説明

ブタジエンの製造方法

【課題】n−ブテンからブタジエンを製造するに際して、有機物の付着、あるいは触媒の還元、もしくはその両方が生じて性能が劣化した触媒を、酸素の存在下に再生し、触媒の性能を復旧する方法を提供すること。
【解決手段】酸化物を担体に担持した触媒と、酸素とが内部に存在する流動層反応器内で、前記触媒に気体酸素存在下でn-ブテンからブタジエンを製造する反応に使用した触媒の再生時、温度280℃〜550℃の範囲で、出口ガスの酸素濃度が0.1vol%以上とするブタジエン製造触媒の再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
n−ブテンと酸素の接触酸化脱水素反応によりブタジエンを製造する方法はよく知られており、その酸化脱水素反応に用いられる酸化物触媒は多数提案されている。
【0003】
酸化物触媒が用いられる反応方式には、固定層、流動層及び移動層がある。これらの内、固定層反応方式は、ガスの流動状態が押し出し流れに近く、反応収率を高くできるという利点を活かし、工業的に多く採用されている。ところが、固定層反応方式は伝熱性が低く、除熱や加熱が必要な発熱反応や吸熱反応には不向きであり、特に酸化反応のような激しい発熱反応では、温度が急激に上昇し制御困難に陥り、反応が暴走する恐れがあるという問題がある。さらに、こうした急激な温度上昇によって、触媒がダメージを受け、早期に劣化してしまうという問題もある。
【0004】
これに対し、流動層反応方式は、反応器内を触媒粒子が激しく流動することで(1)伝熱性が高く、大きな発熱や吸熱を伴う反応時も反応器内温度をほぼ均一に保ち、過度の反応進行を抑制できる、(2)エネルギーの局所蓄積が抑制されるため、爆発範囲内の原料ガスを反応させることが可能で、原料濃度を高めて生産性を向上させられる、という利点がある。従って、流動層反応方式は発熱の大きい炭化水素の酸化脱水素反応に適した反応方式である。例えば、ブテンからブタジエンを合成する酸化脱水素反応は、約30kcal/molの発熱反応である。
【0005】
以上のような流動層反応方式の有利な点が知られているにも拘らず、一般にブテンをブタジエンに転化する場合、固定床触媒を用いた例が記載されたものが多い。これは、目的生成物であるブタジエンの反応性が非常に高いため、反応器出口に到達するまでに反応器内で燃焼分解を受け易いという問題があり、生成物が触媒に接触してしまう流動層反応方式において一層顕著になってしまうためであると推察される。これに対し、特許文献1には、特定の金属を含む触媒を使用し、反応器温度、反応器出口ガス中の酸素濃度を特定の範囲にすることで、流動層反応により炭素数4以上のモノオレフィンからジオレフィンを製造する方法が開示されている。
【0006】
一方、ブタジエンの製造において、反応中に触媒にカーボンが付着し、触媒が劣化することが知られている。特許文献2及び3には、触媒を充填した反応管にブテン類、空気及び水蒸気を供給して1,3−ブタジエンを製造し、カーボンの付着した後、触媒床に空気、窒素及び水蒸気の混合物を供給し、触媒を再生する方法が記載されている。特許文献4には、担体に金属を担持した酸素キャリヤーを充填した反応管に1−ブテンを導入して1,3−ブタジエンを製造し、酸素キャリヤーの酸素が減少した後、反応管に空気を供給し、加温して酸素キャリヤーの再生をする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−120933号
【特許文献2】特開昭58−188823号
【特許文献3】特開昭58−188826号
【特許文献4】特開昭60−31584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
触媒の再生について検討すべく、本発明者が、有機物の付着した触媒を特許文献2又は3の実施例に記載のように、空気3.8モル%、窒素56.5モル%、水蒸気39.7モル%のガスを触媒床に供給し、300℃で5時間、350℃で10時間、400℃で2時間に保持したところ、触媒に付着したカーボンは除去されたものの、触媒は所期の性能を示さなかった。この原因について、本発明者は、再生工程の雰囲気が適切でないために、触媒が還元されてしまったことにあると考えた。特許文献2及び3には付着した有機物量が具体的に示されていない上、再生圧力の記載もないため厳密には再現できないものの、これらに記載の方法によると、有機物の付着量、質及び再生工程の条件にもよるが、再生工程で触媒を還元し、触媒の性能が低下してしまう可能性がある。他方、特許文献4に記載のブタジエン製造方法は、分子状酸素の存在下でブテンを反応させるものではなく、触媒もその目的のものとは異なっているので、再生工程を単純に採用することもできない。
【0009】
従って、本発明の目的は、付着したカーボンの除去する再生工程の条件を適正化することにより、触媒の性能を低下させないで、ブタジエンを継続的に製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、分子状酸素の存在下でブタジエンを製造し、触媒に有機物が付着した場合に、適切な酸化雰囲気及び温度の気体に接触させることにより、触媒の性能を回復させ、ブタジエンを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1] 触媒及び分子状酸素の存在下でn-ブテンからブタジエンを生成させる工程と、前記触媒を温度280℃〜550℃で、酸素濃度が0.1容量%以上の気体に接触させる工程とを有するブタジエンの製造方法。
[2] 前記触媒を収容した容器内に前記気体を流通させることにより前記触媒を前記気体に接触させ、前記容器再生時の入り口酸素濃度を3容量%以上とし、出口酸素濃度を1.0容量%以上とする請求項1に記載のブタジエンの製造方法。
[3] 前記触媒が、酸化物を担体に担時した酸化物触媒である請求項1又は2に記載のブタジエンの製造方法。
[4] 前記容器において触媒層入り口酸素濃度を1〜25容量%とする請求項1〜3のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[5] 前記気体の温度を280℃〜400℃とすることにより、前記触媒に付着した有機物を燃焼させる請求項1〜4のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[6] 前記触媒に付着した有機物濃度を0.5重量%以下にした後、焼成温度を400℃〜550℃にする請求項1〜5のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[7] 前記容器の入り口酸素濃度を5容量%〜25容量%とする請求項1〜6のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[8] 前記触媒がCeを含む請求項1〜7のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[9] 前記触媒が一般式
Mo12BipFeqabcdex
(式中、Aはニッケル及びコバルトから選ばれる少なくとも1種の元素、Bはアルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、Cはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の元素、Dは少なくとも1種の希土類元素、Eはクロム、インジウム及びガリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、p、q、a、b、c、d、e、及びxはそれぞれモリブデン12原子に対するビスマス、鉄、A、B、C、D、E及び酸素の原子比を表し、0.1≦p≦5、0.5≦q≦8、0≦a≦10、0.02≦b≦2、0≦c≦5、0≦d≦5、0≦e≦5であり、xは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)で表される請求項1〜8のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
[10]前記触媒を収容した流動層反応器内で、前記触媒にn−ブテンを接触させてブタジエンを生成させ、前記触媒に有機物が付着した後、前記流動層反応器に酸素を供給し、前記有機物を300〜550℃で焼成する請求項1〜9のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、有機物が付着した触媒を、性能の低下を防いで再生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
まず、ブタジエン製造触媒が使用されるブタジエン製造方法のうち流動層反応による態様を説明し、次いでブタジエンの製造過程で有機物が付着、もしくは還元された触媒の再生方法と、好ましいブタジエン製造触媒を説明する。
【0015】
[1] ブタジエンの製造方法
(1) 原料
