説明

プラズマディスプレイパネルのバス電極形成用材料とその利用

【課題】プラズマディスプレイパネル1のバス電極15の周囲に生じ得る黄変を抑制し得るバス電極(黒層)形成用材料ならびに該バス電極形成用材料によってバス電極15が形成されたプラズマディスプレイパネル1を提供すること。
【解決手段】本発明によって提供されるプラズマディスプレイパネル1のバス電極形成材料は、黒色無機顔料と、青色無機顔料とを含む。好ましくは、さらにAg又はAg主体の合金から成るAg系金属粉末を含む。本発明に係るバス電極形成用材料は、典型的にはペースト状に調製されて提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルのバス電極を形成するために使用される材料(組成物)であり、さらに該材料を使用して形成したバス電極を備えるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)は、前面パネルと背面パネルとの間に隔壁で仕切られた多数のセルが形成された構造を有し、該セルに封入された希ガスに電圧を印加することによりプラズマ放電が起こって紫外線が発生し、セル壁面に配置された蛍光体が発光して画像を表示し得るように構成されている。
このうち前面パネルは、パネル本体であるガラス(例えばソーダガラス)基板上に、硼珪酸ガラス等の低軟化点ガラスから成る誘電体層と、マグネシア等から成る保護層と、これら誘電体層及び保護層に覆われる複数対の表示電極とを備える。かかる表示電極は、典型的にはITO(Indium Tin Oxide)から成る透明電極と、該透明電極の導電性を補うために該透明電極上に設けられた膜状のバス電極とから構成されている。典型的には、バス電極は銀(Ag)又は銀を含む合金(Ag合金)によって構成されている。
【0003】
上記バス電極の典型例として、透明電極側に形成される下層とその上に積層される上層とから成る二層構造のバス電極が挙げられる。具体的には、上層は、導電性材料として銀粉末を含む導体形成用組成物(典型的にはペースト状組成物)を用いて形成されている。以下、かかる上層を白層と呼ぶ。他方、下層は、好ましくは導電性材料として銀粉末を含むほか、四三酸化コバルト(Co)等の黒色顔料を含む組成物(典型的にはペースト状組成物)により形成される。以下、かかる下層を黒層と呼ぶ。このような黒層を有する二層構造バス電極は、外光の反射を抑制して明度を低下させることによって画面のコントラストを向上させるため好ましい。
例えば、この種の二層構造バス電極が記載されている先行技術文献として、特許文献1が挙げられる。また、プラズマディスプレイパネルに関する他の先行技術として例えば特許文献2がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−339142号公報
【特許文献2】特開2005−19405号公報
【特許文献3】特開2005−235735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、銀を導電性成分とするバス電極を備えるプラズマディスプレイパネルの課題として、いわゆる黄変現象が挙げられる(例えば特許文献3参照)。黄変現象とは、バス電極に含まれる銀イオン(Ag)が周囲のガラス基板や誘電体層へ拡散し、さらに当該拡散部分に存在するアルカリ成分と反応することに伴って、当該拡散部分(即ちガラス基板や誘電体層)が黄色く着色する現象をいう。
かかる黄変が過度に生じると、白色表示時に色温度が低下するといったようなプラズマディスプレイパネルにおける画質の劣化を招く虞がある。また、黄変が過度に生じると、PDP自体が黄色っぽくみえることによりPDPの質感が低下する虞がある。
【0006】
そこで本発明は、プラズマディスプレイパネルにおいて黄変が発生した際の不具合(画質低下等)を解消すべく創出されたものであり、その目的は、黄変を抑制し得るバス電極形成用材料(組成物)を提供することである。また、他の目的は、本発明により提供されるバス電極形成用材料(組成物)を用いて形成されたバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく本発明によってプラズマディスプレイパネルのバス電極形成用材料(組成物)が提供される。即ち、ここで開示されるPDPのバス電極形成用材料は、顔料成分として黒色無機顔料と青色無機顔料とを含むことを特徴とする。
