説明

フロントフォーク

【課題】 二輪車に装備された状態でフォーク本体内に所定の気圧の気体が封入されているか否かを外部から視認して確認できるようにする。
【解決手段】 アウターチューブ1にインナーチューブ2が出没可能に挿通されると共に内部に封入の気体で伸長方向に附勢されるフォーク本体を有してなるフロントフォークにおいて、二輪車の前輪側に装備された状態で無負荷状態にあるフォーク本体におけるアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態をフォーク本体の外部から視認可能にする視認手段を有し、この視認手段がアウターチューブ1あるいはインナーチューブ2のいずれか一方に設けられる基準要素Pと、この基準要素Pの照合位置を特定させる表示要素Mとを有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフォークに関し、特に、二輪車の前輪を懸架してエアバネとして機能するフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の前輪を懸架してエアバネとして機能するフロントフォークとしては、これまでに種々の提案があるが、近年のフロントフォークの中には、たとえば、特許文献1に開示されているように、アウターチューブとインナーチューブとからなるフォーク本体内に懸架バネに代えて所定圧の気体を封入してバネ力を得るものがある。
【0003】
すなわち、この特許文献1に開示のフロントフォークにあっては、フォーク本体が最伸長状態にあるときに所定圧の気体を封入し、車体を支持して収縮するとき、気体が圧縮されることで内部圧を上昇させ、エアバネとして機能して、二輪車における車高維持を可能にする。
【0004】
そして、このフロントフォークにあっては、フォーク本体内に収装のダンパがフォーク本体の伸縮作動に同期して伸縮作動するときに所定の減衰作用を具現化するが、フォーク本体が最伸長状態にあるときにダンパも最伸長状態にあり、フォーク本体内の気圧が大気圧以上とされているから、ダンパが最伸長状態から収縮作動を開始する当初から設定通りの減衰作用を具現化し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−127327号公報(要約,特許請求の範囲 請求項1,明細書中の段落0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したフロントフォークにあっては、フォーク本体内に所定圧となる気体が封入されることで、二輪車における車高維持を可能にし得る点で、基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0007】
すなわち、フォーク本体内に所定圧の気体を封入して二輪車に装備されるフロントフォークにあっては、フォーク本体内に封入の気体が所定の気圧に維持されていない場合には、バネ力が不足して、所定の車高維持を具現化できなくなり、また、二輪車における乗り心地を悪くする。
【0008】
そこで、たとえば、二輪車の走行前には、フォーク本体内に封入されている気体が最適な気圧状態にあるか否かを確認することが必要になるが、フロントフォークが二輪車に装備された状態では、フォーク本体の伸縮状態が明確ではなく、その結果、フロントフォークが二輪車に装備された状態でフォーク本体内に封入されている気体の気圧状態を確認することには意味がない。
【0009】
したがって、フロントフォークを二輪車の前輪側から外し、あるいは、前輪を浮かせていわゆる無負荷状態で、つまり、フォーク本体が最伸長状態にある状態で圧力ゲージを利用するなどしてフォーク本体内の気圧を測定することが必須になる。
【0010】
その結果、フォーク本体内に懸架バネに代えて所定圧の気体を封入するフロントフォークにあっては、フォーク本体内に封入されている気体の気圧が最適であるか否かを確認するについて、その作業が面倒になる不具合がある。
【0011】
この発明は、上記した現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、二輪車に装備された状態でフォーク本体内に所定圧の気体が封入されているか否かを外部から視認して確認きるようにし、その利便性を向上させたフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明によるフロントフォークの構成を、基本的には、アウターチューブにインナーチューブが出没可能に挿通されると共に内部に封入の気体で伸長方向に附勢されるフォーク本体を有してなるフロントフォークにおいて、二輪車の前輪側に装備された状態で無負荷状態にあるフォーク本体におけるアウターチューブに対するインナーチューブの出没状態をフォーク本体の外部から視認可能にする視認手段を有し、この視認手段がアウターチューブあるいはインナーチューブのいずれか一方に設けられる基準要素と、この基準要素の照合位置を特定させる表示要素とを有してなるとする。
