説明

プライマー組成物およびプライマーを組み込んでいる物品

プライマー組成物は(a)ヒドロキシ官能性材料のポリグリシジルエーテル、および(b)アミノポリアルコキシシランの反応生成物を含有する。反応生成物が加水分解された場合、少なくとも6個のシラノール基、例えば、少なくとも8個のシラノール基、例えば、少なくとも10個のシラノール基、例えば、少なくとも12個のシラノール基を含む。支持体の少なくとも一部分上にプライマーが形成され、プライマーの少なくとも一部分上に放射線保護被膜が形成され、放射線保護被膜の少なくとも一部分上に保護膜が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景技術)
(1.発明の分野)
本願は、プライマー組成物およびプライマーを組み込んでいる物品に一般的に関連しており、1つの特定の非制限的実施形態において、ポリマー支持体上への塗布に特に有用であるプライマー組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
(2.技術的考察)
航空機産業において、航空機へ入ってくる潜在的に有害なマイクロ波放射線から航空計器およびパイロットを保護するのに役立てるため、ガラス製航空機用透明体上にマイクロ波吸収物質を塗布することが公知である。1つの方法において、マイクロ波放射線吸収被膜は、ガラス製航空機用透明支持体上に高温で塗布される。この公知の方法は、ガラス支持体を被覆する場合、上手く機能する。しかしながら、航空機の総重量を減らす努力をするためにガラス透明体よりむしろ、ポリマー透明体をますます多くの航空機が備えていっている。高温で被覆するというこの公知の方法がポリマー支持体上で実施される場合、冷却時にポリマー支持体が縮むと同時に、ガラス支持体と比較して、ポリマー支持体に関連する熱膨張および収縮力の増加のために放射線吸収被膜へ圧縮力がはたらく。この圧縮力により、支持体が冷却中に縮むと同時に、支持体の放射線吸収被膜がひび割れる、またははじけるのどちらかが起こり得る。したがって、放射線吸収被膜の塗布前に、ポリマー支持体上にプライマー層を塗布することが公知である。プライマー層は緩衝体として作用し、放射線吸収被膜を、プラスチック支持体の収縮により引き起こされる圧縮力から保護するのに役立つ。
【0003】
しかしながら、現在の方法に問題はまだ存在する。例えば、プライマー層は下のプラスチック支持体に強く結合しなければならないだけでなく、その上に塗布される放射線吸収被膜にもまた強く結合しなければならない。加えて、上記放射線吸収被膜の保護特性を増やすために、放射線吸収被膜の抵抗(オーム毎平方)を減らすのは有利なことである。しかしながら、抵抗を減らすことは、一般的に被膜の厚みを増すことを必要とする。例えば、ある特定の被膜が厚さ3,500Åで20オーム毎平方の抵抗を提供する場合、10オーム毎平方へ抵抗を減らすために、典型的には、7,000Åへと被膜の厚さを2倍にする必要がある。公知のプライマーは現在、高温での加熱蒸着法を用いてプラスチック支持体上へ10オーム毎平方の被膜を接着させる能力はない。なぜなら、被膜および/またはプライマーが支持体から離層するためである。加えて、被膜が厚くなればなるほど、ポリマー支持体が冷えると同時に働く圧縮応力がより大きくなり、したがって、支持体上に被膜を接着することがより難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、公知のプライマーに関して、上で考察された少なくともいくつかの問題を克服する、または減少させるプライマーを提供することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明のプライマー組成物は、(a)ポリエポキシド、および(b)アミノ官能性シランの反応生成物を含む。上記反応生成物は、加水分解された場合、少なくとも6個のシラノール基を含む。1つの非制限的実施形態において、反応生成物は少なくとも8個のシラノール基、例えば、少なくとも10個のシラノール基、例えば、少なくとも12個のシラノール基を含む。
【0006】
本発明の被覆された物品は、支持体、および、支持体の少なくとも一部分上に形成されたプライマーを含む。上記プライマーは、(a)ポリエポキシド、および(b)アミノ官能性シランの反応生成物を含む。上記反応生成物は、加水分解された場合、少なくとも6個のシラノール基を含む。1つの非制限的実施形態において、上記反応生成物は少なくとも8個のシラノール基、例えば、少なくとも10個のシラノール基、例えば、少なくとも12個のシラノール基を含む。
【0007】
