説明

ブロー成形用プリフォームキャリアおよびブロー成形型

【課題】ブロー成形時にブローエアーによって大きな力が作用しても位置ずれなどの弊害を起すことの無い広口容器のブロー成形に適したプリフォームキャリアを提案すること。
【解決手段】ブロー成形用プリフォームキャリア10は、ブロー成形時にブローエアーが導入される圧力室16を備えている。ブローエアーが圧力室16に導入されると、ブロー成形用プリフォームキャリア10の外側円筒11および内側円筒12にはそれらの軸線方向に沿って下向き、上向きの力が作用する。ブローエアーによってプリフォームキャリア10を下向きに押し込む力が相殺されるので、プリフォームキャリア10に位置ずれなどの弊害発生してしまうことを防止できる。プリフォームキャリア10がブローエアーによって移動しないように支持するための支持機構の支持耐力が小さくてよいので、当該支持機構を小型で簡単な機構にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET等の熱可塑性樹脂からなる有底筒状のプリフォームをブロー成形型によるブロー成形位置を経由して搬送するために用いるブロー成形用プリフォームキャリアおよびブロー成形型に関するものである。さらに詳しくは、一般の飲料用などのボトルに比べて口部が大径の広口ボトルあるいは広口容器と呼ばれているブロー成形品のブロー成形に用いるのに適しているブロー成形用プリフォームキャリアおよびブロー成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
広口ボトル、広口容器は、一般に、有底筒状のプリフォームを射出成形により製造し、このプリフォームの口部以外の部分を二軸延伸ブローすることにより製造されている。特許文献1には射出成形後のプリフォームを、リップ型(プリフォームキャリア)によって口部を保持した状態で、そのままブロー金型に移送して広口容器を製造する延伸ブロー成形方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、一般的な口部が小径のボトルを二軸延伸ブロー成形により製造する方法が開示されている。ここに開示されている方法では、プリフォームをプリフォームキャリアに担持させ、この状態でプリフォームキャリアを加熱ステーションを経由して搬送することによりプリフォームを二軸延伸ブローに適した温度に加熱し、しかる後に、加熱状態のプリフォームを担持しているプリフォームキャリアをブロー成形型の成形位置に送り込み、ブロー成形型を閉じてプリフォームに二軸延伸ブローを施すようにしている。
【特許文献1】特開2001−121598号公報
【特許文献2】特開2007−276327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ブロー成形型におけるプリフォームの二軸延伸ブロー成形時には、延伸ロッドによってプリフォームが延伸されると共に、高圧のブローエアーがプリフォーム内に供給されてプリフォームがブローされる。したがって、成形時にはプリフォームの口部を支持しているプリフォームキャリアにブローエアーによる圧力が作用する。
【0005】
口部が小径の容器をブロー成形する場合には、プリフォームキャリアも小径のもので良く、ブローエアーの受圧面積が狭いので、ブロー成形時にブローエアーによって大きな力が作用することがない。しかしながら、口部が大径の広口容器をブロー成形する場合には、プリフォームキャリアは、大径の口部を支持するために大径のものが使用され、ブローエアーの受圧面積も広くなり、ブロー成形時にブローエアーによって大きな力が作用する。
【0006】
ブロー成形時のブローエアー導入時に、プリフォームキャリアに一時的に大きな力が作用すると、プリフォームキャリアがブロー成形型の軸線方向に押し下げられて、主に軸線方向に位置ずれが発生するおそれがある。このために、プリフォームキャリアに加わる力に対向できる大きな力で反対側からプリフォームキャリアを支持しておく必要がある。このようにすると、ブローエアーの供給前および終了時に、プリフォームキャリアに作用する力の方向が反転し、例えば、左右に開閉する開閉型が押し上げられて底型の側の部分が左右に開いてしまい、ブロー成形品に大きなパーティングラインが出来てしまうおそれがある。更に、口部寸法に変形が生じるおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ブロー成形時にブローエアーによって大きな力が作用しても位置ずれなどの弊害を起すことの無いブロー成形用プリフォームキャリアを提案することにある。
