説明

ブレーキ製品の管理方法、ICタグを有するブレーキ製品及びブレーキ製品管理システム

【課題】耐環境性に優れ、従来に比べて容易に情報管理を行うことができるICタグを備えるブレーキ製品に関する技術を提供する。
【解決手段】複数のパーツにより構成されるブレーキ製品の管理方法であって、前記ブレーキ製品に、取り付け位置の耐環境性を考慮して情報の記録と読み取りが可能なICタグを所定の位置に取り付ける工程と、前記ICタグに、少なくとも前記ブレーキ製品を識別する識別情報と前記ブレーキ製品の整備履歴に関する整備情報とを含む属性情報を非接触で記録する工程と、前記ICタグに記録された前記属性情報を非接触で読み取り、読み取った該属性情報に基づいて前記各パーツの交換時期の算出や前記ブレーキ製品の整備点検時期の算出を含む情報管理を行う工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ製品の管理方法、ICタグを有するブレーキ製品及びブレーキ製品管理システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や産業機械等のブレーキ製品の固有の識別情報は、刻印ペイント等によりブレーキ製品にID等を付すことで行っていた。そして、これらのブレーキ製品の品質管理は、ブレーキ製品の表面に付されたID等を目視判断することで行っていた。
【0003】
一方、運送業界をはじめとする様々な分野でICタグを用いた商品管理が普及しつつある。例えば、特許文献1に記載の発明は、輸送物品ごとに識別情報を記憶させたICタグを付すことで、輸送物品の品質管理を行うものである。また、特許文献2に記載の発明は、透過性を有する素材と一体的に形成されたICタグを車輌(二輪車両等)に搭載することで、屋外等の過酷な環境下での使用に耐え、いたずらの防止性読み取りの利便性に優れたICタグを搭載した車輌及びその管理システムを開示する。
【特許文献1】特許第3749716号公報
【特許文献2】国際公開第2004/071856号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
刻印ペイント等によりブレーキ製品やブレーキ製品を構成する複数のパーツのそれぞれにIDを付し、IDを目視判断することでブレーキ製品や各パーツを判別することができる。しかし、例えば、各パーツを判別するには、ブレーキ製品を分解しなければ目視することができないような場合も多く、多大な手間と費用が必要とされていた。
【0005】
一方、近年様々な分野においてICタグを用いた商品管理が行われている。ICタグを対象商品に付すことで、情報の読み込み、書き込みが可能となる。従って、ブレーキ製品にICタグを付すことができれば、詳細な製品情報や整備履歴等の情報をICタグに記録することが可能となり、ブレーキ製品の情報管理を容易に行うことができる。しかし、ブレーキ製品にICタグを適用するにあたっては、ブレーキ作動時の熱や、雨水等の水分の影響、埃等の耐環境性を十分に配慮しなくては、ICタグの性能を十分に発揮させることができない。また、ブレーキ製品は、複数のパーツにより構成されるが、ICタグを用いて効率よくブレーキ製品の情報管理を行うためには、各パーツが有する情報と複数のパーツによって構成されるブレーキ製品が有する情報とを効率よく関連付けて管理することが好ましい。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、耐環境性に優れ、従来に比べて容易に情報管理を行うことができるICタグを備えるブレーキ製品に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上述した課題を解決するため以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、複数のパーツにより構成されるブレーキ製品の管理方法であって、前記ブレーキ製品に、取り付け位置の耐環境性を考慮して情報の記録と読み取りが可能なICタグを所定の位置に取り付ける工程と、前記ICタグに、前記ブレーキ製品のパーツ構成を識別する識別情報と前記ブレーキ製品の初期品質に関する品質情報と前記ブレーキ製品の整備履歴に関
