説明

プラグ

【課題】回転操作でアースピンを収納可能な2P3P兼用プラグにおいて、3Pコンセントに対して2Pプラグの状態で使用されるという誤使用を生じにくくする。
【解決手段】プラグ1は、端子11,12及びアースピン13を保持するプラグ本体20と、プラグ本体20に対して回転可能に設けられた本体カバー60とを備え、プラグ本体20に対する本体カバー60の回転位置が第1の位置である場合に、アースピン13が突出し、プラグ本体20に対する本体カバー60の回転位置が第2の位置である場合に、アースピン13がプラグ本体20に収納される。さらに、本体カバー60は、ぜんまいばね80によって第1の位置へ付勢され、プラグ本体20に対する本体カバー60の回転位置が第1の位置である場合には、アースピン13がプラグ本体20に収納されることが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2P3P兼用プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
電源コードのプラグには、2本の端子を備えた2Pプラグと、2本の端子に加えてアースピンを備えた3Pプラグとがある。同様に、プラグを差し込む対象であるコンセントには、2本の端子用の差込穴を備えた2Pコンセントと、2本の端子用の差込穴に加えてアースピン用の差込穴を備えた3Pコンセントとがある。そして、近年では、2Pコンセントに対しては2Pプラグとして、3Pコンセントに対しては3Pプラグとして使用可能な、2P3P兼用プラグも利用されている。
【0003】
2P3P兼用プラグでは、3Pプラグのアースピンが、プラグ本体に収納できるように構成されており、アースピンを収納した状態で2Pプラグとして使用可能となる。ここで、アースピンをプラグ本体に収納する構造としては、アースピンを指で倒すことにより、プラグ本体に形成された溝部にアースピンを収納するタイプのものが知られている。しかしながら、このタイプのプラグは、アースピンを立設方向へ付勢するばねを備えており、2Pプラグとして使用する際には、アースピンを指で倒しつつ、端子を2Pコンセントに差し込む必要があるため、指が端子に触れやすく、安全面で改良の余地があった。
【0004】
そこで、本願出願人は、端子及びアースピンを保持する保持部と、保持部に対して回転可能な外周部とを備え、保持部に対する外周部の回転位置を第1の位置にすることでアースピンを突出させ、第2の位置にすることでアースピンを収納することのできるプラグを既に提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3150975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、2P3P兼用プラグは、アースピンを収納した状態(2Pプラグの状態)で3Pコンセントに差し込むことも可能であるため、3Pコンセントに対して2Pプラグの状態で使用されるという誤使用の可能性がある。しかしながら、前述したように回転操作でアースピンを収納可能なプラグについて、このような誤使用を防止するための構成については従来検討されていなかった。
【0007】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、回転操作でアースピンを収納可能な2P3P兼用プラグにおいて、3Pコンセントに対して2Pプラグの状態で使用されるという誤使用を生じにくくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのプラグは、端子及びアースピンを保持する保持部と、保持部に対して回転可能に設けられた外周部とを備え、保持部に対する外周部の回転位置が第1の位置である場合に、アースピンが突出し、保持部に対する外周部の回転位置が第2の位置である場合に、アースピンが保持部に収納される。さらに、外周部を第1の位置へ付勢する付勢手段と、保持部に対する外周部の回転位置が第1の位置である場合に、アースピンが保持部に収納されることを阻止する阻止手段とを備える。
【0009】
この構成によれば、コンセントに差し込まれておらず、回転操作がされていない状態において、保持部に対する外周部の回転位置が第1の位置となり、しかも、アースピンが保持部に収納されることが阻止される。つまり、3Pプラグとしてそのまま使用可能な状態となる。したがって、3Pコンセントに対して2Pプラグの状態で使用されるという誤使用を生じにくくすることができる。
【0010】
ところで、こうしたプラグやコンセントには、雨天時でも屋外で使用可能な防水仕様のものがある。防水仕様のプラグは、プラグ本体が概略円柱状に形成され、その先端側(端子側)に環状突出部が形成されている。一方、防水仕様のコンセントには、防水仕様のプラグが差し込まれた状態で、そのプラグの環状突出部を外部から覆う環状受部が形成されている。このため、プラグの環状突出部の外周面が、コンセントの環状受部の内周面に全周にわたって密着することで、外部から水が掛かったとしても、その水がプラグとコンセントとの電気的な接続部分まで浸入することが防止される。
