説明

プラスチックレンズの製造方法

【課題】空隙部の雰囲気を排気する減圧時間を短縮すると共に、調合するモノマー組成物
の反応の進行による増粘や泡上がりの発生を抑制し、歪の発生を抑えたプラスチックレン
ズの製造方法を提供する。
【解決手段】調合タンク10内部に、調合タンク1内の平面領域を密閉して覆うスペーサ
ー2が、調合タンク1の側壁に沿って移動して、調合タンク1の調合領域の容積(Vm+
Vg)を調節する原料調合装置10を用いて、少なくとも1種のポリイソシアネート化合
物と少なくとも1種のポリチオール化合物に触媒を添加したモノマー組成物Lの混合・攪
拌および減圧脱泡を行う調合工程を備え、得られたモノマー組成物Lを重合硬化するプラ
スチックレンズの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、成形性、加工性、染色性等
に優れ、しかも割れにくく安全性も高いため、特に眼鏡レンズ分野において急速に普及し
てきている。また、近年では薄型化、軽量化のさらなる要求に応えるべく、種々の高屈折
率素材が開発されている。
プラスチックレンズの一般的な製造方法は、複数の重合性化合物に種々の触媒または重
合開始剤などを添加したモノマー組成物を、混合・攪拌および減圧脱泡して組成が均一な
モノマー溶液にする調合工程と、調合されたモノマー溶液をレンズ成形型のキャビティー
内に注入する注入工程と、レンズ成形型に注入されたモノマー溶液を重合硬化して硬化組
成物を得る重合工程と、レンズ成形型から硬化組成物を取り出す離型工程とによって、プ
ラスチックレンズが得られる。
【0003】
こうしたプラスチックレンズの製造における調合工程では、通常、原料調合装置を用い
てモノマー組成物の混合・攪拌を行うと共に、重合過程においてキャビティー内に気泡が
発生するのを防ぐために減圧脱泡が行われる。特に、モノマー組成物中に硬化触媒などの
触媒や重合開始剤などを含むことにより、反応が進み過ぎたり、粘度が上昇したりして、
発泡や組成の経時変化などが発生する。こうした現象は、プラスチックレンズの高屈折率
化に伴って、より顕著になっている。
【0004】
例えば、調合終了後に調合タンク内に残って経時変化したモノマー組成物の汚染成分が
、次回使用時に新規モノマー組成物に混入しないようにするために、調合時に用いるタン
ク内に別の容器を設置し、その容器内でモノマー組成物の調合を行うプラスチック眼鏡レ
ンズの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−259362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、特許文献1に示されるような調合タンクを用いた調合工程では、通常、調合タン
ク内にタンク容量の10%〜70%程度のモノマー組成物を混合・攪拌および減圧脱泡す
る調合作業が行われるが、モノマー組成物の量が変化しても、同じ調合タンクを用いて調
合作業が行われている。したがって、調合するモノマー組成物の量が少ない場合、すなわ
ち調合タンク内の空隙部の容積が大きい場合には、減圧脱泡の際に、空隙部の圧力を所定
の圧力まで低下させる減圧操作に長い時間を必要とする。
【0007】
また、調合するモノマー組成物によっては、空隙部の気体を、窒素、アルゴンなどの不
活性気体にガス置換する操作が必要となる場合があるが、空隙部の体積が大きいと減圧時
間が長くなるだけではなく、不活性気体の導入にも長い時間を必要とする。さらに、大量
の不活性気体の導入が必要になるという課題が存在する。さらに、こうした調合工程にお
ける長い時間の経過は、触媒や重合開始剤が添加されたモノマー組成物中で反応が徐々に
進行していることから、反応の進み過ぎによる粘度の上昇、あるいは重合工程における重
合硬化による歪などが発生し易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
本適用例に係るプラスチックレンズの製造方法は、重合性化合物に触媒または重合開始
剤などを添加したモノマー組成物を重合硬化して得られるプラスチックレンズの製造方法
であって、調合タンク内部に、該調合タンクの調合領域の容積を調節する容積調節手段を
備えた原料調合装置を用いて、前記モノマー組成物の混合・攪拌および減圧脱泡を行う調
合工程を有することを特徴とする。
【0010】
この製造方法によれば、調合タンク内部に、調合タンクの調合領域の容積を調節する容
積調節手段を備えた原料調合装置を用いて、重合性化合物に触媒または重合開始剤などを
添加したモノマー組成物を混合・攪拌および減圧脱泡を行う調合工程を有することにより
、調合するモノマー組成物の調合量に対応して調合領域の容積を調節することができる。
よって、調合タンクの空隙量を最適化することが可能となり、空隙部の雰囲気を排気する
減圧時間を短縮すると共に、調合するモノマー組成物の反応の進行による増粘や泡上がり
の発生を抑制し、歪の少ないプラスチックレンズが得られる。また、調合量の多少に係ら
ず別々の調合タンクを用意するなどの必要がなく、1つの調合タンクで調合量(生産量)
