説明

プラスチック成形体

【課題】既設の生産設備をほとんど変更することなく、口部の内径を拡大することで、軽量化を図ることができるプリフォーム又はプラスチックボトルであるプラスチック成形体を提供する。
【解決手段】プラスチック成形体は、ネックサポートリング14が下端に設けられた口部10とネックサポートリング14の直下に連接する首部220とを備えるプラスチック成形体において、プラスチック成形体がプリフォーム200又はプラスチックボトルであり、口部10の上端における内径が、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists)で規定するフィニッシュサイズ28mmの規格の内径よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォーム又はプラスチックボトルであるプラスチック成形体に関し、特に、口部の内径を拡大することで、軽量化したプラスチック成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルなどのプラスチックボトルは、通常、プリフォームと呼ばれる有底筒状の成形物を、ボトル状にブロー成形することで製造される。近年、プラスチックボトルは、資源及びコストの削減の観点から、軽量化が進められており、ボトルの胴部の肉厚は薄くなる傾向にある。ボトルが軽量化すると、ボトル全体の質量に対する口部の質量が占める割合が大きくなるため、口部の軽量化は、ボトル全体の更なる軽量化に大きな効果がある。口部を軽量化したボトルとしては、カブラ、凹状環状面及びネックサポートリングを薄肉にしたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
ところで、飲料用ペットボトルの口部の形状は、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists、以降、ISBTということもある。)で規定した国際規格であるフィニッシュサイズ28mmの規格を満たすものが主流である(例えば、非特許文献1を参照。)。当然ながら、ペットボトルの口部に螺着するキャップも、国際規格を満たした口部に対応したものが主流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−260604号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.threadspecs.com/threadspecs−downloads.asp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたプラスチックボトルは、ねじ部よりも下方の部分(特許文献1でいうところの口栓部)だけを軽量化しているに過ぎず、ねじ部を有する口部については、軽量化が検討されていない。仮に、特許文献1に記載されたプラスチックボトルの口部を更に軽量化するために、口栓部と同様の方法を採用して、ねじ部を有する口部の外径を小さくすると、ねじ部の形状が変更されて、現行のキャップを螺合することができない。このように、外径を小さくして、口部の軽量化を図る方法では、薄肉化できる部分が限られており、口部の軽量化に限界があった。
【0007】
本発明の目的は、既設の生産設備をほとんど変更することなく、口部の内径を拡大することで、軽量化を図ることができるプリフォーム又はプラスチックボトルであるプラスチック成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプラスチック成形体は、ネックサポートリングが下端に設けられた口部と前記ネックサポートリングの直下に連接する首部とを備えるプラスチック成形体において、該プラスチック成形体が、プリフォーム又はプラスチックボトルであり、前記口部の上端における内径が、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists)で規定するフィニッシュサイズ28mmの規格の内径よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプラスチック成形体では、前記口部の最も薄肉の部分の肉厚が、0.90〜1.30mmであることが好ましい。口部に必要な強度を確保することができる。また、キャップで閉じたときに、ボトルの密封性を確保することができる。
【0010】
本発明に係るプラスチック成形体では、前記口部の内径が、高さ方向の全領域にわたって、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists)で規定するフィニッシュサイズ28mmの規格の内径よりも大きいことが好ましい。口部をより軽量化することができる。
【0011】
本発明に係るプラスチック成形体では、前記首部のうち、前記ネックサポートリングの直下に連接するストレート部の内径が、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists)で規定するフィニッシュサイズ28mmの規格の内径よりも大きいことが好ましい。更に軽量化した成形体とすることができる。
