説明

ブロックコポリマーを含む化粧用組成物および対応する長時間持続性の化粧用製品システム

【課題】適用時および皮膚に付着している間、快適であり、かつ長時間持続する光沢/つやを有するリップトリートメント組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つのハードセグメントおよび少なくとも1つのソフトセグメントを有する少なくとも1つのブロックコポリマー、少なくとも1つの粘着性付与成分、少なくとも1つのハードセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒、および
任意選択で、少なくとも1つの着色剤を含み、かつ前記少なくとも1つのハードセグメントが50℃以上のTg値を有し、かつ前記少なくとも1つのソフトセグメントが20℃以下のTg値を有する化粧用組成物に関する。本発明はまた、(a)ケラチン性基質を用意すること、
(b)ベースコート組成物をケラチン性基質に適用することであって、前記ベースコート組成物が:(i)少なくとも1つのポリオルガノシロキサン含有ポリマー、(ii)少なくとも1つのシリコーン皮膜形成剤、(iii)少なくとも1つの揮発油、および(iv)少なくとも1つの着色剤を含むベースコート組成物の適用、および(c)ベースコート組成物の上から前記トップコート組成物を適用することを含むケラチン性基質をメークアップする美容的方法における本組成物のトップコート組成物としての使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
顔、眼、唇、爪および毛髪のための化粧用組成物の快適性、持ち、光沢および/または製品寿命を改善することに関連して数多くの開発が行なわれてきた。リップグロスおよびリップスティックなどの市販のリップトリートメント組成物は、その組成に応じて、ある程度のつやまたは光沢を有している。このような製品のつやまたは光沢をさらに向上させるために、高屈折率液体の使用を介した努力がなされてきたが、つやまたは光沢の持ちには限度がある。さらに、これらのリップトリートメント組成物は、しばしば光沢/つやの持ちを維持するために使用されている高粘度の高分子量ポリマーの存在により、適用時にべたついて不快感をもたらす。
【背景技術】
【0002】
光沢/つやを改善するための他の努力には、シリコーン液の使用があるが、光沢の持ちについては満足できない点が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5294438号
【特許文献2】米国特許第6403070号
【特許文献3】米国特許第6656458号
【特許文献4】米国特許第5874069号
【特許文献5】米国特許第5919441号
【特許文献6】米国特許第6051216号
【特許文献7】米国特許第5981680号
【特許文献8】US-A-598168
【特許文献9】米国特許第6503632号
【特許文献10】米国特許第6569955号
【特許文献11】米国特許第6338839号
【特許文献12】国際公開第03/042221号
【特許文献13】米国特許第5246694号
【特許文献14】米国特許第5061481号
【特許文献15】米国特許第5219560号
【特許文献16】米国特許第5262087号
【特許文献17】米国特許第6045782号
【特許文献18】米国特許第5334737号
【特許文献19】米国特許第4725658号
【特許文献20】米国特許第5209924号
【特許文献21】米国特許第4972037号
【特許文献22】国際公開第01/32737号
【特許文献23】国際公開第01/32727 A1号
【特許文献24】米国特許第4693935号
【特許文献25】米国特許第4981903号
【特許文献26】米国特許第4981902号
【特許文献27】米国特許第5468477号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Polymer Handbook」第3版、第VII章、519〜559頁のEric A. Grulkeによる論文「Solubility Parameter Values」
【非特許文献2】C. M. Hansen、「The three-dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol.、39、105頁、1967年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、適用時および皮膚に付着している間、快適であり、かつ長時間持続する光沢/つやを有するリップトリートメント組成物を提供することが、本発明の特徴の1つである。
【0006】
したがって、本発明の第一の特徴は、
(a)少なくとも1つのハードセグメントおよび少なくとも1つのソフトセグメントを有する少なくとも1つのブロックコポリマー、(b)少なくとも1つの粘着性付与成分、(c)少なくとも1つのソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒、および
(d)任意選択で、少なくとも1つの着色剤
を含み、かつ前記少なくとも1つのハードセグメントが50℃以上のTg値を有し、かつ前記少なくとも1つのソフトセグメントが20℃以下のTg値を有する化粧用組成物を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このように、驚くべきことに、(a)少なくとも1つのハードセグメントおよび少なくとも1つのソフトセグメントを有するブロックコポリマー、(b)粘着性付与成分、および(c)少なくとも1つのソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒を、ブロックコポリマーのハードセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒との混合において、または、上記溶媒を伴わずに含むリップトリートメント組成物は、唇に適用したときに、快適で、長時間持続する光沢またはつやをもたらすことができることが発見された。
【0008】
ブロックコポリマーの物理的およびレオロジー的特性は、ハードおよび/またはソフトブロックセグメントを溶解することができる特定のタイプの溶媒を使用することにより、調整することができる。ソフトセグメントを溶解することができる溶媒は結果的に、ブロックコポリマーに、ハードセグメントを溶解することができる溶媒を使用することにより得られるものとは異なるモルフォロジーおよびレオロジーをもたせる。同様に、ハードおよびソフトセグメントの両方を溶解することができる溶媒の混合物をベースとするブロックコポリマー溶液の物理的性質は、ソフトセグメントのみを溶解することができる溶媒またはハードセグメントのみを溶解することができる溶媒を使用することにより得られる溶液の性質とは異なる。
【0009】
さらに、本発明は、そのもう1つの特徴に基づき、長時間持続性の化粧用製品システムおよび前記化粧用製品システムを用いたケラチン性基質のメークアップ方法を対象とする。
【0010】
化粧品を強化するために使用される組成物は、当技術分野において周知である。このような組成物は、「トップコート」と称されることもあり、一般にはベースコート組成物によって与えられることのないつや、光沢および潤滑性などの特質を付与するためにリップスティック等のベースコート組成物の上から適用する組成物を含む。これらの強化用製品は、ないつや、光沢および潤滑性を付与するために、種々のポリマー性液体を利用する。
【0011】
このようなトップコート組成物は、これらのタイプの強化製品を提供するが、一方ではこれらの組成物は特に色移り耐性ではないことが判明している。結果として、これらのトップコートは、ベースコート化粧用組成物の上につや、光沢および潤滑性を維持するために一日中、適用し直さなければならない。
【0012】
したがって、本発明は、
(a)ケラチン性基質を用意するステップと、
(b)ベースコート組成物をケラチン性基質上に適用するステップであって、前記ベースコート組成物が、
(i)(1)少なくとも1つのオルガノシロキサンユニットならびにエステル基、スルホンアミド基、カルバメート基、チオカルバメート基、尿素基、チオ尿素基、オキサミド基、グアニジノ基、ビグアニジノ基、アミド基、およびこれらの混合物から選択される、水素との相互作用を形成することができる少なくとも2つの他の基を含む(コ)ポリマー、
(2)シリコーンポリアミドコポリマーおよびこれらの混合物
から選択されるポリマーを含む少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、
(ii)少なくとも1つのシリコーン皮膜形成剤、
(iii)少なくとも1つの揮発油、
(iv)少なくとも1つの着色剤
を含むステップと、
(c)ベースコート組成物の上からトップコートを適用するステップであって、前記トップコート組成物が先に定義されている通りであるステップと
を含むケラチン性基質をメークアップする美容方法を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例中、あるいは他に指示がある場合以外では、成分の量または反応条件を示す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」により修飾されていると理解されよう。
【0014】
化粧用組成物
ブロックコポリマー
本発明のブロックコポリマーは、少なくとも1つの「ハード」セグメントおよび少なくとも1つの「ソフト」セグメントの存在を特徴とする。その組成上の性質を除いては、本発明のブロックコポリマーのハードおよびソフトセグメントはそれぞれのガラス転移温度「Tg」を用いて定義される。より具体的には、ハードセグメントが50℃以上のTgを有するのに対して、ソフトセグメントは20℃以下のTgを有する。ハードブロックのガラス転移温度Tgは、50℃から150℃、60℃から125℃、70℃から120℃、80℃から100℃の範囲であってよい。ブロックコポリマーのソフトセグメントのガラス転移温度Tgは、20℃から-150℃、0℃から-135℃、-10℃から-125℃、-25℃から-100℃の範囲であってよい。より網羅的な説明は、米国特許第5294438号および米国特許第6403070号に見ることができ、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本発明により使用されてよいブロックコポリマーの一タイプは、熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーのハードセグメントは、典型的にはビニルモノマーを種々の量で含む。適切なビニルモノマーの例には、スチレン、メタクリレート、アクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、酢酸ビニルなどが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0016】
熱可塑性エラストマーのソフトセグメントは、飽和、不飽和、またはこれらの組合せであってよいオレフィンポリマーおよび/またはコポリマーを含む。適切なオレフィンコポリマーには、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ブチレンコポリマー、プロピレン/ブチレンコポリマー、ポリブチレン、ポリイソプレン、水添ブタンおよびイソプレンのポリマーならびにこれらの混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明において有用な熱可塑性エラストマーは、ブロックコポリマー、例えば、ジブロック、トリブロック、マルチブロック、ラジカルおよびスターブロックコポリマー、ならびにこれらの混合物およびブレンドである。ジブロック熱可塑性エラストマーは通常、A-Bタイプまたは配列中でハードセグメント(A)とそれに続くソフトセグメント(B)により定義される。トリブロックは通常、A-B-Aタイプコポリマーまたは1つのハードセグメント、1つのソフトセグメントおよび1つのハードセグメントの比率により定義される。マルチブロックまたはラジカルまたはスターブロック熱可塑性エラストマーは通常、エラストマーがハードおよびソフトの両方の性質を有するという条件で、ハードおよびソフトセグメントのあらゆる組合せをも含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明の熱可塑性エラストマーは、Kraton(商標)rubbers(Shell Chemical Company)の商品群または同等の熱可塑性エラストマーから選択されてよい。Kraton(商標)rubbersは、ポリマー鎖がジブロック、トリブロック、マルチブロックまたはラジカルまたはスターブロック立体配置あるいはこれらの数多くの混合物を含む熱可塑性エラストマーである。Kraton(商標)tri-block rubbersは、ゴム(ソフト)セグメントの各末端にポリスチレン(ハード)セグメントを有し、それに対して、Kraton(商標)di-block rubbersは、ゴム(ソフト)セグメントに結合したポリスチレン(ハード)セグメントを有する。Kraton(商標)のラジカルまたはスター立体配置は、ゴムセグメントの各末端に結合するポリスチレンセグメントを有するゴムで構成される4頂点または他の多頂点の星形である。各Kraton(商標)rubbersの立体配置は、別個のポリスチレンおよびゴムドメインを形成する。
【0019】
Kraton(商標)rubberの各分子は、スチレンモノマーユニットおよびゴムモノマーおよび/またはコモノマーユニットのブロックセグメントを含むと言われている。最も一般的なKraton(商標)トリブロックコポリマーは、直鎖状A-B-Aブロックタイプのスチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-エチレンプロピレン-スチレン、またはスチレン-エチレンブチレン-スチレンである。Kraton(商標)ジブロックは、好ましくは、スチレン-エチレンプロピレン、スチレン-エチレンブチレン、スチレン-ブタジエン、またはスチレン-イソプレンなどのABブロックタイプである。Kraton(商標)rubberの立体配置は当技術分野では周知であり、同様な立体配置のいかなるブロックコポリマーエラストマーも本発明の実施の範囲内にある。他のブロックコポリマーは、Septonという商品名で販売されており(この商品は、Kurary, Co., Ltdにより販売されているSEEPSとして知られているエラストマーに相当する)、またVector(商標)という商品名でExxon Dowにより販売されている商品でもある。
【0020】
本発明において有用な他の熱可塑性エラストマーは、スチレン-ブチレン/エチレン-スチレンコポリマー(トリブロック)、エチレン/プロピレン-スチレンコポリマー(ラジカルまたはスターブロック)、または前記2つの混合物またはブレンドを含むブロックコポリマーエラストマーを含む。(製造者の一部は、ブロックコポリマーを水添ブロックコポリマー、例えば、水添スチレン-ブチレン/エチレン-スチレンコポリマー(トリブロック)と称している。
【0021】
ブロックコポリマーの量は、その構造(ジブロック、トリブロックなど)と同様に、ゲル化形態を含む熱可塑性エラストマーの性質に影響を及ぼし、ゲル化形態は、脆弱から軟質/柔軟、堅固までの範囲であってよい。例えば、軟質のゲルは、比較的多量のソフトセグメントを含み、堅固なゲルは、比較的多量のハードセグメントを含む。組成物の全般的特性は、例えばコポリマーの混合物など、1つ以上のこのようなブロックコポリマーによっても影響を受ける。例えば、トリブロックコポリマーの存在は、形成される被膜の完全性を向上させる。ゲルはまた、本明細書に記載のように、化粧品に許容できる他の被添加成分に応じて、透明であっても、半透明または不透明であってもよい。
【0022】
ブロックコポリマーのスチレン含有量は、ブロックコポリマーの重量を基にして、30重量%未満、好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満であることが好ましい。これは、30重量%超のスチレン含有量を有するブロックコポリマーは、従来のキャリアシステムにおいて硬化/ゲル化する傾向があることによるものである。しかし、30重量%超のスチレン含有量を有するブロックコポリマーが使用される場合には、共溶媒またはスチレンブロックを溶解することができる機能性成分を、化粧用組成物中でスチレン含有エラストマーの硬化/ゲル化を制御するのに有効な量で使用する必要があるかもしれない。
【0023】
本発明での使用に特に好ましいブロックコポリマーは、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンのジブロックおよびトリブロックコポリマーの組合せであり、Shell Chemical CompanyによりKraton G1657Mの商品名で市販されている。しかし、少なくとも1つのソフトおよび少なくとも1つのハードセグメントを有するブロックコポリマータイプのいかなる熱可塑性エラストマーも本発明の趣旨から逸脱することなく使用されうることに留意すべきである。
【0024】
ブロックコポリマーは一般に、組成物の重量を基にして、0重量%超から50重量%、0重量%超から40重量%、0重量%超から30重量%、0重量%超から20重量%、0重量%超から10重量%の範囲の量で化粧用組成物中に存在する。
【0025】
粘着性付与剤
ブロックコポリマーに添加することにより生成する組成物が粘着剤の性質を有する場合に、その物質は粘着性付与剤として記載される。一般に、粘着性付与剤は、化学的性質により4種類に分類することができる:すなわち、炭化水素樹脂、テルペン、アモルファス(すなわち、非晶質の)ロジン、ロジンエステルおよびこれらの誘導体、ならびに純粋なモノマー樹脂である。これらの粘着性付与剤は、ブロックコポリマーの少なくとも1つのセグメントとの相容性により特徴付けられる。用語「相容性がある」は、ブロックコポリマーと粘着性付与剤とを混合したとき、ブロックコポリマーの少なくとも1つのセグメントと粘着性付与剤との組合せが単一のガラス転移温度Tgを有するポリマーブレンドを形成することを意味し、ここでガラス転移温度Tgは、DMA、DSCまたは中性子および光散乱により測定できる。
【0026】
ブロックコポリマーと粘着性付与剤との相容性は、溶解度パラメータにより定義することも可能である。ハンセン溶解度空間に基づく溶解度パラメータδは、出版物「Polymer Handbook」第3版、第VII章、519〜559頁のEric A. Grulkeによる論文「Solubility Parameter Values」において下記の関係式により定義され、前記論文の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
δ=(dD2 + dP2 + dH2)1/2、式中:
- dDは、分子衝突の間に誘起される双極子の形成により生じるロンドン分散力を特徴付け、
- dPは、永久双極子間のデバイ相互作用の力を特徴付け、
- dHは、特定の相互作用(水素結合、酸/塩基または供与体/受容体タイプなど)を特徴付ける。ハンセンによる3次元溶解度空間における溶媒の定義は、論文、C. M. Hansen、「The three-dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol.、39、105頁、1967年に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
本発明において使用される粘着性付与剤は、数字δに相当する溶解度パラメータを有し、かつブロックコポリマーは、溶解度パラメータがδ±2、好ましくはδ±1.7、より好ましくはδ±1.5、より好ましくはδ±1.3、より好ましくはδ±1.0、より好ましくはδ±0.7、より好ましくはδ±0.5、より好ましくはδ±0.3に相当する少なくとも1つのセグメントを有する。
【0028】
適切な粘着性付与剤の例には、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族変性脂肪族炭化水素樹脂、水添ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ガムロジン、ガムロジンエステル、ウッドロジン、ウッドロジンエステル、トールオイルロジン、トールオイルロジンエステル、ポリテルペン、芳香族変性ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性水添ポリシクロペンタジエン樹脂、水添脂肪族樹脂、水添脂肪族芳香族樹脂、水添テルペンおよび変性テルペン、水添ロジン酸、水添ロジンエステル、ポリイソプレン、部分または完全水添ポリイソプレン、部分または完全水添ポリブテンジエンなどが含まれるが、これに限定されるものではない。引用例のいくつかより明らかなように、粘着性付与剤は、完全にまたは部分的に水素添加されていてよい。粘着性付与剤はまた、非極性であってもよい。(非極性は、粘着性付与剤が実質的に、極性基を有するモノマーを含まないことを意味している。極性基は存在しないことが好ましいが、極性基が存在する場合には、約5重量%までの量、好ましくは約2重量%までの量、より好ましくは約0.5重量%までの量で、存在することが好ましい。)
【0029】
いくつかの実施形態において、粘着性付与剤は、80℃から150℃、好ましくは100℃から130℃の軟化点(Ring and Ball、ASTM E-28により測定される)を有してよい。他の実施形態において、粘着性付与剤は、液体であってよく、約-70℃と70℃の間のR and B軟化点を有してよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、粘着性付与剤は、水添スチレン/メチルスチレン/インデンコポリマー、例えば、Eastman Chemicalにより商品名Regalite(登録商標)の下に市販されているR1090、R1100、R7100、S1100、およびS5100を含むスチレン/メチルスチレン/インデンコポリマーなどの水添炭化水素樹脂である。他の実施形態においては、脂肪族または芳香族炭化水素系粘着性付与樹脂、例えばHerculesにより販売されている「Piccotac」および「Hercotac」またはExxonにより販売されている「Escorez」、もまた使用されてよい。粘着性付与剤の混合物も、本発明の趣旨から逸脱することなく使用されうることもまた理解されよう。
【0031】
本発明における使用に特に好ましい粘着性付与剤は、例えば、Eastman ChemicalによりRegalite(登録商標)R1100の商品名で市販されている、水添スチレン/メチルスチレン/インデンコポリマーなどの水添炭化水素樹脂である。
【0032】
粘着性付与剤は、本発明の組成物中に、組成物の重量を基にして、0重量%超から90重量%、0重量%超から70重量%、0重量%超から60重量%、0重量%超から50重量%、0重量%超から40重量%、0重量%超から30重量%、特に0重量%超から20重量%の範囲の量で存在する。
【0033】
溶媒
本発明において使用されてよいブロックコポリマーのソフトセグメントを溶解することができる溶媒は、典型的に、その室温における粘度、重量平均分子量およびブロックコポリマーの少なくとも1つのソフトセグメントに関する溶解度パラメータにより特徴付けられる。
【0034】
ブロックコポリマーのソフトセグメントを溶解することができる溶媒は、室温で1から50cps、好ましくは1から40cps、より好ましくは1から30cps、より好ましくは2から20cps、より好ましくは2から10cpsの粘度を有することになる。
【0035】
本発明において使用されるブロックコポリマーのソフトセグメントを溶解することができる溶媒は、数字δ'に相当する溶解度パラメータを有することになり、かつブロックコポリマーは、δ'±2、好ましくはδ'±1.7、より好ましくはδ'±1.5、より好ましくはδ'±1.3、より好ましくはδ'±1.0、より好ましくはδ'±0.7、より好ましくはδ'±0.5、より好ましくはδ'±0.3に相当する溶解度パラメータをもつ少なくとも1つのソフトセグメントを有することになる。
【0036】
ブロックコポリマーのソフトセグメントを溶解することができる溶媒は、典型的には揮発性溶媒および不揮発性溶媒から選択されてよい。表現「揮発性溶媒」は、適用された支持体から室温で蒸発することができる溶媒、すなわち室温で測定可能な蒸気圧を有する溶媒を意味する。米国特許第6656458号を参照のこと、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
適切な揮発性有機溶媒の典型的な例には揮発性炭化水素系油が含まれるが、これに限定されるものではない。表現「炭化水素系油」は、水素および炭素原子のみを含む油を意味する。揮発性炭化水素系油の例にはイソパラフィン、すなわち8から16個の炭素原子を含む、分枝状アルカン、特にイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルへプタンとしても知られる)が含まれる。このようなイソパラフィンの混合物を使用することも可能である。石油蒸留物など、他の揮発性炭化水素系油もまた使用してよい。
【0038】
使用することができる適切な不揮発性溶媒は、150から450、好ましくは200から350の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する不揮発性溶媒である。その例には、水添ポリデセン、水添ポリイソブテン、イソエイコサン、ポリデセンおよびポリブテンが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0039】
ブロックコポリマーのソフトセグメントを溶解することができる溶媒は、典型的には本発明の組成物中に、組成物の重量を基にして、85重量%まで、0重量%超から75重量%、0重量%超から55重量%、0重量%超から45重量%、0重量%超から40重量%、0重量%超から30重量%、0重量%超から20重量%、0重量%超から10重量%、0重量%超から5重量%の量で存在してよい。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態によれば、この溶媒は、ブロックコポリマーのハードセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒と混合されてもよい。
【0041】
本発明において使用されてよいブロックコポリマーのハードセグメントを溶解することができる溶媒は、典型的に、その室温における粘度、重量平均分子量およびブロックコポリマーの少なくとも1つのハードセグメントに関する溶解度パラメータにより特徴付けられる。
【0042】
ブロックコポリマーのハードセグメントを溶解することができる溶媒は、室温で1から200cps、好ましくは1から150cps、より好ましくは1から100cps、より好ましくは2から60cps、より好ましくは2から40cpsの粘度を有することになる。
【0043】
本発明において使用されるブロックコポリマーのハードセグメントを溶解することができる溶媒は、数字δ'に相当する溶解度パラメータを有することになり、かつブロックコポリマーは、δ'±2、好ましくはδ'±1.7、より好ましくはδ'±1.5、より好ましくはδ'±1.3、より好ましくはδ'±1.0、より好ましくはδ'±0.7、より好ましくはδ'±0.5、より好ましくはδ'±0.3に相当する溶解度パラメータをもつ少なくとも1つのハードセグメントを有することになる。
【0044】
本発明において使用されてよいブロックコポリマーのハードセグメントを溶解することができる不揮発性溶媒には、モノエステル、ジエステル、トリエステル、混合脂肪族および/または芳香族の極性油、例えば:ペルヒドロスクワレンなどの動物由来の炭化水素系油、例えば、脂肪酸が、直鎖または分枝状、かつ飽和または不飽和である鎖の種々の鎖長を有してよい脂肪酸およびグリセロールの液状トリグリセリドなどの、炭化水素系の植物油で、これらの油は、例えば、小麦胚芽油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、マロー油、ブドウ種子油、ブラックカラント種子油、ゴマ油、へーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油、アボカド油、カリテバター、スイートアーモンド油、綿実油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、イブニングプリムローズ油、ミレット油、オオムギ油、キノア油、オリーブ油、ライ麦油、サフラワー油、キャンドルナッツ油、パッションフラワー油、ムスクローズ油ならびにStearineries Dubois社により販売されているものまたはMiglyol 818、812および818の名称でDynamit Nobel社により販売されているものなどのカプリル/カプリン酸トリグリセリドから選択されてよい;パーセリンオイル(オクタン酸セトステアリル)、ミリスチン酸イソプロピルおよびオクタン酸、デカン酸またはリシノレイン酸アルキルまたはポリアルキルなど、式中R1が7から19個の炭素原子を含む高級脂肪酸残基を表しかつR2が3から20個の炭素原子を含む分枝状炭化水素系鎖を表す式R1COOR2の天然または合成エステル;式中R3がC3からC19のアルキル基でありかつR4がC3からC20アルキル基である式R3COR4の合成エーテル;オクチルドデカノールまたはオレイルアルコールなど、少なくとも12個の炭素原子を含む脂肪アルコール;アルキル基が、直鎖または分枝状、飽和または不飽和で1から30個の炭素原子を含む、例えばシクロヘキサンまたはジオクチルシクロヘキサンなどである、(アルキル)シクロアルカンなどの環状炭化水素;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、2,4-ジメエチル-3-シクロヘキサン。ジペンテン、p-シメン、ナフタレンまたはアントラセン、および安息香酸イソステアリルなどのエステル;トリエタノールアミンなどの第1級、第2級または第3級アミン;ならびにこれらの混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。一実施形態においては、ミリスチン酸イソプロピルなどの合成エステルが使用されている。
【0045】
好ましいエステルは、100から600、好ましくは100から500の範囲の重量平均分子量(Mw)を有するエステルである。その例には、C12〜C15安息香酸アルキル、ミリスチン酸イソプロピル(Mw=270)、パルミチン酸イソプロピル(Mw=300)、イソノナン酸イソノニル、エチルへキサン酸セチル(Mw=368)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(Mw=356)、セバシン酸ジイソプロピル(Mw=286)が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0046】
ブロックコポリマーのハードセグメントを溶解することができる溶媒は、典型的には、本発明の組成物中に、組成物の重量を基にして、85重量%まで、0重量%超から75重量%、0重量%超から55重量%、0重量%超から45重量%、0重量%超から40重量%、0重量%超から30重量%、0重量%超から20重量%、0重量%超から10重量%、0重量%超から5重量%の量で存在してよい。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態によれば、唇に適用している間のリップトリートメント組成物の流動性および平滑性、並びに唇上における感触及び心地よさを改善するために、高分子量かつ高粘度を有する少なくとも1つの共溶媒を使用してもよい。
【0048】
ブロックコポリマーのハードセグメントと相容性のある適切な高粘度共溶媒の例にはカプリル/カプリン酸トリグリセリド(Mw=500)、ジリノール酸ジイソプロピルダイマー(Mw=644)、フマル酸ジイソステアリル(Mw=620)、マレイン酸ジイソステアリル(Mw=640)、テトラオレイン酸ペンタエリスリチル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸およびトリカプリル酸/トリカプリン酸ジエチルヘキシルが含まれるが、これに限定されるものではない。これらの共溶媒の重量平均分子量は、好ましくは500から1000、より好ましくは500から800である。
【0049】
ブロックコポリマーのソフトセグメントと相容性のある適切な高粘度共溶媒の例にはポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、水添ポリブテン、ポリデセンおよび水添ポリデセンが含まれるが、これに限定されるものではない。これらの共溶媒の重量平均分子量は、好ましくは2,500から100,000、より好ましくは3,000から10,000である。
【0050】
これらの共溶媒は、本発明の組成物中に、組成物の重量を基にして、50重量%まで、0重量%超から40重量%、0重量%超から30重量%、0重量%超から25重量%の量で使用されてよい。
【0051】
本発明のまた別の実施形態によれば、ソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒のホモポリマーと同様のタイプではあるが重量平均分子量が2000超である少なくとも1つのホモポリマーの使用は、リップトリートメント組成物の皮膚への粘着性を改善し、それにより色移りを抑制することが見出されている。
【0052】
適切なホモポリマーの例にはポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、水添ポリブテン、ポリデセンおよび水添ポリデセンが含まれるが、これに限定されるものではない。これらのホモポリマーの重量平均分子量は、好ましくは2,500から100,000、より好ましくは3,000から10,000である。
【0053】
ホモポリマーは、本発明の組成物中に、組成物の重量を基にして、0重量%超から30重量%、0重量%超から25重量%、0重量%超から20重量%、0重量%超から18重量%、0重量%超から15重量%の量で存在してよい。
【0054】
ソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒、およびソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの共溶媒、並びに少なくとも1のホモポリマーを、任意選択で、ハードセグメントと相容性のある少なくとも1つの溶媒、ハードセグメントと相容性のある少なくとも1つの共溶媒のうちの1つまたは複数との組合せで使用する場合には、混合物は20から5000cps、好ましくは20から2000cps、より好ましくは20から1500cpsの粘度を有することになる。混合物の粘度は、下記の式を用いて決定され:
【0055】
【数1】

