フローリストリクタ
【課題】所望の非線形性の大部分を失うことなく、圧力低下が小さいフローリストリクタを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの導入部、少なくとも1つの導出部、及び流路を有する第1のディスクと、流路を有さない第2のディスクとを備えるフローリストリクタであって、第1のディスク及び第2のディスクは互いに積み重ねられる。また、マスフローコントローラは、入力部、出力部、流路、圧力トランスデューサ及び上記フローリストリクタを備えている。
【解決手段】少なくとも1つの導入部、少なくとも1つの導出部、及び流路を有する第1のディスクと、流路を有さない第2のディスクとを備えるフローリストリクタであって、第1のディスク及び第2のディスクは互いに積み重ねられる。また、マスフローコントローラは、入力部、出力部、流路、圧力トランスデューサ及び上記フローリストリクタを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.説明
I.A.関連出願
本出願は、同時係属中の204年2月27日に出願された米国仮特許出願第60/548,109号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の開示内容は本件出願に援用する。また、本出願は、同時係属中のダニエル マッド等による”Higher accuracy pressure based flow controller”と題する米国出願第10/652,506号の一部係属出願である。この一部係属出願は2002年8月28日に出願された仮出願第60/406,511号を優先権の基礎としており、これら両出願の内容を本件出願に援用する。
【0002】
I.B.分野
本開示は、例えばマスフローコントローラの一部として流量測定に用いられるフローリストリクタに関する技法を教示する。本開示は、フローリストリクタ内に清浄であり性能の変動なく形成される流路を設けるのに役立つ。
【背景技術】
【0003】
I.C.背景
1.導入
フローリストリクタは、マスフローコントローラを含む多くの用途で用いられる。従来のフローリストリクタは、焼結合金又はフィルタから成り、これらの流れ抵抗は、製造プロセスにおいて性能の許容設計値範囲に反して制御することはできない。設計者は多くの場合、適切なフローリストリクタを得るために既製品から適したフローリストリクタを選択する必要がある。さらに、フローリストリクタは、流量測定の使用時に非線形特性を示すことができる。
【0004】
従来のフローリストリクタは、焼結合金又は網状エレメントから作製される。これらのフローリストリクタは、流量制御装置の流れ圧力の緩衝器として用いられる。例えば、流量計は、フローリストリクタの差圧及び流れ特性を利用することができる。
【0005】
焼結合金材料製のこのタイプのフローリストリクタの場合、多孔度を制御することが困難である。さらに、このような製品は、或る特定の範囲の流れ抵抗を得るために既製品から選択しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2.従来の焼結フローリストリクタの問題
焼結エレメントは、サーマルマスフローコントローラのリストリクタ構造ほど清浄ではないと考えられる。
【0007】
焼結エレメントの性能は多くの場合、5SLMを超える流れで低下する。焼結エレメントリストリクタは、そこを通る流れが(層性ではなく)音性を帯びるとき、所望の非線形性の大部分を失う。これは、より多くの流れがフローリストリクタを通ることによって水力直径が大きくなることに起因する。
【0008】
焼結エレメントは多くの場合、マスフローコントローラに対する入口圧力が低くなると動作しない。これにより、入口圧力を高くする必要が生じるが、これは多くの場合、既存の市場で広く受け入れられることを阻む。したがって、圧力低下が小さいことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
II.概要
本開示は、上記欠点の一部を克服するとともに、関連技術のフローリストリクタ及びマスフローコントローラにおいて上述の利点の一部を確実にする技法を提供する。
【0010】
本開示の一態様によれば、少なくとも1つの導入部、少なくとも1つの導出部、及び流路を有する第1のディスクと、流路を有さない第2のディスクとを備えるフローリストリクタが提供される。第1のディスク及び第2のディスクは互いに積層される。
【0011】
別の態様によれば、入力部と、出力部と、流路と、圧力トランスデューサと、上記フローリストリクタとを備えるマスフローコントローラが提供される。
【0012】
本開示のさらに別の態様は、第1のディスクに少なくとも1本の流路を形成することを含むことを特徴とするフローリストリクタを製造する方法である。流路を含まない第2のディスクが、第1のディスクの上に重ねられる。
【0013】
本開示の上記目的及び利点は、添付図面を参照してその好ましい実施形態を詳細に説明することによって、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)〜(c)はディスクの例示的な実施形態を示す。
【図2】積み重ねディスクリストリクタの例示的な実施形態を示す。
【図3】6種類のガスに関する、積み重ねリストリクタを有するMFCの例示的な実施形態の流れデータを示すグラフを示す。
【図4】(a)〜(c)は3つのフローディスク例のうちの1つの例示的な実施形態を示す。
【図5】リストリクタタイプのいくつかの可能な組み合わせ例を示す表を示す。
【図6】比較のために多孔性金属リストリクタ及びチューブリストリクタのデータを示す。
【図7】拡散接合前の、10個のF1_24ディスク例の流れ非線形性及び変動性を示す。
【図8A】拡散接合前の別のタイプのディスクの非線形性及び変動性を示す。
【図8B】読み取りバンドの1%以内まで性能が著しく向上する、2番ディスクの別の例示的な実施形態からのデータを示す。