原料は、炭素数4のモノオレフィンであるn−ブテンであり、具体的には、1−ブテン、2−ブテンが該当する。1−ブテンと2−ブテンの比率には特に制限が無く、1−ブテンは0〜100重量%、2−ブテンは100〜0重量%の範囲で任意に用いることができる。2−ブテンに比べ1−ブテンは、反応速度が速く、ブタジエンの選択率も高いため1−ブテンの比率が高い原料が望ましい。例えばn−ブテン混合物をエチレンと共に供給しプロピレンを製造するメタセシス反応で、2−ブテンを消費した後、n−ブテンを精製した1−ブテンリッチな原料などが上げられる。なお、2−ブテンにはトランス体とシス体があるが、この比率も特に制限はなく、それぞれ100〜0重量%、0〜100重量%の範囲で任意に用いることができる。この原料は、i−ブテンを含むことも出来る。このi−ブテンはn−ブテンに対して10重量%以下、好ましくは6重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。この原料はn−ブタン、i−ブタン、炭素数が3以下の炭化水素、炭素数が5以上の炭化水素を含んでいても良く、n−ブテンの濃度は40重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは60質量%以上とする。この原料は、例えば、ナフサ熱分解で副生するC4留分からブタジエンを抽出した残留成分や重油留分の流動接触分解(FCC)で副生するC4留分、エチレン又はエタノ−ルの接触転化反応で副生するC4留分などからi−ブテンをTBA、MTBE、ETBE、2量化反応による炭素数8の化合物とする方法により分離することで得ることができる。また、n−ブタンの脱水素反応又は酸化脱水素反応により得られるn−ブテン、また、エタン熱分解やエタノールの脱水反応により得られるエチレンの接触転化反応で副生するn−ブテンなどを使用することができる。このエタノールはバイオマス由来のエタノールも好適な原料として使用することが出来る。
【0016】
反応器に供給する原料混合ガス中のn−ブテン濃度は、ブタジエンの生産性の観点で、少なくとも2容量%以上が好ましく、触媒への負荷を抑える観点で30容量%以下が好ましい。より好ましくは3〜25容量%、更に好ましくは5〜20容量%である。n−ブテンの濃度が高いと触媒に反応生成物やコークの析出が増加し、触媒の劣化による触媒寿命が短くなる傾向にある。また、n−ブテンの濃度が低いとブタジエンの製造量が少なく、実際上の利点がない。
【0017】
原料混合ガスはパラフィン、水、スチーム、水素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素等を含んでいてもよい。パラフィンの例として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンを挙げることができる。更に、反応生成物から目的生成物であるブタジエンを分離した後、回収した未反応ブテンの少なくとも一部を反応器にリサイクルすることもできる。
【0018】
原料混合ガス中は水を30容量%以下で、好ましくは20容量%以下、更に好ましくは10容量%以下で含むことも好ましい方法の一つである。
【0019】
(2)反応器
ブタジエン製造の反応方式は特に限定されず、固定床や移動床でもよいが、製造効率の観点で、流動層反応方式で行われるのが好ましい。
流動層反応器は、反応器内にガス分散器・内挿物・サイクロンをその主要構成要素として有し、触媒を流動させつつ、原料であるガスと接触させる構造である。流動層ハンドブック(株式会社培風館刊、1999年)等に記載の流動層反応器であれば使用可能であるが、特に気泡流動層方式の反応器が適している。発生する反応熱の除熱は反応器に設置した冷却管を用いて行う。この冷却管は濃厚層及び希薄層に配置され、目的の温度を実現する為に操作される。
【0020】
(3)反応条件
n−ブテンと酸素が反応に供される。酸素源としては通常、空気を用いるが、酸素を空気と混合するなどして酸素濃度を高めたガス、又は空気と窒素、ヘリウム、反応生成ガスからブタジエン、n−ブテン、n−ブタン、i−ブタンなどの炭化水素化合物を分離した後のガスなどを混合して酸素濃度を低めたガス、酸素分離膜などを用いた分離方法により製造した酸素濃度を高めたガス、又は、酸素濃度を低めたガスなどを用いることもできる。n−ブテンに対する酸素のモル比は0.5〜1.5(空気/n−ブテン比として2.5〜7.5)とするのが好ましく、より好ましくは0.6〜1.3(空気/n−ブテン比として3.0〜6.5)の範囲である。
【0021】
反応に供するガスが上記の比率となる限り、n−ブテンと酸素の導入方法は限定されない。触媒を充填した反応器へ、n−ブテンを含むガスと、空気又は酸素濃度を高めたガス又は酸素濃度を低めたガスを予め混合して導入しても良いし、それぞれ独立して導入してもよい。反応に供するガスは反応器に導入した後に所定の反応温度に昇温することもできるが、連続して効率的に反応させるために、通常は予熱して反応器に導入する。
【0022】
流動層反応器の濃厚層の温度は320〜400℃が好ましく、希薄層の温度は濃厚層の温度に対して−50〜+20℃で制御するのが好ましい。濃厚層温度を320℃以上にすることで、濃厚層温度を維持し易く、モノオレフィンの転化率を保って、安定に運転を継続できる。濃厚層温度を400℃以下にすることで生成した共役ジオレフィンの燃焼分解を抑制することができる。流動層反応器の濃厚層の好ましい温度は330〜390℃であり、更に好ましくは340〜380℃である。ブタジエンの製造反応は発熱反応であるので、流動層反応器の濃厚層及び希薄層の温度を上記の範囲となるように、冷却管による反応熱の除去、又は、加熱装置による給熱、供給する原料ガスの余熱などにより制御する。
【0023】
反応圧力は0.01〜0.4MPa/Gが好ましく、より好ましくは0.02〜0.3MPa/G、更に好ましくは0.03〜0.2MPa/Gである。原料混合ガスと触媒との接触時間は0.5〜20g・sec/ccが好ましく、より好ましくは1〜10g・sec/ccである。
【0024】
生成したブタジエンを含むガスは、反応器出口から流出する。反応器出口ガス中の酸素濃度は、反応器内における目的生成物の分解や二次反応に影響するので、0.05〜1.5容量%に制御することが好ましい。反応器出口ガス中の酸素濃度は、反応器に供給する原料ガスであるn−ブテンの量、酸素供給源となるガスの量、反応温度、反応器内の圧力、触媒量、反応器に供給する全ガス量などを変更することによって、調整することができる。好ましくは、反応器に供給する酸素供給源となるガス、例えば、空気の量を制御することによって制御する。
【0025】
反応器出口ガス中の酸素濃度は0.05〜1.5容量%に維持するのが好ましい。出口ガス中の酸素濃度をこの範囲に保つことにより、反応器内における触媒の還元及び目的生成物の分解を有効に防止でき、安定に目的生成物を製造できる。反応器出口ガス中の酸素濃度は、熱伝導型検出器(TCD)を備えたガスクロマトグラフィーで測定することができる。
【0026】
[2]触媒の再生方法
上述のブタジエン製造方法によってブタジエンを製造することができるが、その過程において、使用している触媒に有機物が付着する場合がある。触媒に付着する有機物は限定的ではないが、一例として、カーボンが挙げられる。本発明者の検討によると、触媒に有機物が付着すると、触媒活性の低下が起こるほか、流動層反応用の触媒の場合は流動性の低下や触媒の破砕といった問題が生じ易い。そのため、有機物が付着した触媒はこの有機物を除去することが必要となる。
【0027】
有機物の燃焼による除去を本明細書中では「触媒の有機物燃焼」と言う。また反応の条件によっては触媒が還元され、ブタジエンの選択率が低下することがある。金属酸化物からなる触媒の場合、触媒は(各)金属が最大の価数で良好な性能を示すように調製されるのが一般的である。そのように設計された触媒が反応に供することで還元された場合、性能の低下を招いてしまうので、触媒を酸化する必要がある。この触媒の酸化を「触媒の再酸化」という。この触媒の再酸化は触媒中の金属酸化物が還元され、価数の減少した金属酸化物の価数を増加させることが目的である。本明細書中、触媒の「再生」とは、「触媒の有機物燃焼」、あるいは「触媒の再酸化」、もしくはその両方を含む操作を言う。再生工程に付すことにより、有機物の付着及び/又は価数の不適性化の面で機能が低下した触媒の機能を回復させることができる。
【0028】
(1)触媒の有機物燃焼
再生工程は、触媒が還元されておらず有機物の付着のみで触媒の性能が低下している場合は、有機物を除去するだけでよい。有機物の付着によって触媒の性能が低下した場合、触媒の活性が低下する。
【0029】
有機物の燃焼を開始ささせるべく、燃焼温度は280℃以上とし、触媒の性能低下を防止する観点で550℃以下とする。好ましい燃焼温度は300℃から500℃、さらに好ましくは340から400℃である。
【0030】
触媒の有機物燃焼は0.1容量%以上の酸素の存在下で行う必要がある。通常は空気中で焼成すればよいが、種々の方法により酸素濃度を低めたガス、又は酸素濃度を高めたガス中で焼成することも出来る。経済的な観点で焼成雰囲気中の酸素濃度は0.1〜40容量%が好ましく、より好ましくは0.5〜25容量%、更に好ましくは1〜21容量%である。
【0031】
酸素濃度を0.1容量%以上に保持できる限り、気体と触媒を容器中に収容し、閉じた系で有機物を燃焼させてもよいし、気体を流通させながら燃焼させてもよいが、適切な酸素濃度の維持し易さ及び再生効率の観点で収容した容器内に気体を流通させる方法が好ましい。以下、容器内に気体を流通させる場合を例にとって、酸素濃度の制御を説明する。
