説明

プラスチックシートの作製装置及びその作製方法

【課題】 画像形成手段として従来の電子写真装置を大きく改造することなく用い、良品率の高いプラスチックシートの作製装置及びその作製方法を提供することである。
【解決手段】 フィルムの表面に画像を形成する画像形成部と、コアシートと2つの前記フィルムを積層した積層体を位置決めする位置決め部と、前記積層体をラミネートするラミネート部と、を含んでなり、前記ラミネート部がベルト対と加熱加圧ロール対とを含み、前記ベルト対及び前記加熱加圧ロール対の少なくとも一方の幅が、前記積層体の幅Tに対して0.96T〜1.04Tの範囲であるプラスチックシートの作製装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置によって直接画像形成(記録)されてなるフィルムによりラミネートされたプラスチックシートの作製装置及びその作製方法に関し、より詳細には、顔写真入りキャッシュカードや社員証、学生証、個人会員証、居住証、各種運転免許証、各種資格取得証明等の非接触式又は接触式個人情報画像情報入り情報媒体、さらに医療現場などで用いる本人照合用画像シートや画像表示板、表示ラベルなどに用いられるプラスチックシートの作製装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成技術の発達に伴って、凹版印刷、凸版印刷、平版印刷、グラビヤ印刷及びスクリーン印刷などの様々な印刷法により、同一品質の画像を、大量かつ安価に形成する手段が知られている。そして、このような印刷法は、ICカード、磁気カード、光カード、あるいはこれ組み合わさったカードなど、所定の情報を納め、外部装置と接触又は非接触に交信可能な情報媒体の表面印刷にも多く用いられている。
【0003】
しかしながら、例えば上記スクリーン印刷は、印刷しようとする画像の数に応じた印刷版が多数必要であり、カラー印刷の場合には、さらにその色の数だけ印刷版が必要となる。そのため、これら印刷方法は、個人の識別情報(顔写真、氏名、住所、生年月日、各種免許証など)に個々に対応するには不向きである。
【0004】
上記問題点に対して、現在もっとも主流となっている画像形成手段は、インクリボン等を用いた昇華型や溶融型の熱転写方式を採用したプリンタ等による画像形成方法である。しかし、これらは個人の識別情報を容易に印字することはできるが、印刷速度を上げると解像度が低下し、解像度を上げると印刷速度が低下するという問題を依然抱えている。
【0005】
これに対して、電子写真方式による画像形成(印刷)は、像担持体表面を一様に帯電させ、画像信号に応じて露光し、露光部分と非露光部分との電位差による静電潜像を形成させ、その後、前記帯電と反対(あるいは同一)の極性を持つトナーと呼ばれる色粉(画像形成材料)を静電現像させることにより、前記像担持体表面に可視画像(トナー画像)を形成させる方法で行われる。カラー画像の場合は、この工程を複数回繰り返すこと、あるいは画像形成器を複数並配置することによりカラーの可視画像を形成し、これらを画像記録体に転写、定着(固定化:主に熱による色粉の溶融と冷却による固化)することによりカラー画像を得る方法で行われる。
【0006】
上述のように、電子写真方式では、像担持体表面の静電潜像を画像信号により電気的に形成するため、同じ画像を何度でも形成できるだけでなく、異なる画像に対しても容易に対応でき画像形成することが可能である。また、像担持体表面のトナー画像は、ほぼ完全に画像記録体表面に転移させることができ、像担持体表面にわずかに残存するトナー画像も、樹脂ブレードやブラシ等により容易に除去することができるため、多品種少量生産に向けた印刷物を容易に作製することが可能である。
【0007】
また、上記トナーは、通常、熱溶融性樹脂及び顔料、並びに場合によっては帯電制御剤などの添加剤を溶融混合し、この混練物を粉砕、微粒子化して形成される。さらに、前記電子写真方式における静電潜像は、前記微粒子化されたトナーに比べてかなり高い解像度を持っており、前記スクリーン印刷やインクリボンの熱転写方式の解像度と比べても十分な解像度が期待できる。
【0008】
カラー画像についても、カラートナーとしてシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四原色を用い、これらを混合することにより、理論的に印刷と同様の色を再現できる。また、上記カラートナーでは、トナー樹脂と顔料とを比較的自由に配合できるため、トナーによる画像隠蔽性を増加させることは容易である。
【0009】
一方、前述の電子写真装置を使用して、各種カードの印字を行った例としては以下のものが挙げられる。
例えば、光透過性シートに個人識別情報を印字し、さらに、上記印字は鏡像で行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、光透過性のラミネートシートに関しては、少なくとも一部が2軸延伸ポリエステルフィルム、又はABS、又はポリエステルからなるフィルム/2軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましいが、塩化ビニルでもよい、と記載されているだけである。
【0010】
したがって、この仕様ではフィルムが単なる絶縁体なので、フィルム表面への画像形成材料の転写不良などが起こり、熱転写方式などと同等な解像度を得ることはできない。また、生産性向上に重点をおいたこの装置においては、使用されるラミネートシートはロール状であるため、カード一人分から数人分の異なる印字を行うなどの、緊急又は多品種生産等に対応するためには、多くのロスや無駄を生じてしまう問題がある。
【0011】
さらに、前記フィルムへの画像形成だけでなく、画像が形成されたフィルムとコアとなるコアシート(基材)とを搬送・積層する工程やラミネートする工程の自動化については、検討がほとんどなされておらず、生産性向上の観点から、上記各工程や製造装置を設計する必要がある。
【0012】
