説明

プッシュプル回路、DC/DCコンバータ、ソーラー充電システム、及び移動体

【課題】サージ電圧を抑制するとともに高効率化を図ることができるプッシュプル回路を提供する。
【解決手段】プッシュプル回路は、プッシュプル用の第1スイッチング素子TL1及び第2スイッチング素子TL2と、第1整流素子DAC1と、第1スイッチング素子と誘導性負荷との接続点から第1整流素子を経由して直流電源と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とを切り替える第3スイッチング素子TAC1と、第2整流素子DAC2と、第2スイッチング素子と前記誘導性負荷との接続点から第2整流素子を経由して前記直流電源と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とを切り替える第4スイッチング素子TAC2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導性負荷に接続されるプッシュプル回路並びにこれを備えたDC/DCコンバータ、ソーラー充電システム、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置において、直流電源から出力される直流電圧をパルス電圧に変換するためにプッシュプル回路が用いられることがある。例えば、特許文献1に開示されている電源装置は、図19に示すように、プッシュプル回路101と、トランス102と、フルブリッジ回路103と、コンデンサ104と主バッテリ105との間に設けられる昇圧チョッパ回路とを備える構成である。
【0003】
特許文献1に開示されている電源装置は、補機バッテリ100から主バッテリ105への充電時に、リレー接点106を遮断し、プッシュプル回路101→トランス102→フルブリッジ回路103(整流回路として使用)→昇圧チョッパ回路の経路で昇圧動作を行う。また、特許文献1に開示されている電源装置は、主バッテリ105から補機バッテリ100への充電時に、リレー接点106を導通させ、フルブリッジ回路103→トランス102→プッシュプル回路101の経路で降圧動作を行う。
【0004】
なお、特許文献1に開示されている電源装置は、ハイブリッド電気自動車用に用途が限定されている。このため、特許文献1に開示されている電源装置では、主バッテリ105から補機バッテリ100への充電が主用途であり、補機バッテリ100から主バッテリ105への充電は主として主バッテリ105の残量不足時に補機バッテリ100からエンジン始動用モータへの逆送電するために行われる。したがって、特許文献1に開示されている電源装置は、大電力の伝送を必要としないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−50402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、近年の自動車搭載電池の大容量化に伴い、電力伝送の高効率化が求められている。特に電気自動車は航続距離が大きな課題となっており、電気を効率よく使うシステムが不可欠となってきている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている電源装置では、主バッテリ105、補機バッテリ100間の電力伝送を効率よく行うことができないという問題があった。
【0008】
昇圧動作時にプッシュプル回路101に大電流を流す場合、トランジスタQ1またはQ2がオン状態からオフ状態にスイッチングする際、トランス102の寄生インダクタンス(図19において不図示)に起因する非常に大きなサージ電圧が発生する。このサージ電圧はスイッチングする直前のトランジスタに流れる電流値におおよそ比例するため、回路に流れる電流が大きいほどサージ電圧が大きくなり、回路を破壊しやすくなる。このサージ電圧によって回路が破壊されることを防止するために、図20に示すようにツェナーダイオードZD1及びZD2を設けると、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるトランジスタTL1のドレインとトランスTR1の低圧側巻線の一端との接続点Aにサージ電圧が発生した場合にツェナー電圧以上のサージ成分(図21の斜線部)はツェナーダイオードZD1を介してGND側に捨てられ、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL2のドレインとトランスTR1の低圧側巻線の一端との接続点Bにサージ電圧が発生した場合にツェナー電圧以上のサージ成分(図21の斜線部)はツェナーダイオードZD2を介してGND側に捨てられることになるので、大きな損失の要因となる。
【0009】
なお、図20のバッテリB1は図19の補機バッテリ100に、図20のNチャネルMOSFETであるトランジスタTL1は図19のNPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ1に、図20のNチャネルMOSFETであるトランジスタTL2は図19のNPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ2に、図20のトランスTR1は図19のトランス102に、図20のNチャネルMOSFETであるトランジスタTH1〜TH4は図19のNチャネルMOSFETであるトランジスタQ3〜Q6に、図20のコンデンサCは図19のコンデンサ104にそれぞれ対応している。また、図20では、トランスTR1の低圧側巻線の寄生インダクタンスを寄生インダクタンスPL1及びPL2として図示している。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑み、サージ電圧を抑制するとともに高効率化を図ることができるプッシュプル回路並びにこれを備えたDC/DCコンバータ、ソーラー充電システム、及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係るプッシュプル回路は、一端が誘導性負荷の一端に接続され、他端が直流電源の一端に接続される第1スイッチング素子と、一端が前記誘導性負荷の他端に接続され、他端が前記直流電源の一端に接続される第2スイッチング素子と、第1整流素子と、前記第1スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の一端との接続点から前記第1整流素子を経由して前記直流電源の他端と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とを切り替える第3スイッチング素子と、第2整流素子と、前記第2スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の他端との接続点から前記第2整流素子を経由して前記直流電源の他端と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とを切り替える第4スイッチング素子とを備える構成(第1の構成)とする。
【0012】
また、上記第1の構成のプッシュプル回路において、前記第1スイッチング素子がONからOFFに切り替わる時点で前記第3スイッチング素子がON状態であり、前記第2スイッチング素子がOFFからONに切り替わる時点で前記第3スイッチング素子がOFF状態であり、前記第2スイッチング素子がONからOFFに切り替わる時点で前記第4スイッチング素子がON状態であり、前記第1スイッチング素子がOFFからONに切り替わる時点で前記第4スイッチング素子がOFF状態であるように、前記第1〜第4スイッチング素子それぞれのON、OFFが切り替わる構成(第2の構成)としてもよい。
【0013】
