プラズマディスプレイパネル
【課題】文字および絵図が長時間固定表示された後に発生する焼き付きによる残像を防止する。
【解決手段】表示領域を備えるPDPであって、アンテナから受信された映像信号を受信する映像信号検出部と、映像信号に含まれる映像が所定時間静止しているか否かを検出する静止画点灯時間検出部と、静止画点灯時間検出部で検出された場合、表示領域において全面白色に点灯される表示パターン信号と残像防止表示パターン信号とを発生させる信号を出力する表示処理制御部と、表示処理制御部から入力された表示パターン信号と残像防止表示パターン信号により表示領域に全面白色に点灯される表示パターンと残像防止表示パターンを表示させる表示領域出力部とを備え全面白色に点灯される表示パターンは背景として表示領域全体に低階調の白色が表示されると共に残像防止パターンが表示領域の所定の位置からより周辺のセルへ順次スクロールして点灯されることを特徴とする。
【解決手段】表示領域を備えるPDPであって、アンテナから受信された映像信号を受信する映像信号検出部と、映像信号に含まれる映像が所定時間静止しているか否かを検出する静止画点灯時間検出部と、静止画点灯時間検出部で検出された場合、表示領域において全面白色に点灯される表示パターン信号と残像防止表示パターン信号とを発生させる信号を出力する表示処理制御部と、表示処理制御部から入力された表示パターン信号と残像防止表示パターン信号により表示領域に全面白色に点灯される表示パターンと残像防止表示パターンを表示させる表示領域出力部とを備え全面白色に点灯される表示パターンは背景として表示領域全体に低階調の白色が表示されると共に残像防止パターンが表示領域の所定の位置からより周辺のセルへ順次スクロールして点灯されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)を表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置(以下、PDP装置という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このプラズマディスプレイ装置に用いられるパネルは、大別して、駆動的にはAC型とDC型があり、放電形式では面放電型と対向放電型の2種類があるが、高精細化、大画面化および製造の簡便性から、現状では、プラズマディスプレイ装置の主流は、3電極構造の面放電型のものである。
【0003】
この面放電型のPDP構造は、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに、放電空間を複数に仕切るための隔壁を基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する赤色、緑色、青色に発光する蛍光体を設けて複数の放電セルを構成したもので、放電により発生する波長の短い真空紫外光によって蛍光体を励起し、赤色、緑色、青色の放電セルからそれぞれ赤色、緑色、青色の可視光を発することによりカラー表示を行っている。
【0004】
このようなPDP装置は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、視野角が広いこと、大型化が容易であること、自発光型であるため表示品質が高いことなどの理由から、フラットパネルディスプレイの中で最近特に注目を集めており、多くの人が集まる場所での表示装置や家庭で大画面の映像を楽しむための表示装置として各種の用途に使用されている。
【0005】
このようなPDP装置においては、静止画若しくは画面の大部分が静止している映像を長時間表示する際に、画面をある一定時間固定すると、焼き付きが発生する。その焼き付きが発生すると、次の画面を映し出す時に前の焼き付いた画面が残像として残ってしまう。また、放電開始電圧が局所的に変化し、安定した画像表示が困難となる。そこで、それを解消するために、その映像の静止画を検知して、画像表示が上方向、又は下方向にスクロールするような技術が検討されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−228474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、表示性能が局所的に劣化することを防ぐような上方向、又は下方向にスクロールするパターンでは、長時間の静止画によって焼き付いた領域を解消するのに時間がかかり、迅速な画面切り換え時の表示品質に問題があった。
【0008】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、静止画によって焼き付いた文字や絵図を短期間で解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明は、表示領域を備えるPDPであって、表示領域において表示された文字および絵図が一定時間固定されたことを検知する静止画点灯時間検出部と、前記検出部からの信号を受けて残像防止パターン信号の発生信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記静止画点灯時間検出部から出力された信号を受けた場合、表示領域に残像防止パターンを発生させる信号を出力する信号発生部を備え、前記残像防止パターンは、全面白表示パターンを備え、前記表示領域のある領域から表示領域の周辺部に拡大する全面スクロールパターンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示領域において表示された文字および絵図が一定時間固定された静止画による文字や絵図の焼き付きを短期間で解消するようなPDP装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイ装置に用いるパネルの要部を示す斜視図
【図2】本発明の一実施の形態によるPDP装置の電極配列図
【図3】本発明の一実施の形態によるPDP装置の回路ブロック図
【図4】本発明の一実施の形態によるPDP装置の各電極に印加する駆動電圧波形を示す図
【図5】(a)本発明の一実施の形態によるPDPに絵図が表示されていることを表した図、(b)本発明の一実施の形態によるPDPに残像防止表示パターンがスクロールされていることを示す図、(c)本発明の一実施の形態によるPDPに他の残像防止表示パターンがスクロールされていることを示す図
【図6】(a)本発明の一実施の形態によるPDP装置の各制御部を表した図、(b)本発明の一実施の形態によるPDP装置の各制御部の動作を表した図
【図7】(a)本発明の一実施の形態によるPDP装置における残像防止表示パターン点灯時間に対する放電開始電圧差を示す図、(b)本発明の一実施の形態によるPDP装置における放電開始電圧差に対する輝度差を示す図
【図8】本発明の第2実施の形態によるPDP装置の点灯率に対する維持電力と維持周波数を示す図
【図9】本発明の第2実施の形態によるPDP装置の維持周波数に対する放電開始電圧差を示す図
【図10】本発明の第3実施の形態によるPDP装置の長時間固定表示部のみ黒表示に変換した場合の残像防止表示パターンを示す図
【図11】本発明の第3実施の形態による装置の長時間固定表示部のみ黒表示に変換した残像防止表示パターンの制御方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態によるPDP装置について、図1〜図6を用いて説明する。しかし、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0013】
1、プラズマディスプレイパネル(PDP)
まず、PDP装置におけるパネルの構造について図1を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態によるPDP装置に用いるパネルの要部を示す図である。図1に示すように、PDPは、ガラス製の前面基板1と背面基板2とを、その間に放電空間を形成するように対向配置することにより構成されている。前面基板1上には表示電極を構成する走査電極3と維持電極4とが間に放電ギャップGを設けて互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極3および維持電極4を覆うようにガラス材料からなる誘電体層5が形成され、その誘電体層5上にはMgOからなる保護層6が形成されている。走査電極3および維持電極4は、ITOなどの透明電極3a、4aと、この透明電極に重ねて形成したAgからなるバス電極3b、4bとから構成されている。
【0015】
また、背面基板2上には、ガラス材料からなる絶縁体層7で覆われたストライプ状に配列したAgからなる複数のデータ電極8が設けられ、その絶縁体層7上には、前面基板1と背面基板2との間の放電空間Sを放電セル毎に区切るための井桁状のガラス材料からなる隔壁9が設けられている。また、絶縁体層7の表面および隔壁9の側面に赤色10R、緑色10G、青色10Bの蛍光体層が設けられている。そして、走査電極3および維持電極4とデータ電極8とが交差するように前面基板1と背面基板2とが対向配置されており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、PDP11の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁9を備えたものであってもよい。
【0016】
次に、PDP11の電極について説明する。図2はこのPDP11の電極配列図である。図2に示すように、PDP11の表示領域には、行方向にn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極)が、維持電極SU1−走査電極SC1−走査電極SC2−維持電極SU2・・・・の配列となるように形成され、列方向にm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極)が走査電極SC1〜SCnおよびn本の維持電極SU1〜SUnと交差する配列となるように形成されている。そして、1対の走査電極SCiおよび維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルSが形成され、放電セルSは放電空間内にm×n個形成されている。また、PDP11の表示領域の周囲には、非表示領域が設けられ、その非表示領域には、複数本(図示のものは、片側に2本)のダミー電極24が形成されている。
【0017】
次に、PDP装置の回路ブロックについて説明する。図3はこのPDP11を用いたPDP装置の回路ブロック図である。図3に示すように、このPDP装置は、PDP11、画像信号処理回路12、データ電極駆動回路13、走査電極駆動回路14、維持電極駆動回路15、タイミング発生回路16および電源回路(図示せず)を備えている。また、データ電極駆動回路13は、図2に示すように、PDP11のデータ電極8の一端に接続され、かつデータ電極8に電圧を供給するための半導体素子からなる複数のデータドライバを有している。データ電極8は、数本ずつのデータ電極で1ブロックとして複数のブロックに分割し、そのブロック単位で複数のデータドライバをPDP11の下端部の電極引出部に接続して配置している。
【0018】
図3において、画像信号処理回路12は、画像信号sigをサブフィールド毎の画像データに変換する。データ電極駆動回路13はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し、各データ電極D1〜Dmを駆動する。タイミング発生回路16は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各種のタイミング信号を発生し、各駆動回路ブロックに供給している。走査電極駆動回路14はタイミング信号にもとづいて走査電極SC1〜SCnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路15はタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnに駆動電圧波形を供給する。ここで、走査電極駆動回路14および維持電極駆動回路15は、維持パルス発生部17を備えている。
【0019】
