説明

フローティングコネクタ

【課題】浮動ハウジングの固定ハウジングに対する移動範囲を、高精度で定めることができるフローティングコネクタを提供する。
【解決手段】回路基板101に固定される固定ハウジング200に浮動ハウジング300を移動可能に装着し、浮動ハウジング300に形成されたピッチ方向当接部PX、挿抜方向当接部QX、デュアルピッチ方向当接部DXが、固定ハウジング200に形成されたピッチ方向被当接部PY、挿抜方向被当接部QY、デュアルピッチ方向被当接部DYに当接することで、浮動ハウジング300の固定ハウジング200に対するピッチ方向P、挿抜方向Q、デュアルピッチ方向Dの移動範囲が定まるフローティングコネクタ100であって、浮動ハウジング300と固定ハウジング200との間に、これらハウジング200、300を一つの金型で一体にインジェクションモールド成形するための樹脂の通路となり、最終的には除去される繋ぎ部500を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に固定される固定ハウジングと、固定ハウジングに対して所定範囲で移動可能な浮動ハウジングと、これらのハウジング同士を連結し中程に可撓部を有する複数の端子とを備え、可撓部が弾性変形することで浮動ハウジングが固定ハウジングに対して移動するフローティングコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一方の回路基板にプラグコネクタを、他方の回路基板にソケットコネクタを夫々実装し、それらを直接嵌合して両回路基板を導通させる基板間コネクタシステムにおいては、プラグコネクタ或いはソケットコネクタの実装位置のズレを吸収するため、何れか一方のコネクタをフローティングタイプとする必要がある。
【0003】
この種のフローティングコネクタは、回路基板に固定された固定ハウジングと、固定ハウジングの上方に配置された浮動ハウジングと、これらのハウジング同士を連結し中程に可撓部を有する端子とを備えている。かかるフローティングコネクタにおいては、相手方コネクタの嵌合時等に、端子の可撓部が弾性変形することで浮動ハウジングの移動が許容されるところ、端子の可撓部が過剰に伸ばされる等して塑性変形してしまうことを回避する必要がある。
【0004】
このため、従来、特許文献1の要約に記載されたように、コンタクト部ハウジング(2)と、これとは別体のテール部ハウジング(3)とを有し、複数の端子(10)の各々のコンタクト部(11)をコンタクト部ハウジング(2)に装着すると共に、テール部(12)をテール部ハウジング(3)に装着し、且つテール部(12)の近傍の圧入片(22)の先端(23)をテール部ハウジング(3)の係止溝(28)に圧入し、各端子(10)のコンタクト部(11)とテール部(12)間に可撓連結部(13)が形成され、各端子(10)のコンタクト部(11)と可撓連結部(13)の間から延出した可撓連結部保護片(18)の先端(21)をテール部ハウジング(3)に形成した挿入溝(30)に、常態に於いて挿入溝(30)の壁(31、32)に接触しないようにして挿入せしめた構造のフローティングタイプの電気コネクタが知られている。なお、括弧の符号は、特許文献1に記載の符号であり、本出願の図面とは無関係である。
【0005】
かかるフローティングコネクタにおいては、前記コンタクト部ハウジング(2)が浮動ハウジングに相当し、前記テール部ハウジング(3)が固定ハウジングに相当する。そして、前記端子(10)の可撓連結部(13)よりも浮動ハウジング(2)側の部分に可撓連結部保護片(18)を形成し、その先端(21)を固定ハウジング(3)に形成した挿入溝(30)に遊嵌しているので、相手方コネクタの嵌合時等に浮動ハウジング(2)が移動された際、可撓連結部保護片(18)の先端(21)が挿入溝(30)の壁(31、32)に当接することで、浮動ハウジング(2)の移動範囲を可撓連結部(13)が塑性変形しない範囲に制限することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−44063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したフローティングコネクタにおいては、浮動ハウジング(2)に形成された端部後部壁(7A、7B:当接部)が固定ハウジング(3)に形成された後部ストッパ(9A、9B:被当接部)に当接し、端子(10)の可撓連結部保護片(18)の先端(21)が固定ハウジング(3)の挿入溝(30)の壁(31、32)に当接することで、浮動ハウジング(2)の移動範囲を制限しているところ、これら浮動ハウジング(2)、固定ハウジング(3)、端子(10)は、別々に製造され、組み立てられている。
