説明

プライマーサーフェイサー代替物としての顔料不含塗膜を用いて色付与および/または効果付与するマルチコート仕上塗膜、その形成および使用

次の順序で重なり合って存在する、(A)少なくとも1つの顔料不含塗膜、(B)少なくとも1つの色付与および/または効果付与する塗膜、および(C)少なくとも1つの透明塗膜を含む、支持体上の色付与および/または効果付与するマルチコート仕上塗膜、該塗膜の形成方法および該塗膜の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上での色付与および/または効果付与するマルチコート仕上塗膜に関する。更に、本発明は、前記仕上塗膜の形成方法ならびに前記仕上塗膜の使用に関する。
【0002】
仕上塗膜に対する要件は、広範囲に及ぶ:即ち、仕上塗膜は、例えば保護機能または装飾機能を満たさなければならない。自動車分野において、例えば仕上塗膜は、化学的安定性および物理的安定性を有するべきである。装飾的な視点は、魅力的な色ならびに平滑で光沢のある表面によってもたらされる。同様に、仕上塗膜は、使うヒトに優しく、即ち殆どメインテナンスを必要としない。
【0003】
最適な目視的表面特性(「外観」)は、塗装結果に課せられた本質的な要件である。この特性は、例えば光沢、充実感、曇りの不在ならびに色調および効果の点での均一性および安定度を含む(Ulrich Zorll(編者):Lehrbuch der Lacktechnologie,第2版 2000、Vincentz Verlag,Hannover,ISBN 3−87870−569−7,第326〜327頁参照)。
【0004】
当業者には、仕上塗膜において良好な外観を形成させるための多種多様な可能性は公知である。例えば、自動車の量産仕上塗膜は、通常、腐蝕保護層上にプライマーサーフェイサーを施こすことによって構成され、この場合このプライマーサーフェイサーは、なかんずく砂利の飛び跳ねからの保護およびUV安定性を提供する。その上、このプライマーサーフェイサーは、色相および外観の知覚を補助する。この系上には、色相および外観の要因となるベースコートが施され、引続きクリヤコートが施こされる。このクリヤコートは、耐性能および外観を維持し、および高めるために役立つ。
【0005】
特許出願US2003/0059617A1には、例えば電着塗装に適用される、3層の膜からなるマルチコート仕上塗膜が記載されている。この場合、この塗膜は、プライマーサーフェイサー(プライマー)、ベースコートおよびクリヤコート膜を含む。この塗膜は、「スリーコートワンベイク(3 coat 1 bake)」法で適用される。この場合、このプライマーサーフェイサーは、顔料および樹脂固体分の全質量に対して顔料少なくとも10%を含有する。顔料の含量が低くなると、塗膜の劣悪な外観をまねく。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102004028368号明細書A1には、マルチコート仕上塗膜を形成させるための方法が開示されている。マルチコート仕上塗膜は、場合によっては、プライマー(例えば、電着塗膜)、色付与および/または効果付与するベースコート、第2の色付与および/または効果付与するベースコートおよびクリヤコート層から構成されている。通常のプライマーサーフェイサーコートは、少なくとも1つの色付与および/または効果付与する顔料、UV線を吸収する少なくとも1つの顔料およびタルクを含有するベースコートによって代替される。
【0007】
表面の外観を向上させるために、例えばクリアコート層は、2回塗布される。それによって、第2の塗布および第2の乾燥が必要とされる。他の選択可能な方法によれば、クリヤコートの層厚は、増加されるが、しかし、滲出またはクレーター形成、例えば爆発痕(Kocher)をまねく。
【0008】
本発明は、公知技術水準の前記の欠点を排除するという課題を基礎とするものであった。本発明は、砂利の飛び跳ねからの良好な保護およびUV安定性を維持し、殊に劣悪な表面特性、例えば粗面を有する支持体の際に改善された外観を有する、色付与および/または効果付与するマルチコート仕上塗膜を提供することであった。その上、マルチコート仕上塗膜は、経済的な視点を考慮に入れることを意図したものであり、それによれば、新しいマルチコート仕上塗膜は、公知技術水準の仕上塗膜と比較して費用の節約を達成することができ、同時に改善された外観を達成することができる。
【0009】
意外なことに、冒頭に記載された種類のマルチコート仕上塗膜は、塗膜表面の外観を改善することができることが見い出された。従って、次の順序で重なり合って存在する、
(A)少なくとも1つの顔料不含塗膜、
(B)少なくとも1つの色付与および/または効果付与する塗膜、および
(C)少なくとも1つの透明塗膜を含む、
この場合、塗膜(A)は、プライマーサーフェイサー塗膜の代替となる、支持体上の色付与および/または効果付与するマルチコート仕上塗膜が見い出された。
【0010】
