説明

ブースター

【課題】センター局に影響を与えることなく上り信号調整を行うことができるブースターを提供する。
【解決手段】上り信号又は上り信号調整用のテスト信号を増幅する上り信号増幅手段(上り信号アンプ17および20)と、上り信号出力端子(下り信号入力兼上り信号出力端子T1)と、前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子との間の伝送ライン上に設けられ、前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子とが電気的に接続されている第1の状態および前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子とが電気的に接続されていない第2の状態を切り換えるスイッチ手段(カットスイッチ部25内の双極双投スイッチ)と、前記上り信号増幅手段と前記スイッチ手段との間に設けられる分岐手段(分岐器22)と、前記分岐手段の分岐出力が供給される上り信号出力モニター端子(上り信号出力モニター端子T4)とを備えるブースター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブースターに関し、特に、上り信号を増幅する上り信号増幅手段を備えるブースターに関する。
【背景技術】
【0002】
センター局及び複数の加入者端末装置を備え、下り信号および上り信号の伝送機能を有する双方向伝送システムでは、通常、双方向ブースターが設けられる。ここで、加入者側の集合住宅などに設置される双方向ブースターの従来構成例を図4に示す。
【0003】
図4に示す従来の双方向ブースターは、10〜60MHzの周波数帯域の上り信号を増幅することができ、70〜770MHzの周波数帯域の下り信号を増幅することができるブースターである。
【0004】
図4示す従来の双方向ブースターは、下り信号入力兼上り信号出力端子T1と、770MHz以下の周波数帯域を通過させる770MHzLPF(Low Pass Filter)1と、70MHz以上の周波数帯域を通過させる70MHzHPF(High Pass Filter)2と、分岐器3と、利得減衰および周波数特性変更を行うアッテネータ・イコライザー部4と、分岐器5と、下り信号を増幅する下り信号アンプ6と、ゲインコントロール回路7と、下り信号アンプ8と、チルト特性を調整するチルト回路9と、下り信号アンプ10と、70MHzHPF11と、770MHzLPF12と、分岐器13と、下り信号出力兼上り信号入力端子T2と、下り信号出力モニター兼上り信号調整用入力端子T3とを備える。
【0005】
図4示す従来の双方向ブースターは、さらに、60MHz以下の周波数帯域を通過させる60MHzLPF14と、10MHz以上の周波数帯域を通過させる10MHzHPF15と、分岐器16と、上り信号を増幅する上り信号アンプ17と、チルト回路18と、ゲインコントロール回路19と、上り信号アンプ20と、利得減衰を行うアッテネータ21と、分岐器22と、10MHzHPF23と、60MHzLPF24と、上り信号出力モニター端子T4とを備える。
【0006】
また、図4に示す従来の双方向ブースターは、下り信号入力モニター端子T5、内部モニター端子T6、および上り信号入力モニター端子T7も備える。
【0007】
センター局から伝送されてくる下り信号は、下り信号入力兼上り信号出力端子T1に入力され、770MHzLPF1および70MHzHPF2を通過し、分岐器3を経由し、アッテネータ・イコライザー部4によって利得減衰および周波数特性変更され、分岐器5を経由し、下り信号アンプ6によって増幅され、ゲインコントロール回路7によって利得調整され、下り信号アンプ8によって増幅され、チルト回路9によってチルト特性が調整され、下り信号アンプ10によって増幅され、70MHzHPF11および770MHzLPF12を通過し、分岐器13を経由して、下り信号出力兼上り信号入力端子T2から出力される。そして、分岐器3の分岐出力が下り信号入力モニター端子T5に供給され、分岐器5の分岐出力が内部モニター端子T6に供給され、分岐器13の分岐出力が下り信号出力モニター兼上り信号調整用入力端子T3に供給される。
【0008】