【0008】
すなわち、従来のフローティングコネクタは、固定ハウジングと浮動ハウジングとを別々にインジェクションモールド成形し、これらハウジング同士をプレス加工(打抜加工)された端子で連結し、組み立てられていた。従って、浮動ハウジングの移動範囲は、浮動ハウジング、固定ハウジング及び端子の夫々の製造誤差及び組立誤差が累積したものとして定まることになり、浮動ハウジングの移動範囲の精度を高めることが困難であった。
【0009】
このため、前記移動範囲に大きなバラツキが生じる可能性があり、上述のフローティングコネクタに相手方コネクタを嵌合させる際、嵌合ができなかったり、嵌合に無理が生じてハウジングが破損したり、可撓部に無理な力が加わって可撓部が損傷し可撓部による浮動性を喪失する等のトラブルが生じる虞がある。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、浮動ハウジングの固定ハウジングに対する移動範囲を、高精度で定めることができるフローティングコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、回路基板に固定される固定ハウジングと該固定ハウジングに対して所定範囲で移動可能な浮動ハウジングとを、中程に可撓部を有する複数の端子で連結し、相手方コネクタが挿抜される際、前記可撓部が弾性変形することで前記浮動ハウジングが前記固定ハウジングに対して移動するフローティングコネクタであって、前記浮動ハウジングの、前記固定ハウジング及び前記浮動ハウジングに装着された複数の端子の配列方向即ちピッチ方向、前記相手方コネクタの挿抜方向、これらピッチ方向及び挿抜方向で形成される面に直交するデュアルピッチ方向の各方向の移動を夫々所定範囲に制限するため、前記浮動ハウジングに形成されたピッチ方向当接部、挿抜方向当接部、デュアルピッチ方向当接部と、前記浮動ハウジングが前記所定範囲を越えて前記各方向に移動しようとした場合、前記ピッチ方向当接部、挿抜方向当接部、デュアルピッチ方向当接部が夫々当接することで前記浮動ハウジングの移動を前記所定範囲に制限するため、前記固定ハウジングに形成されたピッチ方向被当接部、挿抜方向被当接部、デュアルピッチ方向被当接部と、前記浮動ハウジングと前記固定ハウジングとを連結して設けられ、これらハウジングを一つの金型で一体にインジェクションモールド成形するための樹脂の通路となり、最終的には除去される繋ぎ部とを備えたものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記固定ハウジングが、前記ピッチ方向に間隔が隔てられた一対の対向面部と、該対向面部に前記ピッチ方向に貫通形成された窓部とを有し、前記浮動ハウジングが、前記各対向面部の内側面から前記ピッチ方向に所定間隔が隔てられた一対の対向壁部と、該対向壁部の外側面に前記ピッチ方向に突出して形成され前記窓部に遊嵌された突起部とを有し、前記ピッチ方向当接部が、前記対向壁部の外側面であり、前記ピッチ方向被当接部が、前記対向面部の内側面であり、前記挿抜方向当接部が、前記突起部の前記挿抜方向の手前面及び奥面であり、前記挿抜方向被当接部が、前記窓部の前記挿抜方向の手前面及び奥面であり、前記デュアルピッチ方向当接部が、前記突起部の前記デュアルピッチ方向の上下面であり、前記デュアルピッチ方向被当接部が、前記窓部の前記デュアルピッチ方向の上下面である請求項1に記載のフローティングコネクタである。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記固定ハウジングが、前記ピッチ方向に間隔が隔てられた一対の対向面部と、該対向面部に前記ピッチ方向に貫通形成された窓部と、該窓部の前記挿抜方向の手前側の前記対向面部に設けられ前記手前側が開放するコ字状に形成されたコ字状受け面とを有し、前記浮動ハウジングが、前記各対向面部の内側面から前記ピッチ方向に所定間隔が隔てられた一対の対向壁部と、該対向壁部の外側面に前記ピッチ方向に突出して形成され前記窓部に遊嵌された突起部と、前記対向壁部の外側面から前記ピッチ方向に突出されて前記コ字状受け面の内方に挿通された張出部とを有し、前記ピッチ方向当接部が、前記対向壁部の外側面であり、前記ピッチ方向被当接部が、前記対向面部の内側面であり、前記挿抜方向当接部が、前記突起部の前記挿抜方向の手前面と、前記張出部の前記挿抜方向の奥面とを有し、前記挿抜方向被当接部が、前記窓部の前記挿抜方向の手前面と、前記コ字状受け面の前記挿抜方向の奥面とを有し、前記デュアルピッチ方向当接部が、前記張出部の前記デュアルピッチ方向の上下面を有し、前記デュアルピッチ方向被当接部が、前記コ字状受け面の前記デュアルピッチ方向の上下面を有する請求項1に記載のフローティングコネクタである。