プラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー
【課題】ボトルの変形を間仕切り壁の中空仕切板により吸収して、固定的な変形を防止する。
【解決手段】間仕切り壁を中空仕切板により形成し、加熱滅菌時にプラスチック製容器の膨張による変形を、接触した中空仕切板の変形により吸収するプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレーとした。また、中空仕切板は上端から折返し、内部に中空部を形成した板状体であり、この中空仕切板を格子状に組み合わせて間仕切り壁とした。また、中空仕切板の上端折返部近辺をテーパー状に形成した。
【解決手段】間仕切り壁を中空仕切板により形成し、加熱滅菌時にプラスチック製容器の膨張による変形を、接触した中空仕切板の変形により吸収するプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレーとした。また、中空仕切板は上端から折返し、内部に中空部を形成した板状体であり、この中空仕切板を格子状に組み合わせて間仕切り壁とした。また、中空仕切板の上端折返部近辺をテーパー状に形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は医薬品等を収容したプラスチックス製容器(以下単にボトルという)をトレー上に多数載置して加熱滅菌処理機に搬入し滅菌処理をする場合、ボトルが膨張して変形しても、この変形をボトルが接触する中空仕切板の変形によって吸収し、ボトル自体が固定的に変形するのを防止することのできる滅菌処理に用いるトレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から加熱滅菌処理機に用いられるトレーには、ボトルが倒れないように格子状の間仕切り壁を設けてそれぞれ多数のボトルを装填している。
【0003】
ボトルが熱膨張して間仕切り壁面に接触し、又それ以上に膨らんだ場合、側壁が強固な壁面であると膨張したボトルは上下に延びてこの変形状態が固定化する難点があった(図11参照)。又ボトルが膨んで間仕切り壁に接触した時、その状態のまま固定化してしまう場合もあった(図12参照)。
【0004】
これを防止するため加熱滅菌時に処理槽内を厳密に圧力調整してボトルの熱膨張による変形を防止する例は公知である。
【特許文献1】特開昭61−1371号公報
【特許文献2】特開平6−298228号公報
【特許文献3】特開平10−15038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
格子状の間仕切り壁に四周を囲まれたボトルが、加熱滅菌処理時に膨張して変形し、そのまま変形が固定化してしまうか又は歪のあるボトルになってしまう課題があった。変形は熱膨張に限らず、冷却時の圧力調整によっても生じる。
【0006】
ボトルはポリエチレン、塩化ビニールなどの材質で作られている場合が多く、加熱時に軟化したり、内部に空気が含有されている含気容器の場合、熱膨張して多少膨らむので滅菌槽内の圧力調整をしないとボトルが固定的に変形し易く、従来は厳密な圧力調整を必要とした。そしてこの圧力調整が不十分であると変形又は歪のあるボトルとなって市場性が損なわれる難点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記のような課題を解決したものであり、加熱滅菌時のボトルの変形を、このボトルが接触する中空仕切板の変形によって吸収し、膨張が終わると復元するようにした。以下その詳細を説明する。
【0008】
第1発明は、間仕切り壁を中空仕切板により形成し、加熱滅菌時にプラスチックス製容器の膨張による変形を、接触した中空仕切板の変形により吸収することを特徴とするプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレーである。
【0009】
第2発明は、中空仕切板は上端から折返し、内部に中空部を形成した板状体であり、この中空仕切板を格子状に組み合わせて間仕切り壁としたプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレーとした。
【0010】
第3発明は、中空仕切板の上端折返部近辺をテーパー状に形成した。
【0011】
第4発明は、中空仕切板の格子状交差部分を、相互に嵌め込んだ嵌合部とした。
【0012】
第5発明は、中空仕切板の中空部を水の流路とした。
【0013】
第6発明は、プラスチックス製容器を囲う間仕切り壁の内、少なくとも一つが中空仕切板とした。
【0014】
