説明

プラズマ処理方法およびプラズマ処理装置並びにプラズマ処理を施した長尺物

【課題】長尺状の被処理物の表面に満遍なく均一に表面処理が可能なプラズマ処理方法およびこのプラズマ処理方法を用い、操作性に優れたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】第1筒状部2の長手方向に配設された複数個の円盤状のガイド部材5aからなるガイド部が設けられている。ガイド部材5aには、厚さ方向に貫通した少なくとも1つ以上の支持孔5cが形成されている。支持孔5cに長尺状の被処理物Wを通して支持し、プラズマの密度が高い領域、すなわち、第1筒状部2の内壁近傍へガイドするようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の被処理物に対してプラズマを接触させることにより、プラズマ処理を施すプラズマ処理方法およびプラズマ処理装置並びにプラズマ処理を施した長尺物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラフルな塗装が施された釣り糸が数多く見られるようになり、塗料の剥離の抑制が課題となっている。
【0003】
塗装が施された釣り糸の製造工程は、図12に示すように、まずはステップ(a)において未染色の糸の表面に付着した汚れや油分を除去するために界面活性剤を含む水溶液にて水洗が行われ、続いてステップ(b)において糸に付着した水分を除去するために乾燥させる。次に、ステップ(c)において、洗浄された糸に対して染色液を塗布または糸を染色液中に浸漬して染色が施される。染色された糸は、ステップ(d)において熱を加えて染料の固着が行われ、塗装が施された釣り糸を得るようにされている。
【0004】
この製造工程においては、糸に染色を施す前にステップ(a)の水洗およびステップ(b)の乾燥を行うことにより、糸表面への染色液のぬれ性を向上させている。
【0005】
釣り糸に限らず、塗装の工程においてこのように基材の表面に改質処理を行うことは一般的であり、様々な方法が報告されている。特許文献1においては、大気圧グロー放電プラズマを用いて合成繊維や化学繊維、これらからなる布、織布および不織布に表面処理を施すことが記載されている。特許文献1に記載の実施例によれば、ポリエステルの布に大気圧グロー放電プラズマ処理を施すことにより、表面を親水化することが記載されており、これによって表面への水性インキによるフレキソ印刷を容易とするなどの効果が記載されている。
【0006】
さらに、基材にプラズマを接触させることにより、基材表面の殺菌やクリーニングを行うことも可能であり、様々な用途が考えられる。
【0007】
また、特許文献2においては、円筒管の外周面に複数の電極を設け、長さ方向に電位差をもたせるように前記電極に電圧を印加することによって大気圧下において、管内にグロー放電プラズマを発生させる装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−182195号公報
【特許文献2】特開平4−334543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、プラズマ処理は表面改質において非常に優れているものの、処理室内のプラズマの密度分布にはバラツキがあり、繊維のような円柱状の長尺物の表面に対して均一に処理を施すためには、ある程度の処理時間を設ける必要がある。
【0010】
また、本発明者等が、特許文献2に記載の装置を用いて、電気伝導性のある糸にプラズマ処理を施す実験を行ったところ、電極と電気伝導性のある糸との間で異常放電が発生し、電気伝導性のある糸にまとわりつくようにプラズマが生成されてしまい、正常にプラズマを生成することが困難であった。この実験から、特許文献2に記載の装置を用いて電気伝導性のある糸に対してプラズマ処理を施すことが困難であるという問題点が明らかとなった。
【0011】
また、釣り糸に限らず、繊維やチューブなどの長尺物や長尺物からなる布帛の表面に対して改質処理を行いたいという要望は多い。
【0012】
これらの課題を解決するべく、本発明においては、密度分布にバラツキのあるプラズマ中において、プラズマ密度の高い領域を選択的に通過させることにより、長尺状の被処理物に対して高速にプラズマ処理を施すとともに、長尺状の被処理物の表面に満遍なく均一な表面処理を可能とするプラズマ処理方法および前記プラズマ処理方法を用い、操作性に優れたプラズマ処理装置並びにプラズマ処理を施した長尺物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明のプラズマ処理方法は、長尺状の被処理物に対してプラズマを接触させることによりプラズマ処理を施すプラズマ処理方法において、前記プラズマには、密度分布にバラツキがあり、前記長尺状の被処理物を、前記プラズマの密度が高い領域を選択的に通過させながら前記長尺状の被処理物にプラズマ処理を施すことを特徴とする。
【0014】
このような、本発明のプラズマ処理方法によれば、プラズマの密度が高い領域を選択的に通過させながら長尺状の被処理物に対してプラズマ処理を施すので、効率よくプラズマ処理を施せるとともに、プラズマの密度差による処理のバラツキの発生を抑制して均一なプラズマ処理を施すことができる。
【0015】
また、前述した目的を達成するために、本発明の第1のプラズマ処理装置は、内部にプラズマが生成される第1筒状部と、前記第1筒状部の外周面の長手方向に少なくとも2個以上設けられたリング状電極と、前記第1筒状部の内部にプラズマ生成用ガスを導入するプラズマ生成用ガス導入部と、前記第1筒状部の内側に設けられ、長尺状の被処理物が前記プラズマの密度が高い領域を進むようにガイドするガイド部とを備えていることを特徴とする。
