プラズマによる酸化を用いた未燃焼メタンの処理方法
【課題】混合ガスに残留するメタンの処理方法の提供。
【解決手段】200℃〜500℃の範囲にある温度を有し、少なくとも、50ppm〜2500ppmの範囲にある濃度のメタンと、体積にして0.5%〜12%の範囲にある濃度の酸素とを含む混合ガス中の残留メタンを処理する方法。プラズマ反応器10の内部電極16と外部電極12との間に高電圧の電気信号を印加することによりプラズマ反応器10内に発生させた、15J/L〜100J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有するプラズマによって、残留メタンが処理される。外部電極12は、その形状が円筒状であり、内部電極16を囲んでいる。前記電極から選ばれる少なくとも1つが、混合ガス中に誘電体バリア放電を発生させ、かつ残留メタンの一部を一酸化炭素に変換するために、誘電体材料により被覆されている。
【解決手段】200℃〜500℃の範囲にある温度を有し、少なくとも、50ppm〜2500ppmの範囲にある濃度のメタンと、体積にして0.5%〜12%の範囲にある濃度の酸素とを含む混合ガス中の残留メタンを処理する方法。プラズマ反応器10の内部電極16と外部電極12との間に高電圧の電気信号を印加することによりプラズマ反応器10内に発生させた、15J/L〜100J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有するプラズマによって、残留メタンが処理される。外部電極12は、その形状が円筒状であり、内部電極16を囲んでいる。前記電極から選ばれる少なくとも1つが、混合ガス中に誘電体バリア放電を発生させ、かつ残留メタンの一部を一酸化炭素に変換するために、誘電体材料により被覆されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理の分野に関し、より具体的には、あらゆる種類の液体燃料(ガソリン、軽油、重油など)または天然ガスの燃焼により生じる残留メタンの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
6種類の温室効果ガスが、地球温暖化に深刻な影響を及ぼすものとして、特定されている。二酸化炭素CO2、メタンCH4、亜酸化窒素N2O、ハイドロフルオロカーボンHFC、パーフルオロカーボンPFC、および六フッ化硫黄SF6である。特にメタンは、大気の温暖化に与える影響が同じ質量のCO2の23倍であることから、その削減効果が最も大きい温室効果ガスの一つとなっている。
【0003】
いわゆる固定式、定置式の燃焼源(ガスタービン、ボイラー)による天然ガスの燃焼は、液体燃料や石炭の燃焼に比べてクリーンである。それにもかかわらず、天然ガスの90〜95%を占める主成分であるメタンの燃焼が不完全となることがある。このため、これら定置式のガス燃焼源の環境的な利点を保つためには、メタン排出量の低減が不可欠である。
【0004】
現在、ガスエンジンからの未燃焼メタンの低減に用いられる唯一の技術は、触媒である。エンジンの運転方法に応じて、酸化型触媒(稀薄燃焼用)または三元触媒(ストイキ燃焼用)が用いられる。
【0005】
稀薄混合気の燃焼では、主に低い排気温による影響を受ける。即ち、触媒(パラジウム系)に非常に多量の貴金属が必要であり、十分な活性を得るためには、その体積を大きくする必要がある。このため、触媒コンバータが嵩高く、高価となり、かつ、残留硫黄によって急速に失活する。
【0006】
ストイキ燃焼では、触媒をより高温で用いることができる。これにより、触媒の活性が向上し、また、硫黄に対する感受性が非常に高いパラジウムの代わりに白金を用いることができるため、硫黄による被毒を低減できる。一方、触媒が非常に高い温度に晒され、大きく熱失活することがある。さらに、ストイキ運転は、稀薄混合気による運転に比べて、その効率が15%から20%低いため、特に高出力運転時には、あまり行われなくなってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明では、ボイラー、エンジンなどのあらゆる種類の燃焼源、特に、予混合圧縮自己着火燃焼(HCCI)エンジンやガスエンジンにおいて、未燃焼メタンを削減する、従来の方法の代わりとなる方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、混合ガスに残留するメタンの処理方法によって達成される。当該方法は、前記混合ガスをプラズマ反応器に導入する工程と、前記プラズマ反応器内にプラズマを発生させる工程とを含み、前記プラズマ反応器に導入される前記混合ガスは、200℃〜500℃の範囲にある温度を有し、少なくとも、50百万分率(ppm)〜2500ppmの範囲の濃度のメタンと、体積にして0.5%〜12%の範囲にある濃度の酸素とを含み、前記プラズマを発生させる工程の間、前記プラズマ反応器の内部電極と外部電極との間に高電圧の電気信号を印加することにより、15ジュール毎リットル(J/L)〜100J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有するプラズマを発生させ、前記外部電極は、その形状が円筒状であり、かつ前記内部電極を囲んでおり、前記電極から選ばれる少なくとも1つが、前記混合ガス中に誘電体バリア放電を発生させ、かつ残留メタンの一部を一酸化炭素に変換するために、誘電体材料により被覆されていることを特徴とする。
【0009】
こうして、第一に、15J/L〜100J/Lの範囲にあるエネルギー密度の冷プラズマを用いた残留メタンの処理により、炭化水素を生成することなく、残留メタンを一酸化炭素に変換できて有利である。
【0010】
15J/L〜100J/Lの範囲のエネルギー密度は、50ppm〜2500ppmの範囲にある濃度のメタンと、体積にして0.5%〜12%の範囲にある濃度の酸素とを少なくとも含む混合ガスの処理に、特によく適している。
【0011】
第二に、プラズマ反応器の一方または他方の電極が誘電体で被覆されていることにより、プラズマ反応器内の混合ガスに誘電体バリア放電を発生させることができる。このことは、プラズマを流れる電流が制限され、大きな熱の移動なしに非常に高エネルギーの電子が得られるストリーマを実現できる利点を有する。
