説明

ブレーキ装置の操作方法および装置

液圧式ブレーキ装置において、ブレーキ装置内に供給された容量並びにこれにより得られた全ブレーキ回路内の圧力の間の関係、いわゆるp−V特性曲線を知ることが有意義である。特に、全ブレーキ回路のp−V特性曲線のみならず個々の構成要素のp−V特性曲線もまた知ることが重要である。種々の遮断弁(8−10、13)の操作と共に容量移動ユニット(2、14、26、27)を作動させることにより、ブレーキ装置の種々の構成要素に対する複数のp−V特性曲線が決定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置の操作方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許公開第10235373A1号は、特に電気液圧式車両ブレーキ装置のブレーキ液内の不溶ガスの検査方法に関するものであり、この場合、ペダル・ストロークおよびマスタ・ブレーキ・シリンダ内圧力が測定され且つ目標値と比較される。所定の圧力におけるペダル・ストロークが目標値より大きい場合、このことは、ブレーキ液内に気泡が存在することを推測させる。
【0003】
欧州特許第1463658B1号は、ブレーキ装置の前提とされるp−V特性曲線の偏差に基づく、自動車用電気液圧式ブレーキ装置におけるガスないしは空気の検出方法に関するものである。
【0004】
本発明を説明するために使用される液圧装置は既知であり且つ例えば文献“Kraftfahrtechnisches Taschenbuch”(Automotive Handbook)「自動車ハンドブック」(第25版、BOSCH、Vieweg出版、ISBN 3528238763)内に詳細に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許公開第10235373A1号
【特許文献2】欧州特許第1463658B1号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Kraftfahrtechnisches Taschenbuch”(Automotive Handbook)「自動車ハンドブック」(第25版、BOSCH、Vieweg出版、ISBN 3528238763)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、液圧式ブレーキ装置の制御/操作精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、独立請求項の特徴を有する、圧力/容量関係(p−V関係)に基づくブレーキ装置の操作方法を記載する。特徴として、ブレーキ装置において、ブレーキ装置の一部分がブレーキ装置の残りの部分から液圧的に切離し可能である。容量移動ユニットがブレーキ媒体を切り離された部分内に移動させ、この場合、移動から得られた、切り離された部分内の圧力経過特に圧力が決定される。同様に、例えば切り離された部分の内部においてブレーキ媒体容量が供給され、そこに搬送され且つ圧力発生のために利用可能な場合、ブレーキ液容量は切り離された部分の内部において移動可能である。
【0009】
ブレーキ媒体移動容量および得られた圧力からこのように決定された関係は、ブレーキ装置の少なくとも1つの部分の操作のために使用される。即ち、ブレーキ装置の操作装置に、ソフトウェア側に記憶されしたがって実際の走行状況またはブレーキ装置の状態に適合されない公称特性曲線即ち固定設定された特性曲線とは異なり、車両の現在の条件に対応するp−V関係が提供可能であることが有利である。
【0010】
これにより、ブレーキ装置の制御/操作ユニットにp−V関係に対する実際値が提供され、このことは制御/操作精度を向上させる。さらに、決定された(実際の)特性曲線を利用することにより、ブレーキ装置における評価方法(例えば圧力評価または容量評価)が改善可能である。
【0011】
従来技術における上記の文献に記載のような全ブレーキ装置内においてのみならず、ブレーキ装置の部分内においてもまたその決定が可能となることが特に有利である。
【0012】
従属請求項は有利な実施形態並びに変更態様を含む。
【0013】