また、上記第1の構成又は上記第2の構成のプッシュプル回路において、前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子がそれぞれノーマリーオフトランジスタであり、前記第1スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の一端との接続点の電圧を用いて、前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子の一方をONにするための電圧を生成する第1の電源回路と、前記第2スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の他端との接続点の電圧を用いて、前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子の他方をONにするための電圧を生成する第2の電源回路とを備える構成(第3の構成)としてもよい。
【0014】
また、上記第1の構成又は上記第2の構成のプッシュプル回路において、前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子がそれぞれノーマリーオントランジスタである構成(第4の構成)としてもよい。
【0015】
また、上記第1の構成又は上記第2の構成のプッシュプル回路において、前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子がそれぞれPNPバイポーラトランジスタである構成(第5の構成)としてもよい。
【0016】
また、上記第1〜第5のいずれかの構成のプッシュプル回路において、前記第1整流素子及び前記第2整流素子がそれぞれ同期整流用スイッチング素子である構成(第6の構成)としてもよい。
【0017】
また、上記第6の構成のプッシュプル回路において、前記第1スイッチング素子がONからOFFに切り替わった後で前記第1整流素子がOFFからONに切り替わり、前記第3スイッチング素子がONからOFFに切り替わる前に前記第1整流素子がONからOFFに切り替わり、前記第2スイッチング素子がONからOFFに切り替わった後で前記第2整流素子がOFFからONに切り替わり、前記第4スイッチング素子がONからOFFに切り替わる前に前記第2整流素子がONからOFFに切り替わるように、前記第1〜第4スイッチング素子、前記第1整流素子、及び前記第2整流素子それぞれのON、OFFが切り替わる構成(第7の構成)としてもよい。
【0018】
また、本発明に係るDC/DCコンバータは、トランスと、前記トランスに接続される上記第1〜第7のいずれかの構成のプッシュプル回路とを備える構成とする。
【0019】
また、本発明に係るソーラー充電システムは、太陽電池と、前記太陽電池から出力される電力を蓄える第1蓄電装置と、前記第1蓄電装置よりも蓄電容量が大きい第2蓄電装置と、前記第1蓄電装置から出力される直流電圧をDC/DC変換して前記第2蓄電装置に供給する上記構成のDC/DCコンバータとを備える構成とする。なお、上記構成のDC/DCコンバータを双方向にDC/DC変換を行うことができる双方向DC/DCコンバータにすることが望ましい。
【0020】
また、本発明に係る移動体は、上記構成のソーラー充電システムを備える構成とする。
【0021】
また、上記構成の移動体において、前記ソーラー充電システムが備える第2蓄電装置から出力される電力を移動体の駆動用電力として用いる構成とすることが望ましい。更に、前記第2蓄電装置の電圧を前記第1蓄電装置の電圧より高くすることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るプッシュプル回路は、一端が誘導性負荷の一端に接続され、他端が直流電源の一端に接続される第1スイッチング素子と、一端が前記誘導性負荷の他端に接続され、他端が前記直流電源の一端に接続される第2スイッチング素子と、第1整流素子と、前記第1スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の一端との接続点から前記第1整流素子を経由して前記直流電源の他端と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とを切り替える第3スイッチング素子と、第2整流素子と、前記第2スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の他端との接続点から前記第2整流素子を経由して前記直流電源の他端と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とを切り替える第4スイッチング素子とを備える構成である。このような構成によると、前記第3スイッチング素子がONであるときに前記誘導性負荷の一端の寄生インダクタに起因するサージ成分が発生すれば、当該サージ成分は前記第1整流素子を経由して前記直流電源の他端と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に還流され、前記第4スイッチング素子がONであるときに前記誘導性負荷の他端の寄生インダクタに起因するサージ成分が発生すれば、当該サージ成分は前記第2整流素子を経由して前記直流電源の他端と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に還流されるので、損失を大幅に低減することができる。従って、本発明によると、サージ電圧を抑制するとともに高効率化を図ることができるプッシュプル回路並びにこれを備えたDC/DCコンバータ、ソーラー充電システム、及び移動体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図4】図20に示すプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図5】トランジスタ駆動用ドライバの電源構成の第1実施例を示す図である。
【図6】トランジスタ駆動用ドライバの電源構成の第2実施例を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るプッシュプル回路の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】電気自動車用ソーラー充電システムの概略構成例を示す図である。
【図10】電気自動車用ソーラー充電システムに用いられるDC/DCコンバータの一構成例を示す図である。
【図11】第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図12】昇圧動作における第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図13】昇圧動作における第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの電流経路を示す図である。
【図14】降圧動作における第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図15】降圧動作における第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの電流経路を示す図である。
【図16】第2好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図17】第3好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図18】第4好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図19】特許文献1に開示されている電源装置の構成を示す図である。
【図20】従来のプッシュプル回路の構成例を示す図である。
【図21】図20に示す従来のプッシュプル回路においてサージ電圧が発生した場合にGND側に捨てられるサージ成分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0025】
