説明

プライマー組成物、それを用いて得られる物品およびそれを用いる金属基体の保護方法

【課題】近年の微細化が進んだ電極・配線等であってもそれらの腐食やマイグレーションの発生を長期に亘って確実に防止することを可能とするプライマー組成物、そのようなプライマー組成物を用いた物品および金属基体の保護方法を提供する。
【解決手段】縮合反応硬化型シリコーンゴム接着用プライマー組成物であって、(A)有機ケイ素化合物、(B)ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、および(C)溶剤を含有することを特徴とするプライマー組成物であり、また、金属基体表面に、前記プライマー組成物からなるプライマー層を介して、縮合反応硬化型シリコーンゴムからなる被覆を形成してなることを特徴とする物品である。さらに、金属基体表面に、前記プライマー組成物を塗布し乾燥させてプライマー層を形成した後、その上に、縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物を塗布し硬化させることを特徴とする金属基体の保護方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合反応硬化型シリコーンゴム接着用プライマー組成物、それを用いて得られる物品およびそれを用いる金属基体の保護方法に関する。特に、本発明は、電気・電子部品や実装基板等の電極や配線等の腐食やマイグレーションに対し優れた防止効果を発揮するプライマー組成物、そのようなプライマー組成物を用いて得られる物品およびそれを用いる金属基体の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で硬化してゴム状弾性体を生成するポリオルガノシロキサン組成物(室温硬化性シリコーンゴム組成物)のなかで、空気中の水分と接触することにより硬化反応が生起するいわゆる縮合反応硬化型のものは、使用直前に本体(ベースポリマー)や架橋剤、触媒等を秤量したり混合したりする煩雑さがなく、配合上のミスを生じることがないうえに、接着性に優れているので、電気・電子工業用の弾性接着剤、コーティング材等として、また、建築用シーリング材等として広く用いられている。
【0003】
このような縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物は、一般に、分子末端が水酸基で閉塞されたシラノール基末端ポリジオルガノシロキサンに、分子中に平均2個を越える加水分解性基を有する架橋剤等を配合したものであり、架橋剤の種類に応じて、硬化の際に酢酸等のカルボン酸、有機アミン、アミド、有機ヒドロキシルアミン、オキシム化合物、アルコール、アセトン等を放出する。特に、電気・電子工業用の接着剤、コーティング材等の目的で縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させてゴム状弾性体とする場合には、金属類に対する腐食の小さい脱アセトン型、脱アルコール型のものが用いられることが多い。
【0004】
また、末端のケイ素原子にアルコキシ基の結合したポリオルガノシロキサン、アルコキシシランおよび硬化触媒から成る1包装型の縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物が近時用いられるようになってきている。末端のケイ素原子にアルコキシ基の結合したポリオルガノシロキサンは、末端が水酸基のポリオルガノシロキサンと比較して、保存安定性が良好で硬化性も速いという特徴を有している。このような速硬化性の縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物は、電気・電子工業における接着剤、コーティング材等として有用である(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
ところで、近年、電気・電子部品や実装基板の微細化が進み、それに伴い、電極・配線の腐食、マイグレーションの防止効果により優れたコーティング材あるいはコーティング技術が要望されてきている。すなわち、この種の電極・配線材料には腐食やマイグレーションが生じやすい金属材料が使用されている。このため、従来より電極・配線をコーティング材で覆うことにより、腐食やマイグレーションの原因となる不純物等の電極・配線への付着を防ぎ、これにより腐食やマイグレーションの発生を防止するようにしている。しかしながら、近年の電極・配線の微細化に伴い、コーティング材に含まれる微量な不純物や雰囲気中に含まれる僅かな硫化水素ガス、硫酸ガス等の腐食性物質による電極・配線の腐食やマイグレーションが見られるようになってきた。
【0006】
このような課題に対し、近時、縮合反応硬化型シリコーンゴム中に腐食防止剤を配合することにより、特に雰囲気中に含まれる僅かな腐食性物質による電極・配線等の腐食やマイグレーションを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
しかしながら、このような腐食防止剤を配合したコーティング材は、電極・配線の腐食やマイグレーションの進行をある程度遅らせる効果は得られたものの、長期信頼性の点でなお不十分であった。
【特許文献1】特開昭62−252456号公報
【特許文献2】特開平4−293962号公報