一実施形態において、容量移動は、マスタ・シリンダおよび/または高圧蓄圧器および/またはプランジャおよび/またはポンプと組み合わされた、ドライバのブレーキ意向を増幅および/または変換する少なくとも1つのブレーキ力増幅装置により保証される。容量移動のための上記の手段は一部通常のブレーキ装置の既存の構成部品であるので、本方法を実行するための装置のコスト的に有利な実施形態を可能にすることが有利である。
【0014】
一変更態様において、ブレーキ装置は切離し可能部分のほかに第3の部分を有し、第3の部分は切離し可能部分と液圧的に結合可能である。本方法を実行するための容量移動ユニットによる容量移動は、2つの形態において実行可能である。一方で、容量移動ユニットは第3の部分の一部分であってもよい。他方で、容量移動ユニットは切り離された部分それ自身の一部分であってもよい。これらの実施形態は、液圧装置の内部からの容量移動を保証するのみならず、特に車輪ブレーキ・シリンダを含む液圧装置全体に対するp−V関係を決定するために、液圧装置の外部からの容量移動もまた保証する。
【0015】
一変更態様において、ブレーキ装置の切離し可能部分と第3の部分との間の液圧結合を遮断するために第1の遮断手段並びに他の遮断手段が、並びに切離し可能部分の個々の構成要素と切離し可能部分それ自身との間の液圧結合を遮断するために第2の遮断手段が設けられている。容量移動ユニットが第3の部分内に組み込まれている場合、第1の遮断手段を介して第3の部分は切離し可能部分と液圧結合される。容量移動ユニットが切離し可能部分の一部分である場合、第3の部分は切り離される。第2の遮断手段は、p−V特性曲線を決定するために使用されるべき構成要素を選択するために使用され、これにより、ブレーキ装置の選択された部分に対してもまたp−V関係の決定を可能にする。容量移動ユニットがポンプである場合、容量供給ユニットによるブレーキ媒体容量の供給が実行可能なように、他の遮断手段が操作される。
【0016】
本発明による方法の他の形態において、圧力/容量関係を決定するために、容量移動の間の圧力経過特に先行容量移動後の圧力が圧力センサにより測定されるかまたは圧力の関数である変数から決定され、および移動容量が測定されるかまたは容量移動ユニットの特性変数から決定される。このために、その中で圧力/容量関係が決定されるべき液圧式ブレーキ装置の部分内に、圧力センサが組み込まれていなければならない。即ち、圧力センサは、例えば車輪圧力センサまたは回路圧力センサの形で設けられていてもよい。
他の一形態において、決定された圧力/容量関係の関数である値が記憶され且つ次にこれらの値がブレーキ装置の少なくとも1つの部分の操作のために使用されてもよい。これにより、制御/操作精度の向上が可能である。
【0017】
一定の条件および/または変化される条件のもとで、ないしは関与する構成要素を一定にするかおよび/または変化させることによってp−V特性曲線の決定を反復して実行することにより、ブレーキ装置内の他のp−V関係に関する情報を得ることが可能である。これは、p−V関係が例えば現在の走行状況に基づいて直接決定可能でない場合に対してもまた、p−V関係の決定を間接的に可能にすることが有利である。
【0018】
車両の制動における信頼性を向上させるために、p−V関係の決定が、標準点検として各々の走行開始前に実行されても、保守点検として例えば整備工場に立ち寄ったときに実行されても、および車両の実際の運転状況に適合させるために走行の間に実行されてもよい。
【0019】
他の一実施形態において、決定された、全ブレーキ装置の圧力/容量関係および/または全ブレーキ装置の構成要素における部分量の圧力/容量関係に目標範囲からの偏差があるとき、ドライバにフィードバック通報が与えられてもよい。このフィードバック通報は、特に、光学式、音響式または機械式フィードバック通報であってもよい。さらに、全ブレーキ装置の他の構成要素が操作され、特に安全装置が作動されてもよい。
【0020】
装置に関する独立請求項に、圧力/容量関係を決定するために、ブレーキ装置の一部分がブレーキ装置の残りの部分から液圧的に切り離され且つ容量移動が開始されるように、ブレーキ装置の一部分を操作する装置が記載される。ブレーキ装置の切り離された部分内において容量移動の間に得られた圧力変化または圧力経過が決定され、およびブレーキ装置の少なくとも1つの部分を操作するために圧力/容量関係の形で使用される。
【0021】