第7発明は、間仕切り壁が耐熱性と弾力性を有する材質で構成されたプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレーとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ボトルが熱膨張又は圧力調整により変形して膨らみ、格子状の間仕切り壁の壁面に接触して上下に延びようとしても、間仕切り壁が中空仕切板で形成されているので、ボトルの膨張による変形を中空仕切板の変形によって吸収できるようになった。膨張が終わるとボトルは復元しボトル自体の変形を固定化しないようになっているので、加熱状態が終わればボトルは原型に復帰される。
【0016】
中空仕切板を上端から折返し、内部に中空部を形成し、これを格子状に組み合わせて間仕切り壁としたので、ボトルを装填して保持するには十分な強度を持っている。また中空仕切板の折返し部分による弾力性があって、ボトルの膨張に追随してこの中空仕切板が若干凹んで変形を吸収する作用効果がある。
【0017】
さらに、上端部の折返し部分がテーパー状とし、これに中空部が続くようにすれば中空仕切板の弾力性がより確実に発揮できる。
中空仕切板の中空部は水の流路となり、透孔により一定水面を保ち、加熱水の流れが良く均一な加熱滅菌作用を可能としている。
【0018】
また中空仕切板の格子状交差部分を、相互に嵌め込んだ嵌合部としておけば、間仕切り壁全体の補強強化となる。
【0019】
さらに、ボトルの側面が中空仕切板に当初から接触していても、加熱滅菌時の膨張を吸収することができるので、トレー上に装填できるボトルの数を増加することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下実施例として、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明トレーの一部省略平面図、図2、図3は該トレーの側面図である。
【0022】
1はトレーで、食品や輸液のような被処理物を内装したボトルを多数載置し、加熱滅菌処理機へ複数段に重ねた状態で装填されるようになっている。
2は間仕切り壁で、上端から折返し、内部に中空部を形成した仕切板により形成され、この中空仕切板を格子状に組み合わせて中空構造の間仕切り壁とした。
【0023】
実施例としては、間仕切り壁2は高さの異なる2種類の中空仕切板(2aと2b)を用いている。
3は折返部であり、この折返部近辺を上方に向かってテーパー状に形成した。中空仕切板2a、2bは折返部3部分の弾力により可動であるので、ボトルの熱膨張による変形を中空仕切板の変形として吸収できる。折返部の近辺はテーパー状に形成されているので、弾力が補強されボトル等の装填、取り出しも容易である。
【0024】
4は透孔で、中空仕切板2aに設けられ、水面を一定に保持すると共に水路になっている。5は底板で、間仕切り壁2が基部で溶接等により固定されている。
【0025】
6はボトルで、図示した例は胴部が水平面での断面形状を長円形としたボトルであり、ボトルが膨張すると、格子状の中空仕切板2a、2bに接触するように装填されている。
【0026】
図4、図5は中空仕切板2a、2bの成型途中を示した斜視図である。7はスリット、8は切欠部で、上記のスリット7と切欠部8とが互いに嵌め込まれ結合して強度のある格子状の間仕切り壁を形成するようにした。図6は格子状の嵌合状態を示した斜視図である。
【0027】
中空仕切板の材質としては、耐熱性と弾力性を有する材質で構成されるのが望ましく、アルミニューム、SUS 製でボトルの変形が仕切板の凹みにより吸収できる程度の薄さとするのがよい。
【0028】
図7、図8はボトル6をトレーに装填した状態を示す側面図であり、一点鎖線の位置まで水が充填された水槽型となっている。
図9は中空仕切板2a、2bが格子状に交差した状態を示し、透孔4及び中空部9と10が水路となっている状態を示す。
【0029】
図10はボトル6が熱膨張時に変形した場合(矢印)、中空仕切板2aが変形してこれを吸収するように凹んだ状態を示している。11は輸液等の被処理物を示す。12は注入された水面である。
【0030】
図11は従来例を示すもので、間仕切り壁の壁面13が硬い場合、ボトルが熱膨張しても逃げ場がなく、上方に延びて変形した状態14,15を示している。このような変形が生じると、加熱滅菌が終了してもボトルは原型に戻らず、変形が固定化していた。
【0031】
図12は同様に従来例を示すもので、(a)は装填当初のボトル、(b)は加熱時の変形状態を示している。即ち、ボトルは当初間仕切り壁の4周の内、4辺の壁面にそれぞれ余裕をもってセットされている(a)。このような状態で熱膨張時には、左側のボトル6が、右側に示したボトル16のように膨らみ変形し、壁面へ接触してそのまま固定化してしまう難点があった。
【0032】
