーパネルが接合されており、これらカウルトップパネルおよびカウルアッパーパネルの左右両側にカウルサイドパネルが接合されることでカウル部を構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
カウルサイドパネルは、フロントピラーの下端付近から前方に延び、エンジン室側壁の最上部を構成している。図4は、この付近の車幅方向立断面を示しており、図において、カウルサイドパネル106の下端にはフェンダー110側に折曲されたフランジ161が形成され、その下方に配置されるダッシュサイドフロントパネル107の上端にも同様にフェンダー110側に折曲されたフランジ171が形成されており、これらのフランジ161,171を重ねた状態で、車両前後方向に沿った複数箇所でスポット溶接w1することにより、カウルサイドパネル106の下側にダッシュサイドフロントパネル107が接合されている。
【0004】
さらに、ダッシュサイドフロントパネル107の上記スポット溶接w1部の下方172には、サスペンションアッパーブラケット108の縁部182が車両前後方向に沿った複数箇所でスポット溶接w2されている。サスペンションアッパーブラケット108は、フェンダーエプロン109とダッシュサイドフロントパネル107とで画成される筒状空間190の上部を閉鎖するように配設され、前記スポット溶接w2部に対してエンジン室102側に位置した取付け部180の下面に、ストラットアセンブリ118の上端部が取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−205863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記カウル部構造では、互いに近接しかつ角度の異なる2面で、それぞれ複数箇所のスポット溶接w1,w2を行う必要がある。また、カウルサイドパネル106およびダッシュサイドフロントパネル107のフェンダー110側にフランジ161,171が突出しており、フェンダー110内の空間100の利用効率が悪いうえ、側方へのオーバーハングが大きく振動し易い問題もあった。さらに、上記空間100にウインドウォッシャータンクを挿入して設置する際に、フランジ161,171を避けて取付ける必要があり、取付け時の作業性が悪いという問題もあった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、強度および剛性を損なわずに溶接箇所を削減し、生産性を向上可能であるとともに、より大容量のウインドウォッシャータンクを容易に取付けできるフロントフェンダー内部のパネル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明は、自動車のフロントフェンダー内部のパネル構造において、ダッシュサイドパネルの前側に接合されるダッシュサイドフロントパネル(7)の上縁部(71)のエンジン室側に、サスペンションアッパーブラケット(8)の縁部(81)が重合されるとともに、前記上縁部のフェンダー側に、カウルサイドパネル(6)の下縁部(61)が重合され、前記3枚のパネル(6,7,8)の重合部(61,71,81)がスポット溶接により一体に接合されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の好適な態様では、前記ダッシュサイドフロントパネル上縁部と前記カウルサイドパネル下縁部との前記重合部を跨ぎ、前記各パネル(61,71)と前記フロントフェンダー(10)との間に画成された空間(100)に、ウインドウォッシャータンク(20)が配設されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るフードロックブレースは、上述の通り構成されているので、フェンダー側に突出したフランジと、該フランジにおける上下方向の複数箇所のスポット溶接が不要となり、生産性を向上可能であるとともに、3枚のパネルの重合部がスポット溶接で一体に接合されることで、板厚増加と同様の補強効果が得られ、強度および剛性が損なわれることがない。
【0011】
また、カウルサイドパネルおよびダッシュサイドフロントパネルからフェンダー側へのフランジの張出がなくなり、拡張されたフロントフェンダー内部の収容空間の利用効率が向上し、より大容量のウインドウォッシャータンクを設置可能になるとともに、取付け時の作業性が改善される。また、側方へのオーバーハングが少なくなることでウインドウォッシャータンクが振動し難くなり、安定的に支持される利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明実施形態のパネル構造を備えた自動車の車体前部を示す斜視図である。
【図2】図1のA方向矢視図である。
【図3】本発明実施形態のフロントフェンダー内部のパネル構造を示す車幅方向立断面図である。