の変動に対応することが可能となり、製造効率を向上することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例に係るプラスチックレンズの製造方法において、前記容積調節手段は、前記
調合タンク内の平面領域を密閉して覆うスペーサーより成り、前記スペーサーが前記調合
タンクの側壁に沿って移動するのが好ましい。
【0012】
この製造方法によれば、容積調整手段が、調合タンク内の平面領域を密閉して覆うスペ
ーサーより成り、スペーサーが調合タンクの側壁に沿って移動することにより、調合する
モノマー組成物の調合量に対応して調合領域の容積を容易に調節することができる。よっ
て、調合タンクの空隙量を最適化することが可能となり、空隙部の雰囲気を排気する減圧
時間を短縮すると共に、調合するモノマー組成物の反応の進行による増粘や泡上がりの発
生を抑制し、歪の少ないプラスチックレンズが得られる。
【0013】
[適用例3]
上記適用例に係るプラスチックレンズの製造方法において、前記容積調節手段は、中心
部に中空円筒形状を備えたスペーサーより成り、前記スペーサーの外周面が前記調合タン
クの側壁に沿って移動するのが好ましい。
【0014】
この製造方法によれば、容積調整手段が中心部に中空円筒形状を備えたスペーサーより
成り、スペーサーの外周面が調合タンクの側壁に沿って移動することにより、スペーサー
の中空円筒部がモノマー組成物を混合・攪拌する攪拌器と接触することなく、調合するモ
ノマー組成物の調合量に対応して調合領域の容積を容易に調節し、調合するモノマー組成
物の調合量がより少量であっても攪拌することが可能となる。よって、調合するモノマー
組成物の調合量がより少量であっても調合タンク内の空隙量を最適化して、空隙部の雰囲
気を排気する減圧時間を短縮すると共に、調合するモノマー組成物の反応の進行による増
粘や泡上がりの発生を抑制し、歪の少ないプラスチックレンズが得られる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例に係るプラスチックレンズの製造方法において、前記調合タンクが、以下の
一般式(1)および一般式(2)の関係を同時に満足するのが好ましい。
0.1≦(Vm+Va)/Vo≦0.7…(1)
0.01≦Va/Vo<0.7…(2)
但し、Voは調合タンクの内容積、Vaは調合タンク内のスペーサーによって排除され
る非使用領域の容積、Vmはタンク内に投入されたプラスチック原料の占める容積を示す

【0016】
この製造方法によれば、調合タンクが、上記一般式(1)および一般式(2)の関係を
同時に満足することにより、空隙部の雰囲気を排気する減圧時間を短縮すると共に、調合
するモノマー組成物の反応の進行による増粘や泡上がりの発生を抑制し、歪の少ないプラ
スチックレンズが得られる。
【0017】
[適用例5]
上記適用例に係るプラスチックレンズの製造方法において、前記モノマー組成物が、少
なくとも1種のポリイソシアネート化合物と少なくとも1種のポリチオール化合物を含む
ことが好ましい。
【0018】
この製造方法によれば、モノマー組成物が、少なくとも1種のポリイソシアネート化合
物と少なくとも1種のポリチオール化合物を含むことにより、調合するモノマー組成物の
反応の進行による増粘や泡上がりの発生を抑制し、屈折率1.67程度以上を有する、歪
の少ない高性能のプラスチックレンズが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本実施形態のプラスチックレンズの製造方法を説明する。
本実施形態におけるプラスチックレンズの製造方法は、複数のプラスチック原料(重合
性化合物)に硬化触媒などの触媒または重合開始剤などを添加したモノマー組成物を、混
合・攪拌して組成が均一なモノマー溶液にする調合工程と、調合されたモノマー溶液をレ
ンズ成形型のキャビティー内に注入する注入工程と、レンズ成形型に注入されたモノマー
溶液を重合硬化して硬化組成物を得る重合工程と、レンズ成形型から硬化組成物を取り出
す離型工程とによって製造される。
【0020】
製造されるプラスチックレンズのプラスチック素材は、特に限定されないが、複数の重
合性化合物に種々の触媒が添加されたモノマー組成物を重合硬化して、屈折率が1.67
程度以上が得られるチオウレタン系プラスチックレンズおよびチオエポキシ系プラスチッ
クレンズなどに好ましく適用することができる。
【0021】
チオウレタン系プラスチックレンズは、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合
物とを重合して得られる。
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニル
メタンジイソシアネート、ポリメリック型ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジン
ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イ
ソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシ
アネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシア
ネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,
6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(イ
ソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.O2.6]−デカン、3,9−ビス(イソ
シアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.O2.6]−デカン、4,8−ビス(イソシ
アネートメチル)トリシクロ[5.2.1.O2.6]−デカン、4,9−ビス(イソシア
ネートメチル)トリシクロ[5.2.1.O2.6]−デカン、ダイマー酸ジイソシアネー
トなどのポリイソシアネート化合物、およびそれらの化合物のアロファネート変性体、ビ
ュレット変性体、イソシアヌレート変性体が挙げられる。
これらの化合物は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
また、ポリチオール化合物の具体例としては、4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ
−1,8−オクタンジチオール、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオ
ネート)、4,8or4,7or5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト
−3,6,9トリチアウンデカンなどが挙げられる。
【0023】
ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合割合は、イソシアネート基(N
CO基)とチオール基(SH基)の官能基のモル比が、0.5〜3.0が好ましく、より
好ましくは0.5〜1.5の範囲である。モル比が0.5〜3.0の範囲外にあると著し
い重合度の低下を招き、耐熱性、耐衝撃性、表面硬度などレンズとして必要不可欠な物性
が低下する。
【0024】
チオエポキシ系プラスチックレンズは、エピスルフィド基を1分子中に少なくとも1個
以上有する化合物を含む組成物を重合して得られる。
エピスルフィド基を1分子中に少なくとも1個以上有する化合物としては、公知のエピ
スルフィド基を有する化合物を使用することができる。具体例としては、既存のエポキシ
化合物のエポキシ基の一部あるいは全てをエピスルフィド化して得られるエピスルフィド
化合物が挙げられる。
【0025】
また、重合硬化されるプラスチックレンズの高屈折率化と高アッベ数化のためには、エ
ピスルフィド基以外にも、分子中に硫黄原子を含有する化合物を好ましく用いることがで
きる。具体例としては、ビス−(2,3エピチオプロピル)ジスルフィド、1,2−ビス
(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1
,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(
β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ
メチル)−1,4−ジチアンなどが挙げられる。
【0026】
また、チオエポキシ系プラスチックには、エピスルフィド基と反応可能な官能基を有す
る化合物、あるいは1分子中にエピスルフィド基と反応可能な官能基を1個以上と他の単
独重合可能な官能基1個以上を有する化合物、これらの単独重合可能な官能基を1分子中
に1個以上有する化合物、さらにエピスルフィド基と反応可能で、且つ単独重合も可能な
官能基を1分子中に1個以上有する化合物を添加することができる。具体的には、エポキ
シ基、多価カルボン酸基、メタクリル基、アクリル基、アリル基、ビニル基、芳香族ビニ
ル基、水酸基、メルカプト基等の官能基を有する化合物である。なお、これらの化合物は
単独または2種以上を混合して使用することができる。
これにより、重合硬化して得られるプラスチックレンズの光学性能、物理特性などをよ
り向上させることができる。
【0027】
これらのチオウレタン系プラスチックおよびチオエポキシ系プラスチックを形成するモ
ノマー組成物には、触媒として硬化触媒が添加される。硬化触媒を添加することで、重合
速度を調整することが可能となり、重合品質や作業性の向上を図ることができる。
硬化触媒の具体例としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ト
リブチルアミン等のアミン化合物、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等
が挙げられる。これらは単独または2種以上を併用して用いることもできる。
【0028】
これら硬化触媒の添加量は、モノマー組成物の総量に対して、20ppm〜5,000
ppmの範囲内で添加するのが好ましい。添加量が20ppm未満の場合は重合時間が著
しく長くなり、生産性が低下する。一方、5,000ppmを越えると、粘度上昇により