かかる構成のバス電極形成用材料は、顔料として黒色無機顔料を含有するため、上記二層構造バス電極における黒層を形成する材料として使用される。好ましくは、バス電極の導電性を向上(抵抗を低下)させるために導電性成分としてAg又はAg主体の合金から成るAg系金属粉末を含む。
ここで開示されるバス電極形成用材料では、黒色無機顔料のほかに青色無機顔料が配合されている。このことによって、バス電極からAgが拡散した際に発生し得る(視覚的に確認される)黄変を抑制することができる。
【0008】
即ち、青色と黄色とは互いに補色の関係にある。補色とは色相環において対向する位置にある色をいう。黄変時に視認される黄色に対して補色の関係となる青色無機顔料(典型的には紺色即ち青紫色の顔料)をバス電極の黒層に含ませることにより、Agの拡散によってバス電極周辺の部位(典型的には上記ガラス基板や誘電体層)に黄変が発生し得る状態が形成された際にも、黄変時に視覚的に確認される黄色と補色関係にある青色がバス電極部に存在することにより、その混色によって白色(無彩色)化が実現される。即ち、物理的な黄変(着色反応)が生じたとしても、その反応(着色)が黄変として視覚的に確認される度合いを著しく低下させることができる(即ち視覚上の黄変が抑制される)。
従って、本発明のバス電極形成用材料によると、視覚的に黄変が抑制され、プラズマディスプレイパネルの黄変による画質の劣化やPDP自体の質感低下を防止することができる。
【0009】
ここで開示されるバス電極形成用材料は、好ましくはさらに有機ビヒクルを含み、ペースト状に調製された材料(即ち、バス電極形成用導体ペースト)として提供される。
このようなペーストを使用することによって、従来のバス電極と同様、例えばスクリーン印刷あるいはフォトリソグラフィー等の採用により所望する線幅のバス電極(黒層)を形成(焼成)することができる。
【0010】
また、好ましい一態様のバス電極形成用材料では、黒色無機顔料と青色無機顔料の合計量に占める青色顔料の割合が40〜80質量%であることを特徴とする。
かかる構成のバス電極形成用材料では、黒色無機顔料の存在による上記コントラストの向上と、青色無機顔料の存在による黄変の抑制とを高い次元で両立することができる。
【0011】
また、好ましい他の一態様のバス電極形成用材料では、黒色無機顔料と青色無機顔料とが何れもコバルト系顔料であることを特徴とする。
コバルト系顔料、例えば黒色顔料としてのCoや青色顔料としてのコバルトブルー(アルミン酸コバルト)を採用することにより、顔料を含有していても焼結性に優れるバス電極形成用材料を提供することができる。従って、本構成のバス電極形成用材料(例えばバス電極形成用ペースト)を用いることによって導電性の高いバス電極(黒層)を形成することができる。
【0012】
また、本発明は他の側面として、ここで開示されるいずれかのバス電極形成用材料を用いてバス電極の黒層が形成されたことを特徴とするプラズマディスプレイパネルを提供する。即ち、本発明によって提供されるバス電極を備えるプラズマディスプレイパネルは、該バス電極が黒色無機顔料と青色無機顔料とを含む黒層を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、バス電極形成用材料の組成やバス電極の構成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばプラズマディスプレイパネルの構築プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
上述のように、ここで開示されるバス電極形成用材料は、視覚的な黄変の抑制を実現するべく黒色無機顔料と共に青色無期顔料を含有することで特徴付けられる材料(組成物)であり、他の成分については特に限定されない。目的に応じて、種々の成分を配合することができる。
好ましくは、バス電極の抵抗値を下げる(即ち導電性を向上させる)ために適当な導電性材料、典型的にはAg又はAg主体の合金(例えばAg−Pd、Ag−Pt等の白金族金属との合金、或いはAg−Cu等の低融点金属との合金)から成るAg系金属粉末を含み得る。膜厚が30μm以下(典型的には1〜10μm程度)であり幅が200μm以下(典型的には10〜100μm程度)の微細なライン状バス電極黒層を形成する場合、導電性材料(粉末)の平均粒径(例えばSEM観察に基づく)は、0.1〜10μm(典型的には0.5〜5μm)程度であることが、緻密な焼成膜(バス電極)を容易に形成し得るという観点から好ましい。平均粒径が上記以上であると緻密性が低下し、上記以下であると、分散性が悪くなり均質な焼成膜が得難くなる。
【0015】
