説明

プラスチックコンポーネントの組立体を溶接するために抵抗インプラントを配置するシステム及び方法

抵抗インプラント材料を第1のプラスチックコンポーネント上に位置決めするインプラントアプリケータ及び方法。第1のプラスチックコンポーネントは、第1のプラスチックコンポーネントと第2のプラスチックコンポーネントとの間に抵抗インプラント溶接部を形成するために用いられる。抵抗インプラント材料を加熱してこれを第1のコプラスチックコンポーネントの標的表面に押し付け、それにより抵抗インプラントを定位置に仮留めする。第2のプラスチックコンポーネントを仮留めされた抵抗インプラント及び公知の仕方で形成された溶接部上に位置決めする。抵抗インプラント材料を第2の部材によって第1のコプラスチックコンポーネントに押し付ける前に電流を抵抗インプラント材料に流すことによって、或いは、抵抗インプラント材料を第1のコプラスチックコンポーネントに押し付ける前に抵抗インプラント材料を別個に加熱された表面に接触させることによって抵抗インプラント材料を仮留めのために加熱するのが良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックコンポーネントの組立体のための抵抗インプラント溶接に関する。本発明は、特に、プラスチックコンポーネントの組立体を溶接するために抵抗インプラントを配置するインプラントアプリケータ及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂のコンポーネント、例えばガラス繊維強化ポリプロピレン等で作られたコンポーネントを同一、又は略同一の種類の熱可塑性樹脂材料で作られた他のコンポーネントに接合しなければならない場合がある。一般に、このような接合は、接着剤、機械的締結具、レーザ溶接、音波(超音波)圧接及び/又は振動溶接によって達成されているに過ぎず、これら方法の各々には幾つかの欠点がある。
【0003】
プラスチックコンポーネントを互いに接合するための公知の方法に関する1つの共通の問題は、ガラス繊維強化ポリプロピレンコンポーネントを互いに接着するには低表面エネルギー接着剤(low energy surface adhesive :LESA)を用いなければならないことである。LESAは、高価であり、典型的には長い硬化時間を必要とし、更にこれらが硬化している間、望ましくないヒューム(煙霧)を生じさせる場合がある。これらの要因が、LESAによって接合される組立体の製造費が高くつく原因となっている。
【0004】
プラスチックコンポーネントを互いに接合する公知の方法に関するもう1つの共通の問題は、プラスチックコンポーネントと機械的締結具の接合の結果として、接合強度が低くなること、機械的締結具がコンポーネントを特定の場所でしか互いに連結できないこと、取付けに係る人件費が高くつくことである。更に、このような公知の機械的締結具は、機械的破損を生じやすく、その結果、コンポーネントの組立体が破損する場合がある。
【0005】
プラスチックコンポーネントを互いに接合する公知の方法に関する別の共通の問題は、プラスチックコンポーネントを互いに接合するために用いられるレーザ溶接では、コンポーネントの少なくとも一方がこのプロセスを実施するためのレーザエネルギーに対して少なくとも部分的に透明でなければならないことである。これにより、材料の種類、接合されるべきコンポーネントの仕上がり及び色が制限される。更に、レーザ溶接は、線型工程であり、この結果、長い接合部を得るには相当長い時間が必要な場合がある。というのは、レーザが接合部長さ全体にわたって移動しなければならないからである。更に、レーザ溶接法では、ガラス繊維によるレーザエネルギーの散乱に起因して、熱可塑性材料に添加できるガラス繊維の量が制限される。このため、レーザ溶接により接合されたプラスチックコンポーネントの機械的性質は、著しく制限される場合がある。
【0006】
プラスチックコンポーネントを互いに接合するために振動溶接が採用される場合もある。公知の振動溶接に関する共通の問題は、振動溶接がプロフィールを変更しない平べったい接合部を作ることに制限されることである。このため、振動溶接の使用は、多くの所望の組立体にとって制約度が高すぎる場合が多い。音波圧接にも同様な問題があり、音波圧接は、典型的には、比較的短い接合部を作るのに制限され、しかも関連の設備費が高い。
【0007】