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記固定ハウジングが、前記ピッチ方向に間隔が隔てられた一対の対向面部と、該対向面部に前記ピッチ方向に貫通形成された窓部と、該窓部の前記挿抜方向の手前側の前記対向面部に設けられ前記手前側が開放するコ字状に形成されたコ字状受け面とを有し、前記浮動ハウジングが、前記各対向面部の内側面から前記ピッチ方向に所定間隔が隔てられた一対の対向壁部と、該対向壁部の外側面に前記ピッチ方向に突出して形成され前記窓部に遊嵌された突起部と、前記対向壁部の外側面から前記ピッチ方向に突出されて前記コ字状受け面の内方に挿通された張出部とを有し、前記ピッチ方向当接部が、前記対向壁部の外側面であり、前記ピッチ方向被当接部が、前記対向面部の内側面であり、前記挿抜方向当接部が、前記突起部の前記挿抜方向の手前面を有すると共に、前記突起部の前記挿抜方向の奥面又は前記張出部の前記挿抜方向の奥面を有し、前記挿抜方向被当接部が、前記窓部の前記挿抜方向の手前面を有すると共に、前記窓の前記挿抜方向の奥面又は前記コ字状受け面の前記挿抜方向の奥面を有し、前記デュアルピッチ方向当接部が、前記突起部の前記デュアルピッチ方向の上下面又は前記張出部の前記デュアルピッチ方向の上下面を有し、前記デュアルピッチ方向被当接部が、前記窓部の前記デュアルピッチ方向の上下面又は前記コ字状受け面の前記デュアルピッチ方向の上下面を有する請求項1に記載のフローティングコネクタである。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記浮動ハウジングを前記固定ハウジングに対してピッチ方向の一方に片寄らせても、前記浮動ハウジングが前記固定ハウジングから脱落しないように、前記浮動ハウジングが前記固定ハウジングに係合されている請求項1〜4いずれかに記載のフローティングコネクタである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフローティングコネクタによれば、浮動ハウジングの固定ハウジングに対する移動範囲を、高精度で定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るフローティングコネクタに相手方コネクタを嵌合した様子を示す斜視図である。
【図2】図1に示すフローティングコネクタ及び相手方コネクタの断面斜視図である。
【図3】図2に示すフローティングコネクタの端子及び相手方コネクタの端子の斜視図である。
【図4】図1に示す相手方コネクタの斜視図である。
【図5】図1に示すフローティングコネクタの斜視図である。
【図6】図5に示すフローティングコネクタの固定ハウジングの斜視図である。
【図7】図5に示すフローティングコネクタの浮動ハウジングの斜視図である。
【図8】浮動ハウジングが固定ハウジングに対して挿抜方向又はデュアルピッチ方向に移動する様子の説明図であり、(a)は浮動ハウジングのニュートラル状態、(b)は浮動ハウジングがデュアルピッチ方向の上方に移動した様子、(c)は浮動ハウジングが挿抜方向の手前側に移動した様子を示す説明図である。
【図9】浮動ハウジングが固定ハウジングに対してピッチ方向に移動する様子の説明図であり、(a)は浮動ハウジングのニュートラル状態、(b)は浮動ハウジングがピッチ方向の右方に移動した様子を示す説明図である。
【図10】浮動ハウジングと固定ハウジングとを連結する繋ぎ部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1、図2に示すように、一方の回路基板101には、本実施形態に係るフローティングコネクタ100が実装され、他方の回路基板401には、相手方コネクタ400が実装されている。図中、Pは各コネクタに装着された複数の端子の配列方向、すなわちピッチ方向、Qは両コネクタ同士の挿抜方向、Dはピッチ方向及び挿抜方向で形成される面に直交するデュアルピッチ方向を示す。
【0020】
