説明

プライマー組成物

【課題】本発明は、各種被着体、特に難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるプライマー組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸および炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸と、ポリオール化合物とを反応させて得られる、分子内に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、前記ポリエステル樹脂(A)に対する前記ポリイソシアネート化合物(B)の質量比が、1.8〜7.0であるプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のボディと窓ガラスとの接着にはウインドウシーラントが使用されている。しかしながら、ウインドウシーラントのみを使用した接着では十分な接着性が得られない場合が多い。このようにシーラントや接着剤単独で十分な接着性が得られない場合には、接着面に予めプライマー組成物を塗布した後、その上に接着剤等を塗布して十分な接着性を確保することが行われている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0003】
しかしながら、近年、自動車のボディにアクリルメラミン樹脂等を含む難接着性の塗装が施されることが増えており、このような難接着性塗板に対する接着では、プライマー組成物を用いた場合でも十分な接着性を確保できない。特に、低温環境下(例えば、10℃以下)で使用した場合に十分な接着性を得ることが困難である。
【0004】
また、従来、接着性を向上させるためにプライマー組成物にカーボンブラックが配合されている。しかしながら、カーボンブラックが配合されている場合、プライマー組成物による汚れが目立つという問題があるため、カーボンブラックを含有しないでも難接着性塗板に対する接着性を確保できるプライマー組成物が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−51287号公報
【特許文献2】特開2006−335921号公報
【特許文献3】特開2001−123092号公報
【特許文献4】特開2000−63768号公報
【特許文献5】特開2000−327956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、各種被着体、特に難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、芳香族ジカルボン酸および炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸と、ポリオール化合物とを反応させて得られる、分子内に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、ポリエステル樹脂(A)に対するポリイソシアネート化合物(B)の質量比(ポリイソシアネート化合物(B)/ポリエステル樹脂(A))が、1.8〜7.0であるプライマー組成物が、各種被着体、特に難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記(1)〜(5)を提供する。
(1)芳香族ジカルボン酸および炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸と、ポリオール化合物とを反応させて得られる、分子内に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、前記ポリエステル樹脂(A)に対する前記ポリイソシアネート化合物(B)の質量比が、1.8〜7.0であるプライマー組成物。
【0009】
(2)前記芳香族ジカルボン酸が、イソフタル酸および/またはテレフタル酸である上記(1)に記載のプライマー組成物。
【0010】
(3)前記脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸および/またはアジピン酸である上記(1)または(2)に記載のプライマー組成物。
【0011】
(4)前記ポリイソシアネート化合物(B)が、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートおよび/またはポリメチレンポリフェニルイソシアネートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物とを含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプライマー組成物。
【0012】
(5)前記ポリイソシアネート化合物(B)が、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物とを含む上記(4)に記載のプライマー組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプライマー組成物は、各種被着体、特に難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のプライマー組成物は、芳香族ジカルボン酸および炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸と、ポリオール化合物とを反応させて得られる、分子内に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、上記ポリエステル樹脂(A)に対する上記ポリイソシアネート化合物(B)の質量比が、1.8〜7.0であるプライマー組成物である。
【0015】
<ポリエステル樹脂(A)>
上記ポリエステル樹脂(A)は、芳香族ジカルボン酸および炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸と、ポリオール化合物とを反応させて得られる、分子内に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(A)は、カルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸および炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を含むことにより、難接着性塗板に対する接着性(特に耐水接着性)に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる。
【0016】
上記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、オキシビス(安息香酸)、エチレン−1,2−ビス(p−オキシ安息香酸)、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4′−スルホニルジ安息香酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるという点から、テレフタル酸および/またはイソフタル酸が好ましい。
【0017】
上記炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸およびドデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるという点から、アジピン酸および/またはセバシン酸であることが好ましく、耐水接着性により優れ、接着性の発現が早いため低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる点からセバシン酸がより好ましい。
【0018】
上記芳香族ジカルボン酸と上記脂肪族ジカルボン酸とのモル比(芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸)は、難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるという点から、1/99〜99/1が好ましく、5/95〜95/5がより好ましい。
【0019】
上記ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、ポリエステル樹脂の製造に通常用いられるポリオール化合物を使用することができる。上記ポリオール化合物としては、ヒドロキシ基を2個有する化合物(即ち、ジオール化合物)が好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール;ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、接着性に優れる点からエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0020】
ポリエステル樹脂(A)は、公知の製造方法により製造することができる。
また、ポリエステル樹脂(A)として、バイロン630、バイロン500、バイロン103(いずれも東洋紡績社製)等の市販品を好適に用いることができる。
【0021】
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるという点から、3000〜50,000であるのが好ましく、3000〜35,000であるのがより好ましい。
【0022】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるという点から、−20〜85℃であるのが好ましく、−18〜60℃であるのがより好ましい。
【0023】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
本発明のプライマー組成物に用いられるポリイソシアネート化合物(B)は、イソシアネート基を3個以上有する。そのため、本発明のプライマー組成物は難接着性塗板に対する接着性に優れる。
ポリイソシアネート化合物(B)としては、例えば、下記式(1)で表されるトリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、下記式(2)で表されるポリメチレンポリフェニルイソシアネート、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物が難接着性塗板に対する接着性により優れる点から好適に挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特に、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートおよび/またはポリメチレンポリフェニルイソシアネートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物との組み合わせで用いることが好ましい。また、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物との組み合わせで用いることも好ましい。これらを組み合わせて用いることにより難接着性塗板に対する接着性を大幅に向上できる。
【0024】
【化1】