最近では、公知の抵抗インプラント溶接によりプラスチックコンポーネント、例えばガラス繊維強化ポリプロピレンコンポーネント等を互いに接合することに関心が向けられている。一般に、導電性インプラントを接合されるべき2つのコンポーネント相互間に位置決めし、インプラントに接触しているコンポーネントの領域に圧力を加える。次に、電流をインプラントに流してインプラントがインプラントに隣接しているコンポーネントの材料を加熱して溶かすようにする。コンポーネントの溶融部分は、加えた圧力下で互いに混ざり合う。電流を切り、インプラント及びコンポーネントを冷却すると、コンポーネント相互間には溶接部が作られる。溶接プロセスのサイクル時間を1秒未満とすることができる。抵抗インプラント溶接は、プラスチックコンポーネントを接合する他の方法と比較して多くの利点をもたらすが、このような抵抗インプラント溶接にも、接合されるべきコンポーネント相互間における抵抗インプラントの配置及び保持が達成困難であると共に/或いは大きな労働力を要し、しかもそのサイクル時間が望ましくないほど長いという欠点がある。
【0008】
一般に、抵抗インプラント溶接の通常の方法が、ベーツ,タン,ツァック及びマー(Bates, Tan, Zak and Mah),「レジスティブ・インプラント・ヴェルディング・オブ・グラス・ファイバ・リインフォースド・ポリプロピレン・コンパウンズ(Resistive Implant Welding of Glass Fiber Reinforced Polypropylene Compounds)」,エスエーイー・テクニカル・ペーパーズ(SAE Technical Papers),ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ(Society of Automotive Engineers)発行,文書番号2006‐01‐0332に記載されており、この論文の内容を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。現在知られている抵抗インプラントの1つは、直径0.009インチ(0.2286mm)の線材が1インチ(25.4mm)につき線材16本の平織りで織成された状態のステンレス鋼メッシュで作られている。このインプラントを接合されるべきコンポーネントの2つの表面相互間に位置決めし、圧力をインプラントに隣接したコンポーネントに加える。電流をインプラントに流し、ステンレス鋼メッシュに流れた電流により、熱が生じ、この熱は、加えた圧力と相俟って、電流が切れこの溶接部が冷えると、2つの表面相互間に溶接部を形成する。この公知の方法の結果として、コンポーネント相互間に良好な溶接部が得られるが、インプラントを所望の位置に位置決めし、このインプラントを加熱及び接合中、その位置に維持することは、困難であり且つ大きな労働力を要することが判明した。これは、溶接部が曲線、異形変化部等を含む場合のある複雑な幾何学的形状の接合線に沿って形成されるべき場合に特に当てはまる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ベーツ,タン,ツァック及びマー(Bates, Tan, Zak and Mah),「レジスティブ・インプラント・ヴェルディング・オブ・グラス・ファイバ・リインフォースド・ポリプロピレン・コンパウンズ(Resistive Implant Welding of Glass Fiber Reinforced Polypropylene Compounds)」, エスエーイー・テクニカル・ペーパーズ(SAE Technical Papers), ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ(Society of Automotive Engineers)発行, 文書番号2006‐01‐0332
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、プラスチックコンポーネントの組立体を溶接するために抵抗インプラントを位置決めすると共に仮留めする改良型インプラントアプリケータ及び方法であって、上述の欠点を実質的になくし又は軽減し、しかも抵抗インプラント溶接をサイクル時間に制約のある大量生産技術に供するようにするのを助ける改良型インプラントアプリケータ及び方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、抵抗インプラントを別のプラスチックコンポーネントの間に抵抗インプラント溶接部を形成するために用いられる第1のプラスチックコンポーネント上に位置決めするインプラントアプリケータ及び方法に関する。改良型インプラントアプリケータは、抵抗インプラント溶接部により第2のプラスチックコンポーネントに接合されるべき第1のプラスチックコンポーネント上に抵抗インプラントを位置決めして仮留めするために用いられる。インプラントアプリケータは、抵抗インプラント材料の供給部材と、抵抗インプラント材料を供給部材から案内する第1の部材と、抵抗インプラント材料を供給部材及び第1の部材から第1のプラスチックコンポーネントに押し付ける第2の部材と、供給部材と第2の部材との間の抵抗インプラント材料を加熱する電気装置とを有する。第2の部材が抵抗インプラント材料を第1のプラスチックコンポーネントに押し付けると、抵抗インプラント材料は、第1のプラスチックコンポーネント上の定位置に仮留めされ、それにより抵抗インプラントが形成される。
