説明

プラズマ処理装置および方法、並びにフラットパネルディスプレイ装置の製造方法

【課題】複数の導波管スロットアンテナからなるアンテナアレーの開口面積を大きくするときの装置構成の複雑化および大型化を抑制する。
【解決手段】分配器30は、導波管スロットアンテナ10A〜10Hの幅方向に延びる給電用導波管と、導波管スロットアンテナ10A〜10Hの放射用導波管と給電用導波管とを連通する給電用導波管の壁面に形成された開口12とを有する。この分配器30では、導波管スロットアンテナ10A〜10Hの放射用導波管の幅の総和と同じ長さの給電用導波管を用いればよいので、アンテナアレーを構成する導波管スロットアンテナの数を増やして開口面積を大きくしても、装置構成が複雑化かつ大型化することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置および方法に関し、より詳しくはマイクロ波により生成されたプラズマを利用してフラットパネルディスプレイなどの被処理体を処理するプラズマ処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD(liquid crystal desplay)などのフラットパネルディスプレイ装置の製造において、エッチング、アッシング、またCVD(Chemical Vapour Deposition)などの処理を行うために、プラズマ処理装置が広く用いられている。プラズマ処理装置の一つに、処理容器内にマイクロ波を供給することにより、処理容器内のガスを電離または励起させてプラズマを生成するマイクロ波プラズマ処理装置がある。マイクロ波プラズマ処理装置は、マイクロ波の供給手段としてラジアルラインスロットアンテナなど放射面が円形の平面アンテナを用いたものが実用化に至っている。現在は方形の放射面を有する平面アンテナを用いたマイクロ波プラズマ処理装置の開発が進められている。その一つに、複数の導波管スロットアンテナからなるアンテナアレーを用いたものがある。
【0003】
図29は、導波管スロットアンテナアレーを用いた従来のプラズマ処理装置の全体構成を示す縦断面図である。また、図30は、導波管スロットアンテナアレーを含む一部の構成の横断面図である。なお、これらの図では、一部の構成を機能ブロックで示している。
図29に示す従来のプラズマ処理装置は、平面視方形をした有底筒状の処理容器1を有している。処理容器1はAlなどの金属で形成される。処理容器1の底面中央部には載置台2が配設されている。載置台2の上面には、被処理体としてLCD基板3などが配置される。載置台2には、マッチングボックス4を介して高周波電源5が接続されている。
【0004】
処理容器1の底面周縁部には、真空排気用の排気口6が設けられ、処理容器1の側壁には、処理容器1内にガスを導入するガス導入口7が設けられている。例えばプラズマ処理装置がエッチング装置として用いられる場合には、Arなどのプラズマガスと、CF4 などの反応ガスとが導入される。
処理容器1の上部開口は、そこからマイクロ波を導入しつつ、処理容器1内で生成されるプラズマを外部に漏らさないように、石英ガラスなどからなる誘電体板8で閉塞されている。なお、処理容器1の側壁上面と誘電体板8との間にOリングを介在させ、処理容器1内の気密性を確保している。
誘電体板8の上方には、導波管スロットアンテナアレー910が配設されている。誘電体板8およびアンテナアレー910の外周は、処理容器1の側壁上に環状に配設されたシールド材9によって覆われ、アンテナアレー910から処理容器1内に供給されるマイクロ波が外部に漏れない構造になっている。
【0005】
導波管スロットアンテナアレー910の導入部にはマイクロ波分配器930の出力側が接続され、マイクロ波分配器930の入力側にはマイクロ波導波管41を介してマイクロ波発振器42が接続されている。
図30に示すように、導波管スロットアンテナアレー910は、複数の導波管スロットアンテナ910A,910B,910C,910Dから構成されている。導波管スロットアンテナ910A〜910Dは、方形導波管からなる放射用導波管のH面(磁界に平行な広い方の側壁)に放射用スロット911が複数形成されたアンテナである。放射用導波管の一端は開口し、他端はショートされている。このような導波管スロットアンテナ910A〜910Dが、スロット911が形成された放射用導波管のH面を載置台2に対向させた状態で、放射用導波管の軸線方向に直交する幅方向に整列配置されている。
【0006】