【0012】
本発明に係るプラスチック成形体では、1ロットから無作為に20個抜き取ったとき、前記口部の数1で求める真円度(R)が、全て50μm以下である形態を包含する。
(数1)真円度(R)=Dmax−Dmin
数1において、Dmaxは、前記口部の上端における内径の最大値であり、Dminは、前記口部の上端における内径の最小値である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、既設の生産設備をほとんど変更することなく、口部の内径を拡大することで、軽量化を図ることができるプリフォーム又はプラスチックボトルであるプラスチック成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るプラスチック成形体としてのプリフォームの一例を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のA−A断面図の変形形態である。
【図4】プリフォームを射出成形するための金型の一例を示す断面図であり、(a)は金型が開いている状態、(b)は射出成形時の状態を示す。
【図5】図1のB−B破断面図である。
【図6】本実施形態に係るプラスチック成形体としてのプラスチックボトルの一例を示す正面図である。
【図7】図1のプラスチックボトルの口部をキャップで閉じた状態を示す半断面図である。
【図8】口部の別の形態例を示す部分拡大断面図である。
【図9】口部及び首部を薄肉化したプリフォームの一例を示す断面図である。
【図10】コントロール1、実施例1及び実施例2の口部の真円度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0016】
まず、プラスチック成形体が、プリフォームである形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプラスチック成形体としてのプリフォームの一例を示す正面図である。図2は、図1のA−A断面図である。本実施形態に係るプラスチック成形体としてのプリフォーム200は、図1に示すように、ネックサポートリング14が下端に設けられた口部10とネックサポートリング14の直下に連接する首部220とを備え、図2に示すように、口部10の上端における内径D1が、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists)で規定するフィニッシュサイズ28mmの規格の内径D0よりも大きい。
【0017】
プリフォーム200は、プラスチックボトルを成形するのに適した形状に予め成形したプラスチック成形体である。プリフォーム200は、図1に示すように、上方から順に、口部10と、首部220と、有底筒状部60とを備える。口部10は、上端10aが開口した円筒状の周壁11を有し、プラスチックボトルにおいて、内容物の充填口及び注ぎ口として機能する。周壁11の外周面には、キャップ(不図示)と螺合する雄ねじ部12と、雄ねじ部12の下方に設けられたビードリング13と、口部10の下端に設けられたネックサポートリング14とが、突出して形成されている。首部220は、ネックサポートリング14の直下に連接するストレート部221を有する。ストレート部221は、例えば、ネックサポートリング14から下方に3.0〜7.0mmまでの領域である。有底筒状部60は、例えば、先端部60aを半円球状とした円筒状である。なお、有底筒状部60の形状は、図1に示した形状に限定されない。例えば、先端部60aを、円錐状、角錐状にしてもよい。
【0018】
本実施形態では、口部10の外形(雄ねじ部12、ビードリング13及びネックサポートリング14の形状及び寸法)は、ISBTで規定するフィニッシュサイズ28mmの規格(以降、単に、規格ということもある。)に適合する形状である。口部10の外形を、規格に適合する形状とすることで、現行のキャップを螺合することができる。また、搬送時に口部10を挟持するグリッパなど既存の生産設備の多くは全く変更することなく、生産することができる。図1のプリフォーム200は、口部10の外形(雄ねじ部12、ビードリング13及びネックサポートリング14の形状及び寸法)を、ISBTの国際規格のうち、PCO‐1810の規格と同一にしたものである。
【0019】