【0016】
このような、本発明の第1のプラズマ処理装置によれば、プラズマ生成用ガス導入部から第1筒状部の内部にプラズマ生成用ガスを導入し、リング状電極に対して長手方向に電位差を設けることによって、第1筒状部の内部において、第1筒状部の内壁近傍にプラズマの密度が高い領域が形成され、ガイド部によって、このようなプラズマの密度が高い領域に長尺状の被処理物を進ませながらプラズマを接触させることにより、長尺状の被処理物に対して容易に密度の高いプラズマを接触させてプラズマ処理を施すことを可能とする。
【0017】
本発明の第2のプラズマ処理装置は、前記ガイド部が、前記第1筒状部の長手方向に複数個配設されたガイド部材からなり、前記複数のガイド部材は、前記長尺状の被処理物を前記第1筒状部の前記プラズマの密度が高い領域を螺旋状に進ませるようにガイドする形状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
このような、本発明の第2のプラズマ処理装置によれば、長尺状の被処理物をガイド部材によってプラズマの密度が高い領域を螺旋状に進ませるようにガイドするので、プラズマの密度が高い領域に長尺状の被処理物の表面を満遍なく曝しながら進ませることができ、長尺状の被処理物の表面に満遍なく均一なプラズマ処理を施すことができる。さらに、プラズマの密度が高い領域を螺旋状に進ませることにより、当該領域を直線状に進ませる場合と比較して、短い距離でも高い表面処理効果が得られるため、第1筒状部の長さを短くすることができ、装置自体を小型化することを可能とする。
【0019】
本発明の第3のプラズマ処理装置は、前記第1筒状部が、複数の単位筒を長手方向に連結させて形成されていることを特徴とする。
【0020】
このような、本発明の第3のプラズマ処理装置によれば、長尺状の被処理物を装置にセットする際に、各単位筒に長尺状の被処理物を通した後、単位筒同士を連結するようにして組み立てることができ、操作性に優れたプラズマ処理装置とすることを可能とする。
【0021】
本発明の第4のプラズマ処理装置は、前記第1筒状部の内部には、細い筒状の絶縁管が設けられ、前記絶縁管が、前記プラズマの密度が低い領域を通るように配置されていることを特徴とする。
【0022】
このような、本発明の第4のプラズマ処理装置によれば、プラズマの密度が低い領域に絶縁管を通すことにより、プラズマの密度が低い領域にプラズマ生成用ガスが流れるのを防ぐことができるので、プラズマ生成用ガスの無駄な消費を抑制してランニングコストを低廉化することができる。
【0023】
本発明の第5のプラズマ処理装置は、前記絶縁管の内部に、冷媒が導入されていることを特徴とする。
【0024】
このような、本発明の第5のプラズマ処理装置によれば、第1筒状部内に生成されたるプラズマを冷却してプラズマの温度上昇を防ぐことができるので、例えば、長尺状の被処理物として熱に弱い素材を用いる場合においてもプラズマ処理を施すことを可能とする。
【0025】
本発明の第6のプラズマ処理装置は、前記リング状電極が、前記第1筒状部の外周面の全長に亘るように形成され、前記絶縁管の内部には、導電材料が導入されていることを特徴とする。
【0026】
このような、本発明の第6のプラズマ処理装置によれば、リング状電極と導電材料との間に電位差を設け、誘電体バリア放電を発生させてプラズマを生成するので、よりプラズマが高密度な領域を形成することができ、長尺状の被処理物に対して高速に満遍なく均一なプラズマ処理を施すことを可能とする。
【0027】
本発明の第7のプラズマ処理装置は、前記絶縁管の内部に導入される前記導電材料が、導電性の液体であることを特徴とする。
【0028】
このような、本発明の第7のプラズマ処理装置によれば、導電材料を導電性の液体とすることにより、絶縁管の内壁への高い密着性が得られるため、効率よく誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0029】
本発明の第8のプラズマ処理装置は、前記絶縁管の内部において、前記導電性の液体が常に流動するように形成されていることを特徴とする。
【0030】
このような、本発明の第8のプラズマ処理装置によれば、プラズマの発生時に生じた熱がこもるのを防止して、給電しながらプラズマを冷却することを可能とする。
【0031】
本発明の第9のプラズマ処理装置は、前記導電性の液体を貯蓄するタンクを備え、 前記タンクから前記絶縁管の内部へ前記導電性の液体を導入するとともに、前記絶縁管の内部から前記タンクへ前記導電性の液体を導出して、前記タンクと前記絶縁管の内部において前記導電性の液体が循環するように形成されていることを特徴とする。
【0032】
このような、本発明の第9のプラズマ処理装置によれば、導電性の液体を循環させることによって、プラズマの温度上昇を抑制することができる。
【0033】
本発明の第10のプラズマ処理装置は、前記第1筒状部に対し、直交して貫通するように一体に形成された少なくとも1つの第2筒状部を備えていることを特徴とする。
【0034】
このような、本発明の第10のプラズマ処理装置によれば、第2筒状部を備えることにより、長尺状の被処理物が導電性の材料からなる場合においても、第2筒状部の内部に前記長尺状の被処理物を通して、プラズマを接触させることにより、導電性の材料からなる長尺状の被処理物に対して、効率よくプラズマ処理を施すことができる。
【0035】