本実施形態では、フローティングコネクタ100をプラグコネクタとし、相手方コネクタ(ノンフローティングタイプ)400をソケットコネクタとしたが、これとは逆に、フローティングコネクタ100をソケットコネクタとし、相手方コネクタ400をプラグコネクタとしてもよい。また、本実施形態では、各回路基板101、401の配置を略直交させているが、90度以外の角度としてもよく、平行でも構わない。
【0021】
フローティングコネクタ(プラグコネクタ)100は、回路基板101に固定される固定ハウジング200と、固定ハウジング200に対して所定範囲で移動可能な浮動ハウジング300とを備え、これらハウジング200、300を中程に可撓部109を有する複数の端子102で連結して概略構成されている。このプラグコネクタ100は、相手方コネクタ(ソケットコネクタ)400に挿抜される際、可撓部109が弾性変形することで浮動ハウジング300が固定ハウジング200に対して移動し、各コネクタ100、400の各回路基板101、401に対する実装位置のズレを吸収する。
【0022】
図1〜図3に示すように、プラグコネクタ100の端子(プラグ端子)102は、回路基板101にはんだ付けにより固定されるリード部103、固定ハウジング200に形成された圧入溝201に圧入固定される第一圧入部104、浮動ハウジング300に形成された圧入溝301に圧入固定される第二圧入部105、ソケットコネクタ400の端子(ソケット端子)402に接し得る接触部106、リード部103及び第一圧入部104が連なる第一基部107、第二圧入部105及び接触部106が連なる第二基部108、第一基部107と第二基部108とを連結する可撓部109等を備えており、打抜加工により製造される。可撓部109は、細い針金状の部材がS字状に蛇行された形状となっており、ピッチ方向P、挿抜方向Q、デュアルピッチ方向Dに所定範囲で弾性変形する。
【0023】
ソケット端子402は、回路基板401にはんだ付けにより固定されるリード部403、ソケットコネクタ400のハウジング(ソケットハウジング)410に形成された圧入溝405に圧入固定される圧入部406、プラグ端子102の接触部106に接し得る接触部407等を備えており、打抜加工しリード部403を圧入部406に対し略直角に折り曲げることで製造される。接触部407は、フォーク状に形成されており、その間にプラグ端子102の平板状の接触部106が挟持されるようになっている。なお、図2に示すように、ソケット端子402のリード部403は、ピッチ方向Pに隣接するもの同士がデュアルピッチ方向Dに振り分けられて千鳥配置されているのに対し、プラグ端子102のリード部103は、固定ハウジング200の一側に整列配置(非千鳥配置)されている。
【0024】
図2、図4に示すように、ソケットコネクタ400は、略直方体形状に形成されたソケットハウジング410と、ソケットハウジング410の長手方向(ピッチ方向P)の両端部に挿抜方向Qに沿って形成されたガイド穴499と、ガイド穴499同士の間のソケットハウジング410にピッチ方向Pに間隔を隔てて複数形成されたスリット408と、各スリット408内に配設されたソケット端子402とを備えている。
【0025】
図1、図2、図5に示すように、プラグコネクタ100は、回路基板101に固定される固定ハウジング200と、固定ハウジング200に対してピッチ方向P、挿抜方向Q、デュアルピッチ方向Dに所定範囲で移動可能な浮動ハウジング300と、これらハウジング200、300を連結するプラグ端子102とを有し、ソケットコネクタ400に挿抜される際、プラグ端子102の中程に設けられた可撓部109が弾性変形することで浮動ハウジング300が固定ハウジング200に対してピッチ方向P、挿抜方向Q、デュアルピッチ方向Dに所定範囲で移動可能となっている。
【0026】
すなわち、浮動ハウジング300には、ピッチ方向P、挿抜方向Q、デュアルピッチ方向Dの各方向の移動を夫々所定範囲に制限するため、ピッチ方向当接部PX、挿抜方向当接部QX、デュアルピッチ方向当接部DXが形成されており、他方、固定ハウジング200には、浮動ハウジング300が前記所定範囲を越えて前記各方向に移動しようとした場合、ピッチ方向当接部PX、挿抜方向当接部QX、デュアルピッチ方向当接部DXが夫々当接することで浮動ハウジング300の移動を前記所定範囲に制限するピッチ方向被当接部PY、挿抜方向被当接部QY、デュアルピッチ方向被当接部DYが形成されている。
【0027】