【0012】
また有利なことに、プラズマ反応器の容積に比べて、個々のストリーマの体積が非常に小さいままであるにもかかわらず、反応器内に含まれる種の大部分を処理できる。
【0013】
本発明の一形態では、プラズマは、36J/L〜58J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有する。
【0014】
このエネルギー密度の範囲は、高温下におけるNOXの生成のような寄生反応を抑制するために、有利に選ばれる。即ち、処理温度(例えば475℃)においてプラズマのエネルギー密度を36J/L〜58J/Lの範囲にすることにより、NOXの望ましくない生成とメタン変換との間で良いバランスを得ることができる。
【0015】
本発明の一形態では、プラズマ反応器からの混合ガスは、引き続き、残留する混合ガスを二酸化炭素に変換する触媒を備えた触媒装置に導入される。
【0016】
本発明の別の形態では、上記触媒はプラズマ反応器内に配置される。
【0017】
このように、冷プラズマと残留メタンの触媒酸化とを組み合わせることにより、混合ガスを、処理のために、その本来の温度以上に加熱しなくてもよい。
【0018】
本発明のまた別の形態では、上記触媒は、アルミナもしくはシリカ型の酸化物、または両者の混合物である。
【0019】
本発明のまた別の形態では、上記触媒は、以下の金属:重量にして0.1%〜1%のPtもしくは重量にして0.1%〜2%のPd、または両者の混合物:を基にした触媒から選ばれる。
【0020】
本発明のまた別の形態では、混合ガスが、体積にして2%〜15%の範囲にある濃度の水をさらに含む。
【0021】
水が触媒に対する阻害効果を有する従来の方法とは異なり、本発明における水の存在は、全体的な酸化反応を促進させる効果を有する。このため、水の存在により、触媒を併用したプラズマによるメタンの変換が促進される。特に、気体または液体状の燃料の燃焼により生成した水からは、OH・のような高い活性を有するラジカルが生成する。これは、触媒装置または触媒を備えるプラズマ反応器の排出口でのメタンの変換効率を増大させる効果を有する。
【0022】
また本発明は、天然ガスまたは液体燃料の燃焼からの、あるいは定置型または移動型の例えばエンジンやボイラーにより構成される燃焼源からの、混合ガスの残留メタンを処理するための上記方法の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の特徴および利点は、非限定的に、かつ添付の図面を参照してなされた、以下の記載に、さらによく表れている。
【0024】
図1は、未燃焼メタンを処理するための装置であって、例えば、ガスボイラーなどの定置型エンジンからの排出口に配置するよう設計された一つの装置を示す概略図である。
【0025】
この装置は、処理する残留メタンを含むエンジンからの混合ガスに対して、誘電体バリア放電(DBD)が印加されるプラズマ反応器10を必要不可欠に含んでいる。DBD型の放電は、誘電体(ガラス、樹脂、セラミクスなど)に覆われた少なくとも1つの電極を備えるという点から、従来の直接放電とは異なる。この構成により、プラズマを流れる電流が制限される。全てのDBD系において、「ストリーマ」として知られる無数の糸状の微小放電により、プラズマが形成される。ストリーマは、150μm程度の見かけの直径を有し、ランダムに、かつ反応器の軸に垂直に、分布する。化学的用途にDBDを用いる大きな利点は、大きな熱の移動を伴うことなく非常に高いエネルギーの電子を供給できる、というストリーマ本来の性質に直接的に因っている。さらに、たとえ個々のストリーマが占める体積が反応器の容積に比べて非常に小さいままであっても、残留メタンと、その誘導種の大部分、特にホルムアルデヒド、とを処理することができる。
【0026】
使用されるプラズマ反応器10は、例えば真鍮の格子から構成され、その内面が誘電体14によって覆われている円筒状の外部電極12と、外部電極12の軸に設置されたワイヤー形状の内部電極16と、を備えるワイヤー/シリンダー型が好ましい。電極の長さは調整可能であり、これにより、プラズマ反応器10の体積が決定される。これら2つの電極12、16は、高電位差(高電圧)発生器18に接続されており、周波数の制御により、15J/L〜100J/Lの範囲にある所定のエネルギー密度を示すパルス電気放電を上記2つの電極間に発生させる。
【0027】
プラズマ反応器10の下流には、プラズマ反応器10における前処理の結果得られた残留混合物Mrを、触媒的に処理するための触媒を備えた、従来の構造の触媒装置20が配置されている。触媒は、重量にして0.1%〜1%の範囲にあるPtの含有率、または0.1%〜2%の範囲のPdの含有率を有する、Pt/Al2O3型またはPd/Al2O3型が好ましい。しかし、Rh、Au、またはAgなどのその他の金属、あるいはこれら金属の組み合わせに基づいた、これら金属の含有率が重量にして0.1%〜2%の範囲にある触媒を検討してもよい。
【0028】
図1の装置において実施される処理方法は以下のとおりである。定置型エンジンからの混合ガスMiが反応器10に導入される。混合ガスMiは、200℃〜500℃の範囲の温度にあり、50ppm〜2500ppmの範囲にある濃度の未燃焼メタンと、体積にして0.5%〜12%を構成する酸素とを含む。高電圧発生器18によって反応器10の2つの電極16、12間に生じた電気的な放電の作用により、混合ガスはプラズマに変換される。
【0029】
図2には、1000ppmの濃度のCH4および80J/Lのエネルギー密度において、温度が475℃のときに、プラズマ効果によりメタンの80%が変換されることが示されている。混合ガスMiにおけるCO2の任意の存在は(示された例では体積にして8%)、低温(200℃)で始まるメタンの変換に何の効果も及ぼさない。上記反応による主生成物は一酸化炭素COであり、COの形成量はCH4の変換量よりも多い。この過剰のCOは、CO2が存在する場合、プラズマによってCO2がCOに変換されて生じる。このように、気相においてCO2はCO・およびO・となり、さらにCOとなる。反応器10からの排出口において、残留混合物Mrを触媒装置20に導入して、当初の未燃焼メタンが実用上完全に二酸化炭素に変換された混合物Moを触媒装置20から排出できる。