2、PDP11の駆動について
次に、PDP11を駆動するための駆動電圧波形とその動作について図4を用いて説明する。図4はPDP11の各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。本実施の形態によるPDP装置においては、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間、維持期間を有している。
【0020】
2−1、初期化期間
第1サブフィールドの初期化期間では、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SUnを0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi1(V)から放電開始電圧を超える電圧Vi2(V)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルSにおいて1回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上に負の壁電圧が蓄えられるとともに維持電極SU1〜SUn上およびデータ電極D1〜Dm上に正の壁電圧が蓄えられる。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層や蛍光体層上等に蓄積した壁電荷により生じる電圧を指す。その後、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Vh(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて2回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
【0021】
2−2、書込み期間
続く書込み期間では、走査電極SC1〜SCnを一旦Vr(V)に保持する。次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Va(V)を印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に表示すべき放電セルSのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vd(V)を印加する。このときデータ電極Dkと走査電極SC1との交差部の電圧は、外部印加電圧(Vd−Va)(V)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、この放電セルの走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。このようにして、1行目に表示すべき放電セルSで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vd(V)を印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルSに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
【0022】
2−3、維持期間
続く維持期間では、走査電極SC1〜SCnには第1の電圧として正の維持パルス電圧Vs(V)を、維持電極SU1〜SUnには第2の電圧として接地電位、すなわち0(V)をそれぞれ印加する。このとき書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCi上と維持電極SUi上との間の電圧は維持パルス電圧Vs(V)に走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。このときデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは、維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保持される。続いて、走査電極SC1〜SCnには第2の電圧である0(V)を、維持電極SU1〜SUnには第1の電圧である維持パルス電圧Vs(V)をそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との間の電圧が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。
【0023】
2−4、第2サブフィールド以降
以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。こうして維持期間における維持動作が終了する。続くサブフィールドにおける初期化期間、書込み期間、維持期間の動作も第1サブフィールドにおける動作とほぼ同様のため、説明を省略する。
【0024】
3、PDPの製造方法
3−1、前面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、前面基板上に、走査電極3および維持電極4が形成される。走査電極3は、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明電極3a、4aと、透明電極3a、4aに積層された銀(Ag)などからなるバス電極3b、4bとから構成されている。維持電極4は、ITOなどの透明電極と、透明電極3a、4aに積層されたAgなどからなるバス電極3b、4bとから構成されている。
【0025】
バス電極3b、4bの材料には、銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、電極ペーストが、透明電極が形成された前面基板1に塗布される。次に、乾燥炉によって、電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、電極ペーストが露光される。
【0026】
次に、電極ペーストが現像され、バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、バス電極3b、4bが形成される。
【0027】
ここで、電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0028】
次に、誘電体層5が形成される。誘電体層5の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。まずダイコート法などによって、誘電体ペーストが所定の厚みで走査電極3、維持電極4を覆うように前面基板1上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた誘電体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、誘電体層5が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などを用いることができる。また、誘電体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、誘電体層5となる膜を形成することもできる。
【0029】
次に、誘電体層5上に保護層6が形成される。
【0030】
以上の工程により前面基板1上に走査電極3、維持電極4、誘電体層5および保護層6を有する前面板が完成する。
【0031】
3−2、背面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、背面基板2上に、データ電極8が形成される。データ電極8の材料には、導電性を確保するための銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むデータ電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、データ電極ペーストが所定の厚みで背面基板2上に塗布される。次に、乾燥炉によって、データ電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、データ電極ペーストが露光される。次に、データ電極ペーストが現像され、データ電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、データ電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、データ電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、データ電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、データ電極8が形成される。ここで、データ電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0032】
次に、絶縁体層7が形成される。絶縁体層7の材料には、絶縁体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む絶縁体ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、絶縁体ペーストが所定の厚みでデータ電極8が形成された背面基板2上にデータ電極8を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、絶縁体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、絶縁体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、絶縁体ペースト中の樹脂が除去される。また、絶縁体ガラスフリットが溶融するその後、室温まで冷却することにより、溶融していた絶縁体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、絶縁体層7が形成される。ここで、絶縁体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、絶縁体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、絶縁体層7となる膜を形成することもできる。
【0033】
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁9が形成される。隔壁9の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法などによって、隔壁ペーストが所定の厚みで絶縁体層7上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、隔壁9が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0034】
次に、蛍光体層10が形成される。蛍光体層10の材料には、蛍光体粒子とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法などによって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する複数の隔壁間の絶縁体層7上および隔壁9の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層10が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0035】
以上の工程により、背面基板2上に、データ電極8、絶縁体層7、隔壁9および蛍光体層10を有する背面板が完成する。
【0036】
3−3、前面板と背面板との組立方法
まず、ディスペンス法などによって、背面板の周囲に封着ペーストが塗布される。塗布された封着ペーストは、封着ペースト層(図示せず)を形成する。次に乾燥炉によって、封着ペースト層中の溶剤が除去される。その後、封着ペースト層は、約350℃の温度で仮焼成される。仮焼成によって、封着ペースト層中の樹脂成分などが除去される。次に、表示電極とデータ電極8とが直交するように、前面板と背面板とが対向配置される。
【0037】