【0032】
有機物燃焼を0.1容量%以上の酸素の存在下で実施するにあたり、触媒を収容した容器内に供給するガスの酸素濃度は0.5〜45容量%が好ましく、より好ましくは1〜25容量%、更に好ましくは1〜21容量%である。
【0033】
触媒に付着する有機物の量、カーボンと水素のモル比の違いによる有機物の質違い、言い換えれば有機物の燃焼温度、燃焼熱などの違いによって同じ温度、同じ入り口酸素濃度、再生入り口ガス供給量でも燃焼の速度が異なる。したがって触媒の有機物燃焼出口ガス中の酸素濃度も、入り口の酸素濃度、触媒の温度で規定できない。付着する有機物の状態や触媒の有機物燃焼条件が低温でも、触媒の有機物燃焼出口の酸素が無くなり、触媒が還元状態になる場合がある。有機物の水素原子/炭素原子モル比が低いほど有機物が燃焼し難いため高温で再生する必要があり、有機物の付着量が多ければ酸素消費量、発熱量が大きいため、低温で再生する必要がある。
【0034】
例えば、触媒に付着した有機物の水素原子/炭素原子モル比が0.4〜2.0の場合、有機物の付着量に応じて、有機物焼成の温度、有機物焼成出口酸素濃度は以下(1)〜(4)の条件が好ましい。
【0035】
(1)触媒に付着した有機物が0.5重量%未満の場合:有機物焼成温度は280℃〜 550℃、有機物焼成出口酸素濃度が0.1容量%以上。
(2)触媒に付着した有機物が0.5重量%以上、5重量%未満の場合:有機物焼成温 度は280℃〜360℃、有機物焼成出口酸素濃度が0.1容量%以上。
(3)触媒に付着した有機物が5重量%以上、10重量%未満の場合:有機物焼成温度 は280℃〜320℃、有機物焼成出口酸素濃度が0.1容量%以上で焼成し、 供給する酸素が90%以上消費されなくなってから焼成温度を320℃〜 380℃に上げ、有機物焼成出口酸素濃度は0.5容量%以上とする。
(4)触媒に付着した有機物が10重量%以上の場合:有機物焼成温度は280℃〜 320℃、有機物焼成出口酸素濃度が0.1容量%以上で焼成し、供給する酸素 が90%以上消費されなくなってから焼成温度を320℃〜360℃に上げ、有 機物焼成出口酸素濃度は0.5容量%以上とし、供給する酸素が90%以上消費 されなくなってから焼成温度を360℃〜400℃に上げ、有機物焼成出口酸素 濃度は1.0容量%以上とする。
【0036】
触媒に付着した有機物の水素原子/炭素原子モル比が低いほど、上記(1)〜(4)における好ましい温度条件が高くなる傾向がある。
【0037】
280℃から400℃の低温で有機物を除去した場合でも、その再生途中に触媒に流通するガス中の酸素が不足し還元される状態を経験した場合、触媒が新鮮な元の状態に戻らないことがある。そして触媒の有機物燃焼後に触媒が還元されている場合は、ブタジエンの製造反応時、ブタジエンの選択率が低下する。従って反応で触媒が還元されていなくても、触媒の有機物燃焼で触媒が還元された場合は触媒を再酸化することが好ましい。触媒の有機物燃焼時に出口ガス中の酸素濃度を0.1容量%以上、好ましくは0.5容量%以上、より好ましくは1.0容量%以上、さらに好ましくは3.0容量%以上とする。触媒の有機物燃焼時に触媒を通過したガスに酸素が0.1容量%以上含まれる状態であれば触媒が還元されることはなく、触媒の再生が短時間で終了する。
【0038】
(2)触媒の再酸化
触媒が還元されている場合は、触媒の有機物燃焼に加え、触媒の再酸化が必要になる。触媒の還元は、反応使用前と使用後の触媒をXRD(X線回折)分析により金属酸化物の組成を解析して確認するのが好ましい。シンタリングによる触媒活性低下を考えると、触媒の有機物燃焼においても、なるべく低温で酸素濃度が高い条件で有機物を焼成することが望ましい。再生温度もしくは供給するガスの酸素濃度を、あるいはその両方を段階的に、もしくは連続的に高くしていくことが、再生時間の短縮に繋がる。その状態でも常に、気体中の酸素濃度を0.1容量%以上に維持し、気体を流通させる場合は出口ガスに酸素濃度が0.1容量%以上の状態を保つのが重要である。
【0039】
触媒が還元されている場合は、分子状酸素の存在下、400℃〜550℃、好ましくは420℃〜520℃、さらに好ましくは450℃〜500℃の温度で触媒の再酸化を実施するのが好ましい。触媒の有機物燃焼から触媒の再酸化へ移行するため温度を高くする場合は、触媒に付着している有機物量を1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下とすることが好ましい。触媒の再酸化工程における酸素濃度は1容量%〜100容量%、好ましくは3容量%〜30容量%、より好ましくは5容量%〜25容量%、さらに好ましくは5容量%〜21容量%である。触媒の再酸化は、温度もしくは酸素濃度を、あるいはその両方を段階的に、もしくは連続的に高くすることが望ましい。その理由は、触媒の再酸化時に有機物が触媒に残留していたり、もしくは触媒の還元度合いが高く、触媒の再酸化による発熱が高かったりするとシンタリングなどにより触媒性能が低下するためである。
【0040】
触媒の再酸化に際しては、出口ガス中の酸素濃度が0.1容量%以上、好ましくは1容量%以上、より好ましくは3容量%以上、さらに好ましくは10容量%以上が望ましい。再酸化を1容量%以上の酸素の存在下で実施するにあたり、触媒を収容した容器内に供給するガスの酸素濃度は1〜100容量%が好ましく、より好ましくは3〜30容量%、更に好ましくは5〜21容量%である。
【0041】
触媒の有機物燃焼、触媒の再酸化で使用するガスは種々の方法により酸素濃度を低めたガス、又は酸素濃度を高めたガス中で焼成することも出来る。ここで言う種々の方法の例としては、窒素、水蒸気、二酸化炭素、もしくは有機物、一酸化炭素を除いた再生出口ガスなど不活性ガスで空気を希釈する方法が挙げられる。
【0042】
触媒に付着した有機物の濃度は、触媒を抜き出せる場合は触媒をTG−DTA(示差熱熱重量同時測定装置)測定の試料重量の減少から有機物の重量を評価する方法やCHN元素分析計で炭素および水素量から有機物付着量を算出することができる。また反応終了時点の有機物付着量を測定し、反応条件および有機物付着量が安定していれば、有機物燃焼時の出口ガスを、TCD検出器を有するガスクロマドグラフィーによって分析しCO、CO2の濃度とガス量から、燃焼した有機物量を計算し、付着している有機物量から除去した有機物量を差し引くことで、分析した時点での触媒に付着した有機物の量を知ることができる。
【0043】
(3)再生工程の装置
焼成にはロータリーキルン、流動層などの流動焼成炉、マッフル炉、コンベア式固定炉などの固定焼成炉を用いることが出来るが、大量の触媒を均質に焼成する観点でロータリーキルン、流動層などの流動焼成炉を用いるのが好ましい。
【0044】
一定時間のブタジエン製造工程を経て触媒に有機物が付着した後、反応器から触媒の一部を抜出して焼成し、再生後に反応器に戻す。再生により触媒の機能が回復するので、良好な条件でブタジエン製造反応を続けることができる。触媒の抜出しは、断続的にしてもよいし、連続的にしてもよい。
【0045】
流動層反応でブタジエンを製造する場合、反応器への原料混合ガスの供給を停止し、酸素を含有するガスを供給することで、反応器で再生を行うことも出来る。予め所望の温度に加熱してから酸素を含有するガスを反応器内に供給することで、反応器内の再生が可能である。
【0046】
再生時間には特に制限はなく、有機物の付着量等に応じて適宜設定することができる。有機物の付着に影響するブタジエンの製造条件にもよるが、一般的にはブタジエンの製造効率を維持する観点から、60時間以下、好ましくは40時間以下、さらに好ましくは24時間以下の焼成時間とするのが好ましい。
【0047】
ブタジエンの製造効率を維持するには、ブタジエン製造反応中に触媒に含まれる炭素量が10.0重量%以下にするのが好ましく、5.0重量%以下がより好ましく、2.0重量%以下が特に好ましい。ブタジエン製造反応中、触媒に含まれる炭素量(触媒に付着した炭素を含む量)をモニタリングした上で、炭素量を好ましい範囲に維持するために必要な再生工程の頻度を設定するのが好ましい。
【0048】
触媒再生時の供給酸素濃度は、再生温度や供給するガス量、触媒に付着する有機物の質、量、触媒の還元状態によって再生出口ガス中の酸素濃度が0.1容量%以上、好ましくは0.5容量%以上、さらに好ましくは1.0容量%以上になる濃度であれば特に制限されるものではない。しかし、再生時間の短縮、供給する再生ガスの酸素濃度の調整コストの面から再生時の触媒層入り口酸素濃度は0.5〜40容量%、好ましくは1〜25容量%、さらに好ましくは3〜21容量%である。
【0049】
[3]触媒
(1)構造
流動層反応により比較的高い収率でブタジエンを得る観点で、酸化物を担体に担持した触媒は、担体と、Mo、Bi及びFeを含むのが好ましい。Mo、Bi及びFeの組成は合目的な酸化物を形成するように調節されており、この酸化物中の格子酸素によって、n−ブテンからブタジエンの酸化脱水素反応が行われると考えられる。一般に、触媒中の格子酸素が酸化脱水素反応に消費されると、酸化物中に酸素空孔が生じる結果、反応の進行に伴って酸化物の還元も進行し、触媒活性が失活していくので、触媒活性を維持するためには、還元を受けた酸化物を速やかに再酸化することが必要である。Mo、Bi及びFeを含む酸化物は、n−ブテンからブタジエンの酸化脱水素反応に対する反応性に加え、気相中の酸素を解離吸着して酸化物内に取り込み、消費された格子酸素の再生を行う再酸化