他の一形態において、移動容量を分配するために、本発明の装置により、遮断手段の設定およびこれによるブレーキ装置の調査されるべき構成要素の選択が行われる。遮断手段は、ブレーキ回路内の遮断弁および/または車輪ブレーキ・シリンダの入口弁の形で形成されていてもよく、これによりブレーキ装置内に追加の要素が組み込まれる必要がなく、このことはコスト的に有利である。
【0022】
本発明の実施例が、図面において、図1−3により説明されかつ以下の記載において詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、それにより本発明の方法が説明可能なブレーキ装置を示す。
【図2】図2は、操作可能な電気機械式ブレーキ力増幅装置により容量を移動させるための代替可能性を詳細に示す。
【図3】図3は、本発明による方法を方法ステップで示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を自動車ブレーキ装置に関して説明する。本発明は、図1に、通常の循環システムESP(電子式安定性プログラム)の液圧装置の例で説明される。本発明はブレーキ装置のこの形態に限定されていないことを強調しておく。図1に装置の構成部分が示されている。
【0025】
ドライバの希望を表わすための操作要素1が操作され、且つ操作要素1は、場合により操作可能な電気機械式ブレーキ力増幅装置2により支援されて、ブレーキ媒体容量をタンデム・マスタ・シリンダ3内に供給する。ブレーキ媒体容量を搬送するために、タンデム・マスタ・シリンダ3の少なくとも2つの出口が配管4を介してそれぞれ1つのブレーキ回路と結合されている。ブレーキ回路6および7の各々は、液圧装置5の一部分並びにこれらの部分に付属された車輪ブレーキ・シリンダ11および12または18および19から構成されている。
【0026】
ブレーキ回路6において、マスタ・シリンダ3から延びる液圧配管が、分岐したのちに、切換弁8と、それに並列に車輪ブレーキ・シリンダへの流動方向を有する逆止弁21と、並びに高圧切換弁9と連結されている。切換弁8は2つの車輪ブレーキ・シリンダ11および12と液圧結合をなし、この場合、これらの結合は切換可能な入口弁10により遮断可能であり、入口弁10に並列に、マスタ・シリンダ3の方向に流動可能な逆止弁20が接続されている。車輪ブレーキ・シリンダ11および12の各々は、それぞれ1つの切換可能な出口弁13を介して低圧蓄圧器15と、並びに逆止弁16を介してリターン・ポンプ14の吸込側と結合されている。リターン・ポンプ14の吸込側は、上記の高圧切換弁9および配管4を介して、マスタ・シリンダ3と結合可能である。リターン・ポンプ14の吐出側は入口弁10と結合されている。リターン・ポンプ14は、それぞれのブレーキ回路内の両方のポンプに対して設けられている1つのモータ17により駆動される。第2のブレーキ回路7は、車両の他の2つの車輪の車輪ブレーキ・シリンダと結合されているところまでは同様に形成されている。
【0027】
ブレーキ希望があり且つそれに関連して操作要素1が操作された場合、場合によりブレーキ力増幅装置2が関与して、マスタ・シリンダ3から液圧装置5内にブレーキ媒体容量が移動され且つこれにより圧力が形成される。
【0028】
ESP(電子式安定性プログラム)またはEHB(電子液圧ブレーキ)のような液圧ベースのブレーキ制御装置において、車輪ブレーキ・シリンダ内の圧力は、ドライバの作用がなくても、ほぼ液圧装置の内部から形成可能である。この場合、操作可能な2つの切換弁8はタンデム・マスタ・シリンダ3をブレーキ回路6および7から切り離す。各ブレーキ回路内のリターン・ポンプ14は、それぞれのブレーキ回路内に、またはブレーキ回路から、ブレーキ媒体容量Vを供給し、これによりブレーキ回路内の圧力変化pを導く。
【0029】
上記のようなブレーキ装置において、本発明による方法が適用されるべきである。原理は、ブレーキ媒体容量を液圧装置および車輪ブレーキ・シリンダ内に供給すること、並びにこれから得られた圧力を決定すること、にある。移動された容量Vおよび容量移動から得られた圧力pからなる関係は、以下においてp−V特性曲線と呼ばれる。このp−V特性曲線が決定されるべきである。この場合、得られた圧力が決定されるものと限定して理解されてはならない。同様に、本発明により、容量移動の間における圧力経過が記録されてもよく、このことは、一方でp−V特性曲線を結果として得ることになる。
【0030】