【0030】
以下、実施した試験の運転条件を記載する。
【0031】
一形態として、プラズマ反応器10と触媒装置20とを一体化した。即ち、上記反応を、触媒が配置されたプラズマ反応器10中、大気圧で進行させた。処理する混合ガスは反応器の内部を通過させた。ガスの流速は250ミリリットル毎分(mL/分)に設定した。触媒は焼結片上に配置し、その量は、選択したVVH値(排気の体積/触媒の体積/時間)に拠る。触媒活性を、200℃〜500℃で、連続する温度ステージで測定した。それぞれのステージでの活性は、約15分(min)測定した。
【0032】
プラズマ反応器10の外部電極12は、非多孔質の焼結体を備える水晶のチューブとし、その内径は12ミリメートル(mm)、厚さは1mmであった。内部電極16は、直径0.9mmのタングステンロッドとした。これら電極の長さは15センチメートル(cm)とした。電極間の距離は5.5mmとした。高電圧発生器18により、約20kVの電圧および最大200Hzの周波数のパルスを供給して、5J/L〜100J/Lの範囲の望ましいエネルギー密度を有するプラズマを発生させた。
【0033】
反応器からの排出口に配置した、熱伝導検知器付きのマイクロクロマトグラフ(例えば、アギレントG2890Aモデル)を、様々な測定結果を得るために用いた。この装置により、特に残留メタンを検知できる。生成する可能性があるCxYYOZおよびR−NOXは、ガスクロマトグラフ(例えば、アギレント6890Nおよび5973N)により検出できる。CO2、N2O、NO、およびNOXの生成は、特定の検知器(例えば、ジーメンスウルトラマット6EおよびジーメンスCLD700AL)により検出できる。
【0034】
以下に示す様々な実施例は、次の組成を有する処理用混合物に対して行った。
CH4: 1000ppm
NO: 150ppm
O2: 7体積%
CO2: 8体積%
H2O: 3体積%(含まれている場合)
【0035】
この組成により、本発明の処理方法に必要不可欠なパラメータを見積もることができる。しかし、これらの実施例は本質的に限定して考慮すべきではなく、得られた結果は、組成が以下の範囲にある処理用混合ガスに広く有効に適用できる。
CH4: 50〜2500ppm
NO: 0〜4000ppm
O2: 体積にして0.5%〜12%
CO2: 体積にして0%〜25%
H2O: 体積にして2%〜15%
【0036】
(実施例1)
−メタン変換率に対するエネルギー密度の効果−
表1に示すように、プラズマのエネルギー密度はメタン変換率に影響を有する。
【0037】
【表1】
【0038】
これに加えて、375℃から、プラズマによってNO2の形でNOXが生成し(図3)、エネルギー密度が大きくなるほど、より多くのNOXが生成した。CO2が含まれない場合においても、NOXの生成は約375℃で始まった。NOXの生成およびメタン変換は、上記密度が36J/Lおよび58J/Lのときに、最良のバランスが得られた。なお、曲線はオフセットを示すが、これは単に、反応混合物中に150ppmのNOXが元々存在する結果である。
【0039】
(実施例2)
−メタン変換率に対する水の効果−
触媒に対するよく知られた阻害効果とは異なり、表2に示すように、水は、触媒の存在下でのプラズマによるメタン変換を促進させる効果を有していた。
【0040】
【表2】
【0041】
図4A、4Bに、温度を250℃から500℃の範囲とし、エネルギー密度を36J/Lおよび58J/Lとしたときに得られた結果を示す。
【0042】
(実施例3)
−アルミナ(Al2O3)の触媒効果−
調べたアルミナは、250平方メートル毎グラム(m2/g)の比表面積を有するγ−アルミナ(標準担体)とした。
【0043】
アルミナは、それ自体で、425℃からのメタン酸化に対して弱い活性を有することが知られている。この温度では、アルミナによってCOがCO2に酸化される。
【0044】
本発明では、表3に示すように、アルミナが触媒効果を示した。450℃では、プラズマ自体により得られたメタン変換率が39%に過ぎないのに対して、プラズマ+アルミナ系(D=36J/L、VVH=20000h-1)では、50%を超えるメタン変換率が得られた。また、変換率はエネルギー密度により大きく増加した(図5A、5B、5C)。プラズマのみの場合に比べて、プラズマとアルミナとの併用により、高温下でのNOXの生成量が大きく減少した(図6)。
【0045】
【表3】
【0046】
これと同様の結果(メタン変換率がエネルギー密度により増加し、NOXの生成量が減少する)がシリカによっても得られ、プラズマと触媒との併用により、プラズマのみの場合に比べて、よりよい変換率が得られた。アルミナ−シリカ混合物により、さらに良い結果となる。
【0047】
(実施例4)
−メタン変換率に対する、排気体積/触媒体積/時間(VVH)比の効果−
表4に示すように、20000h-1および40000h-1のときに得られた結果を比べると、VVHが小さいほどメタン変換率が増大し、一方でNOXの生成量が減少した。
【0048】
【表4】
【0049】
(実施例5)
−Pt(0.36重量%)/Al2O3触媒を加える効果−
Pt/Al2O3触媒は、金属相のシンタリングにより高温で失活する。このため、すべての試験を、触媒活性が安定した後に実施した。
【0050】
表5に示すように、プラズマのみの場合に比べてプラズマ/Pt/Al2O3系では、メタンを酸化する活性がかなり大きくなることがわかった。プラズマ/触媒系により、メタン変換率が非常に大きく増加した(図7A、7B)。また、プラズマのエネルギー密度に応じてメタン変換率が大きく増加した(図8)。
【0051】
プラズマ自体によって得られたメタン変換率のレベルと、プラズマ/触媒系によって得られたメタン変換率のレベルとは、相対的に近いことがわかる。しかし、プラズマ/触媒系では、唯一の反応生成物がCO2であり、部分酸化種やCOは検知されなかった。
【0052】
【表5】
【0053】
(実施例6)
−Pd(0.50重量%)/Al2O3触媒およびPd(1.66重量%)/Al2O3触媒を加える効果−
メタン酸化に対するPd/Al2O3触媒の活性は、比較的弱いことが知られている(Pd(1.66重量%)/Al2O3触媒において48%)。
