説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】PDPとデータドライバのどちらかを必要に応じて優先的に冷却することのできるプラズマディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】プラズマディスプレイ装置1Aは、データドライバ33に対応する位置に第1吸気部43Aが設けられ、この第1吸気部43Aよりも上方に第2吸気部43Bが設けられた筐体4と、筐体4に沿って移動するスライド板5とを備えている。スライド板5は、移動機構6Aにより、データドライバ33の温度が相対的に低いときにはスライド板5の第3開口51と第2吸気部43Bの第2開口43bとが合致する基準位置に移動させられ、データドライバ33の温度が相対的に高いときには第2開口43bを塞ぐ塞ぎ位置に移動させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ映像等の画像を表示するプラズマディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ映像等の画像を表示する画像表示装置の薄型化が進み、従来のCRTに代わってプラズマディスプレイパネルまたは液晶パネル等のいわゆる平板型表示パネルを用いた画像表示装置が主流となっている。
【0003】
図3は、従来のプラズマディスプレイ装置の内部構成および取り付け構成を概略的に示す縦断面図である。このプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という。)であるパネル部11と、このパネル部11を背面側から収容し、パネル部11の前面側に前面フィルタ15を保持する筐体16とを有している(例えば、特許文献1参照)。筐体16の内部には、パネル部11の他に、パネル部11を背面側から伝熱シート12を挟んで支持するシャーシ13が収められており、このシャーシ13のPDP支持面と反対側の面には、電源回路基板14a、PDP駆動回路基板14b、データドライバ14c、およびチューナボックス14dが取り付けられている。
【0004】
データドライバ14cは、パネル部11に画像を表示させる際、画像データを面内走査させる機能を持ち、パネル部11とフレキシブルケーブル19によって接続されている。図3に示すプラズマディスプレイ装置では、データドライバ14cで発生する熱を拡散させるために、データドライバ14cが均熱板14eの1つの面に埋め込まれている。均熱板14eは、シャーシ13の下辺に沿って一列に並んで複数配置されている。そして、均熱板14eがボス18を介してシャーシ13に固定されることにより、データドライバ14cがシャーシ13に取り付けられている。
【0005】
筐体16は、フロントカバー16Aとバックカバー16Bとからなっている。バックカバー16Bの下部には、吸気部16aが設けられており、バックカバー16Bの上部には排気部16bが設けられている。すなわち、筐体16によって、パネル部11の背面側に、吸気部16aから排気部16bに至る、筐体16内で発生する熱を外に逃がすための放熱経路Bが形成されている。また、バックカバー16Bには、筐体16内を強制的に換気するためのファン17が取り付けられている。
【0006】
筐体16の内部において、大きく発熱するデバイスはパネル部11とデータドライバ14cである。パネル部11は、ガス放電を利用して画像を表示するという動作原理のために高温になる。パネル部11が高温になると、パネル部11内部に形成されている電極の電気容量が変化し、正常な放電が行われなくなって表示画像の質が劣化する。表示画像の質を劣化させないためには、パネル部11およびデータドライバ14cで発生する熱を筐体16の外部に逃がし、パネル部11を所定の温度以下に保つことが必要である。
【0007】
筐体16内から外への放熱について、図3を用いて説明すると、パネル部11で発生した熱は、伝熱シート12を介してシャーシ13に伝えられる。また、データドライバ14cで発生した熱の6〜8割は、均熱板14eおよびボス18を介してシャーシ13に伝達される。シャーシ13に伝達された熱のうち大部分の熱は、筐体16内の空気に伝達され、筐体16内の空気の温度が上昇する。そして、ファン17の稼働により、吸気口16aから矢印Aで示すように冷たい空気が外部から筐体16内に取り入れられるとともに、温度上昇した空気が排気口16bから矢印Cで示すように外部に排出される。なお、シャーシ13に伝達された熱のうち筐体16内の空気に伝達される以外の熱は、輻射によってバックカバー16Bに伝達されるか、熱伝導によりフロントカバー16Aおよびバックカバー16Bに伝達される。