本発明の第11のプラズマ処理装置は、前記第1筒状部の両端部に前記プラズマ生成用ガス導入部がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0036】
このような、本発明の第11のプラズマ処理装置によれば、第1筒状部の両端部にプラズマ生成用ガス導入部がそれぞれ設けられていることにより、第2筒状部の内部へより高密度のプラズマを導入することができ、第2筒状部内を通る長尺状の被処理物へのプラズマ処理効率を向上させることができる。
【0037】
本発明の第12のプラズマ処理装置は、前記第1筒状部が、複数の単位筒を長手方向に連結させて形成され、前記第1筒状部と前記第2筒状部とが交差する部分が、十字型の連結部材によって連結されていることを特徴とする。
【0038】
こような、本発明の第12のプラズマ処理装置によれば、操作性に優れたプラズマ処理装置とすることができる。
【0039】
本発明の第1の長尺物は、繊維状の合成高分子化合物からなり、請求項1に記載のプラズマ処理方法を用いてプラズマ処理を施したことを特徴とする。また、本発明の第2の長尺物は、繊維状の合成高分子化合物からなり、請求項2乃至請求項10のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置によって、請求項1に記載のプラズマ処理方法を用いてプラズマ処理を施したことを特徴とする。またさらに、本発明の第3の長尺物は、繊維状の導電性の物質からなり、請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置によって、請求項1に記載のプラズマ処理方法を用いてプラズマ処理を施すことを特徴とする。
【0040】
このような、本発明の第1乃至第3の長尺物によれば、所望の表面状態とされ、例えば、高い親水性を有する長尺物を提供することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のプラズマ処理方法によれば、密度分布にバラツキのあるプラズマ中において、プラズマ密度の高い領域を選択的に通過させて長尺状の被処理物に対して高速にプラズマ処理を施すとともに、長尺状の被処理物の表面に満遍なく均一な表面処理を施すことが可能である。
【0042】
また、本発明のプラズマ処理装置によれば、操作性に優れたプラズマ処理装置を提供することができる。
【0043】
さらに、本発明のプラズマ処理装置によれば、導電性の材料からなる長尺状の被処理物に対しても、効果的なプラズマ処理を施すことができる。
【0044】
またさらに、本発明のプラズマ処理方法およびプラズマ処理装置を用いることにより、所望の表面改質が施された長尺物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態のプラズマ処理装置を示す概略斜視図
【図2】図1に示す本発明のプラズマ処理装置の一部を切断した拡大斜視図
【図3】図1に示す本発明のプラズマ処理装置の要部断面図
【図4】直線状に長尺状の被処理物をガイドしたガイド部の様子を示す概略断面図
【図5】螺旋状に長尺状の被処理物をガイドした様子を示す概略断面図
【図6】単位筒を連結して第1筒状部を形成した場合の本発明のプラズマ処理装置を示す斜視図
【図7】絶縁管を配置した場合の本発明のプラズマ処理装置の一部を切断した拡大斜視図
【図8】本発明の第2実施形態のプラズマ処理装置の一部を切断した拡大斜視図
【図9】本発明の第3実施形態のプラズマ処理装置を示す側面図
【図10】本発明の第3実施形態において第2筒状部を複数個配設した場合のプラズマ処理装置を示す側面図
【図11】単位筒および連結部材を連結して第1筒状部および第2筒状部を形成した場合の本発明のプラズマ処理装置を示す側面図
【図12】釣り糸の製造工程を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明のプラズマ処理方法およびプラズマ処理装置の具体的な実施形態を図1乃至図8を用いて説明する。
【0047】
本発明のプラズマ処理方法は、長尺状の被処理物に対してプラズマを接触させることによりプラズマ処理を施す方法であり、プラズマの密度分布にはバラツキがあり、長尺状の被処理物をプラズマの密度が高い領域を選択的に通過させながら長尺状の被処理物にプラズマ処理を施すようにされている。
【0048】
長尺状の被処理物としては、繊維、撚糸、組紐などからなる糸、パイプ、ナノチューブおよびこれらを組み合わせたものであり、無機物および有機物などいかなる材質のものでも良い。特に、無機物は、ステンレス、タングステン、鋼などであり、有機物はポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂から形成された糸およびこれらの複合糸などである。
【0049】
具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等およびそれらの共重合体からなるポリアミドポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネート等およびそれらの共重合体からなるポリエステルポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー、アクリロニトリルを主鎖とするアクリル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリ乳酸等の繊維形成性を有するポリマーからなるモノフィラメント、マルチフィラメントおよびこれらのカットファイバーからなる紡績糸、またはそれらの混繊糸、混紡糸などの複合糸とされる。なお、これらの繊維の直径は、装置内において糸切れなどの不具合が生じないものであれば、どのような直径とされてもよい。