【0013】
そして、好ましくは、視認手段において、基準要素で照合される表示要素がアウターチューブに対するインナーチューブの出没状態の適正状態および過大状態あるいは過小状態を区別させる構成を有してなるとする。
【発明の効果】
【0014】
それゆえ、この発明にあっては、スタンドから下ろされた二輪車にライダーが搭乗しないなどして徒な荷重が負荷されずして静止する状態におかれるとき、フォーク本体が二輪車に装備された状態で無負荷状態になるから、この無負荷状態にあるフォーク本体における伸縮状態、すなわち、アウターチューブに対するインナーチューブの出没状態を視認手段で視認できる。
【0015】
このとき、視認手段がアウターチューブあるいはインナーチューブのいずれか一方に設けられる基準要素と、この基準要素の照合位置を特定させる表示要素とを有してなるから、基準要素が照合する表示要素から、フォーク本体におけるアウターチューブに対するインナーチューブの出没状態を確認できる。
【0016】
そして、視認手段における表示要素が適正状態および過大状態あるいは過小状態を区別させる構成を有してなるとき、フォーク本体の伸縮状態、すなわち、フォーク本体内に封入されている気体の気圧状態を的確に確認できる。
【0017】
その結果、この発明によれば、二輪車の前輪側からフロントフォークを外し、いわゆる無負荷状態にあるフォーク本体に対して圧力ゲージを利用するなどして気圧を測定することを要せずして、フォーク本体に封入されている気体の気圧が最適な状態にあるか否かを判断でき、確認作業が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態によるフロントフォークを部分的に示す正面図である。
【図2】この発明の他の実施形態によるフロントフォークを図1と同様に示す図である。
【図3】この発明のさらに実施形態によるフロントフォークを図1と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるフロントフォークは、図示するところでは、二輪車の前輪側に装備されて前輪を懸架するエアバネとして機能する。
【0020】
ちなみに、フロントフォークを二輪車の前輪側に装備するについては、図示しないが、左右となる二本のフロントフォークの上端側部をあらかじめブリッジ機構で一体化し、各フロントフォークにおけるインナーチューブ2(図1参照)の下端部を前輪の車軸に連結させて前輪を挟むようにして懸架する。
【0021】
そして、ブリッジ機構は、図示しないが、フロントフォークを構成するアウターチューブ1(図1参照)における上端部の上方側部に連結されるアッパーブラケットと、下方側部に連結されるアンダーブラケットとを有し、それぞれが両端部に形成の取り付け孔にアウターチューブ1における上端部を挿通させて一体的に把持する。
【0022】
また、このブリッジ機構は、同じく図示しないが、アッパーブラケットとアンダーブラケットとを一体的に連結する一本のステアリングシャフトを両者の中央に有し、このステアリングシャフトが二輪車における車体の先端部を構成するヘッドパイプ内に回動可能に導通され、これによって、ハンドル操作による二本のフロントフォークを介しての前輪における左右方向への転舵が可能になる。
【0023】
ところで、この発明によるフロントフォークは、図1に示すところにあって、車体側チューブとされるアウターチューブ1内に車輪側チューブとされるインナーチューブ2がテレスコピック型に出没可能に挿通されて伸縮可能とされるフォーク本体(符示せず)を有し、このフォーク本体が内部に封入される気体によってアウターチューブ1内からインナーチューブ2を突出させるように伸長方向に附勢される。
【0024】
そして、このフォーク本体内に封入される気体の気圧は、フォーク本体が最伸長状態にあるときに、大気圧以上となるとして、フォーク本体が最伸長状態から反転して収縮作動を開始する当初から、たとえば、ダンパ内の減衰部による減衰作用がいわゆる遊びなくして設定通りに具現化されるように配慮されている。
【0025】
もっとも、フォーク本体内に封入される気体の気圧については、フロントフォークが二輪車に装備される状況では、わずかではあるが収縮状態になることで封入されている気体の気圧が大気圧以上になるから、その意味では、最伸長状態時に大気圧以上になっていなくても良いと言い得る。
