説明

ブローバイガスの触媒洗浄

【課題】バイパス流通路を通る流体の清浄化を提供するために、内燃機関からのブローバイガスの処理装置を提供すること。
【解決手段】ブローバイガスを洗浄するためのアセンブリは、電気ヒーター(34)と、エンジン(10)のクランクシャフトから雰囲気へとつながっているブローバイガス導管(24)内に直列的な配置で位置決めされている下流の触媒(36)とを備えている。ヒーター(34)は、触媒(36)への入口に温度センサー(38)によって決定された選択された温度を維持するために、コントローラ(42)によって制御される。ブローバイガスの加熱によって、ブローバイガスの温度は、触媒がブローバイガスの流れの成分を酸化させる活性レベルまで高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関し、より特定すると、このような内燃機関からのブローバイガスの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
往復内燃機関は、適当なシリンダ内で往復動する一連のピストンを備えている。このピストンは、往復動を回転出力に変換するためにクランクシャフトに結合されている。往復内燃機関は全て、エンジンの燃焼室から内部チャンバ(通常はクランクケースと呼ばれている)へとピストンを通過するある程度の気体を有する。
【0003】
吸気の圧縮熱が、燃料噴射装置によって噴射される燃料を圧縮工程の終わり又は終わり近くで点火して燃焼を提供するために使用される大型のディーセル式内燃機関においては、動力がブローバイガスによる比較的大きな問題点を有する。このようなエンジンは、典型的には、圧縮工程の始まりにおける燃料装荷が大気圧よりも高くなることができるようにターボチャージャで過給される。このこと及びディーゼルエンジンの通常の高圧圧縮のような他のファクタによって、ブローバイガスがシリンダからピストンを通過してクランクシャフトを囲繞しているクランクケース内及びエンジンのその他の作動メカニズム内へと流れ込む。
【0004】
過去においては、ブローバイガスは雰囲気へと直接排出されていた。この理由は、圧力が最終的には強められ且つ種々のシール及びその他のガスケットを介する漏れを惹き起こすので、クランクケース内にガスを含むことは不可能であるからである。
【0005】
排出基準に関する法律における最近の提案は、ブローバイガス(クランクケース排出ガスとも呼ばれる)が調整された排出の一部として含まれなければならないことを義務付けて来ている。これは、クランクケースから出て来る流体の如何なる生成物も処理されるか又は幾分対処されなければならないことを意味する。一つの方法は、ブローバイガスをターボチャージャのコンプレッサの入口へ導いて、ブローバイガスが新鮮な空気と混合され且つエンジンの燃焼工程によって消費されるようにして来た。しかしながら、ブローバイガスはオイル粒子のみならず燃焼しなかった炭化水素を含んでいるので、これらのガスがコンプレッサ入口内へ入ることにより、コンプレッサ上への堆積を生じ得る。高い圧力比のコンプレッサがターボチャージャーに使用されている場合には、コンプレッサの排気の温度は粘結を生じさせるほど十分に高いかも知れない。
【0006】
他の製造者は、排気を除去するために、複雑な液体分離及び濾過装置を使用して来た。濾過装置の使用は、定期的な取り替えを必要とし、これは、次いで、複雑さ及びエンジンを維持するためのコストを増大させる。バイパス流が濾過されているときでさえ、これは、調整を受けるバイパス流の成分の排気を完全に排除しない。
【0007】
従って、バイパス流の通路を通る流体の清浄化を提供する必要性が当該技術に存在する。
【特許文献1】無し
【非特許文献1】無し
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バイパス流の通路を通る流体の清浄化を提供するために、内燃機関からのブローバイガスの処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】

一つの形態においては、本発明は、燃焼室及び当該燃焼室の外側に内部チャンバを有する内燃機関のためのブローバイアセンブリを含んでいる。当該アセンブリは、内部チャンバから雰囲気へつながる流体通路を含んでおり、当該通路には触媒が配置されている。ヒーターが、触媒と内部チャンバとの間の通路に配置されている。
【0010】
