説明

ブレーキ装置

【課題】より簡素な構成で、緩解中の押圧ピストンの移動を規制する。
【解決手段】ディスクに当接して摩擦力を付与する制動子をディスクに押圧させる押圧方向に進退して、制動子によってディスクを押圧させることを可能とする押圧ピストンと、押圧ピストンを制動子から退避する側に移動させることが可能な駆動軸Sと、駆動軸に連結されて駆動軸を軸回りに回転させることが可能な電気モータ4と、駆動軸を、押圧ピストンが制動子から退避する側に回転させる緩解機構11と、緩解機構と駆動軸とが連結された連結状態と、分離された分離状態とに切り替え可能な切替機構22と、連結状態で、押圧ピストンが制動子に進出する側に駆動軸が回転することを規制するストッパ機構33とを備えるブレーキ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪とともに回転するディスクに制動子を当接させることによって制動力を得るブレーキ装置に係り、特に制動子をディスクから待避させる緩解装置を有するブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両用のブレーキとして、車輪に直接ブレーキシューを押し付けて制動力を得る形式のブレーキ装置と比較して車輪の摩耗を考慮する必要がなく、また、車輪の状態によらず安定した制動力が得られるため、ディスクブレーキの採用が増加している。鉄道車両用のディスクブレーキとしては、機械バネによる力によって制動子をディスク方向に付勢しておき、例えば油圧の流体圧を利用したアクチュエータによって両者を離間する方向に移動させることで制動を解除する形式のものが知られている。
【0003】
この形式のディスクブレーキ装置は、流体圧の供給に問題が生じた場合においても、機械バネによる付勢力によって制動力が機能する、所謂フェールセーフ機能が備わっている。
【0004】
ところで、油圧式ディスクブレーキ装置は、油洩れ等により定期的に油のメンテナンスをしなければならず、保守性に問題を抱えている。そこで、鉄道車両のディスクブレーキ装置の動力源として流体圧ではなく電力を用いることが検討されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−25313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フェールセーフが機能している状態では車輪に制動力がかかったままの状態となり、車両を移動することが困難となる。特に、流体圧を利用したブレーキ装置と比較して、電力を用いたブレーキ装置の場合、電気モータの出力軸と、制動子を押圧する押圧ピストンの軸との間に減速機構などの伝達機構が介在することになるため、従来の緩解機構をそのまま用いることができない。
【0007】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、より簡素な構成で、緩解中の押圧ピストンの移動を規制することができる緩解装置を備えたブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明のブレーキ装置は、車輪とともに回転するディスクに摩擦力を付与して前記車輪を制動するブレーキ装置であって、前記ディスクに当接して摩擦力を付与する制動子と、前記制動子を前記ディスクに押圧させる押圧方向に進退して、前記制動子によって前記ディスクを押圧させることを可能とする押圧ピストンと、前記押圧ピストンを前記制動子に向けて付勢する付勢部と、前記押圧ピストンに形成されたピストン側ネジ部に螺合する駆動側ネジ部を有し、軸回りに回転することで、前記押圧ピストンを前記制動子から退避する側に移動させることが可能な駆動軸と、前記駆動軸に連結されて前記駆動軸を軸回りに回転させることが可能な電気モータと、前記駆動軸を、前記押圧ピストンが前記制動子から退避する側に回転させる緩解機構と、前記緩解機構と前記駆動軸とが連結された連結状態と、分離された分離状態とに切り替え可能な切替機構と、前記連結状態で、前記押圧ピストンが前記制動子に進出する側に前記駆動軸が回転することを規制するストッパ機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、電気モータの不具合等により駆動軸の回転を利用して押圧ピストンを制動子から退避させることができなくなった場合においても、緩解機構を用いて押圧ピストンを制動子から退避させることができる。
また、ストッパ機構が押圧ピストンの移動を規制するため、分離状態を保持するため別の手段を用いる必要がなく、緩解機構をより簡素な構成とすることができる。
【0010】
また、前記緩解機構は、前記押圧ピストンが前記制動子に進出する側に前記駆動軸が回転する方向と対応する方向への作動を不能とされていて、前記緩解機構によって前記ストッパ機構が構成されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、緩解機構によってストッパ機構が構成されているため、より簡素な構成でストッパ機構を有する緩解機構を実現することができる。
