説明

ブリーザ装置

【課題】車両に搭載したトランスファーケース内への水分の浸入を抑制できるブリーザ装置を提供する。
【解決手段】トランスファーケース70内の通気を行うための別置型のブリーザボックス1において、吸気が通過する収容部内を上下方向で二段に分離してなる隔壁部51を設けた。そして、隔壁部51の下側の下段層45内には、仕切壁で迷路状に区画されたラビリンス構造の通路を形成し、当該通路の底部をドレン口29に向かって次第に下降する傾斜状に形成した。これにより、呼吸口35から吸入した空気が水分を多く含むミスト状の場合でも、当該空気がラビリンス構造の通路を通過する際に水分の分離を促進させることができ、かつ、分離した水分を外部へ効率的に排出することができる。したがって、トランスファーケース70内により水分の少ない空気を吸入させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジン、トランスミッション、トランスファーなどのケース内の通気を行うためのブリーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジン、トランスミッション、トランスファーなどのケースには、該ケース内の通気を行うためのブリーザ装置が設けられている。このようなブリーザ装置として、吸気用の小孔(呼吸口)が形成された小型のボックス(ブリーザボックス)をケースの外部に別体で設置し、ケース内とボックス内とをパイプで連通したいわゆる別置型のブリーザ装置がある。
【0003】
車両の走行に伴いトランスファーなどのケース内の温度が上昇すると、ケース内の空気の圧力は、その体積膨張により上昇する。この場合、ケース内で圧力が上昇した空気がパイプを介して上記のボックス内に流入する。ボックス内に流入した空気は、呼吸口から大気中へ排出される。その一方で、トランスファーなどのケース内の圧力が低下した場合には、呼吸口からボックス内に外部の空気が吸入される。この空気は、ボックス内からパイプを経てケース内に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−364736号公報
【特許文献2】特開2004−68848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなブリーザ装置では、ボックス内の底部に水分を排出するための排出口が設けられている。また、ボックス内に設けたケース側に連通する開口部は、ボックス内の高い位置に設けられており、かつ、その周囲がリブなどで囲まれている。このような構造により、万一、呼吸口からボックス内に水滴が混入した場合や、水分を多く含むミスト状の気体が吸入された場合には、当該水分をボックス内で分離して外部へ排出することで、トランスファーなどのケース内へ浸入させないようにしている。
【0006】
また、上記のような別置型のブリーザ装置では、車両の比較的高い位置にボックスを設置することで、ボックスの呼吸口に水が被り難くなるようにして、水滴や水分が多く含まれるミスト状の気体が吸入され難くなるようにしている。
【0007】
しかしながら、上記のような別置型のブリーザ装置を設置する場合、車両に搭載した他の構成部品のレイアウトの都合により、車両の比較的に低い位置にブリーザ装置を設置しなければならない場合が多い。この場合、雨天時の水溜り路など車両の下部が水没するような厳しい条件下で走行すると、従来構造のブリーザ装置では、呼吸口からボックス内に吸入された水分を十分に分離できず、トランスファーなどのケース内に水滴あるいはミスト状の気体が浸入するおそれがあった。特に、ケース内への水滴の浸入を防ぐことはできても、ミスト状の気体の浸入を防ぐことができないおそれがあった。そのため、ブリーザ装置にミスト状の気体が吸入された場合、当該気体に含まれる水分を効果的に分離可能な構造を設けることで、ケース内への水分の浸入に対する耐性を向上させることが必要である。