説明

ブローバイガス用の可変開閉型クランクケースブリーザシステム

【課題】ターボチャージャコンプレッサの効率を低下させるようなコークス化を制御する。
【解決手段】エンジン14及びターボチャージャコンプレッサ32を備えた車両内においてブローバイガスの流れFを選択的に差し向ける方法は、ブローバイガスの流れについてエンジンから弁12に流体連通させるステップと、弁を弁アクチュエータ38により閉鎖システム位置及び開放システム位置の少なくとも一方に作動させるステップと、弁からのブローバイガスの流れをターボチャージャコンプレッサ及び大気28の少なくとも一方に選択的に差し向けるステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において説明する実施形態は、概略的には、燃焼エンジンの通気に関する。詳細には、本明細書において説明する実施形態は、燃焼エンジン内におけるブローバイガス用通気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼エンジンの作動中、ガスが燃焼チャンバから押し出され、ピストンリングとシリンダ壁との間の隙間を通ってクランクケース内に押し込まれる。ガスは、バルブステムシール及びターボチャージャシールからも来る場合がある。このガスは、炭化水素ガス、水蒸気及び少量の同伴液体油を含み、このガスは、ブローバイガスと呼ばれている。クランクケースから除去されなければ、ブローバイガスは、クランクケース内の圧力を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、ブローバイガスは、クランクケースブリーザ組立体とも呼ばれているクランクケース通気システムによりクランクケースからガス抜きされる場合がある。開放型通気システムでは、クランクケースブリーザ組立体は、大気中にガス抜きを行う。ブローバイガスは、車両の全エミッションの一成分であり、従って、当業界が軽減しようと試みているエミッションである。さらに、ブローバイガスは、有害臭を生じさせる場合があり、このことは、車両が静止状態であるときに問題となる場合がある。
【0004】
別の従来公知のクランクケース通気システムは、閉鎖型クランクケースブリーザ組立体であり、この場合、ブローバイガスを例えば、まず最初に、ターボチャージャコンプレッサに抜くことによりブローバイガスをエンジンに戻すことができる。エンジン吸気/ターボチャージャコンプレッサ入口へのブローバイガスのガス抜きにより、エンジン/ターボチャージャコンプレッサの吸気ハードウェアが潜在的に汚染される場合がある。高温下且つブローバイガスの多量充填下において、ブローバイガス中に同伴されている油が、硬化し、エンジン/ターボチャージャコンプレッサにくっつく場合がある。ブローバイガスからの油の硬化及びくっつきプロセスは、コークス化又はコーキングと呼ばれており、このコークス化は、ターボチャージャコンプレッサの効率を低下させ、それによりエンジンエミッションを増加させる場合があり、最終的にはエンジン/ターボチャージャコンプレッサの故障を招く場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
エンジン及びターボチャージャコンプレッサを備えた車両内においてブローバイガスの流れを選択的に差し向ける方法は、ブローバイガスの流れについてエンジンから弁に流体連通させるステップと、弁を弁アクチュエータにより閉鎖システム位置及び開放システム位置の少なくとも一方に作動させるステップと、弁からのブローバイガスの流れをターボチャージャコンプレッサ及び大気の少なくとも一方に選択的に差し向けるステップと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ターボチャージャコンプレッサ及びエンジンと流体連通状態にある可変開閉型クランクケースブリーザシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1を参照すると、可変開閉型クランクケースブリーザシステムが全体を符号10で示されており、このブリーザシステムは、エンジン14の下流側に流体連通状態にある弁12を有している。弁12を三方弁として説明するが、弁は、4本以上のラインを結合しても良く、例えば、この弁は、四方弁又は五方弁であっても、この構成は、本発明の範囲に含まれる。弁12は、ステンレス鋼又は他の耐食性材料で作られても良いことが想定される。
【0008】
エンジン14は、ブリーザ組立体16からブローバイガスFの流れを放出し、このブリーザ組立体は、ブローバイガスの流れ方向において、エンジン14の下流側に且つ三方弁12から見て上流側に位置している。クランクケースブリーザ16は、エンジン14に組付けられており、このクランクケースブリーザは、ブリーザオイルミスト分離器(図示せず)を有するのが良く、このオイルミスト分離器は、ブローバイガスFの流れ中に含まれている同伴油炭化水素の何割かを除去することができる。
【0009】
ブローバイガスFの流れ方向で見て、三方弁12の入口18は、クランクケースブリーザ16の出口20と下流側において流体連通状態にある。ブローバイガスFの流れが三方弁12に入った後、ブローバイガスは、2つの出口、即ち、開放システム出口22又は閉鎖システム出口24の一方に流れることができる。エンジン14、クランクケースブリーザ16、弁12及びターボチャージャコンプレッサ32を含む(これらには限定されない)コンポーネント相互間の流体連通は、管、導管、容器又は流体を運ぶ任意の他のチャネルによって可能になる。
【0010】