本発明の航空機用透明体は、支持体、支持体の少なくとも一部分上に形成されたプライマー、プライマーの少なくとも一部分上に形成された放射線保護被膜、および、放射線保護被膜の少なくとも一部分上に形成された任意の保護膜を含む。上記プライマーは、ポリエポキシドおよびアミノ官能性シランの反応生成物を含む。上記反応生成物は、加水分解された場合、少なくとも6個のシラノール基、例えば、少なくとも8個のシラノール基を含む。1つの非制限的実施形態において、上記反応生成物は少なくとも10個のシラノール基、例えば、少なくとも12個のシラノール基を含む。さらなる非制限的実施形態において、放射線保護被膜は20オーム毎平方以下、例えば、15オーム毎平方以下、例えば、10オーム毎平方以下のシート抵抗を有する。1つの特定の非制限的実施形態において、放射線保護被膜は少なくとも3,500Åの厚さ、例えば、少なくとも4,000Åの厚さ、例えば、少なくとも4,500Åの厚さ、例えば、少なくとも5,000Åの厚さ、例えば、少なくとも5,500Åの厚さ、例えば、少なくとも6,000Åの厚さ、例えば、少なくとも6,500Åの厚さ、例えば、少なくとも7,000Åの厚さを有する。
【0008】
本発明の別の航空機用透明体はプラスチック支持体、例えば、制限されないが、熱可塑性ポリカーボネート樹脂を含み、プライマーが支持体の少なくとも一部分上に形成される。上記プライマーは、(a)2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビス[オキシラン]を有するフェノール,4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス−ポリマー(phenol, 4,4’−(1−methylethylidene)bis−, polymer with 2,2’−[(1−methylethylidene) bis(4,1−phenyleneoxymethylene)] bis[oxirane])、および(b)ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンの反応生成物を含む。上記反応生成物は、加水分解された場合、少なくとも12個のシラノール基を含む。上記透明体は、上記プライマーの少なくとも一部分上に形成された放射線保護被膜をさらに含む。上記保護被膜はインジウム・スズ酸化物を含み、10オーム毎平方以下のシート抵抗を有する。任意の保護膜は、上記放射線保護被膜の少なくとも一部分上に形成され、上記保護膜はポリウレタンまたはシロキサンの内の少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の特徴を含む航空機用透明体の側面図(縮尺は一定でない)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(好ましい実施形態の詳細)
本明細書中で使用されるように、空間または方向を示す用語、例えば、「左」、「右」、「内側の」、「外側の」、「上の」、「下の」などは、描いた図に示されるように本発明に関連する。しかしながら、本発明は様々な代替方針を想定し得、したがって、そのような用語は限定しているものとして見なされないと理解される。さらには、本明細書中で使用されるように、本明細書および特許請求の範囲中で使用される寸法、物理的特性、処理パラメーター、成分量、反応条件などを表現する全ての数字は、全ての実施例において「約」という用語により改変されるものと理解される。したがって、反対に指示されないのであれば、下記の明細書および特許請求の範囲に示される数値は、本発明により得られることが要求されている所望の特性に依存して変わり得る。最低でも、そして、特許請求の範囲に均等論を適用することを制限する試みとしてではなく、それぞれの数値は、報告される有効数字を考慮し、および、通常の丸めの手法を使用することによりそれぞれの数値が少なくとも解釈されるべきである。加えて、本明細書中で開示される全ての範囲は、範囲を示す始めと終わりの数字、ならびに、その範囲内に含まれる任意および全ての部分的範囲を含むと理解される。例えば、「1から10」と表示される範囲は、1という最小値および10という最大値の間の(および、1と10を含めて)任意および全ての部分的範囲を含むと見なされるべきである;つまり、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わる全ての部分的範囲、例えば、1〜3.3、4.7〜7.5、5.5〜10などである。