説明

フロントローダ

【課題】 スタンドのスタンド姿勢と退避姿勢との姿勢変更作業をより簡単になし得るようにする。
【解決手段】 ブームを支えるスタンドとを備え、左右一対のブームの中途部を連結するブーム連結体が設けられ、前記スタンドは左右のブームに対応して設けられた左右一対のスタンド部材と左右一対のスタンド部材を連結するスタンド連結部材とを備え、スタンドは、左右一対のブームから下方側に突出して接地し該ブームを支えるスタンド姿勢とブームに沿う退避姿勢Bとに姿勢変更自在になるようにブームに取り付けられたフロントローダにおいて、
前記ブーム連結体とスタンド連結部材との間に、スタンドを退避姿勢にしたときに該スタンドを退避姿勢に自動的に保持する保持手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ装着式ローダ等の農業・土木作業等に用いられる荷役車両に採用されるトラクタに装着されるフロントローダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタに装着されるフロントローダには、トラクタに揺動自在に連結される左右一対のブームと、左右一対のブームの先端側に設けたバケット等の作業具と、左右一対のブームをトラクタから取り外した際に前記作業具を接地させた状態でブームを支えるスタンドとを備え、左右一対のブームの中途部を連結するブーム連結体が設けられ、スタンドは左右のブームに対応して設けられた左右一対のスタンド部材と左右一対のスタンド部材を連結するスタンド連結部材とを備え、スタンドは、左右一対のブームから下方側に突出して接地し該ブームを支えるスタンド姿勢とブームに沿う退避姿勢とに姿勢変更自在になるようにブームに取り付けられたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この種の従来のフロントローダは、ブーム連結体の左右方向中央部に係止ピンが突設され、スタンド連結部材に、係止ピンに対応してピン挿通孔が設けられ、スタンドを退避姿勢にしたときに、係止ピンが、スタンド連結部材のピン挿通孔に挿通されてスタンド連結部材から下方乃至後方に突出し、この突出した係止ピンの突出端部に、βピン等の抜止ピンを挿通することにより、係止ピンがピン挿通孔から不測に抜けないようにして、スタンドを退避姿勢にロックするようにしていた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−207235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来では、スタンドをスタンド姿勢から退避姿勢に姿勢変更する場合、スタンドがスタンド姿勢に保持された状態から、スタンドを揺動又は回動して退避姿勢にした後、スタンド連結部材から突出した係止ピンの突出端部に、抜止ピンを挿通する必要があり、このため、スタンドを姿勢変更する都度に、係止ピンに対して抜止ピンを挿脱する必要があり、スタンドの姿勢変更の作業が非常に面倒であった。また、係止ピンに対して抜止ピンを挿脱するため、抜止ピンを紛失するおそれもあった。
本発明は上記問題点に鑑み、抜止ピン等を紛失するような問題もなく、スタンドのスタンド姿勢Aと退避姿勢Bとの姿勢変更作業をより簡単になし得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、トラクタに揺動自在に連結される左右一対のブームと、左右一対のブームの先端側に設けた作業具と、左右一対のブームをトラクタから取り外した際に作業具を接地させた状態でブームを支えるスタンドとを備え、左右一対のブームの中途部を連結するブーム連結体が設けられ、前記スタンドは左右のブームに対応して設けられた左右一対のスタンド部材と左右一対のスタンド部材を連結するスタンド連結部材とを備え、スタンドは、左右一対のブームから下方側に突出して接地し該ブームを支えるスタンド姿勢とブーム12に沿う退避姿勢とに姿勢変更自在になるようにブームに取り付けられたフロントローダにおいて、
前記ブーム連結体とスタンド連結部材との間に、スタンドを退避姿勢にしたときに該スタンドを退避姿勢に自動的に保持する保持手段が設けられている点にある。
【0006】