【0054】
本発明では、表6に示すように、プラズマと触媒との併用により、メタン変換率が増加した。450℃において、プラズマ/Pd(1.66重量%)/Al2O3系(D=58J/L、VVH=40000h-1)では、64%のメタン変換率が得られた。
【0055】
【表6】
【0056】
定置型エンジンからの未燃焼メタンの排出を処理するための冷プラズマの使用は、200℃以上で有効であることがわかった。また水が、プラズマによる、触媒の存在下でのメタン変換を促進する効果を有することがわかった。さらに、CO処理のために、白金系触媒が既に定置型エンジンに導入されていることを考えれば、Pt/Al2O3触媒を用いた、プラズマと触媒との併用が特に利点を有することになる。このような状況を考慮すると、本発明の構成は、プラズマ発生器10を触媒装置20の上流側に加えることに単純化できる。他の実施形態では、プラズマ発生器からの混合物は、残留混合物を二酸化炭素に変換する触媒を備えた触媒装置に導入される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】未燃焼メタンを処理するための本発明の一つの装置を示す概略図である。
【図2】図1の装置におけるメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図3】様々なエネルギー密度におけるNOX濃度を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図4A】様々なエネルギー密度におけるメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図4B】様々なエネルギー密度におけるメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図5A】Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図5B】Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図5C】Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図6】様々なエネルギー密度における、Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのNOX濃度を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図7A】様々なエネルギー密度における、Pt/Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図7B】様々なエネルギー密度における、Pt/Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図8】様々なエネルギー密度における、Pt/Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときの、水の存在下でのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理の分野に関し、より具体的には、あらゆる種類の液体燃料(ガソリン、軽油、重油など)または天然ガスの燃焼により生じる残留メタンの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
6種類の温室効果ガスが、地球温暖化に深刻な影響を及ぼすものとして、特定されている。二酸化炭素CO2、メタンCH4、亜酸化窒素N2O、ハイドロフルオロカーボンHFC、パーフルオロカーボンPFC、および六フッ化硫黄SF6である。特にメタンは、大気の温暖化に与える影響が同じ質量のCO2の23倍であることから、その削減効果が最も大きい温室効果ガスの一つとなっている。
【0003】
いわゆる固定式、定置式の燃焼源(ガスタービン、ボイラー)による天然ガスの燃焼は、液体燃料や石炭の燃焼に比べてクリーンである。それにもかかわらず、天然ガスの90〜95%を占める主成分であるメタンの燃焼が不完全となることがある。このため、これら定置式のガス燃焼源の環境的な利点を保つためには、メタン排出量の低減が不可欠である。
【0004】
現在、ガスエンジンからの未燃焼メタンの低減に用いられる唯一の技術は、触媒である。エンジンの運転方法に応じて、酸化型触媒(稀薄燃焼用)または三元触媒(ストイキ燃焼用)が用いられる。
【0005】
稀薄混合気の燃焼では、主に低い排気温による影響を受ける。即ち、触媒(パラジウム系)に非常に多量の貴金属が必要であり、十分な活性を得るためには、その体積を大きくする必要がある。このため、触媒コンバータが嵩高く、高価となり、かつ、残留硫黄によって急速に失活する。
【0006】
ストイキ燃焼では、触媒をより高温で用いることができる。これにより、触媒の活性が向上し、また、硫黄に対する感受性が非常に高いパラジウムの代わりに白金を用いることができるため、硫黄による被毒を低減できる。一方、触媒が非常に高い温度に晒され、大きく熱失活することがある。さらに、ストイキ運転は、稀薄混合気による運転に比べて、その効率が15%から20%低いため、特に高出力運転時には、あまり行われなくなってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明では、ボイラー、エンジンなどのあらゆる種類の燃焼源、特に、予混合圧縮自己着火燃焼(HCCI)エンジンやガスエンジンにおいて、未燃焼メタンを削減する、従来の方法の代わりとなる方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、混合ガスに残留するメタンの処理方法によって達成される。当該方法は、前記混合ガスをプラズマ反応器に導入する工程と、前記プラズマ反応器内にプラズマを発生させる工程とを含み、前記プラズマ反応器に導入される前記混合ガスは、200℃〜500℃の範囲にある温度を有し、少なくとも、50百万分率(ppm)〜2500ppmの範囲の濃度のメタンと、体積にして0.5%〜12%の範囲にある濃度の酸素とを含み、前記プラズマを発生させる工程の間、前記プラズマ反応器の内部電極と外部電極との間に高電圧の電気信号を印加することにより、15ジュール毎リットル(J/L)〜100J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有するプラズマを発生させ、前記外部電極は、その形状が円筒状であり、かつ前記内部電極を囲んでおり、前記電極から選ばれる少なくとも1つが、前記混合ガス中に誘電体バリア放電を発生させ、かつ残留メタンの一部を一酸化炭素に変換するために、誘電体材料により被覆されていることを特徴とする。