さらに、本明細書中で使用されるように、「(何かの)上(の方)に塗布される」、「(何かの)上(の方)に形成される」、(何かの)上(の方)に成膜される(付着される)」、または「(何かの)上(の方)に提供される」という用語は、「(何かの)上に(直接)塗布される」、「(何かの)上に(直接)形成される」、「(何かの)上に(直接)成膜される(付着される)」、または「(何かの)上に(直接)提供される」ことを意味するが、表面と接している必要性はない。例えば、支持体の「上(の方)に形成される」被覆層は、形成された被覆層と支持体との間に位置する同じまたは異なる組成物の、1つ以上の他の被覆層のフィルムの存在を除外しない。本明細書中で使用されるように、「ポリマー」または「ポリマーの」という用語は、オリゴマー、ホモポリマー、共重合体、およびターポリマー、例えば、2種以上のモノマーまたはポリマーから形成されるポリマーを含む。「可視領域」または「可視光」という用語は、380nm〜800nmの範囲の波長を有する電磁放射線を表す。「赤外領域」または「赤外線」という用語は、800nmより大きく100,000nmまでの範囲の波長を有する電磁放射線を表す。「紫外領域」または「紫外線」という用語は、300nmから380nm未満の範囲の波長を有する電磁エネルギーを意味する。「マイクロ波領域」または「マイクロ波放射線」は、1GHz〜30GHzの範囲の周波数を有する電磁エネルギーを意味する。加えて、本明細書中で参照されている全ての文書、例えば、制限はされないが、発行された特許および特許出願は、その全てを「参考として援用される」ものとして見なされる。「放射線保護被膜」または「保護被膜」という用語は、被膜を通る範囲で選択された放射線を反射する、吸収する、さもなければ、その透過率を減らすことを提供する被膜を表す。しかしながら、放射線保護被膜は、例えば、紫外線(UV)の吸収もしくは反射、および/または、赤外線(IR)の吸収もしくは反射、および/または、可視光の吸収もしくは反射以外の特性のような、選択された放射線を反射、吸収、またはその透過率を減らすこと以外の特性も提供し得る。下記の考察において、「フィルム」という用語は、所望の、または選択された組成物を有する被膜の一部分を表す。ある1つの「層」は1つ以上の「フィルム」を包含する。「被膜」または「被膜の重なったもの(coating stack)」は1つ以上の「層」を包含する。量に関しては、他に特定されないのであれば、「重量パーセントで」を意味する。
【0011】
下記の考察の目的のため、本発明は航空機用透明体の使用に関連して、特に飛行機の窓について記載される。しかしながら、本発明は、航空機の窓での使用に限定されず、任意の所望の分野、例えば、薄層状もしくは非薄層状の乗り物用透明体、住居用および/または商業施設用の窓、絶縁ガラスユニット、および/または、地上、空中、宇宙、水上、および水中用乗り物向け透明体、例えば、少し名を挙げるだけでも、車の風防ガラス、側灯、バックライト、サンルーフ、およびムーンルーフで実施され得ることが理解される。したがって、特に開示される例示的実施形態は、本発明の一般的な概念を説明するために単に与えられること、および、本発明がこれらの特定の例示的実施形態に限定されないことが理解される。加えて、典型的な航空機用「透明体」は十分な可視光透過率を有するので、その透明体を通して物質が見得るのに対し、本発明の実施において、「透明体」は可視光に対して透明である必要はないが、(下記のように)半透明または不透明であり得る。本発明の放射線保護被膜は薄層状または非薄層状の、例えば、一層またはモノリスの物品を製造するときに利用され得る。「モノリス」は単一構造の支持体、または第一層、例えば、ガラス層またはポリマー層を有していることを意味する。下記の考察において、物品の例は(薄層状かモノリスかに係らず)航空機用透明体として記載される。
【0012】
例として、本発明の特徴を含む航空機用透明体10の形態で被覆された物品を図1に示す。透明体10は少なくとも1つの主な表面14を有し得る支持体12を含む。本発明の複合被膜16は支持体12の少なくとも一部分上に塗布されており、例えば、主な表面14の少なくとも一部分上にである。複合被膜16は、支持体12の少なくとも一部分上、例えば、主な表面14の少なくとも一部分上に形成された本発明のプライマー層、または、プライマー18を含む。放射線保護被膜20はプライマー18の少なくとも一部分上に形成される。任意の保護膜22は上記保護被膜20の少なくとも一部分上に形成され得る。
【0013】