【0026】
また、フォーク本体を伸長方向に附勢するについて、図示するところでは、封入される気体の気圧によるとしたが、この発明が意図するところからすると、フォーク本体が懸架バネを収装していて、この懸架バネとの協働でフォーク本体を伸長方向に附勢するとしても良い。
【0027】
なお、図示するフロントフォークにあっては、フォーク本体内に封入される気体の気圧によって伸長方向に附勢されるから、たとえば、フォーク本体内に内装される懸架バネによって伸長方向に附勢される場合に比較して、懸架バネを有しない分フロントフォークにおける全体重量の軽減化に寄与する。
【0028】
一方、図示するフォーク本体にあっては、アウターチューブ1の図中で下端部となる開口端部がシールケース部1aとされ、このシールケース部1aは、内側に下方の軸受(図示せず),オイルシール(図示せず)およびダストシール11を有する。
【0029】
ちなみに、下方の軸受は、アウターチューブ1に対するインナーチューブ2の摺動性を保障すると共に、図示しない上方の軸受と協働して、アウターチューブ1とインナーチューブ2との間における同心性を保障する。
【0030】
また、オイルシールは、アウターチューブ1とインナーチューブ2との間に上下に離間配置される上方の軸受と下方の軸受とで画成されて出現する潤滑隙間にある潤滑油が外部に漏れ出ることを阻止してフォーク本体内を密封状態に維持する。
【0031】
そして、ダストシール11は、インナーチューブ2の外周に付着する微小な砂粒などのダストを掻き落し、このダストがオイルシール側に侵入することを阻止して、オイルシールにおけるシール面の傷付きを回避させてオイルシールにおけるシール機能を保障する。
【0032】
そしてまた、図示するシールケース部1aにあっては、後述するプロテクタ3のアウターチューブ1における開口端部の外周への干渉を阻止するCピン21が巻装されている。
【0033】
さらに、アウターチューブ1内にインナーチューブ2が大きいストロークで没入するフォーク本体の最収縮作動時には、それ以上の収縮を阻止するべく、図示しないが、インナーチューブ2の上端がアウターチューブ1側に当接される設定としても良く、また、詳しくは図示しないが、オイルロック機構で最収縮作動時の底突きが阻止されるとしても良い。
【0034】
そして、フォーク本体が最伸長するときには、図示しないが、多くの場合に、フォーク本体内に有するダンパが収装する伸び切りバネが最収縮し、この伸び切りバネの最収縮でいわゆる衝撃吸収が実現される。
【0035】
ところで、このフォーク本体にあっては、オイルシールの配設で密封空間となる内方をリザーバ(符示せず)に設定し、このリザーバは、所定量の作動油を収容すると共に、作動油の油面(図示せず)を境にして画成される気室(符示せず)を有し、この気室は、フォーク本体の伸縮作動時に同期して膨縮して、この膨縮の際に所定のエアバネ力を発生する。
【0036】
ちなみに、上記の気室は、アウターチューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材(図示せず)に配設される気体封入バルブ(図示せず)類を介して封入された内圧を高低し得るとしても良い。
【0037】
さらに、このフォーク本体は、作動油を収容してリザーバとされる内方にダンパ(図示せず)を有し、このダンパは、フォーク本体に連結されてフォーク本体の伸縮に同期して伸縮し、内蔵する減衰部で所定の減衰作用を具現化する。
【0038】
以上のように形成されたフロントフォークにあって、この発明では、二輪車に装備された状態で無負荷状態にあるフォーク本体におけるアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態をフォーク本体の外部から視認可能にする視認手段を有してなる。
【0039】
すなわち、最伸長状態にあるフォーク本体内に所定圧の気体を封入することで懸架バネに代えてエアバネ力を発揮させるフロントフォークにあっては、フォーク本体内に封入の気圧が当初の設定通りに維持されているか否かを確認することは、二輪車を走行させるライダーにとって二輪車の走行前の重要な点検事項となる。
【0040】
そこで、二輪車の走行前には、二輪車に装備された状態のフロントフォークにあって、フォーク本体内の気圧が当初の設定通りにあるか否かを点検をすることになるが、前記したように、これまでは、その点検作業が容易でない。
【0041】
このことから、この発明では、二輪車に装備された状態のフロントフォークにあって、フォーク本体内に封入の気圧が当初の設定通りにあるか否かを点検をする作業を容易して、ライダーの利便性を向上させるとするもので、そのため、視認手段を有してなる。