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の比較的に低い位置に設置した場合でも、トランスファーなどのケース内への水分の浸入を効果的に抑制できる別置型のブリーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、車両に搭載されるエンジン、トランスミッション、トランスファーの少なくともいずれかのケース(70)内の通気を行うためのブリーザ装置(1)であって、上端が開放された有底容器状の収容部(11)を有する本体部(10)と、収容部(11)の上端を塞ぐ上カバー(60)と、収容部(11)の底部(15)に設けた連通口(25)と、ケース(70)内と連通口(25)とを連通する連通管(23)と、収容部(11)内で連通口(25)から上方に延びて上カバー(60)の近傍に上端開口(19a)を有する筒状路(19)と、収容部(11)の側壁(33)に設けた呼吸口(35)と、収容部(11)の底部(15)に開口する排出口(29)と、収容部(11)内を上下方向で二段に分離してなる隔壁部(51)を有するセパレータ部材(50)と、隔壁部(51)に設けた連通孔(51b)と、を備え、筒状路(19)の上端開口(19a)は、隔壁部(51)の上側の空間に配置されており、呼吸口(35)は、隔壁部(51)の下側の空間に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明にかかるブリーザ装置では、トランスファーなどのケース内の圧力が低下した場合は、外部(大気中)の気体(空気)が呼吸口又は排出口から隔壁部の下側の空間に流入する。この気体は、隔壁部の連通孔を通って隔壁部の上側の空間に移動する。そして、筒状路の上端開口から筒状路に入り、筒状路を通って連通口に達し、連通口から連通管を経由してケース内に流入する。その一方で、トランスファーなどのケース内の圧力が上昇した場合は、当該ケース内の気体が連通管を通って連通口に達し、連通口から筒状路を通ってその上端開口に達する。そして、上端開口から収容部内における隔壁部の上側の空間に流入する。そこから隔壁部の連通孔を通って隔壁部の下側の空間に流入し、呼吸口又は排出口から外部へ排出される。
【0011】
そして、本発明にかかるブリーザ装置では、収容部内を上下方向で二段に分離してなる隔壁部を備えたうえで、呼吸口と筒状路の開口とを隔壁部の下側と上側それぞれに配置したことで、隔壁部を備えていない単段の収容部を有する従来構造のブリーザ装置と比較して、収容部内における呼吸口と筒状路の開口との間の経路長がより長い経路となるように構成している。また、呼吸口を隔壁部の下側に配置したことで、呼吸口から流入した外部の気体は、隔壁部の連通孔を通って上側の空間に移動してから筒状路の上端開口に流入するようにしている。これらによって、呼吸口から収容部内に水分が混入した場合や、吸入された気体が水分を多く含むミスト状の気体である場合でも、当該気体が収容部内で長い経路を通過する間に水分の分離が促進され易くなる。また、ミスト状の気体に含まれる水分は、隔壁部の下側の空間で凝縮して分離し易くなるので、隔壁部の連通孔を通過して上側の空間に入り込む気体に含まれる水分量は、比較的に少なくなる。したがって、ミスト状の気体が筒状路の開口に達するおそれが減少する。これらによって、トランスファーなどのケース内に水分の少ない気体を吸入させることが可能となる。以上により、ブリーザ装置を車両の高い位置に設置できない場合でも、トランスファーなどのケース内に水滴やミスト状の気体が浸入することを効果的に防止できる。
【0012】
また、上記のブリーザ装置では、上カバー(60)の内面に設けられて筒状路(19)の上端開口(19a)の周囲を囲むリブ(65)を備え、収容部(11)の内部は、リブ(65)の内径側で筒状路(19)との間に画成された第1の空間層(41)と、隔壁部(51)の上側におけるリブ(65)の外径側に画成された第2の空間層(43)と、隔壁部(51)の下側に画成された第3の空間層(47)と、の三層に区画された構造であってよい。
【0013】
この構成によれば、収容部内を第1乃至第3の空間層の三層に区画したことで、収容部内における呼吸口と筒状路の上端開口との間の経路をより長くすることを可能としている。また、呼吸口から筒状路の上端開口に達する間に、隔壁部などで仕切られた第1の空間層から第3の空間層までを順に通るように構成したことで、各空間層でミスト状の気体に含まれる水分を分離させ易くなる。したがって、トランスファーなどのケース内により水分の少ない気体を吸入させることが可能となる。
【0014】
また、上記のブリーザ装置では、第3の空間層(47)には、収容部(11)の底部(15)に立設された仕切壁(17)で迷路状に形成されたラビリンス構造の通路(47)が設けられているとよい。
【0015】
この構成によれば、第3の空間層にラビリンス構造の通路を設けたことで、第3の空間層を通過する気体の経路を更に長くすることができる。また、ラビリンス構造の通路によって、第3の空間層を通過する気体に含まれる水分の凝縮が促進されるので、呼吸口から吸入した気体に水分が多く含まれる場合でも、当該水分を第3の空間層で効果的に分離できる。