さらに、前面板と背面板の周縁部が、クリップなどにより押圧した状態で保持される。この状態で、所定の温度で焼成することにより、低融点ガラス材料が溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた低融点ガラス材料がガラス化する。これにより、前面板と背面板とが気密封着される。最後に、放電空間にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入されることによりPDP11が完成する。
【0038】
4、残像防止表示パターン
次に、本発明の第1実施の形態であるPDPの表示パターンについて説明する。
【0039】
走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルSで維持放電が継続して行われる。このとき発生した紫外線により維持放電が発生した放電セルSにおいて、蛍光体層10が発光する。その結果、発光された領域において表示画面に文字や絵図などの固定表示部18が表示される。ここで、固定表示部18を表示する際、表示画面で短時間の間に移動する固定表示部18を動画と言い、一定時間の間固定して表示される固定表示部18を静止画と言う。したがって、静止画を表示する場合、維持期間において維持放電するための書き込み放電が一定期間、同じ放電セルSで発生する。
【0040】
本実施の形態では、静止画として画面左上に時計表示の「8:00」が固定表示されている。この「8:00」が一定時間、固定表示された後、表示画面全体(以後、全面と言う)に階調の比較的高い同じ明るさの色で表示を出したときに、静止画「8:00」が表示された領域において焼き付きが視認される。それは、静止画「8:00」が表示された領域とその周辺領域との間で、輝度差(ΔL)が発生するためである。輝度差(ΔL)が発生する原因として、一定時間固定表示された領域の放電開始電圧(Vf)が上昇し、周辺領域との放電開始電圧の差(ΔVf)が大きくなることが考えられている。
【0041】
この輝度差は、PDP11の表示領域において表示された「8:00」が一定時間固定された後、全面同色の白、赤、緑若しくは青の表示パターンを表示した場合に、固定表示部18とその周辺部で容易に視認される程に目立つ。
【0042】
そこで、本実施の形態では、表示領域を備えるPDPであって、表示領域において表示された文字および絵図が一定時間固定されたことを検知する静止画点灯時間検出部と、前記検出部からの信号を受けて残像防止パターン信号の発生信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記静止画点灯時間検出部から出力された信号を受けた場合、表示領域に残像防止パターンを発生させる信号を出力する信号発生部を備え、前記残像防止パターンは、全面白表示パターンを備え、前記表示領域のある領域から表示領域の周辺部に拡大する全面スクロールパターンであることを特徴とする。
【0043】
これにより、焼き付きによる輝度差を短時間で低減することができる。
【0044】
以下、輝度差(ΔL)を低減する具体的な構成について説明する。
【0045】
図5は、本発明の第1実施の形態による表示パターンを示す図である。例えば、図5(a)に示す図は、表示文字「8:00」がPDP11の表示領域左上付近に焼き付いている様子を示す図である。この現象を具体的に説明する。PDP11の表示領域左上付近に表示文字「8:00」が一定時間の間、動かずに固定して点灯し続けた後、例えば表示領域において全面同色かつ同階調の表示に切り換えたとする。すると、固定点灯の間に「8:00」が表示されていた領域と「8:00」の周辺部とで輝度差(ΔL)が生じたため、表示文字「8:00」が表示されていた領域において焼き付きが視認される。
【0046】
そこで、この焼き付きを防止するために、本実施の形態では図5(b)や(c)などの残像防止パターンを表示し、表示領域においてスクロールされる。図5(b)は、PDP11の表示領域における中央部から表示領域の周辺部に広がるようなスクロールパターンを示している。この残像防止パターンは、まず背景として赤色(R)と青色(B)と緑色(G)とを同時点灯させた白色(W)で、かつ、低階調の明るさである表示画像を全面に点灯させる(以下、背景全白表示という)。低階調とは、1SFにおける維持期間中に印加される維持パルス数の少ない階調であり、最大階調を255階調とした場合、低階調を0〜85階調、中間階調を86〜170階調、高階調を171〜255階調に区分すると、85階調以下を示している。この背景全白表示を背景として、高階調の白色円状のパターンが表示されるように中央部の複数のセルが点灯される。白色円状とはRGB色を同時に点灯した領域が数セルで構成される円状の点灯領域である。円状とは、円又は楕円のような曲線で構成される形状等である。その白色円状領域が少しずつ表示領域の周辺部のセルに広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R1)。これと同時に、点灯していた中央部の複数のセルは、背景全白表示と同じ表示となるように印加される維持パルス数が制御され、中央部から周辺部へ広がるように円状領域が少しずつ表示領域の周辺部のセルに広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R2)。つまり、表示領域の同領域において、S1の制御の後にS2の制御が行われる。
【0047】
その結果、この残像防止表示がスクロールされることにより、表示領域における左上領域で焼き付いた表示文字「8:00」をテレビ放送終了時又は、チャンネル切換時において焼き付きを解消することができる。
【0048】
図5(c)に示す図は、図5(b)とは異なる残像防止パターンの例であり、表示の方法は同様である。図5(c)に示すように、残像防止表示パターンは左右水平方向に中央からパネル周辺部へ広がるような残像防止表示パターンである。図5(b)と同様に、背景として赤色(R)と青色(B)と緑色(G)とを同時点灯させた白色(W)であり、低階調の明るさである表示画像を全面に点灯させる。この背景全白表示が表示されると同時に、PDP11の表示領域において、中央部に白色縦帯となるように複数のセルを点灯させる。白色縦帯とはRGB色を同時に点灯した領域がPDP11の短辺方向の複数の放電セルSで構成される白色点灯領域である。その白色縦帯が少しずつ周辺部のセルに水平方向に広がるように点灯位置が順次ずれていく(R3)。これと同時に、これまで点灯していた中央部の複数の放電セル領域は、背景と同じ表示となるように印加される維持パルス数が制御され、中央部から周辺部へ広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R4)。つまり、表示領域の同領域において、S3の制御の後にS4の制御が行われる。
【0049】
その結果、表示領域における左上領域で焼き付いた表示文字「8:00」をチャンネル表示切り替え時及びテレビ放送終了時において焼き付きを解消することができる。
【0050】
5、残像防止表示パターンの制御
次に、残像防止パターンを制御させる制御部について、図6(a)、(b)を用いて説明する。
【0051】
図6(a)は、本実施形態における残像防止表示パターンを表示させるための制御方法を示す図である。まず初めに制御を行う各部位の説明を行う。
【0052】
図6(a)に示すアンテナ線25は、放送局から受信した映像信号30をPDP11に入力するための受信機である。制御部38は映像信号検出部26と静止画点灯時間検出部27とを備える。映像信号検出部26は、PDP11に入力する映像信号30のうち、表示領域と信号情報を選択処理して、PDP11の表示領域出力部35に出力する部位である。静止画点灯時間検出部27は、文字や絵図がある所定時間の間、静止画として点灯した場合に静止画として検出する部位である。制御部37は、表示処理制御部28と残像防止パターン信号発生部33とを備える。表示処理制御部28とは、静止画点灯時間に応じて背景全白表示や残像防止表示のような特定の内部表示パターンを点灯する時間を決定するための部位である。残像防止パターン信号発生部33とは、残像防止表示パターンを制御する部位である。残像防止パターン信号発生部33は、一定時間静止画として点灯された表示領域における焼き付きを解消するための残像防止表示パターンを出力処理するための部位である。表示領域出力部35は、PDP11の表示領域に実際に表示される背景全白表示および残像防止表示などの内部表示パターンを出力する部位である。
【0053】
なお、チャンネル表示切り替え時及び映像信号が送られない場合、つまり映像ON/OFF信号39がOFFの場合、背景を低階調の全面白色点灯に表示するとともに、PDP11の表示領域における中央から周辺に広がるような残像防止表示パターンが出力される。一方、映像ON/OFF信号がONの場合、背景全白表示および残像防止表示パターンは表示されない。
【0054】
次に制御を行う各部位の信号の流れについて、図6(b)を用いて説明する。アンテナ線25から出力された映像信号30がPDP11の映像信号検出部26に入力される。その映像信号30が、静止画として検出されるか静止画でないと検知されるかは、静止画点灯時間検出部27においてなされる。静止画点灯時間検出部27は、表示領域における特定領域に文字および絵図を表示するために同じ放電セルSで連続点灯する時間をカウントする。そのカウントした時間がある一定時間を過ぎると静止画として検出され、静止画点灯時間検出部27から表示処理制御部28に静止画検出信号29が出力される。そして、その静止画検出信号29は表示処理制御部28へ入力され、静止画点灯時間に応じて内部表示パターンを点灯する時間が決定されるカウント処理が行われる。点灯する時間としてカウント処理された後、表示処理制御部28から表示領域出力部35に背景全白表示信号31が出力される。一方、残像防止表示パターン信号32は残像防止パターン信号発生部33に出力する。表示処理制御部28の記憶媒体に内蔵された表示パターンは、点灯表示位置、点灯表示エリア、点灯表示色、点灯表示セルの明るさ、点灯表示時間を1つの表示パターンとして内蔵している。その後、残像防止パターン信号発生部33は、表示領域出力部35へ所定の残像防止パターンを表示させるよう映像信号のON/OFFに応じて残像防止表示パターン信号32を出力する。この残像防止表示パターン信号32を表示領域出力部35が受けた場合、表示領域出力部35から背景全白表示パターンと残像防止パターンとがPDP11の表示領域に表示される。
【0055】
視覚的に焼き付きが見えるメカニズムの1つとして下記のことが考えられている。PDP11内に残留しているH2O、H2、O2、有機物等の不純ガスが固定表示部18とその周辺部に偏って分布し、走査電極−維持電極間の放電開始電圧の差(ΔVf)に差異が生じる影響のためである。その結果、固定表示部18とその周辺部との間で輝度差が生じ、視覚的に焼き付いたように見える。
【0056】
この現象を解消するため、表示領域において固定表示部18とその周辺部に偏って分布しているH2O等の放電開始電圧(Vf)を変化させる不純ガスをPDP11の表示領域外に移動させるような残像防止表示パターンが表示される。その結果、固定表示部18とその周辺部の走査電極−維持電極間の放電開始電圧の差(ΔVf)、すなわち輝度差(ΔL)が小さくなり、図7に示すように、短期間で焼き付きを解消することが可能となる。
【0057】
6、放電開始電圧と輝度とに与える影響
図7(a)は、本発明の固定表示点灯時間と固定表示部18とその周辺部の放電開始電圧の差(ΔVf)との相関性を示す図である。横軸は、残像防止表示パターンが点灯する時間を示している。縦軸は、固定表示部18とその周辺部の放電開始電圧の差(ΔVf)を示している。○は、64時間固定表示部18を固定表示させた後、背景全面黒表示にしたときの放電開始電圧差ΔVfの結果である。●は、64時間固定表示部18を固定表示させた後、背景全面白表示にし、残像防止表示パターンをスクロールさせたときの放電開始電圧差ΔVfの結果である。△は、16時間固定表示部18を固定表示させた後、背景全面黒表示にしたときの放電開始電圧差ΔVfの結果である。▲は、16時間固定表示部18を固定表示させた後、背景全面白表示にし、残像防止表示パターンをスクロールさせたときの放電開始電圧差ΔVfの結果である。