さらに、絶対圧力を決定することは必ずしも必要ではなく、同様に、初期値に対する相対圧力を決定することで十分なことがある。
【0031】
このような決定は、圧力および容量が測定可能、計算可能および/または評価可能であることを前提とする。即ち、例えば、圧力は、適切に配置された圧力センサまたは最適な場合にはブレーキ装置内に既存の圧力センサにより直接測定されてもよい。このために必要なセンサ特に回路圧力センサ24および車輪圧力センサ25が図1に示されている。
【0032】
容量がリターン・ポンプにより移動された場合、移動されたブレーキ媒体容量は、ポンプ固有の変数、例えば位置、操作期間および操作経過、背圧および惰性運転電圧により決定可能である。
【0033】
ブレーキ回路ないしは車輪ブレーキ・シリンダへの液圧結合を遮断可能な弁8および10は、操作ユニット(図示されていない)により、通路面積および流量に関して調節可能である。同様に、弁に作用している圧力の関数として弁が切換および/または制御されることが考えられる。
【0034】
したがって、ブレーキ媒体移動は、例えばリターン・ポンプにより、またはマスタ・シリンダ内の容量の移動により、且つこれに関係して全ブレーキ装置内の圧力変化により、ブレーキ装置の種々の構成要素(液圧装置、個々の部分ブレーキ回路、個々の車輪ブレーキ・シリンダおよびこれらの組み合わせ)へ、適切に分配可能である。
【0035】
以下に、本発明による方法が、容量移動ユニットの位置が異なる2つの代替実施例により説明される。
【0036】
第1の実施形態においては、ブレーキ媒体容量が液圧装置の内部においてリターン・ポンプにより移動され、第2の実施形態においては、液圧装置の外部から、電気機械式ブレーキ力増幅装置2の操作によりタンデム・マスタ・シリンダ3を用いて移動される。
【0037】
ブレーキ媒体容量がブレーキ回路にリターン・ポンプにより供給された場合、操作装置によって対応する遮断弁を操作することにより、その中にリターン・ポンプが存在するブレーキ回路の個々の構成要素に、容量変化から得られた圧力変化が提供可能である。したがって、ブレーキ装置の個々の構成部品に対するp−V特性曲線およびこれからあらゆる組み合わせのp−V特性曲線を決定することが可能である。
【0038】
特に、次の形態が考えられる:
車輪ブレーキ・シリンダを含む両方のブレーキ回路内における決定:
切換弁8は閉鎖され、入口弁10は開放している(この場合、両方のポンプの運転が必要であることは当然である)。
【0039】
ブレーキ回路内における決定:
少なくとも1つの切換弁8は閉鎖され、対応する回路内の入口弁10は開放している。
【0040】
1つの車輪ブレーキ・シリンダのみを有するブレーキ回路内における決定:
少なくとも1つの切換弁8は閉鎖され、ブレーキ回路の1つの入口弁10は開放し、ブレーキ回路内の残りの車輪遮断弁は閉鎖されている。
【0041】
車輪ブレーキ・シリンダのない両方のブレーキ回路内における決定:
切換弁8は閉鎖され、全ての入口弁10は閉鎖されている。
【0042】
車輪ブレーキ・シリンダのない1つのブレーキ回路内における決定:
少なくとも1つの切換弁8は閉鎖され、対応する回路内の全ての入口弁10は閉鎖されている。
【0043】
本発明による方法のこれらの実施形態において、高圧切換弁9は開放されていなければならない。
【0044】
車輪ブレーキ・シリンダが液圧的に切り離されているときに車輪ブレーキ・シリンダに連絡している液圧配管を考慮して1つのブレーキ回路内のp−V特性曲線が決定されるべき場合、車輪ブレーキ・シリンダに直接または車輪ブレーキ・シリンダの直前に追加の遮断弁(図示されていない)が設けられていてもよい。
【0045】
弁が開放しているものとみなされる場合、開放している入口弁および閉鎖された入口弁からの他の各組み合わせ並びに入口弁を全て省略することもまた可能であることを強調しておく。さらに、弁の切換がブレーキ回路内の容量移動ユニットの位置並びに液圧接続の関数であってもよいことは当業者に明らかである。さらに、2つのブレーキ回路のみを有する上記の実施例は、けっしてこれに限定されるものと理解されるべきではない。p−V特性曲線の決定に対する上記の例は、両方のブレーキ回路6および7内において実行可能であることは明らかであり、したがって明示的に記載されていない。
【0046】