【0056】
式中、ηmixは混合物の粘度を表し、ηiは個々の成分の粘度を表し、φiは個々の成分の重量分率を表す。
【0057】
着色剤
本発明の組成物は、顔料または染料などの化粧品に許容できる少なくとも1つの着色剤をもまた含んでよい。適切な着色剤の例には無機顔料、有機顔料、レーキ、真珠光沢顔料、虹色または偏光顔料、およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。顔料は、無機または有機の、白色または有色の粒子を意味するものと理解されるべきである。前記顔料は、任意選択で、本発明の範囲内で表面処理を受けていてもよいが、シリコーン、パーフルオロ化化合物、レシチン、およびアミノ酸などによる処理に限定されるものではない。
【0058】
本発明において有用な無機顔料の典型的な例には、Color Indexに参照番号CI 77,891としてコードされているルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン; 参照番号CI 77,499、CI 77,492およびCI 77,491でコードされている黒、黄、赤および茶酸化鉄;マンガンバイオレット(CI 77,742)、グンジョウ(CI 77,007)、酸化クロム(CI 77,288)、水和クロム(CI 77,289)、およびコンジョウ(CI 77,510)、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される無機顔料が含まれる。
【0059】
本発明において有用な有機顔料およびレーキの典型的な例には、D&C Red No. 19 (CI 45,170)、D&C Red No. 9 (CI 15,585)、D&C Red No. 21 (CI 45,380)、D&C Orange No. 4 (CI 15,510)、D&C Orange No. 5 (CI 45,370)、D&C Red No. 27 (CI 45,410)、D&C Red No. 13 (CI 15,630)、D&C Red No. 7 (CI 15,850)、D&C Red No. 6 (CI 15,850)、D&C Yellow No. 5 (CI 19,140)、D&C Red No. 36 (CI 12,085)、D&C Orange No. 10 (CI 45,425)、D&C Yellow No. 6 (CI 15,985)、D&C Red No. 30 (CI 73,360)、D&C Red No. 3 (CI 45,430)およびコチニールカルミン(CI 75,570)系の染料およびレーキ、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0060】
本発明において有用な真珠光沢顔料の典型的な例には、白色真珠光沢顔料、例えば酸化チタンで被覆したマイカ、二酸化チタン、オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化チタンで被覆したマイカ;有色真珠光沢顔料、例えば酸化鉄で被覆したチタンマイカ、コンジョウ、酸化クロムで被覆したチタンマイカなど;前述のタイプの有機顔料で被覆したチタンマイカならびにオキシ塩化ビスマス系の真珠光沢顔料、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される真珠光沢顔料が含まれる。
【0061】
本発明の組成物において使用される着色剤の精密な量およびタイプは、化粧用組成物の色、強度および用途に依存し、その結果として、化粧品処方の当業者により決定されることになる。
【0062】
光沢向上剤
光沢/つや特性の向上された化粧用組成物を提供することが時として望ましいことがある。そのような場合においては、組成物において少なくとも1つの光沢向上剤を使用することになる。
【0063】
適切な光沢向上剤の例には、1.45から1.60の範囲の屈折率、および15,000未満、好ましくは10,000未満、好ましくは2,000未満の重量平均数分子量を有する化合物が含まれる。これらの例には、Goldschmidtにより商品名「Abil AV 8853」として市販されているもの、Dow Corningにより商品名「DC 554」、「DC 555」、「DC 556」、「SF 558」として市販されているもの、およびRhone-Poulencにより商品名「Silbione 70633 V 30」として市販されているものなどのフェニル化シリコーンが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0064】
適切なフェニル化シリコーンの追加的な例には、25℃での粘度が約20cStのフェニル化シリコーンであるBelsil PDM 20、25℃での粘度が約200cStのフェニル化シリコーンであるBelsil PDM 200、25℃での粘度が約1000cStのフェニル化シリコーンであるBelsil PDM 1000など、Wacker Siliconesにより市販されているものが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0065】
適切な光沢向上剤の追加的な例には、ポリシクロペンタジエン、ポリ(プロピレングリコール)ジベンゾエート(nD=1.5345)、アミノプロピルフェニルトリメチコン(nD=1.49〜1.51)、ExxonMobilよりPuresyn 4E68 (nD=1.473)として市販されているテトラオイン酸ペンタエリスリチル、およびCroda Inc.よりCrodamol STS (nD=1.4696)として市販されているミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテルが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0066】
特に好ましい光沢向上剤は、フェニルトリメチコン、およびトリメチルペンタフェニルトリシロキサンなどのフェニル化シリコーン、およびテトラオイン酸ペンタエリスリチルなどのエステル、およびミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテルである。
【0067】
光沢向上剤は、本発明の組成物中に、組成物の重量を基にして、40重量%まで、30重量%まで、20重量%まで、1重量%から20重量%、2重量%から20重量%の量で存在してよい。
【0068】
変性シリコーン
本発明の化粧用組成物は、感触および快適性を向上させるために、少なくとも1つの変性シリコーンを含んでよい。適切な変性シリコーンの例には、ポリエチレンオキシおよび/またはポリプロピレンオキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、ヒドロキシアルキル変性シリコーン、アシルオキシアルキル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、クロロアルキル変性シリコーン、アルキル-高級アルコール-エステル-変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、アルキルポリグリセリル変性シリコーン、パーフルオロアルキルポリエーテル共変性シリコーンおよびフッ素変性シリコーンが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0069】
変性シリコーンは、本発明の組成物中に、組成物の重量を基にして、30重量%まで、25重量%まで、20重量%まで、10重量%まで、8重量%までの量で存在してよい。
【0070】
ワックス
いくつかの実施形態においては、ワックスを含まない本発明の化粧用組成物が望ましいかもしれない。しかし、ワックスが使用される場合には、ワックスは、組成物の全重量を基にして、約0.1重量%から約30重量%までの量で存在してよい。適切なワックスは、一般に化粧品および皮膚科学において使用されるワックスである。それらの例には、ミツロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウ、オーリキュリーワックス、モクロウ、コルクファイバーワックス、サトウキビワックス、パラフィンワックス、リグナイトワックス、マイクロクリスタリンワックス、ラノリンワックス、モンタンロウ、オゾケライトおよび水添ホホバ油などの水添油が含まれるが、これに限定されるものではない。適切な合成ワックスの例には、エチレンの重合により誘導されるポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュ合成により得られるワックス、40℃、例えば55℃超で固体である脂肪酸エステルおよびグリセリド、40℃、例えば55℃超で固体であるアルキルおよびアルコキシポリ(ジ)メチルシロキサンおよび/またはポリ(ジ)メチルシロキサンエステルなどのシリコーンワックスが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0071】
ゲル化剤
本発明の組成物はまた、任意選択で、油相ゲル化剤によりゲル化されてもよい。ゲル化剤は、液体脂肪相の粘度を増加させ、前記脂肪相に導入すると堅固なまたは流動性のある組成物をもたらす。ゲル化剤はロウ質ではないという意味から、ワックスを含まない。少なくとも1つのゲル化剤は、ポリマー型のゲル化剤およびミネラル型のゲル化剤から選択されてよい。ゲル化剤は、ポリマー型のゲル化剤およびミネラル型のゲル化剤から選択されてよい。ゲル化剤は、化学的細網化によりゲル化するゲル化剤および物理的細網化によりゲル化するゲル化剤から選択されてよい。
【0072】
変性クレイはゲル化剤として使用されてよく、その例には、クオタニウム-18ベントナイトとしても周知の、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムで変性されたヘクトライトなどのC10〜C22脂肪酸の塩化アンモニウムにより変性されたヘクトライト、例えば、Rheox社によりBentone 34の名称で販売されている製品、Southern Clay社により販売または製造されているClaytone XL、Claytone 34およびClaytone 40;クオタニウム-18ベンザルコニウムベントナイトの名称で周知であり、Southern Clay社によりClaytone HT、Claytone GRおよびClaytone PSの名称で販売または製造されている変性クレイ;ステアルコニウムベントナイトとして周知の、ステアルジメチルベンゾイルアンモミウムクロライドにより変性されたクレイ、例えばSouthern Clay社によりClaytone APAおよびClaytone AFの名称で販売または製造されている製品、ならびにRheox社により販売または製造されているBaragel 24、が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0073】
本発明に使用されてよい他の鉱物ゲル化剤には、フュームドシリカなどのシリカが含まれる。フュームドシリカはナノオーダーからマイクロオーダー、例えば5nmから200nmの粒子サイズを有してよい。
【0074】
フュームドシリカは、揮発性シリコン化合物を水素酸酸素炎中で高温加水分解することにより得られてよく、微粉化シリカが生成する。この工程により、表面に多数のシラノール基を有する親水性シリカを得ることができる。このような親水性シリカは例えば、「Aerosil 130(登録商標)」、「Aerosil 200(登録商標)」、「Aerosil 255(登録商標)」、「Aerosil 300(登録商標)」および「Aerosil 380(登録商標)」および「Aerosil R974(登録商標)」の名称でDegussa社により、また「CAB-O-SIL HS-5(登録商標)」、「CAB-O-SIL EH-5(登録商標)」、「CAB-O-SIL LM-130(登録商標)」、「CAB-O-SIL MS-55(登録商標)」および「CAB-O-SIL M-5(登録商標)」の名称でCabot社により販売または製造されている。
【0075】
このように、化学反応によって親水性シリカの表面を化学的に変性し、シラノール基の数の減少をもたらすことが可能である。シラノール基は、例えば、疎水基によって置換され、これにより次いで疎水性シリカが得られる。疎水基は下記のものであってよい:特にフュームドシリカをヘキサメチルジシラザンの存在下で処理する事によって得られるトリメチルシロキシル基。このように処理されたシリカは、CTFA dictionaryによれば「silica silylate」として周知である。silica silylateは、例えば「Aerosil R812(登録商標)」の参照名でDegussa社により、また「CAB-O-SIL TS-530(登録商標)」の参照名でCabot社により販売または製造されている;特にフュームドシリカをポリジメチルシロキシサンまたはジチルジクロロシランの存在下で処理する事によって得られるジメチルシロキシルまたはポリジメチルシロキシサン基。このように処理されたシリカは、CTFA dictionaryによれば「silica dimethyl silylate」として周知である。silica dimethyl silylateは、例えば、「Aerosil R972(登録商標)」および「Aerosil R974(登録商標)」の参照名でDegussa社により、また「CAB-O-SIL TS-610(登録商標)」および「CAB-O-SIL TS-720(登録商標)」の参照名でCabot社により販売または製造されている;フュームドシリカをシランアルコキシドまたはシロキサンと反応させることにより誘導される基。これらの処理をしたシリカは、例えば、「Aerosil R805(登録商標)」の参照名でDegussa社により販売または製造されている。
【0076】
本発明によれば、フュームドシリカなどの疎水性シリカは、親水性ゲル化剤として使用されてよい。フュームドシリカの使用は、特にスティック形態において、ワックス、フィラーおよび顔料(真珠光沢顔料を含む)の非存在下において発汗しない半透明またはさらに透明な組成物を得ることを可能にする。
【0077】
少なくとも1つの親油性ゲル化剤により組成物の発汗を抑制し、安定性を増大し、その一方で、同時に組成物のつやのある外観を維持することが可能になる。このことは、化粧品および皮膚科学において従来使用されているようなワックスでは不可能である。
【0078】
少なくとも1つのゲル化剤は、使用する場合には、典型的に、組成物の重量を基にして、0.1重量%から20重量%、好ましくは0.1重量%から15重量%、より好ましくは0.1重量%から10重量%の量で存在してよい。
【0079】
添加剤/助剤
本発明の組成物は、化粧品または皮膚科学的に許容できる少なくとも1つの添加剤、例えば、増粘剤、皮膜形成剤、可塑剤、酸化防止剤、精油、防腐剤、香料、フィラー、ペースト状脂肪物質、ワックス状脂肪物質、中和剤、およびポリマー、ならびに、例えばエモリエント剤、保湿剤、ビタミン、必須脂肪酸および薬剤などの化粧品用活性物質および/または皮膚科学的活性物質、をさらに含んでよい。
【0080】
本発明のリップトリートメント組成物において、可塑剤の使用は必要ではないとはいえ、可塑剤の使用は望ましいかもしれない。可塑剤は、工程を促進し、ポリマー分子の内部的変性により最終製品の弾力性および堅牢性を増大するために高分子に加える有機化合物である。適切な可塑剤の例には、油、セルロースエステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸トリクレシル、ヒマシ油、グリコールエステル、ベンジルアルコール、クエン酸トリエチル、および炭酸プロピレンが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0081】
特に好ましい可塑剤には、パルミチン酸イソプロピルおよび安息香酸アルキルが含まれる。可塑剤は、使用される場合には、典型的に、組成物の重量を基にして、1重量%から70重量%、好ましくは2重量%から50重量%、より好ましくは5重量%から20重量%の量で存在してよい。
【0082】
防腐剤の典型的な例には、アルキル基が1、2、3、4、5または6個、好ましくは1から4個の炭素原子を有するパラヒドロキシ安息香酸アルキル、例えばパラヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、パラヒドロキシ安息香酸エチル(エチルパラベン)、パラヒドロキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン)、パラヒドロキシ安息香酸ブチル(ブチルパラベン)およびパラヒドロキシ安息香酸イソブチル(イソブチルパラベン)が含まれる。防腐剤の混合物、例えばNipaによりNipastatの名称で販売されているメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンおよびブチルパラベンの混合物、同様にNipaによりPhenonipの名称で販売されているフェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンおよびブチルパラベンの混合物も確かに使用されてよい。これらの防腐剤は、組成物の重量を基にして、約0.01重量%から約10重量%、好ましくは0.5重量%から約5重量%、より好ましくは約0.8重量%から約3重量%の量で存在してよい。
【0083】
本発明の組成物において使用されてよいフィラーには、例えばシリカパウダー;タルク;ポリアミド粒子、特にAtochem社によりOrgasolの名称で販売されているポリアミド粒子; ポリエチレンパウダー;アクリル酸コポリマーベースのマイクロスフィア、例えばDow CorningによりPolytrapの名称で販売されているエチレングリコールジメタクリレート/ラウリルメタクリレートコポリマーをベースとするものなど;中空マイクロスフィアなどの発泡パウダー、特にKemanord Plast社によりExpancelの名称でまたはMatsumoto社によりMicropearl F 80 EDの名称で販売されているマイクロスフィア;架橋または非架橋のコーンスターチ、小麦スターチ、ライスススターチなどの天然有機物質のパウダー、例えばNational Starch社によりDry-Floの名称で販売されている、オクテニルコハク酸無水物と架橋したスターチのパウダー;Toshiba Silicone社によりTospearlの名称で販売されているものなどのシリコーン樹脂マイクロビーズ;クレイ(ベントナイト、ラポナイト、サポナイトなど)ならびにこれらの混合物が含まれる。これらのフィラーは、組成物の重量を基にして、約0.1から約50重量%、好ましくは0.5から約30重量%、より好ましくは約1から約20重量%の範囲の量で存在してよい。
【0084】
本発明の組成物は、安全かつ効果的な量の少なくとも1つの活性成分または薬学的に許容できるその塩をさらに含んでよい。本明細書において使用される用語「安全かつ効果的な量」は、手入れをするときの状態を改善するため、あるいは皮膚に対する所望の効果を供与するために十分な量であって、同時にその一方で適正な医学的判断の範囲内における妥当なリスク対効果比で重篤な副作用を回避する量を意味する。活性成分の安全かつ効果的な量がどの程度であるのかは、特定の活性成分、活性成分の経皮浸透性、使用者の年齢、健康状態および皮膚の状態および他の同様な因子により変化するであろう。典型的には、活性成分は、組成物の重量を基にして、約0.01から約20重量%、好ましくは0.1から約10重量%、より好ましくは約0.5から約5重量%の量で存在してよい。
【0085】
本発明において有用な活性成分は、その治療的効果または想定される作用機構によって分類することができる。しかし、本発明において有用な活性成分がいくつかの例において、1つ以上の治療的効果を提供したりあるいは1つ以上の作用機構で機能する可能性があることが理解されよう。したがって、本明細書における分類は便宜上なされるものであり、活性成分の特定の適用または列挙した適用に限定するよう意図されたものではない。同様に、これらの活性成分の皮膚科学的に許容できる塩も本発明において有用である。下記の活性成分は、本発明の組成物において有用である。
【0086】
抗アクネ活性成分:有用な抗アクネ活性成分の例には、サリチル酸(o-ヒドロキシ安息香酸)、5-オクタノールサリチル酸などのサリチル酸の誘導体、およびレソルシノールなどの角質溶解薬;レチノイン酸およびその誘導体(例えば、シスおよびトランス)などのレチノイド;DおよびLアミノ酸を含むイオウおよびその誘導体および塩、特にN-アセチル誘導体、その好ましい例は、N-アセチル-L-システインである;リポ酸;ベンゾイルペルオキサイド、オクトピロックス、テトラサイクリン、2,4,4',-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4'-トリクロロバニリド、アゼライン酸およびその誘導体、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシイソプロパノール、酢酸エチル、クリンダマイシンおよびメクロサイクリン;フラボノイドなどの皮脂抑制薬;ならびに硫酸スキムノールおよびその誘導体、デオキシコレートおよびコレートなどの胆汁酸が含まれる。
【0087】
抗菌および抗黴活性成分: 抗菌および抗黴活性成分の例には、ベータラクタム薬、キノロン薬、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、アミカシン、2,4,4',-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4'-トリクロロバニリド、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシイソプロパノール、ドキシサイクリン、カプレオマイシン、クロルヘキシジン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クリンダマイシン、エタンブトール、ヘキサミジンイセチオネート、メトロニダゾール、ペンタミジン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リネオマイシン、メタサイクリン、メテナミン、ミノサイクリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ミコナゾール、塩酸テトラサイクリン、エリスロマイシン、エリスロマイシン亜鉛、エリスロマイシンエストレート、ステアリン酸エリスロマイシン、硫酸アミカシン、塩酸ドキシサイクリン、硫酸カプレオマイシン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩酸クロロテトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸クリンダマイシン、塩酸エタムブトール、塩酸メトロニダゾール、塩酸ペンタミジン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸カナマイシン、塩酸リネオマイシン、塩酸メタサイクリン、ヒプル酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、塩酸ミノサイクリン、硫酸ネオマイシン、硫酸ネチルミシン、硫酸パロモミシン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸トブラマイシン、塩酸ミコナゾール、塩酸アマンタジン、硫酸アマンタジン、オクトピロックス、パラクロロメタキシレノール、ナイスタチン、トルナフテートおよびクロトリマゾールが含まれる。
【0088】
本発明の化粧用組成物は、実際に有害な紫外線照射を吸収する化学的吸収剤であるサンスクリーン剤をも含んでよい。化学的吸収剤は、それが防御する対象の照射の種類により、UV-A吸収剤またはUV-B吸収剤のいずれかに分類される。UV-A吸収剤は、一般に紫外スペクトルの320から400nmの領域にある照射を吸収する。UV-A吸収剤には、アントラニレート、ベンゾフェノン、およびジベンゾイルメタンが含まれる。UV-B吸収剤は、一般に紫外スペクトルの280から320nmの領域にある照射を吸収する。UV-B吸収剤には、p-アミノ安息香酸誘導体、カンファー誘導体、ケイ皮酸誘導体およびサリチル酸誘導体が含まれる。
【0089】
本発明において有用なサンスクリーン剤は、典型的に化学的吸収剤を含むが、物理的遮蔽剤をまた含んでもよい。本発明の組成物に配合してよい典型的なサンスクリーン剤は、p-アミノ安息香酸誘導体、アントラニレート、ベンゾフェノン、カンファー誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン(Parsol(登録商標)1789としても周知のアボベンゾンなど)、ジフェニルアクリル酸誘導体、サリチル酸誘導体、トリアジン誘導体、ベンズイミダゾール化合物、ビス-ベンザゾリル誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物、サンスクリーンポリマーおよびシリコーン、またはこれらの混合物などの化学的吸収剤である。本発明の組成物に配合してよい典型的なサンスクリーン剤はまた、酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化鉄、赤色ワセリン、シリコーン処理二酸化チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、および/または酸化ジルコニウムまたはこれらの混合物などの物理的遮蔽剤である。
【0090】
適切なサンスクリーン剤の例には、アミノ安息香酸、アミルジメチルPABA、シノキセート、ジエタノールアミン、p-メトキシケイ皮酸、トリオレイン酸ジガロイル、ジオキシベンゾン、p-メトキシケイ皮酸2-エトキシエチエル、エチル4-ビス(ヒドロキシプロピル)アミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、p-メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸2-エチルヘキシル、アミノ安息香酸グリセリル、サリチル酸ホモメンチル、ホモサレート、3-イミダゾール-4-イルアクリル酸およびエチルエステル、メチルアントラニレート、オクチルジメチルPABA、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸およびその塩、赤色ワセリン、スルイソベンゾン、二酸化チタン、サリチル酸トリエタノールアミン、N,N,N-トリメチル-4-(2-オキソボルン-3-イリデンメチル)アニリニウムメチルサルフェート、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0091】
本発明のリップトリートメント組成物は、任意選択でケアまたはトリートメント特性を有するリップスティック、リップグロスまたはリップペンシルの形態であってよい。
【0092】
レオロジー
本発明の組成物のレオロジー的特性は、TA InstrumentsよりAR-G2の名称で市販されているストレス制御式レオメータを用いて測定される。試料を、ステンレススチール製、クロスハッチ付きの直径40mmのプレートを備えたパラレルプレートを用いて測定する。ギャップは1,000ミクロンに設定する。Peltierシステムにより正確に所望の温度に調整する。
【0093】
リップグロスの試料をレオメータに移し、約10分間で35℃に加温する。次いで試料を冷却し、約10分間以上、25℃に維持する。
【0094】
線形粘弾性領域を、1rad/sの一定周波数において、1mN.mから100mN.mの範囲内で振動ストレススイープモードにより決定する。前記線形粘弾性領域は、上記範囲内で加えた振動ストレスにおいて貯蔵弾性率G'が一定またはほぼ一定であるとき、貯蔵弾性率G'に相当する。
【0095】
次いで線形粘弾性領域において、低振動ストレスで100rad/sから0.01rad/sで周波数スイープ実験を行なう。0.01rad/sの周波数ωにおける貯蔵弾性率G'を周波数スイープモードから決定する。
【0096】
0.01rad/sの周波数ωにおける貯蔵弾性率G'の値が低ければ低いほど、リップグロス組成物の濡れ性は良好であり、クリープ抵抗は小さい。
【0097】
線形粘弾性領域において、本発明の組成物の、0.01rad/sの周波数ωにおける貯蔵弾性率G'は、25℃で約0.01Paから500Paの範囲である。
【0098】
動的振動実験の終了後に、同一の試料を25℃の定温で平衡化する。次いで0.8Paの一定ストレスで、クリープおよび回復測定を行なう。
【0099】
一定ストレス(σ)0.8Paにおいて測定した、リップグロス組成物のクリープ粘度(ηcreep)をクリープ歪(γcreep)および回復可能歪(γrecovery)から決定する。ここで、クリープ歪継続時間(tcreep)は10分であり、回復可能歪継続時間(trecovery)は30分である。クリープ粘度は下記の式により算出する:
【0100】
【数2】