する整備情報とのうち少なくともいずれか一つを含む属性情報を非接触で記録する工程と、前記ICタグに記録された前記属性情報を非接触で読み取り、読み取った該属性情報に基づいて前記各パーツの情報管理を行う工程と、を備える。
【0008】
本発明によれば、情報の記録と読み取りが可能なICタグを耐環境性が考慮された位置に取り付けることで、ICタグの性能を十分に発揮させることができる。また、ICタグに属性情報を記録し、記録した属性情報を適宜読み込み、または更新することでブレーキ製品の情報管理、トレーサビリティの向上を図ることができる。なお、情報管理とは、例えば交換時期の算出や前記ブレーキ製品の整備点検時期の算出である。また、属性情報に含まれる品質情報には、ブレーキ製品の寸法精度が例示できる。
【0009】
ブレーキ製品に取り付けられたICタグがその性能を十分に発揮するためには、ブレーキ製品が取り付けられる位置の耐環境性を十分に考慮する必要がある。そして、耐環境性には、前記ICタグの取り付け位置におけるブレーキ作動時の温度上昇度合いや、車輌に搭載されるブレーキ製品にあっては走行時の飛石によるICタグの破損の影響度合いが例示できる。ブレーキ作動時の温度上昇とは、ブレーキ作動時の摩擦熱を考慮するものであり、ICタグを取り付ける位置は、このブレーキ作動時の温度上昇が小さい位置であることが好ましい。また、車輌に搭載されるブレーキ製品にあっては、走行時の飛石による影響を考慮する必要があり、飛石の量が少ない場所や飛石が当たり難い場所にICタグを取り付けることが好ましい。
【0010】
なお、ブレーキ製品のおかれる環境は様々であり、耐環境性は、上記の他雨水などの水による影響の度合いや埃による影響の度合いが例示できる。そして、ICタグを取り付ける位置は、水による影響が少なく、また、埃による影響が少ない位置であることが好ましい。
【0011】
ブレーキ製品は、自動車、二輪車等の車輌、産業機械等に用いられている。また、車輌に用いられるブレーキ製品の形態としては、ドラムブレーキ、ディスクブレーキ等が例示できる。本発明に係るブレーキ製品の管理方法は、上記いずれかのブレーキ製品に限定されるわけではないが、車輌のディスクブレーキにも好適に用いることができる。車輌のディスクブレーキ製品も複数のパーツによって構成されるが、情報管理を行うに当たっては、例えば、ブレーキ製品を構成する複数のパーツのうち、少なくともシール部材と、ピストン部材と、キャリパボディ部材と、が有する属性情報を管理することができる。なお、シール部材は、ディスクブレーキにおいてシリンダに組み付けられ、シリンダとピストンとの間のブレーキ液を密封しピストンを円滑に作動させ、ロータとブレーキパッド間を一定の間隙に調整する機能を担う。ピストン部材は、ブレーキ踏力によってブレーキパッドを押圧する。キャリパボディは、オポーズドタイプの場合、ブレーキパッドを固定し、内蔵されるピストンによってブレーキ踏力をロータに伝達する。
【0012】
そして、シール部材と、ピストン部材と、キャリパボディ部材のそれぞれに属性情報を付し、属性情報を非接触で記録する工程では、シール部材の属性情報とピストン部材の属性情報とキャリパボディの属性情報とを関連付けて前記ICタグに記録する。なお、シール部材の属性情報とピストン部材の属性情報とを関連付けて前記ICタグに記録し、シール部材の属性情報が関連付けられたピストン部材の属性情報とキャリパボディの属性情報とを関連付けてキャリパボディ部材に取り付ける前記ICタグに記録してもよい。
【0013】
他のパーツ、例えばブレーキパッドやその摩擦材の属性情報も含めてキャリパボディ部材に取り付けられるICタグに記憶させることで、ブレーキ製品の情報管理を容易に行うことができる。すなわち、ICタグへの情報の記録やICタグからの情報の読み取りは、リーダ/ライタを用いて行うことができるが、上記のような方法とすることでキャリパボ
