説明

ブームスプレーヤ及びブームスプレーヤのブーム揺動支持機構

【課題】ブームスプレーヤによる液剤散布作業において、より長いブームを用いてより速く作業を行う場合であってもブーム先端の振れを小さくして、ブーム先端をより圃場面に近づけた作業を可能にする。
【解決手段】ブーム揺動支持機構(4)は、一端が中央機体(2A)側に軸支され他端がブーム(3)側に軸支された伸縮シリンダ(40)を備え、伸縮シリンダは、ブームを中央機体に固定支持した状態で、中央機体の高加速度での振動に対してブームと中央機体の軸支部(30)を弾性的に屈折させると共に当該屈折に対する弾性な戻りに対して戻り速度に応じた抵抗を付加する制振手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームスプレーヤ及びブームスプレーヤのブーム揺動支持機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブームスプレーヤは、進行方向に対して左右の一方又は両方に延設されたブームに沿って複数個の噴出ノズルを設け、圃場を走行しながら一工程で広範囲に液剤散布を行う作業機であり、走行機体を備える自走式、走行機体に直装される直装式、走行機体によって牽引される牽引式がある。
【0003】
ブームスプレーヤは、前述した自走式,直装式,牽引式の何れにおいても、走行機体と共に圃場面上を移動する基体と該基体に搭載される液剤タンクと該液剤タンクから噴出ノズルに液剤を供給する液剤供給装置と前記基体の一部である中央機体に基端が支持されて進行方向に対して左右の一方又は両方に延設されるブームとを備えており、このブームの長手方向に沿って所定間隔で複数の噴出ノズルが設けられている。
【0004】
そして、前述したブームは、その基端部が中央機体に軸支されており、液剤の散布作業時には水平方向に展開して広い作業幅を確保するが、非作業時には展開したブームが走行の妨げにならないようにブームの先端を上げて収納できるようになっている。そのための機構として、ブームスプレーヤは、パワーシリンダの一端を中央機体側に軸支し他端をブーム側に軸支して、このパワーシリンダの伸縮動作によってブームを中央機体に対して展開位置から収納位置まで揺動させ、パワーシリンダを固定することで所定の展開位置でブームを固定支持するブーム揺動支持機構を備えている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−52208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなブームスプレーヤは、作業効率を向上させるために、ブームの長さをできる限り長くし且つ作業速度をできる限り速くすることが求められている。しかしながら、ブームの長さを長くするとブームに撓みが生じ易くなり、走行機体が圃場面の凹凸を拾って振動すると、この振動がブームに伝わって先端が上下に揺れる撓み振動を起こすことになり、ブームの先端が大きく揺れて圃場面や圃場面上の作物に衝突する問題が生じる。これを回避するためには、ブームの先端を通常より高く上げてブームをV字状に傾斜させて作業することになるが、このようにブーム先端を上げて作業すると、ブームの先端側では液剤が飛散してしまい、散布むらが生じると同時に液剤の無駄にもなる。また、農薬散布の場合には周辺への農薬飛散が問題になる場合もある。
【0006】
そして、作業速度を上げるために走行機体の走行速度を速くすると、同じ圃場の凹凸状態であっても中央機体の振動の周期が短くなり且つ振動の加速度が大きくなるので、ブームに伝わる振動が干渉や共振を起こしやすくなってブームの先端がより大きく振動することになる。
【0007】
また、ブームスプレーヤは、進行方向に対する左右両側にブームを延設する両ブーム式と左右の一方側にブームを延設する片ブーム式がある。片ブーム式の場合は、トラクタ等の走行機体に対して片荷重になるので、圃場を走行機体が走行する時のローリングが大きくなり、一つのブーム長さが両ブーム式と同じ場合、片ブーム式の方がブーム先端の上下動が大きくなる傾向がある。このため片ブーム式では作業速度を遅くして散布せざるを得ず、作業効率が悪くなる。更には、大きな上下動に対応するためにはブーム先端を上げて作業せざるを得ず、前述した散布むらや液剤の無駄更には周辺への農薬飛散の問題がより顕著になる問題がある。