作用にも優れていると考えられる。従って、長期にわたって反応を行う場合でも、格子酸素の再酸化作用が維持され、触媒は失活することなく、n−ブテンからブタジエンを安定に製造できるものと考えられる。
【0050】
Mo、Bi及びFeを含む酸化物を担体に担持した触媒を、流動層方式によるブタジエンの製造に用いると、生成物であるブタジエンの燃焼分解や二次反応による含酸素化合物の生成の抑制に有利で、高い収率でブタジエンを得ることができる。詳細は不明ではあるがその理由として、(1)触媒の酸性度が好適であるため、触媒上におけるブタジエンの燃焼分解や二次反応が低い、(2)生成したブタジエンに対する反応活性点の吸着能が小さいため、ブタジエンは生成した後、反応活性点において分解や反応を受ける前に速やかに脱離する、などが考えられる。
【0051】
Mo、Bi及びFeが合目的な酸化物を形成し易いためのこれらの組成比は、Moの原子比12に対するBiの原子比p、Feの原子比qが、0.1≦p≦5、0.5≦q≦8であると考えられる。
【0052】
酸化物がMo、Bi及びFe以外の金属を含有する場合、実験式:Mo12BipFeqabcdex(式中、Aはニッケル及びコバルトから選ばれる少なくとも1種の元素、Bはアルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、Cはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の元素、Dは少なくとも1種の希土類元素、Eはクロム、インジウム及びガリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、p、q、a、b、c、d、e、及びxはそれぞれモリブデン12原子に対するビスマス、鉄、A、B、C、D、E及び酸素の原子比を表し、0.1≦p≦5、0.5≦q≦8、0≦a≦10、0.02≦b≦2、0≦c≦5、0≦d≦5、0≦e≦5であり、xは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)で表されるのが好ましい。本明細書中、「実験式」は、当該式に含まれる金属の原子比と、その原子比及び酸化数の総計に応じて要求される酸素とからなる組成を表す。様々な酸化数をとりうる金属を含む酸化物において、酸素の原子数を特定することは実質的に不可能であるため、酸素の数は形式的に「x」で表すこととしている。例えば、Mo化合物、Bi化合物及びFe化合物を含むスラリーを調製し、それを乾燥及び/又は焼成して酸化物を得る場合、スラリーに含まれる金属の原子比と、得られる酸化物中の金属の原子比とは実質的に同じと考えてよいので、スラリーの仕込み組成式にOxを付加したものが、得られる酸化物の実験式である。なお本明細書中、上述のスラリーの仕込み組成のように、意図的にコントロールした成分とその比率を表す式を「組成式」と呼ぶので、上述の例の場合、実験式からOxを除いたものが「組成式」である。A、B、C、D及びEで表される成分の役割は限定的ではないが、Mo、Bi及びFeを必須成分とする酸化物触媒の分野では、概ね次のように推定されている。すなわち、A及びEは触媒の活性を向上させ、B及びCはMo、Bi及びFeを含む合目的な酸化物の構造の安定化させ、Dは酸化物の再酸化という影響を与えると考えられている。p、q、a、b、c、d、eが好ましい範囲であると、これらの効果が一層高いと期待できる。
【0053】
上記組成式において、より好ましい組成としては、0.1≦p≦0.5、1.5≦q≦3.5、1.7≦a≦9、0.02≦b≦1、0.5≦c≦4.5、0.02≦d≦0.5、0≦e≦4.5であり、さらに好ましい組成としては、Bがルビジウム、カリウム又はセシウム、Cがマグネシウム、Dがセリウムであり、0.15≦p≦0.4、1.7≦q≦3、2≦a≦8、0.03≦b≦0.5、1≦c≦3.5、0.05≦d≦0.3、0≦e≦3.5である。Aがニッケル、Bがルビジウム、カリウム又はセシウム、Cがマグネシウム、Dがセリウムの場合、共役ジオレフィン収率がより高く、かつその燃焼分解が良好に抑制され、また触媒に対して還元劣化に対する耐性を付与することができる傾向がある。触媒中にセリウムが含まれていると触媒の耐熱性が高いので、高温での再生でも触媒性能の低下が抑制される。
【0054】
担体は、担体と酸化物の合計に対して30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%の範囲で有効に用いることができる。Mo、Bi及びFeを含有する酸化物を含む担持触媒は、公知の方法、例えば原料スラリーを調製する第1の工程、該原料スラリーを噴霧乾燥する第2の工程、および第2の工程で得られた乾燥品を焼成する第3の工程を包含する方法によって得ることができる。担体は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアが好ましく、より好適な担体はシリカである。シリカは他の担体に比べ不活性な担体であり、目的生成物に対する触媒の活性や選択性を低下させることなく、触媒と良好な結合作用を有する。加えて、酸化物を担体に担持することによって、粒子形状・大きさ・分布、流動性、機械的強度といった、流動層反応に好適な物理的特性を付与することできる。
【0055】
(2)製造方法
原料スラリーを調製する第1の工程、該原料スラリーを噴霧乾燥する第2の工程、および第2の工程で得られた乾燥品を焼成する第3の工程からなる、触媒の製造法の好ましい態様について、Mo、Bi及びFeを含む触媒を例にとって説明する。
【0056】
第1の工程では、触媒原料を調製して原料スラリーを得るが、モリブデン、ビスマス、鉄、ニッケル、コバルト、アルカリ金属元素、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、マンガン、希土類元素、クロム、インジウム、ガリウムの各元素の元素源としては、水又は硝酸に可溶なアンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩などを挙げることができる。特にモリブデン源としてはアンモニウム塩が、ビスマス、鉄、ニッケル、アルカリ元素、マグネシウム、亜鉛、マンガン、希土類元素、各元素の元素源としては、それぞれの硝酸塩が好ましい。上述の通り、酸化物の担体としてシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物を用いることができるが、好適な担体としてはシリカが用いられ、シリカ源としてはシリカゾルが好ましい。シリカゾルの不純物に関して、好ましくは、ケイ素100原子当たり0.04原子以下のアルミニウムを含むシリカソゾルを用い、さらに好ましくは、ケイ素100原子当たり0.02原子以下のアルミニウムを含むシリカゾルを用いる。原料スラリーの調製は、水に溶解させたモリブデンのアンモニウム塩をシリカゾルに添加し、次に、ビスマス、希土類元素、鉄、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、マンガン、アルカリ元素の各元素の硝酸塩を水又は硝酸水溶液に溶解させた溶液を加えることによって行うことができる。このようにして、原料スラリーを調製することができる。その際、上記の添加の順序を変えることもできる。
【0057】
第2の工程では、上記の第1工程で得られた該原料スラリーを噴霧乾燥して、球状粒子を得る。原料スラリーの噴霧化は、通常工業的に実施される遠心方式、二流体ノズル方式および高圧ノズル方式等の方法によって行うことができるが、特に遠心方式で行うことが望ましい。次に、得られた粒子を乾燥するが、乾燥熱源としては、スチーム、電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。乾燥機入口の温度は100〜400℃、好ましくは150〜300℃である。 第3の工程では、第2の工程で得られた乾燥粒子を焼成することで所望の触媒を得る。乾燥粒子の焼成は、必要に応じて150〜500℃で前焼成を行い、その後500〜700℃、好ましくは520〜700℃の温度範囲で1〜20時間行うのが好ましい。焼成は回転炉、トンネル炉、マッフル炉等の焼成炉を用いて行うことができる。触媒の平均粒子径は40〜70μmであり、触媒粒子の90%以上の粒子が20〜100μmの範囲に分布していることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって制限されるものではない。実施例および比較例において、触媒に含まれる有機物としての炭素量は(株)ジェイ・サイエンス・ラボ製のマイクロコーダーJM10を用いて測定した。
【0059】
また、反応成績を表すために用いたn−ブテン転化率、ブタジエン選択率および収率は次式で定義される。
n−ブテン転化率(%)=(反応したn−ブテンのモル数)/(供給したn−ブテンのモル数)*100
