プラグ及びアダプタを備えた光コネクタ並びに光コネクタの接続方法
【課題】光ファイバの接続密度の向上を実現し、さらには、被覆除去工程の不要化による組立作業の簡易化を実現した光コネクタを提供すること。
【解決手段】本発明は、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、前記被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して前記被覆付き光ファイバを接続する光コネクタである。前記光コネクタは、前記被覆付き光ファイバを保持するプラグと、前記被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタとから構成される。前記プラグに前記被覆付き光ファイバを挿通するとき、前記プラグにはキャップが装着された状態である。前記キャップは、前記被覆付き光ファイバの被覆に切り込みを入れるために使用される。
【解決手段】本発明は、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、前記被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して前記被覆付き光ファイバを接続する光コネクタである。前記光コネクタは、前記被覆付き光ファイバを保持するプラグと、前記被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタとから構成される。前記プラグに前記被覆付き光ファイバを挿通するとき、前記プラグにはキャップが装着された状態である。前記キャップは、前記被覆付き光ファイバの被覆に切り込みを入れるために使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光コネクタに関し、具体的には、光ファイバの被覆を除去することなく組立可能な光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを高密度に接続できる光コネクタとして、MUコネクタがある(特許文献1を参照)。MUコネクタは、光ファイバを固定したプラグのフェルールをアダプタの割スリーブへ挿入することで、光ファイバ同士を接続する構造を有する。従来のMUコネクタにおいては、アダプタに設けられた1対の係止片がプラグのプラグフレームの凹部へ嵌ることで、プラグとアダプタとを接続する。また、プラグのツマミを後退させて、アダプタの係止片とプラグフレームの凹部の嵌め合いを外すことで、プラグとアダプタとの接続を解除する。
【0003】
従来のMUコネクタ等の光ファイバ接続器においては、寸法精度に優れた光ファイバのガラス外径を基準とし、コア位置を精密にアライメントすることで、低損失な光接続を実現している。光ファイバは、外径0.125mmのガラスとそのガラスの周囲を覆った被覆とから構成されており、被覆付きの状態となっている。つまり、光ファイバを接続するときには、光ファイバの被覆を除去して、ガラスを露出させる工程が必須である。光コネクタの組立においては、光ファイバの被覆を除去して、ガラス部のみをフェルールの細径穴へ挿入する。このフェルールの細径穴は、光ファイバのガラスの外径より僅かに大きい内径を有する。従来の光ファイバ接続器は、細径穴内でガラス部を接着剤により固定し、ガラスを固定したフェルール端面を研磨した後、フェルール同士を割りスリーブ内で突き合わせる構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2561763号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】宇留野重則、他2名、「所内光配線マネジメントシステムにおける経済化MUコネクタ技術」、NTT技術ジャーナル、2003年、第15巻、第10号、p.12−15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイバ通信設備として、光ファイバを高密度に接続する光ファイバ接続端子盤がある(非特許文献1を参照)。斯かる光ファイバ接続端子盤においては、MUコネクタが利用されている。光ファイバ接続端子盤において、光ファイバの接続密度を向上させるためには、MUコネクタの断面積より小さな光コネクタがあれば良い。しかしながら、現状の光コネクタの構造を変えることなく光コネクタを小型化する場合、MUコネクタの構造が小型化の限界である。よって、光ファイバの接続密度を向上させるために、光コネクタの新規な構造を考案する必要がある。
【0007】
光ファイバの接続作業において必須である光ファイバの被覆除去工程を省略することで、接続作業の簡易化を実現することができ、さらに、ガラスの露出に起因する接続作業中の光ファイバの折損を防止することができる。しかしながら、被覆が付いた状態のままで、光ファイバのコア位置を高精度にアライメントすることは難しいという問題があった。
【0008】
例えば、現状の汎用的な光コネクタの構造を採用して寸法のみを変更した場合を考慮し、被覆外径が0.25mm、ガラス外径が0.125mmである汎用シングルモード(SM)ファイバを被覆が付いたままの状態で接続することとする。汎用光ファイバにおいては、被覆外径の許容値が0.25±0.015mmであるので、フェルールの細径穴の内径は0.265mmとする。また、汎用光ファイバにおいては、ガラスと被覆の断面における中心位置の偏心量は0.0125mm未満であれば許容されている。すなわち、被覆外径のみを基準に光ファイバをアライメントすると、フェルールの外径及び細径穴の内径を高精度に作製することができた場合であっても、接続するSMファイバのコア間において、コア径と同等の軸ずれが生じる可能性がある。
【0009】
従って、現状の光コネクタ構造の寸法を変更して、被覆外径を基準に光ファイバをアライメントする方法では、光ファイバを低損失に接続することは難しい。
【0010】
従って、被覆が付いた状態の光ファイバを低損失に接続可能な光コネクタを実現することが従来からの課題としてあった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、光ファイバの接続密度の向上を実現し、さらには、被覆除去工程の不要化による組立作業の簡易化を実現した光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、被覆付き光ファイバを保持するプラグと、被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタとから構成された、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して被覆付き光ファイバを接続する光コネクタであり、プラグは、被覆付き光ファイバを挿通する穴を備えたフェルールであって、穴の径は、被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きいフェルールと、鍔と、被覆付き光ファイバが撓む空間である開口部とを備えたフランジと、クランパを備え、被覆付