説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】放電セルごとの放電開始電圧のばらつきや変動を抑制して輝度のばらつきや表示のちらつきによる画質低下や経時的な特性劣化を改善したプラズマディスプレイパネルを得る。
【解決手段】対向して配置された前面板110と背面板120とにより形成された放電空間130に放電ガスを封入するとともに、放電空間130を放電セルに仕切るための隔壁124と、放電セル内に設けた蛍光体層125R、125G、125Bと、蛍光体層125R、125G、125Bの下部に、付活材を有しない蛍光体母体材料を単独または2種類以上混合してなる非発光層126R、126G、126Bを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマディスプレイパネルに関し、特にその放電特性の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ装置は、高精細化、大画面化の実現が可能な画像表示デバイスとして近年注目されている。プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記す)は、プラズマディスプレイ装置の画像を表示する部分であり、前面板と背面板とを対向配置するとともに周囲を密封して形成した放電空間に、ネオンやキセノンなどからなる放電ガスを封入した構成になっている。前面板は、透明なガラス基板上に形成されたストライプ状の透明電極と金属バス電極とからなる表示電極と、表示電極を覆う誘電体層と、保護層とで構成されている。一方背面板は、ガラス基板上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成され放電空間を放電セルに仕切るための隔壁と、放電セル内に形成された蛍光体層とで構成されている。このような構成において、各放電セル内の電極間に電圧を印加してガス放電させ、ガス放電によって発生する紫外線で蛍光体層を発光させて画像表示を行う。蛍光体層として、3原色である赤色、緑色、青色を発光する蛍光体層を設けることで、これら3原色を加法混色することによりフルカラー表示を行うことができる。
【0003】
このようなPDPの放電空間内において、前述のように誘電体層や隔壁、蛍光体層などが形成されているが、これらは基材に有機溶剤、有機バインダなどを混合してペースト状とし、これを塗布、乾燥、焼成して形成される。焼成によって有機バインダなどは熱分解され、放電を阻害する性質を有する不純ガス(例えばHO、CO、あるいは炭化水素ガスなどの有機系のガスなど)が大量に発生する。この不純ガスが放電ガスに混入すると、放電開始電圧が変化して放電が不安定になり、発光輝度のばらつきや表示のちらつきといった不具合が発生する。
【0004】
そこで、これら焼成時に発生した不純ガスを除去するため、PDPの背面板側に排気孔を設けて、製造工程内の排気工程において、真空排気装置によってこの排気孔から不純ガスをPDPの外で排気し、排気後に放電ガスをPDP内部に封入して排気孔を封着することによって放電空間を密封する方法が用いられている。しかし、排気工程における排気孔からの排気だけでは不純ガスを完全に除去することができず、その一部が放電空間に残留するといった課題があった。
【0005】
また、放電動作を安定させるため長時間放電を行うエージング工程において、保護層などに吸着された不純ガスの一部が、放電の刺激によって保護層などから再放出されるといった課題があった。これらの課題を解決するために、放電セル内の隔壁の表面に不純ガスを吸着する吸着膜を形成した不純ガスを低減する技術が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−303555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記従来のPDPにおいては、長時間放電による刺激を受けた赤色、緑色、青色の各蛍光体材料は、材料の特性がそれぞれ異なるために、材料によっては不純ガスを放出する、あるいは逆に不純ガスを吸着するといった現象を生じる。このように各蛍光体の不純ガス放出あるいは吸着特性が異なるため、不純ガスを吸着膜により一律に吸着する方法では、放電セルごとに放電開始電圧のばらつきが生じることになり、セルの表示ちらつきといった不具合が発生する。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、赤色、緑色、青色の各蛍光体材料の不純ガス放出特性あるいは吸着特性の影響を抑ええ、放電セルごとの放電開始電圧のばらつきや変動を抑制して輝度のばらつきや表示のちらつきによる画質低下や経時的な特性劣化を改善したPDPを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明のPDPは、対向して配置された前面板と背面板とにより形成された放電空間に放電ガスを封じ込めるとともに、放電空間を放電セルに仕切るための隔壁と、放電セル内に設けた蛍光体層と、放電セル内に放電を発生させて蛍光体層を発光させる電極群とを有するPDPであって、蛍光体層の下部または蛍光体層の内部に、付活材を有しない蛍光体母体材料を単独または2種類以上混合してなる非発光層を形成している。