また、マイクロ波分配器930は、マイクロ波導波管41と同じ幅を有する導入部931と、導入部931の先端から二分岐しそれぞれが斜め方向に延びる分岐部932と、分岐部932の各先端から導波管スロットアンテナ910A〜910Dの放射用導波管の軸線方向に平行に延びる平行部933と、導波管スロットアンテナ910A〜910Dの放射用導波管の幅の総和と同じ幅を有する分割部934とを有している。導入部931と分岐部932との境界部中央には、スタブ935が設けられている。分割部934は、放射用導波管の軸線方向に延びる仕切り板936により、幅方向の中央が仕切られている。
【0007】
このような構成のプラズマ処理装置において、マイクロ波発振器42を駆動すると、マイクロ波がマイクロ波導波管41を介してマイクロ波分配器930の導入部931に導入される。導入部931に導入されたマイクロ波は、スタブ935により位相が調整され、分岐部932で二分割され、平行部933を介して分割部934に至り、導波管スロットアンテナ910A〜910Dのそれぞれの放射用導波管に導入される。放射用導波管に導入されたマイクロ波は、管内を伝播しながら、H面に複数形成されたスロット911から徐々に放射され、誘電体板8を透過して処理容器1内に供給される。処理容器1内に供給されたマイクロ波の電界により電子が加速され、処理容器1内のガスが電離、励起、解離され、反応活性種が生成される。この反応活性種により、載置台2上のLCD基板3の表面にエッチングなどの処理が施される。
【0008】
このプラズマ処理装置のように、複数の導波管スロットアンテナ910A〜910Dからなるアンテナアレー910を用いることにより、平面視方形の処理容器1の内部の広範囲にマイクロ波を供給してプラズマを生成することができる。また、マイクロ波分配器930は、導波管スロットアンテナ910A〜910Dの放射用導波管の軸線方向に平行な中心線Cに関して対称であるから、複数の導波管スロットアンテナ910A〜910Dにもマイクロ波発振器42からのマイクロ波を同位相かつ同電力で分配することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】特開平11−111493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フラットパネルディスプレイ装置の製造コストを低減するため、従来より大型の基板を処理可能なプラズマ処理装置の実現が待望されている。従来より大型の基板を処理するには、従来より大口径の処理容器が必要であり、この処理容器の口径に合わせて処理容器内にマイクロ波を供給する平面アンテナの開口面積を大きくしなければならない。
【0011】
平面アンテナとして上述した複数の導波管スロットアンテナからなるアンテナアレーを用いる場合、開口面積を大きくするには、導波管スロットアンテナの放射用導波管の断面サイズを大きくする方法が考えられる。しかし、放射用導波管の断面の長辺が管内波長を超えると、TE10モードに加えてTE01モードが励起され、マイクロ波の制御が困難になる。
一方、導波管スロットアンテナをそれぞれ離間して配置し、各導波管スロットアンテナから放射されるマイクロ波により誘電体板8内に表面波を励起する方法では、この表面波が定在波モードであるため電界分布が不均一で、その電界により励起されるプラズマの分布も不均一になる。また、プラズマ表面に垂直な方向の電界成分が大きいため、プラズマにマイクロ波が吸収されやすく、電子温度が増大して基板ダメージや、処理容器1のスパッタによる金属汚染が発生する。
【0012】
よって、開口面積を大きくするには、アンテナアレーを構成する導波管スロットアンテナの数を増やすのがよい。しかし、この場合、従来のプラズマ処理装置で用いられているマイクロ波分配器930と同様の方法で各導波管スロットアンテナの放射用導波管にマイクロ波を分配すると、二分岐を有する分岐部932が多数必要になり、マイクロ波分配器の構成が複雑化かつ大型化するという問題があった。また、導波管スロットアンテナの数が2n (nは2以上の整数)以外の場合には、分岐部932を有するマイクロ波分配器を用いることができず、装置構成の設計自由度が小さいという問題があった。
【0013】
また、従来より大口径の処理容器を用いてプラズマ処理を行うには、プラズマが生成される空間の増加に応じた大きな電力を処理容器に供給する必要がある。しかし、マイクロ波発振器42は出力電力が大きくなると価格が格段に高くなるので、マイクロ波発振器42の価格によりプラズマ処理装置全体の製造コストが大幅に高くなるという問題があった。
【0014】
また、処理容器1内の電界強度はマイクロ波を供給するスロット911に近いほど強く、また電界強度が強いほどプラズマ生成が促進されるので、処理容器1内のプラズマ密度分布はスロット911の近傍で高くなる傾向にある。プラズマ密度分布をより均一化するには、導波管スロットアンテナ910A〜910Dの放射用導波管の軸線方向に配置されるスロット911の間隔を小さくすればよい。しかし、放射用導波管の管内波長に基づく所定間隔でスロット911を配置しなければ、マイクロ波の放射方向が変化するため、スロット911の間隔をむやみに小さくすることはできないという問題があった。