作業性が低下する。
【0029】
また、モノマー組成物中には、必要に応じて、硬化触媒の他に、紫外線吸収剤、酸化防
止剤、光安定剤などを添加することができる。
紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール
系紫外線吸収剤、シアノアクリレート紫外線吸収剤などが挙げられる。
また、酸化防止剤や光安定剤の具体例としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダ
ードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤な
どが挙げられる。
【0030】
さらに、必要に応じて内部離型剤、染料、顔料などを添加することができる。内部離型
剤は、離型工程において重合硬化された硬化組成物をレンズ成形型からを取り出す際、良
好な離型性が得られる。染料、顔料は、重合硬化された硬化組成物の黄色みを低減したり
、所望の色調を付与したりすることができる。
【0031】
こうした重合組成物および触媒は、調合工程において、原料調合装置を用いて混合・攪
拌を行うと共に、重合過程においてキャビティー内に気泡が発生するのを防ぐために、混
合・攪拌して得られたモノマー組成物の減圧脱泡が行われる。
【0032】
先ず、原料調合装置10について説明する。
図1は、本実施形態に係る原料調合装置の概略構成を示す模式図である。
図1において、原料調合装置10は、調合タンク1、容積調節手段としてのスペーサー
2、昇降装置3、原料供給管4、排気ホース5、送出管6、攪拌器7、攪拌駆動装置8を
備えている。
【0033】
調合タンク1は、内部に供給された所定容量のプラスチック原料Lなどを混合・攪拌お
よび減圧脱泡してモノマー組成物の調合を行う容器である。
容積調節手段としてのスペーサー2は、調合タンク1のタンク平面全体を密閉して覆う
蓋体であり、排気ホース5および昇降装置3が取り付けられている。このスペーサー2は
、昇降装置3によって調合タンク1のタンク側壁に沿って鉛直方向に昇降移動して、調合
タンク1の調合領域の容積を調節する機能を有する。なお、調合タンク1の底面および側
壁とスペーサー2とによって、モノマー組成物の調合を行う密閉タンクが形成される。
【0034】
昇降装置3は、スペーサー2を調合タンク1のタンク側壁に沿う鉛直方向に昇降するリ
フト機能を備えている。
原料供給管4は、図示しない原料供給装置から所定容量のプラスチック原料Lを調合タ
ンク1内に供給するための配管であり、調合タンク1の上壁およびスペーサー2を貫通し
て、先端部が調合タンク1の底面近傍に位置するように配設されている。
【0035】
排気ホース5は、調合タンク1の調合領域の空隙部に存在するガスなどを含む気体を流
通する配管であり、一端がスペーサー2を貫通するようにスペーサー2に取り付けられ、
他端が真空ポンプなどの真空排気機能およびガス置換機能を備えたガス置換装置(図示せ
ず)に取り付けられた配管51に接続されている。なお、排気ホース5は、スペーサー2
の昇降移動に追随するように、伸縮自在する構成を有している。
【0036】
送出管6は、調合タンク1の底面に取り付けられており、調合タンク1において調合作
業が行われたモノマー組成物をタンク内から取り出すための配管である。
攪拌器7は、プロペラ状の形態を成しており、調合タンク1の上壁およびスペーサー2
を貫通する攪拌駆動装置8の回転軸の先端に取り付けられて、調合タンク1の底面の近傍
に配設されている。この攪拌器7は、攪拌駆動装置8が回転駆動することで、調合タンク
1内に供給されたプラスチック原料Lを混合・攪拌する機能を有する。
【0037】
次に、このように構成された原料調合装置10の動作について説明する。
先ず、調合タンク1内に原料供給管4を介して原料供給装置から、所定容量のポリイソ
シアネート化合物とポリチオール化合物とのプラスチック原料Lが供給される。そして、
供給されたプラスチック原料L中に、所定量の内部離型剤、紫外線吸収剤などの添加剤を
添加する。
【0038】
一方、原料調合装置10は、供給されたプラスチック原料Lの所定容量に対応した位置
に、昇降装置3を駆動して、スペーサー2を調合タンク1のタンク側壁に沿う鉛直方向に
昇降させる。スペーサー2を昇降して停止することにより、図1中に示す調合タンク1の
内容積Voにおける調合タンク1の非使用領域の容積Va、調合タンク1内に投入された
プラスチック原料Lの占める容積Vm、および調合タンク1内の空隙部の容積(空隙量)
Vgが確定される。すなわち、供給されたプラスチック原料Lの所定容量に対応した調合
タンク1の調合領域の容積(Vm+Vg)を確定することができる。こうしたスペーサー
2の昇降操作による調合領域の容積の確定は、予めプラスチック原料Lなどが供給される
以前に行っても良い。
なお、図1中には、説明の明瞭化のために、それぞれの容積を領域範囲の表示で示す。
また、それぞれの容量については、後述する調合確認実験の結果に基づいて説明する。
【0039】
そして、攪拌駆動装置8を駆動して、プラスチック原料L中に浸漬された攪拌器7が回
転軸を介して回転する。混合・攪拌の時間および攪拌器7の回転数は、プラスチック原料