【0009】
このような構成によれば、各蛍光体材料の不純ガス放出特性あるいは吸着特性の影響を抑え、放電セルごとの放電開始電圧のばらつきや変動を抑制して輝度のばらつきや表示のちらつきによる画質低下や経時的な特性劣化を改善することができる。
【0010】
さらに、付活材を有しない蛍光体母体材料が、(Y,Gd)BOからなる赤色蛍光体母体材料、ZnSiOからなる緑色蛍光体母体材料、またはBaAlMg1017からなる青色蛍光体母体材料のうちの少なくともひとつであってもよい。このような構成によれば、各蛍光体層を形成する素材を用いることで各蛍光体材料の不純ガス放出特性あるは吸着特性の影響を容易に抑えることができるとともに製造工程が簡素化できる。
【0011】
さらに、放電セルを、赤色蛍光体層を有する赤色放電セル、緑色蛍光体層を有する赤色放電セル、青色蛍光体層を有する青色放電セルで構成するとともに、赤色蛍光体層の下部には青色蛍光体母体材料に赤色蛍光体母体材料または緑色蛍光体母体材料を混合した赤色非発光層を設け、緑色蛍光体層の下部には青色蛍光体母体材料に赤色蛍光体母体材料または緑色蛍光体母体材料を混合した緑色非発光層を設け、青色蛍光体層の下部には赤色蛍光体母体材料または緑色蛍光体母体材料が単独の青色非発光層を設けてもよい。このような構成によれば、各蛍光体材料の不純ガス放出特性あるは吸着特性と反対の特性をもつ蛍光体母体材料を同一放電セルに設けることで、各放電セルごとに各蛍光体材料の不純ガス放出または吸着を効果的に打ち消して放電開始電圧のばらつきや変動を低減させ経時的な特性劣化を抑えることができる。
【0012】
さらに、赤色放電セルにおいて、赤色非発光層と赤色蛍光体層とを重量比が1:1となるように形成するとともに、赤色非発光層を、青色蛍光体母体材料と赤色蛍光体母体材料または緑色蛍光体母体材料とを70:30〜50:50の重量比で混合して形成することが望ましい。このような構成によれば、赤色放電セルの放電開始電圧の変動を最も少なくすることができる。
【0013】
さらに、緑色放電セルにおいて、緑色非発光層と緑色蛍光体層とを重量比が1:1となるように形成するとともに、緑色非発光層を、青色蛍光体母体材料と赤色蛍光体母体材料または緑色蛍光体母体材料とを70:30〜50:50の重量比で混合して形成することが望ましい。このような構成によれば、緑色放電セルの放電開始電圧の変動を最も少なくすることができる。
【0014】
さらに、前記青色放電セルにおいて、前記青色非発光層と前記青色蛍光体層とを重量比が2:1となるように形成することが望ましい。このような構成によれば、青色放電セルの放電開始電圧の変動を最も少なくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のPDPによれば、付活材を有しない蛍光体母体材料を単独または2種類以上混合してなる非発光層を前記蛍光体層下部または蛍光体層内部に形成することで、各蛍光体材料の不純ガス放出特性あるいは吸着特性の影響を抑え、放電セルごとの放電開始電圧のばらつきや変動を抑制して輝度のばらつきや表示のちらつきによる画質低下や経時的な特性劣化を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの部分断面斜視図である。PDP100は、対向して配置された前面板110と背面板120とで形成された放電空間130に放電ガスを封入した構成となっている。前面板110の透明な前面ガラス基板111上にはストライプ状の走査電極112とこれに対をなす維持電極113、ブラックストライプ114が形成され、これらを覆うように誘電体層115とMgO保護層116とが形成されている。背面板120の背面ガラス基板121上には走査電極112と直交するストライプ状のアドレス電極122が形成され、これを覆うように下地誘電体層123が形成されている。下地誘電体層123上には隔壁124がアドレス電極122を挟むようにこれと平行に形成され、放電空間130を放電セルに仕切っている。放電セル内の隔壁124と下地誘電体層123上には蛍光体層125が形成されている。蛍光体層125の下部には付活剤を有しない蛍光体母体材料からなる非発光層126が形成されている。
【0018】
