説明

ブレ補正装置および光学機器

【課題】好適な防振制御を行うことができるブレ補正装置及び光学機器を提供する。
【解決手段】ブレ補正装置1040は、装置のブレを検出する第1センサ21,21A,21Bと、前記装置のブレを補正するために駆動する光学部材104と、前記第1センサ21,21A,21Bの出力を用いて前記光学部材104を目標位置に制御するために必要なブレ補正量ωを演算する演算部13と、前記ブレ補正量ωを用いて前記光学部材104を駆動させる第1駆動部15,15A,15Bと、撮影をするために駆動する第2駆動部14,17,18,19,30と、前記第2駆動部14,17,18,19,30の駆動状態を検出する第2センサ14e,17e,18e,19e,30eと、前記第2センサ14e,17e,18e,19e,30eの出力に応じて、前記演算部13及び前記第1駆動部15,15A,15Bの少なくとも一方を制御する制御部9とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレ補正装置および光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
手ブレによりカメラに生じる振動の影響を低減する防振制御技術として、振れ検出センサを配設し、振れ検出センサの出力に応じて光学部材を駆動することにより、被写体像の振れを抑える技術が知られている。一方で、カメラのレリーズ動作時に、シャッタなどの駆動によるメカニカルな振動が発生する。そのため、振れ検出センサがメカニカルな振動をノイズとして検出してしまうことがある。
【0003】
そこで、制御部にタイマ回路を設け、制御部がミラーなどの駆動命令を出力すると同時にタイマ回路を作動させ、タイマ回路が作動している間は、センサの出力回路の積分器の時定数を切り替えることにより、低周波数側のゲインを小さくし、振れ検出センサの積分出力値を正確にする技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ミラーなどの駆動状態が制御信号とは必ずしも一致しない場合があり、その場合には、振れ検出センサがメカニカルな振動をノイズとして検出してしまうおそれが依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−218946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その課題は、好適な防振制御を行うことが可能なブレ補正装置および光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係るブレ補正装置(1040)は、
装置のブレを検出する第1センサ(21,21A,21B)と、
前記装置のブレを補正するために駆動する光学部材(104)と、
前記第1センサ(21,21A,21B)の出力を用いて前記光学部材(104)を目標位置に制御するために必要なブレ補正量(ω)を演算する演算部(13)と、
前記ブレ補正量(ω)を用いて前記光学部材(104)を駆動させる第1駆動部(15,15A,15B)と、
撮影をするために駆動する第2駆動部(14,17,18,19,30)と、
前記第2駆動部(14,17,18,19,30)の駆動状態を検出する第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)と、
前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて、前記演算部(13)及び前記第1駆動部(15,15A,15B)の少なくとも一方を制御する制御部(9)とを含む。
【0008】
第2駆動部(14,17,18,19,30)の駆動状態(ミラーアップやシャッタの走行状態など)によって、手ブレとは直接関係の無いメカニカルな振動が発生し、第1センサ(21,21A,21B)は、メカニカルな振動をノイズとして検出することがある。そのため、光学部材(104)がノイズ信号に基づき誤作動をしてしまい、手ブレ補正制御において望ましくない。本発明では、従来の制御信号とは異なり、第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)が、第2駆動部(14,17,18,19,30)の駆動状態をリアルタイムに検出し、第2駆動部(14,17,18,19,30)の実際の駆動状態に応じた検出信号を制御部(9)に直接送信する。そして制御部(9)が、第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて、演算部(13)及び第1駆動部(15,15A,15B)の少なくとも一方を制御する。したがって、第2駆動部(14,17,18,19,30)の実際の駆動状態に応じて、ノイズ信号の影響を排除したり、ブレ補正制御の補正量を低減させることなどが可能である。そのため、第1センサ(21,21A,21B)が第2駆動部(14,17,18,19,30)の駆動に基づき不正確な検出信号を出力したとしても、その誤信号の影響を除去し、正確に光学部材(104)を駆動し防振制御を行うことができる。
【0009】
ブレ補正装置(1040)は、振動を検出する第1センサ(21,21A,21B)と、前記第1センサ(21,21A,21B)の出力に基づきブレ補正量(ω)を演算するブレ検出回路(50A,50B)と、前記ブレ補正量(ω)に基づきブレ補正機構の駆動信号(ωA)を出力するブレ補正駆動回路(40A,40B)と、前記ブレ補正機構以外のメカ機構(14,17,18,19,30)と、前記メカ機構(14,17,18,19,30)の動きを検出する第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)と、前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて前記ブレ検出回路(50A,50B)および/または前記ブレ補正駆動回路(40A,40B)を制御する制御部(9)と、を有しても良い。前記制御部(9)が前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力を受けている間は、前記第1センサ(21,21A,21B)の出力の変化に関わらず、前記制御部(9)は前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて前記ブレ検出回路(50A,50B)で演算される前記ブレ補正量(ω)を補正しても良い。