き光ファイバをクランパの弾性力により保持する光ファイバ把持部とから構成され、プラグに被覆付き光ファイバを挿通するとき、プラグにはキャップが装着された状態であり、アダプタは、フェルールを保持する割りスリーブと、割りスリーブ内で被覆付き光ファイバをアライメントするマイクロホール部材と、プラグを弾性保持するためにフランジの鍔と嵌合する係止片と、割りスリーブ、マイクロホール部材、及び係止片を内蔵するハウジング部材とから構成され、アダプタにおいて2個のプラグはプラグの夫々のフェルールの端面が対向した状態で接続されることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態において、プラグのフランジは、プラグへ被覆付き光ファイバを挿通するとき、開口部に撓み押え部材を装着されて、被覆付き光ファイバが撓まない状態にすることができ、プラグへ被覆付き光ファイバを挿通した後、開口部に装着された撓み押え部材を取り外して、被覆付き光ファイバが撓むための空間が設けられることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態において、アダプタのマイクロホール部材は、外筒部材と、外筒部材に収容された内筒部材とから構成され、外筒部材の筒軸と内径部材との筒軸とは、一致し、内筒部材の内径は、被覆付き光ファイバのガラス外径より僅かに大きいことを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態において、キャップは、フェルールの端面からの被覆付き光ファイバの突き出し長を設定するための穴と、光ファイバ突き当て壁と、フェルールの端面から突き出した被覆付き光ファイバの被覆を切り裂く刃とから構成され、キャップは、プラグへ被覆付き光ファイバを挿通するとき、プラグのフェルール先端に装着されており、被覆付き光ファイバの被覆に切り込みを入れるために使用されることを特徴とする。
【0016】
本発明は、キャップを装着することができ、被覆付き光ファイバを保持するプラグと、被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタとから構成された、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して被覆付き光ファイバを接続する光コネクタを接続する方法であって、被覆付き光ファイバをプラグに挿通するステップであって、プラグには、被覆付き光ファイバの被覆に切り込みをいれるためのキャップが装着されているステップと、キャップをプラグから取り外すステップと、アダプタにおいて2個のプラグを接続するステップとを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の一実施形態において、プラグは、被覆付き光ファイバを挿通する穴を備えたフェルールであって、穴の径は、被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きいフェルールと、鍔と、被覆付き光ファイバが撓む空間である開口部とを備えたフランジと、クランパを備え、被覆付き光ファイバをクランパの弾性力により保持する光ファイバ把持部とから構成され、アダプタは、フェルールを保持する割りスリーブと、割りスリーブ内で被覆付き光ファイバをアライメントするマイクロホール部材と、プラグを弾性保持するためにフランジの鍔と嵌合する係止片と、割りスリーブ、マイクロホール部材、及び係止片を内蔵するハウジング部材とから構成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態において、キャップは、フェルールの端面からの被覆付き光ファイバの突き出し長を設定するための穴と、光ファイバ突き当て壁と、フェルールの端面から突き出した被覆付き光ファイバの被覆を切り裂く刃とから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るプラグは、プラグの構造の簡易化により、光ファイバ接続密度を向上することができる。
【0020】
本発明に係る光コネクタの組立工程において、従来の光コネクタ組立作業で必須であった光ファイバの被覆除去作業を不要化したため、組立作業効率を向上することができる。また、被覆が付いたままの状態で、光ファイバを光コネクタ内へ挿入して組立てることができるため、光ファイバの折損を防止することができ、信頼性の高い組立作業を実現することができる。
【0021】
本発明に係る光コネクタを構成するアダプタ内のマイクロホール部材において、寸法精度に優れたガラスの外径で光ファイバをアライメントするため、従来の光コネクタと同等の低接続損失を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラグを説明するための断面模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプラグを説明するための断面模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る撓み押え部材を説明するための断面模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るプラグを構成する光ファイバ把持部を説明するための断面模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るキャップを装着したプラグを説明するための断面模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るキャップ内に光ファイバが挿入されたときの様子を説明するための断面模式図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光ファイバを挿入したプラグにキャップが装着されたときの様子を説明するための断面模式図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る光ファイバを挿入したプラグを説明するための断面模式図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るアダプタを説明するための断面模式図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るアダプタを構成するマイクロホール部材へ光ファイバが挿入されたときの様子を説明するための断面模式図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る光コネクタを説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0024】
図1に、本発明の一実施形態に係るプラグの断面模式図を示す。
【0025】