【0042】
そして、視認手段は、スタンドから下ろされた二輪車にライダーが搭乗しないなどして徒な荷重が負荷されずして静止する状態、つまり、1G状態におかれるとき、フォーク本体が二輪車に装備された状態のままで無負荷状態になるから、この無負荷状態にあるフォーク本体における基準となる伸縮状態、すなわち、アウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態を視認させる。
【0043】
そのため、この発明にあって、視認手段は、図1に示すところにあって、一方となるアウターチューブ1に設けられる基準要素Pと、他方となるインナーチューブ2に設けられて基準要素Pの照合位置を特定させる表示要素Mとを有してなる。
【0044】
ちなみに、この発明が意図するところからすると、上記と反対に、視認手段における基準要素Pが他方となるインナーチューブ2に設けられ、視認手段における表示要素Mが一方となるアウターチューブ1に設けられるとしても良いことはもちろんである。
【0045】
そして、視認手段にあって、表示要素Mは、図示するところでは、アウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の適正状態および過大状態あるいは過小状態を区別させる構成を有してなるのが好ましい。
【0046】
以下に、図1に示す視認手段について説明するが、図示するところにあって、基準要素Pは、アウターチューブ1に設けられ、表示要素Mは、インナーチューブ2側に保持されてアウターチューブ1に近隣して対向する任意の部材に設けられてなる。
【0047】
つまり、詳しくは、図示するところにあって、視認手段を構成する基準要素Pは、アウターチューブ1におけるインナーチューブ2を突出させる開口端部、すなわち、シールケース部1aの外周に巻装のCリング21とされると共に、表示要素Mは、インナーチューブ2側に保持されてアウターチューブ2の開口端部の外周に上端側部を近隣して対向させるプロテクタ3の上端側の外周面に印刷や刻印あるいはシールなどの任意の手段で表示されてなる。
【0048】
このとき、基準要素Pにしろ、表示要素Mにしろ、いわゆる目安となれば良いから、図示するところにあって、基準要素PがCリング21からなるのに代えて、シールケース部1aの外周に設けた点状部(図示せず)あるいは線状部(図示せず)からなるとしても良い。
【0049】
また、この基準要素Pとしての点状部あるいは線状部は、アウターチューブ1のシールケース部1aの外周にあって、シールケース部1aの外周色と、たとえば、補色関係となる異色部とされても良く、また、シールケース部1aの外周を凹凸などさせる変形部とされても良い。
【0050】
つまり、基準要素Pがシールケース部1aの外周色と異なる色を有する異色部からなるとしても良く、また、シールケース部1aの外周を凹凸などさせる変形部からなるとしても良い。
【0051】
また、この基準要素Pについては、上記したCリング21からなるのに代えて、シールケース部1aの端部、すなわち、開口端部の下端たる面部1b、あるいは、開口端部の外部に突出するダストシール11の下端11aとされても良い。
【0052】
一方、表示要素Mは、基準要素Pに照合されたとき、アウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態をより細かく視認させるように構成されるのが好ましく、そのため、図示するところでは、適正エリアSを表示することで、その上下をいわゆるNGエリア(符示せず)に設定している。
【0053】
つまり、基準要素Pが表示要素Mにおける適正エリアSに照合されるときには、フォーク本体、すなわち、フロントフォークに適正な気圧が封入されていると判断させ、そのまま、二輪車を走行させても良いと判断させる。
【0054】
それに対して、基準要素Pが表示要素Mにおける適正エリアSを外れる場合には、フロントフォークに適正な気圧が封入されていないと判断させるもので、たとえば、適正エリアSの上方のNGエリアを基準要素Pが照合する場合には、フォーク本体内に封入の気圧が高過ぎる状態にあり、逆に、適正エリアSの下方のNGエリアを基準要素Pが照合する場合には、フォーク本体内に封入の気圧が低過ぎる状態にあることを判断させることになる。
【0055】