Lの化合物の種類や量によって適宜設定されるが、攪拌器7の回転数は50rpm〜50
0rpm。混合・攪拌の時間は1時間〜2時間程度である。なお、以後の説明において、
モノマー組成物をモノマー組成物L、モノマー溶液をモノマー溶液Lと表す場合がある。
【0040】
そして、所定の時間、混合・攪拌を行った後、攪拌器7を停止してモノマー溶液L中に
硬化触媒を添加する。
この硬化触媒の添加と共に、ガス置換装置の真空ポンプを稼動して、空隙部の雰囲気を
排気ホース5を介して排気し、真空度が所定の圧力に達するまで減圧を行う。所定の圧力
は、100Pa〜1000Pa(略0.75mmHg〜略7.5mmHg)程度である。
【0041】
そして、減圧状態を保持しながら、再び攪拌器7を回転してモノマー組成物Lの減圧脱
泡を行う。攪拌器7の回転数は50rpm〜200rpm、減圧脱泡の時間は10分〜3
0分程度である。そして、減圧脱泡の終了後、調合タンク1内を常圧に戻し、モノマー組
成物の調合工程が終了する。
こうした調合工程における調合作業により、モノマー組成物L中に添加したそれぞれの
触媒が溶解し、組成が均一なモノマー溶液Lが得られる。
そして、注入工程に移行する。
【0042】
注入工程では、レンズ成形型のキャビティー内に、調合工程において調合されたモノマ
ー溶液Lの注入が行われる。
レンズ成形型は、レンズ面を形成する2枚のガラス型の側面が、テープまたはガスケッ
トなどで保持された成形モールドが用いられる。その成形モールドのキャビティー内に、
注入装置の注入ノズルなどからモノマー溶液Lを注入した後、注入口が封止される。
そして、重合工程に移行する。
【0043】
重合工程では、レンズ成形型に注入されたモノマー溶液Lの重合硬化が行われる。
重合硬化は、モノマー溶液Lが注入されたレンズ成形型を、重合炉(加熱炉)内に投入
して、例えば30℃〜120℃まで24時間程度かけて徐々に昇温し、さらに120℃に
3時間程度保持した後、2時間程度かけて70℃まで放冷させる。
その後、重合硬化が行われたレンズ成形型を重合炉から取り出して、離型工程に移行す
る。
【0044】
離型工程では、レンズ成形型から硬化組成物を取り出して、プラスチックレンズが得ら
れる。
得られたプラスチックレンズは、必要に応じて、光学歪みを取り除くためのアニール処
理、レンズ面に反射防止膜などを付与する表面処理などを行って、プラスチックレンズが
完成する。
【0045】
次に、図1を参照しながら実施形態に基づく調合工程の実施例および比較例を説明する

以下に示す実施例および比較例は、内容積Voが30リットルの調合タンク1を備えた
原料調合装置10を用いて、調合するプラスチック原料Lの総容量(調合タンク1内に投
入されたプラスチック原料Lの占める容積Vmと同じ)および調合タンク1の非使用領域
の容積Vaを種々に変化させてモノマー組成物の調合作業を行ったもので、実施例1〜実
施例7および比較例1,2に示す。
なお、調合工程は、チオウレタン系プラスチックレンズを得るためのポリイソシアネー
ト化合物とポリチオール化合物とを含むモノマー組成物を調合する場合で説明する。
【0046】
(実施例1)
先ず、調合タンク1内に、原料供給管4を介して原料供給装置から、プラスチック原料
Lとしてポリイソシアネート化合物のm−キシリレンジイソシアネート50重量部と、ポ
リチオール化合物の4,8or4,7or5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメ
ルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン50重量部が供給される。さらに、供給され
たプラスチック原料L中に、内部離型剤0.073重量部、紫外線吸収剤として2−(2
−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.5重量部を投入し
た。
【0047】
そして、プラスチック原料L中に浸漬された状態の攪拌器7を回転速度50rpmで1
時間程度、混合・攪拌を行った。
そして、攪拌器7を一旦、停止した後、モノマー溶液L中に硬化触媒としてジブチルス
ズジクロライド0.029重量部を添加して溶解させた。このときのプラスチック原料L
の総容量、すなわち調合タンク1内に供給されたプラスチック原料Lの占める容積Vmが
3リットルになるように調製した。
【0048】
そして、調合タンク1内に供給されたプラスチック原料Lの占める容積Vmが3リット
ル対して、スペーサー2を調合タンク1の非使用領域の容積Vaが9リットルとなる位置
まで、調合タンク1の側壁に沿う鉛直方向に下降させて停止する。したがって、この場合
の調合タンク1の内容積Voに対する調合タンク1の非使用領域の容積Vaの割合、「V
a/Vo」は0.3である。また、「Vm(調合タンク1内に供給されたプラスチック原
料Lの占める容積)+Va(調合タンク1の非使用領域の容積)/Vo(調合タンクの内
容積)」の値は、0.4である。
【0049】
そして、ガス置換装置の真空ポンプを稼動して、空隙部の雰囲気を排気ホース5を介し
て排気し、真空度が650Pa(略4.9mmHg)の圧力に達するまで減圧する。なお