【0012】
抵抗インプラント材料を加熱してこれを第1のコプラスチックコンポーネントの1つの表面に押し付けると、第2のプラスチックコンポーネントを仮留めされた抵抗インプラント及び公知の仕方で形成された溶接部上に位置決めする。抵抗インプラント材料を第2の部材によって第1のコプラスチックコンポーネントに押し付ける前に電流を抵抗インプラント材料に流すことによって、或いは、抵抗インプラント材料を第1のコプラスチックコンポーネントに押し付ける前に抵抗インプラント材料を別個に加熱された表面に接触させることによって抵抗インプラント材料を仮留めのために加熱するのが良い。抵抗インプラント材料は、従来型抵抗インプラントであって良く、例えば、ステンレス鋼線材のメッシュ等又は当業者にとって想定できる任意他の適当な抵抗インプラント材料である。
【0013】
本発明の別の利用分野は、以下に行われる詳細な説明から明らかになる。詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、説明の目的のために過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明の内容は、詳細な説明及び添付の図面からより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の抵抗インプラントのアプリケータの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態についての以下の説明は、性質上、例示に過ぎず、本発明、その用途又は使用を限定するものではない。
【0016】
図1を参照すると、本発明の実施形態としてのインプラントアプリケータが全体を符号20で示されている。インプラントアプリケータ20は、抵抗インプラント材料24を供給する供給部材22、少なくとも1つの第1の部材26、少なくとも1つの第2の部材28及び抵抗インプラント材料24を加熱する電気装置30を有している。抵抗インプラント材料24を供給部材22に巻き付けるのが良く、例えば、リール、スプール等に巻き付けるのが良く、このような抵抗インプラント材料は、所望長さにあらかじめ切断されていても良く又は動作中、必要に応じて所定長さに切断されても良い。抵抗インプラント材料24は、導電性であり、ステンレス鋼メッシュ、例えば1インチ当たり16本の線材の平織りで織成された線材又は本発明で使用されるのに適した他の抵抗インプラント材料で形成される。
【0017】
第1の部材26は、供給部材22から間隔をおいて位置しており、この第1の部材は、供給部材26から供給された抵抗インプラント材料24を例えばローラ、筒状部材等として形成された第2の部材28に選択的に案内する中間部材として形成されている。第1の部材26は、少なくとも一部が導電性材料、例えば銅、ステンレス鋼等で作られており、この第1の部材は、抵抗インプラント材料24を案内することができる第1の外面26a、例えば実質的に滑らかな表面を有している。第1の部材26は、好ましくは、ローラとして形成され、このローラは、その中心軸線回りに、例えば第1の回転矢印25で示されているように反時計回りの方向に回転可能である。これは、第1の部材26が抵抗インプラント材料24を第2の部材28に向かって案内しているときに抵抗インプラント材料24を全体としてピンと張った状態に保つのに役立つ。インプラントアプリケータ20は、第1の部材26と関連し、抵抗インプラント材料24を第1の部材26と接触状態に保つのを助ける案内ローラを更に有するのが良いことが解る。
【0018】
第2の部材28は、全体として第1の部材26に隣接すると共に少なくとも部分的にその下に位置した状態で第1の部材26から間隔をおいて設けられている。第1の部材26の長手方向長さと第2の部材28の長手方向長さは、それぞれの長さを通る長手方向軸線が実質的に互いに平行であるように全体として互いに整列している。抵抗インプラント材料24は、第1の部材26と第2の部材28との間の長さ32にわたってまたがっている。第2の部材28は、抵抗インプラント材料24を第1のプラスチックコンポーネント34に選択的に押し付けるよう例えばローラ、筒状部材等として形成されている。第2の部材28は、少なくとも一部が導電性材料、例えば銅、ステンレス鋼等で作られており、この第2の部材は、抵抗インプラント材料24を第1のプラスチックコンポーネント34に押し付けることができる第2の外面28a、例えば実質的に滑らかな表面を有している。第2の部材28は、好ましくは、ローラとして形成され、このローラは、その中心軸線回りに、例えば、第2の回転矢印27で示されているように反時計回りの方向に回転可能である。