【0058】
○や△に示すように、背景全面黒表示の場合、不純ガスの移動が少ないため、本発明の実施の形態におけるΔVfにするには、約1時間がかかる。一方、PDP11における表示領域の中央部から周辺部に広がるような残像防止表示パターンを表示させると不純ガスの移動スピードが加速されることにより、固定表示部18とその周辺部の走査電極−維持電極間の放電開始電圧の差が小さくなるスピードが速くなる。その結果、●や▲に示すように、約0.5時間で焼き付きが解消していることがわかる。
【0059】
また、背景全面黒表示よりも背景全面白表示にした場合には、焼き付き周辺部の不純ガスを表示領域外に移動させるスピードは速くなる。すなわち、中央から周辺に広がるような残像防止表示パターンを表示させると不純ガスの移動が更に加速され、固定表示部18とその周辺部の走査電極−維持電極間の放電開始電圧差が小さくなるスピードが更に速くなり、短期間で固定表示部18とその周辺部の輝度差が小さくなって焼き付きが解消されることが可能となる。
【0060】
図7(b)は、固定表示部18とその周辺部の輝度差(ΔL)と放電開始電圧差(ΔVf)との相関性を示す図である。横軸は、固定表示部18とその周辺部との放電開始電圧差(ΔVf)を示し、縦軸は、固定表示部18とその周辺部との輝度差(ΔL)を示している。●、▲、○、△については図7(a)と同様である。放電開始電圧の差(ΔVf)が小さくなれば、輝度差(ΔL)がより小さい。したがって、輝度差(ΔL)と放電開始電圧差(ΔVf)とは相関関係があり、放電開始電圧の差(ΔVf)が小さくなれば、輝度差(ΔL)がより小さくなるため、焼き付きが視認しにくくなっていることを確認することができる。
【0061】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態におけるPDPにおいて、第1実施形態におけるPDPと異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0062】
第2実施形態は、第1実施形態の残像防止表示パターンにて、維持電力とともに維持周波数が最大となるように低階調の背景全白表示が表示され、高階調の白色スクロール表示パターンがスクロール表示されることにより、短時間で焼き付いた領域の放電開始電圧差ΔVfを小さくすることが可能となる。
【0063】
42インチFHDパネルを例に維持周波数が最大となるような条件の表示パターンについて説明する。表示点灯率(%)に対する維持電力(W)と維持周波数(kHz)との相関性を図8に示す。
【0064】
横軸は点灯率(%)、左縦軸は維持電力(W)、右縦軸は維持周波数(kHz)を示している。点灯率とは、表示領域における残像防止表示パターンが点灯表示されている割合である。点灯率が20%を超えると、維持周波数(kHz)がより小さくなる。PDP11の維持電力(W)が発光表示回数の増加に伴って増加するため、背景全白表示のように表示点灯率が大きくなるにつれ、定格電力を大きく超えてしまう。このことから、維持発光表示の電力を低下させて自動的に電力制御する機能(APC)が働き、電力を制御している。この時、低階調の背景全白表示の階調を高くしていくと、点灯率が20%を超えた場合に自動電力制御(以下APCと言う)が働いて、維持周波数が小さくなっていく。
【0065】
図9は、維持周波数(kHz)と24時間固定表示焼き付き直後及び焼き付き防止表示としてのパターンを2時間点灯後の固定表示部18とその周辺部との放電開始電圧差(ΔVf)を示す図である。○は、維持周波数が9kHzのとき、すなわち、点灯率100%の場合、固定表示部が24時間固定表示された直後の放電開始電圧差を示している。●は、24時間固定表示された後、高階調の背景全白表示を2時間表示した後の放電開始電圧差を示している。◇は、維持周波数が39kHzのとき、すなわち、点灯率30%の場合、固定表示部18が24時間固定表示された直後の放電開始電圧差を示している。◆は、24時間固定表示された後、低階調の背景全白表示と残像防止表示パターンを2時間スクロール表示した後の放電開始電圧差を示している。△は、維持周波数が42kHzのとき、すなわち、点灯率が19%の場合、固定表示部18が24時間固定表示された直後の放電開始電圧差を示している。▲は、24時間固定表示された後、背景全黒表示を表示すると共に固定表示部18のみ高階調の白表示を2時間表示した後の放電開始電圧差を示している。
【0066】
図9の◆に示すように、焼き付きが解消される残像防止表示パターンが2時間点灯した後では、他のパターンを表示させるよりも放電開始電圧差がより小さい。したがって、APCが動作しない点灯率つまり維持周波数および維持電力が最大となるような低階調の全面白点灯表示パターンを背景に加え、パネル中央から周辺に広がるような残像防止表示パターンをスクロール表示させることにより、固定表示部18とその周辺部との輝度差が小さくなり、短期間で焼き付きを解消することが可能となる。
【0067】
<第3実施形態>
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態におけるPDP11において、第1実施形態におけるPDP11と異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0068】
第3実施形態は、第1実施形態の長時間点灯していた固定表示部18が焼き付いた時間をカウントし、固定表示部18の表示領域における位置を記憶し、固定表示部18以外の表示領域において残像防止パターンがスクロール表示されることにより、より短時間で焼き付いた領域の放電開始電圧差を小さくすることが可能となる。これは、固定表示で焼き付いた固定表示部18は、放電開始電圧が上昇する一方、焼き付いた表示領域周辺部からスクロール表示パターンにより移動した放電開始電圧を下げるH2O分子等の不純ガスが焼き付いた領域へ移動するため、焼き付いた領域の放電開始電圧を下げることが可能となる。
【0069】
図10は、PDP11の表示領域において、長時間固定表示で点灯していた文字又は絵図を検出し、検出した領域のみ非点灯にし、それ以外の領域を低階調の背景全白表示にするとともに、中央から表示領域の周辺に広がるような残像防止表示パターンがスクロール表示されている。この残像防止表示パターンは、例えば表示領域における左上領域で焼き付いた表示文字「8:00」部を黒表示つまり0階調表示を出力し、焼き付いた表示文字「8:00」部以外において、低階調の背景全白表示となるように点灯させる。この背景全白表示を表示するとともに、高階調の白色円状のパターンが表示されるように中央部の複数のセルが点灯される。その白色円状領域が少しずつ表示領域の周辺部のセルに広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R1)。これと同時に、点灯していた中央部の複数のセルは、背景と同じ表示となるように印加される維持パルス数が制御され、中央部から周辺部へ広がるように円状領域が少しずつ表示領域の周辺部のセルに広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R2)。つまり、表示領域の同領域において、S1の制御の後にS2の制御が行われる。
【0070】
この残像防止表示パターンにより、表示領域における左上領域で焼き付いた表示文字「8:00」をテレビ放送終了時又は、チャンネル切換時において焼き付きを解消することができる。
【0071】
図11は、長時間固定表示で点灯していた領域のみ黒表示に変換した残像防止表示パターンを表示させるための制御方法を示す図である。
【0072】
アンテナ線25から出力された映像信号30がPDP11の映像信号検出部26に入力され、映像信号30が静止画として特定領域において表示された文字および絵図が一定時間固定されたことを検知する静止画点灯時間検出部27で静止画が固定表示で連続点灯する時間がカウントされる。そのカウントされた時間がある一定時間を過ぎると、静止画点灯時間検出部27から静止画検出信号29を表示位置制御部34に出力する。表示位置制御部34では、表示位置制御部34に固定表示の位置などの情報を与える情報信号36を出力し、固定表示部18を黒表示に、すなわち、非点灯になるように固定表示部黒表示変換を行う。残像防止パターン信号発生部33とは、残像防止表示パターンを制御する部位である。残像防止パターン信号発生部33は、一定時間静止画として点灯された表示領域における焼き付きを解消するための残像防止表示パターンを出力処理するための部位である。また、チャンネル表示切り替え時及び映像信号が送られない場合、つまり映像ON/OFF信号39がOFFの場合、背景を低階調の全面白色点灯に表示するとともに、PDP11の表示領域における中央から周辺に広がるような残像防止表示パターンが出力される。一方、映像ON/OFF信号39がONの場合、背景全白表示および残像防止表示パターンは表示されない。
【0073】
長時間点灯していた文字や絵図等の固定表示部18は、放電開始電圧を下げるH2O等の不純ガスが除去されるため、固定表示部18の周辺よりも放電開始電圧(Vf)が上昇してしまう。一方、固定表示部18の周辺は、放電開始電圧を下げるH2O等の不純ガスが大量に付着するため、固定表示部18の周辺よりも放電開始電圧が低下してしまう。その結果、固定表示部18とその周辺部に放電開始電圧差が生じてしまう。その電圧差を解消するために、残像防止表示パターンとして固定表示部18に黒表示を表示し、固定表示部18にその周辺部からの放電開始電圧が低下するH2O等の不純物を流し込み、固定表示部18の周辺に付着した大量のH2O等の不純ガスを除去することにより、焼き付いた後の固定表示部18とその周辺部との放電開始電圧差(ΔVf)が小さくなっていくスピードが加速され、短期間で固定表示部18とその周辺部との輝度差(ΔL)を小さくすることが可能となる。
【0074】
また、視覚的に焼き付きが見えるもう一つのメカニズムとして、蛍光体の劣化及び蛍光体表面への不純物の付着により輝度差が発生する場合がある。この場合には、固定表示部18の輝度が低下してしまっているため、実施の形態3のように固定表示部18の輝度低下を防止し、固定表示部18の周辺の輝度低下を促進することにより、残像が目視で観察されにくくなることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように本発明は、残像の発生しない画像品質に優れた高性能のプラズマディスプレイ装置を提供する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0076】
1 前面基板
2 背面基板
3 走査電極
4 維持電極
5 誘電体層
6 保護層
7 絶縁体層
8 データ電極
9 隔壁
10R、10G、10B 蛍光体層
11 プラズマディスプレイパネル
12 画像信号処理回路
13 データ電極駆動回路
14 走査電極駆動回路
15 維持電極駆動回路
16 タイミング発生回路
18 固定表示部
24 ダミー電極
S 放電空間
25 アンテナ線
26 映像信号検出部
27 静止画点灯時間検出部
28 表示処理制御部
29 静止画点灯時間検出部出力信号
30 映像信号
31 背景全白表示信号
32 残像防止表示パターン信号
33 残像防止パターン信号発生部
34 表示位置制御部
35 表示領域出力部
36 情報信号
39 映像ON/OFF信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)を表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置(以下、PDP装置という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このプラズマディスプレイ装置に用いられるパネルは、大別して、駆動的にはAC型とDC型があり、放電形式では面放電型と対向放電型の2種類があるが、高精細化、大画面化および製造の簡便性から、現状では、プラズマディスプレイ装置の主流は、3電極構造の面放電型のものである。
【0003】
