説明

ブリスクをフライス加工する方法

【課題】空力損失の低減を可能にする、ガスタービン用のブリスクのフライス加工方法を提供する。
【解決手段】ディスクブランクにブリスクブレード13をフライス加工するとき、ブレードの両側面は側面フライス加工によって仕上削りする。切削ストリップがブリスクブレード間の流れ方向と一致するようにフライス加工することによって、等しい幅の切削ストリップが形成され、それによって、ブレードの負圧側12及び正圧側における空力損失が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブランクの外周において、一体的に多数設けられているブリスクブレードを、粗フライス加工することによって予め形造り、続いて正圧側及び負圧側並びに環状部を仕上フライス加工することによって仕上削りする、ガスタービンエンジン用のブリスクをフライス加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に知られているように、ブリスクはガスタービンエンジンのコンプレッサに使用され、ブリスク上でロータブレードがロータディスクと一体的に結合されて一体型装置を形成している。別個に製造されたロータブレードがロータディスクの外周の蟻溝に保持される従来のブレード配列を用いるロータホイールに比べ、ブレードが一体的に取り付けられているロータは、組み立て費用が削減されることに加え、支持ディスクの重量及び遠心荷重が少ないことで、多数のブレードが配列されること、及び最終的には空力効率が増加することを可能にすることを特徴とする。
【0003】
ブリスクは、別個に作成されたブレード要素を摩擦圧接によって支持ディスクに結合すること、又はディスクブランクの外周から始めてブレードの外形を固体材料からフライス加工することのいずれかによって製造される。
【0004】
ロータブレードは、半径方向軸を中心として通常捩れており、ブレード根元からブレード先端に向かってテーパ状になっており、凹状の正圧側及び凸状の負圧側を有し、且つそれらのブレード先端はブレード根元に対して平行ではないという点で、複雑な3次元形状を有する。これらのブレードを固体材料から切削及び機械加工することは通常、半球形切削ヘッドを有するカッターを使用する点接触フライス加工によって達成される。粗フライス加工動作の際にチャネルがまず形成され、後続の仕上フライス加工動作の際に正圧側及び負圧側、そして最終的には環状部が、仕上削りされる。チャネルの粗フライス加工と、それに続く側壁の仕上げフライス加工とを、部分的には交互に行うこともでき、実際には、環状部に達して仕上げ加工されるまで交互に行われる。「環状部」という用語は以下、ブレードの両側面と環状部との間の移行領域も指す。
【0005】
例えば特許文献1に記載されているロータブレードの両側面を形造る上記の点接触仕上加工プロセスは、時間がかかり、動作時間が長いこと及びこれに対応して工具消耗量が多いことによって工具費用及び製造費用が高価になるという点で不利である。両側面を仕上フライス加工している間の動作時間が長いことによるカッターの摩耗(ブレードの厚みが増すと工具動作時間及びこれに対応する工具摩耗が増す)に起因して、ブレードの寸法の正確さが保証されない。
【0006】
3次元形状ブリスクの両側面を仕上フライス加工するための時間があまりかからない方法は、5軸側面フライス加工であり、5軸側面フライス加工では、負圧側及び正圧側に沿ってブレードの根元に対して平行に面ストリップ(areal strip)を切削するために、軸がブレード表面に対して平行に送られるシャンクタイプカッターが使用される。側面フライス加工では、工具摩耗及び工具費用が減り、且つ個々のブレードの寸法の正確さ及びその表面仕上げを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6077002A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、表面仕上げが側面フライス加工によってなされるブリスクブレードの負圧側及び正圧側に不利な空力損失が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広範な態様は、空力損失の低減を可能にするブリスクのフライス加工方法を提供することである。
【0010】
本発明は、特許請求項1に記載の特徴に従う方法によって上記問題を解決することを特に目的としている。本発明の有利な展開及び有益な実施の形態はサブクレームから明らかになる。
【0011】