これら当接部PX、QX、DXを有する浮動ハウジング300、及び被当接部PY、QY、DYを有する固定ハウジング200について、以下に詳述する。
【0028】
図5、図6に示すように、固定ハウジング200は、ピッチ方向Pに沿って略板状に形成されたベース部210と、ベース部210の両端から挿抜方向Qの手前側に夫々延出された一対の対向面部211と、対向面部211にピッチ方向Pに貫通形成された窓部212と、窓部212の挿抜方向Qの手前側にその手前側が開放するようにコ字状に形成されたコ字状受け面250とを有する。固定ハウジング200は、図1、図5に示すように、対向面部211に圧入されたダミーピン600及びプラグ端子102のリード部103が回路基板101にはんだ付けされることで、回路基板101に固定される。
【0029】
図5、図7に示すように、浮動ハウジング300は、ピッチ方向Pに沿って形成された本体部310と、本体部310の両端に配設され前記対向面部211の内側面からピッチ方向Pに所定間隔が隔てられた一対の対向壁部311と、対向壁部311の外側面にピッチ方向Pに突出して形成され前記窓部212に遊嵌された突起部312と、対向壁部311の外側面からピッチ方向Pに突出され前記コ字状受け面250の内方に挿通された張出部397と、張出部397の挿抜方向Qの手前面から手前側に延出されソケットコネクタ400のガイド穴499(図4参照)に挿抜されるガイド399とを有する。
【0030】
図8(a)に示すように、浮動ハウジング300の突起部312が固定ハウジング200の窓部212の中央に位置する状態(挿抜方向Q及びデュアルピッチ方向Dのニュートラル状態)において、突起部312の挿抜方向Qの手前面312aと窓部212の挿抜方向Qの手前面212aとの間に所定隙間q1(例えば0.2mm)が形成され、突起部312の挿抜方向Qの奥面312bと窓部212の挿抜方向Qの奥面212bとの間に所定隙間q2(例えば0.2mm)が形成され、突起部312のデュアルピッチ方向Dの上面312cと窓部212のデュアルピッチ方向Dの上面212cとの間に所定隙間d1(例えば0.2mm)が形成され、突起部312のデュアルピッチ方向Dの下面312dと窓部212のデュアルピッチ方向Dの下面212dとの間に所定隙間d2(例えば0.2mm)が形成されている。
【0031】
これにより、ニュートラル状態の浮動ハウジング300は、固定ハウジング200に対し、挿抜方向Qに±0.2mmの範囲で移動でき、デュアルピッチ方向Dにも±0.2mmの範囲で移動できる(図8(b)、図8(c)参照)。ここで、突起部312の挿抜方向Qの手前面312a及び奥面312bが挿抜方向当接部QXに相当し、窓部212の挿抜方向Qの手前面212a及び奥面212bが挿抜方向被当接部QYに相当し、突起部312のデュアルピッチ方向Dの上面312c及び下面312dがデュアルピッチ方向当接部DXに相当し、窓部212のデュアルピッチ方向Dの上面212c及び下面212dがデュアルピッチ方向被当接部DYに相当することになる。なお、各所定隙間q1、q2、d1、d2の寸法(0.2mm)は、一部又は全部が異なっていてもよい。
【0032】
図9(a)に示すように、浮動ハウジング300が固定ハウジング200の左右の対向面部211の内側面同士のピッチ方向Pの中央に配置された状態(ピッチ方向Pのニュートラル状態)において、固定ハウジング200の対向面部211の内側面と浮動ハウジング300の対向壁部311の外側面との隙間は、左右で等しく、所定隙間p(例えば1.35mm)となっている。
【0033】
これにより、ニュートラル状態の浮動ハウジング300は、固定ハウジング200に対し、ピッチ方向Pに±1.35mmの範囲で移動できる(図9(b)参照)。ここで、対向壁部311の外側面がピッチ方向当接部PXに相当し、対向面部211の内側面がピッチ方向被当接部PYに相当することになる。なお、所定隙間pの寸法(1.35mm)は、この数値に限られないことは勿論である。
【0034】
図7に示す突起部312の対向壁部311の外側面からのピッチ方向Pの突出量L(例えば3.0mm)は、図9(b)に示すように、浮動ハウジング300を固定ハウジング200に対してピッチ方向Pの一方(例えば右方)に片寄らせた場合にピッチ方向Pの他方(左方)の対向壁部311の外側面と対向面部211の内側面との間にて形成される隙間p×2(1.35mm×2)よりも大きい。この結果、図5に示す突起部312が窓部212から外れることはなく、浮動ハウジング300が固定ハウジング200から脱落することが防止される。
