説明

ブロックマット用シート及び該シートを用いたブロックマット

【課題】コンクリートブロックとの間の補強力及び接着力が高められ、かつ、特殊な織機や編機を使用することなく簡便に製造することができるブロックマット用シートの提供。
【解決手段】補強・接着糸として高強度低伸度フィラメントをタテ糸方向に入れた、透水性及び可撓性を有する土砂粒子不通過性の織物からなるブロックマット用シートにおいて、該織物のヨコ糸方向にも補強・接着糸が入れられており、該ヨコ方向の補強・接着糸の一部が、該タテ糸方向の補強・接着糸を含んで該織物の連続した5本以上のタテ糸と組織されていない糸飛び部分と組織された部分を交互に形成しており、該糸飛び部分を形成するヨコ方向の補強糸又は接着糸のクリンプ率が10%以下であること特徴とする前記ブロックマット用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表浸食防止用工ブロックマットや地盤補強用ブロックマットに使用するために好適なブロックマット用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、護岸又は法面保護工事は、例えば保護すべき土面を整地して突き固めた上にフィルターを敷設し、更に栗石を積み重ねた後、その上面にセメントモルタルを目地に施しながらコンクリートブロックを張り付けていた。
しかしながら、かかる工法は手間を要し工期が長引き、また、コンクリートブロックの張り付けに熟練した専門工を必要とする等の欠点があった。
【0003】
そこで、これらの欠点を解消するために、予め織布等のシートにコンクリートブロックを接着した地表浸食防止用マットを工場で生産し、保護すべき法面を整地した上にこのマットを敷設する考案が開示された(以下、特許文献1参照)。当該工法は接着剤を用いてコンクリートブロックとシートとを接着するが、この接着剤としてエポキシ樹脂等を用いた場合、熱処理すれば数時間で接着固定できる。また、特許文献2には、未硬化のコンクリートブロックにシートを押し当て、シートの繊維間にコンクリートの一部を浸透せしめ、この状態でコンクリートを固化させて地表侵食防止用工マットを製造する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1には、地表侵食防止用工マットを敷設する際は、クレーン等でシート端を把持して吊り下げることが記載されている。しかしながら、シートとコンクリートブロックとの間の接着力が低いと、ブロックマットを現場で敷設する際、コンクリートブロックがシートから剥離してしまう等、安全性を脅かす問題が発生してしまう。
【0005】
また、従来、軟弱地盤を安定化させるために、筏工法(軟弱地盤に丸太で筏を組み、載荷重を分散させる)や玉石基礎工法(軟弱地盤に多量の玉石を敷き詰めて、バイブレーター等にて締固めを行ない、載荷重を分散させる)等の浅層軟弱地盤に適した工法と、パイルネット工法(軟弱地盤に木、コンクリート、鋼などの既成杭を適切な深さに打ち込んだ後、杭頭部同士をロープ等の連結材で連結し、その上部に土木用シートなどを敷設して盛土を行なう)等の深層軟弱地盤に適した工法がある。筏工法や玉石基礎工法は、浅層地盤との支持拘束性が少なく、且つ敷設に手間が掛かる問題がある。一方、パイルネット工法は、深層地盤の支持拘束は高いが浅層地盤の載荷重の分散が弱い問題があり、浅層地盤の支持拘束性と高載荷重分散を同時に兼ね備えた工法の開発が望まれていた。
【0006】
かかる問題を解決するため、以下の特許文献3には、地盤を補強し、変形を拘束するために、突状に形成された先端部と平らな天面とが形成される複数の補強ブロックと、前記複数の補強ブロックの前記天面に接着体または固定体により前記複数の補強ブロックが整列して一体的に接着または固定されたシートと、を有することを特徴とする地盤補強用ブロックマットが提案されている。かかる地盤補強用マットも、前記した特許文献1に記載された地表侵食防止用工マットと同様に、敷設の際、シートを把持して吊り下げる場合がある。
【0007】
また、以下の特許文献4と特許文献5には、ブロックマット用シート上にループ糸やパイル糸を形成し、コンクリートブロックとの接着性を向上させる方法が提案されている。
しかしながら、これらの方法では、シートの製造に特殊な織機や編機が必要であり、製造工程が煩雑になるとともに、費用負担も重くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭51−9135号公報