また、本発明の他の技術的手段は、前記ブーム連結体又はスタンド連結部材の一方側に、スタンドを退避姿勢にしたときにブーム連結体又はスタンド連結部材の他方側に緩衝しながら接当する接当手段が設けられている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記ブーム連結体に、一方のブームから他方のブームに向けて延設された油圧配管が沿わされ、前記スタンド連結部材は、スタンドを退避姿勢にしたときにブーム連結体と共に油圧配管の外周を取り囲んで保護するように構成されている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、左右一対のスタンド部材は、スタンド姿勢と退避姿勢とに姿勢変更可能になるように左右一対のブームにそれぞれ左右方向の支軸廻りに回動自在に枢支されると共に、支持の軸方向に移動自在に支持され、スタンド部材又はブームの一方に、左右方向の係止ピンが突設され、他方にピン挿通孔が設けられ、スタンドがスタンド姿勢のときにスタンド部材を支軸の軸方向に移動することにより前記係止ピンがピン挿通孔に挿脱自在に挿入されて、スタンドがスタンド姿勢にロックされるように構成されている点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、前記保持手段は、ブーム連結体又はスタンド連結部材の一方に設けた係合凹部と、ブーム連結体又はスタンド連結部材の他方に設けた係合突部と、係合凹部の開口部を開閉自在に塞ぐロック部材とを備え、スタンドを退避姿勢にしたときに、係合突部が係合凹部に係合するように構成され、
ロック部材は、係合凹部の開口部を開閉自在に塞いで係合突部が係合凹部に係合した状態にロックするロック位置と、ロック位置から外れて係合突部が係合凹部に対して係脱可能になるように係合凹部の開口部を開放するロック解除位置に移動自在に設けられ、ロック部材をロック位置に向けて付勢するバネが設けられ、スタンドを退避姿勢にしたときに、係合突部がロック部材をバネの付勢に抗してロック解除位置に押圧して係合凹部に係合するように、ロック部材に係合突部が押圧接当するカム面が設けられている点にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スタンドをスタンド姿勢から退避姿勢に姿勢変更すれば、スタンドは保持手段により退避姿勢に自動的に保持されるため、スタンドを退避姿勢に保持するための操作は何ら不要になり、従来のようにスタンドを姿勢変更する都度に、係止ピンに対して抜止ピンを挿脱するような面倒な操作が不要になり、スタンドの姿勢変更をより簡単になし得るようになる。また、従来のように係止ピンに対して抜止ピンを挿脱するようなことが不要になるため、抜止ピン等を紛失するような問題もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、1は作業車(例えばTLB)であり、トラクタ2の前部にフロントローダ4が着脱自在に装着されている。
トラクタ2は、エンジン、クラッチハウジング、ミッションケース等を前後に連結して構成され、エンジンから前方へ前輪6の前車軸ケースを縣架する前車軸フレーム7が突設され、トラクタ2の前部にエンジン等を覆うボンネット8が設けられている。
図1〜図5において、フロントローダ4は、左右一対のマスト11の上部に左右一対のブーム12の基部を上下揺動自在に枢支し、左右一対のブーム12の先端に作業具であるバケット13を掬い・ダンプ自在に枢支し、ブーム12をブームシリンダ15で、バケット13をバケットシリンダ16でそれぞれ油圧駆動可能にしている。
【0011】
前記マスト11は、トラクタ2に設けたフロントローダ4用の装着体5の左右一対のマスト受け材17にそれぞれ上側から嵌入しかつ下部を係止し、中途部をロックピン18でロックするように構成されている。前記フロントローダ4は、使用しないとき、ロックピン18を抜くことによって装着体5から離脱させることができる。
左右一対のブーム12は、ボンネット8の左右両側に配置されており、左右のブーム12はその前部側の中途部において、円筒状等のブーム連結体14によって相互に連結されている。マスト11はボンネット8の左右側方でに配置され、左右方向で同じ側にあるマスト受け材17に取付られる。
【0012】
左右一対の各ブーム12は、それぞれ1枚板により構成され、各ブーム12には、ブームシリンダ枢支部19と作業具シリンダ枢支部20とが一体に形成されると共に、ブーム12の先端に、バケット13の底側端部13aが接当してバケット13のダンプ動作下限を設定する当たり部21が一体に形成されている。ブーム12を1枚板で構成することにより、ブーム12に曲げ加工が不要になり、ブーム12の成形が容易になるし、応力集中し易い部位を応力集中回避形状に容易に形成でき、左右各ブーム12の左右幅を狭く形成できてブーム12全体を薄く形成でき、トラクタ2にブーム12を極力近づけて配置することができるように構成されている。左右一対のブーム12の基端部(後端部)と先端部(前端部)とに後述の枢軸23,24が挿通される円筒状のボス部33,34が設けられている。