【特許文献3】特開2004−149611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、近年の電気・電子部品や実装基板の微細化に対応するため、縮合反応硬化型シリコーンゴム中に腐食防止剤を配合する技術が提案されているが、長期信頼性の点で未だ十分ではなかった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題に対処してなされたもので、近年の微細化が進んだ電極・配線等であってもそれらの腐食やマイグレーションの発生を長期に亘って確実に防止することを可能とするプライマー組成物、そのようなプライマー組成物を用いて得られる物品、さらに、そのようなプライマー組成物を用いる金属基体の保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記した従来技術の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、有機ケイ素化合物と溶剤を含有するプライマー組成物にベンゾトリアゾールまたはその誘導体を配合し、このプライマー組成物と縮合反応硬化型シリコーンゴムを組み合わせることにより、電極・配線等の腐食やマイグレーションの発生を長期に亘って確実に防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、縮合反応硬化型シリコーンゴム接着用プライマー組成物であって、(A)有機ケイ素化合物、(B)ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、および(C)溶剤を含有することを特徴とするプライマー組成物である。
【0012】
また、本発明は、金属基体表面に、上記プライマー組成物からなるプライマー層を介して、縮合反応硬化型シリコーンゴムからなる被覆を形成してなることを特徴とする物品である。
【0013】
さらに、本発明は、金属基体表面に、上記プライマー組成物を塗布し乾燥させてプライマー層を形成した後、その上に、縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物を塗布し硬化させることを特徴とする金属基体の保護方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば電極・配線等の腐食やマイグレーションの発生を長期に亘って確実に防止することが可能となり、長期信頼性に優れた電気・電子部品や実装基板等を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明のプライマー組成物の(A)成分である有機ケイ素化合物としては、例えばケイ酸エチル、ケイ酸プロピル等のアルキルオルソシリケートおよびその部分加水分解縮合物であるポリアルキルシリケート;メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシランおよびその部分加水分解縮合物等が例示される。また、次の分子式で示されるカーボンファンクショナルシランとしてよく知られている一群のアルコキシシランおよびこれらの部分加水分解縮合物も使用することができる。なお、以下の式において、Meはメチル基、Etはエチル基をそれぞれ示す。
【0016】
【化1】

【0017】
さらに、下記一般式(1)で表わされるアクリル系化合物と、下記一般式(2)で表わされるシラン化合物を遊離基開始剤の存在下で反応させて得られる共重合体を使用することができる。
【0018】
【化2】

【0019】
式(1)中、RおよびRはそれぞれ水素原子および1価の置換または非置換の炭化水素基から選ばれた基である。RおよびRとしては、それぞれ例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基のようなアラルキル基、さらにこれらの炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子等の他の原子または基で置換された、例えばクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなハロゲン化アルキル基;3−シアノプロピル基のようなシアノアルキル基等の置換炭化水素基が例示される。
【0020】
また、式(2)中、Rは水素原子および1価の置換または非置換の炭化水素基から選ばれた基、Rは1価の置換または非置換の炭化水素基、Qは炭素数1〜6の2価の炭化水素基である。Rとしては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基のようなアラルキル基、さらにこれらの炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子等の他の原子または基で置換された、例えばクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなハロゲン化アルキル基;3−シアノプロピル基のようなシアノアルキル基等の置換炭化水素基が例示される。また、Rとしては、水素原子を除き、Rと同様のものが例示される。さらに、Qとしては、プロピレン基が好ましい。
【0021】