本方法の操作並びに新たに決定されたp−V特性曲線の利用は操作装置23により行われ、操作装置23は場合により車両の他の操作ユニットにデータを伝送することが可能である。
【0047】
p−V特性曲線の決定方法の代替実施形態において、容量は、液圧装置内に存在する容量移動ユニットを用いる代わりに、液圧装置の外部の容量移動ユニットによって移動されてもよい。このような容量移動ユニットに対する具体的な例は、図1に22として統合されている、マスタ・シリンダ3と組み合わされた、操作可能な、特に電気機械式のブレーキ力増幅装置2である。電気機械式ブレーキ力増幅装置2は、図2に略図で示されている第2の実施例において、入力ピストン201、2つの支援ピストン202a、202b、モータ(図示されていない)、結合要素203並びに出力ピストン204から構成されている。この場合にブレーキ媒体容量の移動によって圧力変化を形成させるために、第1の実施形態とは異なり、切換弁8の少なくとも1つが開放されていなければならず、その理由は、接続されたブレーキ回路内に供給される容量は外部から供給されるからである。高圧切換弁9は閉鎖されたままである。車輪ブレーキ・シリンダが液圧的に切り離されているときに車輪ブレーキ・シリンダに連絡している液圧配管を考慮して1つのブレーキ回路内のp−V特性曲線が決定されるべき場合、車輪ブレーキ・シリンダに直接または車輪ブレーキ・シリンダの直前に追加の遮断弁(図示されていない)が設けられていてもよい。
【0048】
容量移動ユニットとして電気機械式ブレーキ力増幅装置が操作可能な場合、ブレーキ力増幅装置の出力ピストンによりブレーキ装置のマスタ・シリンダ内のピストンが移動され、且つこれにより、ブレーキ装置内に液が供給される。
【0049】
図2において、マスタ・シリンダ205は室および接続されたブレーキ回路のみで示されている。移動のために必要な力206は、モータから提供される支援力207および/またはドライバから提供される入力208および/またはこれらの組み合わせであってもよい。2つの力207および208を結合させるために結合要素203が使用され、結合要素203は2つの力207および208を出力206に結合する。操作可能なモータ(図示されていない)を操作することにより、ブレーキ媒体容量は、ドライバの関与がなくても移動可能である。移動されたブレーキ媒体容量の量は例えば出力ピストンの変位sおよびマスタ・シリンダの断面積から決定可能である。変位sは、例えばセンサにより、並びに変位の関数としての他の変数例えば駆動モータのモータ位置の測定または評価により決定可能である。
【0050】
容量移動から得られるブレーキ装置内の圧力変化を決定するために、例えば圧力センサ209が使用されてもよい。
【0051】
液圧装置内に存在する遮断弁を操作ユニットによって操作することにより、原理に従って、第1の実施形態に対して記載の経過に対応して、車輪ブレーキ・シリンダを含む全液圧装置に対して並びに全ブレーキ装置の種々の構成要素(液圧装置、個々のブレーキ回路、個々の車輪ブレーキ・シリンダおよびこれらの組み合わせ)に対して再び、p−V特性曲線が適切に決定可能である。
【0052】
上記の2つの実施形態は容量移動ユニットに対して単なる例を示しているにすぎないことに注意すべきである。本発明による方法は、同様に、容量を装置内に供給したりおよび/または容量を装置から引き出したりすることが可能な他の各ユニット例えばプランジャまたは高圧蓄圧器を用いても実行可能である。容量移動ユニットの上記の他の実施形態は、ブレーキ装置の内部においてのみならずブレーキ装置の外部においても考えられ、この場合、弁の位置は場合により適合されなければならない。
【0053】
液圧装置の内部に追加の容量移動ユニットを接続する可能性が、図1において、構成部品26の位置決めから理解される。
【0054】
液圧装置の外部に容量移動ユニットを接続する可能性が、構成部品27から理解される。ここで、構成部品26および27は、考えられる他の容量移動ユニットに対する、特に液圧式ブレーキ装置内の容量移動ユニットの位置決めに対する代表例を示している。液圧装置の内部の他の容量移動ユニットにより本発明による方法が実行されるべき場合、その中でp−V特性曲線が決定されるべき各ブレーキ回路内に容量移動ユニットが設けられていなければならない。これに対して、他の容量移動ユニットが構成部品27のように液圧装置の外部に存在する場合、容量移動ユニットは、2つの液圧出口を有して設けられていても、または各ブレーキ回路に対して重複して設けられていてもよい。