【0101】
10分のクリープ時間(剪断速度ほぼゼロ)での、低ストレスにおける高クリープ粘度値(ηcreep)は、組成物のより長い持ちを提供する。したがって、低ストレスにおける高クリープ粘度値(ηcreep)を有する唇用組成物は、静止時にその構造、したがってその安定性を維持し、色移りの発生が少なく、かつ持続性の光沢を提供することになる。
【0102】
一定ストレス(σ)0.8Paにおける、本発明の組成物のクリープ粘度(ηcreep)は、25℃で2Pa.sから150,000Pa.sの範囲である。
【0103】
メークアップの方法
トップコート組成物
前述のように、本発明の組成物は有利には、本発明の請求項に記載のメークアップ方法においてトップコートとして使用されてよい。
【0104】
この組成物は、先に定義した通りである。
【0105】
さらに、例えば唇など、トップコート組成物が適用されるケラチン性基質におけるトップコート組成物の快適性を向上させることは、好ましいかもしれない。このことは、短鎖エステルを使用することにより実現することができる。
【0106】
本発明によれば、エステルはモノエステルでも、ジエステルでもポリエステルでもよい。これらのエステルは、直鎖、分枝状または環状、飽和または不飽和であってよい。これらのエステルは、好ましくは分枝状で飽和であるべきである。これらのエステルは、また脂肪族または芳香族であってもよい。
【0107】
これらのエステルは、6から25個の炭素原子、特に14から22個の炭素原子を有してよい。これらのエステルは、2から18個の炭素原子を有する酸エステル、エステルが揮発性でなく皮膚に浸透するように炭素原子数が10超であることを条件として、特に2から20個の炭素原子を有するアルコールエステル、または2から8個の炭素原子を有するポリオールまたはこれらの混合物から選択されてよい。
【0108】
特に、これらのエステルは下記の式RCOOR'に相当する炭化水素系エステルであり、エステルが揮発性でなく皮膚に浸透するように炭素原子数が10を超えないことを条件として式中Rは1から29個の炭素原子を含む脂肪酸残基を表し、かつR'は2から30個の炭素原子を含む炭化水素系鎖を表す。
【0109】
エステルは、下記を含む非限定的リストから選択されてよい:
ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸オクチルドデシルなどのネオペンタン酸エステル、
イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソステアリル、イソノナン酸エチルヘキシルなどのイソノナン酸エステル、
ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸またはイソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピルなどのイソプロピルアルコールエステル、
オクタン酸セチル、オクタン酸トリデシルなどのオクタン酸、デカン酸またはリシノレイン酸アルキルまたはポリアルキル、
ジヘプタン酸ポリエチレングリコール、ヘキサノエート-2-ジエチルプロピレングリコールおよびこれらの混合物などのポリアルキレングリコールエステル、
安息香酸アルキル、特に12から15個の炭素原子を有する安息香酸アルキル、
乳酸イソステアリルおよびリンゴ酸ジイソステアリルなどのヒドロキシル化エステル、
ペンタエリスリトールエステル。
【0110】
短鎖エステルの例にはまた、パーセリン油(オクタン酸セトステアリル)、エチルへキサン酸エチルヘキシル、ジカプリルエステル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-エチルおよびイソステアリン酸イソステアリルが含まれる。
【0111】
イソノナン酸イソノニルおよびリンゴ酸ジイソステアリルは特に本発明の実施形態に適している。
【0112】
短鎖エステルは、トップコート組成物中に、トップコートの重量を基にして、約15重量%間で、好ましくは約10重量%までの量で使用されてよい。過剰量の短鎖エステルの使用は、トップコートがベースコートと非常によく適合する要因となる化粧用製品システムの非色移り特性に対して有害な影響を及ぼすことになる。
【0113】
ベースコート組成物
本明細書で使用される「皮膜形成剤」または「皮膜形成薬剤」は、少なくとも1つの溶媒(例えば水および有機溶媒など)に溶解した後、例えば少なくとも1つの溶媒が蒸発した時点でそれが適用された基質上に皮膜を残し、基質において浸透かつ/または消散するポリマーを意味する。
【0114】
本明細書で使用される「色移り耐性」は、例えば飲食をするときに、他の物質、例えば、グラス、衣類または皮膚など、との接触によって容易に取り除かれることがない組成物が発揮する特性を指す。色移り耐性は、当該特性を評価するために当技術分野で周知のいかなる方法によって評価してもよい。例えば、組成物の色移り耐性は、「キス」テストにより評価してよい。「キス」テストは、組成物をヒトの唇に適用し、それに続いて、例えば適用後2分間程度の一定の時間経過後に、例えば一枚の紙などの物質にキスする、というものであってよい。同様に、組成物の色移り耐性は、適用に続く一定の時間経過の後に、例えば適用者の首から衿への色移りなど、適用部位から他のいずれかの基質に色移りした製品の量によって評価してもよい。基質(例えば、衿または紙)に色移りした組成物の量を、次いで評価し、比較する。例えば、製品の大部分が適用部位、例えば唇、首など、に残存している場合、組成物は色移り耐性である可能性がある。さらに、色移りした量を、市販の組成物などの他の組成物から色移りした量と比較してもよい。本発明の好ましい一実施形態において、組成物は、ほとんどまたは全く基質に色移りしていない。
【0115】
本明細書で使用される「長時間持続性の」組成物は、例えば1時間、2時間、さらには8時間といったような長時間経過後に、均一性、感触および色から選択される少なくとも1つの特性が、肉眼で見て、適用時と同等に維持されている組成物を指す。長時間持続性は、当該特性を評価するために当技術分野で周知の任意の方法で評価してもよい。例えば、長時間持続は、組成物をヒトの皮膚(唇を含む)に適用すること、および長時間後の組成物の均一性、感触および色を評価することを含む試験によって評価してもよい。例えば、唇用組成物の均一性、感触および色を、適用後直ちに評価し、次いでこれらの特性を、適用者が唇用組成物を一定時間着けていた後に再度評価し、比較することができる。さらに、これらの特性を市販の組成物などの他の組成物の特性に対して評価することができる。
【0116】
本明細書で使用される「耐水性」は、水をはじき、水に対して不変である力を指す。耐水性は、当該特性を評価するために当技術分野で周知のいかなる方法によって評価してもよい。例えば、マスカラ組成物を付け睫毛に適用し、次いで付け睫毛を一定時間、例えば20分間、水に浸す。予め定めた時間が経過した後に、付け睫毛を水から取り出し、例えば一枚の紙などの物質上にとる。次いで物質の上に残った残留物の広がりを評価し、例えば市販の組成物などの他の組成物の特性と比較することができる。同様に、例えば、組成物を皮膚に適用し、皮膚を一定時間、水中に沈めてもよい。次いで、予め定めた時間が経過した後に皮膚に残存する組成物の量を評価し、比較することができる。例えば、製品の大部分が適用部位、例えば睫毛、皮膚など、に残存している場合、組成物は耐水性である可能性がある。本発明の好ましい一実施形態において、組成物は、ほとんどまたは全く適用部位から色移りしていない。
【0117】
本発明の化粧用組成物および方法は、本明細書に記載の本発明の本質的要素および限定ならびに皮膚への局所適用を意図されたパーソナルケア組成物に有用な本明細書に記載のまたはその他のあらゆる追加的なまたは任意選択の成分、要素、あるいは限定を含むか、これらからからなるか、あるいは本質的にこれらからなってよい。
【0118】
本発明のある特徴に基づけば、相「液体脂肪相」は、室温(25℃)および大気圧(760mmHg)で液体であり、かつ油としても周知の互いに相容性である室温で液体の、1つまたは複数の脂肪物質を含む脂肪相を意味すると理解される。
【0119】
本発明のある特徴に基づけば、相「構成された液体脂肪相」は、この構成された相が指の間から流れ落ちることがなく少なくとも増粘されていることを意味すると理解される。
【0120】
液体脂肪相が構成されると、固形組成物からの脂肪相の滲み出しを抑制し、さらに皮膚または唇への付着後のしわおよび小じわへの移行を抑制することを可能にし、このことはリップスティックまたはアイシャドウなどの組成物に関して望ましい。着色性物質を含んだ液体脂肪相の顕著な移行は、唇または眼の周辺への美観を損なう影響をもたらし、しわや小じわを目立たせることがある。この移行は、女性がしばしば、従来のリップスティックおよびアイシャドウの大きな欠点として挙げているものである。用語「移行」は、唇または皮膚に付着した組成物がその最初の輪郭を越えて流れ出ることを意味するものと理解される。
【0121】
「つや」は、根本的に液体脂肪相の性質に関連する。したがって、リップスティックのつやを向上させるために組成物中のワックスおよびフィラーの濃度を低減することが可能であるが、その場合液体脂肪相の移行が増大する。すなわち、適切な硬度を有するスティックを調製するために必要なワックスおよび/またはフィラーの濃度は、付着のつやに対する制限要因である。
【0122】
本明細書で使用される「粘着性」は、2枚の表面を引き離す際に必要な最大張力、Fmaxを測定することを指す。想定される用途および設計しようとする処方に応じて、Fmaxの望ましい値は変化してよい。いくつかの実施形態において、実質的に非粘着性の組成物は、約4ニュートン(N)未満、約1N未満、約0.5N未満、約0.3N未満、約0.2N未満または約0.1N未満のFmaxを有する。当業者であれば、例えば、2枚の表面を引き離すために必要な最大牽引力をLLOYDモデルLR5Kタイプの伸縮計により測定して、決定することにより組成物のFmaxを決定することができる。
【0123】
例えば、固体、剛性、不活性でかつ非吸収性の、38mm2の2枚の表面、AおよびBを、互いに向き合わせて可動性のマウント上に取り付ける。表面は共に、互いに近づく方向または離れる方向に動くことが可能であり、あるいは表面Aを表面Bとは別個に動かすことまたはその逆も可能である。伸長計への挿入に先立ち、表面Aを測定される組成物で被覆する。すなわち組成物は約10から30%、好ましくは20%の濃度で、水性、含水アルコール、炭化水素、シリコーンおよびアルコール溶媒などの溶媒中に溶解されていてよく、表面Aを1から10ミル、好ましくは1ミルの厚さに被覆し、表面を室温、例えば22から25℃、相対湿度50%で24時間乾燥させる。伸長計に挿入されると、表面Aは、20秒間、表面Bに対する3Nの圧縮力を受け、次いで30秒間、20mm/分の速度の引張力を受ける。その際、最初の引き離しを行なうために必要な力の大きさFmaxを記録する。この手順を、表面AおよびBの複数のペア、好ましくは少なくとも6ペア、に対して行なうことにより、平均Fmaxを決定する。
【0124】
本発明の化粧用製品システムは、いかなる形態であってもよい。例えば、組成物は、ペースト、固形、ゲルまたはクリームであってよい。組成物は、水中油型(W/O)エマルションまたは油中水型(O/W)エマルションなどのエマルション、O/W/O型エマルションまたはW/O/W型エマルションなどの多層エマルション、あるいは無水ゲルを含む固体、剛性または柔軟ゲルであってよい。システムはまた、半透明無水ゲルおよび透明無水ゲルから選択された形態でもよい。本発明のシステムは、例えば、外部または連続脂肪相を含んでよい。システムは無水物であってよい。他の実施形態において、本発明のシステムは、透明または澄明であってよく、例えば顔料を含まない組成物を含む。システムはまた、スティックまたはディッシュなどの成形組成物または流し込み製品であってよい。一実施形態における組成物は、成形スティックまたは流し込みスティックなどの固体である。本発明の組成物はまた、リップスティックまたは液体リップカラーなどの唇用組成物、ファンデーションまたはマスカラの形態であってよく、色移り耐性、柔軟性、しなやかさ、付着性がありかつ粘着性をもたないといった優れたまたはより向上した特性を発揮する。
【0125】
本発明の組成物が非液体である場合、液体脂肪相の構成を、使用するポリオルガノシロキサン含有ポリマー(または構成ポリマー)のタイプにより調整することができ、力学的耐性が良好なスティックの形態の剛性構造を得ることができる。これらの剛性組成物は着色すると、柔軟で、軽く、非色移り性、非移行性でかつ/または長時間持続性のケラチン性基質への適用を可能にする。これらの組成物は、1つまたは複数の構成ポリマーを含んでよい。
【0126】
本明細書に定義のように、安定性は、組成物を制御環境チャンバ中に25℃で8週間、留置することにより試験する。この試験においては、試料をチャンバ中に配置したときに、試料の物理的状態を検査する。次いで、24時間、3日、1週間、2週間、4週間、8週間後に試料を検査する。各回の検査では、組成物がエマルションの形態である場合、相分離などの組成の異常を、組成物がスティック形態の場合、曲がりまたは傾斜、融解または離液(または発汗)を、検査する。安定性をさらに、40℃、37℃、45℃、50℃および凍結-融解条件下で8週間試験を繰り返して試験する。これらの試験のうちのいずれかにおいて組成物の機能を妨げる異常が観察される場合、組成物は安定性が欠如しているとみなされる。当業者であれば意図される応用に基づき、組成物の機能を妨げる異常を容易に認識できるであろう。
【0127】
ポリオルガノシロキサン含有ポリマー
本発明によれば、好ましくは約500から約2.5×106以上の重量平均分子量を有し、好ましくは1から約10,000個のオルガノシロキサンユニットをその部分の鎖中またはグラフトの形態で含み、かつ水素相互作用を形成することができる少なくとも2つの基を含む少なくとも1つのポリオルガノシロキサン基を含む少なくとも1つの部分を含む、ホモポリマーおよびコポリマーから選択される少なくとも1つのポリオルガノシロキサン含有ポリマーを含む組成物が提供される。
【0128】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の組成物に使用されるポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、下記の2つのファミリーに属してよい:
a)水素相互作用を形成することができる少なくとも2つの基を含むポリオルガノシロキサンであって、これらの2つの基は、ポリマー鎖中に位置している;および/または
b)水素相互作用を形成することができる少なくとも2つの基を含むポリオルガノシロキサンであって、これらの2つの基は、グラフトまたは分枝上に位置している。
【0129】
本発明のポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、室温で液体であっても固体であってもよい。好ましくは、ポリマーは固体である。ポリマーが固体である場合、ポリマーは使用の前または使用中に、ポリマーの水素相互作用を分断することができる水素相互作用を有する溶媒、例えばC2〜C8低級アルコール、特にエタノール、n-プロパノールまたはイソプロパノール中に溶解できることが好ましい。これらの水素相互作用「分断」溶媒を共溶媒として本発明の組成物中に使用することもまた可能である。その場合、当業者には周知のように、これらの溶媒は、組成物中に保ったままにしておいてもよいし選択蒸発により取り除いてもよい。
【0130】
水素相互作用を形成することができる2つの基をポリマー鎖中に含むポリマーは、下記の式に相当する少なくとも1つの部分を含むポリマーであってよい:
【0131】
【化1】