【図9】比較のために焼結エレメントディスクリストリクタの流れ曲線及び変動性を示す。
【図10】300SCCMリストリクタの後拡散接合を示す。
【図11】3個の300sccmディスクがリストリクタに積み重ねられた、900SCCMリストリクタの後拡散接合を示す。
【図12A】同じフローカテゴリにおけるリストリクタごとの変動を示す。
【図12B】同じフローカテゴリにおけるリストリクタごとの変動を示す。
【図13】マスフローコントローラを900sccmリストリクタを用いて作製し、同じ較正及び設定点を有する6種類のガスで動作させた結果を示す。
【図14】本開示のディスクリストリクタの例示的な実施形態の試験結果及びシミュレーション結果を示す2つのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
IV.詳細な説明
IV.A.概要
本開示の非焼結フローリストリクタは、ブライト鋼板の厚さに対応して形成される流路を有する。流路は、エッチングプロセスによって形成される。流路を有するこのような1枚の板に、エッチング路を有さない別の板が被せられる。この種の流路エレメントをサンドイッチ状に重ねて、所望の流量を得る。ディスク形の流路エレメントは、拡散接合を用いて、流路を有さないエレメントに取り付けられる。
【0016】
例示的な実施形態では、窓とも呼ばれる流路の断面積は、板厚及び板厚内のエッチングの深さによって決まる。このような窓の数を増減させることによって、フローリストリクタ内の流量及び差圧の調整を制御することができる。さらに、エッチングの幅及び板厚を変えることで、流路の断面積を制御することができる。
【0017】
フローリストリクタ内の流量及び差圧は、エッチングが施された板の数及び板厚を増減させることによっても制御することができる。
【0018】
このようなフローリストリクタは、低流量域での動作を可能にする非線形特性を有するため、低圧で動作する圧力計による圧力測定の誤差が減る。
【0019】
このようなフローリストリクタは、あらゆる流体材料に適用可能であり、流体流量測定のために圧力計との様々な組み合わせで用いることができる。
【0020】
IV.B.例示的な実施形態
例示的な実施形態を図1に示す。本開示の積層型ディスクリストリクタの図示の実施形態は、フローディスク及びスペーサディスクから成る。フローディスクは、エッチングで完全に貫通除去した部分(例えば部分100)を有する。これらのエッチング除去部分は通常、一定の幅であり、内側位置110から外側位置120まで延びる。
【0021】
スペーサディスク(図1(b))は、エッチング貫通部分を有さない。これらは、図2に示すフローディスクの両面に配置される。フローディスクのエッチング部分がフローディスクの真上及び真下のスペーサディスクに隣接することによって、流路が形成される。スペーサディスクは通常、流路の開始位置110よりも大きな内径130と、流路の終端位置120よりも小さな外径とを有することで、ガスが流路に出入りすることを可能にする。
【0022】
このような貫通エッチングされたフローディスクとスペーサディスクとの組み合わせにより、流路水力直径のより良好な制御が得られる。当然の結果として、リストリクタごとの変動のより良好な制御が得られる。
【0023】
代替的な実施態様は、本質的に直線状ではなく図1(c)に示すように湾曲した流路を辿るフローディスクである。これにより、フローディスクの直径が限られている場合、流路(複数可)の長さを最大にすることができる。
【0024】
さらに別の代替的な実施形態では、流路がアルキメデススパイラル(すなわち、極座標表記でr=dα)のパターンを辿る最適な幾何学的形状が用いられる。
【0025】
別の実施形態では、主に圧縮性の層流が得られて、デバイスが有益な非線形を示すようになる。これにより、より広いダイナミックレンジが可能になる。
【0026】
例示的な実施形態では、1本の流路又は複数の流路が1つのディスクにレイアウトされる。流路は同一であっても同一でなくてもよい。次に、スペーサディスクをフローディスク間に交互に挟んで、複数のディスクを互いに積み重ねる。これにより、大きなダイナミックレンジに及ぶいくつかの異なるリストリクタの作製の基礎が得られる。このようなダイナミックレンジが利用可能であることで、必要とされる較正作業が減る。
【0027】
上記のように、複数のフローディスクを、小さなタブによって保持された1枚の板にエッチングすることができる。板は、フローディスク及びスペーサディスクの両方に共通のツーリングホールを含むことができる。
【0028】
フローディスク及びスペーサディスクは、互いに対してディスクの正しい位置を確保するためにツーリングピンによって位置合わせされる。板は、適切な相対位置で互いに拡散接合されるまで板を所定位置に保持するために、スポット溶接されるか又は他の手段によって保持される。
【0029】
代替的な実施形態では、ディスクは拡散接合以外の他の手段(例えば、機械的締着)によってつなぎ合わせることができる。
【0030】
締着された機構は、望ましくないガスを抜くか又はゆっくりと乾燥させる接合面を有する。ディスクの拡散接合は、金属面同士を接合して望ましくない接合面をなくす。
【0031】
厚さが0.002インチ(約0.0508mm)を超える推奨ディスクを焼きなまして、プロセス中の結晶粒の成長を最小限に抑えることができ、0.002インチ(約0.0508mm)未満のディスクを50%以上加工硬化させてディスクの剛性を高めることによって、取り扱い性を向上させることができる。
【0032】
上記のように、ディスクリストリクタは、スペーサディスク間に交互に配置されたフローディスクから成る。3つのフローディスク例を図4に示す。これらは、各ディスクの流路の数のみが互いに異なる。ディスクF1.1、F1.8、及びF1.22を図4(a)〜図4(c)に示す。
【0033】
リストリクタの所望の流量定格に応じて、例示的なリストリクタ全てのサイズを2,500SCCM以下になるように作製するために、1つ〜3つのフローディスクが含まれる。このような例示的な構成では、最小の40SCCMリストリクタは1本の流路を有し、2,500sccmリストリクタは66本の流路を有することになる。