ディ部材に取り付けられたICタグからの情報を読み取るだけでブレーキ製品を構成する各パーツの属性情報を取得できるので情報管理を容易に行うことができる。また、属性情報に含まれる整備情報等を新たに記録する場合にも、キャリパボディ部材に取り付けられたICタグに記録すればよいので従来に比べて情報管理が容易となる。すなわち、ピストン部材やシール部材は、分解しなければ目視することができないことから、従来の刻印ペイントによる方法では、情報管理に多大な手間と費用が必要とされていた。しかし、本発明によれば、分解することなくピストン部材やシール部材を識別することが可能となり、その結果、従来に比べて容易に情報管理を行うことができる。
【0014】
また、情報管理を行う工程では、ICタグに記録する属性情報をデータベースを用いて管理することが好ましい。データベースを用いて属性情報を管理するに際しては、前記シール部材の属性情報と前記ピストン部材の属性情報と前記キャリパボディの属性情報とを関連付けて、前記ブレーキ製品ごとに管理することが好ましい。データベースを用いて属性情報を管理することで、より多くの属性情報を一括して管理することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、上述したブレーキ製品の管理方法に係る発明の特徴を取り入れた、ICタグを有するブレーキ製品とすることができる。詳細には、本発明は、ICタグを有するブレーキ製品であって、シール部材と、ピストン部材と、キャリパボディ部材と、を含む複数のパーツにより構成されるブレーキ製品と、取り付け位置の耐環境性を考慮して前記キャリパボディに取り付けられ、情報の記録と読み取りが可能なICタグと、前記ICタグに設けられ、前記ブレーキ製品のパーツ構成を識別する識別情報と前記ブレーキ製品の初期品質に関する品質情報と前記ブレーキ製品の整備履歴に関する整備情報とのうち少なくともいずれか一つを含む属性情報を記憶する記憶装置と、を備えるICタグを有するブレーキ製品である。
【0016】
本発明に係るICタグを有するブレーキ製品によれば、ICタグを備えることでブレーキ製品の情報管理を従来に比べて容易に行うことができる。また、ICタグは、キャリパボディ部材の耐環境性に考慮した位置に取り付けられているので、ブレーキ製品がおかれる条件下においてもその性能を十分に発揮させることができる。
【0017】
なお、本発明に係るICタグを有するブレーキ製品において、耐環境性とは、少なくとも前記ICタグの取り付け位置におけるブレーキ作動時の温度上昇度合いと、走行時の飛石によるICタグの破損の影響度合いと、のうち少なくともいずれか一方を含み、前記ICタグは、ブレーキ作動時の温度上昇が小さ位置と走行時の飛石による破損の影響が少ない位置とのうち少なくとも何れか一方の前記キャリパボディの一部に取り付けられているものとすることができる。
【0018】
また、本発明は、上述したブレーキ製品の管理方法及びICタグを有するブレーキ製品に係る発明の特徴を取り入れた、ICタグを有するブレーキ製品を管理するブレーキ製品管理システムとすることができる。詳細には、本発明は、ICタグを有するブレーキ製品を管理するブレーキ製品管理システムであって、シール部材と、ピストン部材と、キャリパボディ部材と、を含む複数のパーツにより構成され、情報の記録と読み取りが可能なICタグを有するブレーキ製品と、前記ブレーキ製品の属性情報の前記ICタグへの記録と前記属性情報の前記ICタグからの読み取りとを行うリーダ/ライタと、前記リーダ/ライタとネットワークを介して接続され、前記属性情報を管理する管理サーバと、を備え、前記ICタグは、取り付け位置の耐環境性を考慮して前記キャリパボディに取り付けられ、前記属性情報は、前記ブレーキ製品のパーツ構成を識別する識別情報と前記ブレーキ製品の初期品質に関する品質情報と前記ブレーキ製品の整備履歴に関する整備情報とのうち少なくともいずれか一つを含み、前記シール部材と、前記ピストン部材と、前記キャリパボディ部材は、それぞれ前記属性情報を有し、前記管理サーバは、前記シール部材の属性