【0132】
式中、
1)R1、R2、R3およびR4は、同一でも異なっていてもよく、
・場合により鎖中に1個または複数の酸素、イオウおよび/または窒素原子を含み、かつ場合により部分的または完全にフッ素原子により置換されている直鎖、分枝または環状、飽和または不飽和の、C1〜C40炭化水素系基、
・任意選択で1個または複数のC1〜C4アルキル基で置換されたC6〜C10アリール基、
・場合により1個または複数の酸素、イオウおよび/または窒素原子を含むポリオルガノシロキサン鎖から選択される基を表し、
2)基Xは、同一でも異なっていてもよく、場合により鎖中に1個または複数の酸素および/または窒素原子を含む、直鎖または分枝状C1〜C30アルキレンジイル基を表し、
3)Yは、場合により1個または複数の酸素、イオウおよび/または窒素原子を含み、かつ/または置換基として下記の原子または原子群:フッ素、ヒドロキシル、C3〜C8シクロアルキル、C1〜C40アルキル、C5〜C10アリール、任意選択で1個から3個のC1〜C3アルキル基、C1〜C3ヒドロキシアルキルおよびC1〜C6アミノアルキルで置換されたフェニル、のうちの1つを有する、飽和または不飽和の、C1〜C50直鎖または分枝状2価アルキレン、アリーレン、シクロアルキレン、アルキルアリーレンまたはアリールアルキレン基であり、
あるいは
4)Yは、式
【0133】
【化2】

【0134】
式中、
・Tは、任意選択でポリオルガノシロキサン鎖により置換され、かつ場合によりO、NおよびSから選択される1個または複数の原子を含む直鎖または分枝状、飽和または不飽和の、C3〜C243価または4価の炭化水素系基、あるいはTはN、PおよびAlから選択される3価の原子を表し、
・R5は、場合により1個または複数のエステル、アミド、ウレタン、チオカルバメート、尿素、チオ尿素および/またはスルホンアミド基を含む直鎖または分枝状C1〜C50アルキル基またはポリオルガノシロキサン鎖であって、ポリマーの他の鎖に結合していてよい基を表す、
に相当する基を表し、
5)基Gは、同一でも異なっていてもよく、
【0135】
【化3】

【0136】
式中、R6は、ポリマーの基R6の少なくとも50%が水素原子を表し、かつポリマーの基Gのうちの少なくとも2つが
【0137】
【化4】

【0138】
以外の基であるという条件で、水素原子または直鎖または分枝状C1〜C20アルキル基を表す、
から選択される2価の基を表し、
6)nは、少なくとも1、例えば2から500、好ましくは2から200までの範囲の整数であり、かつ、mは、少なくとも1、1から35,000、例えば1から10,000および1から2,500、1から700および6から200までの範囲の整数であり、その間の全ての値およびその間およびサブ範囲を含む。
【0139】
本発明によれば、好ましくはポリマーの基R1、R2、R3およびR4の80%は、メチル、エチル、フェニルおよび3,3,3-トリフルオロプロピル基から選択される。
【0140】
本発明によれば、Yは種々の2価の基、さらには任意選択でポリマーまたはコポリマーの他の部分と結合を形成するための1つまたは2つのフリーの価数を含む基、を表してよい。好ましくは、Yは、
a)直鎖状C1〜C20、好ましくはC1〜C10アルキレン基、
b)場合により環および非共役不飽和を含むC30〜C56分枝状アルキレン基、
c)C5〜C6シクロアルキレン基、
d)任意選択で1個または複数のC1〜C40アルキル基で置換されているフェニレン基、
e)1から5個のアミド基を含むC1〜C20アルキレン基、
f)ヒドロキシル、C3〜C8シクロアルカン、C1〜C3キヒドロキシアルキルおよびC1〜C6アルキルアミン基から選択される1個または複数の置換基を含むC1〜C20アルキレン基、
g)式
【0141】
【化5】

【0142】
式中、R1、R2、R3、R4、Tおよびmは、上記に定義した通りである、
のポリオルガノシロキサン鎖、ならびに
h)式
【0143】
【化6】

【0144】
のポリオルガノシロキサン鎖、
から選択される基を表す。
【0145】
第2のファミリーのポリオルガノシロキサンは、下記の式(II)に相当する少なくとも1つの部分を含むポリマーであってよい。
【0146】
【化7】

【0147】
式中、
・R1およびR3は、同一でも異なっていてもよく、式(I)に対して上記に定義した通りであり、
・R7は、R1およびR3に対して上記に定義した基を表すか、あるいは、式-X-G-R9の基を表し、式中、XおよびGは式(I)に対して上記に定義した通りであり、R9は水素原子あるいは任意選択で鎖中にO、SおよびNから選択される1個または複数の原子を含み、任意選択で1個または複数のフッ素原子および/または1個または複数のヒドロキシル基、または任意選択で1個または複数のC1〜C4アルキル基で置換されたフェニル基で置換された、直鎖、分枝状または環状、飽和または不飽和の、C1〜C50炭化水素系基を表す、
・R8は、式中X、GおよびR9が上記に定義した通りである、式-X-G-R9の基を表し、
・m1は、少なくとも1、1から35,000、例えば1から10,000および1から2,500、1から700および6から200までの範囲の整数であり、その間の全ての値およびサブ範囲を含み、
・m2は、少なくとも1、1から35,000、例えば1から10,000および1から2,500、1から700および6から200までの範囲の整数であり、その間の全ての値およびサブ範囲を含む。
【0148】
本発明によれば、ポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、ホモポリマー、すなわちいくつかの同一の部分、特に式(I)または式(II)の部分を含むポリマーであってよい。
【0149】
本発明によれば、式(I)のいくつかの異なる部分を含むコポリマーからなるポリマー、すなわち部分のうちの1つにおいて基R1、R2、R3、R4、X、G、Y、mおよびnのうちの少なくとも1つが異なっているポリマーを使用することもまた可能である。コポリマーはまた、式(II)のいくつかの部分から形成されてもよく、この場合、部分のうちの少なくとも1つにおいて基R1、R3、R7、R8、m1およびm2のうちの少なくとも1つが異なっている。
【0150】
式(I)の少なくとも1つの部分および式(II)の少なくとも1つの部分を含むコポリマーを使用することもまた可能であり、式(I)の部分および式(II)の部分は、場合により、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0151】
好ましい実施形態によれば、水素相互作用を形成することができ、エステル、アミド、スルホンアミド、カルバメート、チオカルバメート、尿素およびチオ尿素基、ならびにこれらの組合せから選択される2つの基を含む少なくとも1つの炭化水素系基を含むコポリマーを使用することもまた可能である。
【0152】
本発明の第一の実施形態によれば、水素相互作用を形成することができる基は、式-C(O)NH-および-NH-C(O)-のアミド基である。
【0153】
これらのコポリマーは、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであってよい。
【0154】
この場合、ポリマーは、式(III)または(IV)の少なくとも1つの部分を含んでよく、
【0155】
【化8】

【0156】
式中、R1、R2、R3、R4、X、Y、mおよびnは上記に定義した通りである。
【0157】
このような部分は
・下記の反応式に基づく、α,ω-カルボン酸末端を含むシリコーンと1つまたは複数のジアミンとの間の縮合反応によるか、
【0158】
【化9】

【0159】
あるいは、
・下記の反応式に基づく、2分子のα-不飽和カルボン酸とジアミンとの反応
【0160】
【化10】

【0161】
それに続く下記の反応式に基づく、エチレン性不飽和に対するシロキサンの付加:
【0162】
【化11】

【0163】
式中、X1-(CH2)2-は上記に定義のXに相当し、かつY、R1、R2、R3、R4およびmは上記に定義した通りである、
によるか、あるいは、
・下記の反応式に基づく、α、ω-NH2末端を含むシリコーンと式HOOC-Y-COOHの二酸との反応により得られてよい。
【0164】
【化12】

【0165】
これらの式(III)または(IV)のポリアミドにおいて、mは、上記に定義のように、少なくとも1、好ましくは1から700、例えば15から500および15から45までの範囲の整数であり、その間の全ての値およびサブ範囲を含む。また、nは特に1から500、例えば1から100および4から25までの範囲であり、その間の全ての値およびサブ範囲を含む。Xは、好ましくは1から30個の炭素原子、特に3から10個の炭素原子を含む直鎖または分枝状アルキレン鎖であり、かつYは好ましくは、直鎖または分枝状の、あるいは場合により環および/または不飽和を含むアルキレン鎖であり、1から40個の炭素原子を含み、1から20個の炭素原子および2から6個の炭素原子を含み、その間の全ての値およびサブ範囲、例えば6個の炭素原子の場合を含む。
【0166】
式(III)および(IV)において、XまたはYを表すアルキレン基は、任意選択でそのアルキレン部分に少なくとも1つの以下の要素を含んでよい:
1)1から5個のアミド、尿素またはカルバメート基、
2)C5〜C6シクロアルキル基、および
3)1から3個の同一のまたは異なるC1〜C3アルキル基により任意選択で置換されたフェニレン基。
【0167】
式(III)および(IV)において、アルキレン基はまた、
・ヒドロキシル基、
・C3〜C8シクロアルキル基、
・1から3個のC1〜C40アルキル基、
・1から3個のC1〜C3アルキル基により任意選択で置換されたフェニル基、
・C1〜C3ヒドロキシアルキル基、
・C1〜C6アミノアルキル基
からなる群から選択される少なくとも1つの要素で置換されていてもよい。
【0168】
これらの式(III)および(IV)において、Yはまた、
【0169】
【化13】