【0050】
本発明のプラズマ処理方法を用いた本発明のプラズマ処理装置の第1実施形態について説明する。
【0051】
本発明の第1実施形態のプラズマ処理装置1は、図1に示すように、円筒管からなる第1筒状部2と、電源Pから電力を付与され、第1筒状部2の外周面に密着するようにして長手方向に少なくとも2個以上配設されたリング状電極3と、第1筒状部2の内部に対してプラズマ生成用ガスを導入するためのプラズマ生成用ガス導入部4とが備えられている。本実施形態のように、第1筒状部2を円筒管とした場合、少なくとも2個以上配設されたリング状電極3に対して隣接するリング状電極3の電荷が正電荷と負電荷とが順に交互となるように、長手方向に電位差を設て電圧を印加すると、第1筒状部2の内部では、プラズマの密度分布にバラツキが生じ、電流密度の高い内壁近傍のプラズマの密度が最も高く、径方向における中心部へ近づく程プラズマの密度が低くなり、また、第1筒状部2の長手方向に対して一様の密度分布を現す。
【0052】
第1筒状部2の内部には、図2に示すように、第1筒状部2の長手方向に配設された複数個の円盤状のガイド部材5aからなるガイド部5が設けられている。ガイド部材5aには、図3に示すように、第1筒状部2の内部に現れるプラズマ密度の高い領域、すなわち、第1筒状部2の内壁近傍において、ガイド部材5aよりも小径とされた同心円5b上に中心を有し、ガイド部材5aの厚さ方向に貫通した少なくとも1つ以上の支持孔5cが形成されている。また、ガイド部材5aの中心部には、貫通孔5dが形成されている。
【0053】
長尺状の被処理物Wに対してプラズマ処理を施す際には、図4に示すように、支持孔5cに長尺状の被処理物Wを通して支持し、プラズマの密度が高い領域、すなわち、第1筒状部2の内壁近傍へガイドするようにされている。
【0054】
このような、本発明の第1実施形態のプラズマ処理装置1とすることにより、プラズマ密度にバラツキのあるプラズマを用いてプラズマ処理を施す場合においても、長尺状の被処理物Wの表面に対し、高密度のプラズマを接触させてプラズマ処理を施すことができるので、高速なプラズマ処理を可能とする。
【0055】
また、図5に示すように、ガイド部材5aを第1筒状部2の長手方向中心軸に対して、各ガイド部材5a間の支持孔5cが所定角度ずつ角度をなすように設け、各支持孔5cに対して長尺状の被処理物Wを通して支持させた際に、長尺状の被処理物Wを第1筒状部2のプラズマの密度が高い領域、すなわち、内壁近傍を螺旋状に進ませるようにガイドする形状に各ガイド部材5aを形成するとよい。
【0056】
このような、ガイド部材5aとすることにより、例えば、1番目のガイド部材5a(1)に対して、2番目のガイド部材5a(2)を第1筒状部2の長手方向中心軸周りに45°傾きを設けて形成すると、長尺状の被処理物Wがガイド部材5a(1)からガイド部材5a(2)へ移動することによって、ガイド部材5a(1)において、高密度のプラズマに接触していた長尺状の被処理物Wの外周面の位置から中心軸周りに45°ずれた当該外周面の部分に高密度のプラズマが接触するようになる。従って、45°ずつ傾きを設けて第1筒状部2の長手方向に配置された8個のガイド部材5aの(1)から(8)によって被処理物Wを螺旋状に進ませて通過させることで、長尺状の被処理物Wの外周面全面に対して高密度のプラズマを接触させることができるので、長尺状の被処理物の表面に満遍なく均一な表面処理を施すことを可能とする。
【0057】
さらに、各ガイド部材5a間の距離が同じ場合には、ガイド部材5aに設ける傾きをより大きくすることにより、被処理物Wが第1筒状部2の内周面を1周するために必要な第1筒状部2の長手方向への距離を短くすることができるので、プラズマ処理装置1を小型化することが可能となる。具体的には、傾きを45°設ける場合には、第1筒状部2の内周面を1周するのにガイド部材5aが8個必要であるのに対し、傾きを90°設けた場合には、第1筒状部2の内周面を1周するのにガイド部材5aが4個でよく、第1筒状部2の長手方向の長さを1/2以下とすることができる。
【0058】
なお、図4のように長尺状の被処理物Wをガイド部材5aの支持孔5cに支持させた状態で、各ガイド部材5aを所定角度ずつ回転させて、図5のように長尺状の被処理物Wを第1筒状部2の長手方向に対して螺旋状に進ませるようにしてもよい。
【0059】
また、図6に示すように、複数の単位筒2aを連結させることによって1つの第1筒状部2とすることができる。このような、第1筒状部2とすることにより、ガイド部材5aの支持部5cに対して長尺状の被処理物Wを通した後に単位筒2aを連結させて第1筒状部2を形成するので、長尺状の被処理物Wとして形状安定性に乏しい材料に処理を施す場合においても、容易にセットすることができ、プラズマ処理装置1の操作性を向上させることができる。さらに、ガイド部材5aを回転させて長尺状の被処理物Wを螺旋状に進ませるようにする場合には、単位筒2aに角度を設けながら連結することによって容易に長尺状の被処理物Wを螺旋状に進ませるようにすることができる。
【0060】
また、図7に示すように、第1筒状部2の内部のガイド部材5aの貫通孔5dによって形成される空間に細い筒状の絶縁管6を挿通させて配設する。この絶縁管6の外周面と第1筒状部2の内壁とで形成される空間のみにプラズマ生成用ガスを導入してプラズマを生成するようにすることによって、プラズマ生成用ガスの使用量を抑えてランニングコストの低廉化を図ることができる。
【0061】