情報と前記ピストン部材の属性情報とを関連付け、シール部材の属性情報が関連付けられた前記ピストン部材の属性情報と前記キャリパボディの属性情報とを関連付けて、前記ブレーキ製品ごとに管理するデータベースを有する。
【0019】
本発明によれば、ICタグを有するブレーキ製品と、ICタグへの属性情報の記録、読み取りを行うリーダ/ライタと、属性情報を管理するサーバと、を備えることで、ブレーキ製品の情報管理を容易に行うことができる。
【0020】
すなわち、ICタグを有するブレーキ製品は、ICタグが取り付け位置の耐環境性を考慮してキャリパボディに取り付けられているので、ICタグの持つ性能が十分に発揮される。また、リーダ/ライタを備えることで、属性情報の記録、読み取りを容易に行うことができる。なお、リーダ/ライタは、目的に応じて適宜配置することができる。リーダ/ライタの配置箇所としては、整備工場、給油スタンド等が例示できる。
【0021】
また、リーダ/ライタは、ネットワークを介して管理サーバに接続されている。これにより、ICタグに記録された属性情報をサーバにより管理することが可能となる。その結果、ICタグでは記録しきれない情報を一括管理することができる。このようにサーバによってICタグに記録すべき情報を管理することで、市場での整備履歴、走行使用履歴等を初めとする様々な情報を管理することができ、品質確認、トレーサビリティ、又は製品開発のデータ収集といった種々の目的に適用することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐環境性に優れ、従来に比べて容易に情報管理を行うことができるICタグを備えるブレーキ製品に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明について、ブレーキ製品管理システムを例に説明する。
【0024】
図1は、実施形態に係るブレーキ製品管理システムの構成を示す概略図である。同図に示すように、実施形態に係るブレーキ製品管理システムは、ICタグ1(取り付け位置については、図3参照。)を有するブレーキ製品10と、ICタグ1への情報の記録やICタグ1からの情報の読み取りを行うリーダ/ライタ2を有する複数の端末20と、端末20とネットワークを介して接続され、ブレーキ製品10に関する属性情報を管理する管理サーバ30と、を備える。
【0025】
ICタグ1には、RFID(Radio Frequency Identification)技術を利用したRFIDタグを用いることができる。タグの種類は、パッシブタグ(受動タグ)、アクティブタグ(能動タグ)のいずれでもよいが、リーダからの電波をエネルギー源として動作し、電池を内蔵する必要が無いパッシブタグがより適しているといえる。電池を内蔵する必要が無く、比較的安価で製造でき、また恒久的に使用することが可能であるからである。なお、アクティブタグによれば、自ら電波を発するので、通信距離を長くすることが可能となる。
【0026】
また、信号の伝達方式は、電磁誘導方式、電波方式等が例示されるが、いずれを用いてもよい。タグのコイルとリーダのアンテナコイルを磁束結合させて信号を伝達する電磁誘導方式によれば、信号を効率よく伝達することができる。タグのアンテナとリーダのアンテナとの間で電磁波を行き来させて信号を伝達する電波方式によれば、電磁波を空間に放射して伝達するので、電磁誘導方式に比べて通信距離を長くすることができる。
【0027】
図2は、ICタグの構成を示す図である。図2に示すように、ICタグ1は、例えば、
電波を送信するアンテナ101と、アンテナ101を制御するコントローラ102と、アンテナ101で受信された電波を検波する送受信モデム103と、コントローラ102、送受信モデム103等のICタグ1を構成する各ブロックを制御するCPU104と、属性情報を記憶するメモリ105と、を備える。なお、このようなICタグ1は、透過性を有する樹脂で覆った上で、ブレーキ製品を構成するキャリパボディの所定の位置に取り付けることができる。
【0028】