【0010】
前記演算部(13)は、前記光学部材(104)が制御中心(O)から離れにくくなるようにするためのバイアス量(CB,CB0,CB1,CB2)を生成するバイアス量生成部(45)を有し、前記第1駆動部(15,15A,15B)は、前記ブレ補正量(ω)及び前記バイアス量(CB,CB0,CB1,CB2)を用いて前記光学部材(104)を駆動させ、前記制御部(9)は、前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて前記バイアス量(CB,CB0,CB1,CB2)を変化させても良い。前記制御部(9)は、前記第2駆動部(14,17,18,19,30)が駆動しているとき、前記バイアス量(CB,CB0,CB1,CB2)が大きくなるように制御しても良い。
【0011】
バイアス量生成部(45)が、第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じてバイアス量(CB,CB0,CB1,CB2)を生成する。バイアス量(CB,CB0,CB1,CB2)は、光学部材(104)が制御中心(O)から離れにくくなるようにする(センタリングバイアス)ための信号なので、第1センサ(21,21A,21B)がノイズを検出しても、そのノイズ信号に基づく光学部材(104)の駆動量を低減させることができる。そのため、第1センサ(21,21A,21B)がノイズを検出したとしても、正確に光学部材(104)を駆動し防振制御を行うことができる。
【0012】
前記演算部(13)は、前記第1センサ(21,21A,21B)の出力をフィルタするフィルタ回路(52A,52B)を有し、前記制御部(9)は、前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて、前記フィルタ回路(52A,52B)のカットオフ周波数を制御しても良い。すなわち、前記制御部(9)は、前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて前記フィルタ回路(52A,52B)のカットオフ周波数を変化させて、前記ブレ補正量(ω)を補正しても良い。
【0013】
手ブレによる振動の周波数は、第2駆動部(14,17,18,19,30)の駆動による振動の周波数と比較して低い傾向にある。第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて、フィルタ回路(52A,52B)のカットオフ周波数を変化させることにより、第2駆動部(14,17,18,19,30)の駆動による振動に特有の周波数成分を除去することができる。したがって、第1センサ(21,21A,21B)の出力信号から、手ブレによる振動の周波数成分データのみを抽出することが可能になり、そのデータに基づきブレ補正演算を行う。そのため、手ブレによる振動の周波数成分データに基づき光学部材(104)を駆動することにより正確に手ブレ補正制御を行うことができる。
【0014】
前記制御部(9)が前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力を受けている間は、前記制御部(9)は前記ブレ補正駆動回路(40A,40B)で演算される前記駆動信号(ωA)を補正しても良い。前記制御部(9)は、前記第2センサ(14e,17e,18e,19e,30e)の出力に応じて、前記第1駆動部(15,15A,15B)による前記光学部材(104)の駆動量が低減するように前記第1駆動部(15,15A,15B)を制御しても良い。
【0015】
前記第2駆動部(14,17,18,19,30)は、シャッタ、ミラー、オートフォーカス、パワーズーム、ストロボポップアップ、絞り、のいずれかであっても良い。前記光学部材(104)は、光を通過させる光透過部材、光を反射させる光反射部材、及び、像を撮像する撮像素子のうち少なくとも1つであっても良い。
【0016】
本発明に係る光学機器(150)は、上記のブレ補正装置(1040)を含む。
【0017】
なお、上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るカメラの概略構成図である。
【図2】図2は、図1に示すブレ補正回路の構成を説明するブロック図である。
【図3】図3は、図2に示すブレ検出回路の構成を説明するブロック図である。
【図4】図4は、図1に示す角速度センサの概略外観図である。
【図5】図5は、エンコーダのパルス信号を示すタイミングチャートである。
【図6】図6は、ブレ補正レンズとメカリミットとの関係を示す模式図である。
【図7】図7は、エンコーダのパルス信号とバイアスモードとの関係を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1実施形態
まず、図1に基づき、本発明の一実施形態のカメラ150の全体構成について説明する。以下の説明では、レンズ鏡筒100とカメラボディ200とが着脱自在となる一眼レフカメラについて説明する。図1に示すように、カメラボディ200には、レンズ鏡筒100が着脱自在に装着される。
【0020】
レンズ鏡筒100には、レンズCPU9、電源回路11、AF(Auto Focus)モータ駆動回路12、ブレ補正回路13、AFモータ14、VR(Vibration Reduction)モータ15、絞り駆動回路16、絞りモータ17、角速度センサ21、ブレ補正レンズ104、補正レンズ位置検出センサ106などが具備してある。図1に示すVRモータ15は、図2に示すVRモータ15AおよびVRモータ15Bをまとめて図示してある。VRモータ15、ブレ補正レンズ104、補正レンズ位置検出センサ106とが、ブレ補正ユニット1040を構成している。ブレ補正ユニット1040は、ブレ補正レンズ104をVRモータ15によって駆動して防振制御を行う。