【0008】
また、本発明の課題は、かかる新しいブロー成形用プリフォームキャリアを用いてブロー成形するのに適したブロー成形型を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、熱可塑性樹脂からなる有底筒状のプリフォームをブロー成形型によるブロー成形位置を経由して搬送するために用いるブロー成形用プリフォームキャリアであって、
外側筒体と、
この外側筒体の内側に同軸状態に装着されている内側筒体と、
前記内側筒体における中心軸線方向の一方の端に同軸状態に取り付けた差込コアリングと、
前記外側筒体の内周面の一部に形成した第1受圧面、および、当該第1受圧面に対峙している前記内側筒体の外周面の一部に形成した第2受圧面の間に形成した圧力室と、
一端が前記内側筒体の内周面に開口し、他端が前記圧力室に連通しているブローエアー導入路とを有し、
前記差込コアリングを搬送対象のプリフォームの口部に差し込むことにより、当該プリフォームを担持した状態が形成され、
前記圧力室にブローエアーが導入されると、前記中心軸線方向に沿って、前記内側筒体は前記差し込みコアリングの側に付勢され、前記外側筒体は反対側に付勢されることを特徴としている。
【0010】
本発明のブロー成形用プリフォームキャリアは、ブローエアーが導入される圧力室を備えており、ブロー成形時にはこの圧力室にブローエアーが導入される。ブローエアーが圧力室に導入されると、ブロー成形用プリフォームキャリアの外側筒体および内側筒体にはそれらの軸線方向に沿って逆向きの力が作用する。したがって、ブローエアーによってプリフォームキャリアに対して一方向に大きな力が作用して、プリフォームキャリアに位置ずれなどの弊害発生してしまうことを防止できる。また、プリフォームキャリアがブローエアーによって移動しないように支持するための支持機構の支持耐力が小さくてよいので、当該支持機構を小型で簡単な機構にすることができる。
【0011】
ここで、次のように構成した外側筒体および内側筒体によって、圧力室を形成することができる。すなわち、前記内側筒体は、前記差込コアリングの側の端部に、半径方向の外方に広がったフランジを備えており、このフランジにおける一方の端面に前記差込コアリングが固定され、他方の端面に前記第2受圧面が形成されている。また、前記外側筒体は、前記差込コアリングの側の端部に、半径方向の外側に広がったフランジ部分と、このフランジ部分の外周縁から前記差込コアリングの側に延びているリング部分とを備えており、前記フランジ部分における一方の端面に、前記第2受圧面に対して所定の間隔で対峙している前記第1受圧面が形成されている。さらに、前記内側筒体の前記フランジの外周面に前記外側筒体の前記リング部分の内周面が対峙しており、これらの間が気密状態に封止されている。
【0012】
次に、本発明のブロー成形用プリフォームキャリアを、その中心軸線方向の両側から支持することができるように、次のようにして、第1の被支持面および第2の被支持面を設けることが望ましい。すなわち、前記差込コアリングは、円盤状の本体部分と、この本体部分における前記内側筒体とは反対側の端面から同軸状態に突出しているリング状突起部分とを備え、前記端面における前記リング状突起部分を取り囲む円環状端面部分は、前記中心軸線方向における前記内側筒体とは反対側から、当該ブロー成形用プリフォームキャリアを支持させるために用いる第1の被支持面である。また、前記外側筒体の前記フランジ部分における他方の端面は、前記軸線方向における前記差込コアリングの反対側から、当該ブロー成形用プリフォームキャリアを支持させるために用いる第2の被支持面である。
【0013】