【0013】
左右各ブーム12は、その基端側(後端側)が枢軸23によってマスト11の上部に左右方向の軸心回りに回動自在に枢支連結されていて上下揺動自在とされている。
また、左右各ブーム12の長手方向中途部のブームシリンダ枢支部19と、左右各マスト11の上下方向中途部とにわたって複動式油圧シリンダからなる前記左右一対のブームシリンダ15が介装され、この左右ブームシリンダ15の伸縮によって左右のブーム12が上下に揺動可能とされている。
また、バケット13の背面下部には、左右各ブーム12の先端側(前端側)が枢軸24を介して枢支連結され、バケット13の背面とブーム12の作業具シリンダ枢支部20との間には、複動式油圧シリンダからなる前記左右一対のバケットシリンダ16が介装され、このバケットシリンダ16の伸縮によってバケット13が揺動可能(スクイ・ダンプ動作可能)とされている。
【0014】
図2及び図3に示すように、左右一方側のブーム12(本実施の形態では右側)に油圧配管26,27が設けられている。この油圧配管26,27はブームシリンダ15用の2本と、バケットシリンダ16用の2本との計4本があり、ブーム12の内面に沿うようにして配設されている。各油圧配管26,27の後部側は、右側マスト受け材17等に設けられたコントロールバルブに油圧ホースを介して接続される。
油圧配管26,27は、ブーム連結体14に一方(本実施の形態では右側)のブーム12から他方(本実施の形態では左側)のブーム12に向けて延設されている。ブームシリンダ15用の油圧配管26の前部側はブーム連結体14の下側を該ブーム連結体14に沿って左方に配設され、左側のブームシリンダ15に接続部材29を介して油圧ホースにより接続されていると共に、該油圧配管26は右側前部側において、分岐部材30によって分岐されていて該分岐部材30は右側のブームシリンダ15に油圧ホースを介して接続されている。
【0015】
また、バケットシリンダ16用の油圧配管27はブーム連結体14の下側を該ブーム連結体14に沿って左方に配設され、左側のバケットシリンダ16に接続部材29を介して油圧ホースにより接続されていると共に、該油圧配管27は右側前部側において、分岐部材30によって分岐されていて該分岐部材30は右側のバケットシリンダ16に油圧ホースを介して接続されている。
左右のブーム12を連結するブーム連結体14の下面側の左右両側には、該ブーム連結体14の下面側に沿って配設された前記油圧配管26,27を取り付けるクランプ部材31を取り付けるための取付台32が固定されている。図6及び図7に示すように、クランプ部材31はボルト等の締結具38によって取付台32に締め付けられ、取付台32とクランプ部材31との間で、ブーム連結体14の下面側に沿って配設された油圧配管26,27を挟持固定している。
【0016】
図1〜図4に示すように、前記フロントローダ4には、該フロントローダ4をトラクタ2から取り外したときに、バケット13を接地させた状態でブーム12を支えるスタンド35を備えている。スタンド35は、左右のブーム12に対応して設けられた左右一対のスタンド部材36と、左右のスタンド部材36を連結するスタンド連結部材37とから主構成されている。
左右のスタンド部材36は、対応するブーム12の左右方向一方側(右側)に配置されている。左右スタンド部材36の前端側には、それぞれ支持孔39が厚さ方向(左右方向)貫通状に形成され、左右スタンド部材36の後端側には左右方向内方側に折り曲げられて形成された接地部40が設けられている。
【0017】
スタンド連結部材37は、図6にも示すように、前壁部41と、後壁部42と、これら前後壁部41,42の下端側同志を連結する底壁部43とを有して、左右及び上側が開放状となる溝形に形成されている。左右一対のスタンド部材36に取付板45が突設され、スタンド連結部材37の左右両端部は、取付板45を介して又は直接に一対のスタンド部材36にそれぞれ固着され、スタンド連結部材37は左右一対のスタンド部材36を連結している。
左右一対のスタンド部材36は、図2に示す如くスタンド姿勢Aと退避姿勢Bとに姿勢変更可能になるように左右一対のブーム12にそれぞれ左右方向の支軸46廻りに回動自在に枢支されると共に、支持46の軸方向に移動自在に支持され、一対のブーム12に左右方向の係止ピン48が突設され、一対のスタンド部材36にピン挿通孔47が設けられ、スタンド35がスタンド姿勢Aのときにスタンド部材36を支軸46の軸方向に移動することにより係止ピン48がピン挿通孔47に挿脱自在に挿入されて、スタンド35がスタンド姿勢Aにロックされるように構成されている。