【0011】
ただし、防水仕様のコンセントでは、環状受部を基準とした2本の端子の差込穴の位置が、2Pコンセントと3Pコンセントとで異なるため、2P3P兼用プラグを防水仕様にするには、単にアースピンを収納可能とするだけでは足りず、環状突出部を基準とした2本の端子の位置を変更可能とする必要がある。
【0012】
そこで、外周部は、例えば、防水仕様のコンセントの環状受部に対応する環状突出部が、保持部に対する外周部の回転軸に対して偏心した状態で形成されていてもよい。そして、保持部に対する外周部の回転位置が第1の位置である場合に、アースピンが突出するとともに、環状突出部に対する端子の位置が3Pコンセントに対応し、保持部に対する外周部の回転位置が第2の位置である場合に、アースピンが保持部に収納されるとともに、環状突出部に対する端子の位置が2Pコンセントに対応するようにしてもよい。この構成によれば、防水仕様の2P3P兼用プラグにおいて、3Pコンセントに対して2Pプラグの状態で使用されるという誤使用を生じにくくすることができる。
【0013】
ところで、阻止手段は、例えば、外周部の内周面において、内径の異なる内周面の段差によって形成される規制面としてもよい。この構成によれば、阻止手段を別部品で形成する構成と比較して、低コストで実現することができる。
【0014】
そして、このような規制面を備える構成において、例えば、アースピンには、外面から突出する突起が形成され、阻止手段は、突起の移動を規制面によって規制することで、アースピンが保持部に収納されることを阻止するようにしてもよい。このようにすれば、アースピンの移動を規制する構成を、簡素な構成で実現することができる。
【0015】
一方、付勢手段は、例えば、一端が保持部によって保持され、他端が外周部によって保持されたぜんまいばねとしてもよい。この構成によれば、外周部を第1の位置へ付勢する構成を、簡素な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は3P状態のプラグの正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図、(D)はA−A断面図、(E)はB−B断面図、(F)はC−C断面図である。
【図2】(A)は2P状態のプラグの左側面図、(B)はA−A断面図、(C)はB−B断面図、(D)はC−C断面図である。
【図3】(A)は本体部材の平面図、(B)は上方側面図、(C)は下方側面図、(D)はD−D断面図である。
【図4】(A)はアースピンの正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図である。
【図5】(A)は本体カバーの平面図、(B)はE−E断面図、(C)はF−F断面図、(D)はG−G断面図、(E)はH−H断面図、(F)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
図1(A)は電源コード2の先端に装着されたプラグ1の正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図、(D)はA−A断面図、(E)はB−B断面図、(F)はC−C断面図である。
【0018】
プラグ1は、2本の板状の端子11,12と、1本の棒状のアースピン13と、端子11,12及びアースピン13を保持する概略円柱状のプラグ本体20と、プラグ本体20の外側に装着された概略円筒状の本体カバー60とを備える。
【0019】
本体カバー60は、プラグ本体20に対して回転可能に設けられており、本体カバー60を回転操作することによって、アースピン13をプラグ本体20に収納可能に構成されている。本体カバー60が回転可能な範囲は、図1(A)〜(F)に示す第1の位置から、図2(A)〜(D)に示す第2の位置までの範囲(約180度の角度範囲)である。なお、図2(A)は左側面図、(B)はA−A断面図、(C)はB−B断面図、(D)はC−C断面図であり、図1(C)〜(F)にそれぞれ対応する。
【0020】
そして、プラグ1は、本体カバー60を第1の位置にすることで、アースピン13がプラグ本体20から突出した3P状態となり(図1(D))、本体カバー60を第2の位置にすることで、アースピン13がプラグ本体20に収納された2P状態となる(図2(B))。
【0021】
また、プラグ1は、防水仕様のものであり、防水仕様のコンセントの環状受部に対応する環状突出部61が、本体カバー60に形成されている。環状突出部61は、その外縁の中心軸が、プラグ本体20に対する本体カバー60の回転軸からずれた位置となるように設計されている。つまり、環状突出部61は、プラグ本体20に対する本体カバー60の回転軸に対して偏心した状態で形成されている。具体的には、3P状態では、環状突出部61の外縁の中心位置を基準とした端子11,12の位置が3Pコンセントに対応する位置(図1(C))となり、2P状態では、環状突出部61の外縁の中心位置を基準とした端子11,12の位置が2Pコンセントに対応する位置(図2(A))となるように設計されている。
