説明

フーリエ変換近赤外線分光学を用いた感光性樹脂コポリマーの組成分析方法

【課題】フーリエ変換近赤外線分光学(Fourier Transform Near-Infrared Spectroscopy;FT−NIR)を用いた感光性樹脂コポリマーの組成分析方法を提供する。
【解決手段】2種以上のモノマーを様々な比率で混合して得た混合物から、フーリエ変換近赤外線分光学(FT−NIR)を用いた分析により、前記各々のモノマーに対する検量線を作成した後、前記2種以上のモノマーからなる分析しようとする感光性樹脂コポリマーをFT−NIR分析により得られた値を前記検量線に代入して、コポリマーの組成を算出することを特徴としていて、このような本発明の分析方法によると、様々なモノマーが混合してなるフォトレジスト用感光性樹脂コポリマーにおけるモノマーの組成をより便宜で、かつ、再現性を持って分析することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端半導体及び液晶素子(LCD)等の主素材として用いられているフォトレジスト用の感光性樹脂コポリマーの組成を、フーリエ変換近赤外線分光学(Fourier Transform Near-Infrared Spectroscopy, FT-NIR)を用いてより正確でかつ、容易に分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程において、主素材として用いられているフォトレジストは、通常、感光性樹脂(高分子)、感光剤、溶媒、添加剤等と、様々な物質で構成される。これらの中で、感光性樹脂高分子は、最も多くの部分を占めており、その性能具現に最も大きい役割を果たす核心材料である。
【0003】
このような感光性樹脂高分子は、互いに異なる2種以上のモノマーの組み合わせからなるコポリマーであって、構成するモノマーの種類及びその割合によって透明性、耐腐食性、機械的性質のような物理化学的特性が異なってくる。つまり、所望の特性を持っているモノマーを全て合成して反応させても、それらのモノマーを正確な割合で一つの高分子に反応させなければ、それぞれのモノマーの特性が発現するのは難い。さらに、コポリマーのこのようなモノマー構成率を正確に分析し、所望の高分子が合成されているかを分析する技術もまた重要である。
【0004】
従来では、構成要素であるモノマーの組成に対する分析に核磁気共鳴分光分析法(NMR)が多く用いられていたが、現在開発中であるフォトレジスト用感光性樹脂コポリマーの場合、コポリマーの中のモノマーの種類と数が様々で、核磁気共鳴分光分析法ではピークの重ねにより、再現性あって精度のよい結果を得るには限界があった。
【0005】
また、回折格子から分散した光を利用する赤外線分光学、つまり、フーリエ変換赤外線分光学(Fourier Transform Infrared Spectroscopy, FT-IR)を用いる分析法も組成の分析に試みていたが(特許文献1、2および3を参照)、FT−IRの波長領域である700〜4000cm−1の領域では、原料モノマーの官能基の重複現象が頻繁に起こり、各モノマーに対する特徴的な分子強度を測定するのが難しい。これによって、高分子内に含まれているモノマーの組成の測定が困難であるという問題があった。