なお、本発明のブロー成形用プリフォームキャリアを用いて、両側にヒータが配置されている加熱ステーションを経由してプリフォームを搬送して当該プリフォームを均一に加熱するためには、プリフォームをその中心軸線回りに回転させながら搬送することが望ましい。このためには、前記外側筒体の外周面にチェーンスプロケットを取り付けておけばよい。加熱ステーションを経由する搬送路に沿ってチェーンを配置しておき、このチェーンに噛み合わせた状態でプリフォームキャリアを搬送すると、プリフォームキャリアはその軸線回りに回転しながら搬送され、そこに担持されているプリフォームの各部分を均一に加熱できる。
【0014】
次に、本発明は、上記構成のブロー成形用プリフォームキャリアに担持されたプリフォームをブロー成形するために用いるブロー成形型であって、前記プリフォームキャリアをその軸線方向の一方の側から支持するためのキャリア支持面を有しており、型締め状態において、前記キャリア支持面は前記ブロー成形用プリフォームキャリアの前記第2の被支持面を支持可能であることを特徴としている。
【0015】
ここで、前記プリフォームキャリアをその軸線方向の一方の側から支持するためのキャリア補助支持面と、他方の側から支持するためのキャリア支持面とを配置し、型締め状態において、前記キャリア補助支持面によって、前記ブロー成形用プリフォームキャリアの前記第1の被支持面を支持可能とし、前記キャリア支持面によって前記ブロー成形用プリフォームキャリアの前記第2の被支持面を支持するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したブロー成形用プリフォームキャリアおよびブロー成形型の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るブロー成形用プリフォームキャリア、プリフォームおよび広口容器を示す縦断面図であり、図2は、ブロー成形用プリフォームキャリアの拡大縦断面図である。プリフォーム1はPET等の熱可塑性樹脂の射出成形品であり、雄ねじが形成された一定の径の口部2と、この口部2に連続している同一径の肩部形成部3と、この肩部形成部3に連続している略半球形状をした底部4とを備えている。このプリフォーム1を二軸延伸ブロー成形して製造される広口容器5は、口部2がそのまま残っている口部6と、肩部形成部3が二軸延伸ブローされて形成される肩部7と、底部4が二軸延伸ブローされて形成される円筒状胴部8および円形の底部9とを備えている。
【0018】
ブロー成形用プリフォームキャリア10は、外側円筒11と、この外側円筒11の内側に同軸状態に装着されている内側円筒12と、この内側円筒12における中心軸線10aの方向の一方の端(図においては内側円筒12の上端)に同軸状態に取り付けた差込コアリング13とを有している。外側円筒11の内周面の一部には円環状の第1受圧面14が形成されており、内側円筒12の外周面には、この第1受圧面に一定の隙間で対峙している円環状の第2受圧面15が形成されており、これらの間に、円環状の圧力室16が形成されている。この圧力室16にはブローエアー導入穴17の外側端が連通しており、ブローエアー導入穴17の内側端は、内側円筒12の内周面に開口している。
【0019】
各部の構造を主に図2を参照して説明する。まず、外側円筒11は、円筒本体部分21と、この円筒本体部分21の上端部から外方に直角に広がっている一定厚さの円盤状フランジ部分22と、この円盤状フランジ部分22の外周端から上方に直角に折れ曲がって延びているリング部分23とを備えている。円盤状フランジ部分22の円環状の上端面22aが第1受圧面14である。また、円筒本体部分21の外周面には、その下端に外方に直角に広がっている円盤状の下フランジ部分24が同軸状に形成されており、この上側には一定の間隔をあけて、チェーンスプロケット25が同軸状に形成されている。チェーンスプロケット25の代わりにフランジが形成される場合もある。
【0020】
内側円筒12は、外側円筒11の円筒本体部分21の内側に挿入されている円筒本体部分31と、この円筒本体部分31の上端部から外方に直角に広がっている円盤状フランジ32とを備えている。円筒状本体部分31の下端部は、外側円筒11の円筒本体部分21の下端から下方に突出しており、この突出部分の外周面には止め輪33が固定されている。止め輪33は円環状のゴムブッシュ34を介して外側円筒11の円筒本体部分21の下端面21aに係合しており、これによって内側円筒12が外側円筒11から上方に外れないようになっている。また、外側円筒11の円筒本体部分21の内周面には、下端がゴムブッシュ34に当接している円筒状の軸受26が装着されている。