【0021】
図1に示すように、カメラボディ200には、電池1、電源回路2、ボディCPU3、外部操作スイッチ群4、給電スイッチ5、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30などが具備してある。
【0022】
上述したAFモータ14、絞りモータ17、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30などのメカニカルな動作機構にはそれぞれエンコーダ14e,17e,18e,19e,30eが設けてある。エンコーダ14e,17e,18e,19e,30eは、それぞれに対応するロータの回転動作を検出し、パルス信号をレンズCPU9に出力する。
【0023】
図1に示すように、カメラボディ200は、その内部に着脱自在に内蔵される電池1を有する。この電池1の負極端子は、カメラボディ200の共通接地線7に接続されると共に、電気接点6−6に接続される。また、この電池1の負極端子は、電源回路2にも接続される。
【0024】
カメラボディ200とレンズ鏡筒100とが連結された状態で、カメラボディ200の共通接地線7は、レンズ鏡筒100の共通接地線(不図示)に接続され、導通が確保される。また、カメラボディ200とレンズ鏡筒100とが連結された状態では、電気接点6−1〜6−6を介して、レンズ鏡筒100内の電気回路と、カメラボディ200内の電気回路とが電気的に接続される。
【0025】
電池1の正極端子は、ボディCPU3にて制御される給電スイッチ5に接続され、この給電スイッチ5がオンされると、電気接点6−1を介してレンズ鏡筒100の電源回路11、AFモータ14、ブレ補正モータ(VRモータ)15、絞りモータ16などに電圧を供給可能になっている。電池1の正極端子は、さらにカメラボディ200内の電源回路2に接続される。電源回路2はボディCPU3により制御される。
【0026】
ボディCPU3のGND端子は、共通接地線7に接続してあり、ボディCPU3のVDD端子は、それぞれのダイオードを介して、電池1の正極端子および電源回路2の出力端子に接続してある。このため、ボディCPU3は、電池投入時より起動することが可能になっている。カメラボディ200の外部スイッチ群4の操作は、ボディCPU3に入力され、所定のスイッチ入力を検出した場合に、ボディCPU3は電源回路2をon/off制御する。
【0027】
たとえばカメラの動作として、通常、不図示のレリーズボタンを半押しした場合には、ボディCPU3は、電源回路2をon制御する。これにより電源回路2は電圧を出力し、電気接点6−2を介してレンズCPU9に対して給電し、レンズCPU9が動作可能となる。
【0028】
レンズCPU9が動作可能となると、電気接点6−3〜6−5を介して、レンズCPU9はボディCPU3と通信を行う。その結果、ボディCPU3は給電スイッチ5をon状態に切り替え、レンズCPU9は電源回路11を起動し、レンズ鏡筒100内に配置されるAFモータ駆動回路12、ブレ補正回路13、絞り駆動回路16、角速度センサ21に給電を行い、各機能の動作を開始する。また、給電スイッチ5がon状態にあるので、レンズ鏡筒100内のAFモータ14、VRモータ15および絞りモータ17はいずれも動作可能状態である。角速度センサ21は、カメラ150の振れ状態を検出し、振れ信号をレンズCPU9に出力する。
【0029】
レンズ鏡筒100の内部回路において、レンズ鏡筒100内のAFモータ14、VRモータ15および絞りモータ17が動作状態時に、電源回路11の出力が何らかの理由でダウンすることがある。そのような場合には、電源回路11からのAFモータ駆動回路12、ブレ補正回路13および絞りモータ17への給電が停止し、AFモータ14、VRモータ15および絞りモータ17の負荷は、電気接点6−1を介して供給される電池1の電源経路から自動的に切り離されるようになっている。
【0030】
図2は、図1に示すブレ補正回路13の構成を説明するブロック図である。図2に示すように、ブレ補正回路13は、図1に示すカメラ150のピッチ方向の振れを検出するブレ検出回路50Aと、ピッチ方向の振れに応じてVRモータ15Aを駆動するブレ補正駆動回路40Aと、図1に示すカメラ150のヨー方向の振れを検出するブレ検出回路50Bと、ヨー方向の振れに応じてVRモータ15Bを駆動するブレ補正駆動回路40Bとを有する。ブレ検出回路50A,50Bおよびブレ補正駆動回路40A,40Bは、図1に示すレンズCPU9によって制御される。
【0031】
図2に示すブレ補正回路13には、図1に示す角速度センサ21から、ピッチおよびヨー方向に関する振れ情報が入力される。ピッチ方向に関する振れ情報はブレ検出回路50Aに入力され、ブレ検出回路50Aはブレ補正量ωを出力する。ブレ補正量ωはセンタリングバイアス重畳手段47Aに入力される。センタリングバイアス重畳手段47Aの出力信号はブレ補正駆動回路40Aに入力され、ブレ補正駆動回路40Aは、図1に示すVRモータ15を駆動するための駆動信号ωAを出力する。駆動信号ωAに基づき、図1に示すブレ補正レンズ104が防振駆動される。ブレ補正レンズ104の位置は、図1に示す補正レンズ位置検出センサ106により検出される。補正レンズ位置検出センサ106の出力信号はブレ補正回路13へ入力され、ブレ補正レンズ104のフィードバック制御が行われる。
【0032】
図2に示すバイアス信号生成部45は、図1に示す補正レンズ位置検出センサ106の出力信号を基にバイアス量CBを生成し、バイアス量CBはセンタリングバイアス重畳手段47Aに入力される。バイアス信号生成部45、バイアス量CBおよびセンタリングバイアス重畳手段47Aについては、第2実施形態にて詳述する。ヨー方向に関しても上述したピッチ方向と同様の構成を有しており、対応する部材番号における「A」を「B」に置き換えて同じ説明となるので、ここでの説明を省略する。
【0033】