一方、加入者端末装置から伝送されてくる上り信号は、下り信号出力兼上り信号入力端子T2に入力され、分岐器13を経由して、770MHzLPF12と60MHzLPF14と10MHzHPF15とを通過し、分岐器16を経由し、上り信号アンプ17によって増幅され、チルト回路18によってチルト特性が調整され、ゲインコントロール回路19によって利得調整され、上り信号アンプ20によって増幅され、アッテネータ21によって利得減衰され、分岐器22を経由し、10MHzHPF23と60MHzLPF24と770MHzLPF1とを通過し、下り信号入力兼上り信号出力端子T1から出力される。そして、分岐器16の分岐出力が上り信号入力モニター端子T7に供給され、分岐器22の分岐出力が上り信号出力モニター端子T4に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−111043号公報(段落0003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4に示す従来の双方向ブースターには、アッテネータ・イコライザー部4の機能をオン/オフするためのスイッチ、ゲインコントロール回路7の利得調整量を定めるためのボリューム、およびチルト回路9の機能をオン/オフするためのスイッチが設けられており、これらを用いて下り信号の調整が実施される。なお、アッテネータ・イコライザー部4は機能がオフであればスルー回路となる。同様に、チルト回路9は機能がオフであればスルー回路となる。
【0011】
図4に示す従来の双方向ブースターには、チルト回路18の機能をオン/オフするためのスイッチ、ゲインコントロール回路19の利得調整量を定めるためのボリューム、およびアッテネータ21の機能をオン/オフするためのスイッチが設けられており、これらを用いて上り信号の調整が実施される。なお、チルト回路18は機能がオフであればスルー回路となる。同様に、アッテネータ21は機能がオフであればスルー回路となる。
【0012】
上り信号の調整では、下り信号入力兼上り信号出力端子T1と下り信号出力兼上り信号入力端子T2それぞれに同軸ケーブルが接続された状態で、下り信号出力モニター兼上り信号調整用入力端子T3に上り信号調整用のテスト信号(上り帯域10〜60MHzの信号)を入力し、上り信号出力モニター端子T4から出力される信号(上り信号出力モニター信号)を計測して流合雑音が測定される。この上り信号調整時に、増幅されたテスト信号が下り信号入力兼上り信号出力端子T1から出力され、下り信号入力兼上り信号出力端子T1からセンター局に流合雑音が流出してセンター局に影響を与えてしまっていた。
【0013】
なお、上記の問題は、双方向ブースターに限らず、上り信号を増幅する上り信号増幅手段は備えているが下り信号を増幅する下り信号増幅手段は備えていないブースターにも起こり得る。
【0014】
また、特許文献1で開示されているブースターは、上り信号を増幅する上り信号増幅手段に各端末からの上り信号を供給する複数の端子(複数の上り信号入力端子)を備えており、上り信号出力モニター端子を備えていない構成の双方向ブースターである。当該双方向ブースターに様々なラインから供給される上り信号をオン・オフするゲートスイッチを順にオン・オフして、流合雑音に大きな影響を与える雑音がどのラインで発生するかをセンター局で調査している。そのため、当該調査時において、流合雑音に大きな影響を与える雑音が発生しているラインのゲートスイッチがオンである期間はセンター局に影響を与えてしまっていた。
【0015】
本発明は、上記の状況に鑑み、センター局に影響を与えることなく上り信号の調整を行うことができるブースターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明に係るブースターは、上り信号又は上り信号調整用のテスト信号を増幅する上り信号増幅手段と、上り信号出力端子と、前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子との間の伝送ライン上に設けられ、前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子とが電気的に接続されている第1の状態および前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子とが電気的に接続されていない第2の状態を切り換えるスイッチ手段と、前記上り信号増幅手段と前記スイッチ手段との間に設けられる分岐手段と、前記分岐手段の分岐出力が供給される上り信号出力モニター端子とを備える構成とする。
【0017】
上記構成のブースターにおいて、上り信号調整時には前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択し、上り信号調整後の通常使用時には前記スイッチ手段が前記第1の状態を選択するようにする。これにより、上り信号調整時には、前記上り信号増幅手段によって増幅されたテスト信号の伝送が前記スイッチ手段でカットされるので、増幅されたテスト信号が前記上り信号出力端子から出力されなくなり、前記上り信号出力端子からセンター局に流合雑音が流出しない。したがって、センター局に影響が及ばない。また、これにより、上り信号調整時後の通常使用時には、前記上り信号増幅手段によって増幅された上り信号が、前記スイッチ手段を経由して、前記上り信号出力端子から問題なく出力され、従来と同様に前記上り信号出力端子からセンター局に伝送される。
【0018】