また、絶縁管6の内部に冷却水などの冷媒を導入することにより、プラズマの温度上昇を防ぐことができるので、熱に弱い長尺状の被処理物Wに対してもプラズマ処理を施すことができる。
【0062】
次に、本発明のプラズマ処理装置1の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態においては、図8に示すように、リング状電極3が第1筒状部2の外周面の全長に亘るように形成され、絶縁管6の内部には、銅の円柱棒からなる導電材料7が絶縁管6の内壁と密着させた状態で挿入されている。このとき、第1筒状部2の内壁と絶縁管6の外周面とで形成される空間にプラズマ生成用ガスを導入するとともに、電源Pを用いてリング状電極3と導電材料7とに電力を付与し、第1筒状部の径方向に電位差を設けるように電圧を印加して誘電体バリア放電を発生させることによってプラズマを生成することができる。
【0063】
第1筒状部2の内壁と絶縁管6の外周面とで形成される空間には、ガイド部材5aが長手方向に複数個配設され、長尺状の被処理物Wを前記空間内において支持してガイドするようにされている。
【0064】
本第2実施形態においては、導電材料7を銅の円柱棒として説明をおこなったが、効率よく放電を発生させるためには、絶縁管6の内壁と導電材料7の外周面との密着性の高さが重要であり、導電材料7として、例えば塩化ナトリウム水溶液や海水などの電解質水溶液または水銀などの導電性の液体を用いることがより好ましく、絶縁管6の内壁への密着性を非常に高くして効率よく誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0065】
また、前記導電性の液体を絶縁管6の内部において常に流動させるように形成する。例えば、導電性の液体を貯留しておくタンクを設け、タンクから絶縁管6の内部へ導電性の液体を導入するとともに、絶縁管6の内部からタンクへ導電性の液体を導出して、タンクと絶縁管6の内部において導電性の液体を循環させるようにすることが好ましい。導電性の液体を常に流動させることによって、給電しながら冷却することができ、冷媒としての作用も期待できる。なお、導電性の液体をタンク内または流路において冷却することにより、冷媒としての効果をさらに高めることも可能である。
【0066】
このような、第2実施形態のプラズマ処理装置1とすることにより、よりプラズマが高密度な領域を形成することができ、長尺状の被処理物Wに対して高速に満遍なく均一なプラズマ処理を施すことを可能とする。
【0067】
以下に、本発明のプラズマ処理方法を用いた実施例について説明する。
【0068】
<実施例>
本発明のプラズマ処理装置1を用いて、長尺状の被処理物Wに対してプラズマ処理を行い、処理効果の検討を行った。
【0069】
本実施例においては、長尺状の被処理物Wとして、直径0.243mmのポリアミドモノフィラメント(ナイロン6とナイロ66の85/15の共重合体のものを用いた。)、直径0.268mmのポリフッ化ビニリデンモノフィラメントおよび100デニール/96フィラメントの超高分子量ポリエチレン繊維を4本組み合わせて製紐した400デニール/384フィラメントの超高分子量ポリエチレン繊維を用いてサンプルの作成を行った。
【0070】
以下に、詳しいサンプルの作成方法について述べる。
【0071】
<サンプルの作成方法>
長尺状の被処理物Wは、所定のプラズマ処理装置設置範囲(本実施例においては、約1mの設置範囲を設けた。)を設けて設置された2台のニップローラ付糸送りロールによって、未処理の長尺状の被処理物Wが巻かれた原糸ボビンから巻取りボビンへと搬送されるようセットされている。
【0072】
本発明のプラズマ処理装置1の処理効果を明確とするべく、本発明のプラズマ処理装置1の他に、比較用にマルチガスプラズマジェット処理装置(株式会社プラズマコンセプト東京製のマルチガスプラズマ)を用い、それぞれプラズマ処理装置設置範囲に配置し、長尺状の被処理物Wに対してプラズマ処理を行った。
【0073】
各プラズマ処理装置の態様について説明する。
【0074】
本発明のプラズマ処理装置1は、図1に示す、直径3mm、長さ1mのガラス管に複数の銅電極をそれぞれ約1cmの間隔を設けて配置した約18cmのプラズマ照射範囲を形成した。ガラス管の一端側の側壁には、プラズマ生成用ガスを導入するためのプラズマ生成用ガス導入口が形成され、ガラス管の一端部はプラズマ生成用ガスが排出されるのを抑制するために、粘着性のフィルムなどで開口が狭められている。複数の銅電極には、それぞれ電源装置から電力が付与され、ガラス管の長手方向に電位差が設けられるように電圧が印加されている。
【0075】
マルチガスプラズマジェット処理装置は、直径8mm、長さ1mのプラスチック管の長手方向における略中央部にプラズマ導入口が設けられ、プラズマ導入口にマルチガスプラズマジェット発生装置の噴射口を接続することにより、当該プラズマ導入口からプラスチック管の両端に向かって逆方向へそれぞれプラズマが流れるように管内部へとプラズマを導入するようにされている。被処理物へのプラズマ処理は、プラスチック管の一方の端部から長尺状の被処理物Wを導入し、他方の端部から導出して、プラスチック管の内部において長尺状の被処理物Wの表面に対してプラズマを接触させて行う。
【0076】
プラズマ生成用ガスには、アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガスおよび炭酸ガスの単体のガスまたは混合ガスを用いた。
【0077】