【0009】
こうして、第一に、15J/L〜100J/Lの範囲にあるエネルギー密度の冷プラズマを用いた残留メタンの処理により、炭化水素を生成することなく、残留メタンを一酸化炭素に変換できて有利である。
【0010】
15J/L〜100J/Lの範囲のエネルギー密度は、50ppm〜2500ppmの範囲にある濃度のメタンと、体積にして0.5%〜12%の範囲にある濃度の酸素とを少なくとも含む混合ガスの処理に、特によく適している。
【0011】
第二に、プラズマ反応器の一方または他方の電極が誘電体で被覆されていることにより、プラズマ反応器内の混合ガスに誘電体バリア放電を発生させることができる。このことは、プラズマを流れる電流が制限され、大きな熱の移動なしに非常に高エネルギーの電子が得られるストリーマを実現できる利点を有する。
【0012】
また有利なことに、プラズマ反応器の容積に比べて、個々のストリーマの体積が非常に小さいままであるにもかかわらず、反応器内に含まれる種の大部分を処理できる。
【0013】
本発明の一形態では、プラズマは、36J/L〜58J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有する。
【0014】
このエネルギー密度の範囲は、高温下におけるNOXの生成のような寄生反応を抑制するために、有利に選ばれる。即ち、処理温度(例えば475℃)においてプラズマのエネルギー密度を36J/L〜58J/Lの範囲にすることにより、NOXの望ましくない生成とメタン変換との間で良いバランスを得ることができる。
【0015】
本発明の一形態では、プラズマ反応器からの混合ガスは、引き続き、残留する混合ガスを二酸化炭素に変換する触媒を備えた触媒装置に導入される。
【0016】
本発明の別の形態では、上記触媒はプラズマ反応器内に配置される。
【0017】
このように、冷プラズマと残留メタンの触媒酸化とを組み合わせることにより、混合ガスを、処理のために、その本来の温度以上に加熱しなくてもよい。
【0018】
本発明のまた別の形態では、上記触媒は、アルミナもしくはシリカ型の酸化物、または両者の混合物である。
【0019】
本発明のまた別の形態では、上記触媒は、以下の金属:重量にして0.1%〜1%のPtもしくは重量にして0.1%〜2%のPd、または両者の混合物:を基にした触媒から選ばれる。
【0020】
本発明のまた別の形態では、混合ガスが、体積にして2%〜15%の範囲にある濃度の水をさらに含む。
【0021】
水が触媒に対する阻害効果を有する従来の方法とは異なり、本発明における水の存在は、全体的な酸化反応を促進させる効果を有する。このため、水の存在により、触媒を併用したプラズマによるメタンの変換が促進される。特に、気体または液体状の燃料の燃焼により生成した水からは、OH・のような高い活性を有するラジカルが生成する。これは、触媒装置または触媒を備えるプラズマ反応器の排出口でのメタンの変換効率を増大させる効果を有する。
【0022】
また本発明は、天然ガスまたは液体燃料の燃焼からの、あるいは定置型または移動型の例えばエンジンやボイラーにより構成される燃焼源からの、混合ガスの残留メタンを処理するための上記方法の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の特徴および利点は、非限定的に、かつ添付の図面を参照してなされた、以下の記載に、さらによく表れている。
【0024】
図1は、未燃焼メタンを処理するための装置であって、例えば、ガスボイラーなどの定置型エンジンからの排出口に配置するよう設計された一つの装置を示す概略図である。
【0025】
この装置は、処理する残留メタンを含むエンジンからの混合ガスに対して、誘電体バリア放電(DBD)が印加されるプラズマ反応器10を必要不可欠に含んでいる。DBD型の放電は、誘電体(ガラス、樹脂、セラミクスなど)に覆われた少なくとも1つの電極を備えるという点から、従来の直接放電とは異なる。この構成により、プラズマを流れる電流が制限される。全てのDBD系において、「ストリーマ」として知られる無数の糸状の微小放電により、プラズマが形成される。ストリーマは、150μm程度の見かけの直径を有し、ランダムに、かつ反応器の軸に垂直に、分布する。化学的用途にDBDを用いる大きな利点は、大きな熱の移動を伴うことなく非常に高いエネルギーの電子を供給できる、というストリーマ本来の性質に直接的に因っている。さらに、たとえ個々のストリーマが占める体積が反応器の容積に比べて非常に小さいままであっても、残留メタンと、その誘導種の大部分、特にホルムアルデヒド、とを処理することができる。
【0026】
使用されるプラズマ反応器10は、例えば真鍮の格子から構成され、その内面が誘電体14によって覆われている円筒状の外部電極12と、外部電極12の軸に設置されたワイヤー形状の内部電極16と、を備えるワイヤー/シリンダー型が好ましい。電極の長さは調整可能であり、これにより、プラズマ反応器10の体積が決定される。これら2つの電極12、16は、高電位差(高電圧)発生器18に接続されており、周波数の制御により、15J/L〜100J/Lの範囲にある所定のエネルギー密度を示すパルス電気放電を上記2つの電極間に発生させる。
【0027】
プラズマ反応器10の下流には、プラズマ反応器10における前処理の結果得られた残留混合物Mrを、触媒的に処理するための触媒を備えた、従来の構造の触媒装置20が配置されている。触媒は、重量にして0.1%〜1%の範囲にあるPtの含有率、または0.1%〜2%の範囲のPdの含有率を有する、Pt/Al2O3型またはPd/Al2O3型が好ましい。しかし、Rh、Au、またはAgなどのその他の金属、あるいはこれら金属の組み合わせに基づいた、これら金属の含有率が重量にして0.1%〜2%の範囲にある触媒を検討してもよい。