次に、PDP100の製造方法を説明する。まず、前面板110の製造方法を説明する。前面ガラス基板111上に、各N本の走査電極112とこれに対をなす維持電極113とをストライプ状に形成する。走査電極112と維持電極113は銀を主成分とする銀ペーストをスクリーン印刷により塗布した後、焼成することによって形成する。次に走査電極112と維持電極113を誘電体層115で被覆する。誘電体層115は、酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷で塗布、焼成して形成する。上記ガラス材料を含むペーストは、例えば、30重量%の酸化ビスマス(Bi)と28重量%の酸化亜鉛(ZnO)と23重量%の酸化硼素(B)と2.4重量%の酸化硅素(SiO)と2.6重量%の酸化アルミニウム(Al)を含む。さらに、10重量%の酸化カルシウム(CaO)と4重量%の酸化タングステン(WO)と有機バインダ(α−ターピネオールに10%のエチルセルロースを溶解したもの)とを混合して形成する。
【0019】
ここで、有機バインダとは樹脂を有機溶媒に溶解したものであり、エチルセルロース以外に樹脂としてアクリル樹脂、有機溶媒としてブチルカービトールなども使用することができる。さらに、こうした有機バインダに分散剤(例えば、グリセルトリオレエート)を混入させてもよい。誘電体層115は所定の厚み(約40μm)となるように塗布厚みを調整する。さらに誘電体層115の表面にMgO保護層116を形成する。MgO保護層116は酸化マグネシウム(MgO)から成るものであり、例えばスパッタリング法やイオンプレーティング法によって所定の厚み(約0.5μm)となるように形成する。
【0020】
次に、背面板120の製造方法を説明する。背面ガラス基板121上に、電極用の銀ペーストをスクリーン印刷し、焼成することによってM本のアドレス電極122をストライプ状に形成する。アドレス電極122の上に酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法で塗布、焼成して下地誘電体層123を形成する。同じく酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法により所定のピッチで繰り返し塗布した後に焼成して隔壁124を形成する。放電空間130はこの隔壁124によって区画され放電セルが形成される。隔壁124の間隙寸法は42インチ〜50インチのフルHDテレビやHDテレビの場合130μm〜240μm程度である。隔壁124で挟まれる下地誘電体層123上に、付活材を有しない蛍光体母体材料からなる非発光層126を形成する。さらに放電セル内の隔壁124および非発光層126の上部に蛍光体層125を形成する。非発光層126および蛍光体層125の詳細については後述する。
【0021】
このようにして作製された前面板110と背面板120とを、前面板110の維持電極113と背面板120のアドレス電極122とが直交するように対向して重ね合わせ、封着用ガラスを周辺部に塗布した後に450℃程度で10分〜20分間焼成することにより封着する。その後、一旦放電空間130内を高真空に排気したのち、放電ガス(例えば、ヘリウム−キセノン系、ネオン−キセノン系の付活性ガス)を所定の圧力で封入することによってPDP100が完成する。
【0022】
図2は、PDP100の駆動装置を示す図である。PDP100は駆動装置150と接続されることでPDP装置を構成している。PDP100には表示ドライバ回路153、表示スキャンドライバ回路154、アドレスドライバ回路155が接続されている。点灯させる放電セルに対応する走査電極112とアドレス電極122へ所定電圧を印加することでアドレス放電を行う。コントローラ152はこの電圧印加を制御する。その後、維持電極113と走査電極112との間にパルス電圧を印加して維持放電を行う。この維持放電によって、アドレス放電が行われた放電セルにおいて紫外線が発生し、この紫外線で励起された蛍光体層が発光することで放電セルが点灯する。各色放電セルの点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態におけるPDPの詳細部分断面図である。図3を用いて本発明の実施の形態の主な特徴である付活材を有しない蛍光体母体材料からなる非発光層と蛍光体層の構成を詳細に説明する。前面板110の前面ガラス基板111上にはストライプ状の走査電極112などが形成され、これらを覆うように誘電体層115とMgO保護層116とが形成されている。背面板120の背面ガラス基板121上には走査電極112と直交するストライプ状のアドレス電極122が形成され、これを覆うように下地誘電体層123が形成されている。
【0024】
下地誘電体層123上には隔壁124がアドレス電極122を挟むようにこれと平行に形成され、放電空間130を赤色放電セル130R、緑色放電セル130G、青色放電セル130Bに仕切っている。放電セル内の隔壁124と下地誘電体層123上には赤色蛍光体層125R、緑色蛍光体層125G、青色蛍光体層125Bが形成されている。
【0025】
赤色蛍光体層125Rは赤色蛍光体母体材料(Y、Gd)BOにEuを付活材として添加した(Y、Gd)BO:Euからなり、緑色蛍光体層125Gは緑色蛍光体母体材料ZnSiOにMnを付活材として添加したZnSiO:Mnからなり、青色蛍光体層125Bは青色蛍光体母体材料BaMgAl1017にEuを付活材として添加したBaMgAl1017:Euからなる。