【特許文献1】特開平2−287456号公報
【特許文献2】特開平9−265189号公報
【特許文献3】US特第5,989,763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、様々なモノマーが混合してなるフォトレジスト用感光性樹脂コポリマーにおけるモノマーの組成をより便宜で、かつ、再現性を持って分析できる分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、2種以上のモノマーを様々な割合で混合して得た混合物から、フーリエ変換近赤外線分光学(FT−NIR)を用いた分析により、前記各々のモノマーに対する検量線を作成した後、前記2種以上のモノマーからなる、分析しようとする感光性樹脂コポリマーのFT−NIR分析によって得られた値を前記検量線に代入して、コポリマーの組成を算出することを含む、感光性樹脂コポリマーの組成分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分析方法によると、感光性樹脂コポリマーを構成するモノマーの組成を、より便宜で、再現性を持ち(誤差なく)、かつ、素早く分析できて、多種類のモノマーに対して同時分析が可能で、さらに、共重合反応中にリアルタイムで反応の具合を確認することができるので、連続的な共重合工程が可能である。また、フォトレジストを構成する最も重要成分である感光性樹脂コポリマーの組成を分析することによって、半導体製造時、モノマーの組成による半導体の特性に対する予測が可能で、実質的なモノマーの役割に対する研究が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る感光性樹脂コポリマーの組成分析方法は、2種以上のモノマーを様々な割合で混合して得た混合物から、フーリエ変換近赤外線分光学(FT−NIR)による分析により、原料物質である前記各々のモノマーに対する検量線を作成した後、前記2種以上のモノマーからなる分析しようとする感光性樹脂コポリマーを、FT−NIR分析によって得られた値を前記検量線に代入して、コポリマーの組成を算出することを特徴とする。
【0010】
このような本発明を適用する技術は、フーリエ変換赤外線分光学(FT−IR)の波長領域である700〜4000cm−1の領域においてはよく現れないが、波長領域が4000〜12000cm−1のFT−NIRで特徴的に現れる分子振動を確認することによって(つまり、分子振動の倍音と組み合わせとによるピークを用いてその分子の強度を測定することによって)、感光性樹脂コポリマー内に含まれている2種以上のモノマーの量を再現性を持って測定することに基いている。
【0011】
本発明による感光性樹脂コポリマーは、好ましくは、下記の化学式1〜4で示す反復単位を2種以上含んでもよく、より好ましくは、アクリレート系又はメタクリレート系のコポリマーであるとよい。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
上記の式において、
は、水素、ハロゲン、C1‐6アルキル又はC1‐6ハロアルキルで、
は、C1‐6アルキル、ハロゲン又はヒドロキシに置換か非置換されている、C2‐15脂肪族炭化水素基、C6‐18芳香族炭化水素基、ラクトニル又はブチロラクトニルで、
は、C2‐15アルキル、C2‐15ハロアルキル、C2‐15アルキルカルボニル又はシリルで、
は、C2‐15アルキル、C2‐15ハロアルキル、C2‐15アルキルカルボニル、C2‐15アルコキシ、C2‐15ハロアルコキシ、C2‐15アルキルエステル、C2‐15ハロアルキルエステル又はシリルである。
【0017】
本発明による分析方法は、具体的に以下のように実施され得る。まず、感光性樹脂コポリマーを構成する2種以上のモノマーを、予備決定されたモル比で有機溶媒(共重合反応に用いられる第1有機溶媒)に溶解させた後、これに通常用いられる重合反応開始剤を添加して、好ましくは、60〜100℃で十分な時間をかけて共重合を行った後、溶媒を除去してコポリマー試料を得るとよい。続いて、前記のコポリマー試料を有機溶媒(FT−NIR分析に用いられる第2有機溶媒)に溶解させた後、FT−NIR分析から得られた値を予め作成されている検量線に代入することによって、分析しようとする感光性樹脂コポリマーの組成を算出することができる。
【0018】
この際、検量線の作成のために、例えば、モノマーがA,B及びCの3つで、これらの予備決定されたモル比が40:20:40の場合、A=34〜46、B=16〜24、C=34〜46の範囲内で、全体として100になるようA,B及びCを様々な比率で前記第2有機溶媒と同一溶媒に溶解させた後、このモノマー混合物の溶液からFT−NIR分析において用いられたモノマー各々に対する検量線を作成することができる。
【0019】
前記共重合反応およびFT−NIR分析に用いられる有機溶媒(つまり、第1及び第2有機溶媒)は、電子材料用のレベルのもので、好ましくは、それぞれ独立的に、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、メチルエチルケトン(MEK)及びこれらの混合物からなる群より選択されたものを用いるとよい。
【0020】
前記コポリマー試料を、フーリエ変換近赤外線分光学(FT−NIR)で分析することにおいて、波長領域の4000〜12000cm−1で特徴的に表れる分子振動を確認することによって(つまり、分子振動の倍音と組み合わせとによるピークを用いてその分子の強度を測定することによって)、感光性樹脂コポリマー内に含まれている2種以上のモノマーの量を測定することができる。5種のメタクリレート系モノマーに対する4000〜12000cm−1の波長領域におけるFT−NIR分析の結果を図1に示している。
【0021】
FT−NIR分析の際、好適な温度は、室温近傍(約20℃〜25℃)で、好適な溶液の濃度は、10重量%以上30重量%以下、好ましくは、15重量%以上25重量%以下であるとよい。
【0022】
このように、本発明の分析方法によると、感光性樹脂コポリマーを構成するモノマーの組成を、より便宜で再現性を持ち(誤差なく)、かつ、素早く分析できて、多種類のモノマーに対して同時分析が可能で、さらに、共重合反応中にリアルタイムで反応の具合を確認することができるので、連続的共重合工程が可能である。
【0023】
以下、本発明を下記の実施例に基いてより詳細に説明する。但し、以下の実施例は本発明を例示するだけのことであって、本発明の範囲は、これらに制限されることではない。