ブタジエン選択率(%)=(生成した−ブタジエンのモル数)/(反応したn−ブテンのモル数)*100
ブタジエン収率(%)=(生成した−ブタジエンのモル数)/(供給したn−ブテンのモル数)*100
【0060】
流動層反応方式の反応装置として、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管を用い、モル比組成がn−ブテン/空気/ヘリウム=1/2.4〜6.0/バランスの原料混合ガスを流量F=572〜738cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=320〜400℃、反応圧力P=0.05MPa、触媒充填重量W=50gの条件で反応を行った。尚、i−ブテンは適宜、必要量を供給し、また、空気は出口酸素ガス濃度が0.2〜0.6容量%になるように調整した。接触時間は次式で定義される。
【0061】
接触時間(g・sec/cc)=W/F*60*273.15/(273.15+T)*(P*1000+101.325)/101.325式中、Wは触媒充填量(g)、Fは原料混合ガス流量(cc/min、NTP換算)、Tは反応温度(℃)、Pは反応圧力(MPa)を表す。
【0062】
出口酸素の分析は、反応器に直結させたガスクロマトグラフィー(GC−8A(島津製作所製)、分析カラム:ZY1(信和化工製)、キャリアガス:ヘリウム、カラム温度:75℃一定、TCD設定温度:80℃)を用いて行った。
【0063】
n−ブテン、ブタジエン、メタクロレインなどの分析は、反応器に直結させたガスクロマトグラフィー(GC−2010(島津製作所製)、分析カラム:HP−ALS(J&W製)、キャリアガス:ヘリウム、カラム温度:ガス注入後、100℃で8分間保持した後、10℃/分で195℃になるまで昇温し、その後195℃で40分間保持、TCD・FID(水素炎イオン検出器)設定温度:250℃)を用いて行った。
【0064】
(実施例1)
(a)触媒の調製
組成がMo12Bi0.60Fe1.8Ni5.00.09Rb0.05Mg2.0Ce0.75で表される酸化物を、50重量%のシリカに担持して、触媒を次のようにして調製した。30重量%のSiO2を含むシリカゾル1835.4gをとり、16.6重量%の硝酸413.3gに58.7gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、65.7gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、146.7gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、293.4gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、103.5gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、1.8gの硝酸カリウム〔KNO3〕および1.5gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させた液を加え、最後に水860.9gに427.4gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo724・4H2O〕を溶解させた液を加えた。ここに得られた原料調合液を並流式の噴霧乾燥器に送り、入口温度約250℃、出口温度約140℃で乾燥させた。該調合液の噴霧化は、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧化装置を用いて行った。得られた粉体は、電気炉で空気雰囲気下350℃で1時間の前焼成の後、空気雰囲気下590℃で2時間焼成して触媒を得た。
【0065】
(b)ブタジエン製造反応
(a)触媒の調製工程で得られた触媒50gを、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管に入れ、この反応管に1−ブテン/2−ブテン/i−ブテン/n−ブタン=58/40/1/1、空気/n−ブテン=4.6〜6.0、バランスガスとして窒素を供給し、n−ブテン濃度=8容量%の原料混合ガスを流量F=773cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=360℃、反応圧力50KPaGの条件で反応を行った。空気量は、反応器出口の酸素量が0.3〜0.7容量%となるよう調整した。この時、触媒と混合ガスの接触時間は2.5(g・sec/cc)であった。
【0066】
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が92.1%、ブタジエンの選択率は85.4%、ブタジエン収率は78.7%、300時間後の触媒の炭素量は2.2重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が88.4%、ブタジエンの選択率は85.1%、ブタジエン収率は75.2%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
【0067】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
次に、供給するガスを窒素に換え300℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、供給するガスを空気/窒素に変え酸素濃度を1容量%に調整し、温度を300℃で5時間、340℃で20時間、その後380℃で30時間触媒の再生を行った。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は0.2容量%であった。
【0068】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は92.6%、ブタジエンの選択率は85.1%、ブタジエン収率は78.8%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生工程の前後における反応成績等を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
(実施例2)
実施例1の(a)触媒の調製と同様の方法で触媒を調製、実施例1の(b)ブタジエン製造反応と同条件で反応を実施した。
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が91.8%、ブタジエンの選択率は85.5%、ブタジエン収率は78.5%、300時間後の触媒の炭素量は2.0重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が88.8%、ブタジエンの選択率は85.4%、ブタジエン収率は75.8%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
【0071】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
次に、供給するガスを窒素に換え340℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を3容量%に調整し、温度を340℃で10時間、さらに酸素濃度を25容量%に調整し360℃で15時間の再生を行った。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は0.8容量%であった。
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は92.1%、ブタジエンの選択率は85.5%、ブタジエン収率は78.7%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生工程の前後における反応成績等を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
実施例1の(a)触媒の調製と同様の方法で触媒を調製、実施例1の(b)ブタジエン製造反応と同条件で反応を実施した。
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が91.9%、ブタジエンの選択率は85.2%、ブタジエン収率は78.3%、300時間後の触媒の炭素量は1.9重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が88.6%、ブタジエンの選択率は85.6%、ブタジエン収率は75.8%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
【0073】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
次に、供給するガスを窒素に換え320℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度を320℃で10時間、さらに360℃で25時間の再生を行った。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は2.0容量%であった。