【0021】
内側円筒12における円盤状フランジ32の下側の円環状端面36は、その内周縁側の端面部分が僅かに下方に突出しており、その外側の端面部分が、外側円筒11の第1受圧面14に対して一定の間隔で対峙している第2受圧面15となっている。ブローエアー導入穴17は、内側円筒12の円筒本体部分31における円盤状フランジ32との境界部分において、放射状に多数本形成されている。
【0022】
ブローエアー導入穴17の下側位置には、外側円筒11の円筒本体部分21の内周面に形成した円環状の溝に装着したシールリング27が配置されており、このシールリング27によって、内側円筒12の円筒本体部分31の外周面と外側円筒11の円筒本体部分21の内周面の間が気密封止されている。同様に、内側円筒12の円盤状フランジ32の円形外周面に形成した円環状の溝に装着したシールリング37によって、内側円筒12の円盤状フランジ32の円形外周面と、外側円筒11のリング部分23の円形内周面との間が気密封止されている。したがって、圧力室16は、ブローエアー導入穴17に連通している以外は気密状態に保持されている。
【0023】
次に、内側円筒12の円盤状フランジ32の円環状の上端面38は内周縁側部分が上方に僅かに突出した段付き端面となっている。この上端面38には、相補的な下側端面41を備えた差込コアリング13が締結ボルト42によって同軸状態に固定されている。差込コアリング13は、円盤状の本体部分43と、この本体部分43における上端面から上方に突出しているリング状突起部分44とを備えている。リング状突起部分44は、プリフォーム1の口部2に嵌め込み可能な寸法に設定されている。このリング状突起部分44に囲まれている円環状の上端面13aはブロー成形時にブローエアーの圧力を受ける。
【0024】
ここで、リング状突起部分44を取り囲む円盤状の本体部分43の外周縁側の円環状端面部分45は、プリフォーム1の口部2の端面の支持面である。また、この円環状端面部分45は、後述のように、ブロー成形型によって上側から支持可能な第1の被支持面として機能する。また、外側筒体11の円環状フランジ部分22における下側の円環状端面28は、後述のように、ブロー成形型によって下側から支持される第2の被支持面として機能する。
【0025】
このように構成したブロー成形用プリフォームキャリア10は、図1に示すようにプリフォーム1を倒立状態で担持した状態で、加熱ステーション(図示せず)を経由する搬送経路に沿って搬送される。搬送経路は、例えば、図1において想像線で示すように左右一対のレール51、52によって規定されており、これらの上に、ブロー成形用プリフォームキャリア10の外側円筒11のチェーンスプロケット25、あるいは、この代わりに設けられるフランジが乗った状態に支持される。この状態で、レール51、52に沿って、ブロー成形用プリフォームキャリア10が搬送される。
【0026】
加熱ステーションを経由する搬送経路には、例えば、レール51、52に沿ってチェーン53が架け渡されている。この場合には、ブロー成形用プリフォームキャリア10は、そのチェーンスプロケット25がチェーンに噛み合った状態で搬送される。チェーンスプロケット25の代わりにフランジが形成されている場合などにおいては、ブロー成形用プリフォームキャリア10は、スプロケットを備えた複数の回転テーブルにそれぞれ搭載され、回転テーブルのスプロケットがチェーンに噛み合った状態で搬送される。この結果、ブロー成形用プリフォームキャリア10はその中心軸線回りに回転しながら搬送されるので、そこに担持されているプリフォーム1はその中心軸線回りに回転しながら加熱され、全体が均一にブロー成形に適した温度に加熱される。ブロー成形に適した温度に加熱されたプリフォーム1を担持しているブロー成形用プリフォームキャリア10は、次に、ブロー成形型の成形位置に送り込まれる。この後は、ブロー成形型の型締めが行われて、プリフォーム1に二軸延伸ブローが施される。
【0027】