これは、抵抗インプラント材料24を全体としてピンと張った状態に保つのに役立つと共に第1のプラスチックコンポーネント34に対する抵抗インプラント材料24の位置決め及び押付けを容易にする。理解されるように、第2の外面28aは、変形例として、抵抗インプラント材料24を定位置に仮留めするよう第1のプラスチックコンポーネント34の全体として互いに反対側に位置する表面に係合する1組の直立した突出部、例えばリブ、ボス、隆起異形部等を有しても良い。さらに、第1のプラスチックコンポーネント34に形成された独特の断面を備える雄型異形特徴部は、溶接条件が不良になるのを回避するのを役立ち得ることは言うまでもない。さらに、第1のプラスチックコンポーネント34は、抵抗インプラント材料24を第1のプラスチックコンポーネント34に仮留めするのを助けるよう溶融可能な直立リブ、ボス、突出部、異形部又は他の特徴部を備えた状態で成形しても良い。
【0019】
第1の部材26及び第2の部材28は、電気装置30に作動的に連結されており、この電気装置は、エネルギー源36、例えば電池又は他の従来型エネルギー源及び電気回路38を有している。電流は、エネルギー源36によって第1の部材26、第2の部材28又は変形例として第1の部材26と第2の部材28の両方に同時に選択的に流される。好ましくは、電流は、第1の部材26を流れ、そして第1の部材26と第2の部材28との間にまたがっている抵抗インプラント材料24の長さ分32に流れ、それにより、抵抗インプラント材料24のこの長さ分32が加熱される。更に、電子制御ユニット等からの信号が第1の部材26及び/又は第2の部材28への印加及び電流の流れを可能にするオン/オフスイッチとして作用することが可能であることがわかる。
【0020】
供給部材22の中央部分並びに参照符号26b,28bでそれぞれ示された第1及び第2の部材26,28の中央部分は、それぞれのロッド21、例えばロッド、管、プレート等に回転的に結合されている。ロッド21は、抵抗インプラント材料24を第1のプラスチックコンポーネント34に仮留めするよう圧力を少なくとも第2の部材28と第1のプラスチックコンポーネント34との間に加えることができる実質的に剛性のシステムを形成するよう互いに作動的に結合されている。インプラントアプリケータ20は、供給部材22、抵抗インプラント材料24、第1の部材26、第2の部材28の一部及び加熱装置30の少なくとも一部を実質的に収容すると共にインプラントアプリケータ20内へのデブリ及びほこりの侵入を阻止するのに役立つという利点をもたらすよう作動的に形成されたハウジングを更に有するのが良いことが解る。更に、インプラントアプリケータ20は、コンポーネントをハウジングに選択的に結合するための1本又は2本以上の追加のロッド21を有するのが良い。さらに、ハウジングは、好ましくは、インプラントアプリケータ20のコンポーネントの点検整備及び操作を可能にすると共に抵抗インプラント材料24及びインプラントアプリケータ20のコンポーネントの交換を可能にするよう二部品構成型ハウジングとして構成されるものとする。
【0021】
第2の部材28は又、少なくとも、回動方向を表す矢印29によって示されているように、全体として供給部材22と第2の部材28との間に延びる長手方向軸線回りに選択的に回動して抵抗インプラント材料24を第1のプラスチックコンポーネント34の輪郭又は特徴部に仮留めするために抵抗インプラント材料24を作動的に差し向け、必要ならばこれを変形させるよう作動的に形成されている。非限定的な例を挙げると、第2の部材28は、抵抗インプラント材料26を変形させて曲線の接線方向に位置合わせし、それにより、形成されるべき溶接部が湾曲部分を含む場合、第2の部材28が抵抗インプラント材料24を所望の丸み等に沿って第1のプラスチックコンポーネント34に仮留めすることができるよう第1の部材26に対して回動可能である。回動可能な第2の部材28は、本発明のインプラントアプリケータ20の精度及び融通性を向上させるのに役立つ。第2の部材28を回動させてこれが第1のプラスチックコンポーネント34の丸み又は他の所望の形状を辿る場合であっても、抵抗インプラント材料24を第2の部材28上に心出しするのを助けるようエッジガイドを第1の部材26と第2の部材28との間に連結するのが良いことが解る。
【0022】