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は91.9%、ブタジエンの選択率は85.6%、ブタジエン収率は78.7%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生工程の前後における反応成績等を表1に示す。
【0074】
(実施例4)
実施例1の(a)触媒の調製と同様の方法で触媒を調製、実施例1の(b)ブタジエン製造反応と同条件で反応を実施した。
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が92.6%、ブタジエンの選択率は85.1%、ブタジエン収率は78.8%、300時間後の触媒の炭素量は2.2重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が88.1%、ブタジエンの選択率は85.0%、ブタジエン収率は74.9%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
【0075】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
次に、供給するガスを窒素に換え280℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を2容量%に調整し、温度を280℃で5時間、さらに酸素濃度を5容量%に変え、温度を330℃とし5時間、さらに酸素濃度を10容量%に変え、温度を360℃とし20時間、さらに酸素濃度を21容量%に変え、温度を450℃とし5時間の再生を行った。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は1.8容量%であった。
【0076】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は92.4%、ブタジエンの選択率は85.4%、ブタジエン収率は78.9%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生工程の前後における反応成績等を表1に示す。
【0077】
(実施例5)
(b)ブタジエン製造反応
実施例1の(a)触媒の調製工程で得られた触媒50gを、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管に入れ、この反応管に1−ブテン/2−ブテン/i−ブテン/n−ブタン=55/38/6/1、空気/n−ブテン=4.7〜6.2、バランスガスとして窒素を供給し、n−ブテン濃度=8容量%の原料混合ガスを流量F=773cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=360℃、反応圧力50KPaGの条件で反応を行った。空気量は、反応器出口の酸素量が0.3〜0.7容量%となるよう調整した。この時、触媒と混合ガスの接触時間は2.5(g・sec/cc)であった。
【0078】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が90.7%、ブタジエンの選択率は84.0%、ブタジエン収率は76.2%、100時間後の触媒の炭素量は1.1重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が88.2%、ブタジエンの選択率は83.7%、ブタジエン収率は73.8%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。 次に、供給するガスを窒素に換え320℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を1容量%に調整し、温度を320℃で10時間、さらに360℃で35時間の有機物燃焼を行った。さらに触媒の再酸化を目的に、酸素濃度を10容量%に調整し、温度を500℃で10時間再生を実施した。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は0.5容量%であった。
【0079】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は90.9%、ブタジエンの選択率は83.8%、ブタジエン収率は76.2%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生工程の前後の反応成績等を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
(実施例6)
(b)ブタジエン製造反応
実施例1の(a)触媒の調製工程で得られた触媒50gを、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管に入れ、この反応管に1−ブテン/2−ブテン/i−ブテン/n−ブタン=55/38/6/1、空気/n−ブテン=4.7〜6.2、バランスガスとして窒素を供給し、n−ブテン濃度=8容量%の原料混合ガスを流量F=773cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=360℃、反応圧力50KPaGの条件で反応を行った。空気量は、反応器出口の酸素量が0.3〜0.7容量%となるよう調整した。この時、触媒と混合ガスの接触時間は2.5(g・sec/cc)であった。
【0082】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が90.5%、ブタジエンの選択率は84.3%、ブタジエン収率は76.3%、300時間後の触媒の炭素量は4.8重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が81.1%、ブタジエンの選択率は82.9%、ブタジエン収率は67.2%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。 次に、供給するガスを窒素に換え320℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度を320℃で10時間、さらに360℃で40時間、さらに400℃で15時間の再生を行った。さらに触媒の再酸化を目的に、酸素濃度を25容量%に調整し、温度400℃で10時間再生を実施した。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は2.2容量%であった。
【0083】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は90.5%、ブタジエンの選択率は84.3%、ブタジエン収率は76.3%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生工程の前後における反応成績等を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
(実施例7)
(b)ブタジエン製造反応
実施例1の(a)触媒の調製工程で得られた触媒50gを、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管に入れ、この反応管に1−ブテン/2−ブテン/i−ブテン/n−ブタン=55/38/6/1、空気/n−ブテン=4.7〜6.2、バランスガスとして窒素を供給し、n−ブテン濃度=8容量%の原料混合ガスを流量F=773cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=360℃、反応圧力50KPaGの条件で反応を行った。空気量は、反応器出口の酸素量が0.3〜0.7容量%となるよう調整した。この時、触媒と混合ガスの接触時間は2.5(g・sec/cc)であった。
【0086】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が91.0%、ブタジエンの選択率は83.7%、ブタジエン収率は76.2%、300時間後の触媒の炭素量は4.9重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が81.0%、ブタジエンの選択率は83.3%、ブタジエン収率は67.5%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。 次に、供給するガスを窒素に換え320℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度を320℃で10時間、さらに360℃で40時間、さらに400℃で15時間の再生を行った。さらに触媒の再酸化を目的に、温度550℃で10時間再生を実施した。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は2.1容量%であった。
【0087】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は90.4%、ブタジエンの選択率は84.1%、ブタジエン収率は76.0%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生前後の反応成績等を表3に示す。