本発明では、圧力調整を従来ほどに厳密にする必要がなく、ボトルの通常の熱膨張に対して、中空仕切板が多少凹んで変形しボトルの変形を吸収できるので、加熱滅菌処理が終了時には元に復帰できるようになった。又加熱滅菌処理時ばかりでなく、冷却処理時の後半では、ボトルがやや膨らんだ状態になるよう通常圧力調整しているので、本発明の中空仕切板が同様に凹むように作用する。従って、本発明は加熱滅菌処理の全工程において、ボトルの変形を吸収できるようになった。
【0033】
なお、間仕切り壁としてボトルを囲む四周の内、少なくとも一つが中空仕切板で構成されていると、ボトルの変形を吸収することができる。
加熱滅菌状態の実施例を下記に示す。
【実施例1】
【0034】
輸液ボトル:ポリエチレン製を使用(500ml)。
トレー :SUS製 縦11列、 横17列。
板厚 : 1.5mm、アルミニューム製
加熱滅菌装置:熱水スプレー式。トレー4段積み、
加熱条件 : 設定温度 110℃、20分
スプレー式加熱滅菌装置(株式会社日阪製作所製)を使用し、20℃(常温)から昇温させ、30分後に品温110℃に達した。
20分加熱滅菌処理を実施(圧力調整0.18MPa)。 圧力降下後、20分で品温25℃になった。
加熱滅菌、冷却時を通じて、ボトルの変形は中空仕切板の変形によって吸収され、固定化は生じなかった。
【実施例2】
【0035】
輸液ボトル:ポリエチレン製を使用(500ml)。
トレー :SUS製 縦11列、 横17列。
板厚 : 1.5mm、アルミニューム製
加熱滅菌装置:熱水スプレー式。トレー4段積み、
加熱条件 : 設定温度 115℃、10分
スプレー式加熱滅菌装置(株式会社日阪製作所製)を使用し、20℃(常温)から昇温させ、15分後に品温115℃に達した。
10分加熱滅菌処理を実施(圧力調整0.19MPa)。 圧力降下後、20分で品温25℃まで冷却された。
加熱滅菌、冷却の処理全体を通じて、ボトルの変形は中空仕切板の変形によって吸収され、固定化は生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明では加熱滅菌時に圧力調整を厳密にしなくても、ボトルの熱膨張を周辺の中空仕切板が少し凹んで吸収できるようになったので、加熱滅菌操作が極めて容易で、ボトルの固定的な変形を防止でき、産業上の利用価値が高い。
【0037】
また中空仕切板が折返部で弾力を持っているので、ボトルの熱膨張を的確に吸収でき、従来ほど厳密な圧力調整がなくても、ボトルに固定的な変形を生じさせないので、トレーの利用が容易になり、製造も容易になった。
【0038】
中空仕切板にボトルが接触するように、装填できるので、ボトルの数を増加することもでき、滅菌作業の効率化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】トレーの一部省略平面図。
【図2】トレーの側面図。
【図3】トレーの右側面図。
【図4】中空仕切板の形成途中を示す斜視図。
【図5】中空仕切板の他方の形成途中を示す斜視図。
【図6】格子状に嵌め合わせるようにした説明図。
【図7】ボトルの装填状態と水槽面の説明図。
【図8】同ボトルの装填状態の他側面を示す説明図
【図9】格子状の中空仕切板の係合状態を示す斜視図。
【図10】本発明のボトルの変形吸収状態の説明図。
【図11】従来のボトル変形の説明図。
【図12】従来のボトル変形を示す説明図。
【符号の説明】
【0040】
1 トレー
2 間仕切り壁
2a、2b中空仕切板
3 折返部
4 透孔
5 底板
6 ボトル
7 スリット
8 切欠部
9 中空部(水路)
10 中空部(水路)
11 輸液等の被処理物
12 水面
13 従来の間仕切り壁
14、15、16 変形したボトル
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は医薬品等を収容したプラスチックス製容器(以下単にボトルという)をトレー上に多数載置して加熱滅菌処理機に搬入し滅菌処理をする場合、ボトルが膨張して変形しても、この変形をボトルが接触する中空仕切板の変形によって吸収し、ボトル自体が固定的に変形するのを防止することのできる滅菌処理に用いるトレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から加熱滅菌処理機に用いられるトレーには、ボトルが倒れないように格子状の間仕切り壁を設けてそれぞれ多数のボトルを装填している。
【0003】
ボトルが熱膨張して間仕切り壁面に接触し、又それ以上に膨らんだ場合、側壁が強固な壁面であると膨張したボトルは上下に延びてこの変形状態が固定化する難点があった(図11参照)。又ボトルが膨んで間仕切り壁に接触した時、その状態のまま固定化してしまう場合もあった(図12参照)。
【0004】
これを防止するため加熱滅菌時に処理槽内を厳密に圧力調整してボトルの熱膨張による変形を防止する例は公知である。
【特許文献1】特開昭61−1371号公報
【特許文献2】特開平6−298228号公報