【0018】
即ち、左右のスタンド部材36を支持する左右の支軸46は、左右各ブーム12の前端部に、左右方向に互いに対応して右方向に突出状に設けられている。スタンド部材36の前端側が支持孔39を介して支軸46に挿入されることにより、左右のスタンド部材36の前端側(下端側)が、ブーム12の前端側中途部に左右方向の支軸46廻りに回動自在に枢支されていて、支軸46廻りに左右のスタンド部材36を回動することにより、スタンド35は、左右一対のブーム12から下方側に突出して接地し該ブーム12を支えるスタンド姿勢Aと、ブーム12に沿う退避姿勢Bとに姿勢変更自在とされている。
【0019】
左右のスタンド部材36の前部に、ピン挿通孔47が支持孔39の後方側に形成されており、左右のブーム12の左右方向一方側(右側)の面に、係止ピン48が右側に突設されており、これらピン挿通孔47と係止ピン48とは、スタンド35がスタンド姿勢Aにあるときに左右方向において軸心が一致して、係止ピン48に対してピン挿通孔47が嵌合可能となる。
左右ブーム12の支軸46は、係止ピン48よりも右方向に長く突出されており、その突出端部に抜止ピン49が設けられ、左右のスタンド部材36は支持孔58を介して支軸46にその軸方向(左右方向)に移動可能に挿通されており、スタンド35は支軸46の長さの範囲で係止ピン48よりも右方向に移動可能とされている。
【0020】
従って、スタンド35をスタンド姿勢Aにするときに、左右のスタンド35を係止ピン49よりも右側に移動した後に、スタンド35を支軸46廻りにスタンド姿勢Aの位置まで回動してスタンド35を左側に移動して戻すことにより、左右のスタンド部材36の前端部をピン挿通孔61を介して係止ピン62に嵌合して、スタンド35をスタンド姿勢Aに保持(ロック)できるように構成され、スタンド35がスタンド姿勢Aのときに、スタンド35を右側に移動することにより、左右スタンド部材6が係止ピン48から右側に外れて、スタンド35が支軸46廻りに回動自在になるように構成されている。
【0021】
なお、スタンド35は左右のスタンド部材36がスタンド連結部材37によって連結されてなるので、スタンド35をスタンド姿勢Aと退避姿勢Bとに姿勢変更させる操作は、トラクタ2の左右方向一側(右側又は左側)からだけの上げ下げ操作によって可能とされている。
また、スタンド連結部材37は、スタンド35を退避姿勢Bとしたときに、図6に示すように、ブーム連結体14の下側(後側)において該ブーム連結体14に沿うように位置して該ブーム連結体14に沿って設けられた油圧配管26,27、取付台40及びクランプ部材39を下側(後側)から覆うように構成され、スタンド35が退避姿勢Bのときにおいて該スタンド連結部材37が油圧配管26,27等を保護する保護カバーに兼用されている。
【0022】
図2〜図4、図6及び図8に示すように、ブーム連結体14とスタンド連結部材37との間に、スタンド35を退避姿勢Bにしたときに該スタンド35を退避姿勢Bに自動的に保持する保持手段53が設けられている。
保持手段53は、スタンド連結部材37に設けた係合凹部55と、ブーム連結体14に設けた係合突部56と、係合凹部55の開口部55aを開閉自在に塞ぐロック部材57とを備え、スタンド35を退避姿勢Bに移動したときに、係合突部56が開口部55aを通って係合凹部55に係合するように構成されている。係合凹部55の開口部55aは、外方に向けて徐々に大きく拡開した外方広がり状に形成され、係合突部56を係合凹部55の奥部に案内するように構成されている。
【0023】
ロック部材57は、スタンド連結部材37の後壁部42の前面に配置され、後壁部42に支持軸61廻りに回動自在に支持されている。なお、ロック部材57はβピン62により支持軸61から抜け止めされている。ロック部材57に、ロック凹部63とロック凸部64と嵌合凹部65とが設けられると共に、操作杆66とバネ係止軸67とが突設されている。
図8に示すように、ロック部材57のロック凹部63及びロック凸部64は係合凹部55に対応する位置にあり、ロック部材57の支持軸61廻りの回動により、係合凹部55に係合した係合突部56をロック凹部63が係合してロック凸部64で係合凹部55の開口部55aを塞ぐロック位置Dと、ロック凹部63及びロック凸部64が係合凹部55から外れるロック解除位置Eとに、ロック部材57は移動するように構成されている。従って、ロック部材57がロック位置Dに移動したとき、係合凹部55の開口部55aを開閉自在に塞いで係合突部56が係合凹部55に係合した状態にロックし、ロック部材57がロック解除位置Eに移動したとき、係合凹部55の開口部55aを開放して係合突部56の係合凹部55への係脱を許すようになっている。