ここで、前述したICタグ1の取り付け位置について図面に基づいて説明する。図3は、ICタグが取り付けられるキャリパボディを示す斜視図である。なお、図3に示す矢印Xはインナ側、矢印Yは出口側、矢印Zはホイール側を示す。このように、ICタグ1は、キャリパボディ1のホイールから離れた位置(反ホイール側)でロータ回転方向の出口側、かつインナ側における内側に取り付けられている。なお、ICタグ1への取り付けは、例えば図4に示すようにICタグ1をキャリパボディ40の内側面に接着してカシメることにより行うことができる。
【0029】
ICタグ1の取り付け位置を上記のようにすることで、ロータ、パッドからの距離を確保することができる。その結果ブレーキ作動時における熱によるICタグ1への影響を最小限に留めることができる。また、ICタグ1の取り付け位置を反ホイール側、出口側、かつインナ側とすることで、車輌走行時における飛石や泥水、異物等によるICタグ1への影響を最小限に留めることができる。すなわち、本実施形態に係るブレーキ製品管理システムにおけるICタグは、耐環境性にも非常に優れ、その性能を十分に発揮することができる。
【0030】
次に端末20について説明する。端末20は、ICタグ1への情報の記録やICタグ1からの情報の読み取りを行うリーダ/ライタ2を有する。端末20は、リーダ/ライタに表示装置、入力装置、記憶装置を有するコンピュータを接続することが好ましい。これにより、リーダ/ライタ2によって読み出したICタグ1に記録された属性情報や管理サーバ30内に記憶されているブレーキ製品10に関する属性情報を端末20から参照することが可能となる。なお、端末20は、ブレーキ製品10の製造工場、修理工場、車輌の販売店、給油スタンド等必要に応じて適宜設置することができる。また、端末20は、携帯端末とすることもできる。携帯端末とする場合には、例えば携帯電話網を介して管理サーバ30にアクセスすることが可能となる。
【0031】
管理サーバ30は、ブレーキ製品10に関する属性情報を管理する。管理サーバ30は、制御部とデータベースとを備える構成とすることができる。制御部では、端末から送信されるブレーキ製品10の属性情報に含まれる各情報の比較や並べ替えや振り分け等を行って、データベースに記憶する。そして、管理サーバ30は、所定のプログラムに基づいて各パーツの交換時期の算出や次回の点検整備時期の算出を行うこともできる。また、算出した交換時期に関する情報等は、端末20に配信してもよく、また携帯端末等に配信するようにしてもよい。
【0032】
次に本実施形態に係るブレーキ製品管理システムにおいて扱われる情報について説明する。図5は、ICタグに保存可能な情報の一例を示す図である。同図に示すにように、ICタグ1へ保存可能な情報(以下、属性情報とする)として、基本情報(本発明の識別情報に相当する)、走行履歴、整備履歴(本発明の整備情報に相当する)が例示される。
【0033】
基本情報には、ブレーキ製品を構成するパーツの原材料に関する情報、製造事業所コード・工程コード・製造年月日などの製造に関する情報、加工精度・固有値などの検査に関する情報、客先コード・仕向け先コード・整備場所コードなどのユーザに関する情報、車輌コード・取付位置などの取り付けに関する情報が含まれる。走行履歴には、年月日・場
所コード・距離・環境・ドライバIDが含まれる。整備履歴には、年月日・作業コード・数値が含まれる。
【0034】
そして、基本情報、走行履歴、整備履歴を含む属性情報のICタグ1への記録、又はICタグ1からの読み取りは、リーダー/ライタにより非接触で適宜行うことができる。図6は、ブレーキ製品の属性情報に含まれる各情報の流れを時系列的に示す図である。図6に示すように、ICタグ1へ記録され又はICタグ1から読み取られる属性情報に含まれる各情報は、製造工程、検査工程、納入工程、使用工程、回収工程において記録又は読み取りを行うことができる。
【0035】
製造工程は、ブレーキ製品10を工場において製造する工程である。製造工程では、基本情報に含まれる原材料に関する情報や製造に関する情報をICタグ1へ記録することができる。
【0036】