動作原理を説明すると、第2の部材28に接触している抵抗インプラント材料24を第1のプラスチックコンポーネント34に接触させ、インプラントアプリケータ20を抵抗インプラント溶接により第2のプラスチックコンポーネントに接合されるべき第1のプラスチックコンポーネント34の標的表面に隣接した状態で、方向を表す矢印31によって示されているように全体的に前方の方向に動かす。この運動は、インプラントアプリケータ20に取り付けられたほぼ全体が参照符号42で示されたロボットアームにより実施されるのが良い。この運動は、変形例として、インプラントアプリケータ20に取り付けられた取っ手等を持つオペレータによって手動で行われても良い。CNC機械等を用いても良いことが解る。エネルギー源36は、インプラントアプリケータ20の全体として前方運動と実質的に同時に、電流を電気回路38から第1の部材26に流す。第1の部材26と第2の部材28との間にまたがっている抵抗インプラント材料24の長さ分32は、これらの間の電気回路38を構成し又は閉路し、電流がこれを流れることによって加熱される。インプラントアプリケータ20を前方に動かしているとき、第2の部材28を第1のプラスチックコンポーネント34の表面に沿って動かしながら、第2の部材28に接触している加熱状態の抵抗インプラント材料24を第1のプラスチックコンポーネント34の表面に押し付け、それにより抵抗インプラント材料24を定位置に仮留めし、それにより抵抗インプラント溶接部により第2のプラスチックコンポーネントに接合可能な抵抗インプラント44を形成する。
【0023】
第2の部材28が第1のプラスチックコンポーネント34の標的表面の縁部又は端部或いは溶接部を形成しないことが望ましい他の領域に接近すると、第1の部材26と第2の部材28との間に流されている電流を切って長さ分32を放冷させ、その結果、追加の抵抗インプラント材料24が第2の部材28によって定位置に仮留めされることがないようにする。次に、抵抗インプラント材料24を所望の長さに切断して自由端を形成するのが良い。抵抗インプラント44をいったん定位置に仮留めすると、抵抗インプラントは、第2のプラスチックコンポーネントが第1のプラスチックコンポーネント34上の抵抗インプラント44上に位置決めされている間、所望の位置に位置したままである。次に抵抗溶接部を従来の仕方で形成して第1のプラスチックコンポーネント34と第2のプラスチックコンポーネントを互いに接合するのが良い。抵抗インプラント溶接部を形成する一従来方法では、電流を抵抗インプラント44にその各端部のところに設けられている接続部を経て流すことが必要である。抵抗インプラント44を仮留め状態の抵抗インプラント44に流されるべき溶接電流の接続を考慮して各端部のところに自由端を備えた状態で定位置に仮留めするのが良い。他の環境では、1対の孔又はボイドを第1のプラスチックコンポーネント34及び/又は第1のプラスチックコンポーネント34に接合されるべき第2のプラスチックコンポーネントに形成するのが良く、抵抗インプラント44の各端部は、それぞれの孔を覆った状態で定位置に仮留めされる。孔を通って電気接点を延長させてこれを抵抗インプラント44に接触させて電気回路を閉路し、それにより必要な電流をもたらすのが良い。
【0024】
電流を供給部材22と第2の部材28との間又は必要ならば供給部材22と第1の部材26との間に流すのが良いことが解る。電流を供給部材22と第1の部材26との間に流す後者の場合、第2の部材28が抵抗インプラント材料24を第1のプラスチックコンポーネント34の表面に押し付けているときに溶融状態のプラスチックが第2の部材28にくっつくのを阻止するのを助けるために、第2の部材28を粘着性のない非導電性材料で作るのが良く又は粘着性のない非導電性材料、例えばポリテトラフルオロエチレンで被覆するのが良い。抵抗インプラント材料24をインプラントアプリケータ20の2つの箇所、例えば、第1の部材26と第2の部材28との間に流される電流によって加熱することが現時点においては望ましいが、本発明は、これには限定されない。具体的に説明すると、抵抗インプラント材料24が電気発熱体又は電気ヒータ、蒸気供給装置等を含む任意適当な手段によって加熱される第1の部材26及び第2の部材28の少なくとも一方又はこれら両方に接触したときに抵抗インプラント材料24を加熱しても良い。このような形態は、抵抗インプラント44の温度の温度制御具合を向上させることができるということが考えられる。
【0025】
本明細書において用いられている「プラスチック」という用語は、熱可塑性材料一般を含むことが意図されており、このような熱可塑性材料は、これらの機械的性質を改質するために追加の材料、例えばガラス繊維を含むのが良い。上述の説明の幾分かは、ガラス繊維強化ポリプロピレンプラスチックに特に言及しているが、本発明は、この特定の強化熱可塑性材料との併用には限定されない。
【0026】
本発明の説明は、性質上例示に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない変形例は、本発明の範囲に含まれるものである。このような変形例は、本発明の精神及び範囲から逸脱するものと見なされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗インプラント溶接部により第2のプラスチックコンポーネントに接合される第1のプラスチックコンポーネント上に抵抗インプラントを位置決めするインプラントアプリケータであって、