【0024】
ロック部材57の嵌合凹部65は、スタンド連結部材37の後壁部42に突設したストッパー体69に遊嵌状に嵌合(係合)して、ロック部材57の支持軸61廻りの回動をロック位置Dとロック解除位置Eとの範囲に規制している。
前記操作杆66に対応してスタンド連結部材37の後壁部42に長孔60が設けられ、操作杆66は長孔60に挿通されて長孔60から後方突出されている。長孔60はロック部材57の支持軸61廻りの回動を許すように支持軸61を中心とした円弧状に形成されている。
【0025】
ロック部材57とスタンド連結部材37との間にバネ58が設けられている。バネ58の一端は後壁部42に設けた係止孔68を介してスタンド連結部材37に連結され、バネ58の他端はロック部材57のバネ係止軸67に連結され、バネ58はロック部材57をスタンド連結部材37に対してロック位置Dに向けて付勢している。
ロック部材57のロック凸部64にカム面59が設けられ、スタンド35を退避姿勢Bにしたときに、係合突部56がロック部材57のカム面59に接当してロック部材57をバネ58の付勢に抗してロック解除位置Eに押圧し、これにより係合突部56が係合凹部55に自動的に係合するように構成されている。
【0026】
従って、スタンド35をスタンド姿勢Aから退避姿勢Bに移動したとき、係合突部56がロック部材57のカム面59を押圧してロック部材57をロック解除位置Eに移動させながら、係合突部56が係合凹部55の開口部55aから係合凹部55に係合して、ロック部材57はバネ58の付勢によってロック位置Dに戻り、係合突部56が係合凹部55に係合した状態にロックするようになっている。
図4,図6,図7に示すように、スタンド連結部材37に、スタンド35を退避姿勢Bに移動したときにブーム連結体14側に緩衝しながら接当する接当手段73が設けられている。接当手段73は、ゴム又は柔軟な合成樹脂により構成された接当体75を有し、接当体75に後方突設したネジ軸76をスタンド連結部材37の底壁部43に固設したナット77に螺合締結することにより、接当体75は、スタンド連結部材37の底壁部43に前方突設されており、スタンド35を退避姿勢Bにセットしたときに、接当体75がブーム連結体14側のクランプ部材31に押圧接当するようになっている。これにより、スタンド35を後退姿勢に移動したときに、スタンド35が振動等によってガタ付くのを防止できるようになっている。
【0027】
前記構成のフロントローダ4をトラクタ2から取り外すには、例えば、先ずバケット13の底部の先端側を接地させると共にスタンド35を退避姿勢Bから下げてスタンド姿勢Aに回動した状態で、スタンド部材36をピン挿通孔47を介して係止ピン48に外嵌させて、スタンド35をスタンド姿勢Aに保持する。
スタンド35を退避姿勢Bからスタンド姿勢Aに姿勢変更する場合、スタンド35が保持装置53により退避姿勢Bに保持された状態から、ロック部材57の操作杆66を把持してロック部材57を支持軸61廻りにロック解除位置Eに回動し、この状態で、スタンド35を支軸46廻りに下方へ揺動してスタンド姿勢Aにセットし、このとき、スタンド35を支軸46の軸方向に往復移動させて、左右のスタンド部材36をピン挿通孔47を介して係止ピン48に外嵌させればよく、スタンド部材36を簡単にスタンド姿勢Aに保持することができる。
【0028】
次に、バケットシリンダ16を収縮させていくと、ブーム12が下降してスタンド35の接地部40が接地した後、マスト11が上昇するようにスタンド35の接地部40回りにブーム12が揺動して、装着体5のマスト受け材17から上方に外れ、図2に示すように、フロントローダ4が、バケット13の底部が接地した状態でブーム12がスタンド35によって支えられたスタンディング状態とされる。
その後、フロントローダ4に配設された油圧配管26,27からコントロールバルブ側に接続された油圧ホースを切り離し、トラクタ2を後退させる。
【0029】
フロントローダ4をトラクタ2に取り付ける際には、前記動作と逆の動作によって行われる。