【0088】
(実施例8)
(b)ブタジエン製造反応
実施例1の(a)触媒の調製工程で得られた触媒50gを、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管に入れ、この反応管に1−ブテン/2−ブテン/i−ブテン/n−ブタン=55/38/6/1、空気/n−ブテン=4.7〜6.2、バランスガスとして窒素を供給し、n−ブテン濃度=8容量%の原料混合ガスを流量F=773cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=360℃、反応圧力50KPaGの条件で反応を行った。空気量は、反応器出口の酸素量が0.3〜0.7容量%となるよう調整した。この時、触媒と混合ガスの接触時間は2.5(g・sec/cc)であった。
【0089】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が90.8%、ブタジエンの選択率は84.1%、ブタジエン収率は76.4%、300時間後の触媒の炭素量は4.8重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が81.9%、ブタジエンの選択率は82.8%、ブタジエン収率は67.8%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。 次に、供給するガスを窒素に換え320℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度を320℃で10時間、さらに360℃で40時間、さらに400℃で15時間の再生を行った。さらに触媒の再酸化を目的に、酸素濃度を21容量%に調整し、温度480℃で10時間再生を実施した。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は2.3容量%であった。
【0090】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は90.8%、ブタジエンの選択率は84.2%、ブタジエン収率は76.5%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生前後の反応成績等を表3に示す。
【0091】
(実施例9)
(b)ブタジエン製造反応
実施例1の(a)触媒の調製工程で得られた触媒50gを、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管に入れ、この反応管に1−ブテン/2−ブテン/i−ブテン/n−ブタン=55/38/6/1、空気/n−ブテン=4.7〜6.2、バランスガスとして窒素を供給し、n−ブテン濃度=8容量%の原料混合ガスを流量F=773cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=360℃、反応圧力50KPaGの条件で反応を行った。空気量は、反応器出口の酸素量が0.3〜0.7容量%となるよう調整した。この時、触媒と混合ガスの接触時間は2.5(g・sec/cc)であった。
【0092】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が90.4%、ブタジエンの選択率は84.1%、ブタジエン収率は76.0%、300時間後の触媒の炭素量は5.1重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が80.8%、ブタジエンの選択率は83.3%、ブタジエン収率は67.3%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。 次に、供給するガスを窒素に換え320℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度を320℃で10時間、さらに360℃で40時間、さらに400℃で15時間の再生を行った。さらに触媒の再酸化を目的に、酸素濃度を25容量%に調整し、温度440℃で10時間再生を実施した。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は1.9容量%であった。
【0093】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は90.7%、ブタジエンの選択率は84.4%、ブタジエン収率は76.6%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
再生前後の反応成績等を表3に示す。
【0094】
(比較例1)
実施例1の(a)触媒の調製と同様の方法で触媒を調製、実施例1の(b)ブタジエン製造反応と同条件で反応を実施した。
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が92.2%、ブタジエンの選択率は85.6%、ブタジエン収率は78.9%、300時間後の触媒の炭素量は2.1重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が88.8%、ブタジエンの選択率は85.3%、ブタジエン収率は75.7%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
【0095】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
次に、供給するガスを窒素に換え260℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度を260℃で20時間の再生を行った。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は4.9容量%であった。
再生後の触媒の炭素量は2.1重量%であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は88.8%、ブタジエンの選択率は85.6%、ブタジエン収率は76.0%であった。
【0096】
(比較例2)
実施例1の(a)触媒の調製と同様の方法で触媒を調製、実施例1の(b)ブタジエン製造反応と同条件で反応を実施した。
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が92.9%、ブタジエンの選択率は84.9%、ブタジエン収率は78.9%、300時間後の触媒の炭素量は2.0重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が88.2%、ブタジエンの選択率は84.9%、ブタジエン収率は74.9%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
【0097】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
次に、供給するガスを窒素に換え360℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を1容量%に調整し、温度を360℃で35時間の再生を行った。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は0.0容量%であった。
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は91.6%、ブタジエンの選択率は82.7%、ブタジエン収率は75.8%であった。
【0098】
(比較例3)
実施例1の(a)触媒の調製と同様の方法で触媒を調製、実施例1の(b)ブタジエン製造反応と同条件で反応を実施した。
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が92.4%、ブタジエンの選択率は85.4%、ブタジエン収率は78.9%、300時間後の触媒の炭素量は2.1重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が87.9%、ブタジエンの選択率は85.0%、ブタジエン収率は74.7%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。
【0099】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
次に、供給するガスを窒素に換え360℃で1時間原料ガスを置換した後、450℃に昇温し空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度450℃で20時間の再生を行った。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は0.0容量%であった。
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は90.2%、ブタジエンの選択率は80.2%、ブタジエン収率は72.3.0%であった。
【0100】
(比較例4)
(b)ブタジエン製造反応