また、前記ラミネートの工程を自動化する製造装置としては、例えば、上下一対の入り口側ローラと上下一対の出口側ローラとを平行に担持し、少なくとも下側の入り口ローラと出口側のローラとの間に無端ベルトを掛け渡し、入り口側ローラを加熱装置、出口側ローラを冷却装置とした方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−334265号公報
【特許文献2】特開平2−25331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来カードのような厚みが0.5mm以上あるようなプラスチックシートを作製する場合、通常の無端ベルトをベルト対として使用するラミネート装置においては、上記プラスチックシートが加熱加圧ロール対の圧接部を通過した直後、プラスチックシートの厚みの影響で、プラスチックシートと加熱加圧ロール対とのニップ部の間で無端ベルトが変形を起こしてしまう。
【0014】
この状態を図を用いて具体的に説明する。
図7は、前記プラスチックシートが加熱加圧ロール対の圧接部を通過しているときの状態を示す概略図であり、(a)は通過中の状態をプラスチックシートの進行方向から見た断面、(b)はその時のプラスチックシートにかかっている幅方向(進行方向と垂直の方向)圧力分布、(c)は通過後のプラスチックシートの表面状態を各々示す。
【0015】
図7(a)に示すように、加熱加圧ロール対120通過中のプラスチックシート100と無端ベルト110との接触状態は、プラスチックシート100の厚みと無端ベルト110の剛直性とからプラスチックシート100の両端部において無端ベルト110と若干隙間が開いた状態となっており、このときのプラスチックシート上の圧力分布は図7(b)に示すようになっている。すなわち、プラスチックシート100のシート側面エッジ102付近の圧力が最も高く、側面端部から若干内側に中央部よりも圧力の低い部分が存在する。この圧力の低い部分は、プラスチックシート100が加熱加圧ロール対120を通過した後は、無端ベルト110とプラスチックシート100との密着力の低いところである。このとき、画像が形成されたフィルム表面のオイルの影響等により、この密着力の低い部分に相当するプラスチックシート100のグロスが変化し、図7(c)に示すように作製されたプラスチックシート表面に模様が発生してしまい、不良品になってしまうという問題が生じる。
【0016】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、画像形成手段として従来の電子写真装置を大きく改造することなく用い、良品率の高いプラスチックシートの作製装置及びその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成部と、コアシートを介して、2つの前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め部と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記2つのフィルムでラミネートするラミネート部と、を含んでなるプラスチックシートの作製装置であって、
前記ラミネート部が、少なくとも一部が互いに圧接されニップ部を形成するベルト対と、該ベルト対を介して両側に配置され前記ベルト対を圧接する加熱加圧ロール対と、を含み、前記ベルト対及び前記加熱加圧ロール対の少なくとも一方の幅が、前記積層体の幅Tに対して0.96T〜1.04Tの範囲であるプラスチックシートの作製装置である。
【0018】
本発明では積層体の幅とベルト対及び/または加熱加圧ロール対の幅との関係を上記のように構成しているので、ベルトの変形を生じることがなく、加熱加圧ロール対のニップ部通過時にプラスチックシート(積層体)に均一な圧力が掛かる。したがって、プラスチックシートと無端ベルトとの間に隙間が生じることがなく、プラスチックシート表面の均一なグロスを実現できるプラスチックシートの作製装置を得ることができる。
【0019】
<2> フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成部と、コアシートを介して、2つの前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め部と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記2つのフィルムでラミネートするラミネート部と、を含んでなるプラスチックシートの作製装置であって、
前記ラミネート部が、少なくとも一部が互いに圧接されニップ部を形成するベルト対と、該ベルト対を介して両側に配置され前記ベルト対を圧接する加熱加圧ロール対と、を含み、前記ベルト対の少なくとも一方の前記ニップ部を形成する側の面の両端部に、厚みが前記積層体の厚みDに対して0.6D〜1.2Dの範囲であるリブが、前記リブの間隔が前記積層体の幅Tに対して1.0T〜1.04Tの範囲となるように設置されるプラスチックシートの作製装置である。
【0020】
また、上記のように、ベルト対を構成するベルト表面に特定のリブを設けることにより、ベルトの変形を生じることがなく、加熱加圧ロール対のニップ部通過時にプラスチックシート(積層体)に均一な圧力が掛かる。したがって、プラスチックシートと無端ベルトとの間に隙間が生じることがなく、プラスチックシート表面の均一なグロスを実現できるプラスチックシートの作製装置を得ることができる。
【0021】
<3> フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成工程と、コアシートを介して、2つの前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め工程と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記2つのフィルムでラミネートするラミネート工程と、を含むプラスチックシートの作製方法であって、
前記ラミネート工程が、少なくとも一部が互いに圧接されニップ部を形成するベルト対と、該ベルト対を介して両側に配置され前記ベルト対を圧接する加熱加圧ロール対とにより加熱・加圧を行う工程であり、前記積層体の厚みが0.5〜1mmの範囲であり、かつ前記加熱加圧ロール対の圧接部通過時の積層体の幅方向の下記式(1)で示される圧力分布比が、0.5以下であるプラスチックシートの作製方法である。