プラグ100は、フェルール110と、フェルールを把持するフランジ120と、フランジに連結された光ファイバ把持部130とから構成される。フェルール110は、被覆付き光ファイバが挿通される穴111を有する。フェルール110は、フランジ120へ圧入して接続されている。フランジ120は、プラグ同士をアダプタ内で接続した時に被覆付き光ファイバが撓む空間となる開口部121を有する。開口部121には、被覆付き光ファイバの撓みを押える撓み押え部材を装着することができる(図2を参照)。光ファイバ把持部130は、クランパ131と、クサビ挿入穴132とを有する。なお、座標軸は、図1に示すように設定した。すなわち、x軸方向を被覆付き光ファイバが伸長する方向とし、y軸方向を撓み押え部材が光ファイバを押さえつける方向とし、z軸方向をx軸及びy軸の両軸に垂直な方向とする。座標軸の設定は、本明細書の全ての図面において共通するものとする。
【0026】
図2に、本発明の一実施形態に係るプラグの断面模式図を示す。フランジ120の開口部へ撓み押え部材140が装着されている。開口部において撓む被覆付き光ファイバを、撓み押え部材140によって押さえつける。
【0027】
図3に、撓み押え部材140の断面模式図を示す。撓み押え部材140は、底面に光ファイバ通過溝141を有する。光ファイバ通過溝141の溝の深さは、被覆付き光ファイバの断面直径より大きな値とする。被覆付き光ファイバをプラグへ挿通させるときには、開口部121へ撓み押え部材140を装着する。その結果、被覆付き光ファイバは、撓むことなく、撓み押え部材の光ファイバ通過溝を通過してフェルール先端まで前進することができる。プラグをアダプタへ挿入するときには、撓み押え部材140を抜いて、フランジ内の開口部で光ファイバが撓める空間を形成する。
【0028】
図4に、本発明の一実施形態に係る光ファイバ把持部130の断面模式図を示す。
【0029】
図4(a)に示すように、光ファイバ把持部130は、溝付き基板133と、蓋134と、クランパ131とを備える。断面がコの字形状であるクランパ131により、溝付き基板133と蓋134とを、z軸方向に重ねた状態で保持することができる。光ファイバ把持部130のクランパ131により覆われていない面には、クサビ挿入穴132がある。図4(b)に示すように、光コネクタの後端部からフェルール側へ向けて光ファイバ150を挿通させるときは、クサビ170をクサビ挿入穴134へ挿入することで、溝付き基板133と蓋134との間の隙間を広げる。その結果、被覆付き光ファイバ150が、溝付き基板133と蓋134との間の隙間を通過できる状態となる。光ファイバ150の先端が所定位置まで到達した後で、図4(c)に示すように、クサビ170をクサビ挿入穴132から抜き取り、被覆付き光ファイバ150をクランパ131の力により弾性保持する。
【0030】
図5に、本発明の一実施形態に係るプラグ100へキャップ160を装着したときの断面模式図を示す。被覆付き光ファイバをプラグ100へ挿入するときには、キャップ160がフェルール110に装着されている。キャップ160には、フェルール端面112から被覆付き光ファイバを所定の長さだけ突き出すための穴が設けられている。キャップ160は、フェルール端面112から突き出した被覆付き光ファイバの被覆を切り裂くために使用される。
【0031】
図6(a)に、本発明の一実施形態に係るキャップ160へ被覆付き光ファイバ150の先端が挿入されるときの断面模式図を示す。キャップ160には、キャップ内へ挿入したフェルール端面112の近傍となる位置に、1対の刃161が設置されている。1対の刃161は、その刃先をフェルール側に向ける。図6(b)に示すように、プラグ後端より被覆付き光ファイバ150を挿通させるとき、フェルール端面112から突き出た被覆付き光ファイバ150は、その被覆が刃161により切り裂かれながら突き当て壁162へ向けて進むことになる。
【0032】
図7に、本発明の一実施形態に係る被覆付き光ファイバ150の先端がキャップ160の光ファイバ突き当て壁162と接触したときのプラグ100及び光ファイバ150の断面模式図を示す。図7に示すように、被覆付き光ファイバ150の先端が、キャップ160に設けられた光ファイバ突き当て壁162に接触している。被覆付き光ファイバ150の先端が、光ファイバ突き当て壁162に接触したとき、光ファイバホルダ180と、プラグ100との間の被覆付き光ファイバが撓む。これにより、フェルール端面162から所定の長さだけ被覆付き光ファイバが突き出たことは容易に確認することができる。光ファイバホルダ180と、プラグ100との間の、被覆付き光ファイバ150の撓みを確認した後、クサビ170を抜き取り、被覆付き光ファイバ150を光ファイバ把持部130で保持し、被覆付き光ファイバ150へのプラグ100の装着が完了する。
【0033】
図8に、本発明の一実施形態に係る被覆付き光ファイバ150へ装着したプラグ100からキャップ160を外したときの断面模式図を示す。図8に示すように、被覆付き光ファイバ150は、フェルール端面112から一定の長さだけ突き出た状態となっている。前述したように、被覆付き光ファイバ150のうちの突き出た部分の長さは、キャップによって任意に設定することが可能であり、突き出た部分の光ファイバの被覆は、切り裂かれた状態となっている。撓み押え部材は、フランジ120の開口部121から抜かれている。図8に示す状態のプラグ100をアダプタと接続する。
【0034】
図9に、本発明の一実施形態に係るアダプタ200の断面模式図を示す。アダプタ200は、割りスリーブ210と、マイクロホール部材220と、係止片230と、ハウジング部材240とから構成される。マイクロホール部材220は、割りスリーブ210に収容されている。
【0035】
図10に、本発明の一実施形態に係るマイクロホール部材220へ被覆付き光ファイバ150が挿入されるときの断面模式図を示す。プラグ100をアダプタ200へ挿入したとき、フェルール端面112から突き出た被覆付き光ファイバ150は、マイクロホール部材220へ挿入される。図10に示すように、マイクロホール部材220は、外筒部材221と、外筒部材221の中に収容される内筒部材225とから構成されている。外筒部材221の外径は、フェルール110の外径とほぼ等しい。外筒部材221は、被覆付き光ファイバ150を挿通するための穴を備える。内筒部材225は、外筒部材221と筒軸が一致するように配置される。内筒部材225は、被覆付き光ファイバ150の内側のガラス151のみが挿入されるガラス挿入穴226を有する。外筒部材221の穴の径は、内筒部材225の外径より僅かに大きく、外筒部材221は、内筒部材225を収容することができる。
【0036】
外筒部材221の両端側において、ガラス挿入穴226に挿入されたガラス151から除去された被覆152を退避するための被覆退避穴222が形成されている。キャップを取り外した後のフェルール端面112から突き出た被覆付き光ファイバ150は、被覆が切り裂かれた状態になっている。そのため、プラグ100をアダプタ200へ接続したとき、ガラス挿入穴226の入口で被覆152が除去されながら、ガラス151のみがガラス挿入穴226へ挿入される。ガラス挿入穴226の径を0.1255mm乃至0.126mmの範囲の一値として、ガラス151の外径0.125mmより僅かに大きくなるようにした。この結果、被覆を除去することなくプラグへ装着した光ファイバ同士を接続した場合でも、ガラスを高精度にアライメントできるため、通常の光コネクタと同等の接続損失を実現することができる。