【0035】
また、図8(a)に示すように、浮動ハウジング300が挿抜方向Q及びデュアルピッチ方向Dのニュートラル状態において、張出部397の挿抜方向Qの奥面397aとコ字状受け面250の挿抜方向Qの奥面250aとの間に所定隙間q3(例えば0.2mm)が形成され、張出部397のデュアルピッチ方向Dの上面397bとコ字状受け面250のデュアルピッチ方向Dの上面250bとの間に所定隙間d3(例えば0.2mm)が形成され、張出部379のデュアルピッチ方向Dの下面379cとコ字状受け面250のデュアルピッチ方向Dの下面250cとの間に所定隙間d4(例えば0.2mm)が形成されている。
【0036】
これにより、ニュートラル状態の浮動ハウジング300は、固定ハウジング200に対し、挿抜方向Qの奥側に0.2mmの範囲で移動でき、デュアルピッチ方向Dにも±0.2mmの範囲で移動できる。ここで、張出部397の挿抜方向Qの奥面397aが挿抜方向当接部QX’に相当し、コ字状受け面250の挿抜方向Qの奥面250aが挿抜方向被当接部QY’に相当し、張出部397のデュアルピッチ方向Dの上面397b及び下面397cがデュアルピッチ方向当接部DX’に相当し、コ字状受け面250のデュアルピッチ方向Dの上面250b及び下面250cがデュアルピッチ方向被当接部DY’に相当する。なお、各所定隙間q3、d3、d4の寸法(0.2mm)は、一部又は全部が異なっていてもよい。
【0037】
図8(a)において、所定隙間d1、d3、所定隙間d2、d4、所定隙間q2、q3は、夫々同じ機能を有するので、何れか一方のみを設定すれば足りる。また、双方を設定した場合であっても、双方で寸法を異ならせた場合には、小さい寸法のものが実質的な可動範囲となる。例えば、本実施形態においては、窓部212及びそれに遊嵌された突起部312により所定隙間q1、q2、d1、d2を確保できるので、張出部397及びコ字状受け面250を省略することも可能である。但し、例えば所定隙間q3を所定隙間q2より小さくした場合には、所定隙間q3が挿抜方向Qの奥側への実質的な可能範囲となる。この場合、突起部312の奥面312bが窓部212の奥面212bに当接しないので、窓部212の奥面212bを省略することもできる。すなわち、本発明において窓部212の概念には、奥面212bを欠いたもの(挿抜方向Qの奥側が開放されたもの)も含まれる。
【0038】
以上述べたように本実施形態においては、浮動ハウジング300のピッチ方向当接部PX、挿抜方向当接部QX、QX’、デュアルピッチ方向当接部DX、DX’が、固定ハウジング200のピッチ方向被当接部PY、挿抜方向被当接部QY、QY’、デュアルピッチ方向被当接部DY、DY’に夫々当接することで、浮動ハウジング300のピッチ方向P、挿抜方向Q、デュアルピッチ方向Dの移動範囲を制限している。よって、浮動ハウジング300の固定ハウジング200に対する移動範囲を高精度とするためには、浮動ハウジング300の各当接部PX、QX、QX’、DX、DX’の製作誤差と固定ハウジング200の各被当接部PY、QY、QY’、DY、DY’の製作誤差とが累積してしまう事態を回避し、且つ、浮動ハウジング300と固定ハウジング200とをプラグ端子102で連結する際の組立誤差を小さくすることが求められる。
【0039】
そこで、本実施形態では、図10に示すように、浮動ハウジング300と固定ハウジング200との間に、これらハウジング200、300を一つの金型で一体にインジェクションモールド成形するための樹脂の通路となる繋ぎ部500を設け、両ハウジング200、300を繋ぎ部500を介して連結している。この繋ぎ部500により、浮動ハウジング300と固定ハウジング200とを一つの金型で一体にインジェクションモールド成形できるので、浮動ハウジング300の各当接部PX、QX、QX’、DX、DX’の製作誤差と固定ハウジング200の各被当接部PY、QY、QY’、DY、DY’の製作誤差とが累積してしまう事態を回避できる。
【0040】
また、浮動ハウジング300と固定ハウジング200とが繋ぎ部500で連結された状態で端子102を両ハウジング200、300に装着し、その後、繋ぎ部500を除去することで、浮動ハウジング300と固定ハウジング200とを端子102で連結する際の組立誤差を略零にできる。詳しくは、浮動ハウジング300と固定ハウジング200とが繋ぎ部500で連結された状態で端子102をハウジング200、300内に挿入し、図2に示すように、端子102の第一圧入部104を固定ハウジング200の圧入溝201に圧入し、端子102の第二圧入部105を浮動ハウジング300の圧入溝301に圧入した後、図10に示す繋ぎ部500を除去することで、浮動ハウジング300と固定ハウジング200とを端子102で連結する際に生じる組立誤差を略零にできる。加えて、両ハウジング200、300の位置合わせ作業やそのための特殊治具等が一切不要となるので、コストダウンに繋がる。