一般式(1)で表わされるアクリル系化合物と一般式(2)で表わされるシラン化合物より共重合体を得る際の両成分の配合比は、シラン化合物が、アクリル系化合物に対して、0.1〜1000重量%、好ましくは10〜500重量%である。共重合反応は遊離基開始剤の存在下、有機溶剤中で行われる。遊離基開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、t−ブチルパーベンゾエート等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が例示される。また、有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル、アセトンなどのケトン類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル等が挙げられる。
【0022】
この(A)成分の有機ケイ素化合物の含有量は、プライマー組成物全体の0.01〜50重量%の範囲が好ましく、0.1〜20重量%の範囲がより好ましい。0.01重量%未満では、縮合反応硬化型シリコーンゴムと基体との接着性が不十分となるおそれがある。逆に50重量%を超えると、塗布性が不良となり、均一なプライマー層が得られないおそれがある。
【0023】
本発明のプライマー組成物の(B)成分であるベンゾトリアゾールまたはその誘導体としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、ナトリウムベンゾトリアゾール、ナトリウムトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾールブチルエステル、ナフトトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール等が例示される。これらは1種を単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。(B)成分としては、なかでもベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールが好ましい。
【0024】
この(B)成分のベンゾトリアゾールまたはその誘導体の含有量は、プライマー組成物全体の0.001〜10重量%の範囲が好ましく、0.01〜1重量%の範囲がより好ましい。0.001重量%未満では、例えば電極・配線等の腐食やマイグレーションを十分に長期に亘って防止することが困難になる。逆に10重量%を超えると、組成物の安定性や硬化性が低下し、硬化後の機械的特性等の物性が低下する。
【0025】
本発明のプライマー組成物の(C)成分である溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、へプタン、ヘキサン、トリクロロエチレン、塩化メチレン、酢酸エチル、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。また、一般に溶剤の範疇には入らないが、揮発性の低分子シロキサンも使用することができる。これらの溶剤は単独または2種以上混合して使用される。
【0026】
本発明においては、プライマー組成物の硬化を促進するために、縮合触媒を添加することができる。このような縮合触媒の例としては、有機チタン酸エステル類;鉄オクトアート、鉄ナフテナート、ニッケルオクトアート、マンガンオクトアート、亜鉛オクトアート、亜鉛ナフテナートのようなカルボン酸金属塩;ジブチル錫ジアセタート、ジブチル錫ジオクトアート、ジブチル錫ジラウラート、ジブチル錫ジオレアート、ジオクチル錫ジラウラート、ジフェニル錫ジアセタート、酸化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫のような有機錫化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセタート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセタート)のようなアルミニウムキレート化合物;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、トリブトキシジルコニウムセチルアセトナートのようなジルコニウムキレート化合物;ジ−n−ブチルビス(ブチルアセトアセタート)錫、ジ−n−ブチルビス(2−エチルヘキシルアセトアセタート)錫のような錫キレート化合物;N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、[(CHSiO][(CH)[(CNO]SiO]、[(CHSiO][(CH)[(CNO]SiO]のようなアミノキシ化合物等が挙げられる。縮合触媒としては、なかでも有機チタン酸エステル類が好ましい。
【0027】
有機チタン酸エステル類としては、有機チタン酸エステルのみならず、チタンの部分アルコキシ化部分キレート化化合物、チタンのキレート化合物、チタンのケイ酸エステルによるキレート化合物、これらの部分加水分解縮合物も使用することができる。具体的には、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ジエトキシチタンアセチルアセトネート、チタンジアセチルアセトネート、チタンオクチルグリコートチタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネートおよびこれらの部分加水分解縮合物等が例示される。これらは1種を単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