【0037】
図11に、本発明の一実施形態に係る、プラグ100と、アダプタ200とを接続したときの断面模式図を示す。アダプタ200へプラグ100を挿入したとき、フェルール110が割りスリーブ210内へ挿入される。さらにフェルール端面112から突き出た光ファイバ150は、マイクロホール部材220へ挿入される。プラグのフランジの鍔122へアダプタの1対の係止片230が係ることで、プラグとアダプタとの接続は保持される。このとき、光ファイバはフランジの開口部121で撓む。光コネクタは、斯かる撓みにより発生する光ファイバの弾性復元力で光ファイバ端面同士を押圧する構造である。あらかじめ光ファイバ端面を研磨していた場合は、この弾性復元力により光ファイバ端面同士を物理的接触(Physical Contact)接続させて、高反射減衰量を実現することができる。光ファイバ端面を研磨せずに切断したままの状態でプラグを装着する場合は、アダプタのガラス挿入穴へ屈折率整合剤を内蔵させることにより、高反射減衰量を実現する。
【0038】
また、従来技術に係る一般的な光コネクタのプラグは、フェルール等の部品をプラグハウジングやツマミに内蔵して組み立てられる。これに対し、上述した本発明に係るプラグでは、プラグハウジングやツマミを使用しない。このため、プラグのフェルールとして、MUコネクタで使用されているフェルールを使用した場合、現状のMUコネクタと比較して2倍程度の光ファイバ接続密度を実現することができる。
【符号の説明】
【0039】
100 プラグ
110 フェルール
111 穴
112 フェルール端面
120 フランジ
121 開口部
122 鍔
130 光ファイバ把持部
131 クランパ
132 クサビ挿入穴
133 溝付き基板
134 蓋
140 撓み押え部材
141 光ファイバ通過溝
150 被覆付き光ファイバ
151 ガラス
152 被覆
160 キャップ
161 刃
162 光ファイバ突き当て壁
170 クサビ
180 光ファイバホルダ
200 アダプタ
210 割りスリーブ
220 マイクロホール部材
221 外筒部材
222 被覆退避穴
225 内筒部材
226 ガラス挿入穴
230 係止片
240 ハウジング部材
【技術分野】
【0001】
本発明は光コネクタに関し、具体的には、光ファイバの被覆を除去することなく組立可能な光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを高密度に接続できる光コネクタとして、MUコネクタがある(特許文献1を参照)。MUコネクタは、光ファイバを固定したプラグのフェルールをアダプタの割スリーブへ挿入することで、光ファイバ同士を接続する構造を有する。従来のMUコネクタにおいては、アダプタに設けられた1対の係止片がプラグのプラグフレームの凹部へ嵌ることで、プラグとアダプタとを接続する。また、プラグのツマミを後退させて、アダプタの係止片とプラグフレームの凹部の嵌め合いを外すことで、プラグとアダプタとの接続を解除する。
【0003】
従来のMUコネクタ等の光ファイバ接続器においては、寸法精度に優れた光ファイバのガラス外径を基準とし、コア位置を精密にアライメントすることで、低損失な光接続を実現している。光ファイバは、外径0.125mmのガラスとそのガラスの周囲を覆った被覆とから構成されており、被覆付きの状態となっている。つまり、光ファイバを接続するときには、光ファイバの被覆を除去して、ガラスを露出させる工程が必須である。光コネクタの組立においては、光ファイバの被覆を除去して、ガラス部のみをフェルールの細径穴へ挿入する。このフェルールの細径穴は、光ファイバのガラスの外径より僅かに大きい内径を有する。従来の光ファイバ接続器は、細径穴内でガラス部を接着剤により固定し、ガラスを固定したフェルール端面を研磨した後、フェルール同士を割りスリーブ内で突き合わせる構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2561763号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】宇留野重則、他2名、「所内光配線マネジメントシステムにおける経済化MUコネクタ技術」、NTT技術ジャーナル、2003年、第15巻、第10号、p.12−15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイバ通信設備として、光ファイバを高密度に接続する光ファイバ接続端子盤がある(非特許文献1を参照)。斯かる光ファイバ接続端子盤においては、MUコネクタが利用されている。光ファイバ接続端子盤において、光ファイバの接続密度を向上させるためには、MUコネクタの断面積より小さな光コネクタがあれば良い。しかしながら、現状の光コネクタの構造を変えることなく光コネクタを小型化する場合、MUコネクタの構造が小型化の限界である。よって、光ファイバの接続密度を向上させるために、光コネクタの新規な構造を考案する必要がある。
【0007】
光ファイバの接続作業において必須である光ファイバの被覆除去工程を省略することで、接続作業の簡易化を実現することができ、さらに、ガラスの露出に起因する接続作業中の光ファイバの折損を防止することができる。しかしながら、被覆が付いた状態のままで、光ファイバのコア位置を高精度にアライメントすることは難しいという問題があった。
【0008】
例えば、現状の汎用的な光コネクタの構造を採用して寸法のみを変更した場合を考慮し、被覆外径が0.25mm、ガラス外径が0.125mmである汎用シングルモード(SM)ファイバを被覆が付いたままの状態で接続することとする。汎用光ファイバにおいては、被覆外径の許容値が0.25±0.015mmであるので、フェルールの細径穴の内径は0.265mmとする。また、汎用光ファイバにおいては、ガラスと被覆の断面における中心位置の偏心量は0.0125mm未満であれば許容されている。すなわち、被覆外径のみを基準に光ファイバをアライメントすると、フェルールの外径及び細径穴の内径を高精度に作製することができた場合であっても、接続するSMファイバのコア間において、コア径と同等の軸ずれが生じる可能性がある。
【0009】
従って、現状の光コネクタ構造の寸法を変更して、被覆外径を基準に光ファイバをアライメントする方法では、光ファイバを低損失に接続することは難しい。
【0010】