【0025】
上記式(2)中、nは1〜5の整数を表し、1〜3の整数であるのが好ましい。
【0026】
上記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物を三量化して得られる、ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を好適に用いることができる。
上記ジイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のTDI;ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等のMDI;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナン骨格を有するジイソシアネート(NBDI)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、TDIとHDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物が、難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるという点から好ましい。
【0027】
本発明のプライマー組成物は、上記ポリイソシアネート化合物(B)以外に、上述したようなジイソシアネート化合物やモノイソシアネート化合物を含んでいてもよい。ジイソシアネート化合物としては、難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる点からMDIが好ましい。
本発明のプライマー組成物に含まれるポリイソシアネート化合物の平均官能基数は、難接着性塗板に対する接着性に優れる点から2.1以上であることが好ましい。
なお、本明細書において、「平均官能基数」は1分子中に存在するイソシアネート基の平均の個数である。
【0028】
本発明のプライマー組成物においては、ポリエステル樹脂(A)に対するポリイソシアネート化合物(B)の質量比(ポリイソシアネート化合物(B)/ポリエステル樹脂(A))が、1.8〜7.0である。この範囲であると、難接着性塗板に対する接着性(特に耐水接着性)に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる。一方、上記質量比が1.8未満であると難接着性塗板に対する接着性(特に耐水接着性)が低くなる。また、上記質量比が7.0を超えると接着発現性が低くなる。
上記の特性により優れる点から、ポリエステル樹脂(A)に対するポリイソシアネート化合物(B)の質量比は、1.9〜6.8であるのが好ましい。
【0029】
本発明のプライマー組成物は、更に、硬化触媒を含有するのが接着発現が早くなり、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる点から好ましい。
上記硬化触媒としては、例えば、金属系触媒、アミン系触媒等が挙げられる。
【0030】
金属系触媒としては、例えば、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ナフテン酸スズ等のスズカルボン酸塩類;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクタン酸鉛、オクタン酸ビスマス等のオクタン酸金属塩等が挙げられる。
【0031】
アミン系触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエチルモルホリン等の第三級アミンが挙げられる。
上記硬化触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
硬化触媒の含有量は、上記ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.3〜5.0質量部が好ましく、0.5〜3.5質量部がより好ましい。
【0033】
本発明の組成物は、塗布したことを確認し易くするために、上述した各成分以外に、更に顔料や染料を含有してもよい。
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0034】
本発明のプライマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、充填剤、紫外線吸収剤、溶剤、分散剤、脱水剤、接着付与剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0035】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。
【0036】
本発明のプライマー組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記の各必須成分と任意成分とを密閉容器中で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混合する方法を用いることができる。
【0037】
得られた本発明のプライマー組成物を適用する被着体としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、金属、木材、プラスチックおよびこれらの表面に塗装が施されたもの等が挙げられる。難接着性塗板としては、アクリル系塗板、エポキシ系塗板、シリコーン系塗板等が挙げられる。
【0038】
また、本発明のプライマー組成物と共に用いる接着剤またはシーラントとしては、例えば、ウレタン系、ウレタンエポキシ系等が好適に挙げられる。
【0039】
上述した本発明のプライマー組成物は、各種被着体、特に難接着性塗板に対する接着性に優れ、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる。更に、カーボンブラックを含んでいなくても難接着性塗板に対して優れた接着性を発揮できる。
本発明のプライマー組成物は、ウインドウシーラントと難接着性塗板との接着に用いられるプライマーとして特に有用である。
【0040】
本発明のプライマー組成物を用いたウインドウシーラントと難接着性塗板との接着方法について、以下に説明する。
被着体の一方は、自動車のボディ等に用いられる塗装鋼板、例えば、電着塗装鋼板等にアクリルメラミン塗料を焼付けた難接着性塗板等が挙げられる。
【0041】
上記ウインドウシーラントは、自動車のボディと窓ガラスとを接着するためのもので、例えば、一般に用いられるポリウレタン系シーラント等が挙げられる。ウインドウシーラントとしては、例えば、横浜ゴム社製のWS−70等の市販品を使用することができる。
【0042】
本発明のプライマー組成物を用いた施工方法の一例としては、上述した難接着性塗板と窓ガラスとをウインドウシーラントを介して接着する際に、60〜80℃で、例えば市販のアプリケーターを用いて本発明のプライマー組成物を上記難接着性塗板に塗布した後、冷却固化させると、充分な初期接着強度を有するプライマーの膜が形成される。プライマーが成膜したら、その上にウインドウシーラントを塗布し、窓ガラスとウインドウシーラントとを密着させて接着することにより自動車のボディと窓ガラスとを接着させて成形体を製造する。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記第1表に示す組成(質量部)で撹拌機を用いて混合し、各プライマー組成物を得た。
【0044】
得られたプライマー組成物をアクリル系塗板に塗布し、20℃で2分間放置した後、ウレタン系のウインドウシーラント(WS−202、横浜ゴム社製)を厚さ3mmとなるように塗布し、以下に示す硬化条件で硬化させて試験体とした。
得られた試験体のウインドウシーラントをナイフでカットし、カット部を手で摘んで引張り、その剥離状態を観察することで、接着性を評価した。
接着面積に対するウインドウシーラントの凝集破壊(CF)面積の割合(%)を第1表に示す。例えば、「CF50」は接着面の面積に対してウインドウシーラントの凝集破壊の面積の割合が50%であることを示す。CFの割合が高いほど接着性に優れると言える。
【0045】
(硬化条件)
・初期(実施例1〜10、19〜40、比較例1〜8および13〜28):20℃、65%RHの環境下で7日間放置
・初期(実施例11〜18および比較例9〜12):20℃、65%RHの環境下で3日間放置
・低温(実施例1〜40および比較例1〜28):5℃、50%RHの環境下で7日間放置
・耐水(実施例1〜18および比較例1〜12):50℃の温水中で14日または30日間放置
・耐水(実施例19〜40および比較例13〜28):40℃の温水中で14日または30日間放置
・耐熱(実施例1〜6、19〜40、比較例1〜6、13〜28):100℃のオーブン中で14日または28日間放置
・耐熱(実施例7〜10、比較例7〜8):100℃のオーブン中で14日または28日間放置
・耐熱(実施例11〜18、比較例9〜12):100℃のオーブン中で7日または14日間放置
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】