三方弁12が開放システム位置にあるとき、ブローバイガスの流れは、開放システム出口22から管又は導管26に差し向けられ、この管又は導管は、大気28へのガス抜きを行う。開放システム位置では、ターボチャージャコンプレッサ32に対して閉じられる。
【0011】
三方弁12が閉鎖システム位置にあるとき、ブローバイガスの流れは、閉鎖システム出口24からターボチャージャコンプレッサ32の入口30に差し向けられる。閉鎖システム位置では、可変開閉型クランクケースブリーザシステム10は、大気28に対して閉じられる閉鎖システムである。
【0012】
三方弁12の閉鎖システム出口24は、ターボチャージャコンプレッサ32の入口30の上流側に流体連通状態にある。ブローバイガスFの流れは、エンジン空気フィルタ34からの空気Aの流れと混ぜ合わされるのが良い。ブローバイガスは、ターボチャージャコンプレッサ32からエンジン14に流れ、そしてターボチャージャコンプレッサ32とエンジンとの間で過給器クーラ36を通って流れるのが良い。
【0013】
三方弁12は、ターボチャージャコンプレッサ32又は大気28へのブローバイガスFの流れを選択的に可能にする。ブローバイガスFの流れをターボチャージャコンプレッサ32に差し向ける閉鎖システム位置は、三方弁12のデフォルト位置である。ターボチャージャコンプレッサ32内の圧力がエンジン14に対する所定の負荷を指示する所定レベルに達すると、弁アクチュエータ38は、三方弁12を開放システム位置に作動させ又は切り換え、この開放システム位置では、ブローバイガスFの流れは大気28中にガス抜きされる。
【0014】
エンジン14に加わる負荷は、エンジンからの排気ガスを受け入れるターボチャージャタービン40によって間接的に求めることができ、ターボチャージャタービンは、エンジンからの排気ガスを受け入れる。ターボチャージャタービン40は、コンプレッサに動力を供給するようターボチャージャコンプレッサ32に機械的に結合されている。弁アクチュエータ38は、ターボチャージャコンプレッサ32の下流側の吐出し空気圧力によって作動可能である。
【0015】
弁12は、ブローバイガスFの流れを車両42の後処理システムに差し向けるための追加の出口、例えば四方弁を有することが可能である。さらに、弁12は、この弁がエンジン14の2つ以上の出口からブローバイガスFの流れを部分的に差し向け、例えば、ブローバイガスの流れの第1の部分F1をターボチャージャコンプレッサ32に差し向け、ブローバイガスの流れの第2の部分F2を大気28に差し向ける第3の位置を有することが可能である。
【0016】
可変開閉型クランクケースブリーザシステム10では、弁アクチュエータ38は、三方弁12に機械的に結合されているが、他の結合方式、例えば電気結合方式又は空気圧結合方式が可能である。開閉型システム10では、弁アクチュエータ38は、ブースト空気により駆動される空気圧式のものである。変形例として、エンジン14は、機械的に、電気的に又は空気圧の作用で弁アクチュエータ38を直接作動させても良い。また、弁アクチュエータ38は、弁12を開放システム位置又は閉鎖システム位置に選択的に作動させるよう車両のユーザ/運転手によって制御されても良い。エンジン制御モジュール(図示せず)が弁アクチュエータ38及び弁12を制御しても良い。
【0017】
可変開閉型クランクケースブリーザシステム10により、例えばブローバイガスを大気28中に放出することにより有害臭が生じる場合、例えば、エンジン14がアイドリング中であるとき、ターボチャージャコンプレッサ32への選択的な閉鎖通気が可能である。さらに、可変開閉型クランクケースブリーザシステム10により、例えばターボチャージャコンプレッサ32を通るブローバイガスの流量が高いことによりターボチャージャコンプレッサのチョーキングが生じ得る場合でも、大気28中への選択的開放通気が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイガスを放出するエンジン及びターボチャージャコンプレッサを備えた車両の可変開閉型クランクケースブリーザシステムであって、
ブローバイガスを受け入れるよう前記エンジンと下流側において流体連通状態に配置された弁と、
前記ターボチャージャコンプレッサと上流側において流体連通状態にある前記弁の閉鎖システム出口と、
大気と上流側において流体連通状態にある前記弁の開放システム出口と、
前記弁を作動させるよう構成された弁アクチュエータと、を備え、前記弁は前記閉鎖システム出口から前記ターボチャージャコンプレッサへのブローバイガスの流れを可能にする閉鎖システム位置と前記開放システム出口から前記大気へのブローバイガスの流れを可能にする開放システム位置に選択的に動くことができる、
ことを特徴とする可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項2】
前記弁は、三方弁である、
請求項1記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項3】
前記弁アクチュエータは、前記ターボチャージャコンプレッサ内の圧力が所定レベルに達すると、前記弁を前記開放システム位置に切り換える、
請求項1記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項4】
前記弁アクチュエータは、前記ターボチャージャコンプレッサの下流側の吐出し空気圧力により作動される、
請求項3記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項5】
前記弁アクチュエータは、前記弁に機械的に連結されている、
請求項1記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項6】