黒色無機顔料としては、従来のこの種の用途に使用されているものを使用することができる。例えば四三酸化コバルト(Co)や酸化ルテニウム(RuO)、その他Fe−Cr−Mn系顔料、Cu−Cr−Mn系顔料等が好適例として挙げられる。特にコバルト系顔料(典型的には四三酸化コバルト)の使用が、バス電極の明度を抑えてコントラストを向上させるという黒色顔料添加の目的とバス電極自体の導電性向上という観点から好ましい。粉末状の顔料が好ましい。
【0016】
一方、青色無機顔料としては、本発明の目的に適合するもの、具体的には黄変の黄色と補色の関係にある色の顔料が好ましい。好適例として、コバルトブルー(アルミン酸コバルト:CoO・nAl)、セルリアンブルー(錫酸コバルト:CoO・nSnO)、プルシアンブルー(フェロシアン化鉄、等)が挙げられる。コバルトを含有するコバルト系顔料が好ましい。耐光性、耐酸性、耐アルカリ性が高く安定性のよいコバルトブルーが特に好ましい。コバルトブルー(アルミン酸コバルト)を使用する場合、コバルトとアルミナの組成比を変えることによって青色の濃淡を調節することができる。
なお、上記黒色顔料及び青色顔料は、比表面積が1〜20m/g程度(さらに好ましくは2〜15m/g程度)の微粉末形態であることが好ましい。
【0017】
黒色無機顔料と青色無機顔料の合計量に占める青色顔料の割合は、黄変の抑制と黒色顔料添加によるコントラスト向上とが共に高い次元で実現されるように設定される。黒色無機顔料及び青色無機顔料合計量に占める青色顔料の割合が40〜80質量%であることが好ましい。この範囲内であると、コントラスト向上を図りつつ黄変の抑制を図ることができる。具体的には黄色味の軽減を示す指標として色差計による測定値のうちb値(黄色度)を低下させ得る(好ましくは0〜1程度又は0以下)。青色顔料割合が40質量%よりも低すぎると十分な黄変抑制が実現できず、かかる割合が80質量%よりも高すぎると黒色度が不足(即ち明度が高い)してコントラストの向上が図れないため好ましくない。青色顔料割合が60質量%前後(例えば50〜70質量%)であることが特に好ましい。
【0018】
本発明のバス電極形成用材料は、上記のような黒色無機顔料(粉末)及び青色無機顔料(粉末)ならびに好ましくは導電性成分としてAg系金属粉末等の導電性粉末を含む混合粉末材料として提供され得る。
好ましい典型例では、電極形成時(焼結時)に無機バインダーとして機能し得るガラス粉末(ガラスフリット)をさらに含む。特に限定しないが、比表面積が概ね0.5〜10m2/gであるものが好ましく、平均粒径が2μm以下(特に1μm程度又はそれ以下)のものが特に好適である。比表面積がかかる下限よりも小さすぎる場合は、得られたバス電極(焼成膜)の抵抗値が増大するため好ましくない。また、比表面積が小さすぎる即ち平均粒子径が上記よりも大きすぎると印刷性が低下する(即ちバス電極のファインライン化が困難となる)ため好ましくない。他方、比表面積が大きすぎる即ち平均粒子径が上記よりも小さすぎると分散性が悪くなり均質な焼成膜が得られにくくなるため好ましくない。ガラス粉末としては、軟化点が概ね600℃以下の低軟化点ガラスが好ましい。例えばホウケイ酸鉛ガラス等のホウケイ酸系ガラスが好ましい。具体的には、PbO−SiO−B系ガラス、PbO−SiO−B−Al系ガラス、PbO−SiO−B−ZnO系ガラス、PbO−SiO−B−Al−ZnO系ガラス、Bi−SiO−B系ガラス、ZnO−SiO−B系ガラス、RO−ZnO−SiO−B系ガラス(ここでROはアルカリ金属酸化物)等が好適例として挙げられる。
【0019】
好ましくは、かかる混合粉末材料を含むペースト状組成物として本発明のバス電極形成用材料が提供される。この場合、バス電極形成用材料の主要構成要素たる黒色顔料粉末及び青色顔料粉末(好ましくはさらにAg系金属粉末等の導電性粉末)に加えてペーストを構成するための種々の副成分を加えることができる。
即ち、ここで開示されるペースト状に調製されたバス電極形成用材料(以下「バス電極(黒層)形成用ペースト」という。)は、上記粉末材料の他に、従来の導体ペーストと同様の物質を副成分として含有し得る。例えば、本発明のバス電極(黒層)形成用ペーストの必須的副成分として、上記粉末材料を分散させておく有機媒質(ビヒクル)が挙げられる。
【0020】
有機ビヒクルとしては、顔料、Ag粉末、ガラスフリット等の粉末材料を適切に分散させ得るものであればよく、従来の導体ペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ブチルカルビトール、ターピネオール等の高沸点有機溶媒又はこれらの二種以上の組み合わせを構成成分として含む有機ビヒクルを用いることができる。