サンプルは、長尺状の被処理物Wを所定の搬送速度で原糸ボビンから巻取りボビンへ搬送し、その間に設けられたプラズマ処理装置設置範囲に配設された各プラズマ処理装置によってプラズマ照射処理を施し、処理済みの長尺状の被処理物Wを巻取りボビンに糸と糸との間に間隔の無いように整列させて単層に巻き付けるようにして作成する。本実施例では、巻取りボビンとして、直径50mm、巻幅65mmのボビンを用いた。
【0078】
また、サンプルの接触角の測定方法について述べる。
【0079】
<接触角の測定方法>
測定装置には、FIBROsystemAB社(Sweden)製の携帯式接触角計PG−Xを用いた。測定は、サンプルの整列して巻き付けられた糸上に測定装置をセットし、当該糸上に純水を滴下して、整列した糸列と純水との接触角を検出した。なお、接触角は、値が小さいほど親水性の表面であることを示し、値が大きいほど撥水性の表面であることを示す。
【0080】
まず、マルチガスプラズマジェット処理装置を用いて、それぞれの被処理物へのガス種による処理効果の違いについて検討を行った。各サンプルのプラズマ処理に用いたガス種、ガス流量、サンプルの搬送速度および処理前/処理後の接触角の結果を表1に示す。なお、表中において、F1はポリアミドモノフィラメントを示し、F2はポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを示し、F3は超高分子量ポリエチレン繊維を示す。
【0081】
素材がF1としてのポリアミドモノフィラメントの場合、表1のNo.1に示すように、アルゴンガス100体積%に対して酸素ガス1体積%を添加したプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を施すことにより高い親水化効果が得られた。この他に、No.2およびNo.3に示すように、ヘリウムガス100体積%に対して炭酸ガス1体積%を添加したプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を施した場合、ガス流量を5L/minとしたNo.2においては、わずかに親水化効果が認められ、ガス流量を10L/minとしたNo.3においては、高い親水化効果が認められた。また、No.4およびNo.5に示すように、へリムガス100体積%に対して酸素ガス1体積%を添加したプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を施した場合、ガス流量5L/minとしたNo.4においては、わずかに親水化効果が認められたものの、ガス流量10L/minとしたNo.5においては、逆に撥水化効果が認められる結果となった。
【0082】
また、素材がF2としてのポリフッ化ビニリデンモノフィラメントの場合、No.6に示すように、アルゴンガス100体積%に対して酸素ガス1体積%を添加したプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を施すことにより、接触角が大きくなる結果を示し撥水化効果が得られた。また、No.7に示すように、ヘリウムガス100体積%に対して炭酸ガス1体積%を添加したプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を施した場合、わずかに親水化効果が認められた。反対に、No.8に示すように、ヘリウムガス100体積%に対して酸素ガス1体積%を添加したプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を施した場合には、接触角が大きくなり撥水化効果が認められる結果となった。
【0083】
同様に、素材がF3としての超高分子量ポリエチレン繊維の場合、処理前の段階で親水性を示し、純水を滴下すると約1秒30で浸透した。No.9およびNo.10に示すように、炭酸ガス100体積%およびアルゴンガス100体積%のプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を施すことにより、滴下された純水が一瞬で浸透するほど高い親水性を示す結果となった。
【0084】
次に、本発明のプラズマ処理装置または比較用のマルチガスプラズマジェット処理装置を用い、ポリアミドモノフィラメント(F1)およびポリフッ化ビニリデンモノフィラメント(F2)に対してプラズマ処理を施した場合の接触角を測定し、本発明のプラズマ処理装置の処理効果について検討を行った。各サンプルの処理に用いた処理装置、ガス種、ガス流量、サンプルの搬送速度および処理前/処理後の接触角を測定した結果を表2に示す。
【0085】
素材がF1としてのポリアミドモノフィラメントの場合、表2のNo.Ny1およびNo.Ny2に示すように、本発明のプラズマ処理装置および比較用のマルチガスプラズマジェット処理装置のどちらの処理装置を用いてプラズマ処理を施したサンプルにおいても親水化効果が認められた。しかし、比較用のマルチガスプラズマジェット処理装置を用いて処理を行ったサンプルにおいては、接触角にムラが認められたため、被処理物に対して満遍なく均一な処理が施されていないと考えられる。これに対し、本発明のプラズマ処理装置を用いたサンプルにおいては、このような接触角のムラは認められず、被処理物の表面に満遍なく均一な処理が施すことができた。
【0086】
また、素材がF2としてのポリフッ化ビニリデンモノフィラメントの場合、No.FC1およびNo.FC2に示すように、本発明のプラズマ処理装置を用いてプラズマ処理を施したサンプルにおいては、純水の接触角が0.0°となり高い親水化効果が認められたのに対し、比較用のマルチガスプラズマジェット処理装置を用いたサンプルにおいては、接触角が増加する結果となった。このことから、本発明のプラズマ処理装置を用いることにより、被処理物に対して満遍なく均一なプラズマ処理を施すことが可能であり、高い表面改質効果が得られることが明らかとなった。