【0008】
ところで、最近のプラズマディスプレイ装置では、フルハイビジョン化のため、パネル部11およびデータドライバ14cに投入する電力が大きくなっている。加えて、パネル部11の輝度アップのため、パネル部11に投入する電力が引き上げられる傾向にある。さらに、機器コスト削減のためにデータドライバ14cがパネル部11の下側のみに配置されているので、データドライバ14cをパネル部11の上側と下側の両方に配置した場合に比べ、電力投入の集中化によってデータドライバ14cには2倍の負荷がかかっている。このため、パネル部11に表示させる画像によっては、パネル部11とデータドライバ14cのどちらかが大きく発熱するようになる。
【0009】
例えば、パネル部11に白を背景とする画像を表示させたときには、パネル部11に投入する電力が大きくなり、パネル部11の発熱量がデータドライバ14cの発熱量よりも大きくなる。逆に、パネル部11に白黒等のモザイク状の画像を表示させたときには、データドライバ14cに投入する電力が大きくなり、データドライバ14cの発熱量がパネル部11の発熱量よりも大きくなる。
【0010】
これらの発熱モードの違いに拘わらずパネル部11およびデータドライバ14cを効率的に冷却してパネル部11の温度上昇を小さく抑えるには、発熱モードに応じてパネル部11とデータドライバ14cのどちらかを優先的に冷却することが好ましい。例えば、パネル部11に白を背景とする画像を表示させるとき(すなわち、パネル部11の発熱量が大きいとき)には、吸気部16aからの冷たい空気をパネル部11(シャーシ3)に選択的に供給し、白黒等のモザイク状の画像を表示させるとき(すなわち、データドライバ14cの発熱量が大きいとき)には、吸気部16aからの冷たい空気をデータドライバ14cに選択的に供給することが考えられる。
【0011】
これを実現するには、例えば、吸気部16aをデータドライバ14cの温度に基づいて部分的に開閉すればよい。すなわち、パネル部11の発熱量が大きくなるときはデータドライバ14cの温度が相対的に低くなり、データドライバ14cの発熱量が大きくなるときはデータドライバ14cの温度が相対的に高くなる。従って、データドライバ14cの温度が相対的に低い場合には、吸気部16aを全開にしておき、データドライバ14cの温度が相対的に高い場合には、吸気部16aにおけるデータドライバ14cに対応する部分以外の開口を塞げばよい。このように吸気部16aを部分的に開閉しても、ファン17の回転数は通常一定であるため、吸気部16aを通過する空気の流量は殆ど変わらない。
【0012】
ここで、特許文献2には、液晶表示装置に関し、ケース内の温度に応じてケースに設けた開口を自動的に開閉する技術が開示されている。この技術では、ケース内に設けたスライド板を拡散板の熱膨張を利用してスライドさせることにより、ケース内の温度が低い不使用時にケースの開口を閉じ、ケース内の温度が高くなる使用時にケースの開口を開くようにしている。
【特許文献1】特開2007−199704号公報
【特許文献2】特開2007−86649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載された技術は、ケース内に塵埃の進入を防ぐために不使用時にケースの開口を閉じるものであり、このようにケースの開口を全体的に開閉したのでは、上述したような吸気部からの空気をどこに供給するかを選定することはできない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑み、PDPとデータドライバのどちらかを必要に応じて優先的に冷却することのできるプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、画像を表示する前面およびこの前面と反対側を向く背面を有するPDPと、前記PDPの背面側に配置されたデータドライバと、前記PDPを前記データドライバと共に背面側から収容する筐体であって、吸気部および排気部を有し