この場合、特に意外なことは、公知技術水準の意見とは異なり、外観の改善が顔料を含有しないプライマーサーフェイサー代替物の層によって達成されうることであった。この場合、マルチコート仕上塗膜の本質的な特性、例えば砂利の飛び跳ねからの保護は、そのままである。同様に意外なことに、外観は、比較的粗い表面を有する支持体の場合でも改善することができた。
【0011】
粗さは、塗膜または支持体の表面形状の総括的な特性決定を提供する。この粗さは、比較基準につき、または粗さの寸法に関連して定量的に測定することができる(Ulrich Zorll(編者):Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,1998,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,ISBN 3−13−776001−1;見出し語 粗さ 参照)。
【0012】
従って、顔料不含の塗膜(A)は、顔料を全く含有しない。顔料は、粉末状または小板状の着色剤であり、この着色剤は、染料とは異なり周囲媒体中で不溶性である(Ulrich Zorll(編者):Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,1998,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,ISBN 3−13−776001−1;見出し語 顔料、着色剤、染料 参照)。本発明の範囲内の顔料には、色付与および/または効果付与する顔料ならびに機能性顔料、例えば耐蝕性顔料、砂利の飛び跳ねからの保護作用を有する顔料およびUV吸収性顔料が含まれる。
【0013】
透明塗膜(A)は、透明で、殊に目視的に澄明で、熱的に硬化可能および/または化学線で硬化可能な塗料材料(A’)、殊にクリヤコート材料から得られる。
【0014】
化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線およびガンマ線、殊にUV線、および粒子線、例えば電子線、ベータ線、中性子線、陽子線およびアルファ線、殊に電子線であると解釈される。
【0015】
塗料材料(A’)のクリヤコート材料としては、全ての常用で公知の一成分系(1K)クリヤコート材料、二成分系(2K)クリヤコート材料または多成分系(3K,4K)クリヤコート材料、粉末クリヤコート材料、粉末スラリークリヤコート材料またはUV硬化性クリヤコート材料がこれに該当する。
【0016】
熱的に硬化可能な一成分系(1K)クリヤコート材料、二成分系(2K)クリヤコート材料または多成分系(3K,4K)クリヤコート材料は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第4204518号明細書A1、欧州特許出願公開第0594068号明細書A1、欧州特許出願公開第0594071号明細書A1、欧州特許出願公開第0594142号明細書A1、欧州特許出願公開第0604992号明細書A1または欧州特許出願公開第0596460号明細書A1、国際特許出願WO 94/10211、WO 94/10212、WO 94/10213、WO 94/22969またはWO 92/22615、または米国特許第5474811号明細書A、米国特許第5356669号明細書Aまたは米国特許第5605965号明細書Aの記載から公知である。
【0017】
一成分系(1K)クリヤコート材料は、公知であるように、ヒドロキシル基含有結合剤および架橋剤、例えばブロック化ポリイソシアネート、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンおよび/またはアミノプラスト樹脂を含有する。更に変法において、一成分系(1K)クリヤコート材料は、側位のカルバメート基および/またはアロファネート基を有するポリマーを結合剤として、およびカルバメート変性および/またはアロファネート変性されたアミノプラスト樹脂を架橋剤として含有する(米国特許第5474811号明細書A、米国特許第5356669号明細書Aまたは米国特許第5605965号明細書A1、国際特許出願WO 94/10211、WO 94/10212またはWO 94/10213、または欧州特許出願公開第0594068号明細書A1、欧州特許出願公開第0594071号明細書A1または欧州特許出願公開第0594142号明細書A1参照)。
【0018】
二成分系(2K)クリヤコート材料または多成分系(3K,4K)クリヤコート材料は、本質的な成分として公知のように、ヒドロキシル基含有結合剤および架橋剤としてのポリイソシアネートを含有し、これらは、使用されるまで別々に貯蔵されている。
【0019】
熱的に硬化可能な粉末クリヤコート材料は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第4222194号明細書A1、BASF Lacke+Farben AG社の製品情報、「粉末塗料Puverlacke」、1990またはBASF Coatings AG社の社内誌「粉末塗料、工業的用途のための粉末塗料Pulverlacke,Pulverlacke fuer industrielle Anwendungen」,2000年1月、の記載から公知である。