【0041】
図10に示すように、繋ぎ部500の両端、すなわち繋ぎ部500と両ハウジング200、300との間には、ノッチ500aが形成されている。よって、繋ぎ部500を押圧する等してノッチ500aに応力を集中させれば、繋ぎ部500を的確に両端で除去できる。
【0042】
繋ぎ部500は、前記当接部PX、QX、DX、QX’、DX’、被当接部PY、QY、DY、QY’、DY’以外の部分にて、浮動ハウジング300と固定ハウジング200とを連結して配設される。従って、前記所定隙間q1、q2、q3、d1、d2、d3、pの精度に影響を及ぼすことなく、繋ぎ部500を除去できる。よって、繋ぎ部500を除去した後に、両ハウジング200、300に多少のバリが残ったとしても、これらバリ同士が接しない限り、浮動ハウジング300の固定ハウジング200に対する移動範囲の精度に影響が及ばない。
【0043】
浮動ハウジング300が固定ハウジング200から脱落することを防止するため、既述のように、図7に示す突起部312の突出量L(例えば3.0mm)が図9(b)に示す隙間p×2(1.35mm×2)よりも大きくなっている。これは、両ハウジング200、300を別々に製作した後にこれらを組み合わせることが困難であることを意味する(各部材を撓ませれば可能だが損傷する虞がある)。本実施形態では、両ハウジング200、300を繋ぎ部500で連結したものを一つの金型で一体にインジェクションモールド成形した後、そのものから繋ぎ部500を除去することで、浮動ハウジング300を固定ハウジング200に脱落不能にフローティング支持したものを得ている。これにより、浮動ハウジング300を固定ハウジング200に組み込む作業が不要となり、コストダウンを推進できる。
【符号の説明】
【0044】
100 フローティングコネクタとしてのプラグコネクタ
102 端子
109 可撓部
200 固定ハウジング
212 窓部
212a 手前面
212b 奥面
212c 上面
212d 下面
250 コ字状受け面
250a 奥面
250b 上面
250c 下面
300 浮動ハウジング
312 突起部
312a 手前面
312b 奥面
312c 上面
312d 下面
397 張出部
397a 奥面
397b 上面
397c 下面
400 相手方コネクタとしてのソケットコネクタ
500 繋ぎ部
P ピッチ方向
Q 挿抜方向
D デュアルピッチ方向
PX ピッチ方向当接部
QX 挿抜方向当接部
QX’ 挿抜方向当接部
DX デュアルピッチ方向当接部
DX’ デュアルピッチ方向当接部
PY ピッチ方向被当接部
QY 挿抜方向被当接部
QY’ 挿抜方向被当接部
DY デュアルピッチ方向被当接部
DY’ デュアルピッチ方向被当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に固定される固定ハウジングと該固定ハウジングに対して所定範囲で移動可能な浮動ハウジングとを、中程に可撓部を有する複数の端子で連結し、相手方コネクタが挿抜される際、前記可撓部が弾性変形することで前記浮動ハウジングが前記固定ハウジングに対して移動するフローティングコネクタであって、
前記浮動ハウジングの、前記固定ハウジング及び前記浮動ハウジングに装着された複数の端子の配列方向即ちピッチ方向、前記相手方コネクタの挿抜方向、これらピッチ方向及び挿抜方向で形成される面に直交するデュアルピッチ方向の各方向の移動を夫々所定範囲に制限するため、前記浮動ハウジングに形成されたピッチ方向当接部、挿抜方向当接部、デュアルピッチ方向当接部と、
前記浮動ハウジングが前記所定範囲を越えて前記各方向に移動しようとした場合、前記ピッチ方向当接部、挿抜方向当接部、デュアルピッチ方向当接部が夫々当接することで前記浮動ハウジングの移動を前記所定範囲に制限するため、前記固定ハウジングに形成されたピッチ方向被当接部、挿抜方向被当接部、デュアルピッチ方向被当接部と、
前記浮動ハウジングと前記固定ハウジングとを連結して設けられ、これらハウジングを一つの金型で一体にインジェクションモールド成形するための樹脂の通路となり、最終的には除去される繋ぎ部と