【特許文献2】特開昭54−93018号公報
【特許文献3】特開2009−108660号公報
【特許文献4】特公平1−52179号公報
【特許文献5】特開2006−241968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、前記した地表浸食防止用工ブロックマットや地盤補強用ブロックマットにおいて、コンクリートブロックとの間の補強力及び接着力が高められ、かつ、特殊な織機や編機を使用することなく簡便に製造することができるブロックマット用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、以下のことを発見した。
ブロックマット用シートの製造時に、ループやパイル等を形成させるための専用の織機や編機を追加使用せず、通常の織機のみを使用して、ヨコ方向の補強糸又は接着糸(以下、単に「補強・接着糸」ともいう。)(シート幅方向の糸)の一部をたるませずに、タテ糸(シート長さ方向の糸)と組織しない糸飛び部分を形成させることで、このシートをコンクリートブロックと接着剤やモルタル等で接着固定した場合、タテ糸と組織しないヨコ方向の補強・接着糸の糸飛び部分が接着剤やモルタルと良く絡むようになる結果、コンクリートブロックと該シートとの間の接着力が高まりマット敷設時の安全性が向上される。
【0011】
以上の発見に基づき、本発明者は以下の発明を完成するに至った。
[1]補強・接着糸として高強度低伸度マルチフィラメントをタテ糸方向に入れた、透水性及び可撓性を有する土砂粒子不通過性の織物からなるブロックマット用シートにおいて、該織物のヨコ糸方向にもと補強・接着糸が入れられており、該ヨコ方向の補強・接着糸の一部が、該タテ糸方向の補強・接着糸を含んで該織物の連続した5本以上のタテ糸と組織されていない糸飛び部分と組織された部分を交互に形成しており、該糸飛び部分を形成するヨコ方向の補強・接着糸のクリンプ率が10%以下であること特徴とする前記ブロックマット用シート。
【0012】
[2]前記[1]に記載のブロックマット用シートにコンクリートブロックが接着・固定された地表浸食防止用工ブロックマット。
【0013】
[3]前記[1]に記載のブロックマット用シートに補強用ブロックが接着・固定された地盤補強用ブロックマット。
【発明の効果】
【0014】
ヨコ方向の補強・接着糸の一部がタテ糸と組織されていない糸飛び部分を有する本発明に係るブロックマット用シートは、コンクリートブロックを接着・固定する際、該糸飛び部分が接着剤と良く絡むようになる結果、コンクリートブロックと該シートとの間の接着力が高まることでマット敷設時の安全性が向上する。また、本発明に係るブロックマット用シートは、シート上のタテ方向にループやパイル等のたるみ糸を形成する必要がないため、特殊な織機を使用せずに、簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】法面保護用地表浸食防止用工ブロックマット敷設概略図。
【図2】ブロックマット用シート上にコンクリートブロックを接着・固定した地表浸食防止用工ブロックマットの一例の図面に代わる写真。
【図3】(1)は、補強・接着糸であるヨコ方向のポリエステルマルチフィラメントが、タテ方向の補強・接着糸であるポリエステルマルチフィラメントと織物の透水機能性タテ糸であるポリエチレンモノフィラメントを交互に組織された状態と、ポリエステルマルチフィラメントとポリエチレンモノフィラメントとを飛び越えてた未組織状態とが繰り返されている配置図である。 (2)は、(1)において補強・接着糸であるヨコ方向のポリエステルマルチフィラメントの前後のタテ糸総てをポリエチレンモノフィラメントであるヨコ糸で組織された配置図である。
【図4】地表浸食防止用工ブロックマットを敷設の為に重機で吊り下げた時の概略図。
【図5】地盤補強用ブロックマットの下方からの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るブロックマット用シートは、シートを通して地表面への透水性が良く、且つシートにより地表面の土砂が流出することを防止する浸食防止機能を保有するものであり、フィルター効果を有するシートが用いられる。ここで、フィルター効果とは、透水性を有しつつ、土砂の透過を防ぐ効果であり、このような効果を有するシートとしては、織布や編物等の網目を有するシートが好ましく用いられる。網目のサイズにより、フィルター効果の程度及び透水性を制御することができるが、本発明においては、1mm2以下の網目を保有しているものが好ましく用いられる。