、前記PDPの背面側に、前記吸気部から前記排気部に至る、前記PDPおよび前記データドライバからの熱を逃がすための放熱経路を形成する筐体と、前記筐体内に設置された、前記吸気部からの空気の取り入れおよび前記排気部からの空気の排出を強制的に行うファンと、を備え、前記データドライバは、前記筐体内の下側位置に配置されており、前記吸気部は、前記データドライバに対応する位置に設けられた、複数の第1開口を有する第1吸気部と、この第1吸気部よりも上方に設けられた、複数の第2開口を有する第2吸気部とを含み、前記第2吸気部の第2開口と一致する複数の第3開口を有し、前記筐体に沿ってスライドするスライド板と、前記データドライバの温度に基づいて、前記データドライバの温度が相対的に低いときには前記スライド板を前記第3開口と前記第2開口とが合致する基準位置に移動させ、前記データドライバの温度が相対的に高いときには前記スライド板を当該スライド板によって前記第2開口が塞がれる塞ぎ位置に移動させる移動機構と、をさらに備える、プラズマディスプレイ装置を提供する。
【0016】
本発明は、別の側面から、画像を表示する前面およびこの前面と反対側を向く背面を有するPDPと、前記PDPの背面側に配置されたデータドライバと、前記PDPを前記データドライバと共に背面側から収容する筐体であって、吸気部および排気部を有し、前記PDPの背面側に、前記吸気部から前記排気部に至る、前記PDPおよび前記データドライバからの熱を逃がすための放熱経路を形成する筐体と、前記筐体内に設置された、前記吸気部からの空気の取り入れおよび前記排気部からの空気の排出を強制的に行うファンと、を備え、前記データドライバは、前記筐体内の下側位置に配置されており、前記吸気部は、前記データドライバに対応する位置に設けられており、前記吸気部から前記筐体内に取り入れられた空気を所定位置まで前記データドライバに向かわせるようにガイドする、複数の第1開口を有する隔壁と、前記隔壁の第1開口と一致する複数の第2開口を有し、前記隔壁に沿ってスライドするスライド板と、前記データドライバの温度に基づいて、前記データドライバの温度が相対的に低いときには前記スライド板を前記第2開口と前記第1開口とが合致する基準位置に移動させ、前記データドライバの温度が相対的に高いときには前記スライド板を当該スライド板によって前記第1開口が塞がれる塞ぎ位置に移動させる移動機構と、をさらに備える、プラズマディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成によれば、PDPの発熱量が大きくなるデータドライバの温度が相対的に低いときには、スライド板が基準位置に移動して吸気部からの空気がデータドライバを経由せずにPDPに向かうルートが確保されるので、吸気部からの空気をPDPに直接的に供給することができる。逆に、データドライバの発熱量が大きくなるデータドライバの温度が相対的に高いときには、スライド板が塞ぎ位置に移動して吸気部からの空気がデータドライバに集中的に送られるようになる。従って、本発明によれば、PDPとデータドライバのどちらかを必要に応じて優先的に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1および図2に、本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレイ装置1Aを示す。このプラズマディスプレイ装置1Aは、画像を表示する前面2aおよびこの前面2aと反対側を向く背面2bを有するPDP2と、PDP2を後述する電気部品31〜34と共に背面側から収容する筐体4とを備えている。さらに、プラズマディスプレイ装置1Aは、筐体4内にPDP2を背面側から伝熱シート21を介して支持するシャーシ22を備えているとともに、PDP2の前面側にクッション材24を挟んで配置された前面フィルタ23を備えている。
【0020】
PDP2は、長方形状の形状を有しており、一般に、長手方向が水平方向になり、かつ短手方向が鉛直方向になる姿勢で配置される。なお、本明細書では、説明の便宜のために、PDP2の厚み方向のうち前面2a側を前方、背面2b側を後方というとともに、PDP2の長手方向を左右方向、PDP2の短手方向を上下方向という。
【0021】
