説明

プラスグレル重硫酸塩及びその薬物組成物並びにその応用

本発明は、構造式は式(II)であるプラスグレル重硫酸塩及びその医薬用組成物並びにその応用を提供する。本発明に提供されたプラスグレル重硫酸塩は良好な安定性、経口吸収性、代謝活性と血小板凝集抑制作用があり、毒性が低いので、有望な進展がある血栓症または塞栓による疾患の予防または治療のための抗凝固薬である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関し、具体的には、ヒドロピリジン誘導体塩であるプラスグレル重硫酸塩及びその製造方法、及びこの化合物を活性成分とする薬物組成物、並びにそれらの血栓症または塞栓による疾患の予防または治療における応用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスグレル(Prasugrel)は、新たなチエノピリジンP2Y12拮抗剤であり、化学名は2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジンであり、構造式は下記の式(I)であり、
【化1】

米国イーライリリー社と日本三共株式会社より共同開発され、現代研究段階にある血小板ADP受容体遮断薬である。研究より、プラスグレルの血栓症を予防する作用はクロピドグレルよりもっと強く、効果発現がもっと早く、効果がもっとよいことが示された。プラスグレル群の患者の薬服用後の血液中の血栓はクロピドグレル群の患者よりもっと少なく、プラスグレル群の患者の虚血イベントの発生率はクロピドグレル群の患者より低いので、プラスグレル血小板凝集阻害作用が顕著かつ速やかである。ジョンズ・ホプキンス大学の研究より、プラスグレルは抗血小板作用におけて明らかにクロピドグレルより潜在力を持っており、プラスグレルはADPより誘導された血小板凝集の抑制における効果が現在認可された投与量のクロピドグレルの効果よりもっと強く、かつプラスグレル臨床研究のコード名がJUMBO-TIMI26の第2段階研究中において、プラスグレルは確かにクロピドグレルよりもっと早い且つ統計性よい血小板抑制作用を表したことが示された。
【0003】
通常、医薬用化合物の使用形態はその薬学的に許容できる塩である。血小板凝集阻害薬、例えば式(I)の化合物に対しても同様であり、この種類の化合物の薬学的に許容できる塩を製造することは特に重要になっている。
【0004】
EP1298132(ヒドロピリジン誘導体の酸付加塩)には、2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジンの塩酸塩とマレイン酸塩、その製造方法及びその抗血栓症における応用が公開されている。この出願の明細書で挙げた薬学的に許容できる酸付加塩のなか、硫酸塩を言及していたが、プラスグレル重硫酸塩は述べていない。
【0005】
EP0542411には、プラスグレルの母核であるヒドロピリジン誘導体及びその互変異性体の製造方法が公開されているが、プラスグレル重硫酸塩及びその製造方法には関与していない。
【0006】
US2004024013には、活性成分として2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4、5、6、7-テトラヒドロチエノ[3、2-c]ピリジンまたはその薬学的に許容できる塩とアスピリンとを含む医薬用組成物が公開されている。
【0007】
なお、実験により、発明者はプラスグレル重硫酸塩の構造と最も近いプラスグレル硫酸塩が非常に不安定で、製造しにくいことに気づいた。従って、より安定で、不良反応の発生率がより低いプラスグレルの医薬用塩を如何に提供するかはもう本分野の解決すべき技術難題になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以往の技術に存在している上記の課題を解決するために、本発明はプラスグレル重硫酸塩を提供した。本発明のプラスグレル重硫酸塩は良好な安定性、経口吸収性、代謝活性と血小板凝集抑制作用があり、毒性が低いので、有望な進展がある血栓症または塞栓による疾患の予防または治療のための抗凝固薬である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明より提供されたプラスグレル重硫酸塩は、下記の式(II)で表される構造を持つ化合物である。
【化2】

【0010】
プラスグレル重硫酸塩は不斉(キラル)炭素原子を持っているので、旋光性がある立体異性体が存在している。本発明の一つの実施形態において、プラスグレル重硫酸塩の各種の光学異性体はそれぞれ独立的な形態または任意の比例で混合した形態で存在することができる。そのなか、プラスグレル重硫酸塩光学異性体は、分割後の原料化合物を使用することにより合成される。
【0011】
プラスグレル重硫酸塩は空気中で放置または製造過程において、水を吸収して水和物を形成する可能性がある。本発明の一つの実施形態において、プラスグレル重硫酸塩はラスグレル重硫酸塩の水和物形態であってもよい。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、プラスグレル重硫酸塩の構造パラメーターは以下のように確認された。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【0013】
本発明は、また、プラスグレル重硫酸塩の製造方法を提供した。本発明のプラスグレル重硫酸塩は、2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン(プラスグレル)と硫酸との反応より製造される。
【化3】