、容積Vgの空隙部が650Paの減圧状態に達するのに要した時間は、8.5分であり
、作業効率上の問題はなかった。
そして、その減圧状態を保持しながら、再び攪拌器7を回転速度150rpmで回転し
て、20分間の減圧脱泡を行った。この減圧脱泡中に、泡上がりは認められなかった。そ
の後、調合タンク1内を常圧に戻して、調合工程を終了した。
【0050】
(比較例1)
比較例1は、内容積Voが30リットルの調合タンク1をフルに用いて調合作業を行っ
た場合であり、従来より用いられている調合方法に相当する。
調合タンク1内に供給されたプラスチック原料Lの占める容積Vmが27リットル対し
て、実施例1の場合と同様の混合・攪拌および減圧脱泡を行った。すなわち、「Vm+V
a/Vo=0.9」の条件で行った。
その結果、減圧状態に達するのに要した時間は、1分と短かったが、激しい泡上がりが
発生して、モノマー溶液Lが排気ホース5内まで逆流した。こうした泡上がりの発生は、
装置を汚染して無駄な洗浄作業を必要とする。さらには、装置の故障の原因になる場合が
ある。
【0051】
以下、実施例2〜実施例7および比較例2についても、内容積Voが30リットルの調
合タンク1内に、調合するプラスチック原料Lの占める容積Vmを供給して、調合タンク
1の非使用領域の容積がVaとなるようにスペーサー2の位置を調節した以外は、実施例
1および比較例1の場合と同様の混合・攪拌および減圧脱泡を行った。
なお、比較例2は、比較例1と同様に、調合するプラスチック原料Lの多少に係らず、
内容積Voが30リットルの調合タンク1をフルに用いて調合作業を行った場合である。
【0052】
以後、実施例2〜実施例7、比較例2についての実施例および比較例の個々の説明は省
略するが、それぞれの実施例および比較例における設定条件およびその結果を、前記した
実施例1を含めて、表1に示す。
【0053】
【表1】

なお、表1には、調合タンク1の内容積Vo(リットル、表中には容器容積と表す)、
調合されるプラスチック原料Lの占める容積Vm(リットル、表中には調合量と表す)、
調合タンク1の非使用領域の容積がVa(リットル、表中にはスペーサー容積と表す)を
示す。また、これらの関係条件を表す「Vm+Va/Vo」および「Va/Vo」の値を
示す。そして、減圧状態に達するのに要した時間(分、表中には排気必要時間と表す)お
よびその判定結果と、泡上がりの有無、それらに基づく総合判定結果を示す。
【0054】
650Paの減圧状態に達するのに要した時間(排気必要時間)の判定は、10分以内
の場合を○、10分〜20分の場合を△、20分以上の場合を×とする3段階の判定を行
った。
これは、一般的に、硬化触媒を添加した後のプラスチック原料Lのポットライフ(使用
可能時間)は、1時間〜6時間程度であるが、短いものだと1時間に達しないものもある
。この場合、減圧脱泡における減圧保持時間が少なくとも20分は必要なため、目的の圧
力まで排気するのに必要な時間が長くかかり過ぎると、それだけ、プラスチック原料Lが
使用できる時間が短くなってしまう。
【0055】
したがって、プラスチック原料Lのポットライフの確保や生産効率などを考慮すると、
排気に要する時間は、20分以内が好ましく、より好ましくは、10分以内である。
10分以内であれば、その後のポットライフに対する影響は極小さく、問題とはならな
い。10分〜20分の場合は、ポットライフの短い場合に限り影響がでることもあるが、
大多数のプラスチック原料において問題とはならない。20分以上の場合には、大多数の
プラスチック原料において問題となる。
【0056】
一方、泡上がりの判定は、減圧脱泡時に、泡上がりの発生が無かった場合を○、多少泡
上がりの発生があるが、排気ホース5への逆流までは起こらない場合を△、激しい泡上が
りがあり、排気ホース5への逆流が起こった場合を×、とする3段階の判定を行った。
また、総合判定は、排気必要時間および泡上がりのが発生状況の判定において、両者の
判定が共に○の場合を○、どちらか一方の判定が△の場合を△、どちらか一方の判定が×
の場合を×とした。
【0057】
表1において、総合判定が○であった、実施例1,2,3は、排気必要時間(650P
aの減圧状態に達するのに要した時間)がいずれも10分以内(8.5分、5分、5.5
分)であり、ポットライフの面から問題もなく、順調な調合作業を行うことができた。ま
た、減圧脱泡時における泡上がりの発生もなかった。
【0058】
総合判定が△であったものは実施例4,5,6,7であった。
実施例4,5,7では、泡上がりの発生はなかったが、排気必要時間が10〜20分(
19分、18、20分)の間であり、反応進行による増粘などが見られた。このことは、
後の注入工程におけるモノマー溶液Lのレンズ成形型のキャビティー内への注入に多少の
困難さがあったが、問題とする程ではなかった。また、重合工程後のレンズ品質に問題は
なかった。実施例6では、排気必要時間が2分であり、ポットライフの面からの問題はな
く、多少の泡上がりが発生したが、排気ホースへの逆流は起こらなかった。また、重合工
程後のレンズ品質に問題はなかった。
【0059】
総合判定が×であったのは比較例1,2であった。