なお、上り信号調整時には、前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択していても、前記上り信号増幅手段によって増幅されたテスト信号が前記上り信号出力モニター端子から出力されるため、従来と同様に前記上り信号出力モニター端子から出力される信号(上り信号出力モニター信号)を計測して流合雑音を測定することが可能である。
【0019】
また、上り信号調整から通常使用に切り換える際に、前記スイッチ手段の選択先の切り換え忘れ(前記第2の状態から前記第1の状態への切り換え忘れ)を低減する観点から、前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときに、その旨を報知する報知手段を備えることが好ましい。
【0020】
さらに、前記報知手段による報知と、一般的に発光ダイオードなどの点灯によりパイロット状態であることを表示するパイロット表示との区別を容易にする観点から、前記報知手段が、発光手段と、前記発光手段を駆動する駆動手段とを備え、前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときに、その旨を前記発光手段の点滅によって報知することがより好ましい。
【0021】
また、前記分岐手段と前記スイッチ手段との間の伝送ライン上に設けられる第1のダイオードと、カソードが前記第1のダイオードのカソードと共通接続される第2のダイオードと、前記第2のダイオードのアノードに接続される終端器とを備え、前記スイッチ手段が前記第1の状態を選択しているときには、前記第1のダイオードのアノード電圧が前記第2のダイオードのアノード電圧より大きくなることで前記第1のダイオードがオン状態、前記第2のダイオードがオフ状態になり、前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときには、前記第1のダイオードのアノード電圧が前記第2のダイオードのアノード電圧より小さくなることで前記第1のダイオードがオフ状態、前記第2のダイオードがオン状態になるようにしてもよい。これにより、前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときには、前記分岐手段側の伝送ラインが前記終端器によって終端される。また、前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときには、前記上り信号出力端子側の伝送ラインが前記終端器とは別の終端器によって終端されるようにする。このような終端器の設置により、前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときでも、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)を良好に保つことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、センター局に影響を与えることなく上り信号の調整を行うことができるブースターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る双方向ブースターの構成を示す図である。
【図2】カットスイッチ部の一構成例を示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るブースターの構成を示す図である。
【図4】双方向ブースターの従来構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明の一実施形態に係る双方向ブースターの構成を図1に示す。なお、図1において図4と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0025】
図1に示す本発明の一実施形態に係る双方向ブースターは、図4に示す従来の双方向ブースターにカットスイッチ部25を追加した構成である。カットスイッチ部25は、分岐器22と10MHzHPF23との間に設けられる。
【0026】
次に、カットスイッチ部25の一構成例を図2に示す。図2に示す構成例のカットスイッチ部25は、双極双投スイッチSW1と、コンデンサC1〜C7と、ダイオードD1およびD2と、発光ダイオードD3と、コイルM1〜M3と、NPNトランジスタQ1〜Q3と、抵抗R1〜R14とを備える。双極双投スイッチSW1には、例えば、手動によりスライドして二つの接続先を択一的に選択するスライドスイッチを用いることができる。
【0027】
双極双投スイッチSW1の一方の極は、コイルM1の一端と直流阻止用のコンデンサC7の一端とに接続される。コンデンサC7の他端は10MHzHPF23(図1参照)に接続される。双極双投スイッチSW1の他方の極は、ダイオードD1のアノードおよびコイルM2の一端に接続される。
【0028】
コイルM2の他端は抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端は双極双投スイッチSW1の接点a1および接点a2に接続される。双極双投スイッチSW1の接点a1と接点a2とは短絡している。