【0087】
さらに、素材がF2としてのポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを用いて、本発明のプラズマ処理装置における処理効果を検討するべく、被処理物の搬送速度を変化させてプラズマ処理を施した場合のサンプルに対する純水の接触角の結果を表2のNo.FC1、No.FC3およびNo.FC4を用いて説明する。
【0088】
搬送速度5m/minおよび10m/minの場合は、No.FC1およびNo.FC3に示すように、ともに純水が一瞬で浸透して接触角は0.0°であり、高い親水化効果が認められた。さらに搬送速度を速めて搬送速度20m/minとした場合には、No.FC4に示すように、処理後の純水の接触角は減少して親水化効果が認められたものの、純水が浸透するまでの表面改質には至らなかった。この結果から、被処理物へのプラズマの照射時間を長くする程、表面改質効果が高いことが分かる。
【0089】
このように、本発明のプラズマ処理装置を用いることにより、長尺状の被処理物Wに対して、高い表面改質効果を得ることができる。さらに、被処理物の表面に対して、満遍なく均一なプラズマ処理を施すことができる。
【0090】
また、本発明のプラズマ処理装置1の第3実施形態について説明する。
【0091】
本発明の第3実施形態においては、図9に示すように、例えば、タングステンや鋼などの電気伝導性を有する長尺状の被処理物Wにプラズマ処理を施す場合においても安定にプラズマを生成して、良好なプラズマ処理を可能とするべく発明された実施形態であり、第1筒状部2に対して、直交して貫通するように一体に形成された少なくとも1つの第2筒状部8を備えている。また、プラズマ生成用ガス導入部4から第1筒状部2の内部にプラズマ生成用ガスを導入するとともに、リング状電極3に対して長手方向に電位差を設けるように電圧を印加することにより、第1筒状部2の内部において生成されたプラズマが第2筒状部8の内部に導入されるようにされている。
【0092】
なお、第2筒状部8に開閉自在な栓を設けることにより、第1筒状部2において、長尺状の被処理物に対してプラズマ処理を施すことができる。
【0093】
この時、リング状電極3においては、図9に示すように、第2筒状部8に隣接する位置に配置されたリング状電極3が接地されることが好ましく、第2筒状部8と第1筒状部2とが交差する部分を電気伝導性を有する長尺状の被処理物Wが通過する際においても、隣接するリング状電極3が接地状態であるため、異常放電が発生することがなく、安定にプラズマを生成して、第2筒状部8の内部へプラズマを導入することができる。
【0094】
さらに、第1筒状部2の両端部にそれぞれプラズマ生成用ガス導入部4を設けるようにされることが好ましく、両側から導入されるプラズマ生成用ガスの流れによって第2筒状部8に対して生成されたプラズマが導入されやすくなるとともに、より高密度のプラズマを第2筒状部8の内部に導入することができるので、長尺状の被処理物Wに対して高速にプラズマ処理を施すことができる。
【0095】
また、第1筒状部2に対して、複数の第2筒状部8を設ける場合には、図10に示すように、第2筒状部8と第2筒状部8との間であって、一致のリング状電極3を両側にそれぞれ設けるように中央にプラズマ生成用ガスを導入するためのプラズマ生成用ガス導入部4をさらに設けるとよい。
【0096】
プラズマ生成用ガスに対して、処理効果を向上させるために酸素ガス、炭酸ガスおよび水素ガスなどのガスを添加する場合や、化学蒸着を目的として蒸着物を添加する場合には、第2筒状部8の内部に直接導入するようにしてプラズマ処理を行うことが好ましい。
【0097】
また、第1筒状部2が複数の単位筒2aを長手方向に連結させて形成する場合には、図11に示すように、第1筒状部2と第2筒状部8とが交差する部分に、十字型の連結部材9を設けて、連結部材9の対向する一対の開口部9a、9cに単位筒2aを連結して第1筒状部2とするとともに、連結部材9の対向するその他の一対の開口部9b、9dを第2筒状部8とするようにされている。このように、プラズマ処理装置1を単位筒2aと連結部材9とを連結して形成することによって、長尺状の被処理物Wを単位筒2aおよび連結部材9に通した後に、単位筒2aおよび連結部材9とを連結させてプラズマ処理が可能な状態に組み立ててプラズマ処理を施すようにすることができるので、操作性に優れたプラズマ処理装置とすることを可能とする。
【0098】
このような、本発明の第3実施形態のプラズマ処理装置1とすることにより、第2筒状部8に電気伝導性を有する長尺状の被処理物Wを通して、第1筒状部2によって生成されたプラズマと長尺状の被処理物Wとを第2筒状部8の内部において接触させて、長尺状の被処理物Wにプラズマ処理を施すようにされるので、電気伝導性を有する長尺状の被処理物Wとリング状電極3との間で異常放電することを抑制することができ、安定にプラズマを生成して、電気伝導性を有する長尺状の被処理物Wへのプラズマ処理を容易に行うことを可能とする。
【0099】
なお、本発明のプラズマ処理装置は、第1実施形態および第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、例えば、第1実施形態および第2実施形態において、ガイド部材5aは円盤に複数の支持孔5cが形成された形状として説明を行っているが、第1筒状部2の内壁の円周部にセラミックス製のスネール型、ドックテール型またはループ型の既存の糸道ガイドを設置することにより長尺状の被処理物Wをガイドするように形成してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 プラズマ処理装置