【特許文献3】特開平10−15038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
格子状の間仕切り壁に四周を囲まれたボトルが、加熱滅菌処理時に膨張して変形し、そのまま変形が固定化してしまうか又は歪のあるボトルになってしまう課題があった。変形は熱膨張に限らず、冷却時の圧力調整によっても生じる。
【0006】
ボトルはポリエチレン、塩化ビニールなどの材質で作られている場合が多く、加熱時に軟化したり、内部に空気が含有されている含気容器の場合、熱膨張して多少膨らむので滅菌槽内の圧力調整をしないとボトルが固定的に変形し易く、従来は厳密な圧力調整を必要とした。そしてこの圧力調整が不十分であると変形又は歪のあるボトルとなって市場性が損なわれる難点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記のような課題を解決したものであり、加熱滅菌時のボトルの変形を、このボトルが接触する中空仕切板の変形によって吸収し、膨張が終わると復元するようにした。以下その詳細を説明する。
【0008】
第1発明は、間仕切り壁を中空仕切板により形成し、加熱滅菌時にプラスチックス製容器の膨張による変形を、接触した中空仕切板の変形により吸収することを特徴とするプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレーである。
【0009】
第2発明は、中空仕切板は上端から折返し、内部に中空部を形成した板状体であり、この中空仕切板を格子状に組み合わせて間仕切り壁としたプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレーとした。
【0010】
第3発明は、中空仕切板の上端折返部近辺をテーパー状に形成した。
【0011】
第4発明は、中空仕切板の格子状交差部分を、相互に嵌め込んだ嵌合部とした。
【0012】
第5発明は、中空仕切板の中空部を水の流路とした。
【0013】
第6発明は、プラスチックス製容器を囲う間仕切り壁の内、少なくとも一つが中空仕切板とした。
【0014】
第7発明は、間仕切り壁が耐熱性と弾力性を有する材質で構成されたプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレーとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ボトルが熱膨張又は圧力調整により変形して膨らみ、格子状の間仕切り壁の壁面に接触して上下に延びようとしても、間仕切り壁が中空仕切板で形成されているので、ボトルの膨張による変形を中空仕切板の変形によって吸収できるようになった。膨張が終わるとボトルは復元しボトル自体の変形を固定化しないようになっているので、加熱状態が終わればボトルは原型に復帰される。
【0016】
中空仕切板を上端から折返し、内部に中空部を形成し、これを格子状に組み合わせて間仕切り壁としたので、ボトルを装填して保持するには十分な強度を持っている。また中空仕切板の折返し部分による弾力性があって、ボトルの膨張に追随してこの中空仕切板が若干凹んで変形を吸収する作用効果がある。
【0017】
さらに、上端部の折返し部分がテーパー状とし、これに中空部が続くようにすれば中空仕切板の弾力性がより確実に発揮できる。
中空仕切板の中空部は水の流路となり、透孔により一定水面を保ち、加熱水の流れが良く均一な加熱滅菌作用を可能としている。
【0018】
また中空仕切板の格子状交差部分を、相互に嵌め込んだ嵌合部としておけば、間仕切り壁全体の補強強化となる。
【0019】
さらに、ボトルの側面が中空仕切板に当初から接触していても、加熱滅菌時の膨張を吸収することができるので、トレー上に装填できるボトルの数を増加することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下実施例として、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明トレーの一部省略平面図、図2、図3は該トレーの側面図である。
【0022】
1はトレーで、食品や輸液のような被処理物を内装したボトルを多数載置し、加熱滅菌処理機へ複数段に重ねた状態で装填されるようになっている。
2は間仕切り壁で、上端から折返し、内部に中空部を形成した仕切板により形成され、この中空仕切板を格子状に組み合わせて中空構造の間仕切り壁とした。
【0023】
実施例としては、間仕切り壁2は高さの異なる2種類の中空仕切板(2aと2b)を用いている。
3は折返部であり、この折返部近辺を上方に向かってテーパー状に形成した。中空仕切板2a、2bは折返部3部分の弾力により可動であるので、ボトルの熱膨張による変形を中空仕切板の変形として吸収できる。折返部の近辺はテーパー状に形成されているので、弾力が補強されボトル等の装填、取り出しも容易である。