(Pmax−Pmin)/Pmax ・・・ 式(1)
(式(1)中、Pmaxは幅方向の最大加圧圧力、Pminは幅方向の最小加圧圧力を表す。)
【0022】
本発明の画像形成方法では、厚みが大きい積層体を加熱加圧ロール対の圧接部に通過させる際、幅方向の圧力分布比を一定の範囲となるようにしているので、ベルトの変形を生じることがなく、プラスチックシートに均一な圧力が掛かる。したがって、プラスチックシートと無端ベルト間に隙間が生じることがなく、プラスチックシートの均一なグロスを実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像形成手段として従来の電子写真装置を大きく改造することなく用い、良品率の高いプラスチックシートの作製装置及びその作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図面を用いて説明する。なお、下記においては本発明のプラスチックシートの作製装置の中に本発明のプラスチックシートの作製方法も含めて説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1のプラスチックシートの作製装置は、フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成部と、コアシートを介して、2つの前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め部と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記2つのフィルムでラミネートするラミネート部と、を含んでなるプラスチックシートの作製装置であって、前記ラミネート部が、少なくとも一部が互いに圧接されニップ部を形成するベルト対と、該ベルト対を介して両側に配置され前記ベルト対を圧接する加熱加圧ロール対と、を含み、前記ベルト対及び前記加熱加圧ロール対の少なくとも一方の幅が、前記積層体の幅Tに対して0.96T〜1.04Tの範囲であることを特徴とする。
本実施形態では、本発明の第1のプラスチックシートの作製装置の一例について説明する。
【0025】
まず、図6に本発明により作製されるプラスチックシートの一例の構成断面図を示す。図6に示すように、プラスチックシートは、コアシート1と画像2、4が形成された表面フィルム3及び裏面フィルム5(共に光透過性フィルム)とが、画像2、4が形成された側の面がコアシート1と各々と対向するように重ねられ、ラミネートされてなる。
【0026】
図1は、本発明の第1のプラスチックシートの作製装置(以下、「第1の作製装置」という場合がある)の一例を示す概略構成図である。
図1に示すプラスチックシートの作製装置は、画像形成装置(フィルム収納部、画像形成部)10、丁合い装置20と、ラミネート装置(ラミネート部)30と、から構成されている。
【0027】
画像形成装置10は、例えば、フィルムスタッカー11(フィルム収納部)と、画像形成部12と、フィルムスタッカー11から画像形成部12へ光透過性フィルムを搬送する搬送路13と、画像形成部12から排出口14へ画像形成後の光透過性フィルムを搬送する搬送路15とから構成されている。その他の構成は省略する。
【0028】
画像形成部12は、図示しないが、潜像を形成する潜像担持体と、該潜像を少なくともトナーを含む現像剤を用いて現像し、トナー画像を得る現像器と、現像されたトナー画像を光透過性フィルムに転写する転写器、光透過性フィルムに転写されたトナー画像を加熱・加圧して定着する定着器などを含む、公知の電子写真方式のカラー画像形成装置で構成されている。この構成により、本発明のプラスチックシートの作製方法における画像形成工程を行なうことができる。
【0029】
搬送路13、15は、駆動ローラ対を含む複数のローラ対やガイド(図示せず)から構成されており、さらに搬送路15には、光透過性フィルムの搬送方向を180°反転させる反転路16が設けられている。搬送路15と反転路16との分岐付近には、光透過性フィルムの案内方向を変更するカム17が設けられている。この反転路16で光透過性フィルムを往復させ、再び搬送路15に戻すと、光透過性フィルムの搬送方向が180°反転されると共に、光透過性フィルムの表裏が反転して搬送される。
【0030】
丁合い装置20は、コアシートスタッカー22と、丁合いトレイ(位置決め部)25、コアシートスタッカー22から丁合いトレイ25へコアシート1を供給する搬送路24と、画像形成装置10の排出口14から排出された光透過性フィルムを、丁合いトレイ25へ供給する搬送路21と、から構成されている。
【0031】
また、コアシートを丁合いトレイ25へ供給する搬送路24の排出部と、光透過性フィルムを丁合いトレイ25へ供給する搬送路21の排出部とは、高さ方向に並列して設けられている。
【0032】
上記搬送路21としては、例えば、平滑な板状部材と、その表面を光透過性フィルムを搬送させるための搬送ロールが設けられた構成であってもよく、また回転するベルト状の搬送体で構成されていてもよい。そして光透過性フィルムが画像形成装置10から排出されるタイミングで搬送ロールやベルトが回転し、光透過性フィルムを丁合いトレイ25に搬送する。
【0033】
また、コアシートスタッカー22には、通常の給紙装置に備えられているようなピックアップロールや給紙ロールが備えられており、丁合いトレイ25がコアシートスタッカー22の排出口の位置に移動した直後のタイミングで給紙ロール等が回転し、丁合いトレイ25にコアシートを搬送する。
【0034】
丁合いトレイ25は、例えば、搬送路24の排出部と搬送路21の排出部とからコアシート及び光透過性フィルムがそれぞれ供給されるように、例えば、その端部の一部が上下(図における上下)に張架されたベルト外壁に連結されており、当該ベルトの回転駆動に伴い昇降するよう構成されている。このような昇降手段に限らず、モーター駆動方式など、公知の昇降手段を適用させることができる。また、図示しないが、図6における積層されたコアシート1及び表面フィルム3、裏面フィルム5の端部を揃えて、位置決めする手段が設けられている(位置決め工程)。