本発明の広範な実施において、透明体10の支持体12は任意の所望の特徴を有する任意の所望の物質を含み得る。例えば、1つの非制限的実施形態において、支持体12は可視光を透過し得る。「透過」は0%より大きく100%までの可視光透過率を有することを意味する。また、別の非制限的実施形態において、支持体12は半透明であり得る。「半透明」は、電磁エネルギー(例えば、可視光)は通過するけれど、上記エネルギーを拡散するため、観察者の反対側にある物体がはっきりと見えないことを意味する。適した物質の例として、限定はされないが、プラスチック支持体(例えば、アクリル系ポリマー、例えば、ポリアクリレート;ポリアルキルメタクリレート、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレートなど;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリアルキルテレフタレート、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど;ポリシロキサンを含有するポリマー;または、これらを調製するための任意のモノマー、もしくはその任意の混合物の共重合体)、または、熱可塑性物質;セラミック支持体;ガラス支持体;または、上記物質の任意の混合物、もしくは組み合わせたものが挙げられる。また、支持体12は、従来のソーダ石灰ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、または鉛ガラスであり得る。上記ガラスは透明なガラスであり得る。「透明なガラス」はティンテッドグラス、または色ガラスでないことを意味する。また、上記ガラスは、ティンテッドグラス、さもなくば色ガラスであり得る。上記ガラスは、アニールガラス(annealed glass)または熱処理ガラスであり得る。本明細書中で使用される場合、「熱処理」という用語は、焼入れされている、または、少なくとも部分的に焼入れされていることを意味する。上記ガラスは任意の種類であり、例えば、従来のフロートガラスであり得、そして、任意の光学特性、例えば、可視光透過率、紫外線透過率、赤外線透過率、および/または全太陽エネルギー透過率の任意の値を有する任意の組成物であり得る。支持体12は、例えば、長さ、幅、形、または厚さについて任意の所望の寸法であり得る。1つの例示的実施形態において、支持体12は熱可塑性を包含し、1mm〜10mmの範囲、例えば、1mm〜5mm、例えば、1.5mm〜5mm、例えば、2mm〜5mm、例えば、3mm〜4mm、例えば3.2mmの厚さを有する。1つの非制限的実施形態において、支持体12は、Pittsfield, MAにあるthe General Electric Companyから市販されているLEXAN(登録商標)プラスチックを含有する。
【0014】
1つの非制限的実施形態において、プライマー18は、ポリエポキシドとアミノ官能性シランとの反応生成物を含有する。反応生成物は、加水分解された場合、少なくとも6個のシラノール基、例えば、少なくとも8個のシラノール基、例えば、少なくとも10個のシラノール基、例えば、12個のシラノール基を含む。
【0015】
1つの非制限的実施形態において、上記ポリエポキシドは少なくとも2つのエポキシ基を含む。ポリエポキシドは、例えば、ポリグリシジルエポキシであり得る。1つの特定の非制限的実施形態において、上記ポリエポキシドは、2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビス[オキシラン]を有するフェノール,4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス−ポリマーを含む。本発明の実施に適したポリエポキシドはEPON 1001F エポキシ(Houston,TexasにあるHexion Speciality Chemicals,Inc.から市販されている)である。
【0016】
1つの非制限的実施形態において、アミノ官能性シランはアミノ官能性ポリアルコキシシラン、例えば、アミノ官能性ビス−アルコキシシランを含む。1つの非制限的実施形態において、上記シランは1分子当たり少なくとも2個のシリル基を含む。1つの特定の非制限的実施形態において、上記シランはポリメトキシシラン、例えば、トリメトキシシランである。1つの特定の非制限的実施形態において、上記アミノ官能性シランは、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを含む。本発明の実施に適したアミノ官能性シランはSilquest A−1170 シラン(South Charleston,West VirginiaにあるGE Advanced Materialsから市販されている)である。
【0017】
上記反応生成物を製造するとき、当業者は、上記ポリエポキシドに加えられるアミノ官能性物質の量はポリエポキシド中の反応性エポキシ基の数に依存することを理解する。例えば、ポリエポキシドが2個の反応性エポキシ基を有する場合、2モルのアミノ官能性物質が1モルのポリエポキシドに加えられる。