図3は、図2に示すブレ検出回路50Aおよびブレ検出回路50Bをさらに詳細に説明する図である。図3に示すように、ブレ検出回路50Aは、第1ローパスフィルタ(LPF)52A、直流増幅回路53A、A/D変換回路54A、シフト調整回路55A、D/A変換回路56A、ガンマ調整回路57A、第2ローパスフィルタ(LPF)58A、遅れ補正回路59A、補正可否判断回路60A、角速度確定回路61A、および減算器62A,63Aを有している。ブレ検出回路50Aは、外乱情報出力回路64、カメラ移動情報出力回路65、および防振モードセレクタ66から制御情報を取得する。
【0034】
角速度センサ21A(図4にて詳述する)による検出電気信号は、第1ローパスフィルタ(LPF)52Aへ入力される。第1ローパスフィルタ(LPF)52Aは、入力された信号のうち、設定されている遮断周波数より低い周波数成分の信号を通過させて減算器62Aへ出力する。第1ローパスフィルタ(LPF)52Aが遮断周波数より高い周波数成分の信号を減衰させるため、折り返しノイズや角速度センサ21Aにより発生するノイズを除去できる。
【0035】
第1ローパスフィルタ(LPF)52Aは、外乱情報出力回路64から入力されるカットオフ変更信号に応じて遮断周波数を変更可能である。たとえば、通常の遮断周波数が800Hzのところを、カットオフ変更信号に応じて50Hzなどの低い遮断周波数にするように構成される(図5にて作用を詳述する)。
【0036】
減算器62Aは、第1ローパスフィルタ(LPF)52Aの出力信号から後述するD/A変換回路56Aの出力信号を減算し、減算後の信号を直流増幅回路53Aへ出力する。直流増幅回路53Aは、入力信号を所定増幅率(たとえば、数十倍〜数百倍)で増幅し、増幅後の信号をA/D変換回路54Aへ出力する。A/D変換回路54Aは、入力信号をデジタル信号Vω1に変換する。変換後のデジタル信号Vω1は、シフト調整回路55Aによって直流成分が調節され、デジタル信号Vω2としてガンマ調整回路57Aへ送られる。
【0037】
シフト調整回路55Aはデジタル信号Vω1をモニタし、当該信号の直流成分が回路のダイナミックレンジの中心値から所定量離れた場合に、上記直流成分を中心値へ戻すためのフィードバックデータを生成し、D/A変換回路56Aへ出力する。D/A変換回路56Aは、入力データをアナログ信号に変換して減算器62Aへ出力する。
【0038】
ガンマ調整回路57Aは、角速度センサ21Aの個体差ゲインのばらつき、および直流増幅回路53Aをはじめとする他の回路の個体差ゲインのばらつきを補正する。ガンマ調整回路57Aは、補正後の信号Vω5を減算器63A、第2ローパスフィルタ(LPF)58Aおよび正可否判断回路60Aへ出力する。
【0039】
第2ローパスフィルタ(LPF)58Aは、角速度センサ21Aによる検出電気信号の長時間平均値を擬似的に算出する。ガンマ調整回路57Aから入力された信号Vω5のうち、第2ローパスフィルタ(LPF)58Aに設定されている遮断周波数より低い周波数成分(たとえば数Hz以下)の信号を通過させることにより、流し撮り時やパンニングにより生じる低周波数成分の信号のみが減算器63Aへ出力される。
【0040】
減算器63Aは、ガンマ調整回路57Aの出力信号Vω5から第2ローパスフィルタ(LPF)58Aの出力信号を減算し、減算後の信号ω1を遅れ補正回路59Aへ出力する。これにより、角速度センサ21Aによる検出電気信号から、流し撮り時やパンニングによる低周波数成分が除去される。
【0041】
第2ローパスフィルタ(LPF)58Aは、カメラ移動情報出力回路65から入力されるカットオフ変更信号に応じて遮断周波数を変更可能に構成される。
【0042】
遅れ補正回路59Aは、角速度センサ21Aをはじめとする他の回路の遅れ要素を補正し、遅れ補正後の信号ω2を角速度確定回路61Aへ出力する。補正可否判断回路60Aは、ガンマ調整回路57Aの出力信号Vω5をモニタし、補正可能か否かを判定する。補正不能と判定した場合は、角速度確定回路61Aへブレ補正の停止を指示する。なお、停止の代わりに、ブレ補正量を抑制するように指示する構成としてもよい。
【0043】
防振モードセレクタ66は、防振モード切替スイッチ(不図示)の操作状態によって補正対象とする手ブレの大/小を切り替える。「大」の場合はゲインを大きくする指示を角速度確定回路61Aへ出力し、「小」の場合はゲインを小さくする指示を角速度確定回路61Aへ出力する。
【0044】
角速度確定回路61Aは、遅れ補正回路59Aによる遅れ補正後の信号ω2、補正可否判断回路60Aからの指示、および防振モードセレクタ66からのゲイン指示に基づいて角速度信号ωを決定し、決定した角速度信号ωをセンタリングバイアス重畳手段47Aへ出力する。
【0045】
図1に示すAFモータ14、絞りモータ17、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30のエンコーダ14e,17e,18e,19e,30eの出力信号は、図3に示すレンズCPU9に入力される。レンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータ(図5にて詳述する)を外乱情報出力回路64に出力し、外乱情報出力回路64は、ブレ信号処理パラメータに応じてカットオフ変更信号を第1ローパスフィルタ(LPF)52Aへ出力する。これにより、第1ローパスフィルタ(LPF)52Aには、図1に示すミラー30などのメカニカルな機構の駆動状態に応じたカットオフ変更信号が入力される。
【0046】
カメラ移動情報出力回路65は、角速度確定回路61Aおよび角速度確定回路61Bが決定した角速度信号ωに基づいて図1に示すカメラ150の動きを判定する。カメラ150が通常撮影状態か、シャッターボタンSW(図4参照)の一気押し状態か、流し撮り状態かをカメラ移動情報出力回路65が判定すると、判定結果に応じてカットオフ変更信号を第2ローパスフィルタ(LPF)58Aへ出力する。これにより、第2ローパスフィルタ(LPF)58Aは、カメラシステムの動きに応じてカットオフ変更信号が入力される。なお、ノイズ除去を目的とする第1ローパスフィルタ(LPF)52Aとは、遮断周波数が異なる。
【0047】