【0035】
丁合いトレイ25には、コアシートを介して2つの光透過性フィルムを積層した積層体を仮止めする仮止め装置26が設けられている。この仮止め装置26は、例えば、ヒータなどにより加熱されるよう金属からなる一対の突片で構成されており、この加熱された一対の突片により積層体の端部を挟むことで、積層体の端部が熱溶着されて仮止めされる。仮止めされた積層体は、次工程のラミネート装置へと搬送される。
【0036】
図2は、ラミネート装置30におけるラミネート部を示す概略構成図である。
ラミネート部は、一対のベルト対(無端ベルト対)31から構成されるベルトニップ方式を採用することにより、プラスチックシートを容易にオンラインで作製できる構成となっている。前記ベルト対31は、一対のテンションロール対32と、一対のインレットロール対35とによりそれぞれ張架された状態で、テンションバネ36によりベルト対31に歪みを生じないように構成されている。
【0037】
そして、ベルト対31の内部には、テンションロール対32とインレットロール対35との間に一対の加熱加圧ロール対34及び冷却ロール対33が、それぞれベルト対31を介して両側から(図における上下方向から)、ベルト対31を圧接するように配置されている。なお、テンションロール対32とインレットロール対35とはそれぞれ圧接させず、ベルト対31間に間隙が設けられるように設置されている。これにより、連続稼動によりベルト対31が蛇行しても、稼動させながらベルトを所定の位置に戻すことが可能である。
【0038】
ベルト対31が蛇行した際に所定の位置に復帰させる方法としては、図示しないが、ベルト対31が所定の位置よりずれないようにストッパーを設置してもよいし、左右に設置したテンションバネのバネ力をコントロールしてベルト対31の蛇行を防止するようにしてもよい。
【0039】
なお、本発明のプラスチックシートの作製装置(作製方法)では、ラミネート部において前記光透過性フィルム(フィルム)のガラス転移温度以上に加熱することによりラミネートが行われる。したがって、ベルト表面の状態がそのままラミネート後の積層体の表面に繁栄される。よって、ベルトの表面はできるだけ平滑で均一であることが好ましく、表面粗さは十点平均粗さRzで0〜5μmの範囲とすることが好ましい。
【0040】
ラミネート部における積層体の熱融着(ラミネート)は、インレットロール対35の下流側に配置された加熱加圧ロール対34により積層体が加熱加圧されることによりなされる(ラミネート工程)。この工程を経ることによって積層体は熱融着されるが、本実施形態では、以下に説明するように、積層体の幅とベルト対31の幅とを概略一致させ、ベルト対31の幅方向の中央と、積層体の幅の中央とが一致するように積層体が加熱加圧ロール対34の圧接部へ突入させることにより、積層体の幅方向に均一に圧力が加わるようになり、積層体表面のグロスを均一化することができる。
【0041】
なお、ここでベルト対31の幅を積層体の幅と概略一致としているのは、ベルト対31としての適切な幅が、積層体の厚み、積層体の幅、積層体の材料、ベルトの材料ベルトの厚み、ラミネート時の圧力条件及び温度条件、ベルトの表面状態と積層体表面状態等の各種条件により変化するからである。
【0042】
本発明においては、電子写真方式による印刷方式を用いて画像情報を印刷し、カード等の厚みが0.5〜1.0mmの範囲程度のプラスチックシートの積層体を作製する場合には、上記すべてのパラメータ条件を勘案しても、積層体の幅(積層体進行方向と垂直方向の長さ)に対し±4%以内のベルト幅であれば十分な品質の積層体を得ることが可能であることがわかった。例えば、A4サイズの積層体であれば、ベルト対31の幅は285〜309mmの範囲が適切な幅となる。
【0043】
すなわち具体的には、積層体の幅Tに対してベルト対31の幅を0.96T〜1.04Tの範囲とする。ベルト対31の幅が0.96Tに満たないと、ベルト幅が短すぎラミネートされない無駄な部分が多くなりすぎてしまう。幅が1.04Tを超えると、積層体の端部にベルト対31と充分に密着しない部分が発生してしまう。
なお、ベルト対31の幅は、0.98T〜1.02Tの範囲であることが好ましく、完全に一致していることがより好ましい。
【0044】
本実施形態においては、前記積層体が所定の大きさのシート状の場合には、前記積層体の幅長に幅をほぼ一致させたベルト対31に対して、積層体の幅がこの幅とほぼ一致するように位置調整して前記ニップ部に突入させる必要がある。具体的には、圧接部突入前にベルト対31の幅方向の中央と、積層体の幅の中央とが合致するように積層体の位置を調整する位置合わせ部が設けられている。前記積層体が連続シート状の場合には、必ずしも前記位置合わせ部は必要ない(以下、第2の実施形態以降も同様である)。
【0045】
図3(a)は、前記位置合わせされて圧接部に突入した状態を、ラミネート部の突入側から見た模式図であるが、図に示すように、加熱加圧ロール対34による圧接部に、積層体40がベルト対31と両端部をほぼ一致させた状態で突入している。このように積層体40の幅がベルト対31の幅とほぼ一致しており、両者の中央を合致させるように圧接部に突入させることで、積層体40の幅方向における圧力のばらつきを小さくすることができ、ラミネート後の積層体表面のむら(模様)の発生を防ぐことができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、ベルト対31の幅方向の中央と積層体の幅の中央が合致するようにニップ部に突入させる必要があるが、この場合、当然ではあるが、ベルト対31の幅方向の中央と加熱加圧ロール対34の幅方向の中央が合致していることが好ましい。これによって、例えば図3(a)に示すようにベルト対31の幅が加熱加圧ロール対34の幅より狭いときには、ベルト対31をロールの中央に配することができ、より安定なラミネートを行うことができる。
【0047】
図3(b)に、図2に示すラミネート部を図面における上側から見た概略図を示す。