【0024】
4は透孔で、中空仕切板2aに設けられ、水面を一定に保持すると共に水路になっている。5は底板で、間仕切り壁2が基部で溶接等により固定されている。
【0025】
6はボトルで、図示した例は胴部が水平面での断面形状を長円形としたボトルであり、ボトルが膨張すると、格子状の中空仕切板2a、2bに接触するように装填されている。
【0026】
図4、図5は中空仕切板2a、2bの成型途中を示した斜視図である。7はスリット、8は切欠部で、上記のスリット7と切欠部8とが互いに嵌め込まれ結合して強度のある格子状の間仕切り壁を形成するようにした。図6は格子状の嵌合状態を示した斜視図である。
【0027】
中空仕切板の材質としては、耐熱性と弾力性を有する材質で構成されるのが望ましく、アルミニューム、SUS 製でボトルの変形が仕切板の凹みにより吸収できる程度の薄さとするのがよい。
【0028】
図7、図8はボトル6をトレーに装填した状態を示す側面図であり、一点鎖線の位置まで水が充填された水槽型となっている。
図9は中空仕切板2a、2bが格子状に交差した状態を示し、透孔4及び中空部9と10が水路となっている状態を示す。
【0029】
図10はボトル6が熱膨張時に変形した場合(矢印)、中空仕切板2aが変形してこれを吸収するように凹んだ状態を示している。11は輸液等の被処理物を示す。12は注入された水面である。
【0030】
図11は従来例を示すもので、間仕切り壁の壁面13が硬い場合、ボトルが熱膨張しても逃げ場がなく、上方に延びて変形した状態14,15を示している。このような変形が生じると、加熱滅菌が終了してもボトルは原型に戻らず、変形が固定化していた。
【0031】
図12は同様に従来例を示すもので、(a)は装填当初のボトル、(b)は加熱時の変形状態を示している。即ち、ボトルは当初間仕切り壁の4周の内、4辺の壁面にそれぞれ余裕をもってセットされている(a)。このような状態で熱膨張時には、左側のボトル6が、右側に示したボトル16のように膨らみ変形し、壁面へ接触してそのまま固定化してしまう難点があった。
【0032】
本発明では、圧力調整を従来ほどに厳密にする必要がなく、ボトルの通常の熱膨張に対して、中空仕切板が多少凹んで変形しボトルの変形を吸収できるので、加熱滅菌処理が終了時には元に復帰できるようになった。又加熱滅菌処理時ばかりでなく、冷却処理時の後半では、ボトルがやや膨らんだ状態になるよう通常圧力調整しているので、本発明の中空仕切板が同様に凹むように作用する。従って、本発明は加熱滅菌処理の全工程において、ボトルの変形を吸収できるようになった。
【0033】
なお、間仕切り壁としてボトルを囲む四周の内、少なくとも一つが中空仕切板で構成されていると、ボトルの変形を吸収することができる。
加熱滅菌状態の実施例を下記に示す。
【実施例1】
【0034】
輸液ボトル:ポリエチレン製を使用(500ml)。
トレー :SUS製 縦11列、 横17列。
板厚 : 1.5mm、アルミニューム製
加熱滅菌装置:熱水スプレー式。トレー4段積み、
加熱条件 : 設定温度 110℃、20分
スプレー式加熱滅菌装置(株式会社日阪製作所製)を使用し、20℃(常温)から昇温させ、30分後に品温110℃に達した。
20分加熱滅菌処理を実施(圧力調整0.18MPa)。 圧力降下後、20分で品温25℃になった。
加熱滅菌、冷却時を通じて、ボトルの変形は中空仕切板の変形によって吸収され、固定化は生じなかった。
【実施例2】
【0035】
輸液ボトル:ポリエチレン製を使用(500ml)。
トレー :SUS製 縦11列、 横17列。
板厚 : 1.5mm、アルミニューム製
加熱滅菌装置:熱水スプレー式。トレー4段積み、
加熱条件 : 設定温度 115℃、10分
スプレー式加熱滅菌装置(株式会社日阪製作所製)を使用し、20℃(常温)から昇温させ、15分後に品温115℃に達した。
10分加熱滅菌処理を実施(圧力調整0.19MPa)。 圧力降下後、20分で品温25℃まで冷却された。
加熱滅菌、冷却の処理全体を通じて、ボトルの変形は中空仕切板の変形によって吸収され、固定化は生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明では加熱滅菌時に圧力調整を厳密にしなくても、ボトルの熱膨張を周辺の中空仕切板が少し凹んで吸収できるようになったので、加熱滅菌操作が極めて容易で、ボトルの固定的な変形を防止でき、産業上の利用価値が高い。
【0037】
また中空仕切板が折返部で弾力を持っているので、ボトルの熱膨張を的確に吸収でき、従来ほど厳密な圧力調整がなくても、ボトルに固定的な変形を生じさせないので、トレーの利用が容易になり、製造も容易になった。
【0038】