【0170】
式中、R5はポリオルガノシロキサン鎖を表し、Tは下記の式の基を表す:
【0171】
【化14】

【0172】
式中、a、bおよびcは、互いに独立して、1から10までの範囲の整数であり、かつR10は水素原子またはR1、R2、R3およびR4に対して定義された基である、
を表してもよい。
【0173】
式(III)および(IV)において、R1、R2、R3およびR4は好ましくは、互いに独立して、直鎖または分枝状C1〜C40アルキル基、好ましくはCH3、C2H5、n-C3H7またはイソプロピル基、ポリオルガノシロキサン鎖または1から3個のメチルまたはエチル基により任意選択で置換されたフェニル基を表す。
【0174】
先に見られたように、ポリマーは式(III)または(IV)の同一のまたは異なる部分を含んでよい。
【0175】
したがって、ポリマーは、式(III)または(IV)の長さの異なるいくつかの部分を含むポリアミド、すなわち下記の式に相当するポリアミドであってよい:
【0176】
【化15】

【0177】
式中、X、Y、nおよびR1からR4は、上記に示した意味を有し、m1およびm2は、異なっており、上記に定義した通りであり、かつ好ましくは、1から1000までの範囲から選択され、pは少なくとも1、例えば2から500、好ましくは2から200の範囲である。
【0178】
この式において、部分は、ブロックコポリマーかあるいはランダムコポリマーまたは交互コポリマーのいずれかを形成するように構成されてよい。このコポリマーにおいて、部分は、異なる長さを有するだけではなく、例えば異なる基Yを含むなど異なる化学構造を有した部分であってよい。この場合、コポリマーは下記の式に相当してよい。
【0179】
【化16】

【0180】
式中、R1からR4、X、Y、m1、m2、nおよびpは上記に示した意味を有し、Y1はYとは異なっているが、Yに対して定義された群から選択される。先に述べたように、種々の部分がブロックコポリマーかあるいはランダムコポリマーまたは交互コポリマーを形成するように構成されてよい。
【0181】
本発明の一実施形態において、ポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、グラフトコポリマーを含んでもよい。したがって、シリコーンユニットを含むポリアミドは、グラフトされ、任意選択でアミド基を含むシリコーン鎖と架橋されてよい。このようなポリマーは、3官能性アミンを用いて合成されてよい。
【0182】
この場合、コポリマーは下記の式の少なくとも1つの部分を含んでよい:
【0183】
【化17】

【0184】
式中、X1およびX2は、同一でも異なっていてもよく、式(I)のXに対して示した意味を有し、nは式(I)において定義した通りであり、YおよびTは、式(I)において定義した通りであり、R11からR18は、R1からR4と同一の群から選択される基であり、m1およびm2は1から1,000までの範囲の数であり、pは少なくとも1、例えば2から500の範囲をとることができる整数である。
【0185】
式(VII)において、
・pは、1から7を含む、1から25までの範囲であり、その間の全ての値およびサブ範囲を含み、
・R11からR18は、メチル基であり、
・Tは、下記の式のうちの1つに相当することが好ましい。
【0186】
【化18】

【0187】
式中、R19は、水素原子またはR1からR4に対して定義された基から選択される基であり、かつR20、R21およびR22は、互いに独立して、直鎖または分枝状アルキレン基であり、より好ましくは下記の式に相当する:
【0188】
【化19】

【0189】
特に-CH2-CH2-を表すR20、R21およびR22については、
・m1およびm2は15から45を含む、15から500までの範囲であり、かつその間の全ての値およびサブ範囲を含み、
・X1およびX2は-(CH2)10-を表し、かつ
・Yは、-CH2-を表す。
【0190】
式(VII)のグラフトシリコーン部分を含むこれらのポリアミドは、式(II)のポリアミドシリコーンにより共重合されて、ブロックコポリマー、交互コポリマーまたはランダムコポリマーを形成してよい。コポリマーにおけるグラフトシリコーン部分(VII)の重量パーセントは、0.5重量%から30重量%であってよい。
【0191】
本発明によれば、先に見られたように、シロキサンユニットはポリマーの主鎖または骨格中にあってよいが、またグラフトまたはペンダント鎖中に存在してもよい。主鎖において、シロキサンユニットは、上記に記載のセグメントの形態であってよい。ペンダントまたはグラフト鎖において、シロキサンユニットは個別にまたはセグメント中に現れてよい。
【0192】
本発明によれば、好ましいシロキサン系ポリアミドは、
・式中、mが15から300、例えば15から100であり、その間の全ての値およびサブ範囲を含む、式(III)のポリアミド、
・少なくとも1つのポリアミドが、15から50の範囲で、その間の全ての値およびサブ範囲を含むmの値を有し、かつ少なくとも1つのポリアミドが、30から300の範囲で、その間の全ての値およびサブ範囲を含むmの値を有する、2つ以上のポリアミドの混合物、
・式中、15から50の範囲から選択されるm1および30から500の範囲から選択されるm2を有し、m1に相当する部分がポリアミドの全重量の1重量%から99重量%に相当しかつm2に相当する部分がポリアミドの全重量の1重量%から99重量%に相当する、式(V)のポリマー、
・下記を組み合わせた、式(III)のポリアミドの混合物
1)nが2から10、特に3から6に等しいポリアミドを80重量%から99重量%、
2)nが5から500、特に6から100の範囲であるポリアミドを1重量%から20重量%、
・式中、基YおよびY1のうち少なくとも1つが少なくとも1つのヒドロキシル置換基を含む、式(VI)に相当するポリアミド、
・二酸の代わりに活性化された二酸(二酸塩化物、二無水物、またはジエステル)の少なくとも1つの部分により合成した式(III)のポリアミド
・式中Xが-(CH2)3-または-(CH2)10を表す式(III)のポリアミド、および
・式中、脂肪酸、脂肪アルコールおよび脂肪アミン、例えばオクチルアミン、オクタノール、ステアリン酸およびステアリルアルコールなどを含む1官能性アミン、1官能性酸、1官能性アルコールからなる群から選択される1官能性鎖を末端とする、式(III)のポリアミド、
である。
【0193】
本発明によれば、ポリマー鎖の末端基は:
・合成中に、C1〜C50モノアルコールを導入したC1〜C50アルキルエステル基、
・シリコーンがα,ω-ジアミン化されている場合にはモノ酸、またはシリコーンがα,ω-ジカルボン酸である場合にはモノアミンを末端基としてとるC1〜C50アルキルアミド基、
で終わってよい。
【0194】
本発明の一実施形態によれば、シリコーンポリアミドおよび炭化水素系ポリアミドのコポリマー、すなわち式(III)または(IV)の部分および炭化水素系ポリアミド部分を含むコポリマーを使用することが可能である。この場合、ポリアミド-シリコーン部分は炭化水素系ポリアミドの末端に配置してもよい。
【0195】
シリコーンを含むポリアミド系ポリマーは、脂肪酸ダイマーをベースとするポリアミドのシリルアミド化によって製造してよい。このアプローチには、ポリアミド上に末端部位として存在する遊離酸部位とオルガノシロキサンモノアミンおよび/またはオルガノシロキサンジアミンとの反応(アミド化反応)、あるいは別法として、オリゴシロキサンアルコールまたはオリゴシロキサンジオールとの反応(エステル化反応)が含まれる。エステル化反応は、当技術分野において周知のように、酸触媒の存在を必要とする。アミド化またはエステル化反応に使用される遊離酸部位を含むポリアミドが、比較的多くの酸末端基を有すること(例えば、酸を数多く例えば、15から20個、有するポリアミド)が望ましい。
【0196】
炭化水素系ポリアミドの遊離酸部位のアミド化に関して、1から300、より特に2から50、例えば、2、6、9.5、12、13.5、23または、31個のシロキサン基を有するシロキサンジアミンは、脂肪酸ダイマーをベースとする炭化水素系ポリアミドとの反応に使用されてよい。13.5個のシロキサン基を含むシロキサンジアミンが好ましく、13.5個のシロキサン基を含むシロキサンジアミンと多数のカルボン酸末端基を含むポリアミドとから、最良の結果が得られる。
【0197】
反応は、溶液から産生する水を共沸蒸留により抽出するためにキシレン中で、または溶媒を使用せずに高温(約180℃から200℃)で行なってよい。典型的には、アミド化の有効性および反応速度は、シロキサンジアミンが長いほど、すなわちシロキサン基の数が多いほど低下する。遊離アミン部位は、シロキサン酸かあるいは安息香酸などの有機酸と反応することによりジアミノシロキサンの初期アミド化反応の後に、ブロックできる。
【0198】
ポリアミド上の遊離酸部位のエステル化に関して、この反応は試薬の全重量に対して約1重量%の沸騰キシレン中でパラトルエンスルホン酸を触媒として行なわれてよい。
【0199】
ポリアミドのカルボン酸末端基において行なわれるこれらの反応は、シリコーン部分をポリマー鎖の末端のみに組み込むことにつながる。
【0200】
遊離アミン基を含むポリアミドを用いて、酸基を含むシロキサンとのアミド化反応により、ポリアミド-シリコーンコポリマーを調製することもまた可能である。
【0201】
例えばエチレン-ジアミン部分を有するポリアミドとオリゴシロキサン-α,ω-ジアミンとを、元のポリアミドのエチレンジアミン部分がオリゴシロキサンジアミンで置換されるようなアミド転移を行なうために高温(例えば200から300℃)で、アミド転移反応させることにより、炭化水素系ポリアミドおよびシリコーンポリアミドとのコポリマーをベースにするゲル化剤を調製することもまた可能である。
【0202】
炭化水素系ポリアミドおよびポリアミド-シリコーンのコポリマーはまた、ペンダントとしてオリゴシロキサン基を有する炭化水素系ポリアミド骨格を含むグラフトコポリマーであってもよい。
【0203】
このコポリマーは、例えば:
・脂肪酸ダイマーをベースとするポリアミド中の不飽和結合のハイドロシリル化により、
・ポリアミドのアミド基のシリル化により、または
・酸化による不飽和ポリアミドのシリル化により、すなわち不飽和基をアルコールまたはジオールへと酸化することによりヒドロキシル基を生成し、ヒドロキシル基がシロキサンカルボン酸またはシロキサンアルコールと反応することにより、
得られてよい。不飽和ポリアミドのオレフィン部位もエポキシ化することができ、次いでそのエポキシ基はシロキサンアミンまたはシロキサンアルコールと反応させてもよい。
【0204】
本発明の組成物において使用されるポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、最も好ましくは、その全公開内容が参照により本明細書に組み込まれている文書、米国特許第5874069号、米国特許第5919441号、米国特許第6051216号および米国特許第5981680号に記載されているものなどの、ポリオルガノシロキサンタイプのポリマーである。
【0205】
本発明のもう1つの実施形態において、ポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、ウレタンまたは尿素基を含むホモポリマーまたはコポリマーである。
【0206】
先に述べたように、ポリマーは2つ以上のウレタンおよび/または尿素基を、ポリマー骨格中かあるいは側鎖上にまたはペンダント基として含むポリオルガノシロキサン部分を含んでよい。
【0207】
少なくとも2つのウレタンおよび/または尿素基を骨格に含むポリマーは、下記の式に相当する少なくとも1つの部分を含むポリマーであってよい:
【0208】
【化20】

【0209】
式中、R1、R2、R3、R4、X、Y、mおよびnは、式(I)に対して上記に示した意味を有し、Uは-O-または-NH-を表し、それにより:
【0210】
【化21】

【0211】
が、ウレタンまたは尿素基に相当する。
【0212】
この式(VIII)において、Yは、任意選択でC1〜C15アルキル基またはC5〜C10アリール基により置換された、直鎖または分枝状C1〜C40アルキレン基であってよい。好ましくは、-(CH2)6-基が使用される。
【0213】
Yはまた、C1〜C15アルキル基またはC5〜C10アリール基、例えば、メチレン-4,4-ビスシクロヘキシル基、イソホロンジイソシアナートから誘導される基、2,4-および2,6-トリレン、1,5-ナフチレン、p-フェニレンおよび4,4'-ビフェニレンメタンから選択される基、により置換されていてよい、C5〜C12環状脂肪族または芳香族基をも表す。一般に、Yが直鎖または分枝状C1〜C40アルキレン基またはC4〜C12シクロアルキレン基を意味することは好ましい。
【0214】
Yはまた、いくつかのジイソシアナート分子とジオールまたはジアミンタイプの1つまたは複数のカップリング剤の分子との縮合に対応するポリウレタンまたはポリ尿素ブロックをも表してよい。この場合、Yはアルキレン鎖の中にいくつかのウレタンまたは尿素基を含む。
【0215】
Yはまた下記の式に相当してもよい:
【0216】
【化22】

【0217】
式中、B1は、Yに対して上記に示した基から選択される基であり、Uは-O-または-NH-であり、B2は下記から選択される:
任意選択でカルボン酸またはスルホン酸基などのイオン化可能な基または中和可能なまたは4級化可能な第3級アミン基を有してよい直鎖または分枝状C1〜C40アルキレン基、
任意選択でアルキル置換基、例えば1から3個のメチルまたはエチル基、またはアルキレン、例えばジオール基を有する、C5〜C12シクロアルキレン基:シクロヘキサンジメタノール
任意選択でC1〜C3アルキル置換基を有するフェニレン基、および

【0218】
【化23】

【0219】
の基、
式中、Tは、場合により1つまたは複数の酸素、イオウおよび窒素などのヘテロ原子を含む炭化水素系の3価の基であり、かつR5はポリオルガノシロキサン鎖または直鎖または分枝状C1〜C50アルキル鎖である。
【0220】
Tは、例えば:
【0221】
【化24】

【0222】
式中、wは、1から10までの範囲の整数であり、かつR5はポリオルガノシロキサン鎖である、
を表してよい。
【0223】
Yが直鎖または分枝状C1〜C40アルキレン基である場合、-(CH2)2-または-(CH2)6-基が好ましい。
【0224】
Yに対して上記に示した式において、dは0から5、好ましくは0から3までの範囲の、より好ましくは1または2に等しい整数であってよい。
【0225】
好ましくは、B2は、直鎖または分枝状C1〜C40アルキレン基、特に-(CH2)2-または-(CH2)6-または基:
【0226】
【化25】

【0227】
式中、R5はポリオルガノシロキサン鎖である、
である。
【0228】
先に述べたように、ポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、異なる長さおよび/または構成のシリコーンウレタンおよび/またはシリコーン尿素部分から形成されてよく、かつブロックまたはランダムコポリマーの形態であってよい。
【0229】
本発明によれば、シリコーンはまた、ウレタンおよび/または尿素基を、もはや骨格中にではなく側鎖として含んでもよい。
【0230】
この場合、ポリマーは下記の式の少なくとも1つの部分を含んでよい:
【0231】
【化26】

【0232】
式中、R1、R2、R3、m1およびm2は、式(I)に対して上記に示した意味を有し、
・Uは-O-または-NH-を表し、
・R23は任意選択で、1個または複数のOおよびNから選択されるヘテロ原子、またはフェニレン基を含む、C1〜C40アルキレン基を表し、
・R24は直鎖、分枝状または環状、飽和または不飽和のC1〜C50アルキル基、および任意選択で、1から3個のC1〜C3アルキル基で置換されたフェニル基から選択される。
【0233】
式(X)の少なくとも1つの部分を含むポリマーは、シロキサンユニットおよび尿素またはウレタン基を含み、例えば本発明の組成物中で、ゲル化剤として使用されてよい。
【0234】
シロキサンポリマーは、単独の尿素またはウレタン基を、分枝させることにより有してよく、あるいは、2個の尿素またはウレタン基を含む分枝を有してもよく、あるいは別法として、シロキサンポリマーは1個の尿素またはウレタン基を含む分枝および2個の尿素またはウレタン基を含む分枝の混合物を含んでもよい。
【0235】
シロキサンポリマーは、1個または2個のアミノ基を分枝させることにより含む分枝ポリシロキサンから、これらのポリシロキサンをモノイソシアナートと反応させることにより得られてよい。
【0236】
アミノおよびジアミノ分枝を含むこのタイプの出発ポリマーの例として、下記の式に相当するポリマーを挙げることができる:
【0237】
【化27】

【0238】
これらの式において、記号「/」は、セグメントが異なる長さで、かつランダムな順序であって良いことを表し、かつRは基、好ましくは1から3個の炭素原子を含む、1から6個の炭素原子を含む、直鎖状脂肪族基を表す。
【0239】
このような分岐を含むポリマーは、ポリマー分子1個当り少なくとも3個のアミノ基を含むシロキサンポリマーを、1官能性基(例えば酸、イソシアナート、イソチオシアナート)1個のみを含む化合物と反応させることにより形成されてよく、その結果、この1官能性基がアミノ基のうちの1つと反応し、水素相互作用を形成することのできる基が形成される。アミノ基は、シロキサンポリマーの主鎖から延びる側鎖上にあってよく、その結果として水素相互作用を形成することのできる基がこれらの側鎖上に形成されるか、あるいは別法としてアミノ基は主鎖の末端にあってよく、その結果として水素相互作用を形成することのできる基がポリマーの末端基となる。
【0240】
シロキサンユニットおよび水素相互作用を形成することのできる基を含むポリマーを形成するための手順として、ゲルが直接得られるような、シロキサンジアミンとジイソシアナートのシリコーン溶媒中での反応を挙げることができる。反応は、シリコーン液中で行われてよく、得られた生成物は、高温で、シリコーン液中に溶解しており、ゲルを形成するために次いでシステムの温度を低下させる。
【0241】
本発明の組成物への配合が好ましいポリマーは、シリコーン-尿素コポリマーであり、このコポリマーは直鎖状であり、かつ水素相互作用を形成することのできる基として尿素基をポリマー骨格中に含む。
【0242】
4個の尿素基を末端にもつポリシロキサンの実例として、下記の式のポリマーを挙げることができる:
【0243】
【化28】

【0244】
式中、Phはフェニル基であり、nは0より大きな数であり、少なくとも1、2から500、2から200、1から300、特に1から100、およびその間の全ての値およびサブ範囲を含み、例えば50である。
【0245】
このポリマーは、アミノ記を含む下記のポリシロキサンをフェニルイソシアナートと反応させることにより得られる:
【0246】
【化29】

【0247】
尿素またはウレタン基をシリコーンポリマー鎖中に含む式(VIII)のポリマーは、α,ω-NH2または-OH末端基を含む下記のシリコーン
【0248】
【化30】