【0020】
粉末クリヤコート材料は、本質的な成分として公知のように、エポキシ基含有結合剤および架橋剤としてのポリカルボン酸を含有する。
【0021】
適当な粉末状スラリークリヤコート材料の例は、米国特許第4268542号明細書A1およびドイツ連邦共和国特許出願公開第19540977号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19518392号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19617086号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19613547号明細書A1、欧州特許出願公開第0652264号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19618657号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19652813号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19617086号明細書またはドイツ連邦共和国特許出願公開第19814471号明細書A1の記載から公知である。粉末状スラリークリヤコート材料は、公知のように水性媒体中の分散液中に粉末クリヤコート材料を含有する。
【0022】
化学線で硬化可能なクリヤコート材料、粉末クリヤコート材料および粉末スラリークリヤコート材料は、例えば欧州特許出願公開第0928800号明細書A1、欧州特許出願公開第0636669号明細書A1、欧州特許出願公開第0410242号明細書A1、欧州特許出願公開第0783534号明細書A1、欧州特許出願公開第0650978号明細書A1、欧州特許出願公開第0650979号明細書A1、欧州特許出願公開第0650985号明細書A1、欧州特許出願公開第0540884号明細書A1、欧州特許出願公開第0568967号明細書A1、欧州特許出願公開第0054505号明細書または欧州特許出願公開第0002866号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19917965号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19835206号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19709467号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4203278号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3316593号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3836370号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2436286号明細書A1またはドイツ連邦共和国特許出願公告第2003579号明細書B1、国際特許出願WO 97/46549またはWO 99/14254、または米国特許第5824373号明細書A、米国特許第4675234号明細書A、米国特許第4634602号明細書A、米国特許第4424252号明細書A、米国特許第4208313号明細書A、米国特許第4163810号明細書A、米国特許第4129488号明細書A、米国特許第4064161号明細書Aまたは米国特許第3974303号明細書Aに開示されている。
【0023】
熱的に硬化可能および化学線で硬化可能なクリヤコート材料、粉末クリヤコート材料および粉末スラリークリヤコート材料は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19818735号明細書A1、WO 98/40170、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19908013号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19908018号明細書A1、欧州特許出願公開第0844286号明細書A1または欧州特許出願公開第0928800号明細書A1に開示されている。
【0024】
特に、熱的に硬化可能なクリヤコート材料または熱的に硬化可能および化学線で硬化可能なクリヤコート材料は、塗料材料(A’)として使用される。塗料材料(A’)は、好ましくは水性塗料材料である。
【0025】
色付与および/または効果付与する塗膜(B)は、色付与および/または効果付与する、熱的に硬化可能および/または化学線で硬化可能な塗料材料(B’)、殊にベースコート材料から得られる。
【0026】
塗料材料(B’)は、好ましくは水性塗料材料である。
【0027】