具体的に、PDP2は、図示は省略するが、前面ガラス基板と背面ガラス基板とが貼り合わされて構成されている。そして、前面ガラス基板の背面ガラス基板と反対側の面によって前面2aが構成され、背面ガラス基板の前面ガラス基板と反対側の面によって背面2bが構成されている。前面ガラス基板には、左右方向に延びる走査電極と維持電極とからなる表示電極対が多数形成されており、背面ガラス基板には、上下方向に延びるアドレス電極が多数形成されている。
【0022】
前面フィルタ6は、ガラスまたはアクリルなどの樹脂で構成された透明基板上に導電性フィルムを含む種々の機能フィルムが積層されたものである。
【0023】
シャーシ22は、アルミ等の熱伝導率の高い金属で構成された板状のものである。このシャーシ22は、PDP2よりも一回り大きな長方形状をなしており、その周縁部がPDP2から全周に亘って張り出している。シャーシ22のPDP支持面と反対側の面には、電源回路基板31、電源回路基板31を挟んで配置された左右一対のPDP駆動回路基板32、筐体4内の下側位置に横一列に配置されたデータドライバ33、およびチューナボックス34が取り付けられていて、これらの電気部品31〜34がPDP2の背面側に配置されている。
【0024】
データドライバ33は、フレキシブルケーブル25によってPDP2と接続されている。データドライバ33は、PDP2の下部とシャーシ22を挟んで対向するように配置された均熱板35の前面にそれぞれ埋め込まれている。均熱板35は、データドライバ33で発生する熱を拡散させるためのものであり、データドライバ33と同数設けられていて、横一列に配列されている。そして、均熱板35がボス22aを介してシャーシ22に固定されることにより、データドライバ33がシャーシ22に取り付けられている。
【0025】
筐体4は、PDP2の前方に窓40を形成する枠状のフロントカバー41と、このフロントカバー41に連結されて、PDP2をシャーシ22に取り付けられた電気部品31〜34と共に背面側から覆うバックカバー42とからなっている。バックカバー42の下部には、吸気部43が設けられており、バックカバー42の上部には排気部44が設けられている。すなわち、筐体4によって、PDP2の背面側に、吸気部43から排気部44に至る、筐体4内で発生する熱を外に逃がすための放熱経路aが形成されている。また、筐体4内には、筐体16内を強制的に換気するためのファン45が設置されており、このファン45がバックカバー16Bに排気部44を内側から塞ぐように取り付けられている。そして、ファン45の稼働により、吸気部43からの空気の取り入れおよび排気部44からの空気の排出が強制的に行われる。なお、ファン45は、一定の回転数で稼働する。
【0026】
フロントカバー41は、例えば樹脂を主成分とする材料からなり、バックカバー42は、例えば鉄を主成分とする材料からなっている。
【0027】
より詳しくは、フロントカバー41は、窓40となる開口が形成された正面板41aと、この正面板41aの外周縁部から後方に延びる略矩形筒状の周壁41bとを有している。そして、正面板41aの内周縁部に、後方から前面フィルタ23の周縁部が接合されている。また、周壁41bには、内周面から内向きに突出するリング状の固定部41cが設けられており、この固定部41cにシャーシ22の周縁部が固定されている。フロントカバー41は、例えば樹脂を射出成形することにより形成することができる。
【0028】
一方、バックカバー42は、電気部品31〜34を挟んでシャーシ22と対向する底壁42aと、この底壁42aの周縁部から前方に立ち上がる周壁42bとを有している。そして、フロントカバー41の周壁41bの先端とバックカバー42の周壁42bの先端とがボルト止め等により連結されている。バックカバー42は、例えば厚さ0.5〜2mmの金属板をプレス加工することにより形成することができる。
【0029】
吸気部43および排気部44は、例えば6〜8mmのピッチで縦横に並ぶ、直径3〜5mmの円形の開口によって構成することができる。また、開口が形成された領域の面積に対する開口の総面積の割合で表される開口率は、例えば30〜60%である。
【0030】