図1は本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。図1に示す本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2と、ダイオードDAC1及びDAC2と、NチャネルMOSFETであるトランジスタTAC1及びTAC2とを備えている。
【0026】
トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースはバッテリB1の負極に接続される。なお、図1では、トランスTR1の低圧側巻線の寄生インダクタンスを寄生インダクタンスPL1及びPL2として図示している。また、各トランジスタのソース−ドレイン間には並列にダイオード(以下、並列ダイオードと呼ぶ)が接続されているが、この並列ダイオードは各トランジスタの寄生ダイオード(内蔵ダイオード)または外的に並列接続されたダイオード等であってもよい。
【0027】
ダイオードDAC1のアノードはトランジスタTL1のドレインに接続され、ダイオードDAC1のカソードはトランジスタTAC1のドレインに接続され、トランジスタTAC1のソースはバッテリB1の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。同様に、ダイオードDAC2のアノードはトランジスタTL2のドレインに接続され、ダイオードDAC2のカソードはトランジスタTAC2のドレインに接続され、トランジスタTAC2のソースはバッテリB1の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。
【0028】
なお、トランスTR1の高圧側巻線にはNチャネルMOSFETであるトランジスタTH1〜TH4によって構成されるフルブリッジ回路が接続され、当該フルブリッジ回路にコンデンサCが接続される。これにより、バッテリB1から出力される直流電圧を、本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路→トランスTR1→上記フルブリッジ回路の経路で昇圧してコンデンサCで平滑すること、及び、コンデンサCの両端電圧を上記フルブリッジ回路→トランスTR→本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路の経路で降圧してバッテリB1に供給することが可能となる。
【0029】
図1に示す本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL1のドレインとトランスTR1の低圧側巻線の一端との接続点AからダイオードDAC1を経由してバッテリB1の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とをトランジスタTAC1が切り替え、当該経路が導通しているときにトランスTR1の寄生インダクタPL1に起因するサージ成分が発生すれば、当該サージ成分はダイオードDAC1を経由してバッテリB1の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に還流される。同様に、図1に示す本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL2のドレインとトランスTR1の低圧側巻線の他端との接続点BからダイオードDAC2を経由してバッテリB1の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とをトランジスタTAC2が切り替え、当該経路が導通しているときにトランスTR1の寄生インダクタPL2に起因するサージ成分が発生すれば、当該サージ成分はダイオードDAC2を経由してバッテリB1の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に還流される。
【0030】
したがって、トランジスタTL1がONからOFFに切り替わる時点でトランジスタTAC1がON状態であり、トランジスタTL2がOFFからONに切り替わる時点でトランジスタTAC1がOFF状態であり、トランジスタTL2がONからOFFに切り替わる時点でトランジスタTAC2がON状態であり、トランジスタTL1がOFFからONに切り替わる時点でトランジスタTAC2がOFF状態である必要がある。このため、トランジスタTL1、TL2、TAC1、及びTAC2のON、OFF切り替えは例えば図2に示すようなタイミングで行うとよい。図2に示すようなタイミングでトランジスタTL1、TL2、TAC1、及びTAC2のON、OFF切り替えを行う場合、トランジスタTAC1の制御端子に供給する制御信号はトランジスタTL1の制御端子に供給する制御信号を遅延させるだけで生成することができ、トランジスタTAC2の制御端子に供給する制御信号はトランジスタTL2の制御端子に供給する制御信号を遅延させるだけで生成することができるので、トランジスタTAC1の制御端子に供給する制御信号及びトランジスタTAC2の制御端子に供給する制御信号の生成が容易である。
【0031】
ここで、図1に示す本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を図3に示す。また、比較のため、図20に示すプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を図4に示す。図3及び図4それぞれにおいて、太線は接続点Aの電圧を示しており、細線は接続点Bの電圧を示している。また、図3及び図4それぞれにおいて、バッテリB1の電圧は12Vとした。
【0032】
図1に示す本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路によると、トランスTR1の寄生インダクタPL1に起因する接続点Aの電圧上昇及びトランスTR1の寄生インダクタPL2に起因する接続点Bの電圧上昇を大幅に低減することができる。このため、接続点A、接続点Bの電圧がトランジスタTL1、TL2の耐圧を越えて上昇し、トランジスタTL1、TL2を破壊するのを防ぐことが出来る。また、図1に示す本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路によると、トランスTR1の寄生インダクタPL1及びPL2に起因するサージ成分を回路の外部に捨てることなく、接続点A→ダイオードDAC1→トランジスタTAC1→トランスTR1のセンタータップ→寄生インダクタPL1→接続点A、または、接続点B→ダイオードDAC2→トランジスタTAC2→トランスTR1のセンタータップ→寄生インダクタPL2→接続点Bの電流経路で還流させているため、寄生インダクタPL1、PL2に溜まったエネルギーを(ツェナーダイオード等で消費することなく)高電圧側に転送することができ、従って、損失を大幅に低減することができる。
【0033】
次に、トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成例について説明する。
【0034】
トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成の第1実施例を図5に示す。図5において図1と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。なお、図5に記載している電圧値は一例である。
【0035】