【0029】
ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードは共通接続され、抵抗R14の一端と直流阻止用のコンデンサC6の一端とに接続される。抵抗R14の他端はグランド電位に接続される。コンデンサC6の他端は分岐器22(図1参照)に接続される。ダイオードD2のアノードは抵抗R2を介してNPNトランジスタQ1のエミッタおよびコンデンサC1の一端に接続される。コンデンサC1の他端はグランド電位に接続される。
【0030】
また、コイルM1の他端、抵抗R3の一端、およびNPNトランジスタQ1のコレクタに所定値(例えば24V)の直流電圧VDCが印加される。抵抗R3の他端はNPNトランジスタQ1のベースおよび抵抗R4の一端に接続される。抵抗R4の他端はグランド電位に接続される。
【0031】
双極双投スイッチSW1の接点b1はオープンになっている。一方、双極双投スイッチSW1の接点b2はコンデンサC2の一端およびコイルM3の一端に接続される。コンデンサC2の他端は抵抗R5の一端に接続され、抵抗R5の他端はグランド電位に接続される。
【0032】
コイルM3の他端はコンデンサC3の一端および抵抗R6の一端に接続される。抵抗R6の他端は抵抗R7の一端、抵抗R8〜R10の一端、および発光ダイオードD3のアノードに接続される。コンデンサC3の他端および抵抗R7の他端はグランド電位に接続される。
【0033】
抵抗R8の他端はNPNトランジスタQ2のコレクタおよびコンデンサC4の一端に接続される。また、発光ダイオードD3のカソードは抵抗R11を介してNPNトランジスタQ3のコレクタおよびコンデンサC5の一端に接続される。
【0034】
抵抗R9の他端は抵抗R12を介してコンデンサC4の他端およびNPNトランジスタQ3のベースに接続される。また、抵抗R10の他端は抵抗R13を介してコンデンサC5の他端およびNPNトランジスタQ2のベースに接続される。NPNトランジスタQ2のエミッタおよびNPNトランジスタQ3のエミッタはグランド電位に接続される。
【0035】
発光ダイオード点滅回路26は、発光ダイオードD3と、コンデンサC3〜C5と、抵抗R6〜R13と、NPNトランジスタQ2およびQ3とによって構成される無安定マルチバイブレーターである。発光ダイオード点滅回路26は、抵抗R6とコンデンサC3との接続点に所定値の直流電圧VDCが印加されると、動作状態になり、NPNトランジスタQ2とNPNトランジスタQ3とが交互にオンとオフを繰り返し、NPNトランジスタQ3のオン時に発光ダイオードD3が点灯し、NPNトランジスタQ3のオフ時に発光ダイオードD3が消灯する。
【0036】
上記のような構成(図2に示す構成例)のカットスイッチ部25は、以下のように動作する。
【0037】
所定値の直流電圧VDCの抵抗R3およびR4による分圧が常時NPNトランジスタQ1のベースに供給され、NPNトランジスタQ1は常時オン状態になっており、所定値の直流電圧VDCからNPNトランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間電圧だけ降圧した直流電圧がダイオードD2のアノードに常時供給される。
【0038】
双極双投スイッチSW1が接点a1およびa2側を選択している場合、コイルM1の他端に印加されている所定値の直流電圧VDCが双極双投スイッチSW1の一方の極、双極双投スイッチSW1の接点a2、抵抗R1、およびコイルM2を経由してダイオードD1のアノードに供給され、ダイオードD1がオン状態になる。そして、分岐器22(図1参照)から伝送されてくる高周波信号は、コンデンサC6、オン状態であるダイオードD1、双極双投スイッチSW1の他方の極、双極双投スイッチSW1の接点a1、接点a1と接点a2とを繋ぐ短絡ライン、双極双投スイッチSW1の接点a2、双極双投スイッチSW1の一方の極、およびコンデンサC7を経由して、10MHzHPF23(図1参照)に伝送される。
【0039】
また、双極双投スイッチSW1が接点a1およびa2側を選択している場合、ダイオードD1のカソード電圧とダイオードD2のカソード電圧が同一であり、上記の通りダイオードD1がオン状態であり、ダイオードD2のアノード電圧がダイオードD1のアノード電圧よりもNPNトランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間電圧だけ小さいため、ダイオードD2はオフ状態になる。
【0040】
また、双極双投スイッチSW1が接点a1およびa2側を選択している場合、双極双投スイッチSW1の接点b2に所定値の直流電圧VDCが供給されないので、発光ダイオード点滅回路26に所定値の直流電圧VDCが供給されず、発光ダイオード点滅回路26が動作しない。したがって、発光ダイオードD3は消灯状態になる。
【0041】