【0012】
また、前記緩解機構は、前記駆動軸の回転に応じて回転可能な従動歯車と、前記従動歯車と噛合わされるウォーム歯車と、を備えることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、緩解機構をウォーム歯車と従動歯車とによって構成することによって、ウォーム歯車を回転させることで従動歯車を回転させることができる。さらに、従動歯車の接線方向の力がウォーム歯車の軸方向に作用することにより、従動歯車の回転を規制することができる。これにより、簡素な構成でストッパ機構を有する緩解機構を構成することができる。
【0014】
また、前記緩解機構は、前記駆動軸に設けられた第一歯車と、前記切替機構により前記第一歯車と連結及び分離される第二歯車と、前記第二歯車と同軸上に設けられた第三歯車と、を備え、前記第三歯車が従動歯車として前記ウォーム歯車と噛合わされていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、第二歯車を第一歯車と連結及び分離することにより、容易に連結状態と分離状態とを切り替えることができる。
【0016】
また、前記従動歯車は前記駆動軸に同軸に設けられた歯車であり、前記切替機構により、前記ウォーム歯車と前記従動歯車とが連結及び分離される構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、最小限の構成により緩解機構を設けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気モータの不具合等により駆動軸の回転を利用して押圧ピストンを制動子から退避させることができなくなった場合においても、緩解機構を用いて押圧ピストンを制動子から退避させることができる。また、ストッパ機構が押圧ピストンの移動を規制するため、例えば緩解機構の機能を保持するため別の手段を用いて保持する必要がなく、緩解機構をより簡素な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係るブレーキ装置の側断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るブレーキ装置の手動緩解機構の要部拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るブレーキ装置の手動緩解機構を示す側断面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1、図2、及び図3に示すように、本実施形態のブレーキ装置1は、図示しない車輪と共に回転するディスク2に、パッド3を押し付けることにより摩擦力を付与して車輪を制動するディスクブレーキ形式の装置である。
【0021】
ブレーキ装置1は、電気モータ4と、電気モータ4の出力軸4aの回転を制動するように設けられた電磁ブレーキ5と、電気モータ4の回転を減速させるボール減速機6と、減速された回転によって回転するネジ軸7と、押圧力をパッド3に伝える押圧ピストン8と、押圧ピストン8をパッド3に向けて付勢する機械バネ9と、ディスク2やパッド3等が内蔵されたキャリパ10と、パッド3を強制的に待避させるための手動緩解機構11とを備えている。
【0022】
以下の説明においては、電気モータ4の駆動により回転する出力軸4a、出力軸4aに接続される伝達軸13(後述する)、及びネジ軸7を含めて、駆動軸Sと称する。また、駆動軸Sに沿う方向を軸方向Xと称し、押圧ピストン8がパッド3を押圧するために突出する方向を軸方向一方側X1、その反対方向を軸方向他方側X2と称す。
【0023】
キャリパ10は、キャリパケーシング41と、円盤形状で車輪と共に回転するディスク2と、ディスク2に押し付けられるパッド3と、パッド3をスライド自在に支持する複数のピン(図示せず)とを備えている。
【0024】
電気モータ4の出力軸4aには、伝達軸13が取り付けられている。伝達軸13は、電気モータ4の出力軸4aを延長するように、出力軸4aに回転不能に取り付けられる軸部材であり、本体軸13aと連結部13bとから構成されている。連結部13bには、第一歯車21が取り付けられている。第一歯車21は手動緩解機構11を構成する歯車である。
【0025】
電磁ブレーキ5は、伝達軸13に取り付けられており、出力軸4aを介して伝達軸13に伝達された電気モータ4の回転運動を制動及び保持する部位である。伝達軸13は、電磁ブレーキ5に対して、本体軸13aが軸方向一方側に突出するように取り付けられている。
【0026】
ボール減速機6は電磁ブレーキの軸方向一方側に取り付けられ、電気モータ4の回転速度を減じる減速機である。具体的には、ボール減速機6の軸方向他方側X2に伝達軸13の本体軸13aが接続され、ボール減速機6の軸方向一方側X1に後述するネジ軸7が接続されている。