【0014】
本発明のプラスグレル重硫酸塩の製造方法は、
1)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジンを溶媒に溶解する;
2)温度を目的の反応温度まで下げ、攪拌しながら、濃硫酸または濃硫酸と溶媒の混合液を徐々に滴下する;及び
3)完全に反応するまで保温しながら攪拌し続ける;
のステップを含む。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、ステップ2)での反応温度は-50℃〜30℃、反応時間は10分間から24時間である。
【0016】
好ましくは、ステップ2)での反応温度は-35℃〜0℃、反応時間は10分間から8時間である。
【0017】
より好ましくは、ステップ2)での反応温度は-30℃〜-15℃、反応時間は10分間から5時間である。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、プラスグレルと濃硫酸とのモル比は1:1〜1.8である。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、ステップ2)では、濃硫酸または濃硫酸と溶媒との混合液は一回または数回分けて滴下される。
【0020】
本発明のプラスグレル重硫酸塩を製造する方法のステップ1)において、溶媒は芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロ炭化水素、エステル、エテール、ケートン、アルコール及びニトリルの1種または多種であってもよいが、これらの溶媒に限定されるものではない。すべての反応物を溶解させるが本発明のプラスグレル重硫酸塩を製造する反応を妨げない溶媒はいずれも使用されできる。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、ステップ1)での溶媒はベンゼン、トルエン、キシレン、エタン、シクロヘキサン、ジクロルメタン、トリクロロメタン、酢酸エチル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、石油エーテル、アセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、アセトニトリル及びDMFの1種または多種であってもよい。
【0022】
好ましくは、ステップ1)での溶媒はテトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、エチルエーテル及びブタノンの1種または多種であってもよい。
【0023】
より好ましくは、ステップ1)での溶媒はアセトン、エチルエーテル及びメタノールの1種または多種であってもよい。
【0024】
反応終了後、常法を用いて目的産物を得ることができる。本発明の一つの実施形態において、反応終了後、結晶が析出され、ろ過することより産物を得る。
【0025】
本発明の別の実施形態において、反応終了後、溶媒を減圧蒸留し、温度を低下させ、結晶を析出して目的産物を得た。
【0026】
さらに産物を精製するために、再結晶またはカラムクロマトグラフィー法を用いて精製を行うことができる。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、得られた目的産物は各種の結晶形が混合された産物である。単一結晶形の目的産物を製造する場合、反応終了後、目的の単一結晶形産物の種結晶を加え、放置し、結晶を析出させることができる。
【0028】
本発明はさらに、プラスグレル重硫酸塩またはプラスグレル重硫酸塩と、医薬品補助剤とを含む医薬用組成物を提供した。医薬品補助剤は賦形剤、崩壊剤、接着剤、潤沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、芳香剤及び界面活性剤等を含むが、これらに限定されるものではない。すべてのプラスグレル重硫酸塩の活性を影響しない医薬品補助剤を使用できる。
【0029】
本発明の一つの実施形態において、本発明の医薬用組成物は常法を用いて製造することができる。
【0030】
本発明の一つの実施形態において、本発明の医薬用組成物の形態は顆粒剤、カプセル、錠剤、注射液、輸液剤または坐剤などであってもよいが、この数種の形態に限定されるものではない。使用する際、経口投与または非経口投与してもよく、投与量は薬剤によって異なり、成人に対しては、比較的に1日に1-1000mgであることが適当である。経口投与の際、まずこの化合物と通常の医薬品補助剤とを混合させ、これを顆粒剤、カプセル、錠剤等の形態にして投与した。非経口投与の際、注射液、輸液剤または坐剤の形態で投与することができる。上記の製剤を製造する際に、通常の方法を用いて製造することができる。
【0031】
本発明は、プラスグレル重硫酸塩またその医薬用組成物の血栓症または塞栓による疾患の予防または治療用医薬の製造における応用を提供する。
【0032】
本発明は、プラスグレル重硫酸塩またはその医薬用組成物の有効量を治療を必要とする患者に投与することを含む血栓症または塞栓による疾患の予防または治療方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
「有効量」とは、プラスグレル重硫酸塩またはその医薬用組成物が患者の体内で望ましい治療効果を示すことができるプラスグレル重硫酸塩またはその医薬用組成物の投与量を指す。
【0034】
プラスグレル重硫酸塩またはその医薬用組成物は良好な安定性、経口吸収性、生物学的利用能、代謝活性及び血小板凝集抑制作用があり、また毒性が低いので、薬物として血栓症または塞栓による疾患の予防と治療の作用があり、血栓症或塞栓の予防または治療の作用に用いるのが好ましい。上記の薬物は温血動物に広く用いられ、人に用いられることが好ましい。
【0035】
実験より、胃内投与後、プラスグレル重硫酸塩を服用したラットの出血率は、プラスグレルマレイン酸塩を服用したラットより著しく低いことが証明された。これはプラスグレル重硫酸塩を服用した後、出血率が低く、不良反応が少ないことを示めした。実験より、プラスグレル重硫酸塩は、ADPとコラーゲンによるラットの血小板凝集に対して、非常に顕著な抑制作用があり、且つプラスグレルマレイン酸塩と比較して、有意差がないことが証明された。これはプラスグレル重硫酸塩の薬物効果が完全に既存の技術の効果に達し、さらにはプラスグレルマレイン酸塩よりもある程度優れていることを示した。なお、実験より、プラスグレル重硫酸塩は、ビーグル犬の体内における生物学的利用能が、プラスグレル塩酸塩より優れていることも証明された。
【0036】
以下の実施例により、本発明の有効な効果をさらに説明するが、これらの実施例は単に例示のために使用されるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。同時に、当業者が本発明に基づいて明らかな変更や修正を行ってなるものも本発明の範囲に含まれるものである。本発明に記載された参考文献については、そのすべての文献の全文を引用することにより本明細書に組み込まれる。
【実施例1】
【0037】
実施例1 化合物(II)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン重硫酸塩の製造
精製した2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン8gをアセトン50mlに溶解し、温度を-32〜-28℃まで下げ、反応温度を制御して、攪拌しながら、濃硫酸2.5mlを1.5時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後保温攪拌しながら4時間反応し続けた。この時大量の結晶が析出され、結晶がもう析出されない時に反応を停止させ、ろ過し、冷凍したアセトンでろ過ケーキを洗浄し、ろ過ケーキを60℃で真空乾燥して、白色結晶8.2gを得た。収率は78%であった。