図3は、ブロー成形型において二軸延伸ブローが施される前の状態を示す概略縦断面図であり、図4はその部分拡大断面図である。ブロー成形型60は、例えば、左右に開閉する開閉型61、62と、上下方向に移動する底型63とを備えている。左右の開閉型61、62の対向面には広口容器5の肩部7、円筒状胴部8および底部9の外周側部分の成形面64、65を備えたキャビティが形成されており、底型63の先端面には広口容器5の底部9の中央側部分を成形するための成形面66が形成されている。ブロー成形型60の中心の下側には、ブローエアーのノズル67が垂直に配置されている。このノズル67を同軸状態に貫通する状態に延伸ロッド68が垂直に配置されている。ノズル67および延伸ロッド68は、不図示の昇降機構によって昇降される。
【0028】
ここで、左右の開閉型61、62の下端部は、プリフォーム1の口部2の外径よりも僅かに大きな内径の半円形の内周面部分71、72が形成されている。この半円形の内周面部分71、72の下端部分には内方に突出した半円形の円弧状突起73、74が形成されている。これらの円弧状突起73、74の下面は、型締め状態において、プリフォーム1の口部2の下側端面2aに当接可能である。
【0029】
これらの円弧状突起73、74の下側には、内周面部分71、72よりも小さな内径の内周面を備えた矩形断面の半円形の円弧部材75、76が取り付けられている。これらの円弧部材75、76の内周面は型締め状態において、プリフォーム1の口部2の外周面に当接するようになっている。また、これらの円弧部材75、76の下端面75a、76aは、型締め状態において、ブロー成形用プリフォームキャリア10の差込コアリング13における円環状端面部分45(第1の被支持面)に上側から当接可能なキャリア補助支持面となっている。
【0030】
一方、左右の開閉型61、62の下端面には半円形の円弧状支持部材81、82が固定されている。これらの円弧状支持部材81、82の内周面は、その上側から大径内周面部分81a、82a、中径内周面部分81b、82b、および、小径内周面部分81c、82cが形成された段付き面となっている。型締め状態においては、大径内周面部分81a、82aがブロー成形用プリフォームキャリア10の差込コアリング13の外周面に対峙する。また、中径内周面部分81b、82bがブロー成形用プリフォームキャリア10の外側円筒11のリング部分23の外周面に当接する。さらに、中径内周面部分81b、82bと小径内周面部分81c、82cの間の上向きの円環状段面部分81d、82dは、ブロー成形用プリフォームキャリア10の外側円筒11のリング部分23の円環状端面28(第2の被支持面)に下側から当接する。これらの円環状段面部分81d、82dは、当該ブロー成形用プリフォームキャリア10を下側から支持するキャリア支持面として機能する。
【0031】
この構成のブロー成形型60の中心(成形位置)に、プリフォーム1を担持したブロー成形用プリフォームキャリア10が搬入されて位置決めされると、型締め動作が行われる。型締め後には、図3、4に示すように、左右の開閉型61、62の下側部分と差込コアリング13との間にプリフォーム1の口部2が挟まれ、ブロー成形用プリフォームキャリア10が左右の円弧状支持部材81、82によって左右から把持されると共に下側から支持された状態になる。
【0032】
この後は、下側から、ブローエアー用のノズル67が上昇して、ブロー成形用プリフォームキャリア10の下端(内側円筒12の下端)に同軸状態で押し付けられ、これらの間が気密状態に封止される。すなわち、ノズル67の上端面はリング状のラバーブッシュ67aが取り付けられており、これが弾性変形して気密状態が形成される。この状態が形成された後は、ブローエアーが、ブロー成形用プリフォームキャリア10の中空部を介して成形型内のプリフォーム1の内部に供給される。また、所定のタイミングで延伸ロッド68もブロー成形用プリフォームキャリア10の中空部10bを通って上昇して成形型内のプリフォーム1を上方に延伸する。これらブローエアーおよび延伸ロッドによってプリフォーム1が成形型内で二軸延伸される。
【0033】