塗料材料(B’)は、少なくとも1つの色付与および/または効果付与する顔料を含有する。特に、顔料は、有機および無機の蛍光顔料および燐光顔料、色付与する蛍光顔料および燐光顔料、光学的効果を付与する蛍光顔料および燐光顔料、色付与しおよび光学的効果を付与する蛍光顔料および燐光顔料からなる群、殊に有機および無機の顔料、色付与する顔料、光学的効果を付与する顔料、色付与しおよび光学的効果を付与する顔料からなる群から選択される。
【0028】
色付与してもよい適当な効果顔料の例は、金属小板顔料、例えば市販のアルミニウムブロンズ、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3636183号明細書の記載によりクロム酸塩処理されたアルミニウムブロンズ、および市販の特殊鋼ブロンズ、ならびに非金属効果顔料、例えばパール光沢顔料または干渉顔料、ピンク色ないし帯褐赤色の色調を有する、酸化鉄を基礎とする小板状効果顔料、または液晶効果顔料である。更に、詳細は、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998,第176頁,「効果顔料Effektpigmente」および第380頁および第381頁「金属酸化物−雲母−顔料Metalloxid−Glimmer−Pigmente」ないし「金属顔料Metallpigmente」、およびドイツ連邦共和国特許出願公開第3636156号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3718446号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3719804号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3930601号明細書A1、欧州特許出願公開第0068311号明細書A1、欧州特許出願公開第0264843号明細書A1、欧州特許出願公開第0265820号明細書A1、欧州特許出願公開第0283852号明細書A1、欧州特許出願公開第0293746号明細書A1、欧州特許出願公開第0417567号明細書A1、米国特許第4828826号明細書Aまたは米国特許第5244649号明細書Aに言及されている。
【0029】
適当な色付与する無機顔料の例は、白色顔料、例えば亜鉛白、硫化亜鉛またはリトポン;黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄−マンガン黒またはスピネル黒;有彩顔料、例えば酸化クロム、水和酸化クロムグリーン、コバルトグリーンまたはウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはコバルトバイオレットおよびマンガンバイオレット、酸化鉄赤、硫セレン化カドミウム、モリブダートレッドまたはウルトラマインレッド;酸化鉄ブルー、スピネル相およびコランダム相またはクロムオレンジ;または酸化鉄イエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエローまたはビスマスバナデートである。
【0030】
適当な色付与する有機顔料の例は、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリン黒である。
【0031】
更に、詳細は、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,見出し語第180頁および第181頁、「鉄ブルー顔料Eisenblau−Pigmente」ないし「酸化鉄ブラックEisenoxidschwarz」,第451〜453頁,「顔料Pigmente」ないし「顔料容積濃度Pigmentvolumenkonzentration」,第563頁,「チオインジゴ顔料Tioindigo−Pigmente」,第567頁「二酸化チタン顔料Titandioxid−Pigmente」,第400頁および第467頁,「天然に由来する顔料Natuerlich vorkommende Pigmente」,第459頁「多環式顔料Polycyclische Pigmente」,第52頁,「アゾメチン顔料Azomethin−Pigmente」,「アゾ顔料Azopigmente」および第379頁,「金属錯体顔料Metallkomplex−Pigmente」に言及されている。
【0032】
蛍光顔料および燐光顔料(蛍光色顔料)の例は、ビス(アゾメチン)顔料である。
【0033】
更に、塗料材料(B’)は、機能性顔料、例えば磁気シールド顔料、導電性顔料、腐蝕抑制顔料、UV線吸収性顔料または砂利の飛び跳ねからの保護用顔料を含有することができる。
【0034】
磁気シールド顔料の例は、酸化鉄または二酸化クロムを基礎とする顔料である。適当な導電性顔料の例は、二酸化チタン/酸化錫顔料である。適当な腐蝕抑制顔料の例は、珪酸鉛、燐酸亜鉛または硼酸亜鉛である。適当な、砂利の飛び跳ねからの保護用顔料の例は、タルクである。
【0035】