結晶の融点は:mp:145-148℃
結晶の構造の確認:
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【実施例2】
【0038】
実施例2 化合物(1)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン重硫酸塩の製造
2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン8gをアセトン50mlに溶解し、温度を-14〜-16℃まで下げ、反応温度を制御し、攪拌しながら、濃硫酸2.5mlとアセトン30mlとの混合液を二回分けて滴下し、10分間で18mlを滴下した。保温しながら1.5時間攪拌した。再び余りの硫酸液を1時間かけて滴下し、保温しながら3時間攪拌し、ろ過して析出された結晶を得た。冷凍したアセトンでろ過ケーキを洗浄し、ろ過ケーキを60℃で真空乾燥して、白色結晶7.6gを得た。収率は72.3%であった。
結晶の融点は:mp:148-155℃
結晶の構造の確認:
【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【実施例3】
【0039】
実施例3 化合物(II)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン重硫酸塩の製造
精製した2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン8gをエチルエーテル100mlに溶解し、温度を-48〜-30℃まで下げ、反応温度を制御し、攪拌しながら、濃硫酸2.6mlを2時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後保温攪拌しながら1.5時間反応し続けた。この時大量の結晶が析出され、結晶がもう析出されない時に反応を停止させ、ろ過し、冷凍したエチルエーテルでろ過ケーキを洗浄し、ろ過ケーキを20℃で真空乾燥して、白色結晶7.4gを得た。収率は70.4%であった。
【実施例4】
【0040】
実施例4 化合物(II)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン重硫酸塩の製造
精製した2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン8gをエチルエーテル100mlに溶解し、温度を-35〜-5℃まで下げ、反応温度を制御し、攪拌しながら、濃硫酸2.6mlを1.5時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後保温攪拌しながら2時間反応し続けた。この時大量の結晶が析出され、結晶がもう析出されない時に反応を停止させ、ろ過し、冷凍したエチルエーテルでろ過ケーキを洗浄し、ろ過ケーキを20℃で真空乾燥して、白色結晶6.9gを得た。収率は65.6%であった。
【実施例5】
【0041】
実施例5 化合物(II)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン重硫酸塩の製造
精製した2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン8gをエチルエーテル100mlに溶解し、温度を-15〜0℃まで下げ、反応温度を制御し、攪拌しながら、濃硫酸2.6mlを1時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後保温攪拌しながら0.5時間反応し続けた。この時結晶が析出され、結晶がもう析出されない時に反応を停止させ、ろ過し、冷凍したエチルエーテルでろ過ケーキを洗浄し、ろ過ケーキを20℃で真空乾燥して、白色結晶5.6gを得た。収率は53.3%であった。
【実施例6】
【0042】
実施例6 化合物(II)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン重硫酸塩の製造
精製した2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン8gをアセトン50mlに溶解し、温度を-45〜-40℃まで下げ、反応温度を制御し、攪拌しながら、濃硫酸2.6mlとアセトン30mlとの混合液を1時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後保温攪拌しながら2時間反応し続けた。この時大量の結晶が析出され、結晶がもう析出されない時に反応を停止させ、ろ過し、冷凍したアセトンでろ過ケーキを洗浄し、ろ過ケーキを60℃で真空乾燥して、白色結晶8.1gを得た。収率は76.1%であった。
【実施例7】
【0043】
実施例7 化合物(II)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン重硫酸塩の製造
精製した2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン8gをアセトン50mlに溶解し、温度を-35〜-10℃まで下げ、反応温度を制御し、攪拌しながら、濃硫酸2.6mlとアセトン30mlとの混合液を1.5時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後保温攪拌しながら2時間反応し続けた。この時大量の結晶が析出され、結晶がもう析出されない時に反応を停止させ、ろ過し、冷凍したアセトンでろ過ケーキを洗浄し、ろ過ケーキを60℃で真空乾燥して、白色結晶7.7gを得た。収率は73.3%であった。
【実施例8】
【0044】
実施例8 化合物(II)2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン重硫酸塩の製造
精製した2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル基-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-C]ピリジン8gをアセトン50mlに溶解し、温度を0〜15℃まで下げ、反応温度を制御し、攪拌しながら、濃硫酸2.6mlとアセトン30mlとの混合液を1時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後保温攪拌しながら2時間反応し続けた。この時大量の結晶が析出され、結晶がもう析出されない時に反応を停止させ、ろ過し、冷凍したアセトンでろ過ケーキを洗浄し、ろ過ケーキを60℃で真空乾燥して、白色結晶6.8 gを得た。収率は64.9%であった。
【実施例9】
【0045】
実施例9 プラスグレル重硫酸塩の生物学的利用能の測定
約7ヵ月齢、体重に統計学的差異がない健康な雄性ビーグル犬6匹を実験前に2週間正常飼育し、且つどの薬も服用させなかった。ビーグル6匹をランダムにプラスグレル重硫酸塩群と、プラスグレル塩酸塩群に分け、各群 3匹とした。中国特許CN1214031の試験例1で公開された測定方法によって、薬投与後の各群犬の血漿中S-メチラート(methylate)の薬物動態学的パラメーター(2群の投与量はいずれも10mg/kgである)を測定した。
試験結果から、プラスグレル重硫酸塩群はプラスグレル塩酸塩群と比較して、有意差があることが示され、プラスグレル重硫酸塩のビーグル犬体内における生物学的利用能はプラスグレル塩酸塩より優れていることを示した。
【表19】