図5に示す第1実施例では、トランジスタTAC1及びTAC2をそれぞれノーマリーオフトランジスタとしている。例えば、バッテリB1の電圧が12Vの場合、トランジスタTAC1駆動用のゲートドライバDV1は、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC1の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧の電源(例えば24V電源)を必要とし、トランジスタTAC2駆動用のゲートドライバDV2は、トランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC2の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧の電源(例えば24V電源)を必要とする。そこで、図5に示す第1実施例では、トランジスタTL1のドレイン電圧を抵抗R1及び逆流防止用ダイオードD1を経由して更にコンデンサC1により平滑して直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV1に接続し、トランジスタTL2のドレイン電圧を抵抗R2及び逆流防止用ダイオードD2を経由して更にコンデンサC2により平滑して直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV2に接続している。また、図示はしていないが、ゲートドライバDV1にはトランジスタTAC1をOFFするための電圧の電源(例えばトランジスタTAC1のソース端子)も接続し、ゲートドライバDV2にはトランジスタTAC2をOFFするための電圧の電源(例えばトランジスタTAC2のソース端子)も接続する。なお、図5に示す第1実施例とは異なり、トランジスタTL1のドレイン電圧を用いて直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV2に接続し、トランジスタTL2のドレイン電圧を用いて直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV1に接続することも可能である。このようなトランジスタTAC1、TAC2を駆動するための電源電圧が得られるのは、図3に示すように、トランジスタTAC1オフ時のトランジスタTAC1のドレイン電圧、および、トランジスタTAC2オフ時のトランジスタTAC2のドレイン電圧が、バッテリB1の電圧(例えば、12V)の約2倍(例えば、約24V)となるからである。
【0036】
このような電源構成によると、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC1の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧を生成するための特別な回路(例えば、バッテリB1の出力電圧を倍の電圧に昇圧する回路)及びトランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC2の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧を生成するための特別な回路(例えば、バッテリB1の出力電圧を倍の電圧に昇圧する回路)を設ける必要がないため、簡易な回路構成となる。
【0037】
トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成の第2実施例を図6に示す。図6において図1と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。なお、図6に記載している電圧値は一例である。
【0038】
図6に示す第2実施例では、トランジスタTAC1及びTAC2をそれぞれノーマリーオントランジスタとしている。この場合、トランジスタTAC1駆動用のゲートドライバDV3は、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)より大きい電圧の電源を必要とせず、トランジスタTAC2駆動用のゲートドライバDV4は、トランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)より大きい電圧の電源を必要としない。そこで、図6に示す第2実施例では、他の制御回路用電源(例えば5V電源)をゲートドライバDV3及びDV4に接続している。すなわち、他の制御回路用電源(例えば5V電源)を他の制御回路(例えば他のトランジスタを駆動するためのドライバ、センサ等)とゲートドライバDV3及びDV4とで共用するようにする。また、図示はしていないが、ゲートドライバDV3にはトランジスタTAC1をONするための電圧の電源(例えば12V電源)も接続し、ゲートドライバDV4にはトランジスタTAC2をONするための電圧の電源(例えば12V電源)も接続する。
【0039】
このような電源構成によると、ゲートドライバDV3及びDV4専用に電源を設ける必要がないため、電源回路を構成する部品点数を削減することができる。また、図6に示す第2実施例においてノーマリーオントランジスタであるトランジスタTAC1及びTAC2として、GaN系トランジスタやSiC系トランジスタ等のオン抵抗がSi系トランジスタよりも小さい化合物トランジスタを用いることで、さらに損失を低減することができる。なお、トランジスタTAC1及びTAC2に化合物トランジスタを用いた場合、例えばGaN系トランジスタであればソース−ドレイン間に内蔵ダイオードが形成されないため、図6においてはトランジスタTAC1及びTAC2の並列ダイオードを図示していないが、図5と同様にトランジスタTAC1及びTAC2と並列な位置にダイオードが接続されていても良い。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係るプッシュプル回路について説明する。図7は本発明の第2実施形態に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。図7において図1と同一の部分には、図1中のトランジスタTAC1及びTAC2を図7ではトランジスタTAC1A及びTAC2Aに変更した以外は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0041】
図7に示す本発明の第2実施形態に係るプッシュプル回路は、図1に示す本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路のダイオードDAC1及びDAC2に、同期整流用トランジスタTAC1B及びTAC2Bをそれぞれ並列接続した構成である。但し、ダイオードDAC1及びDAC2は、同期整流用トランジスタTAC1B及びTAC2Bの内蔵ダイオードであっても良い。同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減することができるので、より一層高効率化を図ることができる。
【0042】
図7に示す本発明の第2実施形態に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL1がONからOFFに切り替わった後でトランジスタTAC1BがOFFからONに切り替わり、トランジスタTAC1AがONからOFFに切り替わる前にトランジスタTAC1BがONからOFFに切り替わり、トランジスタTL2がONからOFFに切り替わった後でトランジスタTAC2BがOFFからONに切り替わり、トランジスタTAC2AがONからOFFに切り替わる前にトランジスタTAC2BがONからOFFに切り替わる必要がある。このため、トランジスタTL1、TL2、TAC1A、TAC2A、TAC1B、及びTAC2BのON、OFF切り替えは例えば図8に示すようなタイミングで行うとよい。
【0043】
図7に示す本発明の第2実施形態に係るプッシュプル回路におけるトランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成例は、図1に示す本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0044】
本発明に係るプッシュプル回路は、例えば図9に示す電気自動車用ソーラー充電システムに適用することができる。
【0045】