この内、比較例1については、排気必要時間(1分)に問題はなかったが、減圧脱泡時
に著しい泡上がりが発生し、作業に支障がでた。また、重合工程後に完成したプラスチッ
クレンズには歪や気泡が生じていた。
一方、比較例2の場合は、排気必要時間が20分を超え(23分)、重合工程の後に完
成したプラスチックレンズに歪が生じていた。
【0060】
このことから、総合判定が○および△の実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実
施例5、実施例6、実施例7において、作業性および品質性能の面において良好な調合工
程が得られる。
これらの実施例における「Vm+Va/Vo」の値は、前記の順に0.4、0.7、0
.7、0.1、0.1、0.8、0.09であり、「Va/Vo」の値は、同様に前記の
順に0.3、0.65、0.05、0.01、0.09、0.7、0.01であった。
【0061】
したがって、これらの結果から、調合タンク1の内容積Voに対応した調合量(調合タ
ンク1内に投入されたプラスチック原料Lの占める容積)および調合タンクの非使用領域
の容積Vaとの関係は、下記に示す一般式(1)および一般式(2)の関係を同時に満足
することによって、作業性および品質性能の面において良好な調合工程、ひいては品質性
能の面に優れたプラスチックレンズが得られる。
0.1≦(Vm+Va)/Vo≦0.7…(1)
0.01≦Va/Vo<0.7…(2)
【0062】
以上のプラスチックレンズの製造方法によれば、調合タンク1内部に、調合タンク1の
調合領域の容積を調節する容積調節手段としてのスペーサー2を備えた原料調合装置10
を用いて、モノマー組成物Lを混合・攪拌および減圧脱泡を行う調合工程を有することに
より、調合するモノマー組成物Lの調合量に対応して調合領域の容積(Vm+Vg)を調
節することができる。よって、調合タンク1の空隙量Vgを最適化することが可能となり
、空隙部の雰囲気を排気する減圧時間を短縮すると共に、調合するモノマー組成物Lの反
応の進行による増粘や泡上がりの発生を抑制し、歪の少ないプラスチックレンズが得られ
る。また、調合するモノマー組成物Lの調合量の多少に係らず別々の調合タンクを用意す
るなどの必要がなく、1つの調合タンク1で調合量(生産量)の変動に対応することが可
能となり、製造効率を向上することができる。
【0063】
また、スペーサー2が調合タンク1内の平面領域を密閉して覆うと共に、スペーサー2
が調合タンク1の側壁に沿って移動することにより、調合するモノマー組成物Lの調合量
に対応して調合領域の容積(Vm+Vg)を容易に調節することができる。よって、調合
タンク1の空隙量Vgを最適化することが可能となり、空隙部の雰囲気を排気する減圧時
間を短縮すると共に、調合するモノマー組成物Lの反応の進行による増粘や泡上がりの発
生を抑制し、歪の少ないプラスチックレンズが得られる。
【0064】
以上の実施形態に係るプラスチックレンズの製造方法は、プラスチック眼鏡レンズ、デ
ジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、および顕微鏡、望遠鏡、双眼鏡などの各種光学レン
ズに適用することができる。
【0065】
以上の実施形態において、調合工程には図1に示した原料調合装置10に代えて、以下
に示す原料調合装置30を用いることができる。
図2(a)は、本実施形態に係る別の原料調合装置の概略構成を示す模式断面図であり
、図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。
なお、原料調合装置30は、容積調節手段としてのスペーサー形状が異なり、それに伴
って、調合タンクおよび昇降装置の形態が異なることを除いては、原料調合装置10と同
様の基本構成を有する。したがって、図1に示した原料調合装置10と同一部材には同一
符号を付して、その説明は省略または簡略化する。また、各構成要素の動作についても同
様であり、その詳細説明も省略または簡略化する。
【0066】
図2において、原料調合装置30は、調合タンク11、容積調節手段としてのスペーサ
ー20、昇降装置3、原料供給管4、排気ホース5、送出管6、攪拌器7、攪拌駆動装置
8を備えている。
容積調節手段としてのスペーサー20は、中心部が攪拌器7と接触しない平面の円筒形
にくり貫かれた中空円筒形状を成している。このスペーサー20は、昇降装置3によって
外周面が調合タンク11の側壁(内壁)に沿って鉛直方向に昇降移動して、調合タンク1
1の調合領域の容積を調節する機能を有する。
【0067】
調合タンク11の底面部は、調合タンク11の側壁に沿って鉛直方向に昇降移動するス
ペーサー20が、調合タンク11の最下方の方向に下降した際に、スペーサー20を収納
する形状を成している。この調合タンク1の底面部とスペーサー20とによって、モノマ
ー組成物Lの調合を行う密閉タンクが形成される。
昇降装置3は、スペーサー20を調合タンク11のタンク側壁に沿う鉛直方向に昇降す
るリフト機能を備えている。
【0068】
このように構成された原料調合装置30は、供給されたプラスチック原料Lの所定容量