【0027】
以上に説明したボール減速機6は、キャリパ10に固定されたケーシング15の軸方向他方側X2に固定されている。詳しくは、ボール減速機6は、ケーシング15の軸方向他方側X2に固定されたブラケット16を介してケーシング15に固定されている。さらに電磁ブレーキ5は、ボルトなどの締結部材によってボール減速機6の軸方向他方側X2に直接固定されており、電気モータ4は、電磁ブレーキ5の軸方向他方側X2に配置されている。即ち、ボール減速機6、電磁ブレーキ5、及び電気モータ4は、軸方向に直列に接続されるように配置されている。
【0028】
ネジ軸7は、ケーシング15の内部に軸回りに回動可能に固定されており、押圧ピストン8は、ネジ軸7の回転によって軸方向に移動するように構成されている。ネジ軸7の軸方向他方側X2は、上述したように、ボール減速機6の軸方向一方側X1に接続されている。即ち、ネジ軸7は、ボール減速機6、伝達軸13を介して電気モータ4と接続されており、電気モータ4の駆動により回転するように構成されている。
【0029】
押圧ピストン8は、ネジ軸7の外周に形成された駆動側ネジ部7aと螺合する移動ナット部18と、ピストン本体20と、移動ナット部18とピストン本体20とを接続する移動ブラケット19とから構成されている。
【0030】
移動ナット部18には、駆動側ネジ部7aと複数のボールを介して螺合するピストン側ネジ部8aが形成されている。これにより、ネジ軸7が回転することによって、所謂ボールネジ機構により移動ナット部18(押圧ピストン8)が軸方向Xに移動する。以下の説明においては、移動ナット部18が、軸方向他方側X2方向に移動するような駆動軸S(ネジ軸7)の回転方向を一方向と称す。即ち、電気モータ4の出力軸4aが一方向に回転することによって、押圧ピストン8は軸方向他方側X2に移動する。
また、移動ナット部18には、フランジ18aが形成されている。
【0031】
移動ブラケット19は、移動ナット部18の軸方向一方側X1に固定されており、移動ブラケット19の移動に伴い軸方向に移動する。移動ブラケット19の軸方向一方側X1側には、ピストン本体20が固定されている。
【0032】
機械バネ9は、移動ナット部18のフランジ18aの軸方向他方側X2に配置されている。詳しくは、機械バネ9は皿バネにより構成されており、フランジ18aと、ケーシング15の軸端壁15aとの間に配置されており、これにより、移動ナット部18(押圧ピストン8)は、常に軸方向一方側X1に付勢されている。
【0033】
次に、手動緩解機構11について説明する。手動緩解機構11は、伝達軸13に設けられた第一歯車21と、この第一歯車21に対して、接近して噛み合わされた連結状態と、分離された分離状態とを取ることができる移動ユニット22と、移動ユニット22を移動可能に支持するフレーム23とを有している。
【0034】
第一歯車21は、伝達軸13に一体に設けられた平歯車であり、電気モータ4の駆動に伴い回転する。
フレーム23は、一面が開放された箱型形状をなしており、一面に設けられたフランジ23aを介して電磁ブレーキ5の上面に取り付けられている。具体的には、フレーム23は、開口する一面の反対側の上壁25と、軸方向と直交する一対の第一側壁26と、上壁25及び第一側壁26に直交する一対の第二側壁27とからなる。
【0035】
移動ユニット22は、立方体形状の移動ハウジング29と、移動ユニット22を連結状態にすることにより、第一歯車21と噛み合うように設定された第二歯車30と、第二歯車30が固定される回転軸31と、回転軸31に固定されるウォームホイール32(はす歯歯車)と、ウォームホイール32と噛み合うように配置されたウォームギヤ33とを有している。
【0036】
移動ハウジング29は、フレーム23の上壁25と平行に設けられた移動上壁35と、フレーム23の第一側壁26と平行に設けられた一対の軸固定壁36と、フレーム23の第二側壁27と平行に設けられた一対のウォーム固定壁37とからなる。
【0037】
フレーム23の上壁25と、移動ハウジング29の移動上壁35とは、移動ボルト38を介して接続されている。移動ボルト38は、頭部38aとネジ部38bとからなり、頭部38aは、ネジ部38bの軸回りに回転可能なように、上壁25に取り付けられている。また頭部38aには、六角穴38cが形成されている。移動上壁35には、移動ボルト38のネジ部38bに対応したネジ孔35aが形成されている。
【0038】
回転軸31は、移動ハウジング29の一対の軸固定壁36間に回転自在に、かつ、駆動軸に平行に固定されている。
第二歯車30は、回転軸31上であって、移動ハウジング29が連結状態となるように移動した際、第一歯車21と噛み合う位置に固定されている。
【0039】
ウォームホイール32は、回転軸31上であって、第二歯車30とは反対側の端部付近に固定されている。