特に、UV線吸収性顔料は、二酸化チタン顔料およびカーボンブラック顔料からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの二酸化チタン顔料および少なくとも1つのカーボンブラック顔料が使用される。
【0036】
(B’)中の機能性顔料の含量は、極めて広範囲に変動することができ、かつ個々の場合の要件に左右される。特に、(B’)中の機能性顔料の含量は、(B’)の固体に対して0.001〜6質量%、特に有利に0.01〜5質量%、殊に0.01〜4質量%である。
【0037】
塗料材料(B’)中の顔料の含量は、極めて広範囲に変動可能であり、第1に効果の強さ、殊に光学的効果の強さによって、および/または調節されているかまたは調節されるべき色相によって左右される。
【0038】
塗料(C)は、透明で、殊に目視的に澄明で、熱的に硬化可能および/または化学線で硬化可能な塗料材料(C)、殊にクリヤコート材料から得られる。
【0039】
塗料材料(C)のクリヤコート材料として、全てのクリヤコート材料がこれに該当し、このクリヤコート材料は、塗料材料(A’)としても該当する。塗料材料(C)は、塗料材料(A’)に対して同一でも異なっていてもよい。
【0040】
塗料材料(C)は、機能性で効果付与する、および/または透明で有色の顔料を含有することができる。好ましくは、塗料材料(C)は、少なくとも1つの機能性顔料を含有する。マルチコート仕上塗料の性質、例えばUV安定性および砂利の飛び跳ねからの保護は、機能性顔料によって改善することができる。
【0041】
本発明によるマルチコート仕上塗膜が施こされる支持体は、多種多様の材料および材料の組合せにより構成されていてよい。特に、支持体は、金属、プラスチック、ガラス、木材、皮革、織物、セラミックまたは天然石、有利に金属、プラスチックまたはガラス、殊に金属およびプラスチックからなる。
【0042】
本発明によるマルチコート仕上塗膜は、殊に粗面を有する支持体の場合に有利である。
【0043】
この支持体は、多種多様の使用目的を有することができる。特に、この支持体は、船舶、鉄道車両、航空機、筋力で操作する車両および自動車両、殊に自動車、オートバイ、トラックおよびバス、およびこれらの部材を含めて、輸送手段のボデー;建築物およびその部材;ドア、窓;家具;小型の工業用部材;機械的構成部材、光学的構成部材および電子的構成部材;コイル、コンテナ;パッケージング、中空ガラス製品および日常の生活必需品である。
【0044】
好ましくは、支持体は、自動車両のボデーおよびその部材である。特に好ましいのは、自動車およびその部材である。ボデーは、特にプライマー(G)を備えている。ボデーが鋼からなる場合には、通常の公知の電着塗膜は、プライマー(G)として使用される。電着塗膜(G)は、通常の公知の方法で殊に陰極で電気泳動的に析出されうる電着塗装により形成される。生じる電着塗膜層(G)は、水性塗料材料(A’)の塗布前に熱的に硬化されてよい。しかし、この電着塗膜層は、単に乾燥されてもよく、その際には、硬化されないかまたは部分的にのみ硬化され、その後にこの電着塗膜層は、残りの層(A)、(B)および(C)と一緒に硬化されてよい。
【0045】
ボデーがアルミニウムからなる場合には、陽極酸化によって形成された酸化アルミニウム層は、プライマー(G)として使用され、このプライマー(G)それ自体は、もはやさらに硬化させる必要はない。ボデーの一部分、即ちいわゆる取付け部材がプラスチックからなる場合には、この取付け部材は、特に通常の公知の水性プライマー(G)を備えているか、またはこの取付け部材の表面の付着特性は、化学的方法および/または物理的方法により改善される。この場合も、プライマー(G)は、一般に硬化させる必要はない。
【0046】
更に、本発明は、本発明によるマルチコート仕上塗膜を支持体上に形成させる方法に関する。塗膜(A)、(B)および(C)は、少なくとも1つの塗料材料(A’)、少なくとも1つの塗料材料(B’)および少なくとも1つの他の塗料材料(C’)を、
(i)プライマー塗布されていない支持体、
(ii)少なくとも1つの硬化されていないかまたは部分的にのみ硬化されたプライマー(G)で被覆された支持体または
(iii)少なくとも1つの完全に硬化されたプライマー(G)で被覆された支持体上に連続的に塗布し、
(1)塗料材料(A’)、(B’)および(C’)の生じる湿式層、または
(2)(A’)、(B’)および(C’)、および硬化されていないかまたは部分的にのみ硬化されたプライマー(G)を一緒に硬化させることによって得られる。
【0047】
塗料材料(A’)、(B’)および(C’)は、液状塗料材料を塗布するための通常の公知の全ての方法により塗布されてよい。しかし、本発明による方法にとって、前記塗料材料が空気噴霧塗布または静電噴霧塗布(ESTA)により、特に高速回転ベルを用いて塗布されることは、有利である。
【0048】
本発明による方法の場合、塗布された層(A)、(B)および(C)は、共通に熱的に硬化される。塗料材料(A’)がなお化学線で硬化可能である場合には、なお後硬化は、化学線での照射によって行なわれる。使用される任意のプライマー(G)がなお硬化されていない場合には、このプライマー(G)は、前記処理工程で十分に硬化される。