【0034】
流量を多くするにはより多くのフローディスクを積み重ね、10SLMは264本の流路を有していたが、全ての10SLMのリストリクタスタックの高さは2mmであるため、同じMFC(マスフローコントローラ)ベースでの互換性が得られる。
【0035】
図5は、リストリクタの例のタイプを示す表を示す。
【0036】
IV.C.リストリクタの非線形性
このようなリストリクタ設計では、非線形の流れが得られるとともに、圧縮性流れも得られる。比較すると、サーマルMFCの層流エレメントは圧力低下が小さいように設計されており、LFE(層流エレメント)にわたる圧力低下は、ライン圧力と比較して著しくはない。このようなサーマルMFCでは、ガス密度はその経路に沿って大きく変化せず、流れは非圧縮性であるとみなすことができる。
【0037】
層流では、粘性力が優勢であり、平行な流れライン間の剪断速度に比例する。非圧縮性流れの場合、この比例粘性関係から、標準的なサーマルMFCで既知である圧力低下と流量との間の単純でよく知られた線形関係が得られる。例えば、流れを2倍にするとエレメントにわたる圧力低下も2倍になる。
【0038】
圧縮性流れでは、この単純な線形関係はもはや当てはまらない。しかしながら、流れと、入口圧力と、排気圧力との間の非線形関係は、単純な非圧縮性流れの理論を有限差分法と組み合わせることによって効果的にシミュレートすることができる。一般的な支配方程式の展開は、シミュレーション結果を観察し、条件の工学的重ね合わせを適用して排気圧力の効果を決定することによって行われる。
【0039】
圧縮性流れ下での理想的な層流エレメントの解析結果は、以下のように要約される。
【0040】
1.真空内への質量流量は、幾何学的定数×絶対入口圧力の2乗に等しい。
【0041】
Mvac=KGeo×Kgas prop=f(t)×P2inlet
【0042】
2.非真空条件への質量流量は、絶対入口圧力の2乗及び絶対排気圧力対絶対入口圧力の比の関数である。特に、非真空排気質量流量は、この圧力比の逆正弦の余弦で減少する。
【0043】
Mn_vac=Mvac×cos(asin(Pexh/Pinlet))=KGeo×P2inlet×cos(asin(Pexh/Pinlet))
【0044】
ディスクリストリクタの例示的な実施形態に関する試験データから得られる流れ曲線と、層流理論のみに依拠した数値シミュレーションによって生成される流れ曲線とは、本開示のリストリクタを通る流れが主に圧縮性の層流であるという結論を裏付けるものである。
【0045】
図14は、本開示のディスクリストリクタの例示的な実施形態の試験結果及びシミュレーション結果を示す2つのグラフを示す。
【0046】
本開示のディスクリストリクタの主な機構は圧縮性の層流であるが、二次機構が存在し、これが試験データとシミュレーションとの間の偏差に関与する。
【0047】
例示的な実施形態の実際のデータに最も一致するのは、
【0048】
Mvac=KGeo×P1.85inlet
という方程式であって、
【0049】
Mvac=KGeo×P2.0inlet
ではない。
【0050】
冪数が2.0ではなく1.85である理想的な方程式からのこの偏差は、これらの機構を証明する。シミュレーション及び一般方程式で説明されない二次機構は、以下のものを含む。
【0051】
1.層流は、LFEに入ってから十分に発達するのに限られた距離を要する。当該技術分野における以前の研究では、入口から50水力直径の距離に達するまで層流がLFE内で完全に発達しないことが示唆されている。
【0052】
レイノルズ数がガス流がほぼ層流形態であることを示していても、ガス速度による位置運動エネルギー、(1/2)mV2の項が大きくなると、局所的な乱れがさらなる寄生運動損失を引き起こし得る。(さらなる詳細は、Drexelによる米国特許で見ることができる)このような場合、著者らは、このさらなる運動損失が、以下で分かるようにSF6及びCF4の流れ曲線がより軽量のガスの流れ曲線のスカラー倍(相対粘度のみによって決まる)からわずかにずれる原因であると推測する。この作用を説明するために、運動損失の項を既存のシミュレーションに加えてこの作用に近似させることができる。
【0053】
最後に、層流の様相は、ガスの平均自由行程が流路の水力直径の大部分となる時点までLFEの一部のライン圧力が低下すると衰え始める。このような状況では、質量流量は純粋な層流理論と比較して減少する。この流量減少の推定値が存在し、これは通常、ガスの平均自由行程対流路の水力直径の比に適合される。したがって、分子流の影響が既存のシミュレーションに加えられ得る。
【0054】
流路のL/D比を増大させると、二次的な非層流作用に対して層流力が増大する。設計パッケージサイズ及び部品費が許す限り、この比を最大にして、理想的な層流エレメントにより近い性能を有するリストリクタを得るべきである。
【0055】
圧縮性流れの圧力低下が大きくても大幅に層流を維持するようにリストリクタの幾何学的形状を設計すれば、非線形の流れ曲線を利用することができる。この有益な非線形性を用いると、サーマルMFCが示すようなフルスケール誤差特性の%ではなく読み取り誤差特性の%を示すマスフローコントローラを開発することができる。
【0056】
流路の有効(水力)直径が比較的小さく長さが比較的長いことにより、圧縮性ガス流に関連する圧力低下が大きくても維持できる層流が得られる。
【0057】
サーマルMFCの層流エレメントは、圧力低下が小さいように設計されており、全体の圧力低下はリストリクタのライン圧力と比較して小さく、ガス流はこのようなサーマルMFCでは非圧縮性であるとみなすことができる。
【0058】
しかしながら、本開示の構造は、圧縮性流れを意図的に促す。リストリクタをMFC制御弁の下流に配置してMFCから真空に排気する設計の結果として、層流エレメントにわたる圧力低下は、リストリクタの絶対上流圧力の100%ではないとしても大きな割合と等しい。