検査工程は、製造工程において製造されたブレーキ製品10を検査する工程である。検査工程では、基本情報に含まれる検査に関する情報をICタグ1へ記録することができる。なお、図6における組付け情報とは、各パーツ同士を関連付けるための情報を意味し、例えば、一つのキャリパボディに対し六つのピストンASSYが関連付けられているといった情報を意味する。また、図6における加工精度とは、それぞれの部材の機械加工時の粗さや寸法、平面度等の幾何公差を含む。
【0037】
納入工程とは、ブレーキ製品10の検査が完了し、製品としての出荷が可能な状態である。納入工程では、基本情報に含まれるユーザに関する情報や取付情報に関する情報をICタグ1へ記録することができる。
【0038】
使用工程は、ブレーキ製品10が納品され、ユーザによって使用される工程である。使用工程では、使用環境に関する情報をICタグ1へ記録することができる。使用環境に関する情報には、走行時期(時間)・走行場所・走行距離・メンテナンスに関する情報が含まれる。例えば、走行時期・走行場所・走行距離とブレーキ製品1を構成する消耗部品等の消耗程度を関連付けてICタグ1へ記録してもよい。これにより、ブレーキ製品10のトレーサビリティの高度化を図ることが可能となる。
【0039】
回収工程は、ICタグ1に記録された属性情報を回収する。回収する属性情報の中でも上述した使用環境に関する情報を回収することで、属性情報を今後の製品開発における有用な情報として役立てることができる。なお、使用環境に関する情報は、適宜回収すればよい。例えば、修理工場や給油スタンドに端末20を配置する構成とすれば、修理工場や給油スタンドを利用する際に属性情報をICタグ1から読み取って回収することができる。
【実施例1】
【0040】
次に、上述した実施形態に係るブレーキ製品管理システムの実施例について図面に基づいて説明する。図7は、ブレーキ製品を構成するパーツごとの情報の関連付け状態を示す図である。
【0041】
図7に示すように、本実施例に係るブレーキ製品10は、キャリパボディとピストンとシールとを有し、ピストンロット一個に対しシールロット一個、キャリパボディロット一個に対しピストンASSY六個が関連付けられている。図7に示す、黒丸は属性情報に含まれる各情報に相当するものである。従って、例えばキャリパボディには、キャリパボディに関する基本情報、すなわち原材料に関する情報や製造に関する情報や検査に関する情報等が存在し、ピストンやシールにも同じようにそれぞれ固有の基本情報が存在する。そ
して各パーツごとの属性情報を関連付けることで、属性情報の記録や読み取りをキャリパボディ40に取り付けられた一つのICタグ1から行うことができる。なお、キャリパボディ40以外の各パーツにはペイント等により識別情報を付すことができる。
【0042】
図8は、サーバ内のデータベースに記録されるデータの構成を示す概略図である。同図に示すように、ブレーキ製品10は、キャリパボディ、ピストン、シールのそれぞれに区分けされ、キャリパボディ、ピストン、シールのそれぞれに品番とロット番号が付されている。これらの情報は、ブレーキ製品10の製作時における情報である。
【0043】
そして、キャリパボディについては、材料ロット、加工、表面処理(1)、表面処理(2)、完成品シリンダ内径などのデータ項目が設けられている。更に、各項目は、細分化されて、例えば加工項目は、完了日、加工者、質量、加工完了シリンダ内径及び粗さにより構成されている。また、加工完了シリンダ内径及び粗さに関する項目は、インナとアウタに分けられ、それぞれ径違いに細分化されている。また、上記以外の項目として、シリンダ内のシール溝深さ、形状についての項目を設けてもよい。
【0044】
ピストンについては、ピストン納入日、表面処理実施日、外径データの項目が設けられている。
【0045】
シールについては、シールメーカからの納入日、納入ロット、シールを安定させる為に実施する安定化作業実施日、安定化作業後のシール線径、安定化作業後のシール厚みデータの項目が設けられている。
【0046】