【0021】
また、バス電極(黒層)形成用ペーストには、従来の導体ペーストと同様の種々の有機添加剤を必要に応じて含ませることができる。かかる有機添加剤の例としては、各種の有機バインダー(上記ビヒクルと重複してもよく、別途異なるバインダーを添加してもよい。)や、セラミック基材との密着性向上を目的としたシリコン系、チタネート系およびアルミニウム系等の各種カップリング剤等が挙げられる。上記有機バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール等をベースとするものが挙げられる。本発明の導体ペーストに良好な粘性および塗膜(基材に対する付着膜)形成能を付与し得るものが好適である。
【0022】
また、本発明のバス電極(黒層)形成用ペーストに光硬化性(感光性)を付与する場合には、種々の光重合性化合物および光重合開始剤を適宜添加する。
特に限定しないが、光重合性化合物の好適例として、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート等の単官能モノマー、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ノナエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ノナエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、テトラプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、トリプロピレングリコールモノメタクリレート、ブチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ノナエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、カルドエポキシジアクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
特に、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートが好ましい。これらは焼成時に分解及び揮散し易いため、形成したバス電極黒層の電気的特性を低下させ難い。
【0023】
また、特に限定しないが、光重合開始剤の好適例として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、3,3-ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4'-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、4-ジメチルアミノ安息香酸-2-イソアミル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(ο-エトキシカルボニル)オキシム、ο-ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート等が挙げられる。
【0024】
なお、上記の他にもバス電極(黒層)形成用ペーストには、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。これら添加剤は、従来の導体ペーストの調製に用いられ得るものであればよく、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0025】
バス電極(黒層)形成用ペーストは、従来の導体ペーストと同様、典型的には上述した各成分を混和することによって容易に調製することができる。即ち、例えば三本ロールミル或いはその他の混練機を用いて、各種粉末材料及び液体材料を所定の配合比で混合し、相互に練り合わせる(混練する)ことにより、目的の組成のバス電極(黒層)形成用ペーストを調製することができる。
特に限定するものではないが、典型的には、有機ビヒクルの含有率はペースト全体のほぼ40〜60質量%が適当である。特に40〜50質量%が好ましい。
また、無機顔料(黒色顔料及び青色顔料を含む)の含有率はペースト全体のほぼ5〜20質量%が適当である。特に7〜14質量%が好ましい。
また、ガラス粉末(ガラスフリット)の含有率はペースト全体のほぼ20〜40質量%が適当である。特に25〜35質量%が好ましい。