【0249】
式中、m、R1、R2、R3、R4およびXは、式(I)に対して定義した通りである、
と、ジイソシアナート、式中Yが式(I)において示した意味を有するOCN-Y-NCO、および任意選択で式中B2が式(IX)に対して定義した通りである式H2N-B2-NH2またはHO-B2-OHのジオールまたはジアミンカップリング剤との反応により得られてよい。
【0250】
2つの試薬、ジイソシアナートとカップリング剤との間の化学量論的比率によれば、Yは式(IX)であってよく、式中、dは0に等しいか、またはdは1から5に等しい。
【0251】
式(II)または(III)のポリアミドシリコーンの場合と同様に、異なる長さまたは構造の部分、特にその長さがシリコーンユニットの数によって異なる部分、を含むポリウレタンまたはポリ尿素シリコーンを本発明において使用することが可能である。この場合、コポリマーは例えば、下記の式に相当してよい:
【0252】
【化31】

【0253】
式中、R1、R2、R3、R4、X、YおよびUは、式(VIII)に対して定義した通りであり、m1、m2、nおよびpは式(V)に対して定義した通りである。
【0254】
分枝状ポリウレタンまたはポリ尿素シリコーンはまた、ジイソシアナートOCN-Y-NCOの代わりに下記の式のトリイソシアナートを用いて得られてもよい:
【0255】
【化32】

【0256】
水素相互作用を形成することのできる基を有するオルガノシロキサン鎖を含む分枝を含むポリウレタンまたはポリ尿素シリコーンはこのように得られる。このようなポリマーは、例えば、下記の式に相当する部分を含む:
【0257】
【化33】

【0258】
式中、X1およびX2は、同一でも異なっていてもよく、式(I)のXに対して示した意味を有し、nは式(I)において定義した通りであり、YおよびTは、式(I)において定義した通りであり、R11からR18は、R1からR4と同一の群から選択される基であり、m1およびm2は上記に定義の通りである。
【0259】
ポリアミドの場合、このコポリマーはまた、分枝のないポリウレタンシリコーン部分を含んでよい。
【0260】
本発明のもう1つの実施形態において、好ましいシロキサン系ポリ尿素およびポリウレタンは:
・式中、mが15から300、例えば、15から100およびその間の全ての値およびサブ範囲を含む、式(VIII)のポリマー
・少なくとも1つのポリマーが、15から50の範囲であるmの値を有し、かつ少なくとも1つのポリマーが、30から300の範囲で、その間の全ての値およびサブ範囲を含むmの値を有する、2つ以上のポリマーの混合物、
・式中、15から50の範囲から選択されるm1および30から500の範囲から選択されるm2を有し、m1に相当する部分がポリマーの全重量の1重量%から99重量%に相当しかつm2に相当する部分がポリマーの全重量の1重量%から99重量%に相当する、式(XII)のポリマー、
・下記を組み合わせた、式(VIII)のポリマーの混合物:
1)nが2から10、特に3から6に等しいポリマーを80重量%から99重量%、
2)nが5から500、特に6から100の範囲であるポリマーを1重量%から20重量%、
・式中、基Yのうちの少なくとも1つが少なくとも1つのヒドロキシル置換基を含む、式(VIII)の2つの部分を含むコポリマー、
・二酸の代わりに活性化された二酸(二酸塩化物、二無水物、またはジエステル)の少なくとも1つの部分により合成した式(VIII)のポリマー
・式中、Xが-(CH2)3-または-(CH2)10-を表す式(VIII)のポリマー、および
・式中、脂肪酸、脂肪アルコールおよび脂肪アミン、例えばオクチルアミン、オクタノール、ステアリン酸およびステアリルアルコールなどを含む1官能性アミン、1官能性酸、1官能性アルコールからなる群から選択される多官能性鎖を末端とする、式(VIII)のポリマー、
である。
【0261】
ポリアミドの場合、ポリウレタンまたはポリ尿素シリコーンと炭化水素系ポリウレタンまたはポリ尿素のコポリマーは、非シリコーン性のα,ω-2官能性ブロック、例えば、ポリエステル、ポリエーテルまたはポリオレフィンの存在下で、ポリマーを合成する反応を行なうことにより、本発明において使用されてよい。
【0262】
先に見られたように、本発明のホモポリマーまたはコポリマーは、シロキサン部分をポリマーの主鎖に、かつ水素相互作用を形成することのできる基を、ポリマーの主鎖またはその末端、または側鎖または主鎖の分枝に含んでよい。これは下記の5つの配置に相当する:
式中、連続線は、シロキサンポリマーの主鎖であり、四角形は水素相互作用を形成することのできる基を表す。
【0263】
【化34】

【0264】
(1)の場合、水素相互作用を形成することのできる基が主鎖の末端に配置されている。
【0265】
(2)の場合、水素相互作用を形成することのできる2つの基が主鎖のそれぞれの末端に配置されている。
【0266】
(3)の場合、水素相互作用を形成することのできる基が繰り返し部分の主鎖中に配置されている。
【0267】
(4)および(5)の場合、水素相互作用を形成することのできる基が、水素相互作用を形成することのできる基を含まない部分で共重合している最初の一つながりの部分の主鎖の分枝上に配置されているコポリマーである。好ましくは、値n、xおよびyは、ポリマーが脂肪相、好ましくはシリコーン油をベースとする脂肪相、をゲル化するための薬剤という点で望ましい特性をもつようなものである。
【0268】
使用されてよいポリマーの例として、その全公開内容が参照により本明細書に組み込まれているUS-A-598168における開示に基づいて得られるシリコーンポリアミドを挙げることができる。
【0269】
ポリオルガノシロキサン含有ポリマーの他の例は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6503632号および米国特許第6569955号に記載されている。
【0270】
上記に述べたように、本発明のポリマーは室温で固体または液体であってよい。固体の場合、ポリマーは好ましくは50から130℃の軟化点を有する。最も好ましくは、ポリマーは、70℃から130℃を始めとする65℃から150℃の範囲の軟化点を有する。この軟化点は、他の構成ポリマーの軟化点よりも低く、本発明の課題であるポリマーの使用を容易にし、液体脂肪相の劣化を抑制する。
【0271】
上記に述べたように、本発明のポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、シロキサンユニットおよびアミド結合などの水素相互作用を形成することのできる少なくとも2つの基を含む。シロキサンユニットは、もしシリコーン液が存在するのであれば、シリコーン液(例えばシクロメチコン)との相容性を提供し、その一方で水素相互作用を形成することのできる基およびアミド結合の間隔および位置の選択がゲル化および化粧用製品の形成を促進することができる。
【0272】
一実施形態において、本発明のポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、色移り耐性を提供するのに有効な量で存在し、かつ下記の特性、すなわちしなやかさ、柔らかさ、および適用中の快適性のうちの少なくとも1つを提供することもできる。さらに、本発明の組成物は柔軟性および/または組成物が適用されたケラチン性物質への優れた付着性を発揮することは好ましい。もう1つの好ましい実施形態において、本発明の組成物はケラチン性基質に適用した際に、実質的に非粘着性である。
【0273】
本発明の組成物において、ポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、好ましくは、組成物の全重量の0.1から80重量%、より好ましくは0.5から30重量%、最も好ましくは1から20重量%の量で存在する。
【0274】
スティックなどの、意図される用途に応じて、組成物の硬度もまた考慮してよい。組成物の硬度は、例えば、グラムフォース(gf)で表されてよい。本発明の組成物は、例えば、20gfから2000gf、例えば20gfから900gf、さらには20gfから600gfの範囲の硬度を有してよい。
【0275】
この硬度は、2つの方法のうちの1つで測定される。第一の硬度試験は、プローブを組成物に貫通させ、かつ高さ25mm、直径8mmのエボナイトシリンダを装備したテクスチュアアナライザ(例えばRheoのTA-XT2i)を特に用いるという方法に基づくものである。硬度測定は、20℃で組成物の5個の試料の中央部で行なう。組成物の各試料にシリンダを2mm/秒の前速度で、次いで0.5mm/秒の速度で、最後に2mm/秒の後速度で、総変位が1mmになるように貫入させる。記録された硬度値が観察された最大ピークである。測定誤差は±50gfである。
【0276】
第二の硬度試験は、「チーズワイヤ」法であり、直径8.1mm、または好ましくは12.7mmのスティック組成物を切断し、その硬度を20℃で、Indelco-Chatillon Co.のDFGHS 2引張り試験機を用いて100mm/分の速度で測定するというものである。この方法による硬度値は、上記条件下でスティックを切断するのに必要な剪断力として、グラムで表される。この方法によれば、スティック形態にされてよい本発明の組成物の硬度は、例えば、30gfから300gfの範囲、例えば直径8.1mmのスティックの試料に対して30gfから250gf、さらに30gfから200gf、またさらに直径12.7mmのスティックの試料に対して30gfから120gfの範囲であってよい。
【0277】
本発明の組成物の硬度は、組成物が自らを支えることができかつ、容易に崩壊してケラチン性物質上に満足のゆく付着を形成することができるようなものであってよい。さらに、この硬度は、例えばスティックまたはディッシュの形態に成形または流し込まれることがある本発明の組成物に良好な衝撃強さを与えることができる。
【0278】
当業者であれば、想定される用途および所望の硬度に基づき、上記に概説した硬度試験のうち少なくとも1つを用いて組成物を評価することを選択することができる。これらの硬度試験の少なくとも1つにより、意図される用途に照らして許容できる硬度値が得られた場合には、組成物は本発明の好ましい実施形態の範囲内に入っている。
【0279】
明らかなように、本発明の好ましい実施形態に基づく組成物の硬度は、例えば、組成物が有利なことに自らを支えることができかつ、容易に崩壊して皮膚および/または唇および/またはケラチン線維などの皮膚付属器上に満足のゆく付着を形成することができるようなものとなる。さらに、この硬度により、本発明の組成物は良好な衝撃強さを有することができる。
【0280】
本発明の好ましい実施形態によれば、スティック形態の組成物は変形可能で柔軟性のある弾性固体の性質を有し、適用時に顕著な弾性のある柔らかさを与える。先行技術のスティック形態の組成物は、これらの弾力性および柔軟性を有していない。
【0281】
液体脂肪相
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン含有ポリマーおよび液体脂肪相を含む化粧用組成物が提供される。好ましくは、液体脂肪相は少なくとも1つの揮発油、例えば、シリコーン揮発油、炭化水素揮発油、またはこれらの混合物を含む。
【0282】
この実施形態によれば、液体脂肪相は単独でまたは組合せで、揮発性シリコーン油、不揮発性シリコーン油、揮発性非シリコーン油および不揮発性非シリコーン油を含んでよい。一実施形態において、本発明の組成物は実質的にシリコーン油を含まない(例えば、約0.1%未満のシリコーン油を含有)。もう1つの実施形態において、組成物は実質的に非シリコーン油を含まない(例えば、約0.1%未満の非シリコーン油を含有)。もう1つの実施形態において、組成物は実質的に不揮発油を含まない(例えば、約0.1%未満の不揮発油を含有)。
【0283】
本発明によれば、揮発油が存在する場合、これらの揮発油は、皮膚、唇またはケラチン線維への組成物のより容易な適用を可能にする。
【0284】
一実施形態によれば、組成物は1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含んでよい。このような揮発性シリコーン油の例には、室温で6cSt以下の粘度を有し、かつ2から7個のケイ素原子を有する直鎖または環状シリコーン油が含まれ、これらのシリコーンは、1から10個の炭素原子のアルキルまたはアルコキシ基により任意選択で置換されている。本発明において使用されてよい具体的な油には、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンおよびこれらの混合物が含まれる。使用されてよい他の揮発油には、94℃の引火点を有するShin Etsuの市販製品である、6cStの粘度を有するKF 96Aが含まれる。好ましくは、揮発性シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0285】
揮発性シリコーン油の非限定的な例を、下記の表1に列記する。
【0286】
【表1】

【0287】
本発明において使用されてよい他のシリコーン油の例には、室温で液体の不揮発性直鎖状ポリジメチルシロキサン(PDMSs)、それぞれに2から24個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシまたはフェニル基をペンダントとしておよび/またはシリコーン鎖の末端に含むポリジメチルシロキサン、フェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサンおよび2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケートが含まれる。
【0288】
さらに、揮発性直鎖状シリコーン油が、本発明の組成物に使用されてよい。適切な揮発性直鎖状シリコーン油には、その全公開内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第633839号および国際公開第03/042221号に記載の揮発性直鎖状シリコーン油が含まれる。一実施形態において、揮発性直鎖状シリコーン油はデカメチルテトラシロキサンである。もう1つの実施形態において、デカメチルテトラシロキサンは、デカメチルテトラシロキサンよりも揮発性の高いもう1つの溶媒とさらに組み合わされている。
【0289】
溶媒/油の揮発性は、米国特許第6338839号に記載されているように蒸発速度を用いて決定することができる。
【0290】
他の好ましい実施形態によれば、組成物は1つまたは複数の非シリコーン揮発油を含んでよく、揮発性炭化水素油、アルコール、揮発性エステルおよび揮発性エーテルから選択されてよい。このような揮発性非シリコーン油の例には、8から16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油およびこれらの混合物、特に、C8〜C16イソアルケン(イソパラフィンとしても知られている)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカンなどのC8〜C16分枝状アルケン、例えば、IsoparまたはPermethylの商品名で販売されている油、イソヘキシルまたはネオペンタン酸イソデシルなどのC8〜C16分枝状エステルおよびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。好ましくは、揮発性非シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0291】
揮発性非シリコーン油の非限定的な例を、下記の表2に示す。
【0292】
【表2】

【0293】
本発明の組成物において使用されてよい他の非シリコーン油の例には、
・例えば、脂肪酸が、場合により直鎖または分枝状、かつ飽和または不飽和である鎖の種々の鎖長を有してよいグリセロールの脂肪酸エステルからなるトリグリセリド高含有の炭化水素系の植物油;これらの油は特に、小麦胚芽油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、カリテバター、ヒマシ油、スイートアーモンド油、マカダミア油、アプリコット油、ダイズ油、ナタネ油、綿実油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、ゴマ種子油、マロー油、アボカド油、へーゼルナッツ油、ブドウ種子油、ブラックカラント種子油、イブニングプリムローズ油、ミレット油、オオムギ油、キノア油、オリーブ油、ライ麦油、サフラワー油、キャンドルナッツ油、パッションフラワー油またはムスクローズ油;あるいは例えばStearineries Dubois社により販売されているものまたはMiglyol 810、812および818の名称でDynamit Nobel社により販売されているものなどのカプリル/カプリン酸トリグリセリド、
・式中R5が7から19個の炭素原子を始め、1から40個の炭素原子を含む直鎖または分枝状高級脂肪酸残基を表し、かつR6が3から20個の炭素原子を始め、1から40個の炭素原子を含む分枝状炭化水素系鎖を表し、R5+R6≧10である式R5COOR6の合成油またはエステル、例えば、パーセリンオイル(オクタン酸セトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、C12〜C15アルキル安息香酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、およびアルコールまたはポリアルコールのオクタン酸、デカン酸またはリシノレイン酸;ヒドロキシル化エステル、例えば、乳酸イソステアリルまたはリンゴ酸ジイソステアリル;およびペンタエリスリトールエステル、
・10から40個の炭素原子を含む合成エーテル、
・C8〜C26脂肪アルコール、例えばオレイルアルコール、ならびに
・これらの混合物
などの極性油が含まれる。
【0294】
好ましくは、液体脂肪相は、それが存在する場合には、組成物の全重量の5重量%から98.4重量%、より好ましくは組成物の全重量の10重量%から80重量%、最も好ましくは20重量%から75重量%、に相当する。
【0295】
皮膜形成剤
本発明の組成物は、有利には1つまたは複数の皮膜形成剤も含む。皮膜形成剤は、当技術分野において周知である。
【0296】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン含有ポリマーおよび少なくとも1つのシリコーン皮膜形成剤、好ましくはMKまたはMQ樹脂またはこれらの混合物を含む組成物が提供される。
【0297】
シリコーン樹脂の名称は、当技術分野において名称「MDTQ」として周知であり、これによりシリコーン樹脂がポリマーを構成する種々のモノマーシロキサンユニットに基づきシリコーン樹脂が記述されている。
【0298】
「MDTQ」の各文字は異なるタイプのユニットを意味する。文字Mは、1官能性ユニット(CH3)3SiO1/2を意味する。このユニットがポリマーの一部であるとき、ケイ素原子のみが1個の酸素を割り当てられるため、このユニットは、1官能性ユニットであるとみなされる。「M」ユニットは、下記の構造により表すことができる:
【0299】
【化35】

【0300】
下記の構造のように、Mユニットの少なくとも1つのメチル基がもう1つの基、例えば、挙げるとしたら式[R(CH3)2]SiO1/2を有するユニットにより置換されてもよい。
【0301】
【化36】

【0302】
式中、Rはメチル基以外の基から選択される。メチル基以外のこのような基の非限定的な例には、メチル基以外のアルキル基、アルケン基、アルキレン基、ヒドロキシル基、チオール基、エステル基、酸基、エーテル基が含まれ、これらの、メチル基以外の基は、さらに置換されてよい。
【0303】
記号Dは、2官能性ユニット(CH3)2SiO2/2を意味し、ここでケイ素原子と結合する2つの酸素原子はポリマーの残りの部分と結合するために使われる。ジメチコン油の主要なビルディングブロックである「D」ユニットは、下記のように表すことができる:
【0304】
【化37】

【0305】
Dユニットの少なくとも1つのメチル基がもう1つの基、例えば、挙げるとしたら式[R(CH3)2]SiO1/2を有するユニットにより置換されてもよい。
【0306】
記号Tは、3官能性ユニット(CH3)SiO3/2を意味し、下記のように表すことができる:
【0307】
【化38】