この面放電型のPDP構造は、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに、放電空間を複数に仕切るための隔壁を基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する赤色、緑色、青色に発光する蛍光体を設けて複数の放電セルを構成したもので、放電により発生する波長の短い真空紫外光によって蛍光体を励起し、赤色、緑色、青色の放電セルからそれぞれ赤色、緑色、青色の可視光を発することによりカラー表示を行っている。
【0004】
このようなPDP装置は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、視野角が広いこと、大型化が容易であること、自発光型であるため表示品質が高いことなどの理由から、フラットパネルディスプレイの中で最近特に注目を集めており、多くの人が集まる場所での表示装置や家庭で大画面の映像を楽しむための表示装置として各種の用途に使用されている。
【0005】
このようなPDP装置においては、静止画若しくは画面の大部分が静止している映像を長時間表示する際に、画面をある一定時間固定すると、焼き付きが発生する。その焼き付きが発生すると、次の画面を映し出す時に前の焼き付いた画面が残像として残ってしまう。また、放電開始電圧が局所的に変化し、安定した画像表示が困難となる。そこで、それを解消するために、その映像の静止画を検知して、画像表示が上方向、又は下方向にスクロールするような技術が検討されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−228474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、表示性能が局所的に劣化することを防ぐような上方向、又は下方向にスクロールするパターンでは、長時間の静止画によって焼き付いた領域を解消するのに時間がかかり、迅速な画面切り換え時の表示品質に問題があった。
【0008】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、静止画によって焼き付いた文字や絵図を短期間で解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明は、表示領域を備えるPDPであって、表示領域において表示された文字および絵図が一定時間固定されたことを検知する静止画点灯時間検出部と、前記検出部からの信号を受けて残像防止パターン信号の発生信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記静止画点灯時間検出部から出力された信号を受けた場合、表示領域に残像防止パターンを発生させる信号を出力する信号発生部を備え、前記残像防止パターンは、全面白表示パターンを備え、前記表示領域のある領域から表示領域の周辺部に拡大する全面スクロールパターンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示領域において表示された文字および絵図が一定時間固定された静止画による文字や絵図の焼き付きを短期間で解消するようなPDP装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイ装置に用いるパネルの要部を示す斜視図
【図2】本発明の一実施の形態によるPDP装置の電極配列図
【図3】本発明の一実施の形態によるPDP装置の回路ブロック図
【図4】本発明の一実施の形態によるPDP装置の各電極に印加する駆動電圧波形を示す図
【図5】(a)本発明の一実施の形態によるPDPに絵図が表示されていることを表した図、(b)本発明の一実施の形態によるPDPに残像防止表示パターンがスクロールされていることを示す図、(c)本発明の一実施の形態によるPDPに他の残像防止表示パターンがスクロールされていることを示す図
【図6】(a)本発明の一実施の形態によるPDP装置の各制御部を表した図、(b)本発明の一実施の形態によるPDP装置の各制御部の動作を表した図
【図7】(a)本発明の一実施の形態によるPDP装置における残像防止表示パターン点灯時間に対する放電開始電圧差を示す図、(b)本発明の一実施の形態によるPDP装置における放電開始電圧差に対する輝度差を示す図
【図8】本発明の第2実施の形態によるPDP装置の点灯率に対する維持電力と維持周波数を示す図
【図9】本発明の第2実施の形態によるPDP装置の維持周波数に対する放電開始電圧差を示す図
【図10】本発明の第3実施の形態によるPDP装置の長時間固定表示部のみ黒表示に変換した場合の残像防止表示パターンを示す図
【図11】本発明の第3実施の形態による装置の長時間固定表示部のみ黒表示に変換した残像防止表示パターンの制御方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態によるPDP装置について、図1〜図6を用いて説明する。しかし、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0013】
1、プラズマディスプレイパネル(PDP)
まず、PDP装置におけるパネルの構造について図1を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態によるPDP装置に用いるパネルの要部を示す図である。図1に示すように、PDPは、ガラス製の前面基板1と背面基板2とを、その間に放電空間を形成するように対向配置することにより構成されている。前面基板1上には表示電極を構成する走査電極3と維持電極4とが間に放電ギャップGを設けて互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極3および維持電極4を覆うようにガラス材料からなる誘電体層5が形成され、その誘電体層5上にはMgOからなる保護層6が形成されている。走査電極3および維持電極4は、ITOなどの透明電極3a、4aと、この透明電極に重ねて形成したAgからなるバス電極3b、4bとから構成されている。
【0015】
また、背面基板2上には、ガラス材料からなる絶縁体層7で覆われたストライプ状に配列したAgからなる複数のデータ電極8が設けられ、その絶縁体層7上には、前面基板1と背面基板2との間の放電空間Sを放電セル毎に区切るための井桁状のガラス材料からなる隔壁9が設けられている。また、絶縁体層7の表面および隔壁9の側面に赤色10R、緑色10G、青色10Bの蛍光体層が設けられている。そして、走査電極3および維持電極4とデータ電極8とが交差するように前面基板1と背面基板2とが対向配置されており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、PDP11の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁9を備えたものであってもよい。
【0016】
次に、PDP11の電極について説明する。図2はこのPDP11の電極配列図である。図2に示すように、PDP11の表示領域には、行方向にn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極)が、維持電極SU1−走査電極SC1−走査電極SC2−維持電極SU2・・・・の配列となるように形成され、列方向にm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極)が走査電極SC1〜SCnおよびn本の維持電極SU1〜SUnと交差する配列となるように形成されている。そして、1対の走査電極SCiおよび維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルSが形成され、放電セルSは放電空間内にm×n個形成されている。また、PDP11の表示領域の周囲には、非表示領域が設けられ、その非表示領域には、複数本(図示のものは、片側に2本)のダミー電極24が形成されている。
【0017】
次に、PDP装置の回路ブロックについて説明する。図3はこのPDP11を用いたPDP装置の回路ブロック図である。図3に示すように、このPDP装置は、PDP11、画像信号処理回路12、データ電極駆動回路13、走査電極駆動回路14、維持電極駆動回路15、タイミング発生回路16および電源回路(図示せず)を備えている。また、データ電極駆動回路13は、図2に示すように、PDP11のデータ電極8の一端に接続され、かつデータ電極8に電圧を供給するための半導体素子からなる複数のデータドライバを有している。データ電極8は、数本ずつのデータ電極で1ブロックとして複数のブロックに分割し、そのブロック単位で複数のデータドライバをPDP11の下端部の電極引出部に接続して配置している。
【0018】
図3において、画像信号処理回路12は、画像信号sigをサブフィールド毎の画像データに変換する。データ電極駆動回路13はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し、各データ電極D1〜Dmを駆動する。タイミング発生回路16は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各種のタイミング信号を発生し、各駆動回路ブロックに供給している。走査電極駆動回路14はタイミング信号にもとづいて走査電極SC1〜SCnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路15はタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnに駆動電圧波形を供給する。ここで、走査電極駆動回路14および維持電極駆動回路15は、維持パルス発生部17を備えている。
【0019】
2、PDP11の駆動について
次に、PDP11を駆動するための駆動電圧波形とその動作について図4を用いて説明する。図4はPDP11の各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。本実施の形態によるPDP装置においては、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間、維持期間を有している。
【0020】
2−1、初期化期間
第1サブフィールドの初期化期間では、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SUnを0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi1(V)から放電開始電圧を超える電圧Vi2(V)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルSにおいて1回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上に負の壁電圧が蓄えられるとともに維持電極SU1〜SUn上およびデータ電極D1〜Dm上に正の壁電圧が蓄えられる。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層や蛍光体層上等に蓄積した壁電荷により生じる電圧を指す。その後、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Vh(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて2回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
【0021】
2−2、書込み期間
続く書込み期間では、走査電極SC1〜SCnを一旦Vr(V)に保持する。次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Va(V)を印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に表示すべき放電セルSのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vd(V)を印加する。このときデータ電極Dkと走査電極SC1との交差部の電圧は、外部印加電圧(Vd−Va)(V)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、この放電セルの走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。このようにして、1行目に表示すべき放電セルSで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vd(V)を印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルSに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