抵抗インプラント材料が巻き付けられた供給部材と、
該供給部材に作動的に連結されると共に少なくとも一部が導電性材料で形成された第1の部材と、
前記供給部材及び前記第1の部材に作動的に連結され、少なくとも一部が導電性材料で形成された第2の部材と、を備え、
第1の部材は、前記抵抗インプラント材料を前記供給部材から前記第2の部材に案内するよう動作可能なローラとして形成され、前記第2の部材は、前記抵抗インプラント材料を前記第1の部材から前記第1のプラスチックコンポーネントに押し付けるよう動作可能なローラとして形成され、
前記インプラントアプリケータの動作中、前記第2の部材が前記抵抗インプラント材料を前記第1のプラスチックコンポーネントに押し付けるのと略同時に前記供給部材と前記第2の部材との間の前記抵抗インプラント材料を加熱する電気装置を有し、前記加熱された抵抗インプラント材料は、前記第1のプラスチックコンポーネント上の定位置に仮留めされるようになる、
ことを特徴とするインプラントアプリケータ。
【請求項2】
前記電気装置は、前記第1の部材と前記第2の部材との間の電気回路を構成するよう前記第1の部材と前記第2の部材との間にまたがる前記抵抗インプラント材料の所与の長さ分を更に有し、前記抵抗インプラント材料は、電流が前記長さ分を通って流れることにより加熱される、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項3】
前記電気装置は、前記第2の部材に先立って前記抵抗インプラント材料の所与の長さ分の少なくとも一部分を通る電流の流れを含む、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項4】
前記第2の部材は、前記抵抗インプラント材料が曲線の接線方向に位置合わせされて前記第2の部材が前記抵抗インプラント材料を前記第1のプラスチックコンポーネントの湾曲部分に沿って前記第1のプラスチックコンポーネントに仮留めすることができるよう前記第1の部材に対して選択的に回動する、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項5】
前記第2の部材は、前記抵抗インプラント材料を前記第1のプラスチックコンポーネントに押し付けるよう前記第1のプラスチックコンポーネントの互いに反対側の表面に係合する直立突出部を有する、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項6】
前記インプラントアプリケータは、ロボットアームに取り付けられ、前記ロボットアームは、前記インプラントアプリケータを前記第1のプラスチックコンポーネントに対して全体として前方に動かす、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項7】
前記インプラントアプリケータを手動で作動させるためにオペレータが持つことができる取っ手を更に有する、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項8】
前記抵抗インプラント材料を加熱する前記電気装置は、電流の流れによって加熱される前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方を含む、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項9】
前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方は、電気ヒータにより加熱される、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項10】
前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方への電圧の印加及び電流の流れを可能にするオン/オフスイッチとして機能する電子制御ユニットを更に有する、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項11】
抵抗インプラント溶接部により第2のプラスチックコンポーネントに接合されるべき第1のプラスチックコンポーネント上に抵抗インプラントを位置決めするインプラントアプリケータであって、
抵抗インプラント材料の供給部材と、
前記抵抗インプラント材料を前記供給部材から案内する第1の部材と、
前記抵抗インプラント材料を前記供給部材及び前記第1の部材から前記第1のプラスチックコンポーネントに押し付ける第2の部材と、