本実施形態においては、前記ベルト対31の幅方向の中央と積層体の中央とを合致させて圧接部に突入させるため、ラミネート部への入り口部(図面における下側)に、図3(b)に示すようなガイド(位置合わせ部)39を設置している。
【0048】
ガイド39は、ラミネート部より進行方向手前(図における下側)ではベルト対31の幅Aよりかなり広く開口しているが、インレットロール35の直前で幅がベルト対31の幅Aよりやや広い幅A’となり、かつガイド39の両端部がベルト対31の両端部とほぼ一致するように構成配置されている。このように構成配置することで、ベルト対31の幅方向の端部位置と、圧接部に突入する積層体の幅方向の端部位置とにずれを生じさせず、積層体の全面に渡り均一な加熱加圧を施すことができる。
なお、前記ガイド39の幅A’はベルト対31の幅Aに対して1.0A〜1.04Aの範囲としている。
【0049】
本発明において、位置合わせ部の形態としては前記ガイド39に限られるわけではなく、積層体の幅の中央がベルト対31の幅方向の中央と合致させることができる手段であれば特に制限されるものではない。
【0050】
なお本発明においては、前記位置合わせを行ったときのベルト対31(加熱加圧ロール34)の幅方向の中央と、積層体の幅の中央とのずれは、積層体の幅に対して0〜2%の範囲とすることが好ましい。
【0051】
このようにして、本発明のプラスチックシートの作製装置(作製方法)により積層体のラミネートを行う場合、前記積層体の厚みが0.5〜1mmの範囲であり、かつ前記加熱加圧ロール対の圧接部通過時の積層体の幅方向の下記式(1)で示される圧力分布比は、0〜0.5の範囲となる。
(Pmax−Pmin)/Pmax ・・・ 式(1)
(式(1)中、Pmaxは幅方向の最大加圧圧力、Pminは幅方向の最小加圧圧力を表す。)
【0052】
具体的には、前記Pmaxは図7(b)の圧力分布におけるP点に相当し、PminはQ点に相当する。そして、これらの値から式(1)により求められる圧力分布比が前記範囲であれば、確実にラミネート後の積層体表面の模様発生を防止することができる。
なお、式(1)で表される圧力分布比は0〜0.4の範囲であることが好ましく、0〜0.2の範囲であることがより好ましい。また、積層体の厚みは0.3〜3mmの範囲が好ましい。また、前記Pmax、Pminは、感圧紙等により測定することができる。
【0053】
上記のようにして熱融着された積層体は、図2における加熱加圧ロール対34と冷却ロール対33との間で変形を生じないようにニップされており、平面性を維持したまま冷却ロール対33を通過することとなる。なお、積層体の冷却を促進させるため、ここでは、加熱加圧ロール対34と冷却ロール対33との間に冷却ファン37を設置している(冷却ファン37を設置しない場合は自然冷却となる)。また、連続稼動によるベルト対31の表面の汚れ等を除去するためクリーニング装置38が設置されている。
【0054】
以上のように、本実施形態では積層体に加熱加圧ロール対34の幅方向の圧力が均一に加わることで、積層体表面のグロスを均一化できるので、品質の優れたプラスチックシートが得られる。本発明のプラスチックシートの作製装置により得られたプラスチックシートの、ラミネート後における幅方向のグロス値のばらつきは、A4サイズのプラスチックシートで平均値に対して±10%以下であることが好ましい。
【0055】
なお、上記グロス値のばらつきは、グロスメーターを用いて、75°鏡面反射率をプラスチックシートの幅方向に対して測定することによって求められる。
【0056】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の作製装置の他の一例について説明する。
本実施形態におけるプラスチックシートの作製装置の構成は、加熱加圧ロール対34の幅を積層体の幅とほぼ一致させ、積層体の幅がこの幅とほぼ一致するように位置調整して前記圧接部に突入させる以外は、第1の実施形態で示した構成と同様である。
【0057】
本実施形態では加熱加圧ロール対34の幅(積層体進行方向と垂直方向の長さ)を積層体の幅と概略一致するように構成している。具体的には、積層体の幅Tに対して加熱加圧ロール対34の幅を0.96T〜1.04Tの範囲とする。加熱加圧ロール対34の幅が0.96Tに満たないと、ロール幅が短すぎラミネートされない無駄な部分が多くなりすぎてしまう。幅が1.04Tを超えると、積層体の端部にベルト対31と密着しない部分が発生してしまう。
【0058】
加熱加圧ロール対34の幅は、0.98T〜1.02Tの範囲であることが好ましく、完全に一致していることがより好ましい。
【0059】
なお、上記幅が1.04Tを超えるときの不具合は、ベルト対31の幅が積層体の幅よりかなり大きい場合に発生するものであり、第1の実施形態のように、ベルト対31の幅と積層体の幅とがほぼ一致している場合には、前記不具合は発生しない。また、本発明においては、本実施形態のように加熱加圧ロール34の幅と積層体の幅とがほぼ一致していることに加え、前記ベルト対31の幅も積層体の幅にほぼ一致していても何ら問題はない。
【0060】
本実施形態においては、前記積層体の幅長に幅をほぼ一致させた加熱加圧ロール対34に対して、積層体の幅がこの幅とほぼ一致するように位置調整して前記圧接部に突入させる必要がある。具体的には、ニップ部突入前に加熱加圧ロール対34の幅方向の中央と、積層体の幅の中央とが合致するように積層体の位置を調整する位置合わせ部が設けられている。
【0061】
なお、前記のように加熱加圧ロール34の幅だけでなく、ベルト対31の幅も積層体の幅にほぼ一致している場合は、ベルト対31の幅方向の中央と、積層体の幅の中央とも合致させても(この場合は、積層体、ベルト対31及び加熱加圧ロール34のすべての幅方向の中央が合致することとなる)何ら問題はない。
【0062】
図4(a)は、前記位置合わせされてニップ部に突入した状態を、ラミネート部の突入側から見た模式図であるが、図に示すように、加熱加圧ロール対34による圧接部に、積層体40が加熱加圧ロール対34と両端部をほぼ一致させた状態で突入している。このように積層体40の幅が加熱加圧ロール対34の幅とほぼ一致しており、両者の中央を合致させるように圧接部に突入させることで、積層体40の幅方向における圧力のばらつきを小さくすることができ、ラミネート後の積層体表面のむら(模様)の発生を防ぐことができる。