【0022】
2−3、維持期間
続く維持期間では、走査電極SC1〜SCnには第1の電圧として正の維持パルス電圧Vs(V)を、維持電極SU1〜SUnには第2の電圧として接地電位、すなわち0(V)をそれぞれ印加する。このとき書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCi上と維持電極SUi上との間の電圧は維持パルス電圧Vs(V)に走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。このときデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは、維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保持される。続いて、走査電極SC1〜SCnには第2の電圧である0(V)を、維持電極SU1〜SUnには第1の電圧である維持パルス電圧Vs(V)をそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との間の電圧が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。
【0023】
2−4、第2サブフィールド以降
以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。こうして維持期間における維持動作が終了する。続くサブフィールドにおける初期化期間、書込み期間、維持期間の動作も第1サブフィールドにおける動作とほぼ同様のため、説明を省略する。
【0024】
3、PDPの製造方法
3−1、前面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、前面基板上に、走査電極3および維持電極4が形成される。走査電極3は、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明電極3a、4aと、透明電極3a、4aに積層された銀(Ag)などからなるバス電極3b、4bとから構成されている。維持電極4は、ITOなどの透明電極と、透明電極3a、4aに積層されたAgなどからなるバス電極3b、4bとから構成されている。
【0025】
バス電極3b、4bの材料には、銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、電極ペーストが、透明電極が形成された前面基板1に塗布される。次に、乾燥炉によって、電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、電極ペーストが露光される。
【0026】
次に、電極ペーストが現像され、バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、バス電極3b、4bが形成される。
【0027】
ここで、電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0028】
次に、誘電体層5が形成される。誘電体層5の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。まずダイコート法などによって、誘電体ペーストが所定の厚みで走査電極3、維持電極4を覆うように前面基板1上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた誘電体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、誘電体層5が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などを用いることができる。また、誘電体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、誘電体層5となる膜を形成することもできる。
【0029】
次に、誘電体層5上に保護層6が形成される。
【0030】
以上の工程により前面基板1上に走査電極3、維持電極4、誘電体層5および保護層6を有する前面板が完成する。
【0031】
3−2、背面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、背面基板2上に、データ電極8が形成される。データ電極8の材料には、導電性を確保するための銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むデータ電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、データ電極ペーストが所定の厚みで背面基板2上に塗布される。次に、乾燥炉によって、データ電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、データ電極ペーストが露光される。次に、データ電極ペーストが現像され、データ電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、データ電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、データ電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、データ電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、データ電極8が形成される。ここで、データ電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0032】
次に、絶縁体層7が形成される。絶縁体層7の材料には、絶縁体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む絶縁体ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、絶縁体ペーストが所定の厚みでデータ電極8が形成された背面基板2上にデータ電極8を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、絶縁体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、絶縁体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、絶縁体ペースト中の樹脂が除去される。また、絶縁体ガラスフリットが溶融するその後、室温まで冷却することにより、溶融していた絶縁体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、絶縁体層7が形成される。ここで、絶縁体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、絶縁体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、絶縁体層7となる膜を形成することもできる。
【0033】
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁9が形成される。隔壁9の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法などによって、隔壁ペーストが所定の厚みで絶縁体層7上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、隔壁9が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0034】
次に、蛍光体層10が形成される。蛍光体層10の材料には、蛍光体粒子とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法などによって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する複数の隔壁間の絶縁体層7上および隔壁9の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層10が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0035】
以上の工程により、背面基板2上に、データ電極8、絶縁体層7、隔壁9および蛍光体層10を有する背面板が完成する。
【0036】
3−3、前面板と背面板との組立方法
まず、ディスペンス法などによって、背面板の周囲に封着ペーストが塗布される。塗布された封着ペーストは、封着ペースト層(図示せず)を形成する。次に乾燥炉によって、封着ペースト層中の溶剤が除去される。その後、封着ペースト層は、約350℃の温度で仮焼成される。仮焼成によって、封着ペースト層中の樹脂成分などが除去される。次に、表示電極とデータ電極8とが直交するように、前面板と背面板とが対向配置される。
【0037】
さらに、前面板と背面板の周縁部が、クリップなどにより押圧した状態で保持される。この状態で、所定の温度で焼成することにより、低融点ガラス材料が溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた低融点ガラス材料がガラス化する。これにより、前面板と背面板とが気密封着される。最後に、放電空間にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入されることによりPDP11が完成する。
【0038】
4、残像防止表示パターン
次に、本発明の第1実施の形態であるPDPの表示パターンについて説明する。
【0039】
走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルSで維持放電が継続して行われる。このとき発生した紫外線により維持放電が発生した放電セルSにおいて、蛍光体層10が発光する。その結果、発光された領域において表示画面に文字や絵図などの固定表示部18が表示される。ここで、固定表示部18を表示する際、表示画面で短時間の間に移動する固定表示部18を動画と言い、一定時間の間固定して表示される固定表示部18を静止画と言う。したがって、静止画を表示する場合、維持期間において維持放電するための書き込み放電が一定期間、同じ放電セルSで発生する。
【0040】
本実施の形態では、静止画として画面左上に時計表示の「8:00」が固定表示されている。この「8:00」が一定時間、固定表示された後、表示画面全体(以後、全面と言う)に階調の比較的高い同じ明るさの色で表示を出したときに、静止画「8:00」が表示された領域において焼き付きが視認される。それは、静止画「8:00」が表示された領域とその周辺領域との間で、輝度差(ΔL)が発生するためである。輝度差(ΔL)が発生する原因として、一定時間固定表示された領域の放電開始電圧(Vf)が上昇し、周辺領域との放電開始電圧の差(ΔVf)が大きくなることが考えられている。
【0041】
この輝度差は、PDP11の表示領域において表示された「8:00」が一定時間固定された後、全面同色の白、赤、緑若しくは青の表示パターンを表示した場合に、固定表示部18とその周辺部で容易に視認される程に目立つ。
【0042】
そこで、本実施の形態では、表示領域を備えるPDPであって、表示領域において表示された文字および絵図が一定時間固定されたことを検知する静止画点灯時間検出部と、前記検出部からの信号を受けて残像防止パターン信号の発生信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記静止画点灯時間検出部から出力された信号を受けた場合、表示領域に残像防止パターンを発生させる信号を出力する信号発生部を備え、前記残像防止パターンは、全面白表示パターンを備え、前記表示領域のある領域から表示領域の周辺部に拡大する全面スクロールパターンであることを特徴とする。