ISBTで規定するフィニッシュサイズ28mmの規格とは、飲料用ボトルの口部についての国際規格の一種である。ISBTの国際規格は、非特許文献1の記載のとおり、フィニッシュサイズとしてねじ部の外径(ねじ山径)で大別されており、主として、周壁の外径及び内径、ねじ部の形状及び寸法、ビードリング13の形状及び寸法並びにネックサポートリング14の形状及び寸法を規定する。フィニッシュサイズの種類は、例えば、26mm、28mm、33mm、38mm、43mm、48mmである。国内で流通する飲料用のペットボトルは、フィニッシュサイズ28mmであるものが主流である。フィニッシュサイズ28mmの規格は、例えば、Alcoa‐1716、Alcoa‐1788、BPF‐C、Obrist‐28(19mm)、Obrist‐28(18mm)、PCO‐1810、PCO‐1815、PCO‐1816、PCO‐1817、PCO‐1820、PCO‐1823、PCO‐1881がある。PCO‐1810は、日本国内で流通している飲料用のペットボトルにおいて、多く採用されている。また、PCO‐1881は、所謂ショートハイトタイプであり、主に、欧米又は中国などで採用され始めている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、周壁11の内周面11aが、点線で示すPCO‐1810で規定された周壁の内周面S0と比較して、外側に位置し、内径D1を規格の内径D0よりも大きくしている。規格の内径D0の最大許容寸法を超えて大きくすることが好ましい。規格の内径D0の最大許容寸法は、例えば、PCO‐1810では、21.87mmである。このように、口部10の肉厚T1を、規格よりも薄肉にして、軽量化を図っている。なお、本明細書において、口部10の肉厚T1とは、周壁11の肉厚をいう。PCO‐1810の規格によると、口部10の最も薄肉の部分の肉厚T0は、1.385mmであるところ、本実施形態では、口部10の最も薄肉の部分の肉厚T1が、0.90〜1.30mmであることが好ましい。より好ましくは、1.00〜1.10mmである。肉厚T1が0.90mm未満では、口部10の強度が不足する場合がある。また、容器の密封性が不足する場合がある。肉厚T1が1.30mmを超えると、軽量化の効果が不十分となる場合がある。口部10を軽量化した一例としては、PCO‐1810の規格に準拠した口部では、内径D0が21.74mmで、肉厚T0が1.385mmであり、質量は、5.1gであるのに対して、本実施形態では、例えば、口部10の内径D1を、高さ方向の全領域にわたって、22.50mmとし、肉厚T1を1.0mmとすることで、質量が4.36gとなり、約14.5%削減することができる。また、口部10の内径D1を、高さ方向の全領域にわたって、22.71mmとし、肉厚T1を0.9mmとすることで、質量が4.16gとなり、約18.4%削減することができる。
【0021】
口部10の内径D1を規格の内径D0よりも大きくする領域は、特に限定されず、例えば、高さ方向の一部の領域としてもよい。より好ましくは、図2に示すように、口部10の内径D1が、高さ方向の全領域にわたって、ISBTで規定する内径D0よりも大きい形態である。口部10をより軽量化することができる。また、図2には、高さ方向の全領域にわたって、ほぼ同一の内径D1である形態を示したが、成形時の離型性の点から、口部10の上端10aを最大内径とし、下方に向かうにつれて、徐々に内径を小さくするテーパー状とすることが好ましい。
【0022】
図3は、図1のA−A断面図の変形形態である。図3に示すように、本実施形態では、首部220のうち、ネックサポートリング14の直下に連接するストレート部221の内径D2が、規格の内径D0よりも大きいことが好ましい。ストレート部221では、ブロー成形時の温度が口部10の温度と差が小さいため、薄肉化させにくい。しかし、予め、この部分を薄肉化したプリフォーム200としておくことで、プリフォーム200を更に軽量化することができる。ストレート部221の内径D2は、成形時の離型性の点から、口部10の内径D1以下であることが好ましい。首部220の最も薄肉の部分の肉厚T2は、0.90〜1.30mmであることが好ましい。より好ましくは、1.00〜1.10mmである。図9は、口部及び首部を薄肉化したプリフォームの一例を示す断面図である。図9に示すように、さらに、ストレート部221より下方部分222においても、ストレート部の内径D2から有底筒状部60の内径D3へ内径を徐々に小さくして、テーパー状に薄肉化するか、又は、図示しないが、下方部分222の内径を、ストレート部221の内径D2と同一径となるようにして、薄肉化することが好ましい。
【0023】
次に、プリフォーム200の成形方法について説明する。プリフォーム200は、熱可塑性樹脂を主原料として、射出成形法、PCM成形法(Preform Compression Molding)などの成形法で、成形される。プリフォーム200の主原料となる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィンコポリマー樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン‐1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル‐スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂である。この中で、PETがより好ましい。
【0024】