もう一つ別の形態においては、本発明は、ハウジングと、関連する燃焼室のハウジング内で往復動可能な複数のピストンとを有している内燃機関を含んでいる。これらのピストンは、ハウジング内で軸受け支持されたクランクシャフトに結合されて回転出力を提供する。ハウジングは、燃焼チャンバの外側に内部チャンバを備え、エンジンは、内部チャンバから外気への流体流路を備えている。触媒が、内部チャンバから外気へと通過する流体が触媒の上を通過できるように配置されている。ヒーターが、触媒へと通過する流体を加熱するように触媒とハウジングとの間の通路に配置されている。
【0011】
更に別の形態においては、本発明は、ブローバイガスを雰囲気へと導く通路を備えている内燃機関からブローバイガスを洗浄するための方法を含んでいる。当該方法は、通路内のブローバイガスを加熱するステップと、次いで、ブローバイガスを触媒上を通過させた後に雰囲気へと通過させるステップとを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、全体が参照符号10によって示されている内燃機関を示している。内燃機関10はエンジンのクランクケース12を備えており、当該クランクケース内においては、往復動し且つクランクシャフトに結合されているピストン(同じく図示せず)を一連のシリンダライナー(図示せず)が収容しており、前記クランクシャフトは、フライホイール14を介して回転出力を提供する。ここに示されているように、エンジン10は、圧縮エンジン又はディーゼル型であり、圧縮熱が使用されて燃料噴射装置16から燃焼室内へ噴射される燃料が点火される。燃料噴射装置16は、油圧機械式又は高圧コモンレール式又は単体燃料噴射器を含む多数のタイプのうちの一つとすることができる。これらの燃料装置は全て、射出出力を、国又は地方公共団体によってエンジンの用途として適切なものとして確立された限度内に維持しつつエンジン10から必要とされる出力を提供するために、正しい時間に正しい量を計量することを目的としている。
【0013】
上記したように、ディーゼルエンジンは、エンジンの燃焼室からのガスのバイパス流を有している。このブローバイガスは、エンジン作動サイクルの正常部分であり且つピストンリングの逆転及びピストンリングのエンドギャップを横切るガスの通過によって惹き起こされる。ブローバイガスは、燃焼室からピストンを通過してエンジン10内の内部チャンバ(図示せず)へと流れる。チャンバの部分としてクランクケース12の下方部分が含まれ、当該クランクケースの下方部分は、コネクティングロッド、クランクシャフト及びエンジン10のための油溜めを収容している。典型的なやり方のように、ブロック12内のチャンバはヘッド18へと延びており、ヘッド18は、吸気を受け入れ且つ燃焼室からの排気の排出を可能にするためにエンジン内のポペット弁を作動させるための一組のロッカーレバー又はその他のカムシャフト機構を備えている。ヘッド18は、ロッカーカバー20及びロッカーカバー20によって結合されている空間によって覆われており、ヘッド18は、適当な通路によってエンジンブロック12内のチャンバに結合されている。これらの通路は、通常、ロッカーカバー20からクランクケース12の下方部分内の油溜めへ続く規定されたオイル経路に加えて、下方に取り付けられたカムシャフトへと下降するプッシュロッドのための通路を含んでいる。ロッカーカバーのハウジング20の内側、従って、エンジン10の内部チャンバは、ロッカーカバー20に設けられた穴26に結合されている導管24内の通路22によって雰囲気へと通気される。導管24は、エンジンの下方部分へと延びており且つ内部チャンバを雰囲気へと通気する穴28を備えている。オイルの大きな液滴の流れが通路22内へ入るのを遮断するために、構成部品27がロッカーカバー20に配置されている。これは、一連のじゃま板又は金網を介する連続経路の形態とすることができる。大きな液滴が通路22内に入るのを防止するために他の方法を使用しても良いことは、当業者にとって明らかであるはずである。
【0014】
ハウジング30が、通路内の流体の流れの全てがハウジング30を通過するように導管24内に介装されている。ヒーター34は、チャンバ30の上流端部32に配置されている。ヒーター34の下流には触媒36が配置されており、2つの近接した触媒36間には温度センサー38が配置されている。ヒーター34は、コントローラ42からライン40を介して電力を受け取る典型的な抵抗線ヒーターとすることができる。コントローラ42は、ライン46を介して適当な電源44から電力を受け取る。電源44は、典型的には、エンジン/車両電気装置である。電源は、典型的には、車両の電気装置に適するレベルのDC電圧とされる。コントローラ42は、ライン40を介してヒーター34へと電流を導いて、導管24内を通過する流体を、触媒36が活性になる温度まで加熱する。制御装置に閉ループを設けるために、温度センサー38からの信号は、ライン48を介してコントローラ42へと送られる。本発明の理解を簡単にするために、このような制御系の詳細は説明しない。しかしながら、触媒36内及び触媒36の上方を通過している流体の温度の適当な制御を提供するために、アナログ又はデジタル形態で実施することができることは明らかであるはずである。