【0015】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の導波管スロットアンテナからなるアンテナアレーの開口面積を大きくするときの装置構成の複雑化および大型化を抑制するとともに、装置構成の設計自由度を大きくすることにある。
また、他の目的は、プラズマ処理装置の製造コストを抑制することにある。
また、他の目的は、処理容器内のプラズマ密度分布を均一化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するために、本発明のプラズマ処理装置は、被処理体を載置する載置台と、この載置台を収容する処理容器と、放射用導波管にスロットが形成された複数の導波管スロットアンテナが放射用導波管の軸線方向に直交する幅方向に整列配置されるとともに載置台に対向配置されたアンテナアレーと、放射用導波管の一端に接続されそれぞれにマイクロ波を分配する分配器とを備え、この分配器が、導波管スロットアンテナの幅方向に延びる給電用導波管と、この給電用導波管の壁面に形成された放射用導波管と給電用導波管とを連通する開口とを有することを特徴とする。
この分配器では、すべての導波管スロットアンテナの放射用導波管の幅の総和と同じ長さ(軸線方向の長さ)の給電用導波管を用いればよいので、アンテナアレーを構成する導波管スロットアンテナの数を増やして開口面積を大きくしても、従来のマイクロ波分配器930ほど装置構成が複雑化かつ大型化することはない。また、導波管スロットアンテナの数が2n 以外の場合にも、給電用導波管の長さを調整するだけで対応できる。
【0017】
このプラズマ処理装置において、給電用導波管の載置台に対向する壁面にスロットが形成されていてもよい。これにより、給電用導波管により導波管スロットアンテナアンテナが構成される。
また、分配器は、上記開口に対向する給電用導波管の壁面から開口に向かって突出し、給電用導波管を伝播するマイクロ波を放射用導波管へ誘導する誘導壁を更に有するものであってもよい。
また、アンテナアレーは、給電用導波管の両側にそれぞれに設けられていてもよい。
【0018】
また、このプラズマ処理装置は、放射用導波管の管内のみに配置された誘電体からなる遅波材を備えるものであってもよい。放射用導波管の管内に遅波材を配置することにより、放射用導波管の管内の比誘電率が1より大きくなり、放射用導波管の管内波長が短くなる。放射用導波管のスロットは管内波長に基づく所定間隔で配置されるので、管内波長が短くなることにより、スロット間隔も短くなり、同じ長さの放射用導波管に従来より多くのスロットを形成することが可能となる。したがって、処理容器内に従来より小電力のマイクロ波が従来より短い間隔で供給されるので、プラズマ密度の分布が均一化される。また、給電用導波管の管内には遅波材を配置せず、中空のままにしておくことにより、給電用導波管の口径を小さくし、供給電力を小さくする必要がない。
ここで、この遅波材は、放射用導波管の一端の側の端部に勾配を有していてもよい。これにより、放射用導波管と給電用導波管との境界における誘電率の変化が緩やかになり、この境界でのマイクロ波の反射が低減される。
【0019】
また、上述したプラズマ処理装置において、放射用導波管の幅を、給電用導波管の管内波長の略1/2とし、給電用導波管の壁面に形成される開口を、給電用導波管の管内波長と略同一の間隔で配置し、1つの開口で隣り合う2つの放射用導波管を給電用導波管に連通させるようにしてもよい。これにより、給電用導波管から放射用導波管のそれぞれへマイクロ波が同位相で導入される。
また、互いに略平行に配置された2枚の導体板と、これら2枚の導体板の間に延在し2枚の導体板によって形成された空間を仕切る導体からなる仕切り部材とを備え、2枚の導体板と仕切り部材とから放射用導波管および給電用導波管が形成されるものであってもよい。
【0020】
また、上述したプラズマ処理装置は、マイクロ波を発生するマイクロ波発振器と、このマイクロ波発振器から出力されるマイクロ波を給電用導波管に導くマイクロ波導波管と、このマイクロ波導波管に設けられ電源側と負荷側とのインピーダンスを整合させるインピーダンス整合器とを備えるものであってもよい。インピーダンスを整合させることにより、マイクロ波導波管と給電用導波管との接続部でのマイクロ波の反射が抑制される。
ここで、インピーダンス整合器は、給電用導波管とマイクロ波導波管との接続部付近に設けられた、マイクロ波導波管の管路を狭めるアイリスで構成してもよい。
【0021】