【0017】
更に、本発明に係るシートは、可撓性に優れ、地表面とよく馴染み、密着性がよく、不等沈下の恐れのある軟弱地盤等にも使用できるものが望ましい。したがって、本発明のシートの素材としては、合成繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のオレフィン系繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリビニルアルコール繊維等の汎用繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド等の機能繊維、天然繊維、再生化学繊維等が挙げられ、これらの単独でも組み合わせでもよい。また、タスラン加工糸やスパン加工糸を使用してもよい。シートは網目を有するものであれば織布、編物を問わないが、本発明に係るシートにおいては、伸びの少ない織布である。
【0018】
上記ブロックマットは、使用する際にタテ(長さ)方向の両端を把持して吊り下げられるため、前記シートにはコンクリートブロックの荷重で破損しない程度の引張強度が必要である。また、ブロックずれを少なくするには前記シートの耐引張破断伸び率が小さく、伸び難いものが望ましい。
また、前記ブロックマットの敷設時にはコンクリートブロックの荷重が接着部に作用する。よって、敷設の安全性を確保するとともに、敷設後の精度を維持するために、コンクリートブロックとシートの間の接着には、高い接着強度が求められる。
【0019】
このように、高強度、低伸度及び高接着力の要求を満たすために、例えば、繊維シートとして、補強糸・接着糸として高強度低伸度マルチフィラメントを一部に用いたシートが従来使用されている。かかる補強・接着糸としては、具体的には、引張破断強度6cN/dtex以上、引張破断伸び度25%以下の高強度低伸度のポリエステルマルチフィラメント、ポリアミドフィラメント、ビニロンフィラメント等が挙げられる。
しかしながら、従来使用されてきた繊維シートは、タテ方向のみに補強・接着糸が入れられた織編物であって、コンクリートブロックとの接着性が充分ではなかった。本発明に係るブロックマット用シートは、タテ方向に加え、ヨコ方向にも補強・接着糸を入れたことを特徴とする。
【0020】
前記タテ方向補強糸の織り込み本数は3本/インチ以上が好ましい。ブロックマットは、敷設に際しタテ(長さ)方向の両端を把持して吊り下げられるため、上記シートにはブロック荷重で破損しないだけの強度が必要であり、更に敷設時のマット回転移動等を考慮すると約5倍程度以上の安全率を見込む必要があるためである。例えば、8mの当該シートに20cm四角の5kgコンクリートブロックを接着・固定する場合には、シートの耐引張破断強さは約49kN/m以上とすることが好ましい。
【0021】
また、前記したように、ブロックマットとして用いる場合、シートのタテ方向の耐引張破断伸び率は、低い方が好ましい。該耐引張破断伸び率を低下させる方法としては、前記補強糸のクリンプ率を低くすることが挙げられる。すなわち、タテ方向に補強糸を入れる場合、ヨコ方向の糸を乗越える間隔(本数)を多くすることによりクリンプ率を下げ、耐引張破断伸び率を下げることができる。例えば、具体的には、乗越える間隔が3本ではクリンプ率は5.9%、耐引張破断伸び率は22%であるが、乗越える間隔が6本ではクリンプ率は4.5%、耐引張破断伸び率は18%となる。前記タテ方向の補強糸のクリンプ率は7%以下、該補強糸がヨコ方向の糸を乗越える間隔は3本以上とするのが好ましい。
また、前記シートをブロックマットとして用いる場合、ブロックずれを小さくするために、タテ方向の耐引張破断伸び率は25%以下とするのが好ましい。
【0022】
本発明においては、前記シートのヨコ方向にも補強・接着糸を入れ、タテ方向の補強・接着糸を含めてタテ糸と組織されない糸飛び部分を形成することで、該シートとブロックマットとの接着性をさらに向上させることができる。例えば、平織組織上に5mmのループを1本/インチ形成する場合、当該ループ糸のクリンプ率は42%となる。一方、本発明における、前記糸飛び部分を形成するヨコ方向の補強・接着糸のクリンプ率は10%以下であり、これは一般的な平織物のヨコ糸と同程度である。ループ糸やパイル糸等を有するシートの製造には専用の織機や編機を要するが、本発明にかかる糸飛び部分を有するシートは、これら専用の機械を用いることなく簡便に製造することができる。