従って、被覆が付いた状態の光ファイバを低損失に接続可能な光コネクタを実現することが従来からの課題としてあった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、光ファイバの接続密度の向上を実現し、さらには、被覆除去工程の不要化による組立作業の簡易化を実現した光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、被覆付き光ファイバを保持するプラグと、被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタとから構成された、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して被覆付き光ファイバを接続する光コネクタであり、プラグは、被覆付き光ファイバを挿通する穴を備えたフェルールであって、穴の径は、被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きいフェルールと、鍔と、被覆付き光ファイバが撓む空間である開口部とを備えたフランジと、クランパを備え、被覆付き光ファイバをクランパの弾性力により保持する光ファイバ把持部とから構成され、プラグに被覆付き光ファイバを挿通するとき、プラグにはキャップが装着された状態であり、アダプタは、フェルールを保持する割りスリーブと、割りスリーブ内で被覆付き光ファイバをアライメントするマイクロホール部材と、プラグを弾性保持するためにフランジの鍔と嵌合する係止片と、割りスリーブ、マイクロホール部材、及び係止片を内蔵するハウジング部材とから構成され、アダプタにおいて2個のプラグはプラグの夫々のフェルールの端面が対向した状態で接続されることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態において、プラグのフランジは、プラグへ被覆付き光ファイバを挿通するとき、開口部に撓み押え部材を装着されて、被覆付き光ファイバが撓まない状態にすることができ、プラグへ被覆付き光ファイバを挿通した後、開口部に装着された撓み押え部材を取り外して、被覆付き光ファイバが撓むための空間が設けられることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態において、アダプタのマイクロホール部材は、外筒部材と、外筒部材に収容された内筒部材とから構成され、外筒部材の筒軸と内径部材との筒軸とは、一致し、内筒部材の内径は、被覆付き光ファイバのガラス外径より僅かに大きいことを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態において、キャップは、フェルールの端面からの被覆付き光ファイバの突き出し長を設定するための穴と、光ファイバ突き当て壁と、フェルールの端面から突き出した被覆付き光ファイバの被覆を切り裂く刃とから構成され、キャップは、プラグへ被覆付き光ファイバを挿通するとき、プラグのフェルール先端に装着されており、被覆付き光ファイバの被覆に切り込みを入れるために使用されることを特徴とする。
【0016】
本発明は、キャップを装着することができ、被覆付き光ファイバを保持するプラグと、被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタとから構成された、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して被覆付き光ファイバを接続する光コネクタを接続する方法であって、被覆付き光ファイバをプラグに挿通するステップであって、プラグには、被覆付き光ファイバの被覆に切り込みをいれるためのキャップが装着されているステップと、キャップをプラグから取り外すステップと、アダプタにおいて2個のプラグを接続するステップとを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の一実施形態において、プラグは、被覆付き光ファイバを挿通する穴を備えたフェルールであって、穴の径は、被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きいフェルールと、鍔と、被覆付き光ファイバが撓む空間である開口部とを備えたフランジと、クランパを備え、被覆付き光ファイバをクランパの弾性力により保持する光ファイバ把持部とから構成され、アダプタは、フェルールを保持する割りスリーブと、割りスリーブ内で被覆付き光ファイバをアライメントするマイクロホール部材と、プラグを弾性保持するためにフランジの鍔と嵌合する係止片と、割りスリーブ、マイクロホール部材、及び係止片を内蔵するハウジング部材とから構成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態において、キャップは、フェルールの端面からの被覆付き光ファイバの突き出し長を設定するための穴と、光ファイバ突き当て壁と、フェルールの端面から突き出した被覆付き光ファイバの被覆を切り裂く刃とから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るプラグは、プラグの構造の簡易化により、光ファイバ接続密度を向上することができる。
【0020】
本発明に係る光コネクタの組立工程において、従来の光コネクタ組立作業で必須であった光ファイバの被覆除去作業を不要化したため、組立作業効率を向上することができる。また、被覆が付いたままの状態で、光ファイバを光コネクタ内へ挿入して組立てることができるため、光ファイバの折損を防止することができ、信頼性の高い組立作業を実現することができる。
【0021】
本発明に係る光コネクタを構成するアダプタ内のマイクロホール部材において、寸法精度に優れたガラスの外径で光ファイバをアライメントするため、従来の光コネクタと同等の低接続損失を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラグを説明するための断面模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプラグを説明するための断面模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る撓み押え部材を説明するための断面模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るプラグを構成する光ファイバ把持部を説明するための断面模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るキャップを装着したプラグを説明するための断面模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るキャップ内に光ファイバが挿入されたときの様子を説明するための断面模式図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光ファイバを挿入したプラグにキャップが装着されたときの様子を説明するための断面模式図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る光ファイバを挿入したプラグを説明するための断面模式図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るアダプタを説明するための断面模式図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るアダプタを構成するマイクロホール部材へ光ファイバが挿入されたときの様子を説明するための断面模式図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る光コネクタを説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0024】