この縮合触媒の配合量は、プライマー組成物全体の0.01〜10重量%の範囲が好ましく、0.1〜10重量%の範囲がより好ましい。0.01重量%未満では、添加による効果が十分に得られず、逆に、10重量%を超えると、プライマー組成物の安定性が低下するおそれがある。
【0029】
さらに、本発明のプライマー組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、着色剤、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン系エポキシ樹脂等のぬれ性向上剤等の添加剤を、必要に応じて配合することができる。
【0030】
本発明の物品は、本発明のプライマー組成物を用いて、以下の工程により製造される。
まず、銅、アルミニウム、銀、金等からなる金属基体の表面に上記プライマー組成物を塗布し、風乾または加熱により乾燥させプライマー層を形成した後、その上に、縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物を注入または塗布し、硬化させて被覆を形成することにより得られる。プライマー組成物および縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物の塗布方法としては、ディップ法、刷毛塗り法、スプレー法、ディスペンス法等を用いることができる。
【0031】
このようにして得られる本発明の物品は、本発明のプライマー組成物によって金属基体の表面処理がなされているため、金属基体と縮合反応硬化型シリコーンゴムからなる被覆が強固に接着されるとともに、金属基体の腐食等が長期に亘って確実に防止され、物品として長期間の寿命を得ることができる。
【0032】
なお、縮合反応硬化型シリコーンゴムとしては、脱アルコール縮合反応硬化型、脱アセトン縮合反応硬化型、脱水素縮合反応硬化型のものが例示される。好ましくは、脱アルコール縮合反応硬化型のものである。
【0033】
本発明のプライマー組成物は、電気・電子部品への適用が好ましく、特に、電極・配線コーティング材のプライマーとして有用である。具体的には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等からなる基板やアルミナ等のセラミックからなる基板上に、ITO、銅、アルミニウム、銀、金等からなる電極および配線を形成した配線基板上に、IC等の半導体装置、抵抗体、コンデンサ等の電子部品を搭載した実装基板等における電極・配線コーティング材のプライマーとして好適に使用され、電極や配線等の腐食やマイグレーションの発生を長期に亘って確実に防止することができるとともに、実装基板等における電極・配線コーティング材の接着性を高めることができ、その信頼性を向上させることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお、実施例中、「部」とあるのはいずれも「重量部」を表す。
【0035】
実施例1
トルエン70部およびイソプロピルアルコール30部に、テトラエトキシシラン5部、テトラブチルチタネート1部およびベンゾトリアゾール0.1部を添加し均一に混合してプライマー組成物を調製した。
【0036】
得られたプライマー組成物をJIS くし型電極基板2型(電極部:銅、基板:エポキシガラス、導体幅、導体間隔:0.318mm、重ね代15.75mm)の表面に塗布し、23℃、50%RHの雰囲気中に1時間放置して乾燥させてプライマー層を形成した後、その上に脱アルコール縮合反応硬化型シリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製 商品名 TSE399−C)を200μm厚に塗布し、23℃、50%RHの雰囲気中に24時間放置して硬化させて、基板にプライマー層を介してシリコーンゴム層が形成された物品を製造した。この物品を、500mLのガラス容器中に硫黄粉末1gとともに密封し、70℃のオーブン内に静置し、1日後および7日後、銅電極表面の腐食を示す変色の度合を目視にて観察した結果、変色は全く認められなかった。
【0037】
また、この物品を50℃の温水に24時間浸漬した後、シリコーンゴム層を引き剥がし、凝集破壊率(エージング後)を調べた。なお、試験は、温水に浸漬する前にも行った(初期)。結果は、初期およびエージング後、いずれも100%で、良好な接着性を示した。
【0038】
実施例2
メチルメタクリレート50部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10部、酢酸エチル60部、イソプロピルアルコール60部を混合した後、この混合物にベンゾイルパーオキサイド0.6部を添加して80℃の温度で時間反応させ、共重合体溶液を得た。次いで、この共重合体溶液30部に、酢酸ブチル70部およびベンゾトリアゾール0.1部を混合しプライマー組成物を調製した。
【0039】
得られたプライマー組成物を用い、実施例1と同様にして、基板の表面にプライマー層を形成し、さらに、その上にTSE399−Cを塗布し硬化させて、基板にプライマー層を介してシリコーンゴム層が形成された物品を製造した。この物品について、実施例1に記載した方法で耐腐食性を調べた結果、1日後も7日後も銅電極に変色は全く認められなかった。
【0040】
また、この物品について、実施例1に記載した方法で初期およびエージング後の凝集破壊率を調べた結果、いずれも100%と、良好な接着性を示した。