ここでは、図4を用いて、成形法が射出成形法である場合について、説明する。図4は、プリフォーム200を射出成形するための金型900の一例を示す断面図であり、(a)は金型が開いている状態、(b)は射出成形時の状態を示す。プリフォーム200を射出成形するための金型900は、図4(a)に示すように、プリフォーム200の内側面を成形するコア金型910と、プリフォーム200の口部10の外側面を成形する口部形成用金型920と、プリフォーム200の有底筒状部60の外側面を成形するキャビティ金型930とを備える。
【0025】
コア金型910は、円柱状で、先端部910aを半円球状としたコア部911を有する。コア部911は、ISBTの規格に準拠した口部を形成するためのコア部よりも、口部10を薄肉化する分だけ、太く形成する。口部形成用金型920は、口部10の外側面の形状に対応した凹部921を有する。キャビティ金型930は、有底筒状部60の外側面の形状に対応した凹部931と樹脂を充填するためのゲート932とを有する。口部形成用金型920とキャビティ金型930とは、ISBTの規格に準拠した口部を形成するための金型と共通である。このように、コア金型910だけを改造又は交換すればよいため、既存の金型をほとんど改造・変更することなく使用できる。結果として、コストダウンにつながる。
【0026】
コア金型910と、口部形成用金型920と、キャビティ金型930とを型締め後、図2(b)に示すように、ゲート932から、プリフォーム200の形状を有するキャビティ940内に、溶融状態の熱可塑性樹脂を含有する材料を射出してプリフォーム200を成形する。プリフォーム200が所定の温度まで冷却したところで、金型900を開いて、プリフォーム200を取り出す。
【0027】
ISBTの規格に準拠した従来のプリフォームでは、離型時に、口部の冷却が不十分で、口部が変形する場合があった。これに対して、本実施形態に係るプリフォーム200では、従来のプリフォームよりも口部10を薄肉化したため、冷却が早くなり、離型時の口部10の変形を少なくし、寸法精度をより向上することができる。
【0028】
寸法精度は、例えば、真円度で評価することができる。図5は、図1のB−B破断面図である。本実施形態に係るプリフォーム200では、1ロットから無作為に20個抜き取ったとき、口部10の数1で求める真円度(R)が、全て50μm以下である形態を包含する。より好ましくは、1ロットから無作為に20個抜き取ったとき、口部10の数1で求める真円度(R)が、全て30μm以下である。
(数1)真円度(R)=Dmax−Dmin
数1において、Dmaxは、口部10の上端10aにおける内径D1の最大値であり、Dminは、口部10の上端10aにおける内径D1の最小値である。
【0029】
1ロットとは、プリフォーム200において、プリフォーム200の成形とプラスチックボトルのブロー成形とを同一設備で一連の工程で行う場合には、例えば、同一条件で連続して生産した一群のプリフォーム200を示す。そして、連続的に抜き取った20本のプリフォーム200について、真円度を測定する。また、プリフォーム200の成形とプラスチックボトルのブロー成形とを別の設備で行う場合には、1ロットは、例えば、1包装単位を示す。そして、1つの包装単位から無作為に抜き取った20本のプリフォーム200について、真円度を測定する。
【0030】
プリフォーム200は、二軸延伸ブロー成形などのブロー成形法によって、プラスチックボトルとなる。図6は、本実施形態に係るプラスチック成形体としてのプラスチックボトルの一例を示す正面図である。プラスチックボトル100は、図6に示すように、上方から順に、口部10と、首部20と、肩部30と、胴部40と、底部50とを備える。ブロー成形において、プリフォーム200の口部10は、未延伸のまま、変形せずに、プラスチックボトル100の口部10となる。すなわち、プラスチックボトル100の口部10は、その形状及び寸法を、本実施形態に係るプリフォーム200の口部10と同じくする。よって、ここでは、共通する点については説明を省略する。また、当然に、本実施形態に係るプラスチックボトル100では、プリフォーム200と同様に、口部の寸法精度が高く、1ロットから無作為に20個抜き取ったとき、口部10の数1で求める真円度(R)が、全て50μm以下である形態を包含する。プラスチックボトル100において、1ロットは、例えば、1ケースである。なお、1ケースが、20本未満である場合は、合計本数が、20本以上になるように、ケースを複数個用意し、その中から無作為に20本抜き取ることとする。具体例としては、1ケースが、6本の場合には、4ケース用意して、合計24本の中から、無作為に20本抜き取る。
【0031】
首部20は、プリフォーム200の首部220をブロー成形した部分である。プリフォーム200の首部220のうち、ストレート部221は、ブロー成形において、熱が伝わりにくいため、低延伸の状態で、口部10とほぼ同じ外径で連接するストレート部21となる。なお、首部20の形状は、細長形状としてもよい。首部20、肩部30、胴部40及び底部50は、プリフォーム200の有底筒状部60をブロー成形した部分である。肩部30は、円錐台筒形状を有し、首部20と胴部40とをつなげる部分である。胴部40は、略円筒形状を有し、主として、使用者が把持する部分である。底部50は、ボトルの底面となる部分である。なお、本実施形態は、肩部30、胴部40及び底部50の形状は、図6に示した形状に限定されない。