図3に示すブレ検出回路50Bは、第1ローパスフィルタ(LPF)52B、直流増幅回路53B、A/D変換回路54B、シフト調整回路55B、D/A変換回路56B、ガンマ調整回路57B、第2ローパスフィルタ(LPF)58B、遅れ補正回路59B、補正可否判断回路60B、角速度確定回路61B、および減算器62A,62Bを有している。ブレ検出回路50Bは、外乱情報出力回路64、カメラ移動情報出力回路65、および防振モードセレクタ66から制御信号を取得する。
【0048】
外乱情報出力回路64、カメラ移動情報出力回路65、および防振モードセレクタ66は、ブレ検出回路50Aおよびブレ検出回路50B間で共用される。ブレ検出回路50Bの動作はブレ検出回路50Aと同様であり、対応する部材番号における「A」を「B」に置き換えて同じ説明となるので、説明を省略する。
【0049】
図4は、レンズ鏡筒100に配設する角速度センサ51A,51Bの外観図である。図4に示すように、基板22A上には、図3に示すブレ検出回路50Aを構成する角速度センサ21A、A/D変換回路54A等が実装されている。図4に示す基板22B上には、図3に示すブレ検出回路50Bを構成する角速度センサ21B、A/D変換回路54B等が実装されている。
【0050】
図4に示すように、角速度センサ21Aは、基板22Aに取付けるための取付け部が角速度検出感度軸と直交する方向に備えられており、角速度検出感度軸が基板22Aと直交するように角速度センサ21Aが基板22Aに搭載されている。角速度センサ21Bについても同様である。
【0051】
レンズ鏡筒100には、X軸方向と直交するY−Z平面に沿って平面部が形成されており、この平面部には基板22Aが直接的に搭載されている。したがって、基板22Aに搭載された角速度センサ21Aは、角速度検出感度軸が光軸(Z方向)に直交することになり、精度よく角速度を検出することができる。角速度センサ21Bについても同様に、Y軸方向と直交するX−Z平面に沿って平面部が形成されており、この平面部には基板22Bが直接的に搭載されているので、精度よく角速度を検出することができる。
【0052】
図4に示す角速度センサ21A,21Bは、手ブレ成分を、ピッチ・ヨー方向それぞれの角速度として検出する。しかし、角速度センサ21A,21Bは、図1に示すAFモータ14、絞りモータ17、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30などの駆動によるメカニカルな振動をノイズとして検出してしまうことがある。
【0053】
そこで、以下に述べるように、図1に示すエンコーダ14e,17e,18e,19e,30eの出力に応じて、図3に示すレンズCPU9が第1ローパスフィルタ52A,52Bのカットオフ周波数を変化させることにより、図3に示すブレ補正量ωを補正する。
【0054】
図5に示すタイミングチャートに沿って具体的に説明をする。ミラーアップ前には、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード0として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力している。ブレ信号処理パラメータがモード0の時には、図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bのカットオフ周波数は800Hzである。
【0055】
そして、ミラーアップ駆動が行われると、図5に示すように、ミラーアップによるパルス信号P1がホットライン1を通して、図1に示すレンズCPU9に直接入力される。図5に示すパルス信号P1が入力されている間には、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード1として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。ブレ信号処理パラメータがモード1の時には、図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bのカットオフ周波数は50Hzである。ミラーアップ終了と同時に、図5に示すパルス信号P1の入力が停止するので、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード0として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。ミラーアップが終了してから次のメカニカルな機構の動作が検出されるまでの間は、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード0(800Hz)として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。
【0056】
次に、絞り羽根の駆動が行われると、図5に示すように、絞り駆動によるパルス信号P5がホットライン5を通して、図1に示すレンズCPU9に直接入力される。図5に示すパルス信号P5が入力されている間には、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード1(50Hz)として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。
【0057】
次に、シャッタの駆動が行われると、図5に示すように、先幕シャッタの駆動によるパルス信号P6がホットライン6を通して、後幕シャッタの駆動によるパルス信号P2がホットライン2を通して、図1に示すレンズCPU9にそれぞれ直接入力される。図5に示すパルス信号P2および/またはパルス信号P6が入力されている間には、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード2として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。ブレ信号処理パラメータがモード2の時には、図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bのカットオフ周波数は500Hzである。シャッタの駆動による振動の周波数は、ミラーアップなどの駆動による振動の周波数とは異なるため、モード2におけるカットオフ周波数は、モード1とは異なる値にしてある。後幕シャッタの駆動終了と同時に、図5に示すパルス信号P2の入力が停止するので、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード0(800Hz)として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。