前記シートとコンクリートブロックとの接着性は、該ヨコ方向の補強・接着糸の糸飛び部分の長さが影響する。糸飛び部分の長さが、織物を構成するタテ糸5本未満では、平織組織に近いために接着性向上があまり期待できない。一方、糸飛び部分の長さがあまりに長いとシート剛性が低くなり、ブロックマットの製造時、シワ防止の為にシートをピンと張る操作が必要になる。本発明においては、シート自体の変形を小さくするため、ヨコ方向の補強・接着糸の糸飛び部分は、千鳥状、すなわち互い違いに配置することが好ましい。
【0023】
シートに接着固定する、コンクリートブロックの長手方向及び幅方向の間隔には特に制約はないが、通常、間隔が約30mm以下で、ほぼ連続的に配置するのが好ましい。
接着固定には、通常、無機又は有機の接着剤、あるいはこれらが混合された接着剤が用いられる。無機接着剤としては、例えば、モルタル、コンクリート等の水硬性セメント組成物を用いることができる。有機接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いたもの、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂等の熱可塑性樹脂を用いたものや、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等合成ゴムを用いたもの等を用いることができ、強度及び硬化性の優れたエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
また、未硬化のコンクリートブロックにシートを接触させた後、該コンクリートブロックを硬化させることで、該コンクリートブロックを該シートに接着してもよい。
【0024】
一方、図6に示すように、地盤補強用ブロックマットは、複数の補強用ブロックと、該補強用ブロックを一体的に接着固定するためのシートとから構成される。補強用ブロックは、シートに対して整列して配置され、接着体又は固定体により一体的に固定されている。
補強用ブロックは、地盤に接する下方が円錐状に形成され、上方が円柱状に形成される。補強用ブロックの材質は、下方の先端部は通常上方部分と同材質、もしくは軟弱地盤に硬い石等があり上方部分が欠ける恐れが懸念される時は、先端部以外の上方部分とで材質が異なる。具体的には、上方部分は圧縮力に強いコンクリートが用いられ、下方の先端部は引張力が強く弾性のある金属又は樹脂にて構成する。
かかる地盤補強用ブロックマットにも、前記したブロックマット用シートを使用することができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を説明する。
引張破断強さ及び耐引張破断伸び率の測定は、JIS L1096のラベルドストリップ法に求めた。
また、クリンプ率は、シート上に1m間隔で印しを付け、シートより測定糸を解き、初荷重下の印し間隔を読み、1mで除して求めた。
【0026】
<実施例1:ブロックマット用シートの製造>
シートタテ方向に、透水機能の330デシテックスのポリエチレンモノフィラメントを26本、及び補強・接着糸としてポリエステル1100デシテックス192フィラメントの3本撚糸3本を繰り返して配置した。ポリエチレンモノフィラメントの織り込み本数は52本/インチ、ポリエステル補強・接着糸の織り込み本数は6本/インチだった。
さらに、ヨコ方向に透水機能の660デシテックスのポリエチレンモノフィラメントと補強糸・接着としてポリエステルの1100デシテックス192フィラメントを1本交互に繰り返して配置した。ヨコ糸の織り込み本数は25本/インチだった。このとき、当該ヨコ方向の補強・接着糸であるポリエステルマルチフィラメント糸は、タテ方向のポリエチレンモノフィラメント26本と補強・接着糸であるポリエステルマルチフィラメント糸を1本交互に織り込み組織を形成させた部分と、続けてタテ方向のポリエステルマルチフィラメント補強・接着糸3本、ポリエチレンモノフィラメント26本及びポリエステル補強糸3本の計32本を乗り越えるタテ糸と未組織の糸飛び部分を形成した部分を繰り返し形成した。該糸飛び部分は、織物のタテ方向に同じ位置に配列しても良いが、より接着面を均一化するための、次のヨコ方向の補強・接着糸としてのポリエステルマルチフィラメント糸の糸飛び部分とは千鳥配列とした。