【0043】
これにより、焼き付きによる輝度差を短時間で低減することができる。
【0044】
以下、輝度差(ΔL)を低減する具体的な構成について説明する。
【0045】
図5は、本発明の第1実施の形態による表示パターンを示す図である。例えば、図5(a)に示す図は、表示文字「8:00」がPDP11の表示領域左上付近に焼き付いている様子を示す図である。この現象を具体的に説明する。PDP11の表示領域左上付近に表示文字「8:00」が一定時間の間、動かずに固定して点灯し続けた後、例えば表示領域において全面同色かつ同階調の表示に切り換えたとする。すると、固定点灯の間に「8:00」が表示されていた領域と「8:00」の周辺部とで輝度差(ΔL)が生じたため、表示文字「8:00」が表示されていた領域において焼き付きが視認される。
【0046】
そこで、この焼き付きを防止するために、本実施の形態では図5(b)や(c)などの残像防止パターンを表示し、表示領域においてスクロールされる。図5(b)は、PDP11の表示領域における中央部から表示領域の周辺部に広がるようなスクロールパターンを示している。この残像防止パターンは、まず背景として赤色(R)と青色(B)と緑色(G)とを同時点灯させた白色(W)で、かつ、低階調の明るさである表示画像を全面に点灯させる(以下、背景全白表示という)。低階調とは、1SFにおける維持期間中に印加される維持パルス数の少ない階調であり、最大階調を255階調とした場合、低階調を0〜85階調、中間階調を86〜170階調、高階調を171〜255階調に区分すると、85階調以下を示している。この背景全白表示を背景として、高階調の白色円状のパターンが表示されるように中央部の複数のセルが点灯される。白色円状とはRGB色を同時に点灯した領域が数セルで構成される円状の点灯領域である。円状とは、円又は楕円のような曲線で構成される形状等である。その白色円状領域が少しずつ表示領域の周辺部のセルに広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R1)。これと同時に、点灯していた中央部の複数のセルは、背景全白表示と同じ表示となるように印加される維持パルス数が制御され、中央部から周辺部へ広がるように円状領域が少しずつ表示領域の周辺部のセルに広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R2)。つまり、表示領域の同領域において、S1の制御の後にS2の制御が行われる。
【0047】
その結果、この残像防止表示がスクロールされることにより、表示領域における左上領域で焼き付いた表示文字「8:00」をテレビ放送終了時又は、チャンネル切換時において焼き付きを解消することができる。
【0048】
図5(c)に示す図は、図5(b)とは異なる残像防止パターンの例であり、表示の方法は同様である。図5(c)に示すように、残像防止表示パターンは左右水平方向に中央からパネル周辺部へ広がるような残像防止表示パターンである。図5(b)と同様に、背景として赤色(R)と青色(B)と緑色(G)とを同時点灯させた白色(W)であり、低階調の明るさである表示画像を全面に点灯させる。この背景全白表示が表示されると同時に、PDP11の表示領域において、中央部に白色縦帯となるように複数のセルを点灯させる。白色縦帯とはRGB色を同時に点灯した領域がPDP11の短辺方向の複数の放電セルSで構成される白色点灯領域である。その白色縦帯が少しずつ周辺部のセルに水平方向に広がるように点灯位置が順次ずれていく(R3)。これと同時に、これまで点灯していた中央部の複数の放電セル領域は、背景と同じ表示となるように印加される維持パルス数が制御され、中央部から周辺部へ広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R4)。つまり、表示領域の同領域において、S3の制御の後にS4の制御が行われる。
【0049】
その結果、表示領域における左上領域で焼き付いた表示文字「8:00」をチャンネル表示切り替え時及びテレビ放送終了時において焼き付きを解消することができる。
【0050】
5、残像防止表示パターンの制御
次に、残像防止パターンを制御させる制御部について、図6(a)、(b)を用いて説明する。
【0051】
図6(a)は、本実施形態における残像防止表示パターンを表示させるための制御方法を示す図である。まず初めに制御を行う各部位の説明を行う。
【0052】
図6(a)に示すアンテナ線25は、放送局から受信した映像信号30をPDP11に入力するための受信機である。制御部38は映像信号検出部26と静止画点灯時間検出部27とを備える。映像信号検出部26は、PDP11に入力する映像信号30のうち、表示領域と信号情報を選択処理して、PDP11の表示領域出力部35に出力する部位である。静止画点灯時間検出部27は、文字や絵図がある所定時間の間、静止画として点灯した場合に静止画として検出する部位である。制御部37は、表示処理制御部28と残像防止パターン信号発生部33とを備える。表示処理制御部28とは、静止画点灯時間に応じて背景全白表示や残像防止表示のような特定の内部表示パターンを点灯する時間を決定するための部位である。残像防止パターン信号発生部33とは、残像防止表示パターンを制御する部位である。残像防止パターン信号発生部33は、一定時間静止画として点灯された表示領域における焼き付きを解消するための残像防止表示パターンを出力処理するための部位である。表示領域出力部35は、PDP11の表示領域に実際に表示される背景全白表示および残像防止表示などの内部表示パターンを出力する部位である。
【0053】
なお、チャンネル表示切り替え時及び映像信号が送られない場合、つまり映像ON/OFF信号39がOFFの場合、背景を低階調の全面白色点灯に表示するとともに、PDP11の表示領域における中央から周辺に広がるような残像防止表示パターンが出力される。一方、映像ON/OFF信号がONの場合、背景全白表示および残像防止表示パターンは表示されない。
【0054】
次に制御を行う各部位の信号の流れについて、図6(b)を用いて説明する。アンテナ線25から出力された映像信号30がPDP11の映像信号検出部26に入力される。その映像信号30が、静止画として検出されるか静止画でないと検知されるかは、静止画点灯時間検出部27においてなされる。静止画点灯時間検出部27は、表示領域における特定領域に文字および絵図を表示するために同じ放電セルSで連続点灯する時間をカウントする。そのカウントした時間がある一定時間を過ぎると静止画として検出され、静止画点灯時間検出部27から表示処理制御部28に静止画検出信号29が出力される。そして、その静止画検出信号29は表示処理制御部28へ入力され、静止画点灯時間に応じて内部表示パターンを点灯する時間が決定されるカウント処理が行われる。点灯する時間としてカウント処理された後、表示処理制御部28から表示領域出力部35に背景全白表示信号31が出力される。一方、残像防止表示パターン信号32は残像防止パターン信号発生部33に出力する。表示処理制御部28の記憶媒体に内蔵された表示パターンは、点灯表示位置、点灯表示エリア、点灯表示色、点灯表示セルの明るさ、点灯表示時間を1つの表示パターンとして内蔵している。その後、残像防止パターン信号発生部33は、表示領域出力部35へ所定の残像防止パターンを表示させるよう映像信号のON/OFFに応じて残像防止表示パターン信号32を出力する。この残像防止表示パターン信号32を表示領域出力部35が受けた場合、表示領域出力部35から背景全白表示パターンと残像防止パターンとがPDP11の表示領域に表示される。
【0055】
視覚的に焼き付きが見えるメカニズムの1つとして下記のことが考えられている。PDP11内に残留しているH2O、H2、O2、有機物等の不純ガスが固定表示部18とその周辺部に偏って分布し、走査電極−維持電極間の放電開始電圧の差(ΔVf)に差異が生じる影響のためである。その結果、固定表示部18とその周辺部との間で輝度差が生じ、視覚的に焼き付いたように見える。
【0056】
この現象を解消するため、表示領域において固定表示部18とその周辺部に偏って分布しているH2O等の放電開始電圧(Vf)を変化させる不純ガスをPDP11の表示領域外に移動させるような残像防止表示パターンが表示される。その結果、固定表示部18とその周辺部の走査電極−維持電極間の放電開始電圧の差(ΔVf)、すなわち輝度差(ΔL)が小さくなり、図7に示すように、短期間で焼き付きを解消することが可能となる。
【0057】
6、放電開始電圧と輝度とに与える影響
図7(a)は、本発明の固定表示点灯時間と固定表示部18とその周辺部の放電開始電圧の差(ΔVf)との相関性を示す図である。横軸は、残像防止表示パターンが点灯する時間を示している。縦軸は、固定表示部18とその周辺部の放電開始電圧の差(ΔVf)を示している。○は、64時間固定表示部18を固定表示させた後、背景全面黒表示にしたときの放電開始電圧差ΔVfの結果である。●は、64時間固定表示部18を固定表示させた後、背景全面白表示にし、残像防止表示パターンをスクロールさせたときの放電開始電圧差ΔVfの結果である。△は、16時間固定表示部18を固定表示させた後、背景全面黒表示にしたときの放電開始電圧差ΔVfの結果である。▲は、16時間固定表示部18を固定表示させた後、背景全面白表示にし、残像防止表示パターンをスクロールさせたときの放電開始電圧差ΔVfの結果である。
【0058】
○や△に示すように、背景全面黒表示の場合、不純ガスの移動が少ないため、本発明の実施の形態におけるΔVfにするには、約1時間がかかる。一方、PDP11における表示領域の中央部から周辺部に広がるような残像防止表示パターンを表示させると不純ガスの移動スピードが加速されることにより、固定表示部18とその周辺部の走査電極−維持電極間の放電開始電圧の差が小さくなるスピードが速くなる。その結果、●や▲に示すように、約0.5時間で焼き付きが解消していることがわかる。
【0059】
また、背景全面黒表示よりも背景全面白表示にした場合には、焼き付き周辺部の不純ガスを表示領域外に移動させるスピードは速くなる。すなわち、中央から周辺に広がるような残像防止表示パターンを表示させると不純ガスの移動が更に加速され、固定表示部18とその周辺部の走査電極−維持電極間の放電開始電圧差が小さくなるスピードが更に速くなり、短期間で固定表示部18とその周辺部の輝度差が小さくなって焼き付きが解消されることが可能となる。
【0060】
図7(b)は、固定表示部18とその周辺部の輝度差(ΔL)と放電開始電圧差(ΔVf)との相関性を示す図である。横軸は、固定表示部18とその周辺部との放電開始電圧差(ΔVf)を示し、縦軸は、固定表示部18とその周辺部との輝度差(ΔL)を示している。●、▲、○、△については図7(a)と同様である。放電開始電圧の差(ΔVf)が小さくなれば、輝度差(ΔL)がより小さい。したがって、輝度差(ΔL)と放電開始電圧差(ΔVf)とは相関関係があり、放電開始電圧の差(ΔVf)が小さくなれば、輝度差(ΔL)がより小さくなるため、焼き付きが視認しにくくなっていることを確認することができる。
【0061】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態におけるPDPにおいて、第1実施形態におけるPDPと異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0062】
第2実施形態は、第1実施形態の残像防止表示パターンにて、維持電力とともに維持周波数が最大となるように低階調の背景全白表示が表示され、高階調の白色スクロール表示パターンがスクロール表示されることにより、短時間で焼き付いた領域の放電開始電圧差ΔVfを小さくすることが可能となる。
【0063】
42インチFHDパネルを例に維持周波数が最大となるような条件の表示パターンについて説明する。表示点灯率(%)に対する維持電力(W)と維持周波数(kHz)との相関性を図8に示す。
【0064】