図9に示す電気自動車用ソーラー充電システムは、複数の太陽電池セルが配置されているソーラーパネル1と、ソーラーパネル1の出力電力が最大になるようにソーラーパネル1の出力電圧を制御するMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御部2と、サブバッテリ4を管理して制御する制御回路3と、ソーラーパネル1の出力電力を蓄えるサブバッテリ4と、サブバッテリ4から出力される直流電圧をDC/DC変換してメインバッテリ7に供給するDC/DCコンバータ5と、メインバッテリ7を管理して制御する制御回路6と、サブバッテリ4よりも容量が大きいメインバッテリ7とを備えている。また、図9においては図示していないが、DC/DCコンバータ5内の各スイッチング素子のON、OFFを制御するための制御信号を生成する回路も電気自動車内に設けられている。
【0046】
本発明に係るプッシュプル回路を図9に示す電気自動車用ソーラー充電システムに適用する場合、DC/DCコンバータ5が本発明に係るプッシュプル回路を有するようにすればよい。
【0047】
電気自動車に設けられているインバータ8は、メインバッテリ7から出力される直流電圧をモータ駆動用交流電圧に変換する。電気自動車に設けられているモータ9は、インバータ8から出力されるモータ駆動用交流電圧によって回転駆動する。モータ9の回転により電気自動車の駆動輪が回転する。電気自動車の制動時にモータ9で発生する回生エネルギーは制御回路6によって回収され、メインバッテリ7に蓄えられる。また、サブバッテリ4から出力される直流電圧はヘッドライト等の電源としても利用される。
【0048】
図9においては、本発明に係るプッシュプル回路を備えたソーラー充電システムを電気自動車用ソーラー充電システムとしたが、他の移動体(例えばバイク等)用のソーラー充電システムとすることも当然可能である。
【0049】
次に、DC/DCコンバータ5の構成例について説明する。
【0050】
DC/DCコンバータ5の一構成例を図10に示す。図10に示す構成例では、DC/DCコンバータ5は、第1スイッチング回路101と、トランスTR1と、第2スイッチング回路102と、昇降圧チョッパ回路103とを備えている。なお、第1スイッチング回路101、トランスTR1、及び第2スイッチング回路102によって構成されるDC/DCコンバータと、昇降圧チョッパ回路103によって構成されるDC/DCコンバータとの配置を入れ替えても構わない。また、サブバッテリ4、メインバッテリ7の各電圧の様々な状態に応じて常に高効率を保つために、第1スイッチング回路101、トランスTR1、及び第2スイッチング回路102によって構成されるDC/DCコンバータを固定デューティに基づいて動作させ、昇降圧チョッパ回路103によって構成されるDC/DCコンバータを可変デューティに基づいて動作させて昇降圧比を制御することにより、DC/DCコンバータ5を昇降圧チョッパ回路103のデューティによっての変換倍率を制御する可変倍率DC/DCコンバータとすることが望ましい。ただし、昇降圧チョッパ回路103を取り除いて第1スイッチング回路101、トランスTR1、及び第2スイッチング回路102によって構成されるDC/DCコンバータのみにしても構わない。
【0051】
昇降圧チョッパ回路103は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTC1及びTC2と、インダクタLC1と、コンデンサCC1とによって構成され、サブバッテリ4からメインバッテリ7への充電が行われるときにトランジスタTC1が同期整流素子として動作し、メインバッテリ7からサブバッテリ4への充電が行われるときにトランジスタTC2が同期整流素子として動作する。但し、同期整流素子はOFF状態を保ち、同期整流素子に並列接続された(寄生)ダイオードのみを動作させても良い。
【0052】
第1スイッチング回路101は、メインバッテリ7からサブバッテリ4への充電時に平滑コンデンサとして機能するコンデンサCと、本発明に係るプッシュプル回路とによって構成される。図10では、本発明に係るプッシュプル回路として本発明の第1実施形態に係るプッシュプル回路を図示しているが、他の本発明に係るプッシュプル回路を用いても構わない。
【0053】
以下、第1スイッチング回路101と、トランジスタTR1と、第2スイッチング回路102とによって構成される双方向コンバータの好適構成例について説明する。
【0054】
図11は第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの構成を示す図である。図11に示す第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータは、第1スイッチング回路101を備え、巻線比(低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比)が1:NであるトランスTR1を備え、NチャネルMOSFETであるトランジスタTH1〜TH4によって構成されトランスTR1の高圧側巻線に接続されるフルブリッジ回路と、当該フルブリッジ回路とメインバッテリB1との間に設けられるNチャネルMOSFETであるトランジスタTH5並びにコンデンサCH1及びCH2とを有する第2スイッチング回路102を備えている。
【0055】
トランスTR1の高圧側巻線の一端にはトランジスタTH1のソース及びトランジスタTH2のドレインが接続され、トランスTR1の高圧側巻線の他端にはトランジスタTH3のソース、トランジスタTH4のドレイン、及びトランジスタTH5のドレインが接続されている。トランジスタTH1のドレイン及びトランジスタTH3のドレイン、及びコンデンサCH1の一端がメインバッテリ7の正極に接続され、トランジスタTH2のソース及びトランジスタTH4のソース、及びコンデンサCH2の一端がメインバッテリ7の負極に接続される。そして、コンデンサCH1の他端及びコンデンサCH2の他端がトランジスタTH3のソースに接続される。なお、各トランジスタのソース−ドレイン間のダイオードは並列ダイオードである。また、メインバッテリ7はサブバッテリ4よりも高電圧のバッテリである。また、インダクタPL1、PL2、SL1はトランスTR1の寄生インダクタである。但し、インダクタSL1は、トランスTR1に接続された(トランスTR1の寄生インダクタ以外の)外的インダクタを含んでいてもよい。この場合、インダクタSL1のインダクタンスを調整することによって出力電圧の制御範囲を変化させることができる。同様に、インダクタPL1、PL2に外的インダクタを接続することによって出力電圧の制御範囲を変化させることもできるが、トランジスタTL1、TL2がOFFするときに発生するサージのエネルギーが更に大きくなるため、好ましくない。一方、高電圧側に位置するインダクタSL1を流れる電流は相対的に小さくなるため、サージの影響を受けにくい。即ち、出力電圧の制御範囲を変化させるためにインダクタを追加する場合は、インダクタSL1に対して行うのが好ましい。
【0056】
図11に示す第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータは、昇圧動作時にトランジスタTH5を常時ONにして、サブバッテリ4から出力される直流電圧を第1スイッチング回路101で交流電圧に変換し、トランスTR1によって昇圧し、トランジスタTH1及びTH2とトランジスタTH5とコンデンサCH1及びCH2とによって構成される倍電圧整流回路で整流することで、DC/DC変換を行う。トランスTR1の巻線比(低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比)が1:Nであるため、第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでの(インダクタPL1,PL2,SL1による電圧変化を除く)固定昇圧倍率は2N倍である。尚、トランジスタTL1およびTL2のゲート駆動電圧のデューティを変化させることにより、寄生インダクタに流れる電流iの変化率(di/dt)(>0)を変化させ、出力電圧および出力電流を制御することができる。
【0057】