このとき、上記の適正エリアSがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の適正状態を区別させる構成になり、上記の適正エリアSの上方となるNGエリアがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の過大状態を区別させる構成になり、上記の適正エリアSの下方となるNGエリアがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の過小状態を区別させる構成になる。
【0056】
そしてまた、上記の適正エリアSについても、さらにこれを細分化して、最適エリアS1,許容エリアS2,S3としても良く、この最適エリアS1および許容エリアS2,S3の細分化についても、適正エリアS自体を表示する場合と同様に、点状部,線状部,面部,異色部および変形部のいずれかあるいは併用で識別可能に表示されて良いこともちろんである。
【0057】
ちなみに、図示するところでは、表示要素Mを設けるプロテクタ3が上端側部の内周を基準要素Pが設けられるアウターチューブ1におけるシールケース部1aの外周に対向させているが、この発明における視認手段の機能するところからすると、プロテクタ3の上端側部の内周がアウターチューブ1におけるシールケース部1aの外周に対向せずして、たとえば、プロテクタ3の上端がアウターチューブ1の開口端部の下方にあって近隣する状態になるとしても、プロテクタ3の上端を表示要素Mに見立てることで、視認手段の活用が可能になる。
【0058】
図2は、この発明による視認手段の他の実施形態を具現化したフロントフォークを示すが、以下には、これについて説明する。
【0059】
すなわち、図2に示すところにあって、視認手段を構成する基準要素Pがアウターチューブ1に設けられると共に、視認手段を構成する表示要素Mがアウターチューブ1の開口端部(シールケース部1a)から外部に突出するインナーチューブ2に設けられるとする。
【0060】
すなわち、詳しくは、基準要素Pがアウターチューブ1におけるインナーチューブ2を突出させる開口端部の実質的に下端となるダストシール11における下端11aとされると共に、表示要素Mがアウターチューブ1の開口端部から外部たる下方に向けて突出するインナーチューブ2における突出部2aに設けられてなるとする。
【0061】
そして、この図2に示すところにあっても、表示要素Mは、基準要素Pに照合されたとき、アウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態をより細かく視認させるように構成されるのが好ましく、そのため、図示するところでは、適正エリアSを表示することで、その上下をいわゆるNGエリア(符示せず)に設定している。
【0062】
つまり、前記した図1に示す場合と同様に、基準要素Pが表示要素Mにおける適正エリアSに照合されるときには、フォーク本体、すなわち、フロントフォークに適正な気圧が封入されていると判断させ、そのまま、二輪車を走行させても良いと判断させる。
【0063】
そして、同じく前記した図1に示す場合と同様に、基準要素Pが表示要素Mにおける適正エリアSを外れる場合には、フロントフォークに適正な気圧が封入されていないと判断させるもので、たとえば、適正エリアSの上方のNGエリアを基準要素Pが照合する場合には、フォーク本体内に封入の気圧が高過ぎる状態にあり、逆に、適正エリアSの下方のNGエリアを基準要素Pが照合する場合には、フォーク本体内に封入の気圧が低過ぎる状態にあることを判断させることになる。
【0064】
このとき、上記の適正エリアSがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の適正状態を区別させる構成になり、上記の適正エリアSの上方となるNGエリアがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の過大状態を区別させる構成になり、上記の適正エリアSの下方となるNGエリアがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の過小状態を区別させる構成になる。
【0065】
ちなみに、上記の適正エリアSについては、これがさらに細分化されて、最適エリアS1,許容エリアS2,S3を設定して良く、この最適エリアS1および許容エリアS2,S3の細分化についても、適正エリアS自体を表示する場合と同様に、印刷で識別可能に表示される。
【0066】
図3は、この発明による視認手段のさらに他の実施形態を具現化したフロントフォークを示すが、以下には、これについて説明する。
【0067】
すなわち、図3に示すところにあって、視認手段を構成する基準要素Pがアウターチューブ1に保持されるブラケット類に設けられると共に、表示要素Mがインナーチューブ2に保持されてアウターチューブ1に保持のブラケット類に近隣する任意の部材に設けられてなるとする。