【0058】
次に、ミラーダウン駆動が行われると、図5に示すように、ミラーダウンによるパルス信号P3がホットライン3を通して、図1に示すレンズCPU9に直接入力される。図5に示すパルス信号P3が入力されている間には、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード1(800Hz)として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。ミラーダウンの駆動終了と同時に、図5に示すパルス信号P3の入力が停止するので、図1に示すレンズCPU9は、ブレ信号処理パラメータをモード0(800Hz)として図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。
【0059】
上述したメカニカルな機構の駆動状態に応じて、図1に示すレンズCPU9は、図5に示すパルス信号P1〜P6に基づきブレ信号処理パラメータ(モード0〜モード2)を図3に示す外乱情報出力回路64に出力し、外乱情報出力回路64は、ブレ信号処理パラメータに応じてカットオフ変更信号を第1ローパスフィルタ52A,52Bへ出力する。カットオフ周波数の異なるブレ補正パラメータ同士が重複した場合には、カットオフ周波数の低い方に合わせることが好ましい。
【0060】
このように、図1に示すAFモータ14、絞りモータ17、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30などの駆動状態によって、手ブレとは直接関係の無いメカニカルな振動が発生し、角速度センサ21は、メカニカルな振動をノイズとして検出することがある。そのため、ブレ補正レンズ104がノイズ信号に基づき誤作動をしてしまい、手ブレ補正制御において望ましくない。本実施形態では、従来の制御信号とは異なり、図1に示すAFモータ14、絞りモータ17、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30などのノイズ発生源の駆動状態を、エンコーダ14e,17e,18e,19e,30eがリアルタイムに検出し、これらのノイズ発生源の実際の駆動状態に応じた検出信号をレンズCPU9に直接送信する。そしてレンズCPU9が、これらのノイズ発生源の出力に応じて、ブレ補正回路13を制御する。
【0061】
手ブレによる振動の周波数は、AFモータ14、絞りモータ17、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30などのノイズ発生源の駆動による振動の周波数と比較して低い傾向にある。これらのノイズ発生源の出力に応じて、図3に示す第1ローパスフィルタ52A,52Bのカットオフ周波数を変化させることにより、これらのノイズ発生源の駆動による振動に特有の周波数成分を除去することができる。したがって、角速度センサ21の出力信号から、手ブレによる振動の周波数成分データのみを抽出することが可能になり、そのデータに基づきブレ補正演算を行う。そのため、手ブレによる振動の周波数成分データに基づきブレ補正レンズ104を駆動することにより正確に手ブレ補正制御を行うことができる。
【0062】
第2実施形態
本実施形態では、以下に示す以外は、図1〜図5に示す第1実施形態と同様なので、重複する説明は省略する。
【0063】
図6に示すように、ブレ補正ユニット1040は、ブレ補正レンズ104が光軸と略垂直な方向に(X−Y平面に沿って)物理的に最大限移動可能な範囲を規定する環状の開口部(メカリミットML)を有する。この開口部の内部に、ブレ補正レンズ104が入り込む。そのため、ブレ補正レンズ104は、メカリミットMLの範囲内でのみ移動が可能である。
【0064】
図6に示すソフトリミットSLの内側に位置する第1範囲L1内において、一般的なブレ補正制御では、以下に述べるブレ補正量ωに基づきブレ補正レンズ104の駆動が行われる。ソフトリミットSLよりも外側の第2範囲L2では、図1に示すレンズCPU9が、ブレ補正量ωに対しバイアスをかけて補正を行う。補正を行うことで、第2範囲L2では、ブレ補正レンズ104がメカリミットMLに衝突するのを防止している。
【0065】
バイアスをかけるための構成について、以下に述べる。図2に示すように、ブレ検出回路50Aは、図3に示す角速度センサ21Aの出力信号に基づきブレ補正量ωを演算し、ブレ補正量ωはセンタリングバイアス重畳手段47Aに入力される。図2に示すバイアス信号生成部45は、図1に示す補正レンズ位置検出センサ106の出力信号(ブレ補正レンズ104の位置信号)を基にバイアス量CBを生成し、バイアス量CBはセンタリングバイアス重畳手段47Aに入力される。バイアス量CBは、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れにくくするように制御するための信号である。バイアス量CBの値が大きいほど、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れにくくなる。図2に示すセンタリングバイアス重畳手段47Aは、ブレ補正量ωとバイアス量CBとを利用してセンタリングバイアス処理を行い、ブレ補正駆動回路40Aに出力する。図2に示すように、ピッチ方向とヨー方向の構成は同一なので、ヨー方向に関する説明は省略する。
【0066】
本実施形態では、図1に示すAFモータ14、絞りモータ17、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30などのノイズ発生源の駆動に応じて、ブレ補正量ωにバイアスをかけて、ノイズ発生源によるブレ補正動作の誤作動を防止する。