横軸は点灯率(%)、左縦軸は維持電力(W)、右縦軸は維持周波数(kHz)を示している。点灯率とは、表示領域における残像防止表示パターンが点灯表示されている割合である。点灯率が20%を超えると、維持周波数(kHz)がより小さくなる。PDP11の維持電力(W)が発光表示回数の増加に伴って増加するため、背景全白表示のように表示点灯率が大きくなるにつれ、定格電力を大きく超えてしまう。このことから、維持発光表示の電力を低下させて自動的に電力制御する機能(APC)が働き、電力を制御している。この時、低階調の背景全白表示の階調を高くしていくと、点灯率が20%を超えた場合に自動電力制御(以下APCと言う)が働いて、維持周波数が小さくなっていく。
【0065】
図9は、維持周波数(kHz)と24時間固定表示焼き付き直後及び焼き付き防止表示としてのパターンを2時間点灯後の固定表示部18とその周辺部との放電開始電圧差(ΔVf)を示す図である。○は、維持周波数が9kHzのとき、すなわち、点灯率100%の場合、固定表示部が24時間固定表示された直後の放電開始電圧差を示している。●は、24時間固定表示された後、高階調の背景全白表示を2時間表示した後の放電開始電圧差を示している。◇は、維持周波数が39kHzのとき、すなわち、点灯率30%の場合、固定表示部18が24時間固定表示された直後の放電開始電圧差を示している。◆は、24時間固定表示された後、低階調の背景全白表示と残像防止表示パターンを2時間スクロール表示した後の放電開始電圧差を示している。△は、維持周波数が42kHzのとき、すなわち、点灯率が19%の場合、固定表示部18が24時間固定表示された直後の放電開始電圧差を示している。▲は、24時間固定表示された後、背景全黒表示を表示すると共に固定表示部18のみ高階調の白表示を2時間表示した後の放電開始電圧差を示している。
【0066】
図9の◆に示すように、焼き付きが解消される残像防止表示パターンが2時間点灯した後では、他のパターンを表示させるよりも放電開始電圧差がより小さい。したがって、APCが動作しない点灯率つまり維持周波数および維持電力が最大となるような低階調の全面白点灯表示パターンを背景に加え、パネル中央から周辺に広がるような残像防止表示パターンをスクロール表示させることにより、固定表示部18とその周辺部との輝度差が小さくなり、短期間で焼き付きを解消することが可能となる。
【0067】
<第3実施形態>
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態におけるPDP11において、第1実施形態におけるPDP11と異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0068】
第3実施形態は、第1実施形態の長時間点灯していた固定表示部18が焼き付いた時間をカウントし、固定表示部18の表示領域における位置を記憶し、固定表示部18以外の表示領域において残像防止パターンがスクロール表示されることにより、より短時間で焼き付いた領域の放電開始電圧差を小さくすることが可能となる。これは、固定表示で焼き付いた固定表示部18は、放電開始電圧が上昇する一方、焼き付いた表示領域周辺部からスクロール表示パターンにより移動した放電開始電圧を下げるH2O分子等の不純ガスが焼き付いた領域へ移動するため、焼き付いた領域の放電開始電圧を下げることが可能となる。
【0069】
図10は、PDP11の表示領域において、長時間固定表示で点灯していた文字又は絵図を検出し、検出した領域のみ非点灯にし、それ以外の領域を低階調の背景全白表示にするとともに、中央から表示領域の周辺に広がるような残像防止表示パターンがスクロール表示されている。この残像防止表示パターンは、例えば表示領域における左上領域で焼き付いた表示文字「8:00」部を黒表示つまり0階調表示を出力し、焼き付いた表示文字「8:00」部以外において、低階調の背景全白表示となるように点灯させる。この背景全白表示を表示するとともに、高階調の白色円状のパターンが表示されるように中央部の複数のセルが点灯される。その白色円状領域が少しずつ表示領域の周辺部のセルに広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R1)。これと同時に、点灯していた中央部の複数のセルは、背景と同じ表示となるように印加される維持パルス数が制御され、中央部から周辺部へ広がるように円状領域が少しずつ表示領域の周辺部のセルに広がるように点灯するセルの位置が順次周辺部へずれていく(R2)。つまり、表示領域の同領域において、S1の制御の後にS2の制御が行われる。
【0070】
この残像防止表示パターンにより、表示領域における左上領域で焼き付いた表示文字「8:00」をテレビ放送終了時又は、チャンネル切換時において焼き付きを解消することができる。
【0071】
図11は、長時間固定表示で点灯していた領域のみ黒表示に変換した残像防止表示パターンを表示させるための制御方法を示す図である。
【0072】
アンテナ線25から出力された映像信号30がPDP11の映像信号検出部26に入力され、映像信号30が静止画として特定領域において表示された文字および絵図が一定時間固定されたことを検知する静止画点灯時間検出部27で静止画が固定表示で連続点灯する時間がカウントされる。そのカウントされた時間がある一定時間を過ぎると、静止画点灯時間検出部27から静止画検出信号29を表示位置制御部34に出力する。表示位置制御部34では、表示位置制御部34に固定表示の位置などの情報を与える情報信号36を出力し、固定表示部18を黒表示に、すなわち、非点灯になるように固定表示部黒表示変換を行う。残像防止パターン信号発生部33とは、残像防止表示パターンを制御する部位である。残像防止パターン信号発生部33は、一定時間静止画として点灯された表示領域における焼き付きを解消するための残像防止表示パターンを出力処理するための部位である。また、チャンネル表示切り替え時及び映像信号が送られない場合、つまり映像ON/OFF信号39がOFFの場合、背景を低階調の全面白色点灯に表示するとともに、PDP11の表示領域における中央から周辺に広がるような残像防止表示パターンが出力される。一方、映像ON/OFF信号39がONの場合、背景全白表示および残像防止表示パターンは表示されない。
【0073】
長時間点灯していた文字や絵図等の固定表示部18は、放電開始電圧を下げるH2O等の不純ガスが除去されるため、固定表示部18の周辺よりも放電開始電圧(Vf)が上昇してしまう。一方、固定表示部18の周辺は、放電開始電圧を下げるH2O等の不純ガスが大量に付着するため、固定表示部18の周辺よりも放電開始電圧が低下してしまう。その結果、固定表示部18とその周辺部に放電開始電圧差が生じてしまう。その電圧差を解消するために、残像防止表示パターンとして固定表示部18に黒表示を表示し、固定表示部18にその周辺部からの放電開始電圧が低下するH2O等の不純物を流し込み、固定表示部18の周辺に付着した大量のH2O等の不純ガスを除去することにより、焼き付いた後の固定表示部18とその周辺部との放電開始電圧差(ΔVf)が小さくなっていくスピードが加速され、短期間で固定表示部18とその周辺部との輝度差(ΔL)を小さくすることが可能となる。
【0074】
また、視覚的に焼き付きが見えるもう一つのメカニズムとして、蛍光体の劣化及び蛍光体表面への不純物の付着により輝度差が発生する場合がある。この場合には、固定表示部18の輝度が低下してしまっているため、実施の形態3のように固定表示部18の輝度低下を防止し、固定表示部18の周辺の輝度低下を促進することにより、残像が目視で観察されにくくなることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように本発明は、残像の発生しない画像品質に優れた高性能のプラズマディスプレイ装置を提供する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0076】
1 前面基板
2 背面基板
3 走査電極
4 維持電極
5 誘電体層
6 保護層
7 絶縁体層
8 データ電極
9 隔壁
10R、10G、10B 蛍光体層
11 プラズマディスプレイパネル
12 画像信号処理回路
13 データ電極駆動回路
14 走査電極駆動回路
15 維持電極駆動回路
16 タイミング発生回路
18 固定表示部
24 ダミー電極
S 放電空間
25 アンテナ線
26 映像信号検出部
27 静止画点灯時間検出部
28 表示処理制御部
29 静止画点灯時間検出部出力信号
30 映像信号
31 背景全白表示信号
32 残像防止表示パターン信号
33 残像防止パターン信号発生部
34 表示位置制御部
35 表示領域出力部
36 情報信号
39 映像ON/OFF信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域を備えるプラズマディスプレイパネルであって、
アンテナから受信された映像信号を受信する映像信号検出部と、
前記映像信号に含まれる映像が所定時間静止しているか否かを検出する静止画点灯時間検出部と、
前記静止画点灯時間検出部で検出された場合、前記表示領域において全面白色に点灯される表示パターン信号と残像防止表示パターン信号とを発生させる信号を出力する表示処理制御部と、
前記表示処理制御部から入力された前記表示パターン信号と残像防止表示パターン信号により前記表示領域に全面白色に点灯される表示パターンと残像防止表示パターンを表示させる表示領域出力部とを備え、
前記全面白色に点灯される表示パターンは背景として表示領域全体に低階調の白色が表示されるとともに、前記残像防止パターンが表示領域の所定の位置からより周辺のセルへ順次スクロールして点灯されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記残像防止パターンは、前記表示領域において所定時間静止して表示された固定表示部を除く領域を背景として低階調の白色が表示され、前記表示領域において所定時間静止して表示された前記固定表示部の周辺部のセルから前記表示領域におけるより周辺部のセルへ順次スクロールして点灯することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項1】
表示領域を備えるプラズマディスプレイパネルであって、
アンテナから受信された映像信号を受信する映像信号検出部と、
前記映像信号に含まれる映像が所定時間静止しているか否かを検出する静止画点灯時間検出部と、
前記静止画点灯時間検出部で検出された場合、前記表示領域において全面白色に点灯される表示パターン信号と残像防止表示パターン信号とを発生させる信号を出力する表示処理制御部と、
前記表示処理制御部から入力された前記表示パターン信号と残像防止表示パターン信号により前記表示領域に全面白色に点灯される表示パターンと残像防止表示パターンを表示させる表示領域出力部とを備え、
前記全面白色に点灯される表示パターンは背景として表示領域全体に低階調の白色が表示されるとともに、前記残像防止パターンが表示領域の所定の位置からより周辺のセルへ順次スクロールして点灯されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記残像防止パターンは、前記表示領域において所定時間静止して表示された固定表示部を除く領域を背景として低階調の白色が表示され、前記表示領域において所定時間静止して表示された前記固定表示部の周辺部のセルから前記表示領域におけるより周辺部のセルへ順次スクロールして点灯することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図5】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図5】
【図10】
【公開番号】特開2013−73026(P2013−73026A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212084(P2011−212084)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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