【0068】
すなわち、詳しくは、基準要素Pがアウターチューブ1に保持されるブレーキホースブラケット4に設けられるリング部4aとされると共に、表示要素Mがインナーチューブ2に保持されてアウターチューブ1に保持のブレーキホースブラケット4におけるリング部4aを挿通するブレーキホース5に設けられてなるとする。
【0069】
そして、この図3に示すところにあっても、表示要素Mは、基準要素Pに照合されたとき、アウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態をより細かく視認させるように構成されるのが好ましく、そのため、図示するところでは、ブレーキホース5に適正エリアSを表示することで、その上下をいわゆるNGエリア(符示せず)に設定している。
【0070】
つまり、前記した図1および図2に示す場合と同様に、基準要素Pが表示要素Mにおける適正エリアSに照合されるときには、フォーク本体、すなわち、フロントフォークに適正な気圧が封入されていると判断させ、そのまま、二輪車を走行させても良いと判断させる。
【0071】
そして、同じく前記した図1および図2に示す場合と同様に、基準要素Pが表示要素Mにおける適正エリアSを外れる場合には、フロントフォークに適正な気圧が封入されていないと判断させるもので、たとえば、適正エリアSの上方のNGエリアを基準要素Pが照合する場合には、フォーク本体内に封入の気圧が高過ぎる状態にあり、逆に、適正エリアSの下方のNGエリアを基準要素Pが照合する場合には、フォーク本体内に封入の気圧が低過ぎる状態にあることを判断させることになる。
【0072】
このとき、上記の適正エリアSがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の適正状態を区別させる構成になり、上記の適正エリアSの上方となるNGエリアがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の過大状態を区別させる構成になり、上記の適正エリアSの下方となるNGエリアがアウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態の過小状態を区別させる構成になる。
【0073】
そして、このブレーキホース5に設けられる適正エリアSについては、これがさらに細分化されて、最適エリアS1,許容エリアS2,S3を設定して良く、この最適エリアS1および許容エリアS2,S3の細分化について、適正エリアS自体を表示する場合と同様に、ブレーキホース5の外表面に対する塗料の塗布や印刷、さらには、テープの巻き付けなどで識別可能に表示される。
【0074】
以上のように、視認手段を有するフロントフォークにあっては、スタンドから下ろされた二輪車にライダーが搭乗しないなどして徒な荷重が負荷されずして静止する状態におかれるとき、フォーク本体が二輪車に装備された状態で無負荷状態になるから、この無負荷状態にあるフォーク本体における伸縮状態、すなわち、アウターチューブ1に対するインナーチューブ2の出没状態を視認手段で視認できる。
【0075】
それゆえ、この視認手段を設けずして、フォーク本体における伸縮状態を確認する場合、たとえば、前記したように、二輪車の前輪側からフロントフォークを外して、圧力ゲージを利用するなどして、フォーク本体内に封入されている気体の気圧を確認する場合に比較して、二輪車の前輪側からフロントフォークを外さなくても封入圧の確認が可能になる点で有利となる。
【0076】
そして、圧力ゲージを不要にするのはもちろんであるが、図示しないが、フォーク本体の外部に配設される外部センサたるストロークセンサで検知したり、フォーク本体内に配設される内部センサたる圧力センサで検知したりする場合に比較して、構成を簡単にして、フロントフォークにおける製品コストを高騰化させない点で有利となる。
【0077】
特に、基準要素Pがアウターチューブ1に設けられるのに対して、表示要素Mがアウターチューブ1以外の部位に設けられるとする場合、たとえば、図1および図3に示すように、プロテクタ3やブレーキホース5に設けられるとする場合には、視認手段を構成するためにいわゆる別部品を要することがなく、視認手段を安価に装備できる利点がある。
【0078】
ちなみに、図2に示す場合にあっても、塗料以外のいわゆる構成要素を不要にする利点があるのはもちろんだが、塗料がインナーチューブ2のアウターチューブ1に対する摺動性にいたずらな悪影響を与えず、また、容易に消滅しないものが選択されるのが肝要となる。
【0079】