【0018】
プライマー層18は任意の所望の厚さであり得る。しかし、1つの非制限的実施形態において、プライマー層18は0μmより大きく10μmまでの範囲、例えば、1〜10μm、例えば、1〜8μm、例えば、1〜6μm、例えば、2〜6μm、例えば、2〜4μmの範囲の厚さを有する。
【0019】
放射線保護被膜20は、被膜を通る選択された波長または波長範囲の放射線を反射する、吸収する、および/または、さもなければ減少させる、もしくは妨げる材料の1つ以上の層を含む。本発明の一般的な実施において、保護被膜20は、当該技術において公知である、従来の放射線吸収材料または放射線反射材料のいずれかを含み得る。1つの非制限的実施形態において、放射線保護被膜20は、透明体10を通過するマイクロ波放射線を減らす、または、妨げる金属酸化物材料を1つ以上を含む。
【0020】
本発明で使用する金属酸化物材料の例として、制限されないが、シリカ、アルミナ、亜鉛酸化物、スズ酸化物、インジウム酸化物、インジウム・スズ酸化物(ITO)、ニオブ酸化物、タンタル酸化物、ジルコニア、チタニア、亜鉛およびスズの材料(例えば、制限されないが、亜鉛スタンネート)、および、任意の上記金属の、もしくは、上記材料の任意の1つ以上を含む任意の混合物の酸化物、窒化物、または酸窒化物が挙げられる。放射線保護被膜20は、加えて、1つ以上のドープ剤を含有し得る。例示的なドープ剤は、限定はされないが、クロム、ハフニウム、イットリウム、ニッケル、ホウ素、リン、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、および、その混合物または組み合わせたものから選択され得る。
【0021】
また、保護被膜20は、その特性、例えば、屈折率、光触媒活性、および当業者に公知の他の特性などに影響を与える添加剤またはドープ剤を1つ以上含み得る。ドープ剤の例として、限定されないが、ナトリウム、ニッケル、遷移金属、および、前述の物の任意の1つ以上を含有する混合物が挙げられる。
【0022】
保護被膜20は所望の放射線保護を実現するための任意の厚さであり得る。当業者により理解されるように、保護被膜20の特定の厚さは、所望の放射線保護を実現するために選択される材料に依存して変わり得る。1つの非制限的実施形態において、保護被膜20は20オーム毎平方以下の抵抗、例えば、18オーム毎平方以下の抵抗、例えば、16オーム毎平方以下の抵抗、例えば、15オーム毎平方以下の抵抗、例えば、13オーム毎平方以下の抵抗、例えば、11オーム毎平方以下の抵抗、例えば、10オーム毎平方以下の抵抗を提供するのに十分な厚さを有する。1つの特定の非制限的実施形態において、上記保護被膜は少なくとも3,500Åの厚さ、例えば、少なくとも4,000Åの厚さ、例えば、少なくとも4,500Åの厚さ、例えば、少なくとも5,000Åの厚さ、例えば、少なくとも5,500Åの厚さ、例えば、少なくとも6,000Åの厚さ、例えば、少なくとも6,500Åの厚さ、例えば、少なくとも7,000Åの厚さを有する。ある特定の非制限的実施形態において、保護被膜20はインジウム・スズ酸化物を含む。
【0023】
保護被膜20は任意の従来法、例えば、限定されないが、従来の化学蒸着法(CVD)、および/または、物理蒸着法(PVD)により成膜され得る。CVD法の例として、スプレー熱分解法が挙げられる。PVD法の例として、電子ビーム蒸着法、および真空スパッタリング法(例えば、マグネトロンスパッタ蒸着法(MSVD))が挙げられる。また、他の被覆方法、例えば、ゾル−ゲル成膜法も使用され得る。1つの非制限的実施形態において、保護被膜20はMSVD法により成膜され得る。MSVDの被覆装置および方法の例は、当業者によりよく理解され、例えば、米国特許第4,379,040号;米国特許第4,861,669号;米国特許第4,898,789号;米国特許第4,898,790号;米国特許第4,900,633号;米国特許第4,920,006号;米国特許第4,938,857号;米国特許第5,328,768号;および、米国特許第5,492,750号に記載されている。
【0024】
保護膜22は機構的、および/または、化学的保護を下の被覆層に提供する材料を含む。1つの非制限的実施形態において、保護膜22は、1〜10ミル(0.0025cm〜0.025cm)の範囲、例えば、2〜8ミル(0.005cm〜0.0203cm)、例えば、2〜5ミル(0.005cm〜0.0127cm)の範囲の厚さを有するポリウレタンを含む。別の非制限的実施形態において、保護膜22は1〜10μmの範囲、例えば、2〜8μm、例えば3〜4μmの範囲の厚さを有するシロキサンを含む。
【0025】