実施例1の(a)触媒の調製工程で得られた触媒50gを、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管に入れ、この反応管に1−ブテン/2−ブテン/i−ブテン/n−ブタン=55/38/6/1、空気/n−ブテン=4.7〜6.2、バランスガスとして窒素を供給し、n−ブテン濃度=8容量%の原料混合ガスを流量F=773cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=360℃、反応圧力50KPaGの条件で反応を行った。空気量は、反応器出口の酸素量が0.3〜0.7容量%となるよう調整した。この時、触媒と混合ガスの接触時間は2.5(g・sec/cc)であった。
【0101】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が90.4%、ブタジエンの選択率は84.4%、ブタジエン収率は76.3%、300時間後の触媒の炭素量は4.9重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が81.7%、ブタジエンの選択率は83.5%、ブタジエン収率は68.2%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。 次に、供給するガスを窒素に換え320℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度を320℃で10時間、さらに360℃で40時間、さらに400℃で15時間の再生を行った。さらに触媒の再酸化を目的に、温度550℃で10時間再生を実施した。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は1.9容量%であった。
【0102】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は82.2%、ブタジエンの選択率は82.1%、ブタジエン収率は67.5%であった。
【0103】
(比較例5)
(a)触媒の調製
組成がMo12Bi0.60Fe1.8Ni5.00.09Rb0.05Mg2.0で表される酸化物を、50重量%のシリカに担持して、触媒を次のようにして調製した。30重量%のSiO2を含むシリカゾル1775.7gをとり、16.6重量%の硝酸413.3gに58.7gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、146.7gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、293.4gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、103.5gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、1.8gの硝酸カリウム〔KNO3〕および1.5gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させた液を加え、最後に水860.9gに427.4gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo724・4H2O〕を溶解させた液を加えた。ここに得られた原料調合液を並流式の噴霧乾燥器に送り、入口温度約250℃、出口温度約140℃で乾燥させた。該調合液の噴霧化は、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧化装置を用いて行った。得られた粉体は、電気炉で空気雰囲気下350℃で1時間の前焼成の後、空気雰囲気下590℃で2時間焼成して触媒を得た。
【0104】
(b)ブタジエン製造反応
(a)触媒の調製工程で得られた触媒50gを、内径25.4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管に入れ、この反応管に1−ブテン/2−ブテン/i−ブテン/n−ブタン=55/38/6/1、空気/n−ブテン=4.7〜6.2、バランスガスとして窒素を供給し、n−ブテン濃度=8容量%の原料混合ガスを流量F=773cc/min(NTP換算)で供給し、反応温度T-=360℃、反応圧力50KPaGの条件で反応を行った。空気量は、反応器出口の酸素量が0.3〜0.7容量%となるよう調整した。この時、触媒と混合ガスの接触時間は2.5(g・sec/cc)であった。
【0105】
(c)触媒の再生と再生触媒の反応評価
反応開始から10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率が88.5%、ブタジエンの選択率は83.6%、ブタジエン収率は74.0%、300時間後の触媒の炭素量は5.9重量%、反応成績は、n−ブテンの転化率が75.9%、ブタジエンの選択率は79.7%、ブタジエン収率は60.5%であり、触媒の流動性も良く、安定にブタジエンを製造することができた。 次に、供給するガスを窒素に換え320℃に降温し1時間原料ガスを置換した後、空気/窒素に変え酸素濃度を5容量%に調整し、温度を320℃で10時間、さらに360℃で40時間、さらに400℃で15時間の再生を行った。さらに触媒の再酸化を目的に、温度550℃で10時間再生を実施した。再生中の出口ガスはTCD検出器のガスクロマトグラフィーで分析し、酸素濃度の最低値は2.4容量%であった。
【0106】
再生後の触媒の炭素量は0.1重量%以下であった。この触媒に対して当初の反応条件で再び反応を開始したところ、再スタ−トから10時間後の反応成績は、n−ブテンの転化率は78.8%、ブタジエンの選択率は79.4%、ブタジエン収率は62.6%であった。
比較例1〜5における再生前後の反応成績等を表4に示す。
【0107】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒及び分子状酸素の存在下でn-ブテンからブタジエンを生成させる工程と、前記触媒を280℃〜550℃で、酸素濃度が0.1容量%以上の気体に接触させる工程とを有するブタジエンの製造方法。
【請求項2】
前記触媒を収容した容器内に前記気体を流通させることにより前記触媒を前記気体に接触させ、前記容器の入り口酸素濃度を3容量%以上とし、出口酸素濃度を1.0容量%以上とする請求項1記載のブタジエンの製造方法。
【請求項3】
前記触媒が、酸化物を担体に担時した酸化物触媒である請求項1又は2に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項4】
前記容器において触媒層入り口の酸素濃度を1〜25容量%とする請求項1〜3のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
【請求項5】
前記気体の温度を280℃〜400℃とすることにより、前記触媒に付着した有機物を燃焼させる請求項1〜4のいずれかに記載のブタジエン製造触媒の再生方法。
【請求項6】
前記触媒に付着した有機物濃度を0.5重量%以下にした後、焼成温度を400℃〜550℃にする請求項1〜5記載のブタジエンの製造方法。
【請求項7】
前記容器の入り口酸素濃度を5容量%〜25容量%とする請求項1〜6のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
【請求項8】
前記触媒がCeを含む請求項1〜7記載のブタジエンの製造方法。
【請求項9】
前記触媒が一般式
Mo12BipFeqabcdex
(式中、Aはニッケル及びコバルトから選ばれる少なくとも1種の元素、Bはアルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、Cはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の元素、Dは少なくとも1種の希土類元素、Eはクロム、インジウム及びガリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、p、q、a、b、c、d、e、及びxはそれぞれモリブデン12原子に対するビスマス、鉄、A、B、C、D、E及び酸素の原子比を表し、0.1≦p≦5、0.5≦q≦8、0≦a≦10、0.02≦b≦2、0≦c≦5、0≦d≦5、0≦e≦5であり、xは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)で表される請求項1〜8のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。
【請求項10】
前記触媒を収容した流動層反応器内で、前記触媒にn−ブテンを接触させてブタジエンを生成させ、前記触媒に有機物が付着した後、前記流動層反応器に酸素を供給し、前記有機物を300〜550℃で焼成する請求項1〜9のいずれかに記載のブタジエンの製造方法。

【公開番号】特開2012−92092(P2012−92092A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210491(P2011−210491)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】