【0008】
トラクタ直装式で両ブーム式の場合には、タンク内の水量によってブームの振動やローリングが変化する。例えばタンクが満水状態の時には、タンクを含む機体の重量がブームの重量に比べて重いので、両ブームの重量によるバランス機能が働き難く、凹凸圃場面を走行した場合に満水のタンクを含む機体が大きく振動又はローリングしてブーム先端の振れも大きくなる。これに対して、タンク内の水量が少なくなると、タンクを含む機体の重量が小さくなるので、両ブームの重量によって生じるバランス機能が働きやすくなり、機体の揺れが少なくなる。すなわち、トラクタ直装式で両ブーム式の場合には、タンク内の水量によってトラクタ操縦者の操作性に大きな違いが生じ、特にタンクが満水状態の操作性が難しくなる問題がある。
【0009】
また、牽引式で片ブーム式の場合には、両ブーム式に比べて一本のブーム長が長く両ブームによるバランス機能がないこともあって、前述した直装式で両ブーム式の場合とは逆の現象が生じる。すなわち、タンクの満水時にはブームに比べてタンクを含む機体の重量が大きいのでローリング現象は発生し難いが、タンクの水量が減ってくると機体に対してブームの重量が大きくなり、またブームの長さも長い(両ブームに比べて片側の張り出しは1.5倍のものがある)ので、発生するモーメント力が大きくなってローリングを抑えられなくなる。
【0010】
牽引式の場合には、ブームスプレーヤの振動やローリングをトラクタの運転者は直接感じることができないので、ブームの揺れ具合を目視しながらの作業にならざるを得ず、トラクタの運転に集中できないので作業速度が遅くなる傾向がある。
【0011】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、ブームスプレーヤによる液剤散布作業において、より長いブームを用いてより速く作業を行う場合であってもブーム先端の振れを小さくして、ブーム先端をより圃場面に近づけた作業を可能にすること、これによって、高作業効率でありながら、散布むらや周辺への液剤飛散が無く且つ液剤の無駄がない高精度の液剤散布作業を可能にすること、ブームを進行方向に対して片側のみに延設させる片ブーム式の場合であっても、高速作業或いはブームを水平に近づけた作業を可能にすること、タンク内の水量が変わってもブームの振れ状況が変わらないようにして、作業中に走行機体の運転者が運転に集中でき、所望の作業速度が得られるようにすること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明によるブームスプレーヤ及びブームスプレーヤのブーム揺動支持機構は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1]基端部が中央機体に軸支され、先端部が進行方向に対して左右の一方又は両方に延設されるブームと、前記ブームを前記中央機体に対して展開位置から収納位置まで揺動させると共に所定の展開位置で固定支持するブーム揺動支持機構とを備えたブームスプレーヤにおいて、前記ブーム揺動支持機構は、一端が中央機体側に軸支され他端が前記ブーム側に軸支された伸縮シリンダを備え、該伸縮シリンダは、前記ブームを前記中央機体に固定支持した状態で、前記中央機体の高加速度での振動に対して前記ブームと前記中央機体の軸支部を弾性的に屈折させると共に当該屈折に対する弾性な戻りに対して抵抗を付加する制振手段を備えることを特徴とするブームスプレーヤ。
【0013】
[請求項3]基端部が中央機体に軸支され、先端部が進行方向に対して左右の一方又は両方に延設されるブームを前記中央機体に対して展開位置から収納位置まで揺動させると共に所定の展開位置で固定支持するブームスプレーヤのブーム揺動支持機構において、一端が中央機体側に軸支され他端が前記ブーム側に軸支された伸縮シリンダを備え、該伸縮シリンダは、前記ブームを前記中央機体に固定支持した状態で、前記中央機体の高加速度での振動に対して前記ブームと前記中央機体の軸支部を弾性的に屈折させると共に当該屈折に対する弾性な戻りに対して抵抗を付加する制振手段を備えることを特徴とするブームスプレーヤのブーム揺動支持機構。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るブームスプレーヤの主要構成を示した説明図である(同図(a)が正面図、同図(b)が側面図)。ここでは、トラクタ直装式のブームスプレーヤを示しているが、本発明の実施形態としては、自走式や牽引式であってもよい。図示のX方向は水平方向、Y方向は進行方向、Z方向は垂直方向を示している。