を備えたことを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項2】
前記固定ハウジングが、前記ピッチ方向に間隔が隔てられた一対の対向面部と、該対向面部に前記ピッチ方向に貫通形成された窓部とを有し、
前記浮動ハウジングが、前記各対向面部の内側面から前記ピッチ方向に所定間隔が隔てられた一対の対向壁部と、該対向壁部の外側面に前記ピッチ方向に突出して形成され前記窓部に遊嵌された突起部とを有し、
前記ピッチ方向当接部が、前記対向壁部の外側面であり、前記ピッチ方向被当接部が、前記対向面部の内側面であり、
前記挿抜方向当接部が、前記突起部の前記挿抜方向の手前面及び奥面であり、前記挿抜方向被当接部が、前記窓部の前記挿抜方向の手前面及び奥面であり、
前記デュアルピッチ方向当接部が、前記突起部の前記デュアルピッチ方向の上下面であり、前記デュアルピッチ方向被当接部が、前記窓部の前記デュアルピッチ方向の上下面である
請求項1に記載のフローティングコネクタ。
【請求項3】
前記固定ハウジングが、前記ピッチ方向に間隔が隔てられた一対の対向面部と、該対向面部に前記ピッチ方向に貫通形成された窓部と、該窓部の前記挿抜方向の手前側の前記対向面部に設けられ前記手前側が開放するコ字状に形成されたコ字状受け面とを有し、
前記浮動ハウジングが、前記各対向面部の内側面から前記ピッチ方向に所定間隔が隔てられた一対の対向壁部と、該対向壁部の外側面に前記ピッチ方向に突出して形成され前記窓部に遊嵌された突起部と、前記対向壁部の外側面から前記ピッチ方向に突出されて前記コ字状受け面の内方に挿通された張出部とを有し、
前記ピッチ方向当接部が、前記対向壁部の外側面であり、前記ピッチ方向被当接部が、前記対向面部の内側面であり、
前記挿抜方向当接部が、前記突起部の前記挿抜方向の手前面と、前記張出部の前記挿抜方向の奥面とを有し、前記挿抜方向被当接部が、前記窓部の前記挿抜方向の手前面と、前記コ字状受け面の前記挿抜方向の奥面とを有し、
前記デュアルピッチ方向当接部が、前記張出部の前記デュアルピッチ方向の上下面を有し、前記デュアルピッチ方向被当接部が、前記コ字状受け面の前記デュアルピッチ方向の上下面を有する
請求項1に記載のフローティングコネクタ。
【請求項4】
前記固定ハウジングが、前記ピッチ方向に間隔が隔てられた一対の対向面部と、該対向面部に前記ピッチ方向に貫通形成された窓部と、該窓部の前記挿抜方向の手前側の前記対向面部に設けられ前記手前側が開放するコ字状に形成されたコ字状受け面とを有し、
前記浮動ハウジングが、前記各対向面部の内側面から前記ピッチ方向に所定間隔が隔てられた一対の対向壁部と、該対向壁部の外側面に前記ピッチ方向に突出して形成され前記窓部に遊嵌された突起部と、前記対向壁部の外側面から前記ピッチ方向に突出されて前記コ字状受け面の内方に挿通された張出部とを有し、
前記ピッチ方向当接部が、前記対向壁部の外側面であり、前記ピッチ方向被当接部が、前記対向面部の内側面であり、
前記挿抜方向当接部が、前記突起部の前記挿抜方向の手前面を有すると共に、前記突起部の前記挿抜方向の奥面又は前記張出部の前記挿抜方向の奥面を有し、前記挿抜方向被当接部が、前記窓部の前記挿抜方向の手前面を有すると共に、前記窓の前記挿抜方向の奥面又は前記コ字状受け面の前記挿抜方向の奥面を有し、
前記デュアルピッチ方向当接部が、前記突起部の前記デュアルピッチ方向の上下面又は前記張出部の前記デュアルピッチ方向の上下面を有し、前記デュアルピッチ方向被当接部が、前記窓部の前記デュアルピッチ方向の上下面又は前記コ字状受け面の前記デュアルピッチ方向の上下面を有する
請求項1に記載のフローティングコネクタ。
【請求項5】
前記浮動ハウジングを前記固定ハウジングに対してピッチ方向の一方に片寄らせても、前記浮動ハウジングが前記固定ハウジングから脱落しないように、前記浮動ハウジングが前記固定ハウジングに係合されている
請求項1〜4いずれかに記載のフローティングコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−48982(P2011−48982A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195486(P2009−195486)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000205122)大宏電機株式会社 (78)
【Fターム(参考)】