前記エンジンは、前記弁アクチュエータを作動させる、
請求項2記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項7】
前記弁が前記開放システム位置にあるとき、ブローバイガスは、大気中にガス抜きを行う管中に流れる、
請求項1記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項8】
前記弁は、第3の位置を有し、前記弁が前記第3の位置にあるとき、前記ブローバイガスの第1の部分は、前記ターボチャージャコンプレッサに流れ、前記ブローバイガスの第2の部分は、大気中に流れる、
請求項1記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項9】
前記弁が前記閉鎖システム位置にあるとき、前記ブローバイガスの流れは、エンジン空気フィルタからの空気の流れと混ぜ合わされる、
請求項1記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項10】
エンジン及びターボチャージャコンプレッサを備えた車両内においてブローバイガスの流れを選択的に差し向ける方法であって、
ブローバイガスの流れについて前記エンジンから弁に流体連通させるステップと、
前記弁を弁アクチュエータにより閉鎖システム位置及び開放システム位置の少なくとも一方に作動させるステップと、
前記弁からの前記ブローバイガスの流れを前記ターボチャージャコンプレッサ及び大気の少なくとも一方に選択的に差し向けるステップと、を備えている、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記ターボチャージャコンプレッサ内の圧力が所定レベルに達したことに基づいて、前記ブローバイガスの流れを前記ターボチャージャコンプレッサ及び前記大気の一方に選択的に可能にするステップを更に備えている、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記弁を作動させるステップでは、前記弁アクチュエータを機械的に作動させる、
請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記ブローバイガスの流れを前記ターボチャージャコンプレッサの上流側に設けられたエンジン空気フィルタからの空気の流れと混ぜ合わせるステップを更に有する、
請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記弁アクチュエータを制御して、前記弁を前記開放システム位置又は前記閉鎖システム位置に選択的に作動させるステップを更に有し、ユーザ/運転手は、前記弁アクチュエータを制御する、
請求項10記載の方法。
【請求項15】
ブローバイガスの流れを放出するエンジンを備えた車両の可変開閉型クランクケースブリーザシステムであって、
前記エンジンからの前記ブローバイガスの流れを受け入れるよう前記エンジンと下流側において流体連通状態に配置された三方弁を有し、前記三方弁は、閉鎖システム出口及び開放システム出口と、
前記三方弁の下流側に配置されると共に前記ブローバイガスの流れを受け入れるために前記閉鎖システム出口と流体連通状態にあるターボチャージャコンプレッサであって、前記エンジンへの前記ブローバイガスの流れを可能にするために前記エンジンと上流側において流体連通状態に配置されたターボチャージャコンプレッサと、
前記三方弁を作動させるよう構成された弁アクチュエータを備え、
前記三方弁は、前記ターボチャージャコンプレッサへの及び前記ターボチャージャコンプレッサから前記エンジンへの前記ブローバイガスの流れを可能にする前記閉鎖システム位置と前記大気への前記ブローバイガスの流れを可能にする前記開放システム位置に選択的に動くことができる、
ことを特徴とする可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項16】
前記エンジンからの前記ブローバイガスの流れを受け入れるよう前記エンジンから見て下流側でこれと流体連通状態に配置されたクランクケースブリーザを更に有する、
請求項15記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項17】
前記弁アクチュエータは、前記ターボチャージャコンプレッサ内の圧力が所定レベルに達すると、前記三方弁を前記開放システム位置に切り換える、
請求項15記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項18】
前記弁アクチュエータは、前記ターボチャージャコンプレッサの下流側の吐出し空気圧力によって作動される、
請求項17記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項19】
前記三方弁は、第3の位置を有し、前記三方弁が前記第3の位置にあるとき、前記ブローバイガスの第1の部分は、前記ターボチャージャコンプレッサに流れ、前記ブローバイガスの第2の部分は、大気中に流れる、
請求項15記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。
【請求項20】
前記三方弁が前記閉鎖システム位置にあるとき、前記ブローバイガスの流れは、エンジン空気フィルタからの空気の流れと混ぜ合わされる、
請求項15記載の可変開閉型クランクケースブリーザシステム。

【図1】
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