【0015】
ブームスプレーヤ1は、基体2(中央機体2A)、ブーム3、ブーム揺動支持機構4、液剤タンク5等を備える。液剤タンク5に収容された液剤は、図示省略の液剤供給装置によってブーム3の長手方向に沿って所定間隔で配備された噴出ノズル6に供給され、噴出ノズル6から下向きに液剤が噴射される。図示の例では、ブームスプレーヤ1は、トラクタTRの作業機装着装置TRsに直装されており、トラクタTRの進行方向への移動に伴って一工程でブーム3の展開幅分の圃場作業領域に液剤散布を行うことができる。
【0016】
ブーム3は、基端部3aが中央機体2Aに支持部20を介して軸支され、先端部3bが進行方向に対して左右に延設されている。図示の例では、ブーム3は、水平軸を有する軸支部30を中心に先端部3bが上下に揺動可能に軸支されている。また、支持部20が垂直軸21によって中央機体2Aに軸支されており、ブーム3は水平方向にも揺動自在に装着されている。図1(a)に示すようにブーム3を略水平にして散布作業を行う状態が展開状態であり、軸支部30を中心にブーム3を揺動させて先端部3bを上に向け、更に垂直軸21を中心にブーム3を進行方向に沿うように回転させた状態が収納状態になる。
【0017】
ブーム揺動支持機構4は、ブーム3を中央機体2Aに対して前述した展開位置から先端部3bを上に向けた収納位置まで揺動させると共に、所定の展開位置でブーム3を固定支持する機構である。このブーム揺動支持機構4は、一端が中央機体2A側に軸支され他端がブーム3側に軸支された伸縮シリンダ40を備え、更には、その伸縮シリンダ40を電動又は油圧によって動作制御する作動制御装置(図示省略)を備えている。
【0018】
このようなブームスプレーヤ1は、トラクタTR等の走行機体が圃場面Sを走行する液剤散布作業中に、圃場面Sにある凹凸S1によって走行機体が上下振動やローリング振動することになり、これに伴って中央機体2Aが上下振動やローリング振動することになる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係るブームスプレーヤ及びブームスプレーヤのブーム揺動支持機構の作用を示す説明図である。前述したように中央機体2Aが上下振動又はローリング振動した場合、仮に図2(a)に示すように中央機体2Aに対してブーム3が固定支持されているとすると、ブーム3の基端部3aが中央機体2Aと共に振動するのに対して、ブーム3の先端部3aは慣性によって元の位置に残ろうとするので、ブーム3自体に大きな撓みが生じることになり、この撓みの復元力によってブーム3の先端部3bが大きく撓んで上下振動することになる。
【0020】
これに対して、本発明の実施形態におけるブーム揺動支持機構4は、伸縮シリンダ40が、ブーム3を中央機体2Aに固定支持した状態で、中央機体2Aの高加速度での振動に対してブーム3と中央機体2Aの軸支部30を弾性的に屈折させると共に当該屈折に対する弾性な戻りに対して抵抗を付加する制振手段を備えている。
【0021】
これによると、図2(b)に示すように、中央機体2Aの振動に対して、先ず軸支部30を弾性的に屈折させることになるので、ブーム3の基端部3aが中央機体2Aと共に振動するのに対してブーム3の先端部3aが慣性によって元の位置に残ろうとしても、ブーム3自体に撓みが生じることがない。すなわち、本発明の実施形態によると、中央機体2Aの振動が軸支部30における屈折によって吸収されることになり、この中央機体2Aの振動によってブーム3が大きく撓んで振動するのを抑制することができる。
【0022】
更に、本発明の実施形態では、前述した軸支部30の屈折に対する弾性な戻りに対して抵抗を付加している。これによると、軸支部30の弾性的な屈折の戻りによるオーバーシュートを抑制することができ、中央機体2Aに振動が生じても先端部3bの上下動を速やかに制振させることができる。