ここで、ブローエアーが導入されると、プリフォーム1の口部2に挿入されている差込コアリング13の上端面13aに下向きの大きな力が作用し、ブロー成形用プリフォームキャリア10が下方に押し込まれる。しかしながら、ブローエアーの一部が、ブロー成形用プリフォームキャリア10の内周面に連通しているブローエアー導入穴17から圧力室16内に供給され、ブローエアーによって、ブロー成形用プリフォームキャリア10の外側円筒11には下向きの力が作用し、内側円筒12には上向きの力が作用する。このようにして発生する上向きの力によって、ブロー成形用プリフォームキャリア10を下方に押し込む力が相殺あるいは低減される。
【0034】
また、ブロー成形用プリフォームキャリア10に作用する下向きの力は、左右の開閉型61、62の下端に取り付けた円弧状支持部材81、82によって支持され、上向きの力は、左右の開閉型61、62の円弧部材75、76の下端面75a、76aによって支持される。
【0035】
したがって、ブローエアーによってブロー成形用プリフォームキャリア10に作用する力を低減できるので、ブローエアーによってブロー成形用プリフォームキャリア10が上下に移動することを防止できる。また、ブロー成形用プリフォームキャリア10は成形型によって上下方向に移動しないように支持されるので、ノズル67に大きな力が作用することがない。よって、ノズル67の押し上げ力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用したブロー成形用プリフォームキャリア、プリフォームおよび広口容器を示す縦断面図である。
【図2】図1のブロー成形用プリフォームキャリアの拡大縦断面図である。
【図3】ブロー成形型において二軸延伸ブローが施される前の状態を示す概略縦断面図である。
【図4】図3の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プリフォーム
2 口部
2a 下側端面
3 肩部形成部
4 底部
5 広口容器
6 口部
7 肩部
8 円筒状胴部
9 底部
10 ブロー成形用プリフォームキャリア
10a 中心軸線
10b 中空部
11 外側円筒
12 内側円筒
13 差込コアリング
13a 上端面
14 第1受圧面
15 第2受圧面
16 圧力室
17 ブローエアー導入穴
21 円筒本体部分
21a 下端面
22 円盤状フランジ部分
22a 上端面
23 リング部分
24 下フランジ部分
25 チェーンスプロケット
26 軸受
27 シールリング
28 円環状端面
31 円筒本体部分
32 円盤状フランジ
33 止め輪
34 ゴムブッシュ
36 円環状端面
37 シールリング
38 上端面
41 下側端面
42 締結ボルト
43 本体部分
44 リング状突起部分
45 円環状端面部分
51、52 レール
53 チェーン
60 ブロー成形型
61、62 開閉型
63 底型
64、65、66 成形面
67 ノズル
67a ラバーブッシュ
68 延伸ロッド
71、72 内周面部分
73、74 円弧状突起
75、76 円弧部材
75a、76a 下端面
81、82 円弧状支持部材
81a、82a 大径内周面部分
81b、82b 中径内周面部分
81c、82c 小径内周面部分
81d、82d 円環状段面部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる有底筒状のプリフォーム(1)をブロー成形型(60)によるブロー成形位置を経由して搬送するために用いるブロー成形用プリフォームキャリア(10)であって、
外側筒体(11)と、
この外側筒体(11)の内側に同軸状態に装着されている内側筒体(12)と、
前記内側筒体(12)における中心軸線(10a)方向の一方の端に同軸状態に取り付けた差込コアリング(13)と、
前記外側筒体(11)の内周面の一部に形成した第1受圧面(14)、および、当該第1受圧面(14)に対峙している前記内側筒体(12)の外周面の一部に形成した第2受圧面(15)の間に形成した圧力室(16)と、
一端が前記内側筒体(12)の内周面に開口し、他端が前記圧力室(16)に連通しているブローエアー導入路(17)とを有し、
前記差込コアリング(13)を搬送対象のプリフォーム(1)の口部(2)に差し込むことにより、当該プリフォーム(1)を担持した状態が形成され、
前記圧力室(16)にブローエアーが導入されると、前記中心軸線(10a)の方向に沿って、前記内側筒体(12)は前記差込コアリング(13)の側に付勢され、前記外側筒体(11)は反対側に付勢されることを特徴とするブロー成形用プリフォームキャリア(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のブロー成形用プリフォームキャリア(10)において、