【0015】
触媒材料は、白金、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる貴金属から選択することができる。他の触媒材料も等しい適用可能性により選択することができることは明らかなはずである。
【0016】
ヒーター34の作用は、バイパス導管内の成分が穴28を介して雰囲気へと排気される前に当該成分を酸化させるために触媒36がブローバイガスに対して作用することができるように、通路22内の流体を約100℃から少なくとも200℃好ましくは250℃へと加熱することである。ブローバイは、幾つかの炭素及び摩耗片及び逃散ダストを有する主として小さいオイルの液滴からなるエアロゾル形態である。粒子の大きさは0.1乃至3マイクロメータの範囲に亘り、質量分布の殆どが0.5乃至2マイクロメータの範囲内にある。粒子の分布は、エアロゾルが人間によって吸い込まれる可能性が高いようなものである。ガスを指示された温度まで加熱することによって、触媒36は、炭化水素及び潤滑オイルを酸化させて、雰囲気へと排出されつつある成分からのエアロゾル(排出されていない場合に)を最少化する。
【0017】
ヒーターの容量は、エンジンの状態及び特にエンジン排気量に依存している。ヒーターの容量は、9リットルエンジンにおいて約500ワット以下で変化し得る。しかしながら、エンジンは、他の形態で提供しても良く且つ異なる容量のヒーターを必要とすることは当業者にとって明らかとなるはずである。このような装置は、複雑な濾過装置の必要性及び続いて行われるこのようなフィルタの清浄化及び/又は交換の必要性を排除する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上、好ましい実施形態を記載したが、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱することなく、種々の改造を行うことができることが明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、関連する構成部品の概略図を示すと共に、本発明を採用している内燃機関及びブローバイガス洗浄アセンブリを示している外方斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
10 内燃機関、
12 クランクケース、
14 フライホイール、
16 燃料噴射装置、
18 ヘッド、
20 ロッカーカバー、
22 通路、
24 導管、
26 穴、
27 構成部品、
28 通気穴、
30 ハウジング、
34 ヒーター、
36 触媒、
38 温度センサー、
40 ライン、
42 導管、
44 電源、
46 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室及び当該燃焼室の外側の内部チャンバを備えている内燃機関のためのブローバイアセンブリであり、
前記内部チャンバから雰囲気へとつながっている流体通路と、
前記通路内に配置された触媒と、
前記触媒と前記内部チャンバとの間で前記通路内に配置されたヒーターと、を含むブローバイアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載のブローバイアセンブリであって、
前記ヒーターが、前記通路内の流体を、前記触媒が活性となる温度まで加熱するようになされている、ブローバイアセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載のブローバイアセンブリであって、
前記ヒーターは、前記通路内の流体を約200℃まで加熱するようになされているブローバイアセンブリ。
【請求項4】
請求項2に記載のブローバイアセンブリであって、
前記ヒーターが前記通路内の流体を加熱する程度を制御するための制御ユニットを更に含んでいるブローバイアセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載のブローバイアセンブリであって、
前記ヒーターと前記触媒との間で且つ少なくとも前記触媒に隣接して設けられた温度センサーを更に含み、当該温度センサーは、前記触媒の温度を調整するために前記制御ユニットに温度信号を付与するようになされているブローバイアセンブリ。
【請求項6】
請求項1に記載のブローバイアセンブリであって、