また、上述したプラズマ処理装置は、アンテナアレーと分配器とこの分配器にマイクロ波を供給するマイクロ波発振器とを含むマイクロ波供給装置を複数有するものであってもよい。これにより、低出力のマイクロ波発振器を用いることができる。
ここで、2つのマイクロ波供給装置を、それぞれが有する放射用導波管の他端が対向するとともに、それぞれが有する放射用導波管に形成されたスロットが同一直線上に並ぶように配置してもよい。これにより、スロット配置の規則性が維持される。
また、処理容器のアンテナアレー側端部を閉塞する誘電体板と、隣り合う複数のアンテナアレーの境界に対向するように延在し誘電体板を支える補強部材とを備えるものであってもよい。
【0022】
また、上述したプラズマ装置は、放射用導波管に形成されるスロットの数が、その放射用導波管がアンテナアレー内で配置される位置により異なるものであってもよい。
例えば、すべての放射用導波管を組み合わせることにより形成される載置台と対向する面の中央部分を除く領域のみにスロットを形成してもよい。これにより、載置台と対向する面の中央部分からマイクロ波が供給されないので、載置台の中央部分の上部空間でのプラズマ生成が抑制される。通常、プラズマは載置台の中央部分の上部空間で高密度になる傾向にあるので、この空間でのプラズマ生成を抑制することにより、プラズマ密度の分布が均一化される。
ここで、分配器が、スロットの数が少ない放射用導波管ほど小さい電力を供給するようにしてもよい。これにより、スロットの数が少ない放射用導波管において、スロットから放射されない電力の損失が低減される。
【0023】
また、上述したプラズマ処理装置において、導波管スロットアンテナが、スロットより処理容器の内部に円偏波を供給するようにしてもよい。これにより、放射用導波管のスロットが形成された面に平行な面内で電界が回転するので、この面内では時間平均で均一なプラズマが生成される。なお、導波管スロットアンテナおよび分配器が、スロットより処理容器の内部に円偏波を供給するようにしてもよい。
【0024】
また、本発明のプラズマ処理方法は、放射用導波管にスロットが形成された複数の導波管スロットアンテナが放射用導波管の軸線方向に直交する幅方向に整列配置されたアンテナアレーを用いて処理容器内にマイクロ波を供給し、処理容器内に供給されたマイクロ波によって生成されたプラズマを利用して処理容器内に収容された載置台上の被処理体を処理するプラズマ処理方法において、分配器を構成する給電用導波管にマイクロ波を供給し、給電用導波管の側壁に複数形成された開口を介して放射用導波管のそれぞれにマイクロ波を供給し、放射用導波管に形成されたスロットを介してマイクロ波を処理容器内に供給することを特徴とする。
【0025】
このプラズマ処理方法において、放射用導波管の管内のみに誘電体からなる遅波材を配置し、放射用導波管に複数形成されるスロットの間隔を短くしてもよい。
また、2枚の導体板を互いに略平行に配置し、2枚の導体板によって形成された空間を2枚の導体板の間に延在する導体からなる仕切り部材で仕切り、2枚の導体板と仕切り部材とから放射用導波管および給電用導波管を形成するようにしてもよい。
【0026】
また、アンテナアレーと分配器とこの分配器にマイクロ波を供給するマイクロ波発振器とを含むマイクロ波供給装置を複数用いてもよい。
また、すべての放射用導波管を組み合わせることにより形成される載置台と対向する面の中央部分を除く領域のみにスロットを形成するようにしてもよい。
また、アンテナアレーを処理容器の外部に配置し、処理容器のアンテナアレー側端部を誘電体板で閉塞し、この誘電体板にアンテナアレーを接触させた状態でアンテナアレーの温度を制御するようにしてもよい。
【0027】
また、本発明のフラットパネルディスプレイ装置の製造方法は、上述したプラズマ処理方法を用いて、被処理体にエッチング、アッシングおよびCVDのうちの少なくとも一つの処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明では、処理容器内にマイクロ波を供給する導波管スロットアンテナが整列配置される方向に延びる給電用導波管と、導波管スロットアンテナの放射用導波管と給電用導波管とを連通する開口とを有する分配器を用いることにより、アンテナアレーを構成する導波管スロットアンテナの数を増やして開口面積を大きくするときの装置構成の複雑化および大型化を抑制することができるとともに、装置構成の設計自由度を大きくすることができる。
また、給電用導波管の載置台に対向する壁面にスロットを形成することにより、分配器のみの作用を有する部材が不要となるので、装置構成を更に簡単化および小型化することができる。
【0029】
また、放射用導波管の管内に遅波材を配置することにより、同じ長さの放射用導波管に従来より多くのスロットを形成することができる。これにより、処理容器内には従来より小電力のマイクロ波が従来より短い間