吸気部43は、データドライバ33に対応する位置に設けられた、複数の第1開口43aを有する第1吸気部43Aと、この第1吸気部43Aよりも上方に設けられた、複数の第2開口43bを有する第2吸気部43Bとを有している。ここで、第1吸気部43Aの配置位置であるデータドライバ33に対応する位置とは、図1中に矢印cで示すように第1吸気部43Aを通過する空気をデータドライバ33(正確には均熱板35)に当てることが可能な位置のことであり、本実施形態では、前後方向においてデータドライバ33と重なり合う位置に第1吸気部43Aが設けられている。また、本実施形態では、第1吸気部43Aと第2吸気部43Bとが連続して上下に並んでおり、第1開口43aと第2開口43bとが一定のピッチで並んでいる。ただし、第1吸気部43Aと第2吸気部43Bは、互いに離間して配置されていてもよい。
【0031】
さらに、本実施形態では、筐体4内に、バックカバー42の底壁42aに沿ってスライドするスライド板5と、このスライド板5をデータドライバ33の温度に基づいて移動させる移動機構6Aが設けられている。
【0032】
スライド板5は、例えば横長長方形状の形状を有し、第2吸気部43Bと全面に亘って重なり合うように配置されている。このスライド板5には、第2吸気部43Bの第2開口43bと一致する複数の第3開口51が設けられている。すなわち、第3開口51の形状、数量、縦横のピッチは、第2開口43bのそれと同じになっている。
【0033】
移動機構6Aは、データドライバ33の温度が相対的に低いときにはスライド板5を図1に示す基準位置に移動させ、データドライバ33の温度が相対的に高いときにはスライド板5を基準位置より少し下の塞ぎ位置に移動させるものである。基準位置とは、図1に示すように、スライド板5の第3開口51と第2吸気部43Bの第2開口43bとが合致する位置であり、塞ぎ位置とは、スライド板5によって第2開口43bが塞がれる位置である。なお、スライド板5が塞ぎ位置に移動したときは、第2開口43bは必ずしも100%塞がれる必要はなく、例えば50%程度塞がれるようになっていてもよい。
【0034】
具体的に、移動機構6Aは、スライド板5の上側に配置された引っ張り板ばね(弾性部材)61と、データドライバ33の近傍に配置された形状記憶部材62と有している。
【0035】
引っ張り板ばね61は、一端がスライド板5の上端部に固定され、他端がバックカバー42の底壁42aに立設されたスタンドポール63に引っ掛けられており、スライド板5を上向きに付勢している。底壁42aには、ストッパー64が設けられており、このストッパー64にスライド板5が当て止められることにより、スライド板5が基準位置に留められるようになっている。
【0036】
形状記憶部材62は、スライド板5と同程度の幅を有した折れ曲がり形状のものであり、スライド板5の下端部と均熱板35とを連結している。すなわち、形状記憶部材62は、均熱板35を介してデータドライバ33に接続されている。形状記憶部材62は、形状記憶合金(例えば、Ti−Ni合金)からなり、常温では引っ張り板ばね61の付勢力によって図1中に実線で示すように変形しているが、データドライバ33により加熱されて所定温度(逆変態終了温度)以上となったときには、図1中に波線で示すように予め記憶させられた形状に戻り、引っ張り板ばね61の付勢力に抗してスライド板5を塞ぎ位置に移動させる(図1中の矢印d参照)。
【0037】
以上説明したプラズマディスプレイ装置1Aでは、PDP2に白を背景とする画像を表示させたとき、PDP2に投入する電力が大きくなり、単位体積あたりの投入電力もPDP2の方がデータドライバ33より大きくなる。このため、PDP2の発熱量が大きくなって、データドライバ33の温度が相対的に低くなる。このとき、スライド板5が移動機構6Aによって基準位置に移動させられ、第2吸気部43Bの第2開口43bとスライド板5の第3開口51が合致するので、図1中に矢印bで示すように吸気部43からの空気がデータドライバ33を経由せずにPDP2に向かうルートが確保される。換言すれば、吸気部43の開効率が大きく保たれる。このため、吸気部43からの新鮮な空気をデータドライバ33だけでなくPDP2にも直接的に供給することができる。
【0038】