前記触媒の材料が、白金、パラジウム及び白金とパラジウムとの組み合わせからなる群から選択されたものである、ブローバイアセンブリ。
【請求項7】
請求項1に記載のブローバイアセンブリであって、
前記通路内を通る流体の流れが10m/時間までの流速であり、前記ヒーターが500ワットまでの容量で加熱するようになされたブローバイアセンブリ。
【請求項8】
請求項1に記載のブローバイアセンブリであって、
前記ヒーター及び前記触媒が単一のハウジング内に設けられているブローバイアセンブリ。
【請求項9】
燃焼室の外側に内部チャンバを備えているハウジングと、
燃焼室に関連付けられた前記ハウジング内で往復動可能な複数のピストンであり、回転出力を提供するために前記ハウジング内に軸受け支持されたクランクシャフトに結合されている複数のピストンと、
前記内部チャンバから雰囲気へとつながっている流体通路と、
前記通路内に配置された触媒であり、流体が、前記内部チャンバから雰囲気に向かって当該触媒上を流れるようになされている前記触媒と、
前記触媒へと流れる流体を加熱するために、前記通路内の前記触媒と前記ハウジングとの間に配置されたヒーターと、を含んでいる内燃機関。
【請求項10】
請求項9に記載の内燃機関であって、
前記ヒーターが、前記通路内の流体を前記触媒が活性となる温度まで加熱するようになされた内燃機関。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関であって、
前記ヒーターが前記流体を約200℃まで加熱するようになされた内燃機関。
【請求項12】
請求項11に記載の内燃機関であって、
前記通路内の流体を加熱するために前記ヒーターを制御するための制御ユニットを更に含んでいる内燃機関。
【請求項13】
請求項12に記載の内燃機関であって、
前記通路内の前記ヒーターと前記触媒との間に温度センサーを更に含み、当該温度センサーは、前記触媒に隣接して配置され且つ前記制御ユニットに前記ヒーターを制御するための信号を付与するようになされている内燃機関。
【請求項14】
請求項9に記載の内燃機関であって、
前記触媒の材料が、白金、パラジウム及び白金とパラジウムとの組み合わせからなる群から選択されたものである内燃機関。
【請求項15】
請求項9に記載の内燃機関であって、
前記通路内を通る流体の流れが10m/時間までの流速であり、前記ヒーターが500ワットまでの容量である内燃機関。
【請求項16】
請求項9に記載の内燃機関であって、
前記ヒーター及び前記触媒が単一のハウジング内に設けられている内燃機関。
【請求項17】
請求項9に記載の内燃機関であって、
前記内燃機関と前記通路との間に、オイルの液滴が前記通路内に入るのを防止するための構成部品を更に含んでいる内燃機関。
【請求項18】
ブローバイガスを雰囲気へと導く通路を備えている内燃機関からのブローバイガスを清浄化するための方法であり、
前記通路内のブローバイガスを加熱するステップと、
前記加熱されたブローバイガスを、触媒の上方を通過させた後に雰囲気へ通過させるステップと、を含んでいる方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であり、
前記ブローバイガスが、前記触媒が活性となる温度まで加熱されるようにした方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であり、
前記ブローバイガスが200℃の温度まで加熱されるようにした方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であり、
前記ブローバイガスの流速が10m/時間までの流速であり、前記加熱率が500ワットまでの容量である方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法であり、
前記触媒材料が、白金、パラジウム及び白金とパラジウムとの組み合わせからなる群から選択されるようになされた方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−121662(P2008−121662A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266009(P2007−266009)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(591005165)ディーア・アンド・カンパニー (109)
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
【Fターム(参考)】