また、導電性粉末、例えばAg粉末のようなAg系金属粉末を添加する場合には、かかる導電性金属粉末の含有率はペースト全体のほぼ1〜20質量%が適当である。特に5〜15質量%が好ましい。
また、バス電極(黒層)形成用ペーストを感光性ペーストとして調製するために上記光重合性化合物及び光重合開始剤を含有させる場合には、光重合性化合物の含有率はペースト全体のほぼ0.1〜5質量%が適当であり、他方、光重合開始剤の含有率はペースト全体のほぼ0.2〜1.5質量%が適当である。
【0026】
なお、本発明のバス電極(黒層)形成用ペーストは、無機顔料として黒色顔料に加えて青色顔料を添加して構成されたことで特徴付けられる組成物であり、その使用方法やバス電極(黒層)の形成方法自体は、従来のバス電極形成用ペーストを用いる場合と同様でよく特に限定はない。
例えば、透明電極の表面に感光性のバス電極(黒層)形成用ペーストを塗布し、所定の厚さの未焼成塗膜(黒層)を形成する。乾燥後、その未焼成塗膜(黒層)上に適当なバス電極(白層)形成用ペースト(典型的には感光性Agペースト)を塗布し、所定の厚さの未焼成塗膜(白層)を形成する。乾燥後、得られた二層構造塗膜にフォトリソグラフィ法を実施する。即ち、所定の開口パターンのフォトマスクを介して所定強度(例えば300mJ/cm)の光を照射して露光処理を行い、次いで現像処理によって所定のパターンを形成する。これによって高精度にパターニングされた二層構造バス電極膜(未焼成膜)を形成することができる。或いは、上記のようにフォトリソグラフィ法によってパターニングする代わりに、形成しようとするバス電極に対応する所定のパターンにバス電極(黒層)形成用ペースト及びバス電極(白層)形成用ペーストを例えばスクリーン印刷法等により塗布してもよい。
続いて、上記未焼成膜を焼成する。焼成条件は従来のバス電極を焼成する場合と同様でよく特別な処理を必要としない。例えば、焼成温度(最高焼成温度)としては300℃〜1000℃(好ましくは300℃〜800℃、例えば400℃〜600℃)程度の温度を採用することができる。焼成雰囲気は特に限定されないが、酸素含有雰囲気中(例えば大気中)、常圧で焼成することが好ましい。
以上の一連の工程を行うことによって後述する図3に示すような黒層15Aと白層15Bの二層構造から成るバス電極15を前面ガラス基板12(典型的には図3に示すように透明電極14の表面)上に形成することができる。
【0027】
次に、本発明によって提供されるバス電極形成用材料(典型的にはペースト)を用いて形成されるバス電極(黒層)を備えるPDP用前面パネルおよび該前面パネルを備えるPDPの一態様につき、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネル(PDP)1を模式的に示す一部破断の斜視図である。図2は、前面パネル10側の構成を示す部分断面図である。また、図3は、バス電極の二層構造を模式的に示す部分断面図である。
なお、バス電極15の黒層15Aを形成する材料以外のPDP構成材料ならびにPDPの構築方法自体は従来と全く同様であるため詳細な説明は省略する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係るPDP1は、対向配置された前面パネル10と背面パネル20とから構成される。
図1及び図2に示すように、前面パネル10は、透明性の高い例えばソーダガラスから構成される前面ガラス基板12を備える。前面ガラス基板12の背面パネル20に対向する面側には、PDP1の表示電極を構成する透明電極(ITO電極)14と該透明電極14上に形成された本発明に係るバス電極15が形成されている。そして、透明電極14及びバス電極15を覆うようにして低融点ガラスから成る誘電体層16が形成され、該誘電体層16の表面にはマグネシア(MgO)から成る保護層18が形成されている。
図3に示すように、本実施形態に係るバス電極15は、透明電極14に接する黒層15Aとその黒層15Aの上面に形成された白層15Bとから構成されている。黒層15Aは、典型的には導電性材料としてAg系金属粉末を含むと共に、顔料として所定の配合比で黒色無機顔料(例えば四三酸化バリウム)と青色無機顔料(例えばコバルトブルー)とを含む。白層15Bは、導電性材料として典型的にはAg系金属粉末を含む。本実施形態では白層15Bは顔料を含まない。
【0029】