【0067】
図7に示すタイミングチャートに沿って具体的に説明をする。ミラーアップ前には、図1に示すレンズCPU9が、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB0に設定し、図6に示すブレ補正レンズ104の駆動制御を行う。バイアスモードCB0では、図6に示すブレ補正レンズ104が第2範囲L2にある時にのみ、図1に示すレンズCPU9はブレ補正量ωにバイアスをかけ、図6に示すブレ補正レンズ104が第1範囲L1にある時にはバイアスをかけることなくブレ補正制御を行う(通常状態)。
【0068】
そして、ミラーアップ駆動が行われると、図7に示すように、ミラーアップによるパルス信号P1がホットライン1を通して、図1に示すレンズCPU9に直接入力される。図7に示すパルス信号P1が入力されている間には、図1に示すレンズCPU9は、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB1に設定し、図6に示すブレ補正レンズ104が第1範囲L1にあっても、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れにくくするように制御する。バイアスモードCB1におけるバイアス量CBは、バイアスモードCB0におけるバイアス量CBと比較して大きな数値である(第1範囲L1でのバイアス量CBの違い)。ミラーアップ終了と同時に、図7に示すパルス信号P1の入力が停止するので、図1に示すレンズCPU9は、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB0(通常状態)に設定する。ミラーアップが終了してから次のメカニカルな機構の動作が検出されるまでの間は、図1に示すレンズCPU9は、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB0(通常状態)に設定する。
【0069】
次に、絞り羽根の駆動が行われると、図7に示すように、絞り駆動によるパルス信号P5がホットライン5を通して、図1に示すレンズCPU9に直接入力される。図7に示すパルス信号P5が入力されている間には、図1に示すレンズCPU9は、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB1に設定し、図6に示すブレ補正レンズ104が第1範囲L1にあっても、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れにくくするように制御する。
【0070】
次に、シャッタの駆動が行われると、図7に示すように、先幕シャッタの駆動によるパルス信号P6がホットライン6を通して、後幕シャッタの駆動によるパルス信号P2がホットライン2を通して、図1に示すレンズCPU9にそれぞれ直接入力される。図7に示すパルス信号P2および/またはパルス信号P6が入力されている間には、図1に示すレンズCPU9は、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB2に設定し、図6に示すブレ補正レンズ104が第1範囲L1にあっても、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れにくくするように制御する。ノイズ発生源によって、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oからの離れやすさの影響は異なるので、バイアスモードCB1におけるバイアス量CBとバイアスモードCB2におけるバイアス量CBとは異なる値にしてある。後幕シャッタの駆動終了と同時に、図7に示すパルス信号P2の入力が停止するので、図1に示すレンズCPU9は、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB0に設定する(通常状態)。
【0071】
次に、ミラーダウン駆動が行われると、図7に示すように、ミラーダウンによるパルス信号P3がホットライン3を通して、図1に示すレンズCPU9に直接入力される。図7に示すパルス信号P3が入力されている間には、図1に示すレンズCPU9は、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB1に設定し、図6に示すブレ補正レンズ104が第1範囲L1にあっても、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れにくくするように制御する。ミラーダウンの駆動終了と同時に、図7に示すパルス信号P3の入力が停止するので、図1に示すレンズCPU9は、図2に示すバイアス信号生成部45をバイアスモードCB0に設定する(通常状態)。
【0072】
このように、図2に示すバイアス信号生成部45が、図1に示すAFモータ14、絞りモータ17、ストロボポップアップ機構18、シャッタ機構19、ミラー機構30の出力に応じてバイアス量を生成する。バイアス量は、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れにくくなるようにする(センタリングバイアス)ための信号なので、図1に示す角速度センサ21がノイズを検出しても、そのノイズ信号に基づくブレ補正レンズ104の駆動量を低減させることができる。そのため、角速度センサ21がノイズを検出したとしても、ノイズに基づきブレ補正レンズ104を不正確に駆動することが無くなり、正確な防振制御を行うことができる。
【0073】
なお、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れにくくなるように制御する手段は、上述した実施形態に限定されない。例えば、図6に示すブレ補正レンズ104が制御中心から離れるほど、バイアス量CBを強くしてブレ補正レンズ104の駆動を低減せてもよい。
【0074】
また、図6に示すブレ補正レンズ104の駆動速度に応じてバイアス量を変化させてもよい。例えば、ブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れる方向の速度が速くなるのに応じて、バイアス量を強くしてブレ補正レンズ104の駆動速度を遅くしてもよい。