また、図11に示す第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータは、降圧動作時にトランジスタTH5を常時OFFにして、メインバッテリ7から出力された直流電圧を第2スイッチング回路102で交流電圧に変換し、トランスTR1によって降圧し、トランジスタTL1及びTL2によって整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧をサブバッテリ4に供給する。トランスTR1の低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比(巻線比)が1:Nであるため、第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでの(寄生インダクタの効果を除く)固定降圧倍率は1/N倍である。尚、トランジスタTH1、TH2、TH3、TH4のゲート駆動電圧のデューティを変化させることにより、寄生インダクタに流れる電流iの変化率(di/dt)(>0)を変化させ、出力電圧および出力電流を制御することができる。
【0058】
ここで、好適構成に係る双方向DC/DCコンバータの固定昇圧倍率が固定降圧倍率の逆数よりも大きい理由について説明する。
【0059】
例えば、サブバッテリ4の電圧をVsub、その電圧範囲をVsub_min(最小)〜Vsub_max(最大)、メインバッテリ7の電圧をVmain、電圧範囲をVmain_min(最小)〜Vmain_max(最大)、トランスの低圧側巻線と高圧側巻線等で決まるデューティに依存しない固定昇圧倍率をα、トランスの巻線比等で決まるデューティに依存しない固定降圧倍率を1/β、トランスの全寄生インダクタンス(トランスに接続された外的インダクタンスを含む)に等価なインダクタンス(トランス高電圧側に設置)をL、トランス高電圧側巻線に流れる電流をIとする。
【0060】
この場合、昇圧動作において、
Vmain = αVsub − L(dI/dt)
が成り立つ。
スイッチング損失を低減するため、トランジスタTL1、TL2のスイッチングをゼロ電流スイッチング(若しくは、十分小さい電流値でのスイッチング)とすると、トランジスタTL1、TL2のいずれか一方がオン状態のときの(dI/dt)は正となるため、
Vmain = αVsub − L(dI/dt) < αVsub
が成り立つ。サブバッテリ4およびメインバッテリ7の電圧範囲を考慮すると、
Vmain_max < αVsub_min ・・・(数式1)
となるように固定昇圧倍率(例えば、トランスの巻線比)を選ぶ必要がある。
【0061】
次に、降圧動作において、
Vsub = (1/β){Vmain − L(dI/dt)}
が成り立つ。
スイッチング損失を低減するため、トランジスタTH1、TH2、TH3、TH4のスイッチングのうち、トランス端子間に生じる電圧の向きを反転させるスイッチングをゼロ電流スイッチング(若しくは、十分小さい電流値でのスイッチング)とすると、トランジスタTH1とTH4がオン状態(オフ状態)且つトランジスタTH2とTH3がオフ状態(オン状態)のときの(dI/dt)は正となるため、
Vsub = (1/β){Vmain − L(dI/dt)} < (1/β)Vmain
が成り立つ。サブバッテリ4およびメインバッテリ7の電圧範囲を考慮すると、
Vsub_max < (1/β)Vmain_min・・・(数式2)
となるように固定降圧倍率(例えば、トランスの巻線比)を選ぶ必要がある。
【0062】
双方向DC−DCコンバータにおいては、数式1と数式2は同時に満たされる必要があるから、数式1、数式2より、
Vsub_max < (1/β)Vmain_min < (α/β)Vsub_min
∴ (α/β) > (Vsub_max/Vsub_min)>1・・・(数式3)
が成り立つ。従って、固定昇圧倍率αおよび固定降圧倍率(1/β)をトランスの巻線比だけで決めるとすると、昇圧時のトランスの巻線比を1:α、降圧時のトランスの巻線比を1:β(<α)とするなど、昇圧時と降圧時とで異なる巻数比を採用する必要あり、回路構成が非常に複雑となる。一方、図11の回路は、トランスTR1の巻線比が1:Nなので、α=2N、β=Nの場合に相当し、数式3を満たす。即ち、図11の回路は、昇圧時と降圧時でトランスの巻線比を変える必要がないため、簡単な回路構成によって双方向DC−DCコンバータを構成することができる。
【0063】
次に、昇圧動作時における第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートを図12に示す。尚、トランジスタTH3、TH4は常時オフ、トランジスタTH5は常時オンである。
【0064】
(U−1)トランジスタTL1をONにしてトランスTR1の低圧側巻線にサブバッテリ4の電圧を印加すると、トランスTR1の高圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTH5及びTH1を通る電流が流れる(図13参照)。このとき、トランジスタTH1の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTH1をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減することができる。このとき、トランジスタTL1をONした後、トランジスタTH1をONするのが好ましい。
(U−2)次に、トランジスタTAC1をONにする。
(U−3)次に、トランジスタTL1をOFFにする。このとき、トランスTR1の寄生インダクタPL1およびSL1に発生する起電力によって接続点Aの電位が上昇し、トランスTR1→インダクタPL1→接続点A→ダイオードDAC1→トランジスタTAC1→トランスTR1の経路で還流電流が流れる。これにより、インダクタPL1およびSL1に溜まっていたエネルギーは、過大なサージ電圧を発生することなく、コンデンサCH1もしくはメインバッテリ7に転送されるため、回路破壊を防ぐと共に高い効率を得ることができる。
(U−4)次に、還流電流がゼロまたは十分に小さくなったタイミングにてトランジスタTH1をOFFにし、続いてトランジスタTAC1をOFFにする。
(U−5)次に、トランスTR1の端子間電圧の向きが反転した後、トランジスタTL2をONにしてトランスTR1の低圧側巻線にサブバッテリ4の電圧を印加すると、トランスTR1の高圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTH5及びTH2を通る電流が流れる(図13参照)。このとき、トランジスタTH2の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTH2をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減することができる。このとき、トランジスタTL2をONした後、トランジスタTH2をONするのが好ましい。
(U−6)次に、トランジスタTAC2をONにする。
(U−7)次に、トランジスタTL2をOFFにする。このとき、トランスTR1の寄生インダクタPL2およびSL1に発生する起電力によって接続点Bの電位が上昇し、トランスTR1→インダクタPL2→接続点B→ダイオードDAC2→トランジスタTAC2→トランスTR1の経路で還流電流が流れる。これにより、インダクタPL2およびSL1に溜まっていたエネルギーは、過大なサージ電圧を発生することなく、コンデンサCH2に転送されるため、回路破壊を防ぐと共に高い効率を得ることができる。
(U−8)次に、還流電流がゼロまたは十分に小さくなったタイミングにてトランジスタTH2をOFFにし、続いてトランジスタTAC2をOFFにする。
この後、上記(U−1)〜(U−8)を繰り返す。
【0065】
次に、降圧動作時における第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートを図14に示す。尚、トランジスタTH5は常時オフである。
【0066】