【0063】
図4(b)に、図2に示すラミネート部を図面における上側から見た概略図を示す。
本実施形態においては、前記加熱加圧ロール対34の幅方向の中央と積層体の中央とを合致させて圧接部に突入させるため、ラミネート部への入り口部(図面における下側)に、図4(b)に示すようなガイド(位置合わせ部)39を設置している。
【0064】
ガイド39は、ラミネート部より進行方向手前(図における下側)では加熱加圧ロール対34の幅Bよりかなり広く開口しているが、インレットロール35の直前で幅が加熱加圧ロール対34の幅Bよりやや広い幅B’となり、かつガイド39の両端部が加熱加圧ロール対34の両端部とほぼ一致するように構成配置されている。このように構成配置することで、加熱加圧ロール対34の幅方向の端部位置と、圧接部に突入する積層体の幅方向の端部位置とにずれを生じさせず、積層体の全面に渡り均一な加熱加圧を施すことができる。
なお、前記ガイド39の幅B’は加熱加圧ロール対34の幅Bに対して1.0B〜1.04Bの範囲としている。
【0065】
(第3の実施形態)
本発明の第2のプラスチックシートの作製装置は、第1の作製装置同様、画像形成部と、位置決め部と、ラミネート部と、を含んでなるプラスチックシートの作製装置であって、前記ラミネート部が、少なくとも一部が互いに圧接されニップ部を形成するベルト対と、該ベルト対を介して両側に配置され前記ベルト対を圧接する加熱加圧ロール対と、を含み、前記ベルト対の少なくとも一方の前記ニップ部を形成する側の面の両端部に、厚みが前記積層体の厚みDに対して0.6D〜1.2Dの範囲であるリブが、前記リブの間隔が前記積層体の幅Tに対して1.0T〜1.04Tの範囲となるように設置されることを特徴とする。
本実施形態では、本発明の第2のプラスチックシートの作製装置(以下、「第2の作製装置」という場合がある)の一例について説明する。
【0066】
本実施形態におけるプラスチックシートの作製装置の構成は、積層体の幅とベルト対の幅との関係は特に限定せず、ベルト対31の少なくとも一方の外周面の両端部にリブを設け、積層体の幅がベルト対31の幅とほぼ一致するように位置調整して前記ニップ部に突入させる以外は、第1の実施形態で示した構成と同様である。
【0067】
図5(a)は、本実施形態に用いられるラミネート部における前記リブが設けられたベルトを示す概略図(斜視図)である。
図5(a)において、ベルト51の外周面の両端部には、積層体の厚みと概略同じ厚みとしたリブ51aが設置されている。また、このリブ51aの間隔は、積層体の幅よりも若干大きくなるように配置される。
【0068】
図5(b)は、前記両端部にリブが設けられたベルトを用いたベルト対52の圧接部に積層体が突入した状態を、ラミネート部の突入側から見た模式図であるが、図に示すように、積層体40の加熱加圧時において、積層体40の幅方向の両端部のさらに外側(図における左右)に前記リブ51aが存在し、加圧時のクッションの役割を果たすため積層体40に均一な圧力を加えることができる。
【0069】
第2の作製装置における前記リブ51aの厚みは、前記積層体の厚みDに対して0.6D〜1.2Dの範囲である。厚みが0.6Dに満たないと、加熱加圧ロール対34のニップ部通過時に図5(b)に示すような十分なクッションの役割を果たすことができず、積層体表面に模様が発生してしまう。一方1.2Dを越えると、加熱加圧時に十分な加圧を行なうことができず、熱融着が不十分となってしまう。
【0070】
前記リブ51aの厚みは0.7D〜1.2Dの範囲であることが好ましく、0.8D〜1.1Dの範囲であることがより好ましい。また、リブを一方のベルトだけでなく、両方のベルトに設ける場合には、前記リブの厚みの好ましい範囲は両方のベルトに設けられたリブの厚みの和の好ましい範囲となる。
【0071】
このように、リブ51aの厚みを積層体の厚みに対し−40%〜+20%の範囲とすることにより、十分な品質の積層体を得ることが可能であり、−20%〜+10%の範囲とすることにより、積層体表面のオイル等の影響も受けずに安定した品質の積層体を得ることができる。例えばカードサイズの厚み(0.76mm)の積層体であれば、リブの厚みは約0.5〜0.9mmの範囲とする。
【0072】
なお、本発明において使用するリブの材質としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性があり、伸縮自在でベルト対31表面から剥がれにくく、ベルト表面を傷つけ難い材料を用いることが好ましい。より具体的には、前記材料としては、JIS A硬度で30〜90の範囲、JIS K6301による引張り強さが3.5〜20MPaの範囲、伸びが50〜500%の範囲、圧縮永久歪が10〜80%の範囲の耐熱性ゴム等を用いることが好ましい。
すなわち、本発明におけるリブは、加熱加圧ロール対34の圧接部において加圧により変形しても問題はない。
【0073】
また、第2の作製装置においては、前記リブ51aの間隔が前記積層体の幅Tに対して1.0T〜1.04Tの範囲となるように設置され、さらに、前記リブの間隔の中央と、前記積層体の幅の中央とを合致させて前記圧接部に突入させる必要がある。具体的には、図3(b)に示すようなラミネート部入り口付近にガイド39を設け、積層体がリブ間隔の中央に位置するように位置合わせを行う。
【0074】
前記リブ51aの間隔は前記積層体の幅に対して1.0T〜1.02Tの範囲であることが好ましい。また、前記位置合わせを行ったときのリブ間隔の中央と積層体の幅の中央とのずれは、積層体の幅に対して0〜2%の範囲であることが好ましい。
【0075】
以上の本実施形態のような構成とした第2の作製装置によっても、第1および第2の実施の形態で示した第1の作製装置と同様の効果を得ることができる。
また、本発明のプラスチックシートの作製方法は、本発明の第1の作製装置、第2の作製装置により効果的に行うことができるが、前記の本発明の条件を満たす限り作製装置としてはこれらに限定されるわけではない。