【0055】
追加の容量移動ユニットが、移動させるブレーキ媒体容量をいずれの媒体源から引き出すかに応じて、および容量を移動ユニットが液圧装置の外部に存在するか(高圧蓄圧器27)または液圧装置の内部に存在するか(高圧蓄圧器26)に応じて、場合により、高圧切換弁9および/または切換弁8の位置が適合されなければならない。移動される容量の、ブレーキ回路の個々の構成要素への分配は、上記の実施形態におけるように、上記の入口弁10および場合により車輪ブレーキ・シリンダに直接設けられた遮断弁により行われる。
【0056】
実施形態および容量移動ユニットの位置決めに応じてそれぞれ、p−V特性曲線の決定は、例えば両方のブレーキ回路に対して同時に、即ち図1に示されているようなESP(電子式安定性プログラム)装置において各ブレーキ回路内にリターン・ポンプ14が存在することによって同時に、実行可能である。
【0057】
p−V特性曲線の決定は種々のタイプで実行可能である:
(ケース1)全ての切換弁および入口弁の設定を同じままにして、決定の複数回実行。
(ケース2)切換弁および/または入口弁の少なくとも1つの設定を変化させて、決定の複数回実行。
【0058】
ケース1において、p−V特性曲線の決定の反復実行は、特性曲線をより正確に知ることを可能にする。ケース2において、複数回実行により、ブレーキ装置の測定されない構成部品を逆に推測可能にする。即ち、例えば、全部で2つのブレーキ回路のp−V特性曲線を知ることにより、全ブレーキ装置のp−V特性曲線を推測可能である。さらに、2つのブレーキ回路の1つのp−V特性曲線および全ブレーキ装置のp−V特性曲線から、第2のブレーキ回路のp−V特性曲線が推測可能である。
【0059】
本方法を改善するために、圧力/容量関係を決定するために使用される信号をフィルタリングすることが可能である。
【0060】
p−V特性曲線の決定は、走行開始前に行われる(運転前点検)のみならず、走行中に行われてもよい。走行中の決定に対しては、ケース2に示されているようなp−V特性曲線の演繹的決定が有意義なことがある。即ち、車両の走行運転中においては、車輪ブレーキ・シリンダに関するp−V特性曲線は、常に、車両の挙動に影響を与えることなしには、特に制動を行うことなしには決定可能ではない。しかしながら、ある走行状況において、ドライバがブレーキ力増幅装置または他の容量移動ユニットを関与させて車両を意図的に制動させた場合、この走行状況は、制動に関与した個々の構成要素のp−V特性曲線を決定するために利用可能である。
【0061】
全ブレーキ装置の1つまたは複数の構成要素のp−V特性曲線が存在するとき直ちに、これらの情報は、車両内の種々の点に、例えばABS(アンチロック・ブレーキ装置)および/またはESP(電子式安定性プログラム)のような制御/操作装置に伝送されてもよい。したがって、操作/制御ユニット内には、実際に有効なp−V特性曲線が記憶されている。
【0062】
さらに、本発明による方法により決定されたp−V特性曲線は、ブレーキ装置の精度または作動状態をモニタリングするために利用可能である。即ち、決定された圧力/容量関係が操作ユニット内に記憶されている目標関係から偏差を有しているとき直ちに、ドライバにフィードバック通報が与えられてもよい。このフィードバック通報は、例えば、警報ランプ、音響信号またはブレーキ・ペダルにおける触覚反作用により行われてもよい。
【0063】
さらに、偏差がある場合、ブレーキ装置の他の構成要素が操作されるか、および/または安全装置が作動されてもよい。
【0064】
本発明による方法を、図3により、次のステップにまとめることが可能である:
301:いずれの容量移動ユニットが容量を供給すべきかを決定する
302:容量移動ユニットがブレーキ回路の部分である場合、304に移行する
303:容量移動ユニットがブレーキ回路の部分ではない場合、305に移行する
304:ブレーキ回路をマスタ・シリンダから切り離し、306に移行する
305:ブレーキ回路をマスタ・シリンダと結合し、306に移行する
306:該当する弁による、容量移動ユニットと、調査されるべきブレーキ装置の部分との間の液圧結合を形成する
307:容量を移動する
308:得られた圧力を決定しまたは圧力経過を記録する