ウォームギヤ33は、移動ハウジング29の一対のウォーム固定壁37間に回転自在に、かつ、ウォームホイール32に噛み合う位置に固定されている。ウォームギヤ33の一端面には、六角穴32aが形成されている。
【0040】
ここで、移動ユニット22の移動動作について説明する。移動ユニットを移動させるには、六角レンチなどを用いて移動ボルト38を回転させる。移動ボルト38を回転させることにより、移動ハウジング29の移動上壁35に形成され、移動ボルト38のネジ部38bと螺合するネジ孔35aと移動ボルト38とのネジ作用により、移動ハウジング29が移動ボルト38の軸方向に移動する。
【0041】
移動ハウジング29は、軸固定壁36及びウォーム固定壁37がフレーム23の第一側壁26と第二側壁27により、移動ボルト38の軸回りの回転が規制されているため、移動ボルト38の回転により、移動ハウジング29が回転することはない。
【0042】
次に、手動緩解機構11の作用について説明する。
手動緩解機構11を機能させる際は、上記した方法によって、移動ユニット22を移動させ、手動緩解機構11を駆動軸と連結状態にする。この状態で、六角レンチなどの工具を用いて、ウォームギヤ33を回転させる。ウォームギヤ33が回転することにより、ウォームホイール32が回転し、これに伴い、回転軸31及び第二歯車30が回転する。
【0043】
手動緩解機構11が連結状態となっていることにより、第二歯車30の回転により、第一歯車21が回転し、これにより駆動軸を構成する伝達軸13が一方向に回転する。伝達軸13が一方向に回転することにより、ボール減速機6を介して駆動軸が一方向に回転し、ボールネジ機構により、移動ナット部18が軸方向他方側X2に移動し、押圧ピストン8がパッド3より離間する。これにより、ブレーキ装置1が緩解状態となる。
【0044】
上記実施形態によれば、電気モータ4の不具合等により駆動軸Sの回転を利用して押圧ピストン8をパッド3から退避させることができなくなった場合においても、手動緩解機構11を用いて押圧ピストン8をパッド3から退避させることができる。
【0045】
また、手動緩解機構11を作動させる入力歯車としてウォームギヤ33を用いているため、ウォームホイール32の接線方向の力はウォームギヤ33の軸方向に作用する。これにより、ウォームホイール32と回転軸31と第二歯車30を介して接続された第一歯車21が不用意に回転することにより押圧ピストン8が軸方向一方側X1に移動することがない。即ち、ウォームギヤ33がストッパ機構として機能し、押圧ピストン8の移動を規制するため、例えば緩解機構の機能を保持するため別の手段を用いて保持する必要がなく、緩解機構をより簡素な構成とすることができる。
【0046】
また、第二歯車30を第一歯車21と連結及び分離することにより、容易に連結状態と分離状態とを切り替えることができる。
【0047】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係るブレーキ装置1Bについて説明する。
図4、及び図5に示すように、本実施形態のブレーキ装置1Bの手動緩解機構11Bは、ウォームホイール50と、移動ウォームギヤ機構51とから構成されている。
【0048】
ウォームホイール50は、後述するウォームギヤ本体53と噛み合う、はす歯歯車であり、第一実施形態の第一歯車21と同様に、伝達軸13に固定されている。
移動ウォームギヤ機構51は、ケーシング52と、ウォームホイール50と協働して機能するウォームギヤ本体53と、ウォームギヤ本体53の回転軸である、移動軸54とから構成されている。
【0049】
移動軸54は、ケーシング52に回転自在、かつ、駆動軸S(ウォームホイール50の回転軸)に直交する方向に移動自在に取り付けられている。詳しくは、移動軸54の両端はケーシング52に固定された一対のブッシュ55にスライド自在に支持されている。また、移動軸54の一端面には六角穴56が形成されており、移動軸54の一端はケーシング52の外部に延出されている。
【0050】
ウォームギヤ本体53は、移動軸54の略中央に固定されており、移動軸54のスライド移動と共に、ウォームホイール50と連結可能とされている。また、ウォームギヤ本体53は、移動軸54のスライド移動と共に、ウォームホイール50と分離可能とされている。
【0051】
以下、本実施形態に係る手動緩解機構11Bの作用について説明する。
ブレーキ装置1Bの通常仕様状態においては、ウォームギヤ本体53とウォームホイール50とは分離状態とされている。
【0052】
手動緩解機構11Bを機能させる場合は、移動軸54をスライド移動させることによって、ウォームギヤ本体53とウォームホイール50とが連結された連結状態とする。この状態で、六角ナット等を用いて移動軸54を回転させ、ウォームギヤ本体53を回転させる。ウォームギヤ本体53が回転することにより、ウォームホイール50が回転し、伝達軸13が一方向に回転する。伝達軸13が一方向に回転することにより、第一実施形態と同様の作用により、ブレーキ装置1が緩解状態となる。