【0026】
赤色蛍光体層125R、緑色蛍光体層125G、青色蛍光体層125Bの下部には付活剤を有しない蛍光体母体材料からなる赤色非発光層126R、緑色非発行層126G、青色非発光層126Bが形成されている。これらの非発光層は、付活材を有しない蛍光体母体材料を含む蛍光体ペーストをインクジェット法で塗布、乾燥して形成する。それぞれの蛍光体層はその厚みとして約5μm以上確保できれば、放電により発生する147nmという非常に短い波長の紫外線を十分吸収して発光するとことができる。さらに発光により発生した可視光は、それぞれの非発光層が反射層として働くことで蛍光体層のみと比較すると同等以上の輝度が得られる。
【0027】
付活剤を有しない蛍光体母体材料からなる赤色非発光層126R、緑色非発光層126G、青色非発光層126Bを有していない従来のPDPを長時間放電すると、(Y,Gd)BO:Euからなる赤色蛍光体層125R、およびZnSiO:MnまたはYBO:Tbからなる緑色蛍光体層125GからはHOを含む多くの不純ガスが叩き出されて放出される。そのため、これらの蛍光体層を形成された赤色放電セル130R、緑色放電セル130Gでは放電開始電圧(以下、Vfと示す)が低下する。一方、BaAlMg1017:Euからなる青色蛍光体層125Bは逆に不純ガスを吸収するため青色蛍光体層125Bが形成された青色放電セル130BではVfが上昇する。
【0028】
これらは、各蛍光体材料の蛍光体母体材料の不純ガス放出特性あるいは吸着特性が異なるためであり、結果として放電セルごとに放電開始電圧のばらつきが生じて放電セルの表示ちらつきといった不具合が発生していた。
【0029】
本発明のPDPでは、赤色蛍光体層125R、緑色蛍光体層125G、青色蛍光体層125Bの下部には付活剤を有しない蛍光体母体材料からなる赤色非発光層126R、緑色非発光層126G、青色非発光層126Bを形成し、これら非発光層の不純ガス放出特性と吸着特性とを作用させてVfの変動を抑えている。Vfの変動を抑える効果は、非発光層と蛍光体層の割合によって変化する。実験の結果、非発光層と蛍光層との重量比が1:1〜3の範囲になるように形成した場合に最も効果的にVfの変動を抑えられることが明らかになった。
【0030】
赤色蛍光体材料と付活材を有しない赤色蛍光体母体材料、および、緑色蛍光体材料と付活材を有しない緑色蛍光体母体材料はいずれも長時間の放電により不純ガスを放出し、それによってVfが経時的に低下する作用がある。一方、青色蛍光体材料と付活材を有しない青色蛍光体母体材料はいずれも長時間の放電により不純ガスを吸収し、それによってVfが経時的に上昇する作用があることが明らかになった。本発明ではこれらの相反する作用をもつ蛍光体材料と付活材を有しない蛍光体母体材料とを組み合わせて同一放電セルに設けることでVfの経時的な変動を抑えるようにしたものである。
【0031】
【表1】

表1は、赤色蛍光体母体材料と青色蛍光体母体材料との混合比率を変えて形成した非発光層を、赤色蛍光体層125R、緑色蛍光体層125G、青色蛍光体層125Bのそれぞれの下部に形成した赤色放電セル130R、緑色放電セル130G、青色放電セル130Bでの200時間点灯前後の放電開始電圧Vfの変動を測定したものである。表1から明らかなように、赤色放電セル130Rにおいては、赤色非発光層126Rと赤色蛍光体層125Rとを重量比が1:1となるように形成するとともに、赤色非発光層126Rを、青色蛍光体母体材料と赤色蛍光体母体材料とを70:30〜50:50の重量比で混合して形成するとVfの変動が小さい赤色放電セル130Rを形成することができる。
【0032】
また、緑色放電セル130Gにおいては、緑色非発光層126Gと緑色蛍光体層125Gとを重量比が1:1となるように形成するとともに、緑色非発光層126Gを、青色蛍光体母体材料と赤色蛍光体母体材料とを70:30〜50:50の重量比で混合して形成するとVfの変動の変動が小さい緑色放電セル130Rを形成することができる。
【0033】
また、赤色放電セル130Rと緑色放電セル130Gのいずれにおいても、青色蛍光体母体材料と赤色蛍光体母体材料とを60:40の重量比で混合することがさらに望ましい。
【0034】
一方、青色放電セル130Bにおいては表1に示すように、前述の赤色放電セル130Rと緑色放電セル130Gと同様の条件ではVfの変動を抑制することは不可能である。表1に示すように、青色放電セル130Bにおいては、青色非発光層126Bと青色蛍光体層125Bとを重量比が2:1となるように形成するとともに、青色非発光層126Bを、赤色蛍光体母体材料が単独である100%となるように形成したものが最もVfの変動が小さいことがわかる。また表1には記載していないが、緑色蛍光体母体材料も赤色蛍光体母体材料と同様に長時間の放電により不純ガスを放出する作用があり、赤色蛍光体母体材料に代えて緑色蛍光体母体材を用いた場合も同様の結果を得た。
【0035】