他方、図1に示すように、背面パネル20は、透明性の高い例えばソーダガラスから構成される背面ガラス基板22を備える。そして、背面ガラス基板22の前面パネル10に対向する面側には、酸化物層(例えばMgO層)24が形成されており、その表面にはAg粉末を導電性材料とするアドレス電極26が形成されている。かかる酸化物層24によってアドレス電極26を構成するAgとソーダガラスから成る背面ガラス基板22との反応を抑制することができる。
また酸化物層24の上面には、アドレス電極26を覆うようにして低融点ガラスから成る誘電体層28が形成されている。この誘電体層28の表面上には隔壁30が所定の間隔で形成されている。これにより、背面パネル20と前面パネル10との間に、隔壁30で仕切られた多数のセル40が形成されている。各セル40の内壁面には蛍光体層32が設けられている。蛍光体層32としては、従来公知の赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体等がそれぞれのセル40に所定の順序で配置されている。そして各セル40内には放電ガスが充填されている。放電ガスとしては従来公知のガスを使用すればよい。例えば、キセノンガス(Xe)、ネオンガス(Ne)、ヘリウム−キセノン(He−Xe)混合ガス、ネオン−キセノン(Ne−Xe)混合ガス等を用いることができる。
なお、上述したガラス基板12,22、隔壁30、蛍光体層32、透明電極14、誘電体層16,28、保護層18および酸化物層24としては、上記の構成に限られず一般的なPDPに適用可能な従来公知の構成を特に制限なく適宜選択して用いることができる。また、PDPに適用可能なこれら以外の他の構成を備えていてもよい。
【0030】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0031】
<バス電極(黒層)形成用感光性ペーストの製造例1>
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、サンプル1として黒色無機顔料と青色無機顔料の配合割合が黒色無機顔料60質量%、青色無機顔料40質量%であるバス電極(黒層)形成用感光性ペーストを調製した。即ち、10質量部のAg粉末(平均粒径2.5μm、比表面積0.5〜1.5m/g)、6質量部の黒色無機顔料(四三酸化コバルト、平均粒径1μm)、4質量部の青色無機顔料(アルミン酸コバルト、平均粒径1μm)、40質量部のターピネオール(テルピネオールともいう)、5質量部のセルロース樹脂及び30質量部のガラスフリット(Bi−Si−Zn−Ba系ガラス、平均粒径1μm)、ならびに光重合性化合物として4質量部のトリメチロールプロパントリアクリレートと、光重合開始剤として1質量部の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンを混練し、バス電極(黒層)形成用感光性ペーストを調製した。
【0032】
<バス電極(黒層)形成用感光性ペーストの製造例2>
黒色無機顔料と青色無機顔料の配合割合を黒色無機顔料40質量%、青色無機顔料60質量%とした以外は上記サンプル1と同じ材料且つ同じ配合比でサンプル2のバス電極(黒層)形成用ペーストを調製した。
【0033】
<バス電極(黒層)形成用感光性ペーストの製造例3>
黒色無機顔料と青色無機顔料の配合割合を黒色無機顔料20質量%、青色無機顔料80質量%とした以外は上記サンプル1及び2と同じ材料且つ同じ配合比でサンプル3のバス電極(黒層)形成用ペーストを調製した。
【0034】
<バス電極(黒層)形成用感光性ペーストの製造例4>
青色無機顔料を添加せず、黒色無機顔料100質量%とした以外は上記サンプル1〜3と同じ材料且つ同じ配合比でサンプル4(比較サンプル)のバス電極(黒層)形成用ペーストを調製した。
【0035】
<バス電極(黒層)の形成と黄変抑制に関する評価試験>
上記得られた4種のサンプル感光性ペーストと一般的な白層形成用感光性ペーストを使用してバス電極と同様の試験用焼成膜を形成し、各サンプルペースト(バス電極形成用材料)の黄変抑制効果と黒色による明度低下効果とを市販の色彩色差計によるb値(黄色度)とL値(明度)の測定に基づいて評価した。なお、本実施例では市販の色彩色差計(コニカミノルタ社製品:CR−300)を取扱い説明書通りに使用した。
具体的には、市販のガラス基板(ここでは旭硝子株式会社から入手可能なカラーPDP用硝子基板、商品名「PD200」を使用した。)上に、樹脂印刷版「Poly#355」を使用して各サンプルペーストから成る塗膜パターンを形成(印刷)した。次いで、熱風式乾燥機で110℃10分間の乾燥処理を行った。
【0036】