【0053】
上記実施形態によれば、電気モータ4の不具合等により駆動軸Sの回転を利用して押圧ピストン8をパッド3から退避させることができなくなった場合においても、手動緩解機構11Bを用いて押圧ピストン8をパッド3から退避させることができる。
【0054】
また、手動緩解機構11Bを作動させる入力歯車として、ウォームギヤ本体53を用いているため、ウォームホイール50が不用意に回転することにより押圧ピストン8が軸方向一方側X1に移動することがない。即ち、ウォームギヤ本体53がストッパ機構として機能し、押圧ピストン8の移動を規制するため、例えば緩解機構の機能を保持するため別の手段を用いて保持する必要がなく、緩解機構をより簡素な構成とすることができる。
【0055】
また、移動軸54をスライド移動させることにより、容易に連結状態と分離状態とを切り替えることができる。
さらに、第一実施形態と比較して、より少ない構成要素により緩解機構を設けることができる。
【0056】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
以上で説明した各実施形態では、ウォームギヤをストッパ機構として用い、押圧ピストン8がパッド3に進出する側に駆動軸Sが回転することを規制した。例えば、ウォームギヤの代替として平歯車を用いた上で、この平歯車の回転を規制するために平歯車の歯に常に当接するように板バネを配置することによって、ストッパ機構としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ブレーキ装置 2…ディスク 3…パッド(制動子) 4…電気モータ 7…ネジ軸 7a…駆動側ネジ部 8…押圧ピストン 8a…ピストン側ネジ部 9…機械バネ(付勢部) 11…手動緩解機構(緩解機構) 13…伝達軸 18…移動ナット部 21…第一歯車 22…移動ユニット(切替機構) 30…第二歯車 32…ウォームホイール(第三歯車) 33…ウォームギヤ(ストッパ機構) 50…ウォームホイール 51…移動ウォームギヤ 53…ウォームギヤ本体 S…駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪とともに回転するディスクに摩擦力を付与して前記車輪を制動するブレーキ装置であって、
前記ディスクに当接して摩擦力を付与する制動子と、
前記制動子を前記ディスクに押圧させる押圧方向に進退して、前記制動子によって前記ディスクを押圧させることを可能とする押圧ピストンと、
前記押圧ピストンを前記制動子に向けて付勢する付勢部と、
前記押圧ピストンに形成されたピストン側ネジ部に螺合する駆動側ネジ部を有し、軸回りに回転することで、前記押圧ピストンを前記制動子から退避する側に移動させることが可能な駆動軸と、
前記駆動軸に連結されて前記駆動軸を軸回りに回転させることが可能な電気モータと、
前記駆動軸を、前記押圧ピストンが前記制動子から退避する側に回転させる緩解機構と、
前記緩解機構と前記駆動軸とが連結された連結状態と、分離された分離状態とに切り替え可能な切替機構と、
前記連結状態で、前記押圧ピストンが前記制動子に進出する側に前記駆動軸が回転することを規制するストッパ機構とを備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記緩解機構は、前記押圧ピストンが前記制動子に進出する側に前記駆動軸が回転する方向と対応する方向への作動を不能とされていて、前記緩解機構によって前記ストッパ機構が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記緩解機構は、
前記駆動軸の回転に応じて回転可能な従動歯車と、
前記従動歯車と噛合わされるウォーム歯車と、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記緩解機構は、
前記駆動軸に設けられた第一歯車と、
前記切替機構により前記第一歯車と連結及び分離される第二歯車と、
前記第二歯車と同軸上に設けられた第三歯車と、を備え、
前記第三歯車が従動歯車として前記ウォーム歯車と噛合わされていることを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記従動歯車は前記駆動軸に同軸に設けられた歯車であり、
前記切替機構により、前記ウォーム歯車と前記従動歯車とが連結及び分離されることを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87930(P2013−87930A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231885(P2011−231885)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】