ディスクブランクの固体材料から3次元形状ブリスクブレードをフライス加工するとき、粗フライス加工によって予め形造られているブリスクブレードの両側面は、側面フライス加工によって仕上加工され、それによって、最終的なサイズとなる。カッターの動き方向又は側面フライス加工の際に形成される切削ストリップ(cutting strip)の向きは、エンジン作動時のブリスクブレードの正圧側及び負圧側における気体の流れ方向に一致しており、それによって、ブレード表面における空力損失を低減可能である。
【0012】
第1のプロセス変形形態によれば、切削工具の切削エッジがブレード先端及び環状部(環状部への移行領域)において形成する等しい幅の切削ストリップが、これらに対して平行に延び、ブレード先端及び環状部の斜めのアライメント、すなわち、ブレード長さの変化並びにブレード先端及び環状部間の傾斜に起因するブレード前縁及びブレード後縁間の長さの差は、切削ストリップを扇状に重ね合わせることによって補償される。重複フライス加工は、切削ストリップ間の段の高さも減らし、それによって、ブレード表面の流れ状態がさらに向上し、且つブレードのための研磨労力が低減する。
【0013】
本発明のさらに別の特徴によれば、ブレード先端と環状部とにおいて始まると共にこれらに対して且つ互いに対して平行に延びる切削経路を形成することができ、切削ストリップは、ブレード先端及び環状部に対して平行に配置される切削ストリップ間の移行領域において互いに重なり合うか又は交差する。好ましくは、ブレード先端に対して平行に形成される切削ストリップはこの変形形態では、環状部の最高地点まで延びることができ、そのため、環状部に対して平行に延びる切削ストリップは環状部の付近にしか形成されない。
【0014】
好適な実施形態を示す添付の図面を鑑みて、本発明をより十分に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1のチャネルが粗フライス加工され、シャンクタイプカッターを使用した側面フライス加工によってブレード正圧側が仕上フライス加工されている最中のディスクブランクを示す図である。
【図2】扇状に重なり合っている切削ストリップを有する、第1の変形形態に従って作成されたブリスクブレードを示す図である。
【図3】平行な切削ストリップを有する、第2の変形形態に従ってフライス加工されたブリスクブレードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず図1に示すように、ここでは概略的にしか示していないシャンクタイプカッター4の半球形切削ヘッド3を使用してディスクブランク1の外周面2から粗フライス加工することで、ディスクブランク1にチャネル5が形成される。次に、チャネル5の両側面、すなわち、ブリスクブレード13の正圧側及び負圧側が、シャンクタイプカッター4の半球形切削ヘッド3に設けられている切削エッジ11を使用して5軸側面フライス加工することによって仕上削りされる(仕上フライス加工される)。このプロセスでは、正圧側及び負圧側を横断する、すなわち、ブレード前縁6とブレード後縁7との間に延びる一定幅の多数の切削ストリップ8がフライス加工によって形成される。
【0017】
図2は、2つの隣接するチャネル5をフライス加工することによって作成された3次元ブリスクブレード13を凸状の負圧側12から見て示しており、ブレード先端9と、環状部10又は環状部10への移行面との間に延びる、3次元ブリスクブレード13のブレード前縁6及びブレード後縁7はそれぞれ異なる長さを有する。それでもやはり、切削ストリップ8は、ブレード先端9及び環状部10において、これらに対して平行に延びるように、もしくはより長いブレード前縁6からより短いブレード後縁7へと互いに重なり合うように、仕上フライス加工時に形成されるので、切削ストリップ8はブレード前縁6からブレード後縁7へ、ブリスクの動作中にブレードを通過する流れの方向を向いている。これは、切削ストリップ8が扇状に配列され、これに対応して、それぞれブレード先端9と環状部10とにおいて平行に配列されながら、ブレード先端9における傾斜から、環状部10における異なる方向の傾斜へと移行することを意味する。シャンクタイプカッター4の切削エッジ11から半球形カッターヘッド3への曲線的な移行部によって、隣接する切削ストリップ8間には滑らかな移行部が形成される。正圧側の切削ストリップ8は、ここでは図示していないが同様に形成される。したがって、ブレードの両側の切削ストリップの向きが流れの向きと一致しているため、空力損失が低減する。さらに、隣接する切削ストリップ間に通常存在する段が、重複側面フライス加工プロセスにおいて切削されるため、それらのサイズが著しく低減するので、空力損失がまたさらに低減する。同時に、ブレード表面の後続の研磨のための労力が低減する。