【0023】
本発明の実施形態は、中央機体2Aが高加速度で振動する場合に有効である。中央機体2Aが高加速度で振動するほど、軸支部30における弾性的な屈折をより速やかに行うことができ、その後の弾性戻りに対しては戻り速度に応じた抵抗を付加して弾性戻りのオーバーシュートを抑制することができる。したがって、本発明の実施形態によると、走行機体の作業速度を高めた場合にも、ブーム3の先端部3bの上下振動を極力抑えることが可能になる。また、ブーム3に撓み振動が生じ難い機構であるから、ブーム3を長くしても良好な制振効果が得られる。これによって、本発明の実施形態に係るブームスプレーヤ1は、液剤散布作業において、より長いブーム3を用いてより速く作業を行う場合であってもブーム3先端の振れを小さくして、ブーム先端をより圃場面に近づけた作業が可能になる。
【0024】
図3及び図4は、本発明の実施形態における伸縮シリンダ40の構成例を示した説明図である。本発明の実施形態における伸縮シリンダ40としては、この例に限定されるものではなく、前述した制振手段の機能を有するものであれば他の構成例を採用してもよい。
【0025】
図3は、伸縮シリンダ40の伸縮動作を示した説明図である。伸縮シリンダ40は、ピストンロッド41(ピストン41A),シリンダ外筒42,中央機体側軸支部43,ブーム側軸支部44,油圧流路45A,45B,油圧供給部46(供給口46A,46B)を備えている。図3はこの伸縮シリンダ40の伸縮動作を示した説明図である。同図(a)に示した状態は、供給口46Bから油圧が供給されて、油圧流路45Bを通ってシリンダ外筒42内におけるピストン41Aの図示右側に作動油が供給され、ピストン41Aがシリンダ外筒42の端まで移動している状態であり、ピストンロッド41がシリンダ外筒42内に収まって伸縮シリンダ40が最も縮まった状態を示している。同図(b)に示した状態は、供給口46Aから油圧が供給されて、油圧流路45Bを通ってシリンダ外筒42内におけるピストン41Aの図示左側に作動油が供給され、ピストン41Aがシリンダ外筒42の中間部まで移動している状態であり、同図(a)に示した状態に対してシリンダストロークL1だけ伸縮シリンダ40が伸びた状態を示している。
【0026】
ブーム揺動支持機構4は、図3(a)に示した状態にすることで、ブーム3を展開状態し、図3(b)或いは更にシリンダストロークL1を大きくした状態にすることで、ブーム3を収納状態にすることができる。
【0027】
このような伸縮シリンダ40には、ピストンロッド41の内部に前述した制振手段が装備されている。すなわち、ピストンロッド41は、内部が中空状になってロッド内部シリンダ41Sを形成しており、このロッド内部シリンダ41S内に、内部フリーピストン41B、内部ピストン41Cを備えた内部ピストンロッド41Dが装備され、この内部ピストンロッド41Dに前述したブーム側軸支部44が装着されている。内部フリーピストン41Bは、ロッド内部シリンダ41S内を軸方向に自由に移動可能で、ロッド内部シリンダ41S内をその両側で気密に区画し、そのピストン41A側にガス室41Gが形成している。
【0028】
また、内部フリーピストン41Bで区画されたガス室41Gとは逆側のスペースには、作動油室P1,P2が形成されており、この作動油室P1,P2の間に内部ピストン41Cが配置されている。そして、作動油室P1と作動油室P2は内部ピストン41Cに設けられたリリーフ付き固定オリフィス41C0を介して連通しており、両室の圧力状態に応じて作動油が互いに行き来できるようになっており、これによって内部ピストン41Cの移動に移動速度に応じた抵抗を付加するダンパを形成している。
【0029】