前記内側筒体(12)は、前記差込コアリング(13)の側の端部に、半径方向の外方に広がったフランジ(32)を備えており、このフランジ(32)における一方の端面に前記差込コアリング(13)が固定され、他方の端面(36)に前記第2受圧面(15)が形成されており、
前記外側筒体(11)は、前記差込コアリング(13)の側の端部に、半径方向の外側に広がったフランジ部分(22)と、このフランジ部分(22)の外周縁から前記差込コアリング(13)の側に延びているリング部分(23)とを備えており、前記フランジ部分(22)における一方の端面(22a)に、前記第2受圧面(15)に対して所定の間隔で対峙している前記第1受圧面(14)が形成されており、
前記内側筒体(12)の前記フランジ(32)の外周面に前記外側筒体(11)の前記リング部分(23)の内周面が対峙しており、これらの間が気密状態に封止されていることを特徴とするブロー成形用プリフォームキャリア(10)。
【請求項3】
請求項2に記載のブロー成形用プリフォームキャリア(10)において、
前記差込コアリング(13)は、円環状の本体部分(43)と、この本体部分(43)における前記内側筒体(12)とは反対側の端面から同軸状態に突出しているリング状突起部分(44)とを備え、この端面における前記リング状突起部分(44)を取り囲む円環状端面部分(45)は、前記中心軸線(10a)の方向における前記内側筒体(12)とは反対側から、当該ブロー成形用プリフォームキャリア(10)を支持させるために用いる第1の被支持面であり、
前記外側筒体(11)の前記フランジ部分(22)における他方の端面(28)は、前記中心軸線(10a)の方向における前記差込コアリング(13)の反対側から、当該ブロー成形用プリフォームキャリア(10)を支持させるために用いる第2の被支持面であることを特徴とするブロー成形用プリフォームキャリア(10)。
【請求項4】
請求項3に記載のブロー成形用プリフォームキャリア(10)において、
前記外側筒体(11)は、その外周面に、チェーンスプロケット(25)を備えていることを特徴とするブロー成形用プリフォームキャリア(10)。
【請求項5】
請求項3または4に記載のブロー成形用プリフォームキャリア(10)に担持されたプリフォーム(1)をブロー成形するために用いるブロー成形型(60)であって、
前記プリフォームキャリア(10)をその中心軸線(10a)の方向の一方の側から支持するためのキャリア支持面(81d、82d)を有しており、
型締め状態において、前記キャリア支持面(81d、82d)は前記ブロー成形用プリフォームキャリア(10)の前記第2の被支持面(28)を支持した状態になることを特徴とするブロー成形型(60)。
【請求項6】
請求項3または4に記載のブロー成形用プリフォームキャリア(10)に担持されたプリフォーム(1)をブロー成形するために用いるブロー成形型(60)であって、
前記プリフォームキャリア(10)をその中心軸線(10a)の方向の一方の側から支持可能なキャリア補助支持面(75a、76a)と、
前記プリフォームキャリア(10)をその中心軸線(10a)の方向の他方の側から支持するためのキャリア支持面(81d、82d)とを有しており、
型締め状態において、前記キャリア補助支持面(75a、76a)は前記ブロー成形用プリフォームキャリア(10)の前記第1の被支持面(45)を支持可能な状態となり、前記キャリア支持面(81d、82d)は前記ブロー成形用プリフォームキャリア(10)の前記第2の被支持面(28)を支持した状態になることを特徴とするブロー成形型(60)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−99853(P2010−99853A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270980(P2008−270980)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【Fターム(参考)】