【0076】
本発明に用いられるコアシート、フィルムの好ましい材質等については、以下の通りである。
(コアシート)
本発明において用いられるコアシートは、プラスチックシートとしたときの光透過性のフィルムに形成された画像が見えやすいよう不透明であることが好ましく、白色に着色されていることがより好ましい。
【0077】
コアシートの材質としては、プラスチックが使用される。具体的には、アセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、セロハンなどがあり、中でもポリエステルフィルムが好ましく用いられる。特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられている。
【0078】
コアシートは、これらに顔料や染料などが添加され着色されることが好ましい。また、コアシートは、フィルム状、板状であってもよいし、可とう性を有しない程度、または、コアシートとしての要求に必要な強度を有する程度に厚みを有する形状であってもよい。
【0079】
本発明に用いられるコアシートとしては、厚さ50〜5000μmの範囲のプラスチックからなるフィルムを用いることが好ましく、厚さ100〜1000μmの範囲のPETフィルムを用いることがより好ましい。
【0080】
なお、本発明のプラスチックシートがICカードや磁気カード等として用いられる場合には、必要に応じてコアシートにICチップ、アンテナ、磁気ストライプ、外部端子などが埋め込まれる。また、磁気ストライプ、ホログラム等が印刷されたり、必要文字情報がエンボスされる場合がある。
【0081】
(フィルム)
本発明におけるフィルムは光透過性であることが望ましく、使用可能な基体は、透明性を有することが好ましい。ここで、透明性とは、例えば、可視光領域の光をある程度、透過する性質をいい、本発明においては、少なくともフィルム表面に形成された画像が、画像が形成された面と反対側の面から基体を通して目視できる程度に透明であればよい。
【0082】
上記基体としては、前記コアシートの材料として用いることができるプラスチックのフィルムを同様に使用することができる。
また、上記各種プラスチックのフィルムの中でも、ポリエステルフィルム、特に、PET(ポリエチレンテレフタレート)のエチレングリコール成分の半分前後を1,4−シクロヘキサンメタノール成分に置き換えたPETGと呼ばれるものや、前記PETにポリカーボネートを混ぜアロイ化させたもの、さらに二軸延伸しないPETで、A−PETと呼ばれる非晶質系ポリエステル等をより好ましく用いることができる。
【0083】
前記ポリエステル等の材料は、従来カード用のコアシート(コア)材料として用いられてきたポリ塩化ビニルが、可燃物廃棄時の燃焼によるダイオキシン発生させるものとして環境に良いものではないことが認識され、使用されなくなってきたことにも対応できるものである。さらなる材料として、前記ポリスチレン系樹脂フィルム、ABS樹脂フィルム、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂フィルム、またPETフィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂フィルムに、ポリエステルやEVA等のホットメルト系接着剤が付加されているフィルム等も好ましく用いることができる。
【0084】
本発明におけるフィルムのビカット軟化温度は、70〜130℃の範囲であることが好ましく、80〜120℃の範囲であることがより好ましい。
上記ビカット軟化温度が70℃に満たないと、ラミネート工程において、コアシート(コア)にラミネートフィルムを十分に密着・接着させることができない場合がある。また、ビカット軟化温度が130℃を超えると、上記密着・接着は十分であっても画像(画像形成材料)または基体表面に形成された画像受像層などの塗工層が軟化しすぎてしまい、画像に欠陥(画像流れ)が発生してしまう場合がある。
【0085】
上記ビカット軟化温度とは熱可塑性樹脂の軟化温度評価の一方法から測定されるものであって、その測定方法は、成形されたプラスチック材料の耐熱性を試験する方法として、熱可塑性樹脂に対しては、JIS K7206やASTM D1525、ISO306にその方法が規定されている。
【0086】
一方、本発明におけるフィルムの少なくとも片面の表面抵抗率は、108〜1013Ωの範囲であることが好ましく、109〜1011Ωの範囲であることがより好ましい。
上記表面抵抗率が108Ωに満たないと、特に、高温高湿時に画像記録体の抵抗値が低くなりすぎ、例えば転写部材からの転写トナーが乱れる場合があり、また、表面抵抗率が1013Ωを超えると、画像記録体として使用されるラミネートフィルムの抵抗値が高くなりすぎ、例えば転写部材からのトナーをフィルム表面に移行できず、転写不良による画像欠陥が発生する場合がある。
【0087】
なお、上記表面抵抗率は、23℃、55%RHの環境下で、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6991に従って測定することができる。
また、本発明におけるフィルムにおいて、片面のみが上記範囲の表面抵抗値を有する場合には、当該面は画像が形成される側の面であることが好ましい。
【0088】
前記フィルムの少なくとも片面の表面抵抗率を108〜1013Ωの範囲に制御するにあたっては、基体となるフィルム製造時、直接界面活性剤、高分子導電剤や導電性微粒子などを樹脂中に添加したり、上記フィルム表面に界面活性剤を塗工したり、金属薄膜を蒸着したり、あるいは接着剤などに界面活性剤などを適量添加したりすることで調整することができる。
【0089】
前記フィルムの厚さは、50〜500μmの範囲が好ましく、75〜150μmの範囲がより好ましい。厚さが50μmに満たないと搬送不良となる場合があり、300μmを超えると転写不良による画像劣化となる場合がある。
【0090】
本発明におけるフィルムは、基体の片面に画像受像層が形成されることが好ましく、また、この画像受像層が形成される面と反対側の面に機能性制御手段が設けられることが好ましい。