図9は、サーバ内のデータベースに記録されるデータの構成を示す概略図である。図9に示すデータ構成は、組み込まれるピストンのロット番号(ロットNO)、シールのロット番号(ロットNO)、出荷検査、出荷日、社内での使用、部品交換・メンテナンス履歴に関するデータにより構成される。
【0047】
使用ピストンロットは、更にインナ、アウタに細分化され、インナ、アウタは、それぞれ径違いに更に細分化されている。使用シールロットも、使用ピストンロットと同じく、インナ、アウタに細分化され、インナ、アウタは、それぞれ径違いに更に細分化されている。
【0048】
出荷検査は、機密性検査、静的液量検査、検査結果(総合)、台上テスト、実走テストに細分化されている。機密性検査と静的液量検査は、それぞれ検査日と検査結果に細分化されている。また、台上テストは、テスト日、テスト項目、時系列温度、温度履歴時間、時系列液圧に細分化されている。また、実走テストは、テスト前車体フィッティング日、テスト日、テスト場所、車体番号、走行ドライバ、使用摩擦材銘柄、使用摩擦材初期厚み、走行番号とラップ数、走行距離、摩擦材摩耗量、時系列温度、温度履歴時間、時系列液圧、部品ダメージ状況、その他特記事項に細分化されている。
【0049】
社内での使用は、台上テスト、ダイナモテスト、耐久評価に細分化されている。そして、台上テストは、テスト日、テスト項目、テスト結果、時系列温度、温度履歴時間、最高使用液圧、その他特記事項に細分化されている。また、ダイナモテストは、テスト日、テスト項目、テスト結果、時系列温度、温度履歴時間、時系列液圧、部品ダメージ状況、その他特記事項に細分化されている。また、耐久評価は、テスト日、テスト項目、テスト結果、時系列温度、温度履歴時間、時系列液圧、部品ダメージ状況、その他特記事項に細分化されている。
【0050】
本実施例に係るブレーキ製品管理システムによれば、上記各パーツに関する様々な属性
情報をサーバにて一括管理することができる。このように管理サーバ30によってICタグ1に記録すべき情報を管理することで、市場での整備履歴、走行使用履歴等を初めとする様々な情報を管理することができ、品質確認、トレーサビリティ、又は製品開発のデータ収集といった種々の目的に適用することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るブレーキ製品システムはこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態に係るブレーキ製品管理システムの構成を示す概略図である。
【図2】ICタグの構成を示す図である。
【図3】ICタグが取り付けられるキャリパボディを示す斜視図である。
【図4】ICタグを取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】ICタグに保存可能な情報の一例を示す図である。
【図6】ブレーキ製品の属性情報に含まれる各情報の流れを時系列的に示す図である。
【図7】ブレーキ製品を構成するパーツごとの情報の関連付け状態を示す図である。
【図8】サーバ内のデータベースに記録されるデータの構成を示す概略図である。
【図9】サーバ内のデータベースに記録されるデータの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・ICタグ
2・・・リーダ/ライタ
10・・・ブレーキ製品
20・・・端末
30・・・サーバ
40・・・キャリパボディ
101・・・アンテナ
102・・・コントローラ
103・・・送受信モデム
104・・・CPU
105・・・メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパーツにより構成されるブレーキ製品の管理方法であって、
前記ブレーキ製品に、取り付け位置の耐環境性を考慮して情報の記録と読み取りが可能なICタグを所定の位置に取り付ける工程と、
前記ICタグに、前記ブレーキ製品のパーツ構成を識別する識別情報と前記ブレーキ製品の初期品質に関する品質情報と前記ブレーキ製品の整備履歴に関する整備情報とのうち少なくともいずれか一つを含む属性情報を非接触で記録する工程と、