図1に、本発明の一実施形態に係るプラグの断面模式図を示す。
【0025】
プラグ100は、フェルール110と、フェルールを把持するフランジ120と、フランジに連結された光ファイバ把持部130とから構成される。フェルール110は、被覆付き光ファイバが挿通される穴111を有する。フェルール110は、フランジ120へ圧入して接続されている。フランジ120は、プラグ同士をアダプタ内で接続した時に被覆付き光ファイバが撓む空間となる開口部121を有する。開口部121には、被覆付き光ファイバの撓みを押える撓み押え部材を装着することができる(図2を参照)。光ファイバ把持部130は、クランパ131と、クサビ挿入穴132とを有する。なお、座標軸は、図1に示すように設定した。すなわち、x軸方向を被覆付き光ファイバが伸長する方向とし、y軸方向を撓み押え部材が光ファイバを押さえつける方向とし、z軸方向をx軸及びy軸の両軸に垂直な方向とする。座標軸の設定は、本明細書の全ての図面において共通するものとする。
【0026】
図2に、本発明の一実施形態に係るプラグの断面模式図を示す。フランジ120の開口部へ撓み押え部材140が装着されている。開口部において撓む被覆付き光ファイバを、撓み押え部材140によって押さえつける。
【0027】
図3に、撓み押え部材140の断面模式図を示す。撓み押え部材140は、底面に光ファイバ通過溝141を有する。光ファイバ通過溝141の溝の深さは、被覆付き光ファイバの断面直径より大きな値とする。被覆付き光ファイバをプラグへ挿通させるときには、開口部121へ撓み押え部材140を装着する。その結果、被覆付き光ファイバは、撓むことなく、撓み押え部材の光ファイバ通過溝を通過してフェルール先端まで前進することができる。プラグをアダプタへ挿入するときには、撓み押え部材140を抜いて、フランジ内の開口部で光ファイバが撓める空間を形成する。
【0028】
図4に、本発明の一実施形態に係る光ファイバ把持部130の断面模式図を示す。
【0029】
図4(a)に示すように、光ファイバ把持部130は、溝付き基板133と、蓋134と、クランパ131とを備える。断面がコの字形状であるクランパ131により、溝付き基板133と蓋134とを、z軸方向に重ねた状態で保持することができる。光ファイバ把持部130のクランパ131により覆われていない面には、クサビ挿入穴132がある。図4(b)に示すように、光コネクタの後端部からフェルール側へ向けて光ファイバ150を挿通させるときは、クサビ170をクサビ挿入穴134へ挿入することで、溝付き基板133と蓋134との間の隙間を広げる。その結果、被覆付き光ファイバ150が、溝付き基板133と蓋134との間の隙間を通過できる状態となる。光ファイバ150の先端が所定位置まで到達した後で、図4(c)に示すように、クサビ170をクサビ挿入穴132から抜き取り、被覆付き光ファイバ150をクランパ131の力により弾性保持する。
【0030】
図5に、本発明の一実施形態に係るプラグ100へキャップ160を装着したときの断面模式図を示す。被覆付き光ファイバをプラグ100へ挿入するときには、キャップ160がフェルール110に装着されている。キャップ160には、フェルール端面112から被覆付き光ファイバを所定の長さだけ突き出すための穴が設けられている。キャップ160は、フェルール端面112から突き出した被覆付き光ファイバの被覆を切り裂くために使用される。
【0031】
図6(a)に、本発明の一実施形態に係るキャップ160へ被覆付き光ファイバ150の先端が挿入されるときの断面模式図を示す。キャップ160には、キャップ内へ挿入したフェルール端面112の近傍となる位置に、1対の刃161が設置されている。1対の刃161は、その刃先をフェルール側に向ける。図6(b)に示すように、プラグ後端より被覆付き光ファイバ150を挿通させるとき、フェルール端面112から突き出た被覆付き光ファイバ150は、その被覆が刃161により切り裂かれながら突き当て壁162へ向けて進むことになる。
【0032】
図7に、本発明の一実施形態に係る被覆付き光ファイバ150の先端がキャップ160の光ファイバ突き当て壁162と接触したときのプラグ100及び光ファイバ150の断面模式図を示す。図7に示すように、被覆付き光ファイバ150の先端が、キャップ160に設けられた光ファイバ突き当て壁162に接触している。被覆付き光ファイバ150の先端が、光ファイバ突き当て壁162に接触したとき、光ファイバホルダ180と、プラグ100との間の被覆付き光ファイバが撓む。これにより、フェルール端面162から所定の長さだけ被覆付き光ファイバが突き出たことは容易に確認することができる。光ファイバホルダ180と、プラグ100との間の、被覆付き光ファイバ150の撓みを確認した後、クサビ170を抜き取り、被覆付き光ファイバ150を光ファイバ把持部130で保持し、被覆付き光ファイバ150へのプラグ100の装着が完了する。
【0033】
図8に、本発明の一実施形態に係る被覆付き光ファイバ150へ装着したプラグ100からキャップ160を外したときの断面模式図を示す。図8に示すように、被覆付き光ファイバ150は、フェルール端面112から一定の長さだけ突き出た状態となっている。前述したように、被覆付き光ファイバ150のうちの突き出た部分の長さは、キャップによって任意に設定することが可能であり、突き出た部分の光ファイバの被覆は、切り裂かれた状態となっている。撓み押え部材は、フランジ120の開口部121から抜かれている。図8に示す状態のプラグ100をアダプタと接続する。
【0034】
図9に、本発明の一実施形態に係るアダプタ200の断面模式図を示す。アダプタ200は、割りスリーブ210と、マイクロホール部材220と、係止片230と、ハウジング部材240とから構成される。マイクロホール部材220は、割りスリーブ210に収容されている。
【0035】
図10に、本発明の一実施形態に係るマイクロホール部材220へ被覆付き光ファイバ150が挿入されるときの断面模式図を示す。プラグ100をアダプタ200へ挿入したとき、フェルール端面112から突き出た被覆付き光ファイバ150は、マイクロホール部材220へ挿入される。図10に示すように、マイクロホール部材220は、外筒部材221と、外筒部材221の中に収容される内筒部材225とから構成されている。外筒部材221の外径は、フェルール110の外径とほぼ等しい。外筒部材221は、被覆付き光ファイバ150を挿通するための穴を備える。内筒部材225は、外筒部材221と筒軸が一致するように配置される。内筒部材225は、被覆付き光ファイバ150の内側のガラス151のみが挿入されるガラス挿入穴226を有する。外筒部材221の穴の径は、内筒部材225の外径より僅かに大きく、外筒部材221は、内筒部材225を収容することができる。
【0036】