【0059】
これら大きな圧力低下を有する層流を維持するためには、圧縮性層流リストリクタの流路の有効直径がサーマルMFCリストリクタ設計に見られる直径よりもはるかに小さい必要がある。本開示のディスクリストリクタはこの課題を果たす。
【0060】
非圧縮性層流の場合、
質量流量mは体積流量Q×密度rであり、圧力低下dPに比例する。
【0061】
M=Q×r
【0062】
密度は、ガスの絶対圧力Pabsに反比例する。
【0063】
r∝1/Pabs
【0064】
圧力低下は体積流量×絶対粘度mに比例する。
【0065】
dP∝Q×h、したがってQ∝dP/m
【0066】
項の置換及び結合によって以下を得ることができる。
【0067】
M=K dP/m×1/Pabs=K/m×dP/Pabs
【0068】
粘度が圧力とともにわずかに変化し、所与のガスで一定であるとみなされ得るとすると、質量流量は圧力低下に比例し、ライン圧力に反比例する。
【0069】
一例として、一定の質量流量では、流れの絶対ライン圧力を減らす結果としてリストリクタにわたる圧力低下は2倍になる。
【0070】
非圧縮性層流の特性を考察するために、圧縮性流れを、連続部分それぞれの出口が次の部分の入口と直列になった、一連の非圧縮性流れとみなすことができる。また、層流エレメントが真空まで排気されていると仮定する。
【0071】
この場合、一連の組のリストリクタ部分の平均ライン圧力は、リストリクタへの入口圧力が低下すると低下する。その結果、リストリクタに対する有効ライン圧力が低下して、その組のsccmあたりの増分圧力が上昇する。この結果は、流れ曲線の勾配(torr/sccm)がリストリクタの絶対入口圧力の値に比例する、本開示のディスクリストリクタの観察された流れ特性とみごとに相関している。
【0072】
IV.D.試験結果
十分に小さな直径を有するディスクフローリストリクタの一例を、大きな圧力低下で真空まで排気する層流を確保するように設計した。リストリクタをMFC内に配置し、リストリクタの流れ性能を調査した。図6は、比較のために多孔性金属リストリクタ及びチューブリストリクタのデータを示す。リストリクタディスクの有益な非線形性、流量、及び変動性を、拡散接合の前後に試験した。
【0073】
図7は、拡散接合前の、10個のF1_24ディスクの流れ非線形性及び変動性を示す。
【0074】
同様に、図8Aは、拡散接合前の別のタイプのディスクの非線形性及び変動性を示す。
【0075】
同様に、図8Bは、読み取りバンドの1%以内まで性能が著しく向上する、2番ディスクの別の例示的な実施形態からのデータを示す。
【0076】
図9は、比較のために焼結エレメントディスクリストリクタの流れ曲線及び変動性を示す。
【0077】
図10は、300SCCMリストリクタの後拡散接合を示す。見て分かるように、目標圧力低下及び非線形性は良好である。
【0078】
同様に、図11は、3個の300sccmディスクがリストリクタに積み重ねられた、900SCCMリストリクタの後拡散接合を示す。これは、接合中の押圧が500ポンドまで減っているため、垂直方向の積み重ねがリストリクタを通る流れに大きな影響を及ぼさないことを示す。
【0079】
同じフローカテゴリにおけるリストリクタごとの変動を、8つのリストリクタカテゴリのうち6つについて図12A及び図12Bに示す。単純な1ポイント試験を拡散接合リストリクタの試験として用いた。
【0080】
見て分かるように、リストリクタカテゴリ内の標準偏差は、試験した6つのカテゴリ全てで約3%である。
【0081】
1つの最終試験として、マスフローコントローラを900sccmリストリクタを用いて作製し、同じ較正及び設定点を有する6種類のガスで動作させた。真空までの排気中に、上流CDG圧力読み取り値をMFCに問い合わせる(queering)ことによって、各ガスの流れ曲線を収集した。Mol BlocをMFCと直列に配置して、流れ基準として用いた。多様なガスごとに予想される変動が、層流理論から予想されるように依然として約+/−20%であることを確認することが目的であった。
【0082】
結果を図13に示す。
【0083】
見て分かるように、著しく異なるガスタイプ間の変動は予想通りに小さく、全ての場合に有益な非線形性がある。
【0084】
本発明に対する他の変更及び変形が、上記の開示及び教示から当業者には明らかとなるであろう。したがって、本発明の特定の実施形態のみを本明細書中で具体的に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに多くの変更を本発明に加えることができることが明らかとなるであろう。
【技術分野】
【0001】
1.説明
I.A.関連出願
本出願は、同時係属中の204年2月27日に出願された米国仮特許出願第60/548,109号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の開示内容は本件出願に援用する。また、本出願は、同時係属中のダニエル マッド等による”Higher accuracy pressure based flow controller”と題する米国出願第10/652,506号の一部係属出願である。この一部係属出願は2002年8月28日に出願された仮出願第60/406,511号を優先権の基礎としており、これら両出願の内容を本件出願に援用する。
【0002】
I.B.分野
本開示は、例えばマスフローコントローラの一部として流量測定に用いられるフローリストリクタに関する技法を教示する。本開示は、フローリストリクタ内に清浄であり性能の変動なく形成される流路を設けるのに役立つ。
【背景技術】
【0003】
I.C.背景
1.導入
フローリストリクタは、マスフローコントローラを含む多くの用途で用いられる。従来のフローリストリクタは、焼結合金又はフィルタから成り、これらの流れ抵抗は、製造プロセスにおいて性能の許容設計値範囲に反して制御することはできない。設計者は多くの場合、適切なフローリストリクタを得るために既製品から適したフローリストリクタを選択する必要がある。さらに、フローリストリクタは、流量測定の使用時に非線形特性を示すことができる。