次に、上記乾燥膜の上に一般的なバス電極(白層)形成用感光性ペーストを塗布した。具体的には、以下の組成のバス電極(白層)形成用感光性ペーストを調製した。即ち、70質量部のAg粉末(平均粒径2.5μm)、23質量部のターピネオール、5質量部のセルロース樹脂及び2質量部のガラスフリット(Bi−Si−Zn−Ba系ガラス、平均粒径1μm)、ならびに光重合性化合物として4質量部のトリメチロールプロパントリアクリレートと、光重合開始剤として1質量部の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンを混練し、バス電極(白層)形成用感光性ペーストを調製した。
そして得られた上記ペーストを使用し、金属印刷版「Sus#400(即ちステンレス製400メッシュシート)」を使用して上記乾燥塗膜(黒層)上に白層塗膜を形成(印刷)した。
【0037】
露光機を使用して、300mJ/cmの強度で前面露光を行った。露光後、0.4%のNaCO水溶液で30秒間現像後、純水で15秒間洗浄した。その後、最高焼成温度580℃で焼成した(最高温度の継続時間:20分)。
【0038】
上記のようにして得られた焼成膜(二層構造バス電極に相当する)付きガラス基板を、試験台上に置いた白紙の上にガラス基板が上面となるように配置した。即ち、下から白紙、黒層、白層、ガラス基板の順に積層された状態で試験台上に配置した。
この状態で、上記色彩色差計を用いてL値とb値とを測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、青色顔料含有率が40%〜80%でb値即ち黄色の程度を減少させることができた。また、黒色顔料含有率の低下に伴い、L値(明度)は上昇するが、コントラストの向上目的には支障ない値であった。従って、本実施例の結果より、バス電極(黒層)形成材料に所定の割合で黒色無機顔料とともに青色無機顔料を配合すること(好ましくは40〜80質量%、特に60質量%前後)によって、視覚的な黄変の抑制と、コントラストの向上とをともに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態に係るPDPの構造を模式的に示す一部破断の斜視図である。
【図2】一実施形態に係るPDPの前面パネル側の構成を示す部分断面図である。
【図3】一実施形態に係るバス電極の二層構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 プラズマディスプレイパネル(PDP)
10 前面パネル
12 前面ガラス基板
14 透明電極
15 バス電極
15A 黒層
15B 白層
16 誘電体層
18 保護層(MgO層)
20 背面パネル
22 背面ガラス基板
24 酸化物層
26 アドレス電極
28 誘電体層
30 隔壁
32 蛍光体層
40 セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルのバス電極形成用材料であって、
黒色無機顔料と、
青色無機顔料と、
を含む、バス電極形成用材料。
【請求項2】
さらにAg又はAg主体の合金から成るAg系金属粉末を含む、請求項1に記載のバス電極形成用材料。
【請求項3】
さらに有機ビヒクルを含み、ペースト状に調製された請求項1又は2に記載のバス電極形成用材料。
【請求項4】
前記黒色無機顔料と前記青色無機顔料の合計量に占める青色顔料の割合が40〜80質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のバス電極形成用材料。
【請求項5】
前記黒色無機顔料と前記青色無機顔料とが何れもコバルト系顔料である、請求項1〜4のいずれかに記載のバス電極形成用材料。
【請求項6】
バス電極を備えるプラズマディスプレイパネルであって、
前記バス電極は黒色無機顔料と青色無機顔料とを含む黒層を備えることを特徴とする、プラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のバス電極形成用材料を用いてバス電極の黒層が形成されたことを特徴とする、請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−158133(P2009−158133A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331807(P2007−331807)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】