本発明は、下記の実施例に参照としてさらに記載される。下記実施例は、本発明の一般的概念を単に例示するものであって、限定することを意図されていない。他に指示が無いのであれば、下記実施例、ならびに本明細書中における、全ての部分および百分率は重量での値である。
【実施例】
【0026】
この実施例で本発明のプライマー組成物の製造法を説明する。
【0027】
91.5gのEpon 1001F エポキシ(Houston,TexasにあるHexion Speciality Chemicals,Inc.から市販されている)を274.5gのDowanolPM solvent(Midland,MichiganにあるDow Chemical Companyから市販されている)に溶かし、25%溶液とした。58gのA−1170アミノシラン(South Charleston,West VirginiaにあるGE Advanced Materialsから市販されている)を加え、撹拌し、全て、または概ね全てのアミン基をEpon 1001F エポキシと反応させるために2時間180°F(82℃)で反応させた。上記溶液を室温へ冷却した。738gのDowanol PMに9.3gの水を加え、撹拌した。25%エポキシ/シラン溶液をDowanol PM/水の溶液へ加え、1時間撹拌した。337.5gのブチルセロソルブ溶媒(2−ブトキシエタノール;Midland,MichiganにあるDow Chemical Companyから市販されている)を加え、撹拌し、10%固形プライマー溶液を調製した。0.4gのBYK 306 表面活性剤(BYK Chemieから市販されている)を加え、10分間撹拌した。上記プライマーは、Lexan(登録商標)支持体へ塗布される準備がされた。
【0028】
上記10%溶液を、Lexan(登録商標)支持体へフローコーティングにより塗布した。被膜を45分間または半硬化するまで気乾した。被覆された支持体をオーブンに置き、2時間254°F(118℃)で硬化させた。
【0029】
プライマーが塗布された支持体を、インジウム・スズ酸化物が10オーム毎平方の抵抗を提供する厚さで塗布される従来のMSVDコーティング機に移した。3ミル(0.00762cm)の厚さを有するポリウレタン製保護膜をインジウム・スズ酸化物層上に塗布し、被覆された支持体は窓へと加工された。
【0030】
本発明に対して、先の記載で開示された概念から逸脱すること無しに改変がなされ得ることは当業者により容易に理解される。したがって、本明細書中で詳細に記載された特定の実施形態は、単なる例示であり、本発明の範囲を制限していない。そして、添付された特許請求の範囲の全て、ならびに、任意および全ての特許請求の範囲と同等のものが本発明の範囲とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆された物品であって:
支持体;および
該支持体の少なくとも一部分上に形成されたプライマー
を含み、
ここで、該プライマーは以下:
(a)ポリエポキシド;および
(b)アミノ官能性シラン、
の反応生成物を含有し、
ここで該反応生成物は加水分解された場合、少なくとも6個のシラノール基を含む、
被覆された、
物品。
【請求項2】
請求項1に記載の物品であって、ここで、(a)が少なくとも2個のエポキシ基を有するポリエポキシドを含む、物品。
【請求項3】
請求項1に記載の物品であって、ここで、(a)がポリグリシジルエポキシを含む、物品。
【請求項4】
請求項1に記載の物品であって、ここで、(a)が2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビス[オキシラン]を有するフェノール,4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス−ポリマーを含む、物品。
【請求項5】
請求項1に記載の物品であって、ここで、(b)がアミノ官能性ポリアルコキシシランを含む、物品。
【請求項6】
請求項1に記載の物品であって、ここで、(b)がポリメトキシシランを含む、物品。
【請求項7】
請求項1に記載の物品であって、ここで、(b)がビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを含む、物品。
【請求項8】
請求項1に記載の物品であって、ここで、前記反応生成物が加水分解された場合、少なくとも8個のシラノール基を含む、物品。
【請求項9】
請求項1に記載の物品であって、ここで、前記反応生成物が加水分解された場合、少なくとも10個のシラノール基を含む、物品。
【請求項10】
請求項1に記載の物品であって、ここで、前記反応生成物が加水分解された場合、少なくとも12個のシラノール基を含む、物品。