【0004】
従来のフローリストリクタは、焼結合金又は網状エレメントから作製される。これらのフローリストリクタは、流量制御装置の流れ圧力の緩衝器として用いられる。例えば、流量計は、フローリストリクタの差圧及び流れ特性を利用することができる。
【0005】
焼結合金材料製のこのタイプのフローリストリクタの場合、多孔度を制御することが困難である。さらに、このような製品は、或る特定の範囲の流れ抵抗を得るために既製品から選択しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2.従来の焼結フローリストリクタの問題
焼結エレメントは、サーマルマスフローコントローラのリストリクタ構造ほど清浄ではないと考えられる。
【0007】
焼結エレメントの性能は多くの場合、5SLMを超える流れで低下する。焼結エレメントリストリクタは、そこを通る流れが(層性ではなく)音性を帯びるとき、所望の非線形性の大部分を失う。これは、より多くの流れがフローリストリクタを通ることによって水力直径が大きくなることに起因する。
【0008】
焼結エレメントは多くの場合、マスフローコントローラに対する入口圧力が低くなると動作しない。これにより、入口圧力を高くする必要が生じるが、これは多くの場合、既存の市場で広く受け入れられることを阻む。したがって、圧力低下が小さいことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
II.概要
本開示は、上記欠点の一部を克服するとともに、関連技術のフローリストリクタ及びマスフローコントローラにおいて上述の利点の一部を確実にする技法を提供する。
【0010】
本開示の一態様によれば、少なくとも1つの導入部、少なくとも1つの導出部、及び流路を有する第1のディスクと、流路を有さない第2のディスクとを備えるフローリストリクタが提供される。第1のディスク及び第2のディスクは互いに積層される。
【0011】
別の態様によれば、入力部と、出力部と、流路と、圧力トランスデューサと、上記フローリストリクタとを備えるマスフローコントローラが提供される。
【0012】
本開示のさらに別の態様は、第1のディスクに少なくとも1本の流路を形成することを含むことを特徴とするフローリストリクタを製造する方法である。流路を含まない第2のディスクが、第1のディスクの上に重ねられる。
【0013】
本開示の上記目的及び利点は、添付図面を参照してその好ましい実施形態を詳細に説明することによって、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)〜(c)はディスクの例示的な実施形態を示す。
【図2】積み重ねディスクリストリクタの例示的な実施形態を示す。
【図3】6種類のガスに関する、積み重ねリストリクタを有するMFCの例示的な実施形態の流れデータを示すグラフを示す。
【図4】(a)〜(c)は3つのフローディスク例のうちの1つの例示的な実施形態を示す。
【図5】リストリクタタイプのいくつかの可能な組み合わせ例を示す表を示す。
【図6】比較のために多孔性金属リストリクタ及びチューブリストリクタのデータを示す。
【図7】拡散接合前の、10個のF1_24ディスク例の流れ非線形性及び変動性を示す。
【図8A】拡散接合前の別のタイプのディスクの非線形性及び変動性を示す。
【図8B】読み取りバンドの1%以内まで性能が著しく向上する、2番ディスクの別の例示的な実施形態からのデータを示す。
【図9】比較のために焼結エレメントディスクリストリクタの流れ曲線及び変動性を示す。
【図10】300SCCMリストリクタの後拡散接合を示す。
【図11】3個の300sccmディスクがリストリクタに積み重ねられた、900SCCMリストリクタの後拡散接合を示す。
【図12A】同じフローカテゴリにおけるリストリクタごとの変動を示す。
【図12B】同じフローカテゴリにおけるリストリクタごとの変動を示す。
【図13】マスフローコントローラを900sccmリストリクタを用いて作製し、同じ較正及び設定点を有する6種類のガスで動作させた結果を示す。
【図14】本開示のディスクリストリクタの例示的な実施形態の試験結果及びシミュレーション結果を示す2つのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
IV.詳細な説明
IV.A.概要
本開示の非焼結フローリストリクタは、ブライト鋼板の厚さに対応して形成される流路を有する。流路は、エッチングプロセスによって形成される。流路を有するこのような1枚の板に、エッチング路を有さない別の板が被せられる。この種の流路エレメントをサンドイッチ状に重ねて、所望の流量を得る。ディスク形の流路エレメントは、拡散接合を用いて、流路を有さないエレメントに取り付けられる。
【0016】
例示的な実施形態では、窓とも呼ばれる流路の断面積は、板厚及び板厚内のエッチングの深さによって決まる。このような窓の数を増減させることによって、フローリストリクタ内の流量及び差圧の調整を制御することができる。さらに、エッチングの幅及び板厚を変えることで、流路の断面積を制御することができる。
【0017】
フローリストリクタ内の流量及び差圧は、エッチングが施された板の数及び板厚を増減させることによっても制御することができる。
【0018】
このようなフローリストリクタは、低流量域での動作を可能にする非線形特性を有するため、低圧で動作する圧力計による圧力測定の誤差が減る。
【0019】
このようなフローリストリクタは、あらゆる流体材料に適用可能であり、流体流量測定のために圧力計との様々な組み合わせで用いることができる。
【0020】
IV.B.例示的な実施形態
例示的な実施形態を図1に示す。本開示の積層型ディスクリストリクタの図示の実施形態は、フローディスク及びスペーサディスクから成る。フローディスクは、エッチングで完全に貫通除去した部分(例えば部分100)を有する。これらのエッチング除去部分は通常、一定の幅であり、内側位置110から外側位置120まで延びる。