【実施例10】
【0046】
実施例10 プラスグレル重硫酸塩のラット血小板凝集に対する抑制作用
1.群分けと薬の投与
魯南製薬実験動物センターより提供された重量200-300gの雄性SDラット30匹をランダムに5群に分け、各群10匹とし、一週間予備飼育した。賦形剤群(同じ体積の生理食塩水)、プラスグレルマレイン酸塩群(10mg/kg)、プラスグレル重硫酸塩群(10mg/kg)に1日1回、計7日胃内投与した。
【0047】
2.指標の測定
2.1血小板凝集抑制作用の測定
上記のように薬投与2日後の動物に、夜間絶食させて、翌日薬投与1時間後にウレタンを腹腔内注射して麻酔した後、開腹し腹部大動脈を分離し、ポリエチレンチューブを挿入して血液5mlを取って試験管内(管内には、抗凝固剤と血液の比が1:9になるように3.8%クエン酸ナトリウム溶液0.5mlを事前に入れた)に入れた。全血液を1000回転/分間で4min遠心して、多血小板血漿(PRP)1mlを取った。再び余りの液を3000回転/分間で8min遠心して、乏血小板血漿(PPP)1mlを取り、二つのプラスチック試験管内に分配した。調整後温度を(37±0.1)℃に保つ。ADP(30ul/チューブ)とコラーゲン(30ul/チューブ)を用いて凝集誘導剤とし、最大凝集強度を測定し、その抑制率を計算した。
凝集抑制率=(賦形剤群の凝集強度-試験群の凝集強度)/賦形剤群の凝集強度×100%
【0048】
2.2出血率の測定
凝集抑制率を測定した後、ラットを殺して、解剖し、拡大鏡によって胃粘膜充血、浮腫、出血状況を観察して、胃粘膜充血、浮腫、出血の現象があるラットを対応する実験群の胃粘膜出血例に記入した。
【0049】
3.試験結果
表2から、プラスグレル重硫酸塩はADPとコラーゲンによるラット血小板凝集に対して非常に顕著な抑制作用があり、プラスグレルマレイン酸塩と比較して有意差がないことが分かる。これはプラスグレル重硫酸塩の薬物効果が完全に既存の技術の効果に達し、さらにプラスグレルマレイン酸塩より優れていることを示した。
表3から、胃内投与後、プラスグレル重硫酸塩群の出血率はプラスグレルマレイン酸塩群より著しく低いことが分かる。これはプラスグレル重硫酸塩を服用した後、出血率が低く、不良反応が少ないことを示した。
【表20】