なお、上記の説明では、非発光層を蛍光体層の下部、すなわち下地誘電体層上に形成した場合について述べたが、蛍光体層の内部に非発光層材料である蛍光体母体材料を混合させる方法でもよい。
【0036】
以上述べたように、付活材を有しない蛍光体母体材料を単独または2種類以上混合してなる非発光層を、蛍光体層下部または蛍光体層内部に形成することで、各蛍光体材料の不純ガス放出特性あるいは吸着特性の影響を抑え、放電セルごとの放電開始電圧のばらつきや変動を抑制して輝度のばらつきや表示のちらつきによる画質低下や経時的な特性劣化を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、長時間放電に対しても放電のばらつきによる画質低下や経時的な特性劣化が少ないPDP装置を実現することができ、大画面の表示デバイスなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの部分断面斜視図
【図2】同PDPの駆動装置を示す図
【図3】同PDPの詳細部分断面図
【符号の説明】
【0039】
100 PDP
110 前面板
111 前面ガラス基板
112 走査電極
113 維持電極
114 ブラックストライプ
115 誘電体層
116 MgO保護層
120 背面板
121 ガラス基板
122 アドレス電極
123 下地誘電体層
124 隔壁
125R 赤色蛍光体層
125G 緑色蛍光体層
125B 青色蛍光体層
130 放電空間
130R 赤色放電セル
130G 緑色放電セル
130B 青色放電セル
126R 赤色非発光層
126G 緑色非発光層
126B 青色非発光層
150 駆動装置
152 コントローラ
153 表示ドライバ回路
154 表示スキャンドライバ回路
155 アドレスドライバ回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された前面板と背面板とにより形成された放電空間に放電ガスを封じ込めるとともに、前記放電空間を放電セルに仕切るための隔壁と、前記放電セル内に設けた蛍光体層と、前記放電セル内に放電を発生させて前記蛍光体層を発光させる電極群とを有するプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体層の下部または前記蛍光体層の内部に、付活材を有しない蛍光体母体材料を単独または2種類以上混合してなる非発光層を形成したことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記付活材を有しない蛍光体母体材料が、(Y,Gd)BOからなる赤色蛍光体母体材料、ZnSiOからなる緑色蛍光体母体材料、またはBaAlMg1017からなる青色蛍光体母体材料のうちの少なくともひとつであること特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記放電セルを、赤色蛍光体層を有する赤色放電セル、緑色蛍光体層を有する赤色放電セル、青色蛍光体層を有する青色放電セルで構成するとともに、前記赤色蛍光体層の下部には前記青色蛍光体母体材料に前記赤色蛍光体母体材料または前記緑色蛍光体母体材料を混合した赤色非発光層を設け、前記
緑色蛍光体層の下部には前記青色蛍光体母体材料に前記赤色蛍光体母体材料または前記緑色蛍光体母体材料を混合した緑色非発光層を設け、前記青色蛍光体層の下部には前記赤色蛍光体母体材料または前記緑色蛍光体母体材料が単独の青色非発光層を設けたことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記赤色放電セルにおいて、前記赤色非発光層と前記赤色蛍光体層とを重量比が1:1となるように形成するとともに、前記赤色非発光層を、前記青色蛍光体母体材料と前記赤色蛍光体母体材料または前記緑色蛍光体母体材料とを70:30〜50:50の重量比で混合して形成したことを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記緑色放電セルにおいて、前記緑色非発光層と前記緑色蛍光体層とを重量比が1:1となるように形成するとともに、前記緑色非発光層を、前記青色蛍光体母体材料と前記赤色蛍光体母体材料または前記緑色蛍光体母体材料とを70:30〜50:50の重量比で混合して形成したことを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記青色放電セルにおいて、前記青色非発光層と前記青色蛍光体層とを重量比が2:1となるように形成したことを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−87800(P2009−87800A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257293(P2007−257293)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】