【0016】
また、この場合、ラビリンス状の通路(47)の底部(15)は、連通孔(51b)に対応する位置から排出口(29)の位置に向かって次第にその高さ位置が低くなる傾斜状に形成されているとよい。ラビリンス構造の通路の底部を上記のような傾斜状とすることで、当該通路で分離した水分が底部を伝って排出口の方へ流れ易くなるので、排出口から水分を効率良く外部へ排出することが可能となる。これらによって、呼吸口から浸入した気体が水分を多く含む気体である場合でも、当該水分を第3の空間層で効果的に分離できるので、トランスファーなどのケース内により水分の少ない気体を吸入させることが可能となる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるブリーザ装置によれば、車両の比較的に低い位置に設置する場合でも、トランスファーなどのケース内への水分の浸入を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかるブリーザボックスの設置状態を示す概略の斜視図である。
【図2】ブリーザボックスの構成部品を示す分解斜視図である。
【図3】ブリーザボックスの内部構造を示す側断面図(図1のA−A矢視断面図)である。
【図4】ブリーザボックスの内部構造を示す側断面図(図1のB−B矢視断面図)である。
【図5】収容部の底部を示す図で、図2のC−C矢視に対応する断面図である。
【図6】ブリーザボックス内の空気及び水の流れを説明するための透視斜視図である。
【図7】通路の底部に沿う水の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかるブリーザ装置の一実施形態であるブリーザボックス1の設置状態を示す概略の斜視図である。同図に示すブリーザボックス1は、車両に搭載されたトランスファーケース70内の通気を行うためのブリーザ装置であって、トランスファーケース70とは別置で設置された小型の略直方体状の中空容器を備えて構成されている。この中空容器は、後述する本体部10と上カバー60とからなる。ブリーザボックス1は、トランスファーケース70に隣接して設置されたトランスミッションケース80の側面80aに取り付けられている。そして、ブリーザボックス1の下部には、連通パイプ(連通管)23とドレンパイプ31の2本のパイプが接続されている。連通パイプ23は、一端がブリーザボックス1の下部に接続されて、他端がトランスファーケース70の側面に設けた貫通孔70aに接続されている。この連通パイプ23は、ブリーザボックス1の内部とトランスファーケース70の内部とを連通している。ドレンパイプ31は、一端がブリーザボックス1の下部に接続されて、他端がトランスミッションケース80の側方で大気に開放された開放端31aになっている。また、ブリーザボックス1の本体部10は、連通パイプ23が接続されているトランスファーケース70の貫通孔70aよりも高い位置であって、トランスファーケース70の上端部よりも更に高い位置に設置されている。
【0020】
図2は、ブリーザボックス1の構成部品を示す分解斜視図である。また、図3及び図4は、ブリーザボックス1の内部構造を示す図で、図3は、図2のA−A矢視に対応する側断面図、図4は、図2のB−B矢視に対応する側断面図である。これらの図に示すように、ブリーザボックス1は、上端が開放された有底容器状の収容部11を有する本体部10と、収容部11の上端を塞ぐ上カバー60と、収容部11内を上下方向で二段に分離してなる隔壁部51を有するセパレータ部材50との3部品を主要な構成部品としている。
【0021】
本体部10、上カバー60、セパレータ部材50は、いずれも合成樹脂製の成型品である。本体部10は、略直方体状の中空の容器型で、収容部11の内側面における上下方向の中間付近には、段部13が形成されている。収容部11の内寸は、段部13の下側よりも上側の方が大きくなっている。収容部11の底部15には、図3に示すように、段部13の高さ位置まで延びる仕切壁17が立設されている。仕切壁17の詳細な構造については、後述する。また、底部15の略中心部には、上方に向かって上カバー60の近傍まで延伸する中空円筒状の筒状路19が立設されている。一方、本体部10の下面側における筒状路19に対向する位置には、下方に延伸する筒状の連通ポート21が一体形成されている。連通ポート21の下端には、連通パイプ23が取り付けられている。連通ポート21の内径側と筒状路19の内径側は、底部15に設けた連通口25を介して繋がっている。