図4は、この伸縮シリンダ40の制振動作を説明する説明図である。同図(a)は、中央機体2Aが高加速度で振動して伸縮シリンダ40のブーム側軸支部44に力F1が作用した状態を示している。このように力Fがブーム側軸支部44に作用すると、内部ピストンロッド41Dが押されることになるが、瞬間的には固定オリフィス41C0での作動油の流通は生じないので、内部ピストン41Cは作動油室P1に充填されている作動油を介して内部フリーピストン41Bを押すことになり、この押圧力によってガス室41Gが弾性圧縮されることになる。すなわち、中央機体2Aが高加速度で振動した場合には、ガス室41Gが弾性圧縮されて、図3(a)に示された中立状態のクッションクリアランスeが図4(a)に示すようにゼロになり、そのクッションクリアランスeのストローク分だけピストンロッド41が実質的に短くなって、軸支部30でのブーム3の弾性的な屈折を許容することになる。
【0030】
そしてその直後にガス室41Gの弾性的な反発力で内部フリーピストン41Bが元の位置に戻ろうとすると、その際にはリリーフ付き固定オリフィス41C0での作動油の流通が生じるので、オリフィスを作動油が通過する際の粘性抵抗が働いて、内部フリーピストン41Bの戻りに対して内部ピストンロッド41Dはゆっくりと移動することになり、屈折に対する弾性な戻りに対して戻り速度に応じた抵抗が付加されることになる。
【0031】
図3(b)は、図3(a)とは逆方向に力F2が作用した場合を示している。この場合には前述の説明と同様な作用によってガス室41Gが弾性的に引き伸ばされることになり、図3(a)に示された中立状態のクッションクリアランスeが図4(b)に示すようにe’になり、[e’−e]のストローク分だけピストンロッド41が実質的に長くなって、軸支部30でのブーム3の弾性的な屈折を許容することになる。その後は前述した作用と同様に、オリフィスを作動油が通過する際の粘性抵抗が働いて、内部フリーピストン41Bの戻りに対して内部ピストンロッド41Dはゆっくりと移動することになり、屈折に対する弾性な戻りに対して戻り速度に応じた抵抗が付加されることになる。
【0032】
このような制振手段を備えた伸縮シリンダ40を用いたブームスプレーヤ1のブーム揺動支持機構4によると、走行機体の進行によって中央機体2Aに上下振動やローリング振動が生じたとしても、この振動を前述した作用を有する制振手段が吸収するので、中央機体2Aに軸支されたブーム3の先端が大きく上下に振動することを抑制することができる。
【0033】
そして、前述した作用を有する制振手段は、中央機体2Aの振動加速度が大きいほど有効に作用し、この作用によってブーム3の撓み振動を抑えることができるので、ブームスプレーヤ1の作業速度(走行機体の走行速度)を速くし且つブーム3の長さを長くしても、効果的にブーム3先端の上下動を抑制することができる。これによって、作業精度を低下させることなく、ブームスプレーヤ1の作業効率を高めることが可能になる。すなわち、本発明の実施形態に係るブームスプレーヤ1によると、高作業効率でありながら、散布むらや周辺への液剤飛散が無く且つ液剤の無駄がない高精度の液剤散布作業を行うことができる。
【0034】
図5は、片ブーム式のブームスプレーヤ1を示す説明図である。同図(a)が従来技術を示しており、同図(b)が本発明の実施形態に係るブームスプレーヤ1を示している。従来技術のように、ブーム3Jを基体に固定するブーム揺動支持機構4Jを備えたブームスプレーヤ1Jでは、圃場面Sを走行するトラクタTRがローリング振動を起こすと、ブーム3Jの先端が大きく上下に揺れてブーム3Jの先端が圃場面Sや圃場面上の作物に接触してしまう問題が生じる。本発明の実施形態に係るブームスプレーヤ1は、片ブーム式の場合にも、同図(b)に示すように、トラクタTRのローリング振動に対して前述したブーム揺動支持機構4が機能してブーム3先端の上下動を極力小さくすることができる。これによって、片ブーム式を採用する場合にも、高作業効率でありながら、散布むらや周辺への液剤飛散が無く且つ液剤の無駄がない高精度の液剤散布作業を行うことができる。
【0035】
また、本発明の実施形態によると、トラクタ直装式で両ブーム式の場合や牽引式で片ブーム式の場合であっても、タンク内の水量によってブームの振動やローリングが変化することがない。したがって、タンク内の水量によってトラクタ操縦者の操作性に大きな違いが生じることがなく、特にタンクが満水状態やタンクの水量が極少なくなった場合であっても一定の操作性を維持することができる。そして、ブームの揺れに注意することなく作業を行うことができるので、作業者は走行機体の運転に集中でき、所望の作業速度で散布作業を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るブームスプレーヤの主要構成を示した説明図である(同図(a)が正面図、同図(b)が側面図)。