【0041】
実施例3
ベンゾトリアゾールに代えてトリルトリアゾールを配合した以外は実施例2と同様にしてプライマー組成物を調製した。
【0042】
得られたプライマー組成物を用い、実施例1と同様にして、基板の表面にプライマー層を形成し、さらに、その上にTSE399−Cを塗布し硬化させて、基板にプライマー層を介してシリコーンゴム層が形成された物品を製造した。この物品について、実施例1に記載した方法で耐腐食性を調べた結果、1日後も7日後も銅電極に変色は全く認められなかった。
【0043】
また、この物品について、実施例1に記載した方法で初期およびエージング後の凝集破壊率を調べた結果、いずれも100%と、良好な接着性を示した。
【0044】
比較例1
実施例1で用いたものと同様の基板上に、プライマー層を形成することなく、直接、TSE399−Cを実施例1と同様の方法で塗布し硬化させて、基板の直上にシリコーンゴム層が形成された物品を製造した。この物品について、実施例1に記載した方法で耐腐食性を調べた結果、1日後にすでに銅電極の変色が認められた。
【0045】
また、この物品について、実施例1に記載した方法で初期およびエージング後の凝集破壊率を調べた結果、初期には100%と良好な接着性を示したが、エージング後は20%となり、接着性の低下を示した。
【0046】
比較例2
ベンゾトリアゾールを未配合とした以外は実施例2と同様にしてプライマー組成物を調製した。
【0047】
得られたプライマー組成物を用い、実施例1と同様にして、基板の表面にプライマー層を形成し、さらに、その上にTSE399−Cを塗布し硬化させて、基板にプライマー層を介してシリコーンゴム層が形成された物品を製造した。この物品について、実施例1に記載した方法で耐腐食性を調べた結果、1日後にすでに銅電極の変色が認められた。
【0048】
また、この物品について、実施例1に記載した方法で初期およびエージング後の凝集破壊率を調べた結果、いずれも100%と、良好な接着性を示した。
【0049】
比較例3
実施例1で用いたものと同様の基板上に、プライマー層を形成することなく、直接、TSE399−C100部あたりベンゾトリアゾール0.1部を配合したものを、実施例1と同様の方法で塗布し硬化させて、基板の直上にベンゾトリアゾール含有シリコーンゴム層が形成された物品を製造した。この物品について、実施例1に記載した方法で耐腐食性を調べた結果、7日後に銅電極の変色が認められた。
【0050】
また、この物品について、実施例1に記載した方法で初期およびエージング後の凝集破壊率を調べた結果、初期には100%と良好な接着性を示したが、エージング後は20%となり、接着性の低下を示した。
【0051】
上記実施例および比較例の耐腐食性試験および接着性試験の結果を表1にまとめて示す。
【表1】

【0052】
表1から明らかなように、本発明のプライマー組成物を用いた実施例では、耐腐食性および接着性にともに優れており、特に耐腐食性は、従来の腐食防止効果を有するゴム材を用いた比較例3よりさらに良好であり、電気・電子機器における電極や配線の腐食やマイグレーションの防止により有効であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合反応硬化型シリコーンゴム接着用プライマー組成物であって、
(A)有機ケイ素化合物、(B)ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、および(C)溶剤を含有することを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
(A)有機ケイ素化合物が、水酸基またはアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1記載のプライマー組成物。
【請求項3】
組成物全体に対し、(A)有機ケイ素化合物の含有量が0.01〜50重量%であり、(B)ベンゾトリアゾールまたはその誘導体の含有量が0.001〜10重量%であることを特徴とする請求項1または2記載のプライマー組成物。
【請求項4】
電気・電子部品用プライマー組成物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のプライマー組成物。
【請求項5】
電極・配線コーティング用プライマー組成物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のプライマー組成物。
【請求項6】
金属基体表面に、請求項1乃至5のいずれか1項記載のプライマー組成物からなるプライマー層を介して、縮合反応硬化型シリコーンゴムからなる被覆を形成してなることを特徴とする物品。
【請求項7】
金属基体表面に、請求項1乃至5のいずれか1項記載のプライマー組成物を塗布し乾燥させてプライマー層を形成した後、その上に、縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物を塗布し硬化させることを特徴とする金属基体の保護方法。

【公開番号】特開2007−270075(P2007−270075A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100615(P2006−100615)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】