【0308】
Tユニットの少なくとも1つのメチル基がもう1つの基、例えば、挙げるとしたら式[R(CH3)2]SiO1/2を有するユニットにより置換されてもよい。
【0309】
同様に、記号Qは4官能性ユニットSiO4/2を意味し、ここで、ケイ素原子と結合する4つの酸素原子は全て、ポリマーの残りの部分と結合する。
【0310】
したがって、膨大な数の異なるシリコーンポリマーを製造することができる。さらに、得られる可能性がある各シリコーンポリマーの特性は、モノマーのタイプ、置換基のタイプ、ポリマー鎖のサイズ、架橋の程度およびあらゆる側鎖のサイズに依存して変化するであろうことが当業者には明らかであろう。
【0311】
シリコーンポリマーの非限定的な例には、シラン、シロキサン、シロキシシリケートおよびシルセスキオキサンが含まれる。このようなシロキサンの非限定的な例には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が含まれる。ポリジメチルシロキサンは、一般に長い直鎖状(CH3)2SiO2/2(すなわち、Dユニット)から構成され、かつポリマーのサイズおよびポリマーにおけるいずれかの置換基の存在および性質の両方に依存する粘度を有する。シロキシシリケートの非限定的な例は、トリメチルシロキシシリケートであり、下記の式により表すことができる:
[(CH3)3-Si-O] -(SiO4/2)y
(すなわち、MQユニット)式中、xおよびyは、例えば50から80の範囲であってよい。その一方で、シルセスキオキサンは、下記の式により表すことができる:
(CH3SiO3/2)x
(すなわち、Tユニット)式中、xは、例えば数千までの値を有する。
【0312】
ポリメチルシルセスキオキサンは、メチル基を置換する置換基をもたないシルセスキオキサンである。ある種のポリメチルシルセスキオキサンは、先にヘアケア組成物に使用されている。例えば、その公開内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5246694号を参照されたい。この特許は、界面活性剤、高粘性シリコーンの揮発性シリコーン中への水性エマルションおよびグアーガムの誘導体であるカチオン性ポリマーを含むシャンプー組成物を開示している。ここで開示された高粘性シリコーンは、Wackerにより市販されているResin MK(SiliconHarz MKとも称される)などのポリメチルシルセスキオキサン、およびGeneral ElectricおよびDow Corningにより市販されているResin MQなどのシロキシシリケートを含むシリコーン樹脂から選択されてよい。
【0313】
Resin MKおよびResin MQシリコーン樹脂は、揮発性担体が蒸発した後に皮膜を形成することができる。MQの皮膜は一般に、室温においては硬くて脆い、その一方でMKの皮膜は一般に、連続性があり柔軟である、すなわち脆くない。用途に応じて、より柔軟で、したがってより快適な皮膜を得るために、可塑剤を加えてもよい。
【0314】
一実施形態において、シリコーン皮膜形成剤は、Resin MKとも称され、Wacker Chemieにより市販されているBelsil PMS MKなどのポリメチルシルセスキオキサン皮膜形成剤であってよい。このポリメチルシルセスキオキサン皮膜形成剤は、重合された繰り返しユニットCH3SiO3/2(Tユニット)を含むポリマーであり、かつ1重量%またはモルパーセントまでの式(CH3)2SiO2/2のユニット(Dユニット)をもまた含んでよい。このポリマーの重量平均分子量は、10,000であると推定されている。このポリマーは、下記の図に例示されるように、「かご型」および「はしご型」立体配置をとっていると考えられる。ポリマーの大部分は、「はしご型」立体配置であり、この配置ではポリマーの末端がエトキシ基(CH3CH2O)によりキャップされている。エトキシ基は一般に、4.5重量%の量で存在し、そのモルパーセントは、7%(シリコーンユニット)が一般的である。エトキシ基は水と反応するため、少量かつ種々の量のSiOHもまたポリマー中に存在することがある。
【0315】
【化39】

【0316】
かご型
【0317】
【化40】

【0318】
はしご型
【0319】
本発明での使用に適した少なくとも1つのポリメチルシルセスキオキサン皮膜形成剤のもう1つの非限定的な例は、SHIN-ETSUにより市販されているKR-220Lである。このポリメチルシルセスキオキサン皮膜形成剤は、シリコーンTユニット(すなわち、式CH3SiO3/2のユニット)から構成されており、かつSi-OH(またはシラノール)末端ユニットを有する。KR-220LにはDユニットは存在しない。
【0320】
本発明の実施において有用であり得る少なくとも1つのポリメチルシルセスキオキサン皮膜形成剤の他の非限定的な例には、KR-242A(メチルTユニット(98%)およびジメチルDユニット(2%)とから構成され、かつSi-OH末端ユニットを有する)およびKR-251(メチルTユニット(88%)およびジメチルDユニット(12%)とから構成され、かつSi-OH末端ユニットを有する)が含まれ、これらはどちらもSHIN-ETSUにより市販されている。
【0321】
用途に応じ、本明細書において請求の組成物における少なくとも1つのポリメチルシルセスキオキサン皮膜形成剤の濃度はかなり変化してよい。当業者であれば、少なくとも1つのポリメチルシルセスキオキサン皮膜形成剤の量を所望の用途に応じて、通常のように決定することができるであろう。
【0322】
もう1つの実施形態において、シリコーン皮膜形成剤は、シロキシシリケートから選択されてよい。好ましくは、シロキシシリケートは、トリメチルシロキシシリケートであり、パウダー形態であってもなくてもよい。トリメチルシロキシシリケート(TMS)は、General ElectricによりSR1000の商品名で、またWackerによりTMS 803の商品名で市販されている。TMSはまた、Dow Chemicalにより、例えばシクロメチコンなどの溶媒に入ったものとしても市販されている。しかし、本発明によれば、TMSは、100%活性物質の形態で、すなわち、溶媒中ではなく、使用されてよい。
【0323】
シリコーン皮膜形成剤の他の非限定的な例には、その公開内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5061481号、第5219560号および第5262087号に記載のものなどのシリコーン/(メタ)アクリレートコポリマーが含まれる。シリコーン皮膜形成剤のさらに他の非限定的な例は、少なくとも1つの極性(メタ)アクリレートユニットの繰り返しユニットおよび少なくとも1つの非極性シリコーン鎖をグラフトしたビニルコポリマーから構成される非極性シリコーンコポリマーである。このようなコポリマーの非限定的な例は、Shin-Etsuにより、例えばKP-545の商品名で市販されている製品などのアクリレート/ジメチコンコポリマーまたはShin-Etsuにより、例えばKP-561の商品名で市販されている製品などのアクリレート/ステアリルアクリレート/ジメチコンアクリレートコポリマー、およびShin-Etsuにより、例えばKP-562の商品名で市販されている製品などのアクリレート/ベヘニルアクリレート/ジメチコンアクリレートコポリマーである。
【0324】
本発明での使用に適したシリコーン皮膜形成剤の他の非限定的な例は、その公開内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6045782号、第5334737号および第4725658号に開示されている式(XIV)および(XV)のユニットを含むシリコーンエステルである:
RaREbSiO[4-(a+b)/2] (XIV);および
R'xREySiO1/2 (XV)
式中、
RおよびR'は、同一でも異なっていてもよく、任意選択で置換された炭化水素基からそれぞれ選択され、
aおよびbは、同一でも異なっていてもよく、aとbの合計が1から3の範囲の数であるという条件で、それぞれ0から3の範囲の数であり
xおよびyは、同一でも異なっていてもよく、xとyの合計が1から3の範囲の数であるという条件で、それぞれ0から3の範囲の数であり
REは、同一でも異なっていてもよく、少なくとも1つのカルボン酸エステルを含む基からそれぞれ選択される。
【0325】
一実施形態において、RE基は、少なくとも1つの酸および少なくとも1つのアルコールの反応から形成される少なくとも1つのエステル基を含む基から選択される。もう1つの実施形態において、少なくとも1つの酸は、少なくとも2個の炭素原子を含む。もう1つの実施形態において、少なくとも1つのアルコールは、少なくとも10個の炭素原子を含む。少なくとも1つの酸の非限定的な例には、イソステアリン酸などの分枝状の酸、ベヘン酸などの直鎖状の酸が含まれる。少なくとも1つのアルコールの非限定的な例には、n-プロパノールおよび(3,3,3-トリメチロールプロポキシ)プロパンなどの分枝状エーテルアルカノールなどの1価アルコールおよび多価アルコールが含まれる。
【0326】
少なくとも1つのシリコーン皮膜形成剤の他の非限定的な例には、その公開内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5334737号に記載のものなどの液体シロキシシリケートおよびシリコーンエステル、例えばGeneral ElectricによりそれぞれSF 1318およびSF 1312の商品名で市販されている、ジイソステアロイルトリメチロールプロパンシロキシシリケートおよびジラウロイルトリメチロールプロパンシロキシシリケートが含まれる。
【0327】
少なくとも1つのシリコーン皮膜形成剤のさらに他の非限定的な例には、ビニルポリマー、メタクリル酸ポリマーおよびアクリル酸ポリマーから選択される骨格およびペンダントシロキサン基およびペンダントフルオロケミカル基から選択される少なくとも1つの鎖を含むポリマーが含まれる。このようなポリマーの非限定的な例には、少なくとも1つのAモノマーから誘導される少なくとも1つのユニット、少なくとも1つのCモノマーから誘導される少なくとも1つのユニット、Dモノマーから誘導される少なくとも1つのユニット、および任意選択で少なくとも1つのBモノマーから誘導される少なくとも1つのユニットが含まれ、ここで:
Aは、同一でも異なっていてもよく、1,1-ジヒドロパーフルオロアルカノール、オメガ-ヒドリドフルオロアルカノール、フルオロアルキルスルホンアミドアルコール、サイクリックフルオロアルキルアルコール、およびフルオロエーテルアルコールから選択される少なくとも1つのアルコールのフリーラジカル的に重合可能なアクリル酸エステル、および少なくとも1つのアルコールの前述のいずれかの類似体、ならびに1,1-ジヒドロパーフルオロアルカノール、オメガ-ヒドリドフルオロアルカノール、フルオロアルキルスルホンアミドアルコール、サイクリックフルオロアルキルアルコール、およびフルオロエーテルアルコールから選択される少なくとも1つのアルコールのフリーラジカル的に重合可能なメタクリル酸エステルおよび少なくとも1つのアルコールの前述のいずれかの類似体からそれぞれ選択され、
Bは、同一でも異なっていてもよく、少なくとも1つのAモノマーと共重合可能な補強モノマーからそれぞれ選択され、
Cは、同一でも異なっていてもよく、下記の式を有するモノマーからそれぞれ選択され:
X(Y)nSi(R)3-mZm
式中、
Xは、少なくとも1つのAモノマーおよび少なくとも1つのBモノマーと共重合可能なビニル基から選択され、
Yは、2価のアリレン基、2価のアリーレン基、2価のアルクアリーレン基、2価のアラルキレン基から選択され、これらの基は1から30個の炭素原子からなり、かつさらに、任意選択でエステル基、アミド基、ウレタン基および尿素基から選択される少なくとも1つの基をさらに含み、
nは0または1であり、
mは、1から3の範囲の数であり、
Rは、同一でも異なっていてもよく、水素、C1〜C4アルキル基、アリール基、およびアルコキシ基からそれぞれ選択され、かつ
Zは、同一でも異なっていてもよく、1価のシロキサンポリマー基からそれぞれ選択され、かつ
Dは、同一でも異なっていてもよく、フリーラジカル的に重合可能なアクリル酸コポリマーおよびフリーラジカル的に重合可能なメタクリル酸コポリマーからそれぞれ選択される。このようなポリマーおよびその製造は、その公開内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5209924号、第4972037号および国際公開第01/32737号に開示されている。
【0328】
少なくとも1つのシリコーン皮膜形成剤の他の非限定的な例には、シリコーン/アクリレートグラフトターポリマー、例えば下記の式を有するものが含まれる:
【0329】
【化41】

【0330】
式中、
a、bおよびcは、それぞれ69.9:0.1:30の重量比で存在し、
RおよびR1は、同一でも異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル基からそれぞれ選択され、かつ
mは、100から150の範囲の数である。
【0331】
一実施例において、mは、8,000から12,000の範囲、例えば10,000の分子量を有するマクロマーを与えるように選択される。もう1つの実施形態において、mは、124から135の範囲の数、例えば130である。これらのコポリマーの非限定的な例は、その公開内容が参照により本明細書に組み込まれている国際公開第01/32727 A1号に記載されている。
【0332】
適切なシリコーン皮膜形成剤のさらに他の例には、ビニル骨格、メタクリル骨格およびアクリル骨格から選択される骨格を含み、かつさらに少なくとも1つのペンダントシロキサン基を含むコポリマーが含まれる。このようなポリマーの非限定的な例は、その公開内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4693935号、第4981903号および第4981902号に開示されている。
【0333】
一実施形態において、少なくとも1つのコポリマーは、少なくとも1つのAモノマー、少なくとも1つのCモノマー、および任意選択で少なくとも1つのBモノマーを含み、ここで少なくとも1つのAモノマーはフリーラジカル的に重合可能なビニルモノマー、フリーラジカル的に重合可能なメタクリル酸モノマーおよびフリーラジカル的に重合可能なアクリル酸モノマーから選択され、少なくとも1つのBモノマーは、それが存在する場合には、少なくとも1つのAモノマーと共重合可能な補強モノマーから選択され、少なくとも1つのCモノマーは、下記の式を有するモノマーから選択される:
X(Y)nSi(R)3-mZm
式中、
Xは、少なくとも1つのAモノマーおよび少なくとも1つのBモノマーと共重合可能なビニル基から選択され、
Yは、2価の基から選択され、
nは0または1であり、
mは、1から3の範囲の数であり、
Rは、同一でも異なっていてもよく、水素、任意選択で置換されたC1〜C10アルキル基、任意選択で置換されたフェニル基、および任意選択で置換されたC1〜C10アルコキシ基から選択され、かつ
Zは、同一でも異なっていてもよく、1価のシロキサンポリマー基からそれぞれ選択される。
【0334】
Aモノマーの非限定的な例には、C1〜C12直鎖状アルコールのメタクリル酸エステル、C1〜C12分枝状アルコールのメタクリル酸エステル、スチレンモノマー、ビニルエステル、塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマー、およびアクリロイルモノマーが含まれる。
【0335】
Bモノマーの非限定的な例には、ヒドロキシル、アミノ、およびイオン性基から選択される少なくとも1つの基を含むアクリル酸モノマー、ならびにヒドロキシル、アミノ、およびイオン性基から選択される少なくとも1つの基を含むメタクリル酸モノマーが含まれる。イオン性基の非限定的な例には、第4級アンモニウム基、カルボキシレート塩、およびスルホン酸塩が含まれる。
【0336】
Cモノマーは、前記のパラグラフにおいてCモノマーに関して記載したものと同様である。
【0337】
シリコーン皮膜形成剤の他の非限定的な例には、下記の式を有するビニル-シリコーングラフトコポリマーおよび下記の式を有するビニル-シリコーンブロックコポリマーから選択されるコポリマーが含まれる:
【0338】
【化42】