【図2】本発明の実施形態に係るブームスプレーヤ及びブームスプレーヤのブーム揺動支持機構の作用を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態における伸縮シリンダの構成例を示した説明図(伸縮シリンダの伸縮動作を示した説明図)である。
【図4】本発明の実施形態における伸縮シリンダの構成例を示した説明図(伸縮シリンダの制振動作を説明する説明図)である。
【図5】片ブーム式を採用した本発明の実施形態に係るブームスプレーヤの作用を示した説明図である(同図(a)が従来技術、同図(b)が本発明の実施形態に係るブームスプレーヤ)。
【符号の説明】
【0037】
1:ブームスプレーヤ,2:基体,2A:中央機体,
3:ブーム,3a:基端部,3b:先端部,
4:ブーム揺動支持機構,5:液剤タンク,6:噴出ノズル,
20:支持部,21:垂直軸,30:軸支部,40:伸縮シリンダ,
41:ピストンロッド,41A:ピストン,
41B:内部フリーピストン,41C:内部ピストン,
41C0:固定オリフィス,41D:内部ピストンロッド,
42:シリンダ外筒,
43:中央機体側軸支部,44:ブーム側軸支部,
45A,45B:油圧流路,46:油圧供給部,
41G:ガス室,P1,P2:作動油室,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部(3a)が中央機体(2A)に軸支され、先端部(3b)が進行方向に対して左右の一方又は両方に延設されるブーム(3)と、前記ブームを前記中央機体に対して展開位置から収納位置まで揺動させると共に所定の展開位置で固定支持するブーム揺動支持機構(4)とを備えたブームスプレーヤ(1)において、
前記ブーム揺動支持機構は、一端が中央機体側に軸支され他端が前記ブーム側に軸支された伸縮シリンダ(40)を備え、
該伸縮シリンダは、前記ブームを前記中央機体に固定支持した状態で、前記中央機体の高加速度での振動に対して前記ブームと前記中央機体の軸支部(30)を弾性的に屈折させると共に当該屈折に対する弾性な戻りに対して抵抗を付加する制振手段を備えることを特徴とするブームスプレーヤ。
【請求項2】
前記制振手段は、前記伸縮シリンダのピストンロッド(41)内部に装備され、前記ピストンロッドの伸縮を弾性的に許容するガス室(41G)と前記ピストンロッドの弾性的な伸縮の戻り時に作用するダンパ(P1,P2,41C,41C0)とが前記ピストンロッドの軸方向に直列配置されていることを特徴とする請求項1記載のブームスプレーヤ。
【請求項3】
前記ブームは、進行方法の左右一方に延設される片ブームであることを特徴とする請求項1に記載のブームスプレーヤ。
【請求項4】
基端部(3a)が中央機体(2A)に軸支され、先端部(3b)が進行方向に対して左右の一方又は両方に延設されるブーム(3)を前記中央機体に対して展開位置から収納位置まで揺動させると共に所定の展開位置で固定支持するブームスプレーヤ(1)のブーム揺動支持機構(4)において、
一端が中央機体側に軸支され他端が前記ブーム側に軸支された伸縮シリンダ(40)を備え、
該伸縮シリンダは、前記ブームを前記中央機体に固定支持した状態で、前記中央機体の高加速度での振動に対して前記ブームと前記中央機体の軸支部(30)を弾性的に屈折させると共に当該屈折に対する弾性な戻りに対して抵抗を付加する制振手段を備えることを特徴とするブームスプレーヤのブーム揺動支持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−115137(P2010−115137A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290043(P2008−290043)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(509264132)株式会社やまびこ (65)
【Fターム(参考)】