中空仕切板にボトルが接触するように、装填できるので、ボトルの数を増加することもでき、滅菌作業の効率化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】トレーの一部省略平面図。
【図2】トレーの側面図。
【図3】トレーの右側面図。
【図4】中空仕切板の形成途中を示す斜視図。
【図5】中空仕切板の他方の形成途中を示す斜視図。
【図6】格子状に嵌め合わせるようにした説明図。
【図7】ボトルの装填状態と水槽面の説明図。
【図8】同ボトルの装填状態の他側面を示す説明図
【図9】格子状の中空仕切板の係合状態を示す斜視図。
【図10】本発明のボトルの変形吸収状態の説明図。
【図11】従来のボトル変形の説明図。
【図12】従来のボトル変形を示す説明図。
【符号の説明】
【0040】
1 トレー
2 間仕切り壁
2a、2b中空仕切板
3 折返部
4 透孔
5 底板
6 ボトル
7 スリット
8 切欠部
9 中空部(水路)
10 中空部(水路)
11 輸液等の被処理物
12 水面
13 従来の間仕切り壁
14、15、16 変形したボトル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間仕切り壁を中空仕切板により形成し、加熱滅菌時にプラスチックス製容器の膨張による変形を、接触した中空仕切板の変形により吸収することを特徴とするプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項2】
中空仕切板は上端から折返し、内部に中空部を形成した板状体であり、この中空仕切板を格子状に組み合わせて間仕切り壁とした請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項3】
中空仕切板の上端折返部近辺をテーパー状に形成した請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項4】
中空仕切板の格子状交差部分を、相互に嵌め込んだ嵌合部とした請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項5】
中空仕切板の中空部を水の流路とした請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項6】
プラスチックス製容器を囲う間仕切り壁の内、少なくとも一つが中空仕切板である請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項7】
間仕切り壁が耐熱性と弾力性を有する材質で構成された請求項1から6の内のいずれか1つに記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項1】
間仕切り壁を中空仕切板により形成し、加熱滅菌時にプラスチックス製容器の膨張による変形を、接触した中空仕切板の変形により吸収することを特徴とするプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項2】
中空仕切板は上端から折返し、内部に中空部を形成した板状体であり、この中空仕切板を格子状に組み合わせて間仕切り壁とした請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項3】
中空仕切板の上端折返部近辺をテーパー状に形成した請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項4】
中空仕切板の格子状交差部分を、相互に嵌め込んだ嵌合部とした請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項5】
中空仕切板の中空部を水の流路とした請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項6】
プラスチックス製容器を囲う間仕切り壁の内、少なくとも一つが中空仕切板である請求項1記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【請求項7】
間仕切り壁が耐熱性と弾力性を有する材質で構成された請求項1から6の内のいずれか1つに記載のプラスチックス製容器の滅菌処理に用いるトレー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−155927(P2008−155927A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344302(P2006−344302)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】
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