【0075】
さらに、図6に示すブレ補正レンズ104の変位量に応じてバイアス量を変化させてもよい。例えば、ブレ補正レンズ104が制御中心Oから離れる方向への変位量が大きくなるのに応じて、バイアス量を強くしてブレ補正レンズ104の変位量を小さくしてもよい。
【0076】
また、図6に示す第1範囲L1におけるブレ補正レンズ104の駆動制御について、ブレ補正レンズ104が第2範囲L2に近づくにつれてブレ補正レンズ104の速度が遅くなるように制御してもよい。また、第2範囲L2に近づく方向のブレ補正レンズ104の速度が速くなるのに応じて、ブレ補正レンズ104の駆動速度が遅くなるように制御してもよい。さらに、第2範囲L2に近づく方向のブレ補正レンズ104の速度が速くなるのに応じて、ブレ補正レンズ104の変位量が小さくなるように制御してもよい。
【0077】
また、図7に示すパルス信号P1〜P6が図1に示すレンズCPU9に入力された場合には、入力直前のブレ補正量ωの値を、パルス信号P1〜P6が入力されている間、一定に保持してもよい。
【0078】
上述した実施形態における図5の説明において、モード0、モード1、モード2の3種類のブレ処理パラメータおよびバイアス量を設定しているが、モード3、モード4など、さらに細かくモード数があってもよい。図7の説明においても、さらに細かくバイアスモードを設定してもよい。
【0079】
なお、ブレを補正するために駆動する光学部材としては、図1に示すブレ補正レンズ104の他に、ミラー30や、CCD,CMOSセンサなどの撮像素子(不図示)でもよい。
【0080】
また、本実施形態では、主に静止画像の撮影時におけるブレ補正制御について述べたが、動画像の撮影時にも適用することができる。
【0081】
本実施形態では、レンズ鏡筒100とカメラボディ200とが着脱自在となる一眼レフカメラについて説明したが、コンパクトカメラであってもよいし、ビデオカメラ、携帯電話にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
9…レンズCPU
13…ブレ補正回路
14…AFモータ
14e…AFモータエンコーダ
15…VRモータ
17…絞りモータ
17e…絞りモータエンコーダ
18…ストロボポップアップ機構
18e…ストロボポップアップ機構エンコーダ
19…シャッタ
19e…シャッタエンコーダ
21,21A,21B…角速度センサ
30…ミラー
30e…ミラーエンコーダ
40A,40B…ブレ補正駆動回路
45…バイアス信号生成部
47A,47B…センタリングバイアス重畳手段
50A,50B…ブレ検出回路
52A,52B…第1ローパスフィルタ
104…ブレ補正レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置のブレを検出する第1センサと、
前記装置のブレを補正するために駆動する光学部材と、
前記第1センサの出力を用いて前記光学部材を目標位置に制御するために必要なブレ補正量を演算する演算部と、
前記ブレ補正量を用いて前記光学部材を駆動させる第1駆動部と、
撮影をするために駆動する第2駆動部と、
前記第2駆動部の駆動状態を検出する第2センサと、
前記第2センサの出力に応じて、前記演算部及び前記第1駆動部の少なくとも一方を制御する制御部とを含むことを特徴とするブレ補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたブレ補正装置であって、
前記演算部は、前記光学部材が制御中心から離れにくくなるようにするためのバイアス量を生成するバイアス量生成部を有し、
前記第1駆動部は、前記ブレ補正量及び前記バイアス量を用いて前記光学部材を駆動させ、
前記制御部は、前記第2センサの出力に応じて前記バイアス量を変化させることを特徴とするブレ補正装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたブレ補正装置であって、
前記制御部は、前記第2駆動部が駆動しているとき、前記バイアス量が大きくなるように制御することを特徴とするブレ補正装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載されたブレ補正装置であって、
前記演算部は、前記第1センサの出力をフィルタするフィルタ回路を有し、
前記制御部は、前記第2センサの出力に応じて、前記フィルタ回路のカットオフ周波数を制御することを特徴とするブレ補正装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載されたブレ補正装置であって、
前記制御部は、前記第2センサの出力に応じて、前記第1駆動部による前記光学部材の駆動量が低減するように前記第1駆動部を制御することを特徴とするブレ補正装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載されたブレ補正装置であって、
前記第2駆動部は、シャッタ、ミラー、オートフォーカス、パワーズーム、ストロボポップアップ、絞り、のいずれかであることを特徴とするブレ補正装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載されたブレ補正装置であって、
前記光学部材は、光を通過させる光透過部材、光を反射させる光反射部材、及び、像を撮像する撮像素子のうち少なくとも1つであることを特徴とするブレ補正装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか1項に記載されたブレ補正装置を含むことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−59429(P2011−59429A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209592(P2009−209592)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】