また、本体部10の下面側における一の角部の近傍には、下方に延伸する筒状のドレンポート27が一体形成されている。ドレンポート27の下端には、ドレンパイプ31が取り付けられている。ドレンポート27の内径側は、収容部11の底部15に設けたドレン口(排出口)29に通じている。また、図2及び図4に示すように、収容部11の一の側壁33aには呼吸口35が設けられている。呼吸口35は、側壁33aを貫通する小孔からなり、側壁33aの上端近傍に形成されている。呼吸口35によって収容部11の内外が連通している。また、図2に示すように、他の側壁33bの外面には、本体部10をトランスミッションケース80の側面80aに取り付けるための取付具14が設置されている。
【0022】
収容部11内に設置されたセパレータ部材50は、収容部11内を上下方向で二段に区画する平板状の隔壁部51と、隔壁部51の上面側に突出する突出部53とを一体に備えている。隔壁部51は、収容部11の内周に沿う略正方形状の外形を有しており、その外周辺51aが収容部11内の段部13に係合するようになっている。また、隔壁部51の略中心部には、筒状路19を貫通させるための開口部52が形成されている。また、隔壁部51における一の角部の近傍には、隔壁部51の上下の空間を連通する連通孔51bが形成されている。連通孔51bは、小径の貫通孔からなる。一方、突出部53は、略直方体状の箱型に形成された中空の部分で、その外側の側面と下面にはそれぞれ、内部に通じる開口53a,53bが形成されている。側面の開口53aは、セパレータ部材50を収容部11内に設置したときに呼吸口35に面するように配置されており、呼吸口35と連通するようになっている。下面の開口53bは、隔壁部51の下側の空間に通じている。
【0023】
上カバー60は、図2に示すように、収容部11の上端に被せて取り付ける略平板状の部材である。上カバー60の下面側の外周辺には、弾性を有する舌片状の係止片62が複数形成されている。一方、本体部10の外側面における各係止片62に対応する位置には、係止片62に係合する形状の係止突起12が形成されている。本体部10(収容部11)の上端に被せられた上カバー60は、上記の係止片62が係止突起12にスナップイン係合することで固定されるようになっている。
【0024】
上カバー60の下面の略中心部には、下方に突出する円筒状のリブ65が一体形成されている。リブ65は、その内径寸法が筒状路19の外径寸法よりも若干大きな寸法になっている。これにより、本体部10の上端に上カバー60を取り付けた状態で、図3及び図4に示すように、リブ65が筒状路19の上端開口19aの外径側を囲む位置に設置される。その状態で、筒状路19の上端開口19aと上カバー60の下面との間には僅かな隙間が形成されており、かつ、リブ65の下端と隔壁部51との間にも僅かな隙間が形成されている。
【0025】
そして、図3及び図4に示すように、収容部11の内部は、隔壁部51の上側におけるリブ65の内径側に画成された上段内側層(第1の空間層)41と、隔壁部51の上側におけるリブ65の外径側に画成された上段外側層(第2の空間層)43と、隔壁部51の下側に画成された下段層(第3の空間層)45との三層に区画された構造になっている。
【0026】
下段層45の内部は、仕切壁17によって区画されたいわゆるラビリンス構造(迷路構造)の通路47になっている。図5(a)は、収容部11の底部15及び仕切壁17の構成を説明するための図で、図3のC−C矢視に対応する部分の切断図である。また、図5(b)は、図5(a)のD−D矢視に対応する部分の側断面図である。仕切壁17は、下段層45内で底部15から隔壁部51の下面に当接する位置まで延伸している。仕切壁17によって区画された下段層45内の通路47は、隔壁部51の連通孔51bに対応する位置から、収容部11の側壁33に沿って筒状路19の周囲を囲むように進み、ドレン口29の位置に達している。この通路47は、途中に複数の仕切壁17が張り出して進行方向が複雑に屈曲する迷路状になっている。
【0027】
また、通路47の底部15には、複数の段差部49が形成されており、底部15は、図5(b)に示すように、連通孔51bに対応する位置からドレン口29の位置に向かって次第にその高さ位置が低くなるように傾斜状になっている。すなわち、底部15の高さは、連通孔51bに対向する位置で最も高くなっており、そこから通路47に沿って進むにつれて複数の段差部49を経て次第に低くなり、ドレン口29の位置が最も低くなっている。
【0028】