前記供給部材と前記第2の部材との間の前記抵抗インプラント材料を加熱する電気装置とを備え、
前記第2の部材が前記抵抗インプラント材料を前記第1のプラスチックコンポーネントに押し付けると、前記抵抗インプラント材料は、前記第1のプラスチックコンポーネント上の定位置に仮留めされるようになる、
ことを特徴とするインプラントアプリケータ。
【請求項12】
前記抵抗インプラント材料を加熱する前記電気装置は、前記第2の部材に先立って前記抵抗インプラント材料の所与の長さ分の少なくとも一部分を通る電流の流れを含む、
請求項11記載のインプラントアプリケータ。
【請求項13】
前記抵抗インプラント材料を加熱するために電流が前記第1の部材と前記第2の部材との間に流される、
請求項11記載のインプラントアプリケータ。
【請求項14】
前記第1の部材及び前記第2の部材は、ローラである、
請求項11記載のインプラントアプリケータ。
【請求項15】
前記第2の部材は、前記抵抗インプラント材料を前記第1のプラスチックコンポーネントに押し付けるのを助ける直立突出部を有する、
請求項11記載のインプラントアプリケータ。
【請求項16】
前記インプラントアプリケータは、ロボットアームに取り付けられ、前記ロボットアームは、前記インプラントアプリケータを前記第1のプラスチックコンポーネントに対して全体として前方に動かす、
請求項11記載のインプラントアプリケータ。
【請求項17】
前記インプラントアプリケータを手動で作動させるためにオペレータが持つことができる取っ手を更に有する、
請求項11記載のインプラントアプリケータ。
【請求項18】
前記抵抗インプラント材料を加熱する前記電気装置は、電流の流れによって加熱される前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方を含む、
請求項11記載のインプラントアプリケータ。
【請求項19】
前記第2の部材は、前記抵抗インプラント材料が曲線の接線方向に位置合わせされて前記第2の部材が前記抵抗インプラント材料を前記第1のプラスチックコンポーネントの湾曲部分に沿って前記第1のプラスチックコンポーネントに仮留めすることができるよう前記第1の部材に対して選択的に回動する、
請求項1記載のインプラントアプリケータ。
【請求項20】
インプラントアプリケータを作動させて、抵抗インプラント溶接部により第2のプラスチックコンポーネントに接合される第1のプラスチックコンポーネント上に抵抗インプラントを位置決めする方法であって、
抵抗インプラント材料の供給部材を用意するステップと、
前記抵抗インプラント材料を前記供給部材から案内する第1の部材を用意するステップと、
前記抵抗インプラント材料を前記供給部材及び前記第1の部材から前記第1のプラスチックコンポーネントに押し付ける第2の部材を用意するステップであって、前記第2の部材が前記第1のプラスチックコンポーネントの輪郭と作動的に整列するよう前記第1の部材に対して選択的に回動することができるステップと、
前記供給部材と前記第2の部材との間の前記抵抗インプラント材料を加熱する電気装置を用意するステップと、
前記インプラントアプリケータの前記第2の部材を前記第1のプラスチックコンポーネントの標的表面と整列させるステップと、
電流を流して前記供給部材と前記第2の部材との間の前記抵抗インプラント材料を加熱するステップと、
前記インプラントアプリケータを全体として前方方向に動かして前記第2の部材が加熱状態の前記抵抗インプラント材料を前記第1のプラスチックコンポーネントに押し付けると、前記抵抗インプラント材料が前記第1のプラスチックコンポーネント上の定位置に仮留めされて抵抗インプラントを形成するようにするステップと、
前記第2のプラスチックコンポーネントを前記仮留め状態の抵抗インプラント上に位置決めするステップと、
電流を前記抵抗インプラントに流すことにより前記第1のプラスチックコンポーネントと前記第2のプラスチックコンポーネントを接合する抵抗インプラント溶接部を形成するステップと、を備えている、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−506133(P2011−506133A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537217(P2010−537217)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/CA2008/002140
【国際公開番号】WO2009/076749
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(501241575)マグナ インターナショナル インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】