309:場合により複数回実行からの結果を組み合わせて、p−V特性曲線を決定する
310:場合により複数回実行し、306に移行する
311:p−V特性曲線を制御/操作ユニット内に記憶する
312:ブレーキ装置の操作のために新たな特性曲線を利用する
要約すると、液圧式ブレーキ装置においては、ブレーキ装置内に供給された容量並びにこれにより得られた全ブレーキ装置内の圧力の間の関係、いわゆるp−V特性曲線を知ることが有意義であるということができる。特に、全ブレーキ装置のp−V特性曲線を知るのみならず、全ブレーキ装置の個々の構成要素のp−V特性曲線をもまた知ることが重要である。液圧装置内に存在する容量移動ユニットおよび/または液圧装置の手前に接続された容量移動ユニットの作動により、並びに種々の弁の操作により、ブレーキ装置の種々の構成要素に対して複数のp−V特性曲線が決定可能であり、これらのp−V特性曲線は、重要な点において、車両の操作または制御のために実際値として考慮可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 操作要素
2 ブレーキ力増幅装置
3 マスタ・シリンダ
4 配管
5 液圧装置
6 第1のブレーキ回路
7 第2のブレーキ回路
8 切換弁(第1の手段)
9 高圧切換弁(他の手段)
10 入口弁(第2の手段)
11、12、18、19 車輪ブレーキ・シリンダ
13 出口弁(第2の手段)
14 リターン・ポンプ
15 低圧蓄圧器
16、20、21 逆止弁
17 モータ
22 第3の部分
23 操作装置
24、25、28 圧力センサ
26、27 高圧蓄圧器(プランジャ)
201 入力ピストン
202a、202b 支援ピストン
203 結合要素
204 出力ピストン
205 マスタ・シリンダ
206 出力
207 支援力
208 入力
209 圧力センサ
301−312 方法ステップ
s 変位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ媒体により作動する車両ブレーキ装置の少なくとも一部分を、圧力/容量関係の関数として操作する方法において、
前記圧力/容量関係を決定するために、ブレーキ装置の一部分(6、7、11、12、18、19)がブレーキ装置の残りの部分から液圧的に切り離されること、および
前記切り離された複数の又は1つの部分内へのブレーキ媒体容量移動から得られた、ブレーキ装置のこの部分内の圧力変化経過、特に得られた圧力が決定されること、および
前記容量移動および前記決定された圧力経過、特に前記決定された圧力から決定された圧力/容量関係が、ブレーキ装置の少なくとも一部分の操作のために使用されること、を特徴とするブレーキ装置の操作方法。
【請求項2】
ブレーキ装置が前記切離し可能部分のほかに第3の部分(22)を有し、該第3の部分(22)は前記切離し可能部分と液圧的に結合可能であり、および前記容量移動は容量移動ユニット(2、3;14;26;27)により行われ、この場合、該容量移動ユニット(2、3;14;26;27)が前記切り離された部分内または前記第3の部分(22)内に組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の操作方法。
【請求項3】
ブレーキ装置は、マスタ・シリンダ(3)および高圧蓄圧器およびプランジャおよびポンプの少なくともいずれかと組み合わされた、ドライバのブレーキ意向を増幅するかおよび変換するかの少なくともいずれかを行う少なくとも1つのブレーキ力増幅装置(2)を有すること、および
前記容量移動が前記容量移動ユニット(2、3;14;26;27)により行われ、この場合、特に、前記容量移動ユニットが、マスタ・シリンダ(3)および高圧蓄圧器(26または27)およびプランジャ(26または27)およびポンプ(14)の少なくともいずれかと組み合わされた前記ブレーキ力増幅装置(2)であること、を特徴とする請求項1または2に記載の操作方法。
【請求項4】
ブレーキ装置の前記切離し可能部分と前記第3の部分との間の液圧結合を遮断するために第1の手段(8)並びに他の手段(9)が、並びに前記切離し可能部分の個々の構成要素と前記切離し可能部分それ自身との間の液圧結合を遮断するために第2の手段(10、13)が設けられていること、および前記圧力/容量関係を決定するために、前記容量移動ユニットが前記切り離された部分内に組み込まれている場合、前記第3の部分(22)と前記切り離された部分との間の液圧結合が遮断されるかまたは予め遮断されているように、前記第1の手段(8)が操作されること、または、前記容量移動ユニットが前記第3の部分(22)内に組み込まれている場合、前記第3の部分(22)と前記切り離された部分との間の液圧結合が開放されるかないしは予め開放されているように、前記第1の手段(8)が操作され、