次に、上記構成のブリーザボックス1内における気体及び水の流れについて説明する。図6は、ブリーザボックス1内の気体及び水の流れを説明するための透視斜視図である。なお、図6では、下段層45内のラビリンス構造の通路47は図示を省略している。まず、トランスファーケース70内の圧力が低下した場合は、呼吸口35からブリーザボックス1内に外気(大気中の空気)が流入する。この呼吸口35から流入した空気は、セパレータ部材50の突出部53の内部空間を通って下段層45へ流入する。また、ブリーザボックス1内には、ドレンパイプ31の開放端からも空気が流入する。この空気は、ドレン口29から下段層45に入る。そして、これらの空気は、下段層45内でラビリンス構造の通路47を通過する。その後、隔壁部51の連通孔51bを通って上段外側層43へ流入する。さらに、リブ65の下端と隔壁部51との隙間を通ってリブ65と筒状路19との間に画成された上段内側層41に流入する。そして、上段内側層41から筒状路19の上端開口19aを経由して筒状路19内に入り、連通口25から連通パイプ23を介してトランスファーケース70内に導入される。このように、ブリーザボックス1の収容部11内に流入した外気(空気)は、下段層45に導かれてから、上段外側層43及び上段内側層41を経てトランスファーケース70内に導入される。
【0029】
一方、トランスファーケース70内の圧力が上昇した場合は、上記とは逆に、トランスファーケース70内の気体が連通パイプ23を通って連通口25に達し、連通口25から筒状路19を通って上端開口19aに達する。そして、上段内側層41から上段外側層43に流入する。さらに、隔壁部51の連通孔51bを通って下段層45に流入し、ラビリンス構造の通路47を経て呼吸口35又はドレン口29から外部へ排出される。
【0030】
図7は、収容部11の底部15に沿う水の流れを説明するための図である。既述のように、収容部11の底部15が傾斜状になっている。これにより、図7に点線で示すように、下段層45の底部15に溜まった水は、底部15に沿って上段側から下段側へ流れることで、ドレン口29に向かって流れる。これにより、底部15に溜まった水がドレン口29から外部へ排出され易くなる。すなわち、本実施形態のブリーザボックス1は、下段層45の通路47をラビリンス構造としたことによる水分の排出性の悪化を防止するための構造として、下段層45の底部15をドレン口29に向かって複数の段差部49を経て次第に下降する傾斜状としている。これにより、呼吸口35から収容部11内に吸入されたミスト状の空気が通過する際に、ラビリンス構造の通路47で分離された水がドレン口29から外部へ排出され易くなるようにしている。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のブリーザボックス1では、収容部11内を上下方向で二段に分離してなる隔壁部51を備えたうえで、呼吸口35を隔壁部51の下側の空間に配置し、筒状路19の上端開口19aを隔壁部51の上側の空間に配置している。この構成により、隔壁部51を備えていない従来構造のブリーザボックスと比較して、収容部11内に吸入された気体の流通経路がより長い経路となっている。また、呼吸口35を隔壁部51の下側に配置したことで、呼吸口35から収容部11内に流入した気体は、隔壁部51の連通孔51bを通って下段層45から上段外側層43に移動してから筒状路19に流入する。これらによって、呼吸口35から収容部11内に水分が混入した場合や、水分を多く含むミスト状の気体を吸入した場合でも、トランスファーケース70内により水分の少ない空気を吸入させることが可能となる。以上により、ブリーザボックス1を車両の高い位置に設置できない場合でも、トランスファーケース70内に水滴やミスト状の気体が浸入することを効果的に防止できる。
【0032】
また、このブリーザボックス1では、収容部11の内部空間を上段内側層41と上段外側層43と下段層45の三層に区画したことによって、収容部11内における気体が通過する経路をより長い経路とすることを可能としている。また、呼吸口35から筒状路19の上端開口19aに達するまでの間に隔壁部51などで仕切られた上記三つの空間層を順に通過するように構成したことで、各空間層でミスト状の空気に含まれる水分が分離し易くなる。したがって、トランスファーケース70内により水分の少ない空気を吸入させることが可能となる。
【0033】