【0018】
図3に示すさらに別の変形形態によると、一定幅を有するように形成される切削ストリップ8’が、ブレード長さのある一定の部分にわたって、ブレード先端9の向きに対して平行に、ブレード前縁6からブレード後縁7へと重なり合うことなく配列されており、ブレードの残りの部分においてさらなる切削ストリップ8’’が環状部10に対して平行に配列されている。両方の領域の境界面では、ブレード先端9に対して平行に配列されている切削ストリップ8’と、環状部10に対して平行に配列されている別の切削ストリップ8’’とが互いに交差している。ブレード先端9に対して平行に延びる切削ストリップ8’はこの形態では、環状部10上の最高地点まで形成され得るが、切削ストリップ8’’は、小さい残りの領域においてのみ環状部10に対して平行に形成される。また、この場合、流れ方向と、切削ストリップ8’、8’’の向きとは、互いに実質的に一致しており、ブリスクブレード13の正圧側及び負圧側における空力損失を最小限にすることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 ディスクブランク
2 外周面
3 切削ヘッド
4 シャンクタイプカッター
5 チャネル
6 ブレード前縁
7 ブレード後縁
8 切削ストリップ(重なり合っている)
8’、8’’ 切削ストリップ(平行)
9 ブレード先端
10 環、移行領域
11 切削エッジ
12 負圧側
13 ブリスクブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン用のブリスクをフライス加工する方法であって、ディスクブランク(1)の外周において、多数の一体的に設けられる3次元ブリスクブレード(13)が粗フライス加工によって予め形造られ、続いて正圧側及び負圧側並びに環状部(10)の仕上フライス加工によって仕上削りされるブリスクをフライス加工する方法であって、正圧側及び負圧側を仕上フライス加工することは、カッター(4)の切削エッジによって形成される等しい幅の切削ストリップ(8、8’、8’’)がブリスクブレード(13)間の流れ方向と一致するように側面フライス加工することによってなされることを特徴とする方法。
【請求項2】
ブレードの前縁(6)とブレードの後縁(7)との間の切削ストリップ(8)は、扇状に互いに重なり合い、ブレード先端(9)及び環状部(10)における切削ストリップ(8)はこれらに対して平行に延び、それらの間の切削ストリップは、ブレード先端における切削ストリップの傾斜から環状部(10)における切削ストリップの傾斜へと段階的に移行し、重なり合う切削ストリップを設ける際に、先行するストリップによって形成された段が研削によって滑らかに削られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブレード先端(9)から始めて及び環状部(10)から始めて、切削ストリップ(8’、8’’)は、これらに対して且つ互いに対してそれぞれ平行に延び、中間の切削ストリップ(8’及び8’’)が、異なる傾斜の切削ストリップ領域間の移行部において互いに重なり合うように形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ブレード先端(9)に対して平行に延びる切削ストリップ(8’)は、環状部(10)の上の最高地点まで形成されるが、環状部(10)に対して平行に延びる切削ストリップ(8’’)は残りの領域にのみ形成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
切削ストリップ(8)を形成するために設けられている直線状の切削エッジが半球形切削ヘッドに隣接しているシャンクタイプカッター(4)が切削工具として使用されることを特徴とする請求項1〜4の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−262320(P2009−262320A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−94651(P2009−94651)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(505421788)ロールスロイス ドイチランド リミテッド ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Rolls−Royce Deutschland Ltd & Co KG
【住所又は居所原語表記】Eschenweg 11,15827 Blankenfelde−Mahlow,Germany
【Fターム(参考)】