この場合、特に、前記容量移動ユニットと前記切り離された部分の個々の構成要素との間の少なくとも1つの液圧結合が開放されるかないしは予め開放されているように、前記第2の手段(10、13)が操作される設計がなされ、および
この場合、特に、前記容量移動ユニットがポンプ(14)であるとき、前記他の手段(9)が開放されていること、を特徴とする請求項3に記載の操作方法。
【請求項5】
容量移動(307)から得られた圧力経過、特に圧力が決定され(308)、この場合、移動された容量の値が測定されるかまたは前記容量移動ユニットの特性変数から決定され、および前記圧力経過特に圧力が圧力センサ(24、25、28)により測定されるかまたは圧力の関数である変数から決定されることを特徴とする請求項1に記載の操作方法。
【請求項6】
決定された圧力/容量関係の関数として決定された値が記憶され且つブレーキ装置の少なくとも1つの部分の操作のために使用され、この場合、特に、該操作はブレーキ作用の制御/操作の意味で行われるように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の操作方法。
【請求項7】
本方法が一定の条件および変化される条件の少なくともいずれかの条件のもとで反復されて(310)実行され、この場合、本方法の反復実行から他の特性曲線が導かれることを特徴とする請求項6に記載の操作方法。
【請求項8】
前記圧力/容量関係の決定が、走行開始前および走行中の少なくともいずれかにおいて実行され、およびこれから得られた全ブレーキ装置の実際の圧力/容量関係、並びに全ブレーキ装置の構成要素における部分量の実際の圧力/容量関係が、全ブレーキ装置を操作するために、制御/操作ユニットに提供されることを特徴とする請求項7に記載の操作方法。
【請求項9】
決定された、全ブレーキ装置の圧力/容量関係および全ブレーキ装置の構成要素における部分量の圧力/容量関係の少なくともいずれかに目標範囲からの偏差があるとき、ドライバにフィードバック通報が与えられること、特に、光学式、音響式または機械式フィードバック通報が操作されるか、および全ブレーキ装置の他の構成要素が操作されるか、特に安全装置が作動されるか、の少なくともいずれかが行われることを特徴とする請求項1に記載の操作方法。
【請求項10】
ブレーキ媒体により作動する車両ブレーキ装置の少なくとも一部分を、圧力/容量関係の関数として操作する装置(23)において、
前記圧力/容量関係を決定するために、ブレーキ装置の一部分がブレーキ装置の残りの部分から液圧的に切り離されるように、および
前記切り離された複数の/1つの部分内におけるブレーキ媒体容量移動から得られた、ブレーキ装置のこの部分内の圧力変化経過特に得られた圧力が決定されるように、および
前記容量移動および前記決定された圧力経過、特に前記得られた圧力から決定された圧力/容量関係が、ブレーキ装置の少なくとも一部分の操作のために使用されるように、該装置が形成されていることを特徴とするブレーキ装置の操作装置。
【請求項11】
ブレーキ装置の一部分を切り離すための手段が設けられ、および該手段が、特にブレーキ回路内の切換弁および車輪ブレーキ・シリンダの入口弁および弁の少なくともいずれかの形で存在すること、および
本装置が前記手段の切換および操作の少なくともいずれかを行うこと、を特徴とする請求項10に記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−501671(P2013−501671A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524193(P2012−524193)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061197
【国際公開番号】WO2011/018378
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】