これに対して、双極双投スイッチSW1が接点b1およびb2側を選択している場合、ダイオードD1のアノードに所定値の直流電圧VDCが供給されないので、ダイオードD1がオフ状態になる。また、双極双投スイッチSW1の一方の極と他方の極とが電気的に遮断されている。したがって、分岐器22(図1参照)から伝送されてくる高周波信号は、10MHzHPF23(図1参照)に伝送されない。
【0042】
また、双極双投スイッチSW1が接点b1およびb2側を選択している場合、ダイオードD1のカソード電圧とダイオードD2のカソード電圧が同一であるが、上記の通りダイオードD1がオフ状態であり、所定値の直流電圧VDCからNPNトランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間電圧だけ降圧した直流電圧がダイオードD2のアノードに供給されているため、ダイオードD2はオン状態になる。これにより、分岐器22(図1参照)に繋がっている伝送ラインは、コンデンサC1と、NPNトランジスタQ1と、抵抗R2〜R4とによって75Ω終端される。
【0043】
また、双極双投スイッチSW1が接点b1およびb2側を選択している場合、双極双投スイッチSW1の一方の極と接点b2とが接続される。これにより、10MHzHPF23(図1参照)に繋がっている伝送ラインは、コンデンサC2と抵抗R5とによって75Ω終端される。また、これにより、コイルM1の他端に印加されている所定値の直流電圧VDCが双極双投スイッチSW1の一方の極、双極双投スイッチSW1の接点b2、およびコイルM3を経由して発光ダイオード点滅回路26に供給され、発光ダイオード点滅回路26が動作する。したがって、発光ダイオードD3は点滅状態になる。
【0044】
上記の動作を考慮して、上り信号調整時には双極双投スイッチSW1が接点b1およびb2側を選択し、上り信号調整後の通常使用時には双極双投スイッチSW1が接点a1およびa2側を選択するようにする。
【0045】
これにより、上り信号調整時には、増幅されたテスト信号の伝送がカットスイッチ部25でカットされるので、増幅されたテスト信号が下り信号入力兼上り信号出力端子T1から出力されなくなり、下り信号入力兼上り信号出力端子T1からセンター局に流合雑音が流出しない。したがって、センター局に影響が及ばない。さらに、上り信号調整時には、発光ダイオードD3が点滅することで、分岐器22(図1参照)から10MHzHPF23(図1参照)への信号の伝送がカットスイッチ部25でカットされていることをユーザーに報知するので、上り信号調整から通常使用に切り換える際に、双極双投スイッチSW1の選択先の切り換え忘れを低減することができる。なお、上り信号調整用のテスト信号は、従来と同様に、下り信号出力モニター兼上り信号調整用入力端子T3に入力され、チルト回路18、ゲインコントロール回路19、及びアッテネータ21によって調整され、分岐器22によって分岐されて上り信号出力モニター端子T4から出力される。そして、上り信号が適正レベルになるように、上り信号出力モニター端子T4から出力される信号(上り信号出力モニター信号)の計測結果に基づいて、チルト回路18、ゲインコントロール回路19、及びアッテネータ21の各設定が決定される。
【0046】
また、これにより、上り信号調整時後の通常使用時には、分岐器22(図1参照)から伝送されてくる高周波信号が、カットスイッチ部25を経由して、10MHzHPF23(図1参照)に伝送されるので、図1に示す本発明の一実施形態に係る双方向ブースターは図4に示す従来の双方向ブースターと等価になる。
【0047】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実行することができる。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、分岐器22(図1参照)から10MHzHPF23(図1参照)への信号の伝送がカットスイッチ部25でカットされていることを、発光ダイオードD3の点滅によってユーザーに報知しているが、発光ダイオードの点灯、特定音の出力その他の報知手法を採用しても良い。ただし、発光ダイオードの点灯はパイロット表示として用いられることが多いため、発光ダイオードを利用した報知を採用する場合には本実施形態のように発光ダイオードの点滅での報知にして、パイロット表示と容易に区別ができるようにしておくことが好ましい。
【0049】
また、例えば、図3に示すように下り信号を取り扱わないブースターであってもよい。なお、図3において図1と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。図3に示す本発明の他の実施形態に係るブースターは、図1に示す本発明の一実施形態に係る双方向ブースターから770MHzLPF1と、70MHzHPF2と、分岐器3と、アッテネータ・イコライザー部4と、分岐器5と、下り信号アンプ6と、ゲインコントロール回路7と、下り信号アンプ8と、チルト回路9と、下り信号アンプ10と、70MHzHPF11と、770MHzLPF12とを除いた構成である。また、図3に示す本発明の他の実施形態に係るブースターは下り信号を取り扱わないため、端子T1は下り信号入力兼上り信号出力端子ではなく上り信号出力端子となり、端子T2は下り信号出力兼上り信号入力端子ではなく上り信号入力端子となり、端子T3は下り信号出力モニター兼上り信号調整用入力端子ではなく上り信号調整用入力端子となる。