【0032】
図7は、図6のプラスチックボトルの口部をキャップで閉じた状態を示す部分拡大断面図である。キャップ70は、図7に示すように、円盤状の天板71と天板71の外周縁から下方に延設された円筒部72とを備える。円筒部72の内周面には、口部10の雄ねじ部12に螺合する雌ねじ部73が形成されている。また、天板71には、円筒部72の内周面側から順に、アウターリング74と、コンタクトリング75と、インナーリング76とが、突出して形成されている。キャップ70が、口部10に螺着されると、アウターリング74は、口部10の周壁11の外側に当接し、コンタクトリング75は、口部10の周壁11の天面に当接し、インナーリング76は、口部10の周壁11の内側に当接して、密封状態を形成する。
【0033】
図7において、PCO‐1810で規定された周壁の内周面S0及びPCO‐1810で規定された口部に対応した従来のキャップのインナーリングU0を点線で示した。本実施形態に係るプラスチックボトル100の口部10に対応するキャップ70では、インナーリング76を、口部10を薄肉化した分だけ、円筒部72に近接する方向に移動する。他の部分は、ISBTの規格に準拠した口部に対応するキャップと共通である。このように、インナーリング76の位置だけを変更すればよいため、既存のキャップを大きく変更することなく、密封性を保持することができる。なお、口部10の肉厚T1が、1.2mm以上のときは、インナーリング76の位置を変更しなくてもよい。
【0034】
ここまで、PCO‐1810に準拠した外形を有するプラスチックボトル100及びプリフォーム200を例にとって説明してきたが、本発明は、PCO‐1810に限定されず、他の規定に準拠した口部を有するプラスチックボトル及びプリフォームについても、適用可能である。図8は、口部の別の形態例を示す部分拡大断面図である。図8に示す口部310は、口部310の外形(雄ねじ部312、ビードリング313及びネックサポートリング314の形状及び寸法)を、ISBTの国際規格のうち、PCO‐1881の規格と同一にした以外は、図1〜図7に示す口部10と共通の構造を有する。すなわち、口部310の上端310aの内径D1は、PCO‐1810で規定された内径D0よりも大きい。さらに、口部310の内径D1を規格の内径D0よりも大きくする領域は、特に限定されず、高さ方向の一部の領域であるか、若しくは全領域であるか、又は図8に示すように、首部320のストレート部321にわたって、内径D1、D2をD0よりも大きくした形態としてもよい。さらに、ストレート部321より下方部分322においても、ストレート部321の内径D2と同一径となるように薄肉化することが好ましい。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0036】
(コントロール1)
PCO‐1810の規格に準拠した口部を有するプラスチックボトルを成形した。すなわち、図9において、S0で示す内表面を有するように、D0を21.7mmとなるように、図4に示す金型900のコア部911の太さを設計して、プリフォームを射出成形し、このプリフォームを、ブロー成形してプラスチックボトルを成形した。1ロットは、50本とした。
【0037】
(実施例1)
図9において、D1が22.1mmになるように、図4に示す金型のコア部911の太さを変更した以外は、コントロール1と同様にして、プラスチックボトルを成形した。
【0038】
(実施例2)
図9において、D1が22.5mmとなるように、図4に示す金型のコア部911の太さを変更した以外は、コントロール1と同様にして、プラスチックボトルを成形した。
【0039】
(プリフォームの質量)
コントロール1、実施例1及び実施例2のプリフォームを無作為に1本抜き取り、質量を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
(口部の質量)
コントロール1、実施例1及び実施例2のプラスチックボトルについて、無作為に1本を抜き取り、ネックサポートリングの直下で切断して、口部の質量を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
(真円度)
コントロール1、実施例1及び実施例2のプラスチックボトルを、1ロットから無作為に20本抜き取り、口部の内径D1の最大値Dmax及び最小値Dminを測定し、数1から真円度(R)を求めた。結果を表1及び図10に示す。図10は、コントロール1、実施例1及び実施例2の口部の真円度を測定した結果を示すグラフである。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示すとおり、実施例1及び実施例2のプリフォームは、口部及び首部を薄肉化することで、コントロール1のプリフォームよりも軽量化することができた。実施例2のプリフォームとコントロール1のプリフォームとを比較すると、樹脂の使用量を、プリフォーム1本当たり、約1g削減できることが確認できた。また、プラスチックボトルについても、プリフォームと同様に軽量化することができた。