【0339】
式中、
G5は、同一でも異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、フルオロアルキル基、水素および
-ZSA基からそれぞれ選択され、式中
Aは、フリーラジカル的に重合可能な少なくとも1つの重合されたモノマーを含むビニルポリマーセグメントから選択され、
Zは、2価のC1〜C10アルキレン基、2価のアラルキレン基、2価のアリーレン基、2価のアルコキシルアルキレン基から選択される。一実施形態において、Zは、メチレン基およびプロピレン基から選択される。
G6は、同一でも異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、フルオロアルキル基、水素および上記に定義の-ZSA基からそれぞれ選択され、
G2は、Aを含み、
G4は、Aを含み、
R1は、同一でも異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、フルオロアルキル基、水素およびヒドロキシルからそれぞれ選択される。一実施形態において、R1は、メチル基およびヒドロキシルなどのC1〜C4アルキル基から選択される。
R2は、同一でも異なっていてもよく、2価のC1〜C10アルキレン基、2価のアリーレン基、2価のアラルキレン基および2価のアルコキシアルキレン基からそれぞれ選択される。一実施形態において、R2は、2価のC1〜C3アルキレン基および2価のC7〜C10アラルキレン基から選択される。もう1つの実施形態において、R2は、-CH2-基および2価の1,3-プロピレン基から選択される。
R3は、同一でも異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、フルオロアルキル基、水素およびヒドロキシルからそれぞれ選択される。一実施形態において、R3は、C1〜C4アルキル基およびヒドロキシルから選択される。もう1つの実施形態において、R3は、メチル基から選択される。
R4は、同一でも異なっていてもよく、2価のC1〜C10アルキレン基、2価のアリーレン基、2価のアラルキレン基および2価のアルコキシアルキレン基からそれぞれ選択される。一実施形態において、R4は、2価のC1〜C3アルキレン基および2価のC7〜C10アラルキレン基から選択される。もう1つの実施形態において、R4は、2価の-CH2-基および2価の1,3-プロピレン基から選択される。
xは、0から3の範囲の数であり、
yは、5以上の数である。一実施形態において、yは、10から270の範囲であり、もう1つの実施形態において、yは、40から270の範囲である。
qは、0から3の範囲の数である。
【0340】
これらのポリマーの非限定的な例は、その公開内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5468477号に開示されている。これらのポリマーの非限定的な例は、ポリ(ジメチルシロキサン)-g-ポリ(イソブチルメタクリレート)であり、3M CompanyによりVS 70 IBMの商品名で市販されている。
【0341】
好ましい実施形態によれば、本組成物のシリコーン皮膜形成剤は、組成物の全重量に対して、0.1重量%から30重量%の範囲の量で組成物中に存在する。好ましくは、シリコーン皮膜形成剤は、組成物の全重量に対して、0.5重量%から20重量%、より好ましくは1重量%から10重量%の範囲の量で存在する。当業者であれば、本発明のシリコーン皮膜形成剤は、市販されている可能性があり、かつ供給者から希釈物の形態で供給されている可能性があることが認識されるであろう。したがって、本明細書において開示のシリコーン皮膜形成剤の量は、活性物質の重量パーセントを反映している。
【0342】
好ましい実施形態において、ポリオルガノシロキサンポリマーおよび皮膜形成剤は固体である。組成物は、固体が化合して本明細書に記載の組成物を形成するのに十分なように加熱することにより調製される。固体ポリオルガノシロキサンポリマーおよび皮膜形成剤のこの組合せは、色移り耐性で、長時間持続性の有益な組成物を提供する。
【0343】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン含有ポリマーおよび少なくとも1つの着色剤を含む化粧用組成物が提供される。好ましくは、このような着色された化粧用組成物は唇用組成物(例えば、リップスティック、液体リップカラー)
およびファンデーションである。
【0344】
この実施形態によれば、少なくとも1つの着色剤は、好ましくは、油溶性染料、真珠光沢顔料およびパール剤などの顔料、染料から選択される。
【0345】
本発明に基づき使用されてよい代表的な油溶性染料には、Sudan Red、DC Red 17、DC Green 6、β-カロチン、ダイズ油、Sudan Brown、DC Yellow 11、DC Violet 2、DC Orange 5、アナトーおよびキノリンイエローが含まれる。油溶性染料は、それが存在する場合には、一般に、組成物の全重量の20重量%までの範囲、例えば0.0001重量%から6重量%の濃度を有する。
【0346】
本発明に基づき使用されてよい真珠光沢顔料は、チタンまたはオキシ塩化ビスマスで被覆したマイカなどの白色真珠光沢顔料、酸化鉄で被覆したチタンマイカ、コンジョウまたは酸化クロムで被覆したチタンマイカ、前述のものから選択される有機顔料で被覆したチタンマイカなどの有色真珠光沢顔料、およびオキシ塩化ビスマスベースの真珠光沢顔料から選択されてよい。真珠光沢顔料は、それが存在する場合、組成物の全重量の50重量%までの範囲、例えば0.1重量%から20重量%、好ましくは0.1重量%から15重量%の濃度で組成物中に存在してよい。
【0347】
本発明に基づき使用されてよい顔料は、白色、有色、無機、有機、ポリマー、非ポリマー、被覆または無被覆顔料から選択されてよい。無機顔料の代表的な例には、任意選択で表面処理された二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、グンジョウ、水和クロムおよびコンジョウが含まれる。有機顔料の代表的な例には、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、およびコチニールカルミン、バリウム、ストロンチウム、カルシウムおよびアルミニウム系レーキが含まれる。
【0348】
顔料は、組成物の全重量の50重量%までの範囲、例えば0.5重量%から40重量%、さらには例えば2重量%から30重量%の濃度で組成物中に存在してよい。ある種の製品の場合、顔料は、真珠光沢顔料を含め、組成物の全重量の例えば50重量%までに相当してよい。
【0349】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン含有ポリマーを含む組成物は、無水物である。「無水物」とは、組成物は実質的に水を含まない(すなわち、組成物の重量の約0.1重量%未満の水を含む)ことを意味する。
【0350】
他の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン含有ポリマーを含む組成物は、さらに水を含む。この実施形態において、水は好ましくは、組成物の全重量に対して約0.1重量%から約70重量%、好ましくは約0.5重量%から50重量%、より好ましくは約1重量%から30重量%の範囲の量で存在する。好ましくは、このような水含有化粧用組成物は唇用組成物(例えば、リップスティック、液体リップカラー)、ファンデーションまたはマスカラ、およびエマルションまたはディスパージョンである。
【0351】
短鎖エステルと同様な美容的特性を提供する追加的成分は、J-O-Kで表すことのできる短鎖エーテルであり、
式中、JおよびKは、同一でも異なっていてもよく、場合により1つまたは複数の二重結合を含む、1から40個の炭素原子、好ましくは7から19個の炭素原子の直鎖または分枝状アルキル基を表す。このようなエーテルの例には、ジカプリルエーテルが含まれる。
【0352】
油溶性または分散性ポリマー
本発明のベースコート組成物は、媒体に油溶性または分散性であり、ポリオルガノシロキサン含有ポリマー以外であって、かつ皮膜形成特性を有してよく、かつ500から1,000,000、例えば1,000から500,000、例えばさらに5,000から100,000など、よりさらには5,000から20,000の平均分子量を有する少なくとも1つのポリマーを含んでもよい。この少なくとも1つの油溶性ポリマーは、皮膜の粘度の増加および/または耐久性の向上に寄与することができる。少なくとも1つの油溶性ポリマーは、30℃以下の軟化点を有してよい。
【0353】
本発明において使用されてよい油溶性ポリマーの例として、ポリアルキレン、特にポリブテン、ポリ(メタ)アクリルレート、直鎖または分枝状、飽和または不飽和C1〜C8アルキル基を有するアルキルセルロース、例えばエチルセルロースおよびプロピルセルロース、脂肪相と相容性のシリコーンポリマー、およびビニルピロリドン(VP)コポリマー、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。
【0354】
ビニルピロリドンコポリマー、C2〜C30、例えばC3〜C22アルケンのコポリマー、およびこれらの組合せを使用してよい。本発明において使用されてよいVPコポリマーの例として、VP/酢酸ビニル、VP/エチルメタクリレート、ブチル化ポリビニルピロリドン(PVP)、VP/エチルメタクリレート/メタクリル酸、VP/エイコサン、VP/ヘキサデセン、VP/トリアコンテン、VP/スチレンまたはVP/アクリル酸/ラウリルメタクリレートコポリマーを挙げることができる。
【0355】
皮膜の耐久性ばかりでなく、感触および均一性を目的としても、7,000から7,500の平均分子量を有するPVP/ヘキサデセンコポリマーまたは別法として8,000から9,000の平均分子量を有するPVP/エイコサンコポリマーを使用することができる。
【0356】
本発明の組成物の油溶性または分散性ポリマーはまた、それが存在する場合、組成物の全重量に対して、0.01重量%から20重量%(活性物質として)、例えば、1重量%から10重量%の範囲の量で使用されてもよい。
【0357】
本発明のベースコート組成物は、皮膚、唇および/または皮膚付属器などのケラチン物質のための、着色または無着色の皮膚科学的組成物またはケア用組成物の形態、日焼け防止組成物の形態またはスティック形態のメークアップ除去製品であってよい。ベースコート組成物は、特に皮膚、皮膚付属器または唇用のケアベース(唇を寒さおよび/または日光および/または風から保護するための、リップバーム、または皮膚、爪または毛髪のためのケアクリーム)として使用されてよい。本明細書に定義の通り、デオドラント製品は、個人衛生製品であり、ケラチン線維を含むケラチン物質のケア、メークアップ、トリートメントには関連しない。
【0358】
本発明のベースコート組成物は、皮膚用の着色メークアップ製品の形態、特に、任意選択でケアまたはトリートメント特性を有するファンデーション、頬紅、フェイスパウダー、アイシャドウ、コンシーラー製品、アイライナー、身体用メークアップ製品、任意選択でケアまたはトリートメント特性を有するリップスティックなど唇用メークアップ製品、特にマスカラケーキ形態の爪、睫毛などの皮膚付属器用のメークアップ製品、特にペンシル形態のまたは眉毛および毛髪用のメークアップ製品の形態であってもよい。
【0359】
言うまでもなく、本発明のベースコート組成物は、化粧品にまたは皮膚科学的に許容できるべきであり、すなわち、無毒性の生理的に許容できる媒体を含むべきであり、かつヒトの皮膚、皮膚付属器または唇への適用が可能であるべきである。本発明の目的において、表現「化粧品に許容できる」は、好ましい外観、におい、感触および/または味質の組成物を意味する。
【0360】
少なくとも1つのポリオルガノシロキサン含有ポリマー、好ましくはシリコーン-ポリアミドコポリマーを含む本発明のベースコート組成物はケラチン性物質に関連する欠点、皮膚の欠点または変色を覆うかまたは隠すために、あるいはケラチン性物質の外観を向上させるために、ケラチン性物質をメークアップするのに十分な量で、皮膚の所望の区域に局所的に適用される。
【0361】
(実施例)
本発明に基づくリップグロス組成物を下記の処方により調製した。
全ての数値は、%w/wで表されている。
(実施例1)
【0362】
【表3】

調整手順
実施例1は、下記のように調製した:
1.相Aの油を、プロペラミキサーで、中程度の攪拌を行ないながら、ビーカー中で、100℃で10分間予め加熱した。
2.相B(KRATON G1657 M)を相Aに100℃で加えた。
3.相Bと相Aを、相Bが相Aに完全に溶解するまで、高速で30分間、混合した。
4.次いで、95℃で、中程度の攪拌を行ないながら、相C(Regalite R1100)を相(A+B)に、ゆっくりと加え、溶液を均一にした。
5.温度を90℃に下げ、油混合物を含む相Dを相(A+B+C)に加え、低速で攪拌した。
6.次いで攪拌速度を下げ、生成した液体を室温まで冷却した。
7.試料を個別のパッケージに移し、室温まで冷却した。
8.試料は、望ましい光沢および適用特性を発揮した。
【0363】
(実施例2 光沢(shiny)液体リップグロス)(ex 2 de OA 06154)
【0364】
【表4】

実施例2は、下記のように調製した:
1.相Aの油を、プロペラミキサーで、ビーカー中で、中程度の攪拌を行ないながら100℃で10分間予め加熱した。
2.相B(KRATON G1657 M)を相Aに100℃で加えた。
3.相Bと相Aを、相Bが相Aに完全に溶解するまで、高速で30分間、混合した。
4.次いで、95℃で、中程度の攪拌を行ないながら、相C(Regalite R1100)を相(A+B)に、ゆっくりと加え、溶液を均一にした。
5.温度を90℃に下げ、油混合物を含む相Dを相(A+B+C)に加え、低速で攪拌した。
6.別のビーカー中で相Eの成分を手動攪拌で混合し、顔料が完全に油に濡れて、顔料混合物を形成させた。
7.次いで顔料混合物を3本ロールミルに移し、粉砕して色を均一にして粉砕顔料混合物を形成させた。
8.次いで粉砕顔料混合物を相(A+B+C+D)を入れたビーカーに移し平均的な速度で約5分間攪拌した。
9.次いで相Fを相(A+B+C+D+E)を入れたビーカーにゆっくりと加え、高速で約10分間攪拌した。
10.次いで攪拌速度を下げ、生成した液体を室温まで冷却した。
11.次いで試料を室温で個別のパッケージに移した。
12.試料は、望ましい光沢および適用特性を発揮した。
【0365】
実施例1及び2のレオロジー
13. 実施例1及び2の処方について、0.01rad/sの周波数、25℃の温度における貯蔵弾性率G'は、それぞれ、0.035Pa及び16.0Paであった。
14. 実施例1及び2の処方について、一定ストレス0.8Pa、25℃の温度におけるクリープ粘度は、それぞれ、120Pa及び1.79×103Pa.sであった。
【0366】
(実施例3)
【0367】
【表5】

調整手順
実施例3は、下記のように調製した:
1.相Aの油を、プロペラミキサーで、中程度の攪拌を行ないながら100℃で10分間予め加熱した。
2.相B(KRATON G1657 M)を相Aに100℃で加えた。
3.相Bと相Aを、相Bが相Aに完全に溶解するまで、高速で30分間、混合した。
4.次いで、95℃で、中程度の攪拌を行ないながら、相C(Regalite R1100)を相(A+B)に、ゆっくりと加え、溶液を均一にした。
5.温度を90℃に下げ、油混合物を含む相Dを相(A+B+C)に加え、低速で攪拌した。
6.別のビーカー中で相Eの成分を手動攪拌で混合し、顔料が完全に油に濡れて、顔料混合物を形成させた。
7.次いで顔料混合物を3本ロールミルに移し、粉砕して色を均一にして粉砕顔料混合物を形成させた。
8.次いで粉砕顔料混合物を相(A+B+C+D)を入れたビーカーに移し平均的な速度で約5分間攪拌した。
9.次いで相Fをビーカーにゆっくりと加え、高速で約10分間攪拌した。
10.次いで攪拌速度を下げ、生成した液体を90℃で個別のパッケージに移した。
11.次いでパッケージに入った試料を室温まで冷却した。
12.試料は、望ましい光沢および適用特性を発揮した。
【0368】
実施例3のレオロジー
13.実施例3について、0.01rad/sの周波数、25℃の温度における貯蔵弾性率G'は、103.3Paであった。
14.実施例3の処方について、一定ストレス0.8Pa、2Pa、5Paおよび7Pa、25℃の温度におけるクリープ粘度は7.35×104Pa.s、6.29×103Pa.s、4.63×102Pa.sおよび2.76×102Pa.sであった。
【0369】
(実施例4)
【0370】
本発明に基づく化粧用製品の光沢の程度および光沢の持ちを測定するために実験を行なった。
【0371】
ベースコート組成物
【0372】
【表6】

【0373】
トップコート組成物
【0374】
【表7】

【0375】
実験は、ヒトの唇へベースコート組成物およびそれに続いてトップコート組成物を適用するというものであった。次いで、下記に特定のプロトコールを用いて、光沢の持ちを決定するために、光沢の測定をT0(適用時)、T1(1時間後)、T2(2時間後)に行なった。
【0376】
光沢測定プロトコール
上記の化粧用製品の光沢を測定するために、先ず、測定を行なうために使用する光の強度を決定し、次いで唇の表面からの光の反射を測定した。実験は、垂直配向の第一の偏光板を光源の前に、垂直配向の第二の偏光板をビデオカメラの前において行なった。ビデオカメラは先ず、光沢から唇へと通過するあらゆる光から生じる垂直光に沿った表面反射を記録した。
【0377】
次いで、表面の下を透過するあらゆる垂直光の強度を記録するために、カメラの前の偏光板を90度回転(ビデオの速度で)させた。表面下の透過光の水平強度を次いで測定した。第2の水平測定は、所望の表面シグナル(光沢)へのあらゆる表面下での寄与に相当する補正である。そこで、光沢の値を得るために、第1の数値から第2の数値を減じた。
【0378】
光沢の動力学表
光沢測定(±2)
T0 181
T1 183
T2 172
【0379】
上記のデータから分かるように、本発明の化粧用製品の有する光沢の度合いは、適用した最初の時点において高い。しかし、驚くべきことに、1時間後に、光沢の度合いはほとんど変わらずに残存しており、2時間後でも非常に高く、光沢の経時持続性が極度に高いことを証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのハードセグメントおよび少なくとも1つのソフトセグメントを有する少なくとも1つのブロックコポリマー、
(b)少なくとも1つの粘着性付与成分、
(c)少なくとも1つのソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒、および
(d)任意選択で、少なくとも1つの着色剤
を含み、前記少なくとも1つのハードセグメントが50℃以上のTg値を有し、かつ前記少なくとも1つのソフトセグメントが20℃以下のTg値を有する化粧用組成物。
【請求項2】
(a)が、式中Aがスチレンに相当し、かつBがゴムに相当するA-B-Aタイプのコポリマーの、少なくとも1つのトリブロック熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)が、式中Aがスチレンに相当し、かつBがゴムに相当するA-Bタイプのコポリマーの、少なくとも1つのジブロック熱可塑性エラストマーである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(a)が、式中Aがスチレンに相当し、かつBがゴムに相当する(i)A-Bタイプのコポリマーの、少なくとも1つのジブロック熱可塑性エラストマーおよび(ii)A-B-Aタイプのコポリマーの、少なくとも1つのトリブロック熱可塑性エラストマーの混合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)が、(a)の重量を基にして、約30重量%未満のスチレン含有量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(a)が、組成物の重量を基にして、0重量%超から約50重量%の量、特に0重量%超から約10重量%の量で組成物中に存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの粘着性付与成分が、組成物の重量を基にして、0重量%超から約90重量%の量、特に0重量%超から約30重量%の量で組成物中に存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの粘着性付与成分が、水添スチレン/メチルスチレン/インデンコポリマーである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
粘着性付与成分が、数字δに相当する溶解度パラメータを有し、かつブロックコポリマーが、δ±2に相当する溶解度パラメータをもつ少なくとも1つのセグメントを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒が、室温で約1から約50cps、特に約2から約20cpsの粘度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒が、数字δ'に相当する溶解度パラメータを有し、かつブロックコポリマーが、δ'±2からδ'±0.3の溶解度パラメータをもつ少なくとも1つのソフトセグメントを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒が、約150から約450の重量平均分子量を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つのソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒が、約500から約2000の重量平均分子量を有する少なくとも1つの共溶媒を、組成物の重量を基にして、任意選択で0重量%超から約60重量%の量でさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つのソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒が、組成物の重量を基にして、0重量%超から約85重量%の量で組成物中に存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒が、イソエイコサン、ポリブテン、水添ポリブテン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリデセンおよび水添ポリデセンから選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
ソフトセグメントを溶解することができる少なくとも1つの溶媒と同様のタイプのホモポリマーであって、重量平均分子量が約2500超である少なくとも1つのホモポリマーを、組成物の重量を基にして、任意選択で0重量%超から約30重量%の量でさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
唇に適用されたときに色を与えるのに有効な量で着色剤が存在する、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの変性シリコーンを、組成物の重量を基にして、任意選択で0重量%超から約30重量%の量でさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも1つの変性シリコーンが、アルキル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、フルオロシリコーン、およびこれらの混合物から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1つのゲル化剤を、組成物の重量を基にして、任意選択で0.1%から約20重量%、特に、0.1%から約10重量%の量でさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも1つのゲル化剤が、フュームドシリカ、疎水性シリカおよび/または特にヘクトライト、ベントナイト、クオタニウム-18、ベントナイト、ステアラルコニウム、ベントナイトおよびこれらの混合物から選択される変性クレイである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの光沢向上剤をさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1つの光沢向上剤が、約10,000未満、特に約2,000未満の平均数分子量を任意選択で有するフェニル化シリコーンである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1つの光沢向上剤が、組成物の重量を基にして、任意選択で0重量%超から約30重量%、特に0重量%超から約20重量%の量で存在する、請求項22または23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
(a)式中Aがスチレンに相当し、かつBがゴムに相当するA-B-Aタイプのコポリマーのトリブロック熱可塑性エラストマーを約1から約10重量%、
(b)スチレン/メチルスチレン/インデンコポリマーから誘導される少なくとも1つの水添炭化水素樹脂を約1から約40重量%、
(c)重量平均分子量が150から450の少なくとも1つの炭化水素溶媒を約1から約60重量%、および
(d)任意選択で、少なくとも1つの着色剤
(全ての重量は組成物の重量を基にする)
を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
0.01rad/sの周波数ωにおいて、25℃で約0.01Paから約500Paの範囲の貯蔵弾性率G'を有する、請求項1から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
25℃で約2Pa.sから約150,000Pa.sの範囲のクリープ粘度(ηcreep)を有する、請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載の組成物を唇に接触させることを含む、唇を手入れするための美容方法。
【請求項29】
(a)ケラチン性基質を用意するステップと、
(b)ベースコート組成物をケラチン性基質に適用するステップであって、前記ベースコート組成物が、
(i)(1)少なくとも1つのオルガノシロキサンユニットならびにエステル基、スルホンアミド基、カルバメート基、チオカルバメート基、尿素基、チオ尿素基、オキサミド基、グアニジノ基、ビグアニジノ基、アミド基、およびこれらの混合物から選択される、水素相互作用を形成することができる少なくとも2つの他の基を含む(コ)ポリマー、
(2)シリコーンポリアミドコポリマーおよびこれらの混合物
から選択されるポリマーを含む少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、
(ii)少なくとも1つのシリコーン皮膜形成剤、
(iii)少なくとも1つの揮発油、
(iv)少なくとも1つの着色剤
を含むステップと、
(c)ベースコート組成物の上からトップコートを適用するステップであって、前記トップコート組成物が前記請求項1から28に定義されている通りであるステップと
を含むケラチン性基質をメークアップする美容方法。
【請求項30】
(b)(i)がベースコート組成物の重量を基にして、約0.5から約30重量%、特に約1から約20重量%の量で存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(b)(ii)がトリメチルシロキシシリケートである、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
(b)(ii)がベースコート組成物の重量を基にして、約0.1から約30重量%、特に約0.5から約20重量%の量で存在する、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ケラチン性基質が唇である、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ケラチン性基質が毛髪である、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
トップコート組成物が、少なくとも1つの短鎖エステルを、トップコート組成物の重量を基にして、任意選択で0重量%超から約20重量%、特に0重量%超から約15重量%、より特に0重量%超から約10重量%の量でさらに含む、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
(b)(i)がシリコーン-ポリエステルコポリマー、シリコーン-ポリカルバメートコポリマー、シリコーン-スルホンアミドコポリマー、シリコーン-尿素コポリマー、シリコーン-チオ尿素コポリマー、シリコーン-オキサミドコポリマー、シリコーン-グアニジノコポリマー、シリコーン-ビグアニジノコポリマーおよびこれらの混合物から選択される、請求項28から35のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2011−219490(P2011−219490A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−147652(P2011−147652)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2007−121913(P2007−121913)の分割
【原出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】