2 第1筒状部
2a 単位筒
3 リング状電極
4 プラズマ生成用ガス導入部
5 ガイド部
5a ガイド部材
5b 同心円
5c 支持孔
5d 貫通孔
6 絶縁管
7 導電材料
8 第2筒状部
9 連結部材
9a,9b、9c、9d 開口部
W 長尺状の被処理物
P 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の被処理物に対してプラズマを接触させることによりプラズマ処理を施すプラズマ処理方法において、
前記プラズマには、密度分布にバラツキがあり、
前記長尺状の被処理物を、前記プラズマの密度が高い領域を選択的に通過させながら前記長尺状の被処理物にプラズマ処理を施すことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
内部にプラズマが生成される第1筒状部と、
前記第1筒状部の外周面の長手方向に少なくとも2個以上設けられたリング状電極と、
前記第1筒状部の内部にプラズマ生成用ガスを導入するプラズマ生成用ガス導入部と、
前記第1筒状部の内側に設けられ、長尺状の被処理物が前記プラズマの密度が高い領域を進むようにガイドするガイド部とを備えていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガイド部が、前記第1筒状部の長手方向に複数個配設されたガイド部材からなり、
前記複数のガイド部材は、前記長尺状の被処理物を前記第1筒状部の前記プラズマの密度が高い領域を螺旋状に進ませるようにガイドする形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1筒状部が、複数の単位筒を長手方向に連結させて形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1筒状部の内部には、細い筒状の絶縁管が設けられ、
前記絶縁管が、前記プラズマの密度が低い領域を通るように配置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記絶縁管の内部には、冷媒が導入されていることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記リング状電極が、前記第1筒状部の外周面の全長に亘るように形成され、
前記絶縁管の内部には、導電材料が導入されていることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記絶縁管の内部に導入される前記導電材料が、導電性の液体であることを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記絶縁管の内部において、前記導電性の液体が常に流動するように形成されていることを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記導電性の液体を貯蓄するタンクを備え、
前記タンクから前記絶縁管の内部へ前記導電性の液体を導入するとともに、前記絶縁管の内部から前記タンクへ前記導電性の液体を導出して、前記タンクと前記絶縁管の内部において前記導電性の液体が循環するように形成されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記第1筒状部に対し、直交して貫通するように一体に形成された少なくとも1つの第2筒状部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1筒状部の両端部に前記プラズマ生成用ガス導入部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記第1筒状部が、複数の単位筒を長手方向に連結させて形成され、
前記第1筒状部と前記第2筒状部とが交差する部分が、十字型の連結部材によって連結されていることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
繊維状の合成高分子化合物からなり、請求項1に記載のプラズマ処理方法を用いてプラズマ処理を施したことを特徴とする長尺物。
【請求項15】
繊維状の合成高分子化合物からなり、請求項2乃至請求項10のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置によって、請求項1に記載のプラズマ処理方法を用いてプラズマ処理を施したことを特徴とする長尺物。
【請求項16】
繊維状の導電性の物質からなり、請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置によって、請求項1に記載のプラズマ処理方法を用いてプラズマ処理を施すことを特徴とする長尺物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−97904(P2013−97904A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237324(P2011−237324)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(308024018)
【出願人】(308024029)
【出願人】(591051966)株式会社サンライン (8)
【Fターム(参考)】