に対応した位置に、昇降装置3を駆動して、スペーサー20を調合タンク11のタンク側
壁に沿う鉛直方向に昇降させて、図2中に示す調合タンク11の内容積Voにおける調合
タンク11の非使用領域の容積Va、調合タンク11内に投入されたプラスチック原料L
の占める容積Vm、および調合タンク11内の空隙部の容積Vgが確定される。すなわち
、供給されたプラスチック原料Lの所定容量に対応した調合タンク11の調合領域の容積
(Vm+Vg)を確定することができる。
なお、図2中には、説明の明瞭化のために、それぞれの容積を領域範囲の表示で示して
いる。
【0069】
プラスチック原料Lの調合工程に、この原料調合装置30を用いることによって、スペ
ーサー20の中空円筒部がモノマー組成物Lを混合・攪拌する攪拌器7と接触することな
く、調合するモノマー組成物Lの調合量に対応して調合領域の容積を容易に調節し、調合
するモノマー組成物Lの調合量がより少量であっても攪拌することが可能となる。すなわ
ち、より少量のプラスチック原料Lの調合(混合・攪拌および減圧脱泡)に対応すること
ができる。
【0070】
また、以上の実施形態において、製造されるプラスチックレンズのプラスチック素材と
して、屈折率が1.67程度が得られるチオウレタン系プラスチックレンズを用いた場合
を説明したが、複数の重合性化合物に種々の触媒が添加されたモノマー組成物を用いる場
合であれば、これに限定されない。例えば、チオフェジンイソシアナートと脂肪族イソシ
アナータ化合物およびチオール化合物を含有するモノマー組成物や、エピスルフィド基を
2個以上有する化合物とメルカプト基を1個以上有する化合物を含有するモノマー組成物
を用いることができる。これらのモノマー組成物は、屈折率が1.67を越えるプラスチ
ックレンズを得ることができるが、本実施形態の製造方法によれば、同様の効果を得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態に係る原料調合装置の概略構成を示す模式図。
【図2】(a)は本実施形態に係る別の原料調合装置の概略構成を示す模式断面図であり、(b)は(a)のA−A断面図。
【符号の説明】
【0072】
1,11…調合タンク、2,20…スペーサー、3…昇降装置、4…原料供給管、5…
排気ホース、6…送出管、7…攪拌器、8…攪拌駆動装置、10、30…原料調合装置、
L…プラスチック原料(モノマー組成物、モノマー溶液)、Vo…調合タンクの内容積、
Va…調合タンクの非使用領域の容積、Vm…プラスチック原料の占める容積。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物に触媒または重合開始剤などを添加したモノマー組成物を重合硬化して得
られるプラスチックレンズの製造方法であって、
調合タンク内部に、該調合タンクの調合領域の容積を調節する容積調節手段を備えた原
料調合装置を用いて、前記モノマー組成物の混合・攪拌および減圧脱泡を行う調合工程を
有することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法であって、
前記容積調節整手段は、前記調合タンク内の平面領域を密閉して覆うスペーサーより成
り、前記スペーサーが前記調合タンクの側壁に沿って移動することを特徴とするプラスチ
ックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法であって、
前記容積調節手段は、中心部に中空円筒形状を備えたスペーサーより成り、前記スペー
サーの外周面が前記調合タンクの側壁に沿って移動することを特徴とするプラスチックレ
ンズの製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のプラスチックレンズの製造方法であって、
前記調合タンクが、以下の一般式(1)および一般式(2)の関係を同時に満足するこ
とを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
0.1≦(Vm+Va)/Vo≦0.7…(1)
0.01≦Va/Vo<0.7…(2)
但し、Voは調合タンクの内容積、Vaは調合タンク内のスペーサーによって排除され
る非使用領域の容積、Vmはタンク内に投入されたプラスチック原料の占める容積を示す

【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラスチックレンズの製造方法であって、
前記モノマー組成物が、少なくとも1種のポリイソシアネート化合物と少なくとも1種
のポリチオール化合物を含むことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。

調節

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−223108(P2009−223108A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68956(P2008−68956)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】