逆に白黒等のモザイク状の画像を表示させたとき、データドライバ33に投入する電力が大きくなり、単位体積あたりの投入電力もデータドライバ33の方がPDP2より大きくなる。このため、データドライバ33の発熱量が大きくなり、データドライバ33の温度が相対的に高くなる。このとき、スライド板5が移動機構6Aによって塞ぎ位置に移動させられ、第2吸気部43Bの第2開口43bが塞がれるので、吸気部43からの空気がデータドライバ33に集中的に送られるようになる。すなわち、吸気部43の開口率が第2吸気部43Bの第2開口43bが塞がれる分だけ小さくなる。ファン45の回転数はスライド板5のスライド如何にかかわらず一定であるため、第1吸気部43Aから導入される新鮮な空気の流速は大きくなり、均熱板35まわりの流速も速くなる。結果としてデータドライバ33が効率よく冷却される。
【0039】
このように、本実施形態のプラズマディスプレイ装置1Aでは、PDP2とデータドライバ33のどちらかを必要に応じて優先的に冷却することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、スライド板5を基準位置に留めるように付勢する弾性部材として引っ張り板ばね61を用いているが、ストッパー64をスライド板5の下側に設ければ、弾性部材として圧縮コイルばねを用いることも可能である。さらに、弾性部材としては、ばね以外の弾性体を用いることも可能である。
【0041】
また、第1吸気部43Aは、データドライバ33と対応する位置、すなわち当該第1吸気部43Aを通過した空気がデータドライバ33に当たる位置に設けられていればよく、例えば、バックカバー42の周壁42bの下部に設けられていてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
図2に、本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイ装置1Bを示す。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0043】
第2実施形態のプラズマディスプレイ装置1Bでは、吸気部43がデータドライバ33に対応する位置にのみ設けられていて、その領域が第1実施形態よりも小さくなっている。この吸気部43は、第1実施形態と同様の複数の吸気用の開口43cを有している。
【0044】
また、第2実施形態では、筐体4内に、吸気部43のすぐ上側の位置で筐体4内の空間を上下に仕切る隔壁7と、この隔壁7の下面に沿ってスライドするスライド板8と、このスライド板8をデータドライバ33の温度に基づいて移動させる移動機構6Bとが設けられている。
【0045】
隔壁7は、例えば吸気部43と略同じ幅でバックカバー42の底壁42aから所定位置(例えば、底壁42aからシャーシ22までの距離の略半分程度の位置)まで延びている。このため、吸気部43から筐体4内に取り入れられた空気は、隔壁7の先端までは図2中に矢印eで示すように隔壁7にガイドされてデータドライバ33に向かうようになり、その先では図2中に矢印fで示すように隔壁7の先端とシャーシ22との間を通って上方に吹き抜けるようになる。
【0046】
また、隔壁7には、複数の第1開口71が設けられており、吸気部43から筐体4内に取り入れられた空気が第1開口71を通じて隔壁7の上側にも流れ込むことができるようになっている。第1開口71は、例えば、6〜8mmのピッチで縦横に並ぶ、直径3〜5mmの円形の孔である。また、第1開口71が形成された領域の面積に対する第1開口71の総面積の割合で表される開口率は、例えば30〜60%である。
【0047】
スライド板8は、隔壁7と同程度の大きさを有している。このスライド板8には、隔壁7の第1開口71と一致する複数の第2開口81が設けられている。すなわち、第2開口81の形状、数量、縦横のピッチは、第1開口71のそれと同じになっている。
【0048】
移動機構6Bは、データドライバ33の温度が相対的に低いときにはスライド板8を図2に示す基準位置に移動させ、データドライバ33の温度が相対的に高いときにはスライド板8を基準位置より少し前(図2では左方)の塞ぎ位置に移動させるものである。基準位置とは、図2に示すように、スライド板8の第2開口81と隔壁7の第1開口71とが合致する位置であり、塞ぎ位置とは、スライド板8によって第1開口71が塞がれる位置である。なお、スライド板8が塞ぎ位置に移動したときは、第1開口71は必ずしも100%塞がれる必要はなく、例えば50%程度塞がれるようになっていてもよい。
【0049】
具体的に、移動機構6Bは、スライド板8の前方に配置された圧縮コイルばね(弾性部材)65と、データドライバ33の近傍に配置された形状記憶部材66と有している。