【0044】
表1に示すとおり、実施例1及び実施例2の口部は、コントロール1の口部よりも軽量化することができた。実施例1の口部は、コントロール1の口部と比較して、6.9%軽量化することができた。実施例2の口部は、コントロール1の口部と比較して、14.5%軽量化することができた。実施例2は、実施例1よりも更なる軽量化を実現できた。
【0045】
表1及び図10に示すとおり、実施例1及び実施例2のプラスチックボトルは、全てのサンプルで、真円度(R)が50μm以下であった。実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2の方が、標準偏差(σ)が小さく、実施例1よりも寸法精度が高いことが確認できた。これは、実施例2が、実施例1よりも内径が大きいため、口部の肉厚が薄くなり、成形時により早く冷却したためと考えられる。一方、コントロール1は、20本中、12本の真円度(R)が50μmを超えていた。さらに、標準偏差(σ)が、実施例1及び実施例2よりも大きかった。以上より、コントロール1は、実施例1及び実施例2と比較して、寸法の精度が劣ることが確認できた。
【符号の説明】
【0046】
10 口部
10a 口部の上端
11 周壁
11a 周壁の内周面
12 雄ねじ部
13 ビードリング
14 ネックサポートリング
20 首部
21 ストレート部
30 肩部
40 胴部
50 底部
60 有底筒状部
60a 有底筒状部の先端部
70 キャップ
71 天板
72 円筒部
73 雌ねじ部
74 アウターリング
75 コンタクトリング
76 インナーリング
100 プラスチックボトル
200、201 プリフォーム
220 首部
221 ストレート部
222 ストレート部より下方の部分
310 口部
310a 口部の上端
311 周壁
312 雄ねじ部
313 ビードリング
314 ネックサポートリング
320 首部
321 ストレート部
322 ストレート部より下方の部分
900 金型
910 コア金型
910a コア金型の先端部
911 コア部
920 口部形成用金型
921 凹部
930 キャビティ金型
931 凹部
932 ゲート
940 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネックサポートリングが下端に設けられた口部と前記ネックサポートリングの直下に連接する首部とを備えるプラスチック成形体において、
該プラスチック成形体が、プリフォーム又はプラスチックボトルであり、
前記口部の上端における内径が、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists)で規定するフィニッシュサイズ28mmの規格の内径よりも大きいことを特徴とするプラスチック成形体。
【請求項2】
前記口部の最も薄肉の部分の肉厚が、0.90〜1.30mmであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形体。
【請求項3】
前記口部の内径が、高さ方向の全領域にわたって、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists)で規定するフィニッシュサイズ28mmの規格の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック成形体。
【請求項4】
前記首部のうち、前記ネックサポートリングの直下に連接するストレート部の内径が、国際飲料技術者協会(International Society of Beverage Technologists)で規定するフィニッシュサイズ28mmの規格の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のプラスチック成形体。
【請求項5】
1ロットから無作為に20個抜き取ったとき、前記口部の数1で求める真円度(R)が、全て50μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のプラスチック成形体。
(数1)真円度(R)=Dmax−Dmin
数1において、Dmaxは、前記口部の上端における内径の最大値であり、Dminは、前記口部の上端における内径の最小値である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−254819(P2012−254819A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130104(P2011−130104)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】