前記機能性制御手段は、光沢性、耐光性、抗菌性、難燃性、離型性、及び帯電性を制御する機能から選択される少なくとも1つ以上の機能を有するものであることが好ましく、具体的には、基体の表面に対し、光沢性、耐光性、抗菌性、難燃性、離型性、導電性、さらに好ましくは耐湿性、耐熱性、撥水性、耐磨耗性及び耐傷性などの様々な機能を付加及び/または向上させるために設けられる。これにより、前記機能性制御手段を有するフィルムは、様々な使用条件に対して耐性を有することができる。
【0091】
また、前記実施の形態では、光透過性のフィルムの片面に画像を形成し、その画像面を対面させてラミネートした形態を説明したが、これに限られず、例えば、フィルム(例えば、光非透過性フィルム)の片面に画像を形成し、その非画像面を対向させてラミネートする形態であってもよい。この場合、フィルムの画像面をさらに保護用フィルムでラミネートすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明のプラスチックシートの作製装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明におけるラミネート部の一例の概略構成図である。
【図3】(a)は積層体が圧接部に突入した状態の一例を示す模式図であり、(b)はラミネート部の一例を図2における上側から見た模式図である。
【図4】(a)は積層体が圧接部に突入した状態の他の一例を示す模式図であり、(b)はラミネート部の他の一例を図2における上側から見た模式図である。
【図5】(a)は本発明に用いられるベルトの一例を示す概略斜視図であり、(b)は積層体が圧接部に突入した状態の他の一例を示す模式図である。
【図6】本発明により作製させるプラスチックシートの一例を示す構成断面図である。
【図7】従来のラミネート装置におけるラミネート状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0093】
1 コアシート
2、4 画像
3 表面フィルム(フィルム)
5 裏面フィルム(フィルム)
10 画像形成装置
11 フィルムスタッカー
12 画像形成部
13、15、21、24 搬送路
14 排出口
20 丁合い装置
22 コアスタッカー
23 裏面フィルムスタッカー
25 丁合いトレイ(位置決め部)
26 仮止め装置
30 ラミネート装置
31、110 ベルト対
32 テンションロール
33 冷却ロール対
34、120 加熱加圧ロール対
35 インレットロール対
36 テンションバネ
37 冷却ファン
38 ベルトクリーニング装置
39 ガイド(位置合わせ部)
40、100 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成部と、コアシートを介して、2つの前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め部と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記2つのフィルムでラミネートするラミネート部と、を含んでなるプラスチックシートの作製装置であって、
前記ラミネート部が、少なくとも一部が互いに圧接されニップ部を形成するベルト対と、該ベルト対を介して両側に配置され前記ベルト対を圧接する加熱加圧ロール対と、を含み、前記ベルト対及び前記加熱加圧ロール対の少なくとも一方の幅が、前記積層体の幅Tに対して0.96T〜1.04Tの範囲であることを特徴とするプラスチックシートの作製装置。
【請求項2】
フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成部と、コアシートを介して、2つの前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め部と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記2つのフィルムでラミネートするラミネート部と、を含んでなるプラスチックシートの作製装置であって、
前記ラミネート部が、少なくとも一部が互いに圧接されニップ部を形成するベルト対と、該ベルト対を介して両側に配置され前記ベルト対を圧接する加熱加圧ロール対と、を含み、前記ベルト対の少なくとも一方の前記ニップ部を形成する側の面の両端部に、厚みが前記積層体の厚みDに対して0.6D〜1.2Dの範囲であるリブが、前記リブの間隔が前記積層体の幅Tに対して1.0T〜1.04Tの範囲となるように設置されることを特徴とするプラスチックシートの作製装置。
【請求項3】
フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成工程と、コアシートを介して、2つの前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め工程と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記2つのフィルムでラミネートするラミネート工程と、を含むプラスチックシートの作製方法であって、
前記ラミネート工程が、少なくとも一部が互いに圧接されニップ部を形成するベルト対と、該ベルト対を介して両側に配置され前記ベルト対を圧接する加熱加圧ロール対とにより加熱・加圧を行う工程であり、前記積層体の厚みが0.5〜1mmの範囲であり、かつ前記加熱加圧ロール対の圧接部通過時の積層体の幅方向の下記式(1)で示される圧力分布比が、0.05以下であることを特徴とするプラスチックシートの作製方法。
(Pmax−Pmin)/Pmax ・・・ 式(1)
(式(1)中、Pmaxは幅方向の最大加圧圧力、Pminは幅方向の最小加圧圧力を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−256281(P2006−256281A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80558(P2005−80558)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】