【0050】
圧縮コイルばね65は、一端がスライド板8の前端部に固定され、他端がシャーシ22に固定されており、スライド板8を後向きに付勢している。なお、スライド板8は、バックカバー42の底壁42aに当て止められることにより、基準位置に留められるようになっている。すなわち、底壁42aは、ストッパーの役割を果たしている。
【0051】
形状記憶部材66は、スライド板8と同程度の幅を有した板状のものであり、スライド板8の前端部と均熱板35とを連結している。すなわち、形状記憶部材66は、均熱板35を介してデータドライバ33に接続されている。形状記憶部材66は、形状記憶合金からなり、常温では圧縮コイルばね65の付勢力によって図2に示すように湾曲しているが、データドライバ33により加熱されて所定温度(第1実施形態と同様)以上となったときには、予め記憶させられたフラットな形状に戻り、圧縮コイルばね65の付勢力に抗してスライド板8を塞ぎ位置に移動させる(図2中の矢印h参照)。
【0052】
以上説明したプラズマディスプレイ装置1Bでは、PDP2に白を背景とする画像を表示させたとき、PDP2に投入する電力が大きくなり、単位体積あたりの投入電力もPDP2の方がデータドライバ33より大きくなる。このため、PDP2の発熱量が大きくなって、データドライバ33の温度が相対的に低くなる。このとき、スライド板8が移動機構6Bによって基準位置に移動させられ、隔壁7の第1開口71とスライド板8の第2開口81が合致するので、図2中に矢印gで示すように吸気部43からの空気がデータドライバ33を経由せずに第2開口81および第1開口71を通ってPDP2に向かうルートが確保される。このため、吸気部43からの新鮮な空気をデータドライバ33だけでなくPDP2にも直接的に供給することができる。
【0053】
逆に白黒等のモザイク状の画像を表示させたとき、データドライバ33に投入する電力が大きくなり、単位体積あたりの投入電力もデータドライバ33の方がPDP2より大きくなる。このため、データドライバ33の発熱量が大きくなり、データドライバ33の温度が相対的に高くなる。このとき、スライド板8が移動機構6Bによって塞ぎ位置に移動させられ、隔壁7の第1開口71が塞がれるので、吸気部43からの空気がデータドライバ33に集中的に送られるようになる。ファン45の回転数はスライド板8のスライド如何にかかわらず一定であるため、データドライバ33に向かって流れる新鮮な空気の流速は大きくなり、均熱板35まわりの流速も速くなる。結果としてデータドライバ33が効率よく冷却される。
【0054】
このように、本実施形態のプラズマディスプレイ装置1Bでは、PDP2とデータドライバ33のどちらかを必要に応じて優先的に冷却することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、スライド板8を基準位置に留めるように付勢する弾性部材として圧縮コイルばね65を用いているが、ストッパーを隔壁7の先端に設ければ、弾性部材として引張コイルばねを用いることも可能である。さらに、弾性部材としては、ばね以外の弾性体を用いることも可能である。
【0056】
(変形例)
移動機構としては、弾性部材と形状記憶部材を組み合わせたもの以外にも、熱膨張率が異なる2枚の板を貼り合わせたものを使用することも可能である。
【0057】
また、シャーシ22は、PDP2を周囲から取り囲む枠状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイ装置を概略的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイ装置を概略的に示す縦断面図である。
【図3】従来のプラズマディスプレイ装置を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1A,1B プラズマディスプレイ装置
2 PDP
2a 前面
2b 背面
34 データドライバ
35 均熱板
4 筐体
43 吸気部
43A 第1吸気部
43a 第1開口
43B 第2吸気部
43b 第2開口
44 排気部
45 ファン
5 スライド板
51 第3開口
6A,6B 移動機構
61 引っ張り板ばね(弾性部材)
62 形状記憶部材
65 圧縮コイルばね(弾性部材)
66 形状記憶部材
7 隔壁