【0021】
スペーサディスク(図1(b))は、エッチング貫通部分を有さない。これらは、図2に示すフローディスクの両面に配置される。フローディスクのエッチング部分がフローディスクの真上及び真下のスペーサディスクに隣接することによって、流路が形成される。スペーサディスクは通常、流路の開始位置110よりも大きな内径130と、流路の終端位置120よりも小さな外径とを有することで、ガスが流路に出入りすることを可能にする。
【0022】
このような貫通エッチングされたフローディスクとスペーサディスクとの組み合わせにより、流路水力直径のより良好な制御が得られる。当然の結果として、リストリクタごとの変動のより良好な制御が得られる。
【0023】
代替的な実施態様は、本質的に直線状ではなく図1(c)に示すように湾曲した流路を辿るフローディスクである。これにより、フローディスクの直径が限られている場合、流路(複数可)の長さを最大にすることができる。
【0024】
さらに別の代替的な実施形態では、流路がアルキメデススパイラル(すなわち、極座標表記でr=dα)のパターンを辿る最適な幾何学的形状が用いられる。
【0025】
別の実施形態では、主に圧縮性の層流が得られて、デバイスが有益な非線形を示すようになる。これにより、より広いダイナミックレンジが可能になる。
【0026】
例示的な実施形態では、1本の流路又は複数の流路が1つのディスクにレイアウトされる。流路は同一であっても同一でなくてもよい。次に、スペーサディスクをフローディスク間に交互に挟んで、複数のディスクを互いに積み重ねる。これにより、大きなダイナミックレンジに及ぶいくつかの異なるリストリクタの作製の基礎が得られる。このようなダイナミックレンジが利用可能であることで、必要とされる較正作業が減る。
【0027】
上記のように、複数のフローディスクを、小さなタブによって保持された1枚の板にエッチングすることができる。板は、フローディスク及びスペーサディスクの両方に共通のツーリングホールを含むことができる。
【0028】
フローディスク及びスペーサディスクは、互いに対してディスクの正しい位置を確保するためにツーリングピンによって位置合わせされる。板は、適切な相対位置で互いに拡散接合されるまで板を所定位置に保持するために、スポット溶接されるか又は他の手段によって保持される。
【0029】
代替的な実施形態では、ディスクは拡散接合以外の他の手段(例えば、機械的締着)によってつなぎ合わせることができる。
【0030】
締着された機構は、望ましくないガスを抜くか又はゆっくりと乾燥させる接合面を有する。ディスクの拡散接合は、金属面同士を接合して望ましくない接合面をなくす。
【0031】
厚さが0.002インチ(約0.0508mm)を超える推奨ディスクを焼きなまして、プロセス中の結晶粒の成長を最小限に抑えることができ、0.002インチ(約0.0508mm)未満のディスクを50%以上加工硬化させてディスクの剛性を高めることによって、取り扱い性を向上させることができる。
【0032】
上記のように、ディスクリストリクタは、スペーサディスク間に交互に配置されたフローディスクから成る。3つのフローディスク例を図4に示す。これらは、各ディスクの流路の数のみが互いに異なる。ディスクF1.1、F1.8、及びF1.22を図4(a)〜図4(c)に示す。
【0033】
リストリクタの所望の流量定格に応じて、例示的なリストリクタ全てのサイズを2,500SCCM以下になるように作製するために、1つ〜3つのフローディスクが含まれる。このような例示的な構成では、最小の40SCCMリストリクタは1本の流路を有し、2,500sccmリストリクタは66本の流路を有することになる。
【0034】
流量を多くするにはより多くのフローディスクを積み重ね、10SLMは264本の流路を有していたが、全ての10SLMのリストリクタスタックの高さは2mmであるため、同じMFC(マスフローコントローラ)ベースでの互換性が得られる。
【0035】
図5は、リストリクタの例のタイプを示す表を示す。
【0036】
IV.C.リストリクタの非線形性
このようなリストリクタ設計では、非線形の流れが得られるとともに、圧縮性流れも得られる。比較すると、サーマルMFCの層流エレメントは圧力低下が小さいように設計されており、LFE(層流エレメント)にわたる圧力低下は、ライン圧力と比較して著しくはない。このようなサーマルMFCでは、ガス密度はその経路に沿って大きく変化せず、流れは非圧縮性であるとみなすことができる。
【0037】
層流では、粘性力が優勢であり、平行な流れライン間の剪断速度に比例する。非圧縮性流れの場合、この比例粘性関係から、標準的なサーマルMFCで既知である圧力低下と流量との間の単純でよく知られた線形関係が得られる。例えば、流れを2倍にするとエレメントにわたる圧力低下も2倍になる。
【0038】
圧縮性流れでは、この単純な線形関係はもはや当てはまらない。しかしながら、流れと、入口圧力と、排気圧力との間の非線形関係は、単純な非圧縮性流れの理論を有限差分法と組み合わせることによって効果的にシミュレートすることができる。一般的な支配方程式の展開は、シミュレーション結果を観察し、条件の工学的重ね合わせを適用して排気圧力の効果を決定することによって行われる。
【0039】
圧縮性流れ下での理想的な層流エレメントの解析結果は、以下のように要約される。
【0040】
1.真空内への質量流量は、幾何学的定数×絶対入口圧力の2乗に等しい。
【0041】
Mvac=KGeo×Kgas prop=f(t)×P2inlet
【0042】
2.非真空条件への質量流量は、絶対入口圧力の2乗及び絶対排気圧力対絶対入口圧力の比の関数である。特に、非真空排気質量流量は、この圧力比の逆正弦の余弦で減少する。
【0043】
Mn_vac=Mvac×cos(asin(Pexh/Pinlet))=KGeo×P2inlet×cos(asin(Pexh/Pinlet))
【0044】