【0028】
図1の装置において実施される処理方法は以下のとおりである。定置型エンジンからの混合ガスMiが反応器10に導入される。混合ガスMiは、200℃〜500℃の範囲の温度にあり、50ppm〜2500ppmの範囲にある濃度の未燃焼メタンと、体積にして0.5%〜12%を構成する酸素とを含む。高電圧発生器18によって反応器10の2つの電極16、12間に生じた電気的な放電の作用により、混合ガスはプラズマに変換される。
【0029】
図2には、1000ppmの濃度のCH4および80J/Lのエネルギー密度において、温度が475℃のときに、プラズマ効果によりメタンの80%が変換されることが示されている。混合ガスMiにおけるCO2の任意の存在は(示された例では体積にして8%)、低温(200℃)で始まるメタンの変換に何の効果も及ぼさない。上記反応による主生成物は一酸化炭素COであり、COの形成量はCH4の変換量よりも多い。この過剰のCOは、CO2が存在する場合、プラズマによってCO2がCOに変換されて生じる。このように、気相においてCO2はCO・およびO・となり、さらにCOとなる。反応器10からの排出口において、残留混合物Mrを触媒装置20に導入して、当初の未燃焼メタンが実用上完全に二酸化炭素に変換された混合物Moを触媒装置20から排出できる。
【0030】
以下、実施した試験の運転条件を記載する。
【0031】
一形態として、プラズマ反応器10と触媒装置20とを一体化した。即ち、上記反応を、触媒が配置されたプラズマ反応器10中、大気圧で進行させた。処理する混合ガスは反応器の内部を通過させた。ガスの流速は250ミリリットル毎分(mL/分)に設定した。触媒は焼結片上に配置し、その量は、選択したVVH値(排気の体積/触媒の体積/時間)に拠る。触媒活性を、200℃〜500℃で、連続する温度ステージで測定した。それぞれのステージでの活性は、約15分(min)測定した。
【0032】
プラズマ反応器10の外部電極12は、非多孔質の焼結体を備える水晶のチューブとし、その内径は12ミリメートル(mm)、厚さは1mmであった。内部電極16は、直径0.9mmのタングステンロッドとした。これら電極の長さは15センチメートル(cm)とした。電極間の距離は5.5mmとした。高電圧発生器18により、約20kVの電圧および最大200Hzの周波数のパルスを供給して、5J/L〜100J/Lの範囲の望ましいエネルギー密度を有するプラズマを発生させた。
【0033】
反応器からの排出口に配置した、熱伝導検知器付きのマイクロクロマトグラフ(例えば、アギレントG2890Aモデル)を、様々な測定結果を得るために用いた。この装置により、特に残留メタンを検知できる。生成する可能性があるCxYYOZおよびR−NOXは、ガスクロマトグラフ(例えば、アギレント6890Nおよび5973N)により検出できる。CO2、N2O、NO、およびNOXの生成は、特定の検知器(例えば、ジーメンスウルトラマット6EおよびジーメンスCLD700AL)により検出できる。
【0034】
以下に示す様々な実施例は、次の組成を有する処理用混合物に対して行った。
CH4: 1000ppm
NO: 150ppm
O2: 7体積%
CO2: 8体積%
H2O: 3体積%(含まれている場合)
【0035】
この組成により、本発明の処理方法に必要不可欠なパラメータを見積もることができる。しかし、これらの実施例は本質的に限定して考慮すべきではなく、得られた結果は、組成が以下の範囲にある処理用混合ガスに広く有効に適用できる。
CH4: 50〜2500ppm
NO: 0〜4000ppm
O2: 体積にして0.5%〜12%
CO2: 体積にして0%〜25%
H2O: 体積にして2%〜15%
【0036】
(実施例1)
−メタン変換率に対するエネルギー密度の効果−
表1に示すように、プラズマのエネルギー密度はメタン変換率に影響を有する。
【0037】
【表1】
【0038】
これに加えて、375℃から、プラズマによってNO2の形でNOXが生成し(図3)、エネルギー密度が大きくなるほど、より多くのNOXが生成した。CO2が含まれない場合においても、NOXの生成は約375℃で始まった。NOXの生成およびメタン変換は、上記密度が36J/Lおよび58J/Lのときに、最良のバランスが得られた。なお、曲線はオフセットを示すが、これは単に、反応混合物中に150ppmのNOXが元々存在する結果である。
【0039】
(実施例2)
−メタン変換率に対する水の効果−
触媒に対するよく知られた阻害効果とは異なり、表2に示すように、水は、触媒の存在下でのプラズマによるメタン変換を促進させる効果を有していた。
【0040】
【表2】
【0041】
図4A、4Bに、温度を250℃から500℃の範囲とし、エネルギー密度を36J/Lおよび58J/Lとしたときに得られた結果を示す。
【0042】
(実施例3)
−アルミナ(Al2O3)の触媒効果−
調べたアルミナは、250平方メートル毎グラム(m2/g)の比表面積を有するγ−アルミナ(標準担体)とした。
【0043】
アルミナは、それ自体で、425℃からのメタン酸化に対して弱い活性を有することが知られている。この温度では、アルミナによってCOがCO2に酸化される。
【0044】
本発明では、表3に示すように、アルミナが触媒効果を示した。450℃では、プラズマ自体により得られたメタン変換率が39%に過ぎないのに対して、プラズマ+アルミナ系(D=36J/L、VVH=20000h-1)では、50%を超えるメタン変換率が得られた。また、変換率はエネルギー密度により大きく増加した(図5A、5B、5C)。プラズマのみの場合に比べて、プラズマとアルミナとの併用により、高温下でのNOXの生成量が大きく減少した(図6)。
【0045】
【表3】
【0046】
これと同様の結果(メタン変換率がエネルギー密度により増加し、NOXの生成量が減少する)がシリカによっても得られ、プラズマと触媒との併用により、プラズマのみの場合に比べて、よりよい変換率が得られた。アルミナ−シリカ混合物により、さらに良い結果となる。
【0047】
(実施例4)
−メタン変換率に対する、排気体積/触媒体積/時間(VVH)比の効果−