【0049】
硬化は、一定の静止時間後に行なうことができる。この時間は、30秒〜2時間の期間、有利には1分〜1時間の期間、特に1〜45分の期間を有してよい。この静止時間は、例えば塗膜層の均展および脱気のために、または揮発成分の蒸発のために用いられる。この静止時間は、この場合に、塗膜層の損傷または変化が生じない限り、例えば早期の完全な架橋が生じない限り、90℃までの高められた温度の適用により、および/または水10g未満/kg空気、殊に5g未満/kg空気に減少された空気湿度により、促進および/または短縮することができる。
【0050】
この熱硬化は、方法的な特殊性はなく、常用のおよび公知の方法、例えば循環空気炉中での加熱またはIR灯を用いた照射により行なわれる。この場合に、熱的硬化は段階的に行なうこともできる。他の有利な硬化方法は、近赤外線(NIR線)を用いた硬化である。この構成成分の水を急速に湿潤層から除去する方法が特に有利に使用される。この種の適当な方法は、例えばRoger Talbert著Industrial Paint & Powder, 04/01、第30〜33頁、「NIRによる数秒での硬化(Curing in Seconds with NIR)」またはGalvanotechnik、第90(11)巻、第3098〜3100頁、「塗装技術、液体塗料と粉末塗料における秒刻みでのNIR乾燥(Lackiertechnik, NIR−Trocknung im Sekundentakt von Flussig− und Pulverlacken)」に記載されている。
【0051】
有利には熱硬化は、50〜170℃、特に有利に60〜165℃、殊に80〜150℃の温度で、1分〜2時間、特に有利に2分〜1時間、殊に3〜30分の時間の間行われる。熱硬化は、化学線、殊にUV線による硬化によって補充されてよい。この場合には、通常の公知の方法および装置を使用することができ、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19920799号明細書A1、第11頁、第5〜21行に記載されている。
【0052】
更に、本発明は、支持体を塗装するためのマルチコート仕上塗膜の使用に関する。特に、本発明によるマルチコート仕上塗膜は、自動車両のボデーおよび自動車両の部材の量産塗装において、有利に自動車、殊にトップクラスの自動車のために使用される。
【0053】
次に、本発明を実施例に付きさらに詳説する。
【実施例】
【0054】
実施例
1)水性透明シーラーの製造
層構造を有する合成ナトリウムアルミニウム珪酸塩のペースト18.0部、水中で3%で(濃稠化剤、Laporte社)、を装入し、攪拌しながら順次にポリウレタン分散液25.0部(EP−P−787159、第15頁、第20行〜第16頁第2行に記載のポリウレタン分散液B)およびポリエステル樹脂溶液3.0部(EP−P−787159、第15頁第1〜17行に記載のポリエステル樹脂溶液A)、ブチルグリコール3.3部、市販のメラミン樹脂4.8部(Cytec Industries社のCymel 327)、中和溶液0.3部(ジメチルエタノールアミン、水中で10質量%)、ポリウレタン変性されたポリアクリレート(EP−P−787159、第16頁、第30行〜第17頁第38行に記載のポリアクリレートD)、イソプロパノール2.7部、エチルヘキサノール2.4部、脱イオン水6.0部、Nopco DSX 1550(ポリウレタン濃稠化剤、Henkel社)とブチルグリコールとからの混合物1.2部(比1:1)、脱イオン水6.3部と混合する。
【0055】
2)試験構成および試験結果
トップコートの有効寿命を試験するために、水性透明シーラー(製造過程参照)を15μmの層厚で試験パネル上に塗布し、80℃で10分間予め乾燥した。試験パネルは、通常の公知の方法で陰極で析出されかつ焼き付けられた2回の電着塗装により被覆された鋼支持体(車体まわりの作業用薄板)からなる。
【0056】
この試験パネルを陰極での電着塗装(KTL)での被覆後にパーソメーター(Perthometer)を用いて測定し、粗さ(RA値)を測定した。
【0057】
その後に、このパネルを市販のシルバーメタリック水性ベースコート材料(BASF Coatings社のColorbright)で被覆し、80℃で10分間予め乾燥し、冷却し、および市販の二成分系(2K)ポリウレタンクリヤコート材料(EVERGLOSS(登録商標)、BASF Coatings社、層厚40μm)で被覆した。その後に、得られた水性ベースコート層およびクリヤコート層を130℃で30分間焼き付けた。
【0058】
標準構成(比較)として、同様の構成を使用するが、透明層を用いる代わりに、市販の水性プライマーサーフェイサーで塗装した(STARBLOC(登録商標)、乾燥150℃で20分間、層厚25〜30μm)。
【0059】