そして、スタンド35をスタンド姿勢Aから退避姿勢Bに姿勢変更する場合、スタンド35がスタンド姿勢Aに保持された状態から、スタンド35を支軸46の軸方向(図3に示す矢印a方向)に移動させて、左右のスタンド部材36の挿通孔47から係止ピン48を抜いた後、スタンド35を支軸46の軸方向(図3に示す矢印b方向に)戻しながら、スタンド35を支軸46廻りに回動して退避姿勢Bにすればよく、このとき、ブーム連結体14の係合突部56がロック部材57のカム面59を押圧して、これにより、ロック部材57がロック解除位置Eに回動して、係止突部56が開口部55aを通って係止凹部55に係合し、ロック部材57はバネの付勢によりロック位置Dに戻され、係合突部56が係合凹部55に係合した状態にロックされる。従って、スタンド35をスタンド姿勢Aから退避姿勢Bに姿勢変更したとき、保持手段53を何ら操作することなく保持手段53によりスタンド35が退避姿勢Bに自動的に保持される。
【0030】
従って、スタンド35を退避姿勢Bに保持するための操作は何ら不要になり、従来のようにスタンドを姿勢変更する都度に、係止ピンに対して抜止ピンを挿脱するような面倒な操作が不要になり、スタンド35の姿勢変更をより簡単になし得るようになる。また、従来のように係止ピンに対して抜止ピンを挿脱するようなことが不要になるため、抜止ピン等を紛失するような問題もなくなる。
なお、前記実施の形態では、一対のブーム12に、左右方向の係止ピン48が突設され、一対のスタンド部材36に係止ピン48に対応するピン挿通孔47がそれぞれ設けられ、スタンド35がスタンド姿勢Aのときにスタンド部材36を支軸46の軸方向に移動することにより係止ピン48がピン挿通孔47に挿脱自在に挿入されて、スタンド35がスタンド姿勢Aにロックされるように構成されているが、これに代え、一対のスタンド部材36に、左右方向の係止ピン48を突設し、一対のブーム12に係止ピン48に対応するピン挿通孔47を設け、スタンド35がスタンド姿勢Aのときにスタンド部材36を支軸46の軸方向に移動することにより係止ピン48がピン挿通孔47に挿脱自在に挿入されて、スタンド35をスタンド姿勢Aにロックするように構成してもよい。また、左右方向の係止ピン48及びこれに対応するピン挿通孔47を、一方のブーム12及びこれに対応する一方のスタンド部材36のみに設けるようにしてもよい。
【0031】
また、前記実施の形態では、スタンド連結部材37側に、スタンド35を退避姿勢Bにしたときにブーム連結体14側に緩衝しながら接当する接当手段73が設けられているが、これに代え、ブーム連結体14側に、スタンド35を退避姿勢Bにしたときにブーム連結体14側に緩衝しながら接当する接当手段73を設けるようにしてもよい。
また、前記実施の形態では、保持手段53は、スタンド連結部材37に設けた係合凹部55と、ブーム連結体14に設けた係合突部56と、係合凹部55の開口部55aを開閉自在に塞ぐロック部材57とを備え、スタンド35を退避姿勢Bに移動したときに、係合突部56が開口部55aを通って係合凹部55に係合するように構成されているが、これに代え、保持手段53の係合凹部55をブーム連結体14に設け、保持手段53の係合突部56をスタンド連結部材37に設け、係合凹部55の開口部55aを開閉自在に塞ぐロック部材57をブーム連結体14側に設け、スタンド35を退避姿勢Bに移動したときに、係合突部56が開口部55aを通って係合凹部55に係合するように構成してもよい。また、保持手段53を、係合凹部55、係合突部56及びロック部材57以外の他の構成部材、例えば不安定切り換え機構を使用したロック手段その他で構成するようにしてもよい。
【0032】
また、前記油圧配管26,27は、金属製の配管により構成してもよいし、油圧ホース等のゴム又は合成樹脂でフレキシブルに形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態を示す作業車前部の側面図である。
【図2】同フロントローダの側面図である。
【図3】同フロントローダの底面図である。
【図4】同図2のF線矢視図である。
【図5】同フロントローダの斜視図である。
【図6】同図2図のブーム連結体、スタンド連結部材及び保持手段部分の拡大図ある。
【図7】図3の左側のスタンド部材部分の拡大図である。
【図8】図4の保持手段部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0034】
1 作業車
2 トラクタ
4 フロントローダ
12 ブーム
13 バケット
14 ブーム連結体
26 油圧配管
27 油圧配管
35 スタンド
36 スタンド部材
37 スタンド連結部材
46 支軸
47 ピン挿通孔
48 係止ピン
53 保持手段
55 係合凹部
55a 開口部
56 係合突部
57 ロック部材
58 バネ
59 カム面