【0050】
また、上述した実施形態では、上り信号を通過させるフィルタとして、10MHzHPFおよび60MHzLPFを用いたが、それらの代わりに10〜60MHzBPF(Band Pass Filter)を用いてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、下り信号を70〜770MHzの周波数帯域の信号(CATV信号)としたが、470〜770MHzの周波数帯域の信号(UHF)帯の地上デジタル放送信号)や950〜2610MHzの周波数帯域の信号(BS/CS−IF帯の衛星放送信号)を下り信号とする双方向ブースターであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1、12 770MHzLPF
2、11 70MHzHPF
3、5、13、16、22 分岐器
4 アッテネータ・イコライザー部
6、8、10 下り信号アンプ
7、19 ゲインコントロール回路
9、18 チルト回路
14、24 60MHzLPF
15、23 10MHzHPF
17、20 上り信号アンプ
21 アッテネータ
25 カットスイッチ部
26 発光ダイオード点滅回路
C1〜C7 コンデンサ
D1、D2 ダイオード
D3 発光ダイオード
M1〜M3 コイル
Q1〜Q3 NPNトランジスタ
R1〜R14 抵抗
SW1 双極双投スイッチ
T1 下り信号入力兼上り信号出力端子
T2 下り信号出力兼上り信号入力端子
T3 下り信号出力モニター兼上り信号調整用入力端子
T4 上り信号出力モニター端子
T5 下り信号入力モニター端子
T6 内部モニター端子
T7 上り信号入力モニター端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上り信号又は上り信号調整用のテスト信号を増幅する上り信号増幅手段と、
上り信号出力端子と、
前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子との間の伝送ライン上に設けられ、前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子とが電気的に接続されている第1の状態および前記上り信号増幅手段と前記上り信号出力端子とが電気的に接続されていない第2の状態を切り換えるスイッチ手段と、
前記上り信号増幅手段と前記スイッチ手段との間に設けられる分岐手段と、
前記分岐手段の分岐出力が供給される上り信号出力モニター端子とを備えることを特徴とするブースター。
【請求項2】
前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときに、その旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のブースター。
【請求項3】
前記報知手段が、発光手段と、前記発光手段を駆動する駆動手段とを備え、前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときに、その旨を前記発光手段の点滅によって報知することを特徴とする請求項2に記載のブースター。
【請求項4】
前記分岐手段と前記スイッチ手段との間の伝送ライン上に設けられる第1のダイオードと、
カソードが前記第1のダイオードのカソードと共通接続される第2のダイオードと、
前記第2のダイオードのアノードに接続される終端器とを備え、
前記スイッチ手段が前記第1の状態を選択しているときには、前記第1のダイオードのアノード電圧が前記第2のダイオードのアノード電圧より大きくなることで前記第1のダイオードがオン状態、前記第2のダイオードがオフ状態になり、
前記スイッチ手段が前記第2の状態を選択しているときには、前記第1のダイオードのアノード電圧が前記第2のダイオードのアノード電圧より小さくなることで前記第1のダイオードがオフ状態、前記第2のダイオードがオン状態になることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブースター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−90018(P2012−90018A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234077(P2010−234077)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】