(D−1)トランジスタTH4がONの状態でトランジスタTH1をONにしてトランスTR1の高圧側巻線にメインバッテリ7の電圧を印加すると、トランスTR1の低圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTL1を通る電流が流れる(図15参照)。このとき、トランジスタTL1の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTL1をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。
(D−2)次に、トランジスタTH4をOFFにし、続いてトランジスタTH3をONにすることで、トランジスタTH1→トランスTR1→トランジスタTH3→トランジスタTH1の経路で電流を還流させる。これにより、トランスTR1の寄生インダクタに溜まったエネルギーが低電圧側(サブバッテリ4)に転送される。尚、トランジスタTH4をOFFにしてからトランジスタTH3をONにするまでの間はトランジスタTH3の並列ダイオードに電流が流れる。
(D−3)次に、還流電流がゼロまたは十分に小さくなったタイミングにてトランジスタTL1とトランジスタTH1をOFFにする(ZCS:ゼロ電流スイッチング)。トランジスタTL1をトランジスタTH1より先にOFFすることが好ましい。
(D−4)その後、トランスTR1の端子間電圧の向きが反転した後、トランジスタTH2をONにして(ZVS:ゼロ電圧スイッチング)、トランスTR1の高圧側巻線にメインバッテリ7の電圧を印加することにより、トランスTR1の低圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTL2(または並列ダイオード)を通る電流が流れる。このとき、トランジスタTL2の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTL2をONにして(ZVS)同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。このときトランジスタTH2をONにした後、トランジスタTL2をONにするのが好ましい。
(D−5)次に、トランジスタTH3をOFFにし(ZVS)、続いてトランジスタTH4をONにする(ZVS)ことで、トランジスタTH2→トランスTR1→トランジスタTH4→トランジスタTH2の経路で電流を還流させる。これにより、トランスTR1の寄生インダクタに溜まったエネルギーが低電圧側に転送される。尚、トランジスタTH3をOFFにしてからトランジスタTH4をONにするまでの間はトランジスタTH4の並列ダイオードに電流が流れる。
(D−6)次に、還流電流がゼロまたは十分に小さくなったタイミングにてトランジスタTL2とトランジスタTH2をOFFにする(ZCS)。トランジスタTL2をトランジスタTH2より先にOFFすることが好ましい。
(D−7)その後、トランスTR1の端子間電圧の向きが反転した後、トランジスタTH1をONにして(ZVS)、トランスTR1の高圧側巻線にメインバッテリ7の電圧を印加することにより、トランスTR1の低圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTL1(または並列ダイオード)を通る電流が流れる。このとき、トランジスタTL1の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTL1をONにして(ZVS)同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。このときトランジスタTH1をONにした後、トランジスタTL1をONにするのが好ましい。
その後、上記(D−2)〜(D−7)を繰り返す。
全てのスイッチングはZVSまたはZCSのソフトスイッチングとなっており、サージ電圧等の発生を抑制しつつ、損失を低減することができる。
【0067】
トランジスタTH1及びTH4をONにする期間とトランジスタTH2及びTH3をONにする期間とを交互に繰り返されるが、トランジスタTH1及びTH2が同時にONになると大きな短絡電流が流れてしまい、トランジスタTH3及びTH4が同時にONになると大きな短絡電流が流れてしまうので、トランジスタTH1及びTH2の同時ON並びにトランジスタTH3及びTH4の同時ONを防止するために、トランジスタTH1〜TH4が共にOFFになる期間(デッドタイム)を設けている。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0068】
第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータのように、トランジスタTH5を1つのMOSトランジスタのみで構成した場合、例えば、降圧動作開始時等において、コンデンサCH2が充電されたままの状態にてトランジスタTH4がONしたときに、トランジスタTH5の内蔵ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡し、大きな短絡電流が流れてしまい、コンデンサCH2、トランジスタTH4、及びトランジスタTH5がダメージを受けてしまう。
【0069】
そこで、例えば、図16に示す第2好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータや図17に示す第3好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータの構成を採用することが望ましい。なお、図16及び図17において図11と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0070】
図16に示す第2好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでは、トランジスタTH5をソース同士が接続され共通のゲート制御信号がゲートに供給される2つのNチャネルMOSFETによって構成する。これにより、トランジスタTH4がONしたときであっても、トランジスタTH5の内蔵ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡されなくなる。
【0071】
また、図17に示す第3好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでは、コンデンサCH2に並列に抵抗RH1及びトランジスタTH6によって構成される放電回路が設けられている。降圧動作時の初期において、トランジスタTH4をONにする前に、トランジスタTH6をONにしてコンデンサCH2の両端電圧が略0[V]になるまで抵抗RH1による放電を実施した後にトランジスタTH6をOFFにし、その後トランジスタTH4をONにする。これにより、トランジスタTH4がONになって、トランジスタTH5の内蔵ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡されても大きな短絡電流が流れなくなる。
【0072】
次に、図18に示す第4好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータについて説明する。図18に示す第4好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータはノーマリーオンデバイスを用いることを特徴としている。
【0073】
GaN系トランジスタ、SiC系トランジスタ等の化合物パワーデバイスはゲート容量が小さく、かつ、オン抵抗が低いという特徴を有しているため、Si系パワーデバイスに代わる次世代パワーデバイスとして期待されている。当該化合物パワーデバイスは、低抵抗のP型活性層を形成することが難しいため、現状ではノーマリーオンN型デバイスが一般的である。ノーマリーオンデバイスを用いた場合、ノーマリーオンデバイスを駆動するドライバが故障したときに当該ノーマリーオンデバイスがON状態にとなる可能性が高いため、ノーマリーオンデバイスを駆動するドライバが故障したときでも短絡等が生じないように配慮する必要がある。