表4に示すように、20000h-1および40000h-1のときに得られた結果を比べると、VVHが小さいほどメタン変換率が増大し、一方でNOXの生成量が減少した。
【0048】
【表4】
【0049】
(実施例5)
−Pt(0.36重量%)/Al2O3触媒を加える効果−
Pt/Al2O3触媒は、金属相のシンタリングにより高温で失活する。このため、すべての試験を、触媒活性が安定した後に実施した。
【0050】
表5に示すように、プラズマのみの場合に比べてプラズマ/Pt/Al2O3系では、メタンを酸化する活性がかなり大きくなることがわかった。プラズマ/触媒系により、メタン変換率が非常に大きく増加した(図7A、7B)。また、プラズマのエネルギー密度に応じてメタン変換率が大きく増加した(図8)。
【0051】
プラズマ自体によって得られたメタン変換率のレベルと、プラズマ/触媒系によって得られたメタン変換率のレベルとは、相対的に近いことがわかる。しかし、プラズマ/触媒系では、唯一の反応生成物がCO2であり、部分酸化種やCOは検知されなかった。
【0052】
【表5】
【0053】
(実施例6)
−Pd(0.50重量%)/Al2O3触媒およびPd(1.66重量%)/Al2O3触媒を加える効果−
メタン酸化に対するPd/Al2O3触媒の活性は、比較的弱いことが知られている(Pd(1.66重量%)/Al2O3触媒において48%)。
【0054】
本発明では、表6に示すように、プラズマと触媒との併用により、メタン変換率が増加した。450℃において、プラズマ/Pd(1.66重量%)/Al2O3系(D=58J/L、VVH=40000h-1)では、64%のメタン変換率が得られた。
【0055】
【表6】
【0056】
定置型エンジンからの未燃焼メタンの排出を処理するための冷プラズマの使用は、200℃以上で有効であることがわかった。また水が、プラズマによる、触媒の存在下でのメタン変換を促進する効果を有することがわかった。さらに、CO処理のために、白金系触媒が既に定置型エンジンに導入されていることを考えれば、Pt/Al2O3触媒を用いた、プラズマと触媒との併用が特に利点を有することになる。このような状況を考慮すると、本発明の構成は、プラズマ発生器10を触媒装置20の上流側に加えることに単純化できる。他の実施形態では、プラズマ発生器からの混合物は、残留混合物を二酸化炭素に変換する触媒を備えた触媒装置に導入される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】未燃焼メタンを処理するための本発明の一つの装置を示す概略図である。
【図2】図1の装置におけるメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図3】様々なエネルギー密度におけるNOX濃度を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図4A】様々なエネルギー密度におけるメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図4B】様々なエネルギー密度におけるメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図5A】Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図5B】Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図5C】Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図6】様々なエネルギー密度における、Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのNOX濃度を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図7A】様々なエネルギー密度における、Pt/Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図7B】様々なエネルギー密度における、Pt/Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図8】様々なエネルギー密度における、Pt/Al2O3触媒を加えたとき、または加えないときの、水の存在下でのメタン変換率を、温度の関数としてプロットしたグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガスに残留するメタンの処理方法であって、
前記混合ガスをプラズマ反応器(10)に導入する工程と、前記プラズマ反応器(10)内にプラズマを発生させる工程と、を含み、
前記プラズマ反応器(10)に導入される前記混合ガスは、200℃〜500℃の範囲にある温度を有し、少なくとも、50ppm〜2500ppmの範囲の濃度のメタンと、体積にして0.5%〜12%の範囲にある濃度の酸素と、を含み、
前記プラズマを発生させる工程の間、前記プラズマ反応器(10)の内部電極(16)と外部電極(12)との間に高電圧の電気信号を印加することにより、15J/L〜100J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有するプラズマを発生させ、
前記外部電極(12)は、その形状が円筒状であり、かつ前記内部電極(16)を囲んでおり、
前記電極から選ばれる少なくとも1つが、前記混合ガス中に誘電体バリア放電を発生させ、かつ残留メタンの一部を一酸化炭素に変換するために、誘電体材料により被覆されていることを特徴とする残留メタンの処理方法。
【請求項2】
前記プラズマが、36J/L〜58J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有することを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記プラズマ反応器(10)からの前記混合ガスを、続いて、
残留する前記混合ガスを二酸化炭素に変換する触媒を備えた触媒装置(20)に、導入することを特徴とする請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記触媒が、前記プラズマ反応器(10)内に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項5】