【図4】従来のフロントフェンダー内部のパネル構造を示す車幅方向立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1おいて、車両1は、車体前部にエンジン室2を備えたフロントエンジン自動車であり、エンジン室2と乗員室3とがダッシュパネル4によって画成されている。ダッシュパネル4の上部には、フロントウインドウ30の下縁を画成すべく車幅方向に延在するカウルトップパネル12とその前方のカウルアッパーパネル11が接合されており、これらカウルトップパネル12およびカウルアッパーパネル11の左右両側にカウルサイドパネル6が接合され、その下側にダッシュサイドフロントパネル7が接合されている。左右のカウルサイドパネル6,6の前端部にはランプサポートメンバー13,13の後端が接合され、さらに、左右のランプサポートメンバー13,13の前端はフードロックサポートメンバー14で結合されている。
【0014】
一方、ダッシュパネル4の左右両側には、ダッシュサイドパネル5が接合されており、ダッシュサイドフロントパネル7は、ダッシュサイドパネル5の前側に延設されている。ダッシュサイドフロントパネル7の前後端部のエンジン室2側はフェンダーエプロン9に接合され、それらの内側に、ストラットアセンブリ18を収容する筒状空間90が画成されており(図3)、この筒状空間90の上部を閉鎖するようにサスペンションアッパーブラケット8が接合されている。
【0015】
図3は、サスペンションアッパーブラケット8の位置における車幅方向の立断面を示しており、図示のように、本発明に係るパネル構造では、ダッシュサイドフロントパネル7の上縁部71のエンジン室2側に、サスペンションアッパーブラケット8の縁部81が重合される一方、前記上縁部71のフェンダー10側に、カウルサイドパネル6の下縁部61が重合され、これら3枚のパネル6,7,8の重合部(61,71,81)が、車両前後方向に沿った複数箇所のスポット溶接wにより一体に接合されている。
【0016】
上記パネル接合構造により、カウルサイドパネル6およびダッシュサイドフロントパネル7のフェンダー10側の側面がほぼ平坦になり、フェンダー10の内面との間に、ウインドウォッシャータンク20を収容するための広い空間100が確保されている。以下、ウインドウォッシャータンク20の取付けについて、図2および図3を参照しながら説明する。
【0017】
図2に示すように、カウルサイドパネル6には、ウインドウォッシャータンク20の注入口21を挿通させる透孔60が開口され、該透孔60に隣接して、ウインドウォッシャータンク20をネジなどの締結部材22,23で固定するための孔を含む固定部62が配設されている。一方、ダッシュサイドフロントパネル7の下端部には、前記固定部62に対して車両前後方向の前方および後方に位置した2箇所の固定片72,72が延設され、各固定片72,72には、それぞれ、ウインドウォッシャータンク20の脚部27を引っ掛けて固定するための孔が設けられている。
【0018】
ウインドウォッシャータンク20の取付けに際しては、ダッシュサイドフロントパネル7とフェンダー10の内面との間の空間100に、前方または前下方(場合によっては下方)から、ウインドウォッシャータンク20を挿入し、注入口21を透孔60に挿通させた後に、脚部27,27を各固定片72,72の孔に引っ掛け、ウインドウォッシャータンク20の固定部26に予め装着したナット23に、固定部62の孔を通じてエンジン室2側から締結部材22を螺合締結する。この際、図4に示したようなフランジ161,171の張出が無いので、空間100内にウインドウォッシャータンク20を容易に挿入し取付け可能であるとともに、ウインドウォッシャータンク20が、カウルサイドパネル6およびダッシュサイドフロントパネル7に近い位置で安定的に支持される利点もある。
【0019】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0020】
1 車両
2 エンジン室
3 乗員室
4 ダッシュパネル
5 ダッシュサイドパネル
6 カウルサイドパネル
7 ダッシュサイドフロントパネル
8 サスペンションアッパーブラケット
9 フェンダーエプロン
10 フェンダー
11 カウルアッパーパネル
12 カウルトップパネル
20 ウインドウォッシャータンク
61 下縁部
71 上縁部
81 縁部
w スポット溶接


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントフェンダー内部のパネル構造において、ダッシュサイドパネルの前側に接合されるダッシュサイドフロントパネルの上縁部のエンジン室側に、サスペンションアッパーブラケットの縁部が重合されるとともに、前記上縁部のフェンダー側に、カウルサイドパネルの下縁部が重合され、前記3枚のパネルの重合部がスポット溶接により一体に接合されていることを特徴とするフロントフェンダー内部のパネル構造。
【請求項2】
前記ダッシュサイドフロントパネル上縁部と前記カウルサイドパネル下縁部との前記重合部を跨ぎ、前記各パネルと前記フロントフェンダーとの間に画成された空間に、ウインドウォッシャータンクが配設されていることを特徴とする請求項1に記載のフロントフェンダー内部のパネル構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228639(P2010−228639A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79497(P2009−79497)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】