また、収容部11内の下段層45にラビリンス構造の通路47を形成したことで、下段層45を通過する気体の経路が更に長くなるように構成している。また、ラビリンス構造の通路47によって、下段層45を通過する気体に含まれる水分の凝縮が促進されるので、呼吸口35から吸入した気体に水分が多く含まれる場合でも、当該水分を下段層45で効果的に分離できる。それに加えて、通路47の底部15を傾斜状にしたことで、通路47で分離した水分が底部15を伝ってドレン口29へ流れ易くなるので、下段層45で分離した水分を効率良く外部へ排出することが可能となる。これらによって、トランスファーケース70内にさらに水分の少ない空気を吸入させることが可能となる。
【0034】
すなわち、雨天時の水溜り路の走行など、車両の下部が水没するような厳しい条件下で走行する場合には、呼吸口35から収容部11内に吸入される空気は、水分(水滴)を多く含むミスト状になっていると想定される。その場合でも、本実施形態のブリーザボックス1では、収容部11を上記の上段外側層43と上段内側層41と下段層45の三層に分割しており、かつ、下段層45の通路47をラビリンス構造としていることで、収容部11内をミスト状の空気が通過する際に水分が効率的に分離されることで、トランスファーケース70内に水分を含む気体が浸入するおそれを低減できる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明にかかるブリーザ装置の一実施態様として、トランスファーケース70内の通気を行うためのブリーザボックス1を示したが、本発明にかかるブリーザ装置は、トランスファーケース70内の通気を行うもの以外にも、エンジンのケース又はトランスミッションのケースの通気を行うブリーザ装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 ブリーザボックス(ブリーザ装置)
10 本体部
11 収容部
12 係止突起
13 段部
15 底部
17 仕切壁
19 筒状路
19a 上端開口
21 連通ポート
23 連通パイプ(連通管)
25 連通口
27 ドレンポート
29 ドレン口(排出口)
31 ドレンパイプ
31a 開放端
33 側壁
35 呼吸口
41 上段内側層(第3の空間層)
43 上段外側層(第2の空間層)
45 下段層(第1の空間層)
47 (ラビリンス構造の)通路
49 段差部
50 セパレータ部材
51 隔壁部
51a 外周辺
51b 連通孔
52 開口部
53 突出部
53a 開口
53b 開口
60 上カバー
62 係止片
65 リブ
70 トランスファーケース
70a 貫通孔
80 トランスミッションケース
80a 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエンジン、トランスミッション、トランスファーの少なくともいずれかのケース内の通気を行うためのブリーザ装置であって、
上端が開放された有底容器状の収容部を有する本体部と、前記収容部の上端を塞ぐ上カバーと、前記収容部の底部に設けた連通口と、前記ケース内と前記連通口とを連通する連通管と、前記収容部内で前記連通口から上方に延びて前記上カバーの近傍に上端開口を有する筒状路と、前記収容部の側壁に設けた呼吸口と、前記収容部の底部に開口する排出口と、前記収容部内を上下方向で二段に分離してなる隔壁部を有するセパレータ部材と、前記隔壁部に設けた連通孔と、を備え、
前記筒状路の前記上端開口は、前記隔壁部の上側の空間に配置されており、前記呼吸口は、前記隔壁部の下側の空間に配置されていることを特徴とするブリーザ装置。
【請求項2】
前記上カバーの内面に設けられて前記筒状路の前記上端開口の周囲を囲むリブを備え、
前記収容部の内部は、前記リブの内径側で前記筒状路との間に画成された第1の空間層と、前記隔壁部の上側における前記リブの外径側に画成された第2の空間層と、前記隔壁部の下側に画成された第3の空間層と、の三層に区画された構造であることを特徴とする請求項1に記載のブリーザ装置。
【請求項3】
前記第3の空間層には、前記収容部の前記底部に立設された仕切壁で迷路状に形成されたラビリンス構造の通路が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブリーザ装置。
【請求項4】
前記通路の前記底部は、前記連通孔に対応する位置から前記排出口の位置に向かって次第にその高さ位置が低くなる傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のブリーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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