前記ICタグに記録された前記属性情報を非接触で読み取り、読み取った該属性情報に基づいて前記各パーツの情報管理を行う工程と、
を備えるブレーキ製品の管理方法。
【請求項2】
前記耐環境性とは、少なくとも前記ICタグの取り付け位置におけるブレーキ作動時の温度上昇度合いと、走行時の飛石によるICタグの破損の影響度合いと、のうちいずれか一方を含み、
前記所定の位置は、ブレーキ作動時の温度上昇が小さい位置と走行時の飛石による破損の影響が少ない位置とのうち少なくとも何れか一方の位置である、請求項1に記載のブレーキ製品の管理方法。
【請求項3】
前記ブレーキ製品は、シール部材と、ピストン部材と、キャリパボディ部材と、を有し、
少なくとも前記シール部材と、前記ピストン部材と、前記キャリパボディ部材と、のそれぞれに前記属性情報を付し、
前記記録する工程では、前記シール部材の属性情報と前記ピストン部材の属性情報と前記キャリパボディの属性情報とを関連付けて前記ICタグに記録する、請求項1又は請求項2に記載のブレーキ製品の管理方法。
【請求項4】
前記情報管理を行う工程では、前記シール部材の属性情報と前記ピストン部材の属性情報と前記キャリパボディの属性情報とを関連付けて、前記ブレーキ製品ごとに管理するデータベースを用いて前記ブレーキ製品の情報管理を行う、請求項3に記載のブレーキ製品の管理方法。
【請求項5】
ICタグを有するブレーキ製品であって、
シール部材と、ピストン部材と、キャリパボディ部材と、を含む複数のパーツにより構成されるブレーキ製品と、
取り付け位置の耐環境性を考慮して前記キャリパボディに取り付けられ、情報の記録と読み取りが可能なICタグと、
前記ICタグに設けられ、前記ブレーキ製品のパーツ構成を識別する識別情報と前記ブレーキ製品の初期品質に関する品質情報と前記ブレーキ製品の整備履歴に関する整備情報とのうち少なくともいずれか一つを含む属性情報を記憶する記憶装置と、
を備えるICタグを有するブレーキ製品。
【請求項6】
前記耐環境性とは、少なくとも前記ICタグの取り付け位置におけるブレーキ作動時の温度上昇度合いと、走行時の飛石によるICタグの破損の影響度合いと、のうち少なくともいずれか一方を含み、
前記ICタグは、ブレーキ作動時の温度上昇が小さい位置と、走行時の飛石による破損の影響が少ない位置とのうち少なくとも何れか一方の前記キャリパボディの一部に取り付けられている、請求項5に記載のICタグを有するブレーキ製品。
【請求項7】
ICタグを有するブレーキ製品を管理するブレーキ製品管理システムであって、
シール部材と、ピストン部材と、キャリパボディ部材と、を含む複数のパーツにより構成され、情報の記録と読み取りが可能なICタグを有するブレーキ製品と、
前記ブレーキ製品の属性情報の前記ICタグへの記録と前記属性情報の前記ICタグからの読み取りとを行うリーダ/ライタと、
前記リーダ/ライタとネットワークを介して接続され、前記属性情報を管理する管理サーバと、を備え、
前記ICタグは、取り付け位置の耐環境性を考慮して前記キャリパボディに取り付けられ、
前記属性情報は、前記ブレーキ製品のパーツ構成を識別する識別情報と前記ブレーキ製品の初期品質に関する品質情報と前記ブレーキ製品の整備履歴に関する整備情報とのうち少なくともいずれか一つを含み、
前記シール部材と、前記ピストン部材と、前記キャリパボディ部材は、それぞれ前記属性情報を有し、
前記管理サーバは、前記シール部材の属性情報と前記ピストン部材の属性情報と前記キャリパボディの属性情報とを関連付けて前記ブレーキ製品ごとに管理するデータベースを有する、ブレーキ製品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−129911(P2008−129911A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315387(P2006−315387)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】