外筒部材221の両端側において、ガラス挿入穴226に挿入されたガラス151から除去された被覆152を退避するための被覆退避穴222が形成されている。キャップを取り外した後のフェルール端面112から突き出た被覆付き光ファイバ150は、被覆が切り裂かれた状態になっている。そのため、プラグ100をアダプタ200へ接続したとき、ガラス挿入穴226の入口で被覆152が除去されながら、ガラス151のみがガラス挿入穴226へ挿入される。ガラス挿入穴226の径を0.1255mm乃至0.126mmの範囲の一値として、ガラス151の外径0.125mmより僅かに大きくなるようにした。この結果、被覆を除去することなくプラグへ装着した光ファイバ同士を接続した場合でも、ガラスを高精度にアライメントできるため、通常の光コネクタと同等の接続損失を実現することができる。
【0037】
図11に、本発明の一実施形態に係る、プラグ100と、アダプタ200とを接続したときの断面模式図を示す。アダプタ200へプラグ100を挿入したとき、フェルール110が割りスリーブ210内へ挿入される。さらにフェルール端面112から突き出た光ファイバ150は、マイクロホール部材220へ挿入される。プラグのフランジの鍔122へアダプタの1対の係止片230が係ることで、プラグとアダプタとの接続は保持される。このとき、光ファイバはフランジの開口部121で撓む。光コネクタは、斯かる撓みにより発生する光ファイバの弾性復元力で光ファイバ端面同士を押圧する構造である。あらかじめ光ファイバ端面を研磨していた場合は、この弾性復元力により光ファイバ端面同士を物理的接触(Physical Contact)接続させて、高反射減衰量を実現することができる。光ファイバ端面を研磨せずに切断したままの状態でプラグを装着する場合は、アダプタのガラス挿入穴へ屈折率整合剤を内蔵させることにより、高反射減衰量を実現する。
【0038】
また、従来技術に係る一般的な光コネクタのプラグは、フェルール等の部品をプラグハウジングやツマミに内蔵して組み立てられる。これに対し、上述した本発明に係るプラグでは、プラグハウジングやツマミを使用しない。このため、プラグのフェルールとして、MUコネクタで使用されているフェルールを使用した場合、現状のMUコネクタと比較して2倍程度の光ファイバ接続密度を実現することができる。
【符号の説明】
【0039】
100 プラグ
110 フェルール
111 穴
112 フェルール端面
120 フランジ
121 開口部
122 鍔
130 光ファイバ把持部
131 クランパ
132 クサビ挿入穴
133 溝付き基板
134 蓋
140 撓み押え部材
141 光ファイバ通過溝
150 被覆付き光ファイバ
151 ガラス
152 被覆
160 キャップ
161 刃
162 光ファイバ突き当て壁
170 クサビ
180 光ファイバホルダ
200 アダプタ
210 割りスリーブ
220 マイクロホール部材
221 外筒部材
222 被覆退避穴
225 内筒部材
226 ガラス挿入穴
230 係止片
240 ハウジング部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆付き光ファイバを保持するプラグと、
前記被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタと
から構成された、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、前記被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して前記被覆付き光ファイバを接続する光コネクタであって、
前記プラグは、
前記被覆付き光ファイバを挿通する穴を備えたフェルールであって、該穴の径は、前記被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きいフェルールと、
鍔と、前記被覆付き光ファイバが撓む空間である開口部とを備えたフランジと、
クランパを備え、前記被覆付き光ファイバを前記クランパの弾性力により保持する光ファイバ把持部と
から構成され、前記プラグに前記被覆付き光ファイバを挿通するとき、前記プラグにはキャップが装着された状態であり、
前記アダプタは、
前記フェルールを保持する割りスリーブと、
該割りスリーブ内で前記被覆付き光ファイバをアライメントするマイクロホール部材と、
前記プラグを弾性保持するために前記フランジの鍔と嵌合する係止片と、
前記割りスリーブ、前記マイクロホール部材、及び前記係止片を内蔵するハウジング部材と
から構成され、前記アダプタにおいて前記2個のプラグは前記プラグの夫々のフェルールの端面が対向した状態で接続されることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記プラグのフランジは、前記プラグへ前記被覆付き光ファイバを挿通するとき、前記開口部に撓み押え部材を装着されて、前記被覆付き光ファイバが撓まない状態にすることができ、前記プラグへ前記被覆付き光ファイバを挿通した後、前記開口部に装着された前記撓み押え部材を取り外して、前記被覆付き光ファイバが撓むための空間が設けられることを特徴とする光コネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記アダプタのマイクロホール部材は、外筒部材と、該外筒部材に収容された内筒部材とから構成され、
前記外筒部材の筒軸と前記内径部材との筒軸とは、一致し、
前記内筒部材の内径は、前記被覆付き光ファイバのガラス外径より僅かに大きいことを特徴とする光コネクタ。
【請求項4】
請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記キャップは、
前記フェルールの端面からの前記被覆付き光ファイバの突き出し長を設定するための穴と、
光ファイバ突き当て壁と、
前記フェルールの端面から突き出した前記被覆付き光ファイバの被覆を切り裂く刃と から構成され、前記キャップは、前記プラグへ前記被覆付き光ファイバを挿通するとき、前記プラグのフェルール先端に装着されており、前記被覆付き光ファイバの被覆に切り込みを入れるために使用されることを特徴とする光コネクタ。
【請求項5】
キャップを装着することができ、被覆付き光ファイバを保持するプラグと、
前記被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタと
から構成された、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、前記被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して前記被覆付き光ファイバを接続する光コネクタを接続する方法であって、
前記被覆付き光ファイバを前記プラグに挿通するステップであって、前記プラグには、前記被覆付き光ファイバの被覆に切り込みをいれるためのキャップが装着されているステップと、
前記キャップを前記プラグから取り外すステップと、
前記アダプタにおいて前記2個のプラグを接続するステップと
を備えたことを特徴とする光コネクタを接続する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の光コネクタを接続する方法において、