得られたシートは、タテ方向の補強・接着糸が、ヨコ方向の糸を5本ごとに乗り越えたシートであり、タテ方向の引張破断強さは73kN/m、引張破断伸びは16.7%だった。また、前記タテ方向の補強・接着糸のクリンプ率は3.2%だった。一方、ヨコ方向の引張強さは47kN/m、引張破断伸びは11.5%で、ヨコ糸の補強・接着糸のクリンプ率は2.5%であった。また、このシートの網目の大きさは、シートヨコ方向で0.1〜0.4mm、シートタテ方向で0.4〜0.8mmであった。
【0027】
〈比較例1:ブロックマットシートの製造〉
実施例1記載のブロックマットシートでヨコ方向は同一のポリエステルマルチフィラメント及びポリエチレンモノフィラメントを1:1交互に配置して、更にヨコ方向の補強・接着糸のポリエステルマルチフィラメントもタテ糸の補強・接着ポリエステルマルチフィラメント及び透水機能のポリエチレンモノフィラメントとも全て平織に組織したシートでタテ方向の引張破断強さや伸び率及びクリンプ率は実施例1と同じで、ヨコ方向の引張破断強さは47kN/m、引張破断伸びは13.0%で、ヨコ糸の補強・接着糸のクリンプ率は3.5%であった。
【0028】
<実施例2:地表浸食防止用工ブロックマットの製造>
セメント、細骨材、粗骨材及び水を配合したコンクリートを即時脱型・乾燥して、幅20cm、長さ20cm、高さ10cmの四角台形のコンクリートブロックを製造した。該コンクリートブロック1個あたりの重量は5kgであった。次に、当該ブロックを、幅1.5m、長さ8.8mの前記ブロックマット用シートの、糸飛び部分が形成されている面側に、シート幅方向に6個、長さ方向に40列配置した。個々のコンクリートブロックとシートの間に、エポキシ樹脂(主剤:硬化剤=2:1混合)5gを、コンクリートブロック面に4ヶ所圧着して接着硬化し、地表浸食防止用工ブロックマットを製造した。
上記方法で製造したブロックマットの、シート及びコンクリートブロックの接着界面の180°剥離接着強さを、引張試験機で測定した結果、接着剤幅1cm当たり158Nであった。
【0029】
〈比較例2:地表浸食防止用工ブロックマットの製造〉
比較例1に記載のブロックマットシートを用いて、実施例2と同様の方法でブロックマットを製造した場合の、同一接着処方での180°剥離接着強さは、接着剤幅1cm当たり95Nであった。すなわち、実施例2に記載のブロックマットは比較例2に記載のブロックマットより接着強度が1.7倍高くなり、法面敷設作業でもマット吊り下げ操作を安全に行うことができた。
【0030】
<実施例3:地盤補強用マット用シートの製造>
シートタテ方向に、330デシテックスのポリエチレンモノフィラメントを48本、及び補強・接着糸としてポリエステル1100デシテックス192フィラメントの3本撚糸8本を繰り返して配置した。ポリエチレンモノフィラメントの織り込み本数は48本/インチ、ポリエステル補強・接着糸の織り込み本数は8本/インチだった。一方、ヨコ方向に660デシテックスのポリエチレンモノフィラメント2本、と補強・接着糸としてポリエステルの1670デシテックス192フィラメント2本撚糸を1本交互に繰り返して配置した。ヨコ糸の織り込み本数は25本/インチだった。
ヨコ方向のポリエチレンモノフィラメントは、タテ糸と交互に織込んだ。ヨコ方向の補強・接着糸としてのポリエステル糸は、タテ方向のポリエチレンモノフィラメント24本と補強・接着糸ポリエステルフィラメント8本を1本交互に織り込み組織を形成さて、続いて、ポリエチレンモノフィラメント24本と補強・接着糸ポリエステルフィラメント8本の計32本を乗り越えるタテ糸と未組織の糸飛び部分を形成させ、組織部分と未組織部分を繰り返し形成した。該糸飛び部分は、織物のタテ方向に同じ位置に配列してもよいが、より接着面を均一化するための、次のヨコ方向のポリエステル糸の糸飛び部分とは千鳥配列とした。
得られたシートは、タテ方向の補強・接着糸がヨコ方向の糸を6本ごとに乗り越えたシートであり、タテ方向の引張破断強さは102kN/m、引張破断伸びは15.4%だった。また、前記補強糸のクリンプ率は3.8%だった。一方、ヨコ方向の引張強さは122kN/m、引張破断伸びは14.2%で、ヨコ方向の補強・接着糸のクリンプ率は3.1%であった。
【0031】
〈比較例3:地盤補強用マット用シートの製造〉