ディスクリストリクタの例示的な実施形態に関する試験データから得られる流れ曲線と、層流理論のみに依拠した数値シミュレーションによって生成される流れ曲線とは、本開示のリストリクタを通る流れが主に圧縮性の層流であるという結論を裏付けるものである。
【0045】
図14は、本開示のディスクリストリクタの例示的な実施形態の試験結果及びシミュレーション結果を示す2つのグラフを示す。
【0046】
本開示のディスクリストリクタの主な機構は圧縮性の層流であるが、二次機構が存在し、これが試験データとシミュレーションとの間の偏差に関与する。
【0047】
例示的な実施形態の実際のデータに最も一致するのは、
【0048】
Mvac=KGeo×P1.85inlet
という方程式であって、
【0049】
Mvac=KGeo×P2.0inlet
ではない。
【0050】
冪数が2.0ではなく1.85である理想的な方程式からのこの偏差は、これらの機構を証明する。シミュレーション及び一般方程式で説明されない二次機構は、以下のものを含む。
【0051】
1.層流は、LFEに入ってから十分に発達するのに限られた距離を要する。当該技術分野における以前の研究では、入口から50水力直径の距離に達するまで層流がLFE内で完全に発達しないことが示唆されている。
【0052】
レイノルズ数がガス流がほぼ層流形態であることを示していても、ガス速度による位置運動エネルギー、(1/2)mV2の項が大きくなると、局所的な乱れがさらなる寄生運動損失を引き起こし得る。(さらなる詳細は、Drexelによる米国特許で見ることができる)このような場合、著者らは、このさらなる運動損失が、以下で分かるようにSF6及びCF4の流れ曲線がより軽量のガスの流れ曲線のスカラー倍(相対粘度のみによって決まる)からわずかにずれる原因であると推測する。この作用を説明するために、運動損失の項を既存のシミュレーションに加えてこの作用に近似させることができる。
【0053】
最後に、層流の様相は、ガスの平均自由行程が流路の水力直径の大部分となる時点までLFEの一部のライン圧力が低下すると衰え始める。このような状況では、質量流量は純粋な層流理論と比較して減少する。この流量減少の推定値が存在し、これは通常、ガスの平均自由行程対流路の水力直径の比に適合される。したがって、分子流の影響が既存のシミュレーションに加えられ得る。
【0054】
流路のL/D比を増大させると、二次的な非層流作用に対して層流力が増大する。設計パッケージサイズ及び部品費が許す限り、この比を最大にして、理想的な層流エレメントにより近い性能を有するリストリクタを得るべきである。
【0055】
圧縮性流れの圧力低下が大きくても大幅に層流を維持するようにリストリクタの幾何学的形状を設計すれば、非線形の流れ曲線を利用することができる。この有益な非線形性を用いると、サーマルMFCが示すようなフルスケール誤差特性の%ではなく読み取り誤差特性の%を示すマスフローコントローラを開発することができる。
【0056】
流路の有効(水力)直径が比較的小さく長さが比較的長いことにより、圧縮性ガス流に関連する圧力低下が大きくても維持できる層流が得られる。
【0057】
サーマルMFCの層流エレメントは、圧力低下が小さいように設計されており、全体の圧力低下はリストリクタのライン圧力と比較して小さく、ガス流はこのようなサーマルMFCでは非圧縮性であるとみなすことができる。
【0058】
しかしながら、本開示の構造は、圧縮性流れを意図的に促す。リストリクタをMFC制御弁の下流に配置してMFCから真空に排気する設計の結果として、層流エレメントにわたる圧力低下は、リストリクタの絶対上流圧力の100%ではないとしても大きな割合と等しい。
【0059】
これら大きな圧力低下を有する層流を維持するためには、圧縮性層流リストリクタの流路の有効直径がサーマルMFCリストリクタ設計に見られる直径よりもはるかに小さい必要がある。本開示のディスクリストリクタはこの課題を果たす。
【0060】
非圧縮性層流の場合、
質量流量mは体積流量Q×密度rであり、圧力低下dPに比例する。
【0061】
M=Q×r
【0062】
密度は、ガスの絶対圧力Pabsに反比例する。
【0063】
r∝1/Pabs
【0064】
圧力低下は体積流量×絶対粘度mに比例する。
【0065】
dP∝Q×h、したがってQ∝dP/m
【0066】
項の置換及び結合によって以下を得ることができる。
【0067】
M=K dP/m×1/Pabs=K/m×dP/Pabs
【0068】
粘度が圧力とともにわずかに変化し、所与のガスで一定であるとみなされ得るとすると、質量流量は圧力低下に比例し、ライン圧力に反比例する。
【0069】
一例として、一定の質量流量では、流れの絶対ライン圧力を減らす結果としてリストリクタにわたる圧力低下は2倍になる。
【0070】
非圧縮性層流の特性を考察するために、圧縮性流れを、連続部分それぞれの出口が次の部分の入口と直列になった、一連の非圧縮性流れとみなすことができる。また、層流エレメントが真空まで排気されていると仮定する。
【0071】
この場合、一連の組のリストリクタ部分の平均ライン圧力は、リストリクタへの入口圧力が低下すると低下する。その結果、リストリクタに対する有効ライン圧力が低下して、その組のsccmあたりの増分圧力が上昇する。この結果は、流れ曲線の勾配(torr/sccm)がリストリクタの絶対入口圧力の値に比例する、本開示のディスクリストリクタの観察された流れ特性とみごとに相関している。
【0072】
IV.D.試験結果
十分に小さな直径を有するディスクフローリストリクタの一例を、大きな圧力低下で真空まで排気する層流を確保するように設計した。リストリクタをMFC内に配置し、リストリクタの流れ性能を調査した。図6は、比較のために多孔性金属リストリクタ及びチューブリストリクタのデータを示す。リストリクタディスクの有益な非線形性、流量、及び変動性を、拡散接合の前後に試験した。
【0073】
図7は、拡散接合前の、10個のF1_24ディスクの流れ非線形性及び変動性を示す。
【0074】