前記プラグは、
前記被覆付き光ファイバを挿通する穴を備えたフェルールであって、該穴の径は、前記被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きいフェルールと、
鍔と、前記被覆付き光ファイバが撓む空間である開口部とを備えたフランジと、
クランパを備え、前記被覆付き光ファイバを前記クランパの弾性力により保持する光ファイバ把持部とから構成され、
前記アダプタは、
前記フェルールを保持する割りスリーブと、
該割りスリーブ内で前記被覆付き光ファイバをアライメントするマイクロホール部材と、
前記プラグを弾性保持するために前記フランジの鍔と嵌合する係止片と、
前記割りスリーブ、前記マイクロホール部材、及び前記係止片を内蔵するハウジング部材とから構成されたことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光コネクタを接続する方法において、
前記キャップは、
前記フェルールの端面からの前記被覆付き光ファイバの突き出し長を設定するための穴と、
光ファイバ突き当て壁と、
前記フェルールの端面から突き出した前記被覆付き光ファイバの被覆を切り裂く刃と から構成されたことを特徴とする方法。
【請求項1】
被覆付き光ファイバを保持するプラグと、
前記被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタと
から構成された、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、前記被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して前記被覆付き光ファイバを接続する光コネクタであって、
前記プラグは、
前記被覆付き光ファイバを挿通する穴を備えたフェルールであって、該穴の径は、前記被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きいフェルールと、
鍔と、前記被覆付き光ファイバが撓む空間である開口部とを備えたフランジと、
クランパを備え、前記被覆付き光ファイバを前記クランパの弾性力により保持する光ファイバ把持部と
から構成され、前記プラグに前記被覆付き光ファイバを挿通するとき、前記プラグにはキャップが装着された状態であり、
前記アダプタは、
前記フェルールを保持する割りスリーブと、
該割りスリーブ内で前記被覆付き光ファイバをアライメントするマイクロホール部材と、
前記プラグを弾性保持するために前記フランジの鍔と嵌合する係止片と、
前記割りスリーブ、前記マイクロホール部材、及び前記係止片を内蔵するハウジング部材と
から構成され、前記アダプタにおいて前記2個のプラグは前記プラグの夫々のフェルールの端面が対向した状態で接続されることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記プラグのフランジは、前記プラグへ前記被覆付き光ファイバを挿通するとき、前記開口部に撓み押え部材を装着されて、前記被覆付き光ファイバが撓まない状態にすることができ、前記プラグへ前記被覆付き光ファイバを挿通した後、前記開口部に装着された前記撓み押え部材を取り外して、前記被覆付き光ファイバが撓むための空間が設けられることを特徴とする光コネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記アダプタのマイクロホール部材は、外筒部材と、該外筒部材に収容された内筒部材とから構成され、
前記外筒部材の筒軸と前記内径部材との筒軸とは、一致し、
前記内筒部材の内径は、前記被覆付き光ファイバのガラス外径より僅かに大きいことを特徴とする光コネクタ。
【請求項4】
請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記キャップは、
前記フェルールの端面からの前記被覆付き光ファイバの突き出し長を設定するための穴と、
光ファイバ突き当て壁と、
前記フェルールの端面から突き出した前記被覆付き光ファイバの被覆を切り裂く刃と から構成され、前記キャップは、前記プラグへ前記被覆付き光ファイバを挿通するとき、前記プラグのフェルール先端に装着されており、前記被覆付き光ファイバの被覆に切り込みを入れるために使用されることを特徴とする光コネクタ。
【請求項5】
キャップを装着することができ、被覆付き光ファイバを保持するプラグと、
前記被覆付き光ファイバを保持した2個のプラグを接続するアダプタと
から構成された、被覆付き光ファイバの撓みに起因する弾性復元力により、前記被覆付き光ファイバの端面同士を押圧して前記被覆付き光ファイバを接続する光コネクタを接続する方法であって、
前記被覆付き光ファイバを前記プラグに挿通するステップであって、前記プラグには、前記被覆付き光ファイバの被覆に切り込みをいれるためのキャップが装着されているステップと、
前記キャップを前記プラグから取り外すステップと、
前記アダプタにおいて前記2個のプラグを接続するステップと
を備えたことを特徴とする光コネクタを接続する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の光コネクタを接続する方法において、
前記プラグは、
前記被覆付き光ファイバを挿通する穴を備えたフェルールであって、該穴の径は、前記被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きいフェルールと、
鍔と、前記被覆付き光ファイバが撓む空間である開口部とを備えたフランジと、
クランパを備え、前記被覆付き光ファイバを前記クランパの弾性力により保持する光ファイバ把持部とから構成され、
前記アダプタは、
前記フェルールを保持する割りスリーブと、
該割りスリーブ内で前記被覆付き光ファイバをアライメントするマイクロホール部材と、
前記プラグを弾性保持するために前記フランジの鍔と嵌合する係止片と、
前記割りスリーブ、前記マイクロホール部材、及び前記係止片を内蔵するハウジング部材とから構成されたことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光コネクタを接続する方法において、
前記キャップは、
前記フェルールの端面からの前記被覆付き光ファイバの突き出し長を設定するための穴と、
光ファイバ突き当て壁と、
前記フェルールの端面から突き出した前記被覆付き光ファイバの被覆を切り裂く刃と から構成されたことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−3209(P2013−3209A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131410(P2011−131410)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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