(実施例1)
250mlの円形有底部を持つフラスコ反応器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、Shell社製)を20.0g入れて、反応器の温度を80℃まで昇温した。これとは別に、ブチロラクトンメタクリレート(GBLMA、ENF社製)16.28gと、3‐ヒドロキシアダマンチルメタクリレート(HAMA,ENF社製)11.30gと、2‐メチルアダマンチルメタクリレート(MAMA,ENF社製)25.0gとをPGMEA25.0gに完全に溶解させてモノマー溶液(モル比‐GBLMA:HAMA:MAMA=40:20:40)を調製した。そして、重合反応開始剤のv‐601(Wako chemical社製)11.01gをPGMEA10.0g(Shell社製)に溶解させて、v−601溶液を調製した。調製されたv−601溶液を、10分間に亘って反応器に投入し、30分間撹拌しながら熟成させた。続いて、調製されたモノマー溶液を、定量ポンプを用いて4時間かけて反応器に全量投入し、投入終了後、1時間熟成させ3種のモノマーが重合された感光性樹脂コポリマー溶液を得た。その後、精製過程を経て感光性樹脂コポリマーを固体状で得た。
【0024】
これとは別に、下記の表1に示すようなモル分率になるように、GBLMA、HAMA及びMAMAそれぞれの量を測量して計1gになるようにし、これにTHF4gを加えて、濃度20重量%のTHF溶液を調製し、これに対するFT−NIR測定を行って、前記モノマーそれぞれに対する検量線を作成した。
【0025】
【表1】

【0026】
(実施例2〜4)
モノマーの使用量を変えて、下記の表2に示すように、GBLMA:HAMA:MAMAのモル比を変化させたことを除いては、上術の実施例1と同様の方法を行い、3種のモノマーが重合された感光性樹脂コポリマー溶液を固体状で得た。
【0027】
前記実施例1〜4において調製された感光性樹脂コポリマーを、THFに溶解させて20重量%濃度の溶液にしてから、この溶液に対してFT−NIR分析を行い、得られたFT−NIR値を前記実施例1で予め作成された検量線に代入して結果値(コポリマーを構成するモノマーのモル比)を算出して下記の表2にまとめた。
【0028】
【表2】

【0029】
前記表2の結果から、モノマーの使用量が変化するにつれ、得られる感光性樹脂コポリマーの組成も相応に変化していることがFT−NIRによって確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、5種のメタクリレート系モノマーに対する4000〜12000cm−1の波長領域においてのFT−NIR分析の結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のモノマーを様々な比率で混合して得た混合物から、フーリエ変換近赤外線分光学(FT−NIR)を用いた分析により、前記モノマーの各々に対する検量線を作成した後、前記2種以上のモノマーからなる、分析しようとする感光性樹脂コポリマーを、FT−NIR分析により得られた値を前記検量線に代入して、コポリマーの組成を算出することを含む感光性樹脂コポリマーの組成分析方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記感光性樹脂コポリマーが、下記の化学式1〜4で表す反復単位を2種以上含むことを特徴とする感光性樹脂コポリマーの組成分析方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

上記の式において、
は、水素、ハロゲン、C1‐6アルキル又はC1‐6ハロアルキルで、
は、C1‐6アルキル、ハロゲン又はヒドロキシに置換か非置換されている、C2‐15脂肪族炭化水素基、C6‐18芳香族炭化水素基、ラクトニル又はブチロラクトニルで、
は、C2‐15アルキル、C2‐15ハロアルキル、C2‐15アルキルカルボニル又はシリルで、
は、C2‐15アルキル、C2‐15ハロアルキル、C2‐15アルキルカルボニル、C2‐15アルコキシ、C2‐15ハロアルコキシ、C2‐15アルキルエステル、C2‐15ハロアルキルエステル又はシリルである。
【請求項3】
請求項1において、
前記感光性樹脂コポリマーは、アクリレート系又はメタクリレート系のコポリマーであることを特徴とする感光性樹脂コポリマーの組成分析方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記2種以上のモノマー混合物及び前記感光性樹脂コポリマーを、それぞれ有機溶媒に溶解させた後、それぞれの溶液に対してFT−NIR分析を行うことを特徴とする感光性樹脂コポリマーの組成分析方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、メチルエチルケトン及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする感光性樹脂コポリマーの組成分析方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記溶液は、10重量%以上30重量%以下の濃度を持つことを特徴とする感光性樹脂コポリマーの組成分析方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記FT−NIR分析は、4000cm−1以上12000cm−1以下の波長領域で特徴的に現れる分子振動を確認することにより行われることを特徴とする感光性樹脂コポリマーの組成分析方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−151779(P2010−151779A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28846(P2009−28846)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(509040569)ソンウォン インダストリアル カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】