ちなみに、この発明の具現化にあっては、フロントフォークの組立前に視認手段を構成する表示要素Mがプロテクタ3、インナーチューブ2における突出部2aあるいはブレーキホース5にあらかじめ表示されるのが好ましく、その場合、フロントフォークが最伸長状態にあると想定されて、視認手段を構成する表示要素Mの表示位置が決定される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
二輪車の前輪を懸架してエアバネとして機能するフロントフォークを二輪車から外し、いわゆる無負荷状態にあるフォーク本体に対して圧力ゲージを利用するなどして気圧を測定することを要せずして、フォーク本体に封入されている気体の気圧が最適な状態にあるか否かを判断でき、確認作業が簡単にするのに向く。
【符号の説明】
【0081】
1 アウターチューブ
1a 開口端部たるシールケース部
1b 面部
2 インナーチューブ
3 プロテクタ
4 ブレーキホースブラケット
4a リング部
5 ブレーキホース
11 ダストシール
11a 下端
21 Cリング
M 表示要素
P 基準要素
S 適正エリア
S1 最適エリア
S2,S3 許容エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブにインナーチューブが出没可能に挿通されると共に内部に封入の気体で伸長方向に附勢されるフォーク本体を有してなるフロントフォークにおいて、二輪車の前輪側に装備された状態で無負荷状態にあるフォーク本体におけるアウターチューブに対するインナーチューブの出没状態をフォーク本体の外部から視認可能にする視認手段を有し、この視認手段がアウターチューブあるいはインナーチューブのいずれか一方に設けられる基準要素と、この基準要素の照合位置を特定させる表示要素とを有してなることを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
基準要素がアウターチューブに設けられると共に、表示要素がインナーチューブ側に保持されてアウターチューブに近隣するに任意の部材に設けられてなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
基準要素がアウターチューブにおけるインナーチューブを突出させる開口端部に設けられると共に、表示要素がインナーチューブ側に保持されてアウターチューブの開口端部の外周に上端側部を近隣させるプロテクタに設けられてなる請求項1または請求項2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
基準要素がアウターチューブに設けられると共に、表示要素がアウターチューブの開口端部から外部に突出するインナーチューブに設けられてなる請求項1または請求項3に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
基準要素がアウターチューブにおけるインナーチューブを突出させる開口端部に設けられると共に、表示要素がアウターチューブの開口端部から外部に突出するインナーチューブにおける突出部に設けられてなる請求項1または請求項4に記載のフロントフォーク。
【請求項6】
基準要素がアウターチューブに保持されるブラケット類に設けられると共に、表示要素がインナーチューブに保持されてアウターチューブに保持のブラケット類に近隣する任意の部材に設けられてなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項7】
基準要素がアウターチューブに保持されるブレーキホースブラケットに設けられるリング部とされると共に、表示要素がインナーチューブに保持されてアウターチューブに保持のブレーキホースブラケットにおけるリング部を挿通するブレーキホースに設けられてなる請求項1または請求項6に記載のフロントフォーク。
【請求項8】
基準要素で照合される表示要素がアウターチューブに対するインナーチューブの出没状態の適正状態および過大状態あるいは過小状態を区別させる構成を有してなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6または請求項7に記載のフロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−62972(P2012−62972A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208247(P2010−208247)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】