【0053】
第1表に示す各成分は下記のとおりである。
・ポリエステル樹脂(A1):バイロン630、東洋紡績社製、酸成分:テレフタル酸、イソフタル酸およびセバシン酸、重量平均分子量23000、ガラス転移温度7℃
・ポリエステル樹脂(A2):バイロン500、東洋紡績社製、酸成分:テレフタル酸、イソフタル酸およびアジピン酸、重量平均分子量23000、ガラス転移温度4℃
・ポリエステル樹脂(A3):バイロン103、東洋紡績社製、酸成分:テレフタル酸、イソフタル酸およびセバシン酸、重量平均分子量23000、ガラス転移温度47℃
・ポリエステル樹脂1:バイロン270、東洋紡績社製、酸成分:テレフタル酸およびイソフタル酸、重量平均分子量23000、ガラス転移温度67℃
・ポリエステル樹脂2:バイロンGK880、東洋紡績社製、酸成分:テレフタル酸、重量平均分子量18000、ガラス転移温度84℃
・ポリイソシアネート化合物(B1):デスモジュールRFE、住化バイエルウレタン社製、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート
・ポリイソシアネート化合物(B2):デスモジュールHL、住化バイエルウレタン社製、HDIとTDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物
・ポリイソシアネート化合物(B3):スミジュール44V−10、住化バイエルウレタン社製、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート
・ジメチルアミノエチルモルホリン:XDM、三共エアプロダクツ社製
【0054】
第1表(その1)に示す結果から明らかなように、カルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸およびセバシン酸を含むポリエステル樹脂(A1)または、カルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸およびアジピン酸を含むポリエステル樹脂(A2)を含有する実施例1〜6は、いずれの条件においても優れた接着性を有していた。特に、炭素数6〜12の脂肪族カルボン酸としてセバシン酸を含むポリエステル樹脂(A1)は耐水接着性が優れていた。一方、カルボン酸成分として炭素数6〜12の脂肪族カルボン酸を含まないポリエステル樹脂1またはポリエステル樹脂2を含有する比較例1〜6は、初期、低温、耐水接着性のうち少なくとも1つが低かった。
【0055】
第1表(その2)〜(その7)に示す結果から明らかなように、ポリエステル樹脂に対するポリイソシアネート化合物の質量比が本発明の範囲である実施例7〜40は、いずれの条件においても優れた接着性を有していた。一方、ポリイソシアネート化合物の割合が多い比較例7、9、11、13、14、17、18、21、22、25、26は、初期、低温、耐水接着性のうち少なくとも1つが低かった。ポリエステル樹脂の割合が多い比較例8、10、12、15、16、19、20、23、24、27、28は、初期、低温、耐水接着性の少なくとも1つが低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸および炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸と、ポリオール化合物とを反応させて得られる、分子内に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、
前記ポリエステル樹脂(A)に対する前記ポリイソシアネート化合物(B)の質量比が、1.8〜7.0であるプライマー組成物。
【請求項2】
前記芳香族ジカルボン酸が、イソフタル酸および/またはテレフタル酸である請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸および/またはアジピン酸である請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物(B)が、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートおよび/またはポリメチレンポリフェニルイソシアネートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物とを含む請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート化合物(B)が、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物とを含む請求項4に記載のプライマー組成物。

【公開番号】特開2009−280682(P2009−280682A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133357(P2008−133357)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】