71 第1開口
8 スライド板
81 第2開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する前面およびこの前面と反対側を向く背面を有するプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルの背面側に配置されたデータドライバと、
前記プラズマディスプレイパネルを前記データドライバと共に背面側から収容する筐体であって、吸気部および排気部を有し、前記プラズマディスプレイパネルの背面側に、前記吸気部から前記排気部に至る、前記プラズマディスプレイパネルおよび前記データドライバからの熱を逃がすための放熱経路を形成する筐体と、
前記筐体内に設置された、前記吸気部からの空気の取り入れおよび前記排気部からの空気の排出を強制的に行うファンと、を備え、
前記データドライバは、前記筐体内の下側位置に配置されており、
前記吸気部は、前記データドライバに対応する位置に設けられた、複数の第1開口を有する第1吸気部と、この第1吸気部よりも上方に設けられた、複数の第2開口を有する第2吸気部とを含み、
前記第2吸気部の第2開口と一致する複数の第3開口を有し、前記筐体に沿ってスライドするスライド板と、前記データドライバの温度に基づいて、前記データドライバの温度が相対的に低いときには前記スライド板を前記第3開口と前記第2開口とが合致する基準位置に移動させ、前記データドライバの温度が相対的に高いときには前記スライド板を当該スライド板によって前記第2開口が塞がれる塞ぎ位置に移動させる移動機構と、をさらに備える、プラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
画像を表示する前面およびこの前面と反対側を向く背面を有するプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルの背面側に配置されたデータドライバと、
前記プラズマディスプレイパネルを前記データドライバと共に背面側から収容する筐体であって、吸気部および排気部を有し、前記プラズマディスプレイパネルの背面側に、前記吸気部から前記排気部に至る、前記プラズマディスプレイパネルおよび前記データドライバからの熱を逃がすための放熱経路を形成する筐体と、
前記筐体内に設置された、前記吸気部からの空気の取り入れおよび前記排気部からの空気の排出を強制的に行うファンと、を備え、
前記データドライバは、前記筐体内の下側位置に配置されており、
前記吸気部は、前記データドライバに対応する位置に設けられており、
前記吸気部から前記筐体内に取り入れられた空気を所定位置まで前記データドライバに向かわせるようにガイドする、複数の第1開口を有する隔壁と、前記隔壁の第1開口と一致する複数の第2開口を有し、前記隔壁に沿ってスライドするスライド板と、前記データドライバの温度に基づいて、前記データドライバの温度が相対的に低いときには前記スライド板を前記第2開口と前記第1開口とが合致する基準位置に移動させ、前記データドライバの温度が相対的に高いときには前記スライド板を当該スライド板によって前記第1開口が塞がれる塞ぎ位置に移動させる移動機構と、をさらに備える、プラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記スライド板を前記基準位置に留めるように付勢する弾性部材と、前記データドライバの近傍に位置し、前記データドライバにより加熱されて所定温度以上となったときに前記弾性部材の付勢力に抗して前記スライド板を前記塞ぎ位置に移動させる形状記憶部材とを含む、請求項1または2に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
前記データドライバは、均熱板に埋め込まれており、この均熱板を介して前記形状記憶部材が前記データドライバに接続されている、請求項3に記載のプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−60736(P2010−60736A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225144(P2008−225144)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】