【0022】
次に、プラグ本体20及び本体カバー60の構造について説明する。
プラグ本体20は、複数の部品によって構成されている。具体的には、図1(D)や図2(B)などに示すように、本体カバー60が外周に装着される本体部材30と、端子11,12及びアースピン13を保持する側を覆うように本体部材30に固定された概略円板状の前カバー40と、電源コード2及びアース線3を保持する側を覆うように本体部材30に固定された後カバー50とを備える。
【0023】
図3(A)は本体部材30の平面図(図1(C)や図2(A)に対応する向きから見た図)、(B)は(A)でいう上方から見た側面図、(C)は(A)でいう下方から見た側面図、(D)はD−D断面図である。
【0024】
本体部材30の外面には、本体カバー60を回転可能に支持するための円柱面31が形成されている。また、本体部材30には、アースピン13をその軸方向に収納するための収納穴32が形成されている。収納穴32には、アースピン13が収納されるだけでなく、アースピン13を突出する方向に付勢する(常に力を与える)ためのスプリング71が収納される(図1(D)、図2(B)参照)。そして、円柱面31には、アースピン13の軸方向に沿って収納穴32の内外を連通する連通穴33が形成されている。
【0025】
図4(A)はアースピン13の正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図である。アースピン13は、棒状のアースピン本体14の一端に、ガイドピン15が固定されたものであり、ガイドピン15の一端がアースピン本体14の外面から突出した形状となっている。そして、アースピン13は、ガイドピン15の先端が連通穴33から本体部材30の外部へ突出した状態で、収納穴32に収納される。
【0026】
図5(A)は本体カバー60の平面図(図1(C)や図2(A)に対応する向きから見た図)、(B)はE−E断面図、(C)はF−F断面図、(D)はG−G断面図、(E)はH−H断面図、(F)は底面図である。
【0027】
本体カバー60は、概略円筒状の部材であり、円筒部の一端に環状突出部61が形成され、他端に円筒部よりも径の大きい拡径部62が形成されている。
円筒部の内周面には、基準となる内径に設計された基準内周面63と、基準内周面63の内径よりも大きい内径に設計された凹状内周面64とが形成されている。凹状内周面64は、円筒部の内周面における半周部分において拡径部62側に形成され、これにより、半周に渡って螺旋状に段差が形成されている。つまり、この段差によって、螺旋状の帯状面65が拡径部62側を向いて形成されている。そして、この螺旋状の帯状面65には、本体部材30の連通穴33から突出したガイドピン15が、スプリング71の弾性力によって当接し、これによりアースピン13の突出方向への移動が制限される。このため、本体カバー60を第1の位置から第2の位置へ回転させると、スプリング71の弾性力に反してアースピン13が収納される方向にガイドピン15が案内される。
【0028】
一方、螺旋状の帯状面65の環状突出部61側の端部付近には、環状突出部61側に凹状内周面64が形成されることにより、ガイドピン15の先端部を収容可能な収容空間が形成されており、この収容空間には環状突出部61側を向く規制面66が形成されている。つまり、本体カバー60を第2の位置から第1の位置へ回転させると、ガイドピン15が螺旋状の帯状面65にガイドされて収納空間に到達する。そして、この状態(3P状態)では、アースピン13に対して収納方向への外力(スプリング71の弾性力よりも強い外力)が加わっても、ガイドピン15が規制面66に当接することで、アースピン13の収納方向への移動が規制され、アースピン13がプラグ本体20に収納されることが阻止される。
【0029】
そして更に、本実施形態のプラグ1は、プラグ本体20に対して本体カバー60を第1の位置へ付勢する(常に力を与える)ためのぜんまいばね80を備える。ぜんまいばね80は、本体カバー60の拡径部62の内側において、本体部材30との間に形成される隙間に設けられており、一端が本体部材30の外周面に形成された引掛部34によって保持され、他端が本体カバー60の拡径部62の内周面に形成された引掛部67によって保持される。このため、本体カバー60を第1の位置から第2の位置へ回転させる際には、ぜんまいばね80の弾性力に反して回転操作を行うことになり、回転操作のための外力を解放すると、本体カバー60はぜんまいばね80の弾性力によって第1の位置へ移動する。なお、ぜんまいばね80の弾性力は、プラグ1が2P状態で2Pコンセントに差し込まれた状態で端子11,12がコンセントによって保持される力よりも小さく設計されており、ぜんまいばね80の弾性力によるアースピン13の突出力により、プラグ1がコンセントから抜けてしまうようなことは防止される。
【0030】