実施例3に記載のブロックマットシート同様の糸及び折り込み本数で、ヨコ方向は同一のポリエステルマルチフィラメント及びポリエチレンモノフィラメントを1:1交互に配置して、更にヨコ方向の補強・接着糸のポリエステルマルチフィラメントもタテ糸の補強・接着ポリエステルマルチフィラメント及びポリエチレンモノフィラメントの4本は1本交互に織り込み組織を形成させ、続けてタテ方向のポリエステル補強・接着糸4本もしくは、ポリエチレンモノフィラメント4本単位で乗り越えるというタテ糸と未組織の糸飛び部分形成させ、交互組織形態と未組織形態を繰り返しを形成した。このシートのタテ方向の引張破断強さや伸び率及びクリンプ率は実施例3と同じで、ヨコ方向の引張破断強さは123kN/m、引張破断伸びは15.0%で、ヨコ糸の補強・接着糸のクリンプ率は4.0%であった。
【0032】
<実施例4:地盤補強用マット用工ブロックマットの製造>
1個が外径21cm、円錐高さ9cm、円柱2cmの円錐柱型枠をシート幅方向に8個、長さ方向に28個連接した型枠にコンクリートを型枠に注入して、コンクリートを振動させ表面を液状にした状態で上記シートを型枠に展開した。上方より加圧展圧でコンクリートをシートに含浸させ、16時間以上蒸気養生した後に、型枠よりコンクリートブロックを脱型した。このブロックマットについて、材齢14日目に180°剥離接着強さを引張試験機で測定した結果、ブロック表面20cm当たり1,000Nの剥離接着強さであり、上記シートのヨコ糸の未組織部分がコンクリート内へ巻き込まれているため、コンクリートの一部が破損するほどの強さを示した。
【0033】
〈比較例4:地盤補強用マット用工ブロックマットの製造>
比較例3に記載のブロックマットシートで実施例4と同様の方法でブロックマットを製造及び180°接着剥離試験を行ったところ500Nの剥離接着強さであった。すなわち、実施例4に記載のブロックマットは比較例4に記載のブロックマットより剥離接着強度が2.0倍高くなり、法面敷設作業でもマット吊り下げ操作を安全に行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るブロックマット用シートは、地表浸食防止用工ブロックマットにおいて、防滑効果が発揮され、かつ、コンクリートブロックとシートの接着力を高めてマット敷設時の安全性を向上させたことにより、簡便に護岸、法面保護等を成し得る地表浸食防止用工ブロックマットに好適に利用可能である。また、本発明は、地盤補強用ブロックマットにおいても、コンクリートブロックとシートの接着力を高めてマット敷設時の安全性を向上させることにより、これに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 ヨコ糸タテ糸組織部分
2 ヨコ糸タテ糸未組織部分
3 タテ透水機能糸ポリエチレンモノフィラメント
4 タテ補強・接着糸ポリエステルマルチフィラメント
5 ヨコ補強・接着糸ポリエステルマルチフィラメント
6 ヨコ透水機能糸ポリエチレンモノフィラメント
10 ブロックマット用シート
20 補強用ブロック
21 上方部分
22 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強・接着糸として高強度低伸度フィラメントをタテ糸方向に入れた、透水性及び可撓性を有する土砂粒子不通過性の織物からなるブロックマット用シートにおいて、該織物のヨコ糸方向にも補強・接着糸が入れられており、該ヨコ方向の補強・接着糸の一部が、該タテ糸方向の補強・接着糸を含んで該織物の連続した5本以上のタテ糸と組織されていない糸飛び部分と組織された部分を交互に形成しており、該糸飛び部分を形成するヨコ方向の補強・接着糸のクリンプ率が10%以下であることを特徴とする前記ブロックマット用シート。
【請求項2】
請求項1に記載のブロックマット用シートにコンクリートブロックが接着・固定された地表浸食防止用工ブロックマット。
【請求項3】
請求項1に記載のブロックマット用シートに補強用ブロックが接着・固定された地盤補強用ブロックマット。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−67554(P2012−67554A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215199(P2010−215199)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(591041196)旭化成ジオテック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】