【表21】

【実施例11】
【0050】
実施例11 プラスグレル重硫酸塩錠剤の製造
プラスグレル重硫酸塩 10g
予糊化澱粉1500 75g
微結晶セルロース102 20g
ステアリン酸マグネシウム 1g
製造工程:上記の原料を100メッシュの篩に通し、処方量の原料と補助剤を量り取って、均一に混合し、直接に打錠して得た。
【実施例12】
【0051】
実施例12 プラスグレル重硫酸塩錠剤の製造
プラスグレル重硫酸塩 10g
カルボキシメチル澱粉ナトリウム 10g
ラクトース80 80g
ステアリン酸マグネシウム 1g
製造工程:上記の原料を100メッシュの篩に通し、処方量の原料と補助剤を量り取って、均一に混合し、直接に打錠して得た。
【実施例13】
【0052】
実施例13 プラスグレル重硫酸塩カプセルの製造
プラスグレル重硫酸塩 25g
微結晶セルロース 120g
β-シクロデキストリン 20g
微粉シリカゲル 2g
製造工程:まず、プラスグレル重硫酸塩とβ-シクロデキストリンをすり鉢に入れ、研磨して均一に混合し、微結晶セルロース、微粉シリカゲルを順に加えて、均一に混合し、カプセル殻に装填して得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(II)で表されるプラスグレル重硫酸塩であって、
単一の光学異性体または任意の比例で混合した各光学異性体の混合物、またはプラスグレル重硫酸塩の水和物である、プラスグレル重硫酸塩。
【化4】

【請求項2】
以下のステップを含むことを特徴とする、プラスグレル重硫酸塩の製造方法。
1)プラスグレルを溶媒に溶解する;
2)温度を目的の反応温度まで攪拌して下げ、攪拌しながら、濃硫酸または濃硫酸と溶媒の混合液を徐々に滴下する;及び
3)完全に反応するまで保温しながら攪拌し続ける。
【請求項3】
ステップ2)での反応温度は-50℃〜30℃、反応時間は10分間〜24時間であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ2)での反応温度は-35℃〜0℃、反応時間は10分間〜8時間であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ2)での反応温度は-30℃〜-15℃、反応時間は10分間〜5時間であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プラスグレルと濃硫酸とのモル比は1:1〜1.8であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ステップ1)での溶媒はベンゼン、トルエン、キシレン、エタン、シクロヘキサン、ジクロルメタン、トリクロロメタン、酢酸エチル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、石油エーテル、アセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、アセトニトリル及びDMFから選ばれる1種または多種であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
ステップ1)での溶媒はテトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、エチルエーテル及びブタノンから選ばれる1種または多種であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ1)での溶媒はアセトン、エチルエーテル及びメタノールから選ばれる1種または多種であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ2)では、濃硫酸または濃硫酸と溶媒との混合液を一回または数回分けて滴下することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載のプラスグレル重硫酸塩またはプラスグレル重硫酸塩と医薬品補助剤を含むことを特徴とする、薬物組成物。
【請求項12】
薬物組成物の形態は顆粒剤、カプセル、錠剤、注射剤または坐剤であることを特徴とする、請求項11に記載の薬物組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のプラスグレル重硫酸塩の血栓症または塞栓による疾患の予防または治療のための薬物における応用。
【請求項14】
請求項1に記載のプラスグレル重硫酸塩の有効量を治療を必要とする患者に投与することを含む血栓症または塞栓による疾患の予防または治療方法。

【公表番号】特表2011−529859(P2011−529859A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520304(P2011−520304)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000860
【国際公開番号】WO2010/015144
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(509230458)ルナン ファーマシューティカル グループ コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】