こうして製造された試験パネルから、Byk−Gardner社の測定機器ウェイブ−スキャン(wave−scan)DOIを用いてトップコートの有効寿命の特性決定のために長波長値および短波長値を測定した。前記値が小さくなればなるほど、トップコートの有効寿命は、ますます良好になる。
【0060】
【表1】

【0061】
CG320とCG500との粗さが異なるにも拘わらず、本発明による透明層は、異なる粗さの場合に長波長値と短波長値との差異を示さなかった。これとは異なり、比較試験における標準構成は、劣悪な粗さ(CG320)のために劣悪な長波長値および短波長値を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の順序で重なり合って存在する、
(A)少なくとも1つの顔料不含塗膜、
(B)少なくとも1つの色付与および/または効果付与する塗膜、および
(C)少なくとも1つの透明塗膜を含む、支持体上の色付与および/または効果付与するマルチコート仕上塗膜。
【請求項2】
塗膜(A)は、熱的に硬化可能および/または化学線で硬化可能な透明塗料材料(A’)からもたらされる、請求項1記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項3】
塗料材料(A’)は、クリヤコート材料である、請求項2記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項4】
塗料材料(A’)は、水性塗料材料である、請求項2または3に記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項5】
塗膜(B)は、熱的に硬化可能および/または化学線で硬化可能な透明塗料材料(B’)からもたらされる、請求項1から4までのいずれか1項に記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項6】
塗料材料(B’)は、ベースコート材料である、請求項5記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項7】
塗料材料(B’)は、水性塗料材料である、請求項5または6に記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項8】
塗料材料(B’)は、色付与および/または効果付与する顔料を含有する、請求項5から7までのいずれか1項に記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項9】
塗料材料(B’)は、機能性顔料を含有する、請求項5から8までのいずれか1項に記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項10】
塗膜(C)は、熱的に硬化可能および/または化学線で硬化可能な透明塗料材料(C’)からもたらされる、請求項1から9までのいずれか1項に記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項11】
支持体は、金属、プラスチック、ガラス、木材、皮革、織物、セラミックまたは天然石からなる、請求項1から10までのいずれか1項に記載のマルチコート仕上塗膜。
【請求項12】
支持体上に請求項1から11までのいずれか1項に記載の色付与および/または効果付与するマルチコート仕上塗膜を形成させる方法において、少なくとも1つの塗料材料(A’)、少なくとも1つの塗料材料(B’)および少なくとも1つの他の塗料材料(C’)を、
(i)プライマー塗布されていない支持体、
(ii)少なくとも1つの硬化されていないかまたは部分的にのみ硬化されたプライマー(G)で被覆された支持体または
(iii)少なくとも1つの完全に硬化されたプライマー(G)で被覆された支持体上に連続的に塗布し、
(1)塗料材料(A’)、(B’)および(C’)の生じる湿式層、または
(2)(A’)、(B’)および(C’)、および硬化されていないかまたは部分的にのみ硬化されたプライマー(G)を一緒に硬化させることによって得られることを特徴とする、支持体上に請求項1から11までのいずれか1項に記載の色付与および/または効果付与するマルチコート仕上塗膜を形成させる方法。
【請求項13】
塗料材料(A’)、(B’)および(C’)を空気噴霧塗布または静電噴霧塗布(ESTA)により、特に高速回転ベルを用いて塗布する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
支持体を塗装するための請求項1から11までのいずれか1項に記載のマルチコート仕上塗膜の使用。

【公表番号】特表2012−507388(P2012−507388A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533617(P2011−533617)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007832
【国際公開番号】WO2010/060523
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】