同様に、図8Aは、拡散接合前の別のタイプのディスクの非線形性及び変動性を示す。
【0075】
同様に、図8Bは、読み取りバンドの1%以内まで性能が著しく向上する、2番ディスクの別の例示的な実施形態からのデータを示す。
【0076】
図9は、比較のために焼結エレメントディスクリストリクタの流れ曲線及び変動性を示す。
【0077】
図10は、300SCCMリストリクタの後拡散接合を示す。見て分かるように、目標圧力低下及び非線形性は良好である。
【0078】
同様に、図11は、3個の300sccmディスクがリストリクタに積み重ねられた、900SCCMリストリクタの後拡散接合を示す。これは、接合中の押圧が500ポンドまで減っているため、垂直方向の積み重ねがリストリクタを通る流れに大きな影響を及ぼさないことを示す。
【0079】
同じフローカテゴリにおけるリストリクタごとの変動を、8つのリストリクタカテゴリのうち6つについて図12A及び図12Bに示す。単純な1ポイント試験を拡散接合リストリクタの試験として用いた。
【0080】
見て分かるように、リストリクタカテゴリ内の標準偏差は、試験した6つのカテゴリ全てで約3%である。
【0081】
1つの最終試験として、マスフローコントローラを900sccmリストリクタを用いて作製し、同じ較正及び設定点を有する6種類のガスで動作させた。真空までの排気中に、上流CDG圧力読み取り値をMFCに問い合わせる(queering)ことによって、各ガスの流れ曲線を収集した。Mol BlocをMFCと直列に配置して、流れ基準として用いた。多様なガスごとに予想される変動が、層流理論から予想されるように依然として約+/−20%であることを確認することが目的であった。
【0082】
結果を図13に示す。
【0083】
見て分かるように、著しく異なるガスタイプ間の変動は予想通りに小さく、全ての場合に有益な非線形性がある。
【0084】
本発明に対する他の変更及び変形が、上記の開示及び教示から当業者には明らかとなるであろう。したがって、本発明の特定の実施形態のみを本明細書中で具体的に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに多くの変更を本発明に加えることができることが明らかとなるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導入部、少なくとも1つの導出部、並びに、前記導入部及び導出部を繋げる流路を有する第1のディスクと、
流路を有さない第2のディスクとを備え、
複数の第1のディスク及び複数の第2のディスクが交互に積み重ねられて積層構造をなすものであり、
前記第1のディスク及び前記第2のディスクが非焼結金属からなり、
前記第1のディスクに形成された貫通孔により前記導入部、前記導出部及び前記流路が構成されるとともに、前記第1のディスクの厚みにより前記流路の断面積が調整されることを特徴とするフローリストリクタ。
【請求項2】
入力部と、出力部と、流路と、圧力トランスデューサと、フローリストリクタとを備えたマスフローコントローラであって、
前記フローリストリクタが、少なくとも1つの導入部、少なくとも1つの導出部、並びに、前記導入部及び導出部を繋げる流路を有する第1のディスクと、流路を有さない第2のディスクとを備え、
複数の第1のディスク及び複数の第2のディスクが交互に積み重ねられて積層構造をなすものであり、
前記第1のディスク及び前記第2のディスクが非焼結金属からなり、
前記第1のディスクに形成された貫通孔により前記導入部、前記導出部及び前記流路が構成されるとともに、前記第1のディスクの厚みにより前記流路の断面積が調整されることを特徴とするマスフローコントローラ。
【請求項1】
少なくとも1つの導入部、少なくとも1つの導出部、並びに、前記導入部及び導出部を繋げる流路を有する第1のディスクと、
流路を有さない第2のディスクとを備え、
複数の第1のディスク及び複数の第2のディスクが交互に積み重ねられて積層構造をなすものであり、
前記第1のディスク及び前記第2のディスクが非焼結金属からなり、
前記第1のディスクに形成された貫通孔により前記導入部、前記導出部及び前記流路が構成されるとともに、前記第1のディスクの厚みにより前記流路の断面積が調整されることを特徴とするフローリストリクタ。
【請求項2】
入力部と、出力部と、流路と、圧力トランスデューサと、フローリストリクタとを備えたマスフローコントローラであって、
前記フローリストリクタが、少なくとも1つの導入部、少なくとも1つの導出部、並びに、前記導入部及び導出部を繋げる流路を有する第1のディスクと、流路を有さない第2のディスクとを備え、
複数の第1のディスク及び複数の第2のディスクが交互に積み重ねられて積層構造をなすものであり、
前記第1のディスク及び前記第2のディスクが非焼結金属からなり、
前記第1のディスクに形成された貫通孔により前記導入部、前記導出部及び前記流路が構成されるとともに、前記第1のディスクの厚みにより前記流路の断面積が調整されることを特徴とするマスフローコントローラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−257004(P2011−257004A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139507(P2011−139507)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【分割の表示】特願2007−500931(P2007−500931)の分割
【原出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【分割の表示】特願2007−500931(P2007−500931)の分割
【原出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】
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