以上のように構成された本実施形態のプラグ1は、防水仕様の2P3P兼用プラグとして使用することができる。特に、本実施形態のプラグ1は、本体カバー60が常に第1の位置へ付勢された状態となり、この状態(3P状態)では、アースピン13に外力が加わっても、アースピン13がプラグ本体20に収納されることが阻止される。つまり、通常状態(回転操作のための外力が加わっていない状態)において、3Pプラグとしてそのまま使用可能な状態となる。したがって、例えば防水仕様でない3Pコンセントにプラグ1を差し込むような場合に、2P状態で差し込まれるという誤使用を生じにくくすることができる。
【0031】
しかも、本実施形態のプラグ1では、アースピン13の外面から突出するガイドピン15の移動を、本体カバー60において内径の異なる基準内周面63及び凹状内周面64によって形成される規制面66によって規制することで、アースピン13がプラグ本体20に収納されることを阻止する。更に、一端がプラグ本体20によって保持され、他端が本体カバー60によって保持されたぜんまいばね80によって、本体カバー60が第1の位置へ付勢される。このように、簡素な構成が採用されているため、過剰に大型化することなく、低コストで実現することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、プラグ本体20が保持部に相当し、本体カバー60が外周部に相当し、ガイドピン15が突起に相当し、ぜんまいばね80が付勢手段に相当する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0033】
例えば、プラグ1は、あらかじめ電源コード2に固定された状態で流通するものに限らず、電源コード2とは別に単体で流通し、電源コード2に容易に装着できるように構成してもよい。
【0034】
また、本体カバー60を第1の位置及び第2の位置の少なくとも一方の位置にロックするためのロック機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…プラグ、2…電源コード、3…アース線、11,12…端子、13…アースピン、14…アースピン本体、15…ガイドピン、20…プラグ本体、30…本体部材、31…円柱面、32…収納穴、33…連通穴、34…引掛部、40…前カバー、50…後カバー、60…本体カバー、61…環状突出部、62…拡径部、63…基準内周面、64…凹状内周面、65…帯状面、66…規制面、67…引掛部、71…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子及びアースピンを保持する保持部と、
前記保持部に対して回転可能に設けられた外周部と、
を備え、
前記保持部に対する前記外周部の回転位置が第1の位置である場合に、前記アースピンが突出し、
前記保持部に対する前記外周部の回転位置が第2の位置である場合に、前記アースピンが前記保持部に収納されるプラグであって、
前記外周部を前記第1の位置へ付勢する付勢手段と、
前記保持部に対する前記外周部の回転位置が前記第1の位置である場合に、前記アースピンが前記保持部に収納されることを阻止する阻止手段と、
を備えることを特徴とするプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のプラグであって、
前記外周部は、防水仕様のコンセントの環状受部に対応する環状突出部が、前記保持部に対する前記外周部の回転軸に対して偏心した状態で形成され、
前記保持部に対する前記外周部の回転位置が前記第1の位置である場合に、前記アースピンが突出するとともに、前記環状突出部に対する前記端子の位置が3Pコンセントに対応し、
前記保持部に対する前記外周部の回転位置が前記第2の位置である場合に、前記アースピンが前記保持部に収納されるとともに、前記環状突出部に対する前記端子の位置が2Pコンセントに対応する
ことを特徴とするプラグ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプラグであって、
前記阻止手段は、前記外周部の内周面において、内径の異なる内周面の段差によって形成される規制面である
ことを特徴とするプラグ。
【請求項4】
請求項3に記載のプラグであって、
前記アースピンには、外面から突出する突起が形成され、
前記阻止手段は、前記突起の移動を前記規制面によって規制することで、前記アースピンが前記保持部に収納されることを阻止する
ことを特徴とするプラグ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のプラグであって、
前記付勢手段は、一端が前記保持部によって保持され、他端が前記外周部によって保持されたぜんまいばねである
ことを特徴とするプラグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−45634(P2013−45634A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182748(P2011−182748)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000153786)株式会社畑屋製作所 (6)
【Fターム(参考)】