73 接当手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ(2)に揺動自在に連結される左右一対のブーム(12)と、左右一対のブーム(12)の先端側に設けた作業具(13)と、左右一対のブーム(12)をトラクタ(2)から取り外した際に作業具(13)を接地させた状態でブーム(12)を支えるスタンド(35)とを備え、左右一対のブーム(12)の中途部を連結するブーム連結体(14)が設けられ、前記スタンド(35)は左右のブーム(12)に対応して設けられた左右一対のスタンド部材(36)と左右一対のスタンド部材(36)を連結するスタンド連結部材(37)とを備え、スタンド(35)は、左右一対のブーム(12)から下方側に突出して接地し該ブーム(12)を支えるスタンド姿勢(A)とブーム(12)に沿う退避姿勢(B)とに姿勢変更自在になるようにブーム(12)に取り付けられたフロントローダにおいて、
前記ブーム連結体(14)とスタンド連結部材(37)との間に、スタンド(35)を退避姿勢(B)にしたときに該スタンド(35)を退避姿勢(B)に自動的に保持する保持手段(53)が設けられていることを特徴とするフロントローダ。
【請求項2】
前記ブーム連結体(14)又はスタンド連結部材(37)の一方側に、スタンド(35)を退避姿勢(B)にしたときにブーム連結体(14)又はスタンド連結部材(37)の他方側に緩衝しながら接当する接当手段(73)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフロントローダ。
【請求項3】
前記ブーム連結体(14)に、一方のブーム(12)から他方のブーム(12)に向けて延設された油圧配管(26,27)が沿わされ、前記スタンド連結部材(37)は、スタンド(35)を退避姿勢(B)にしたときにブーム連結体(14)と共に油圧配管(26,27)の外周を取り囲んで保護するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロントローダ。
【請求項4】
左右一対のスタンド部材(36)は、スタンド姿勢(A)と退避姿勢(B)とに姿勢変更可能になるように左右一対のブーム(12)にそれぞれ左右方向の支軸(46)廻りに回動自在に枢支されると共に、支持(46)の軸方向に移動自在に支持され、スタンド部材(36)又はブーム(12)の一方に、左右方向の係止ピン(48)が突設され、他方にピン挿通孔(47)が設けられ、スタンド(35)がスタンド姿勢(A)のときにスタンド部材(36)を支軸(46)の軸方向に移動することにより前記係止ピン(48)がピン挿通孔(47)に挿脱自在に挿入されて、スタンド(35)がスタンド姿勢(A)にロックされるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフロントローダ。
【請求項5】
前記保持手段(53)は、ブーム連結体(14)又はスタンド連結部材(37)の一方に設けた係合凹部(55)と、ブーム連結体(14)又はスタンド連結部材(37)の他方に設けた係合突部(56)と、係合凹部(55)の開口部(55a)を開閉自在に塞ぐロック部材(57)とを備え、スタンド(35)を退避姿勢(B)にしたときに、係合突部(56)が係合凹部(55)に係合するように構成され、
ロック部材(57)は、係合凹部(55)の開口部(55a)を開閉自在に塞いで係合突部(56)が係合凹部(55)に係合した状態にロックするロック位置(D)と、ロック位置(D)から外れて係合突部(56)が係合凹部(55)に対して係脱可能になるように係合凹部(55)の開口部(55a)を開放するロック解除位置(E)に移動自在に設けられ、ロック部材(57)をロック位置(D)に向けて付勢するバネ(58)が設けられ、スタンド(35)を退避姿勢(B)にしたときに、係合突部(56)がロック部材(57)をバネ(58)の付勢に抗してロック解除位置(E)に押圧して係合凹部(55)に係合するように、ロック部材(57)に係合突部(56)が押圧接当するカム面(59)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフロントローダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−240344(P2008−240344A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81822(P2007−81822)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】