【0074】
そこで、図18に示す第4好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでは、トランジスタTH1及びTH3にノーマリーオンデバイスを用いている。これにより、トランジスタTH1における小ゲート容量によるスイッチング損の低減及び低オン抵抗による抵抗損の低減の両立と、トランジスタTH3における小ゲート容量によるスイッチング損の低減及び低オン抵抗による抵抗損の低減の両立とが可能となる。また、故障によりトランジスタTH1及びTH3のいずれかが短絡したとしても、メインバッテリ7の正極−負極間の短絡とならないので、安全性が確保される。図18に示す第4好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでは、トランジスタTH1及びTH3をノーマリーオンデバイスとし、トランジスタTH2及びTH4をノーマリーオフデバイスとする構成であるが、この構成とは逆に、トランジスタTH1及びTH3をノーマリーオフデバイスとし、トランジスタTH2及びTH4をノーマリーオンデバイスとする構成でも構わない。なお、ノーマリーオンデバイスに化合物トランジスタを用いた場合、例えばGaN系トランジスタであればソース−ドレイン間に内蔵ダイオードが形成されず、また例えばSiC系トランジスタであればソース−ドレイン間に形成される内蔵ダイオードの性能が良好でないため、図18に示すようにノーマリーオンデバイス(トランジスタTH1及びTH3)に並列にダイオードを接続することが望ましい。
【0075】
なお、上述した各実施形態及び上記の各変形例の内容は、矛盾がない限り、任意に組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 ソーラーパネル
2 MPPT制御部
3 制御部
4 サブバッテリ
5 DC/DCコンバータ
6 制御回路
7 メインバッテリ
8 インバータ
9 モータ
101 第1スイッチ回路
102 第2スイッチ回路
103 昇降圧チョッパ回路
B1 バッテリ
C1、C2、C コンデンサ
D1、D2、DAC1、DAC2 ダイオード
DV1〜DV4 ゲートドライバ
DV5、DV6 ベースドライバ
R1、R2 抵抗
L1、TL2、TAC1、TAC2 トランジスタ
H1〜TH4 トランジスタ
TR1 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が誘導性負荷の一端に接続され、他端が直流電源の一端に接続される第1スイッチング素子と、
一端が前記誘導性負荷の他端に接続され、他端が前記直流電源の一端に接続される第2スイッチング素子と、
第1整流素子と、
前記第1スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の一端との接続点から前記第1整流素子を経由して前記直流電源の他端と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とを切り替える第3スイッチング素子と、
第2整流素子と、
前記第2スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の他端との接続点から前記第2整流素子を経由して前記直流電源の他端と前記誘導性負荷のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とを切り替える第4スイッチング素子とを備えることを特徴とするプッシュプル回路。
【請求項2】
前記第1スイッチング素子がONからOFFに切り替わる時点で前記第3スイッチング素子がON状態であり、前記第2スイッチング素子がOFFからONに切り替わる時点で前記第3スイッチング素子がOFF状態であり、
前記第2スイッチング素子がONからOFFに切り替わる時点で前記第4スイッチング素子がON状態であり、前記第1スイッチング素子がOFFからONに切り替わる時点で前記第4スイッチング素子がOFF状態であるように、
前記第1〜第4スイッチング素子それぞれのON、OFFが切り替わることを特徴とする請求項1に記載のプッシュプル回路。
【請求項3】
前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子がそれぞれノーマリーオフトランジスタであり、
前記第1スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の一端との接続点の電圧を用いて、前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子の一方をONにするための電圧を生成する第1の電源回路と、
前記第2スイッチング素子の一端と前記誘導性負荷の他端との接続点の電圧を用いて、前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子の他方をONにするための電圧を生成する第2の電源回路とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプッシュプル回路。
【請求項4】
前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子がそれぞれノーマリーオントランジスタであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプッシュプル回路。
【請求項5】
前記第3スイッチング素子及び前記4スイッチング素子がそれぞれPNPバイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプッシュプル回路。
【請求項6】
前記第1整流素子及び前記第2整流素子がそれぞれ同期整流用スイッチング素子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプッシュプル回路。
【請求項7】
前記第1スイッチング素子がONからOFFに切り替わった後で前記第1整流素子がOFFからONに切り替わり、前記第3スイッチング素子がONからOFFに切り替わる前に前記第1整流素子がONからOFFに切り替わり、
前記第2スイッチング素子がONからOFFに切り替わった後で前記第2整流素子がOFFからONに切り替わり、前記第4スイッチング素子がONからOFFに切り替わる前に前記第2整流素子がONからOFFに切り替わるように、
前記第1〜第4スイッチング素子、前記第1整流素子、及び前記第2整流素子それぞれのON、OFFが切り替わることを特徴とする請求項6に記載のプッシュプル回路。
【請求項8】
トランスと、
前記トランスに接続される請求項1〜7のいずれか1項に記載のプッシュプル回路とを備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項9】
太陽電池と、
前記太陽電池から出力される電力を蓄える第1蓄電装置と、
前記第1蓄電装置よりも蓄電容量が大きい第2蓄電装置と、
前記第1蓄電装置から出力される直流電圧をDC/DC変換して前記第2蓄電装置に供給するDC/DCコンバータとを備え、
前記DC/DCコンバータが請求項8に記載のDC/DCコンバータであることを特徴とするソーラー充電システム。
【請求項10】
請求項9に記載のソーラー充電システムを備えることを特徴とする移動体。
【請求項11】
前記ソーラー充電システムが備える第2蓄電装置から出力される電力を移動体の駆動用電力として用いることを特徴とする請求項10に記載の移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−70463(P2013−70463A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205536(P2011−205536)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】