【請求項11】
請求項1に記載の物品であって、ここで、前記プライマーが1〜10μmの範囲の厚さを有する、物品。
【請求項12】
請求項1に記載の物品であって、ここで、前記プライマーが2〜4μmの範囲の厚さを有する、物品。
【請求項13】
請求項1に記載の物品であって、ここで、前記支持体が熱可塑性材料を含有する、物品。
【請求項14】
請求項1に記載の物品であって、ここで、前記支持体が3〜4mmの範囲の厚さを有する、物品。
【請求項15】
請求項1に記載の物品であって、前記プライマーの少なくとも一部分上に形成された放射線保護被膜、および、該放射線保護被膜の少なくとも一部分上に形成された保護膜をさらに含む、物品。
【請求項16】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記放射線保護被膜が金属酸化物を含む、物品。
【請求項17】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記放射線保護被膜がインジウム・スズ酸化物を含む、物品。
【請求項18】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記放射線保護被膜が20オーム毎平方以下のシート抵抗を有する、物品。
【請求項19】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記放射線保護被膜が15オーム毎平方以下のシート抵抗を有する、物品。
【請求項20】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記放射線保護被膜が10オーム毎平方以下のシート抵抗を有する、物品。
【請求項21】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記放射線保護被膜が少なくとも3,500Åの厚さを有する、物品。
【請求項22】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記放射線保護被膜が少なくとも5,000Åの厚さを有する、物品。
【請求項23】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記放射線保護被膜が少なくとも7,000Åの厚さを有する、物品。
【請求項24】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記保護膜がポリウレタンを含む、物品。
【請求項25】
請求項15に記載の物品であって、ここで、前記保護膜がシロキサンを含む、物品。
【請求項26】
請求項1に記載の物品であって、ここで、前記物品が航空機用透明体である、物品。
【請求項27】
航空機用透明体であって:
熱可塑性材料を含む支持体;
該支持体の少なくとも一部分上で形成されたプライマーであって、該プライマーは下記:
(a)2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビス[オキシラン]を有するフェノール,4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス−ポリマーと
(b)ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン
との反応生成物を含有し、ここで、該反応生成物が加水分解された場合、少なくとも12個のシラノール基を含む、プライマー;
放射線保護被膜であって、該プライマーの少なくとも一部分上に形成され、該放射線保護被膜はインジウム・スズ酸化物を含み、そして、10オーム毎平方以下のシート抵抗を有する、放射線保護被膜;ならびに
保護膜であって、該放射線保護被膜の少なくとも一部分上に形成され、ここで、該保護膜がポリウレタンまたはシロキサンの内の少なくとも1つを含む、保護膜
を含む、航空機用透明体。

【図1】
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【公表番号】特表2010−517805(P2010−517805A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530679(P2009−530679)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/081493
【国際公開番号】WO2008/127370
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ インコーポレーテツド (267)
【Fターム(参考)】