前記触媒が、アルミナもしくはシリカ型の酸化物、または両者の混合物であることを特徴とする請求項3または4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記触媒が、以下の金属:重量にして0.1%〜1%のPtもしくは重量にして0.1%〜2%のPd、または両者の混合物:を基にした触媒から選ばれることを特徴とする請求項3または4に記載の処理方法。
【請求項7】
前記混合ガスが、体積にして2%〜15%の範囲にある濃度の水をさらに含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項8】
前記混合ガスが、天然ガスもしくは液体燃料の燃焼により生じる、または、定置型もしくは移動型の燃焼源により生じることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の処理方法の使用。
【請求項9】
前記燃焼源がエンジンであることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記燃焼源がボイラーであることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項1】
混合ガスに残留するメタンの処理方法であって、
前記混合ガスをプラズマ反応器(10)に導入する工程と、前記プラズマ反応器(10)内にプラズマを発生させる工程と、を含み、
前記プラズマ反応器(10)に導入される前記混合ガスは、200℃〜500℃の範囲にある温度を有し、少なくとも、50ppm〜2500ppmの範囲の濃度のメタンと、体積にして0.5%〜12%の範囲にある濃度の酸素と、を含み、
前記プラズマを発生させる工程の間、前記プラズマ反応器(10)の内部電極(16)と外部電極(12)との間に高電圧の電気信号を印加することにより、15J/L〜100J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有するプラズマを発生させ、
前記外部電極(12)は、その形状が円筒状であり、かつ前記内部電極(16)を囲んでおり、
前記電極から選ばれる少なくとも1つが、前記混合ガス中に誘電体バリア放電を発生させ、かつ残留メタンの一部を一酸化炭素に変換するために、誘電体材料により被覆されていることを特徴とする残留メタンの処理方法。
【請求項2】
前記プラズマが、36J/L〜58J/Lの範囲にあるエネルギー密度を有することを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記プラズマ反応器(10)からの前記混合ガスを、続いて、
残留する前記混合ガスを二酸化炭素に変換する触媒を備えた触媒装置(20)に、導入することを特徴とする請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記触媒が、前記プラズマ反応器(10)内に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項5】
前記触媒が、アルミナもしくはシリカ型の酸化物、または両者の混合物であることを特徴とする請求項3または4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記触媒が、以下の金属:重量にして0.1%〜1%のPtもしくは重量にして0.1%〜2%のPd、または両者の混合物:を基にした触媒から選ばれることを特徴とする請求項3または4に記載の処理方法。
【請求項7】
前記混合ガスが、体積にして2%〜15%の範囲にある濃度の水をさらに含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項8】
前記混合ガスが、天然ガスもしくは液体燃料の燃焼により生じる、または、定置型もしくは移動型の燃焼源により生じることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の処理方法の使用。
【請求項9】
前記燃焼源がエンジンであることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記燃焼源がボイラーであることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公開番号】特開2008−168284(P2008−168284A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−281024(P2007−281024)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(592204130)ガーズ・ドゥ・フランス (7)
【氏名又は名称原語表記】GAZ DE FRANCE
【出願人】(505003159)ユニヴェルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シス) (6)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE (PARIS VI)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281024(P2007−281024)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(592204130)ガーズ・ドゥ・フランス (7)
【氏名又は名称原語表記】GAZ DE FRANCE
【出願人】(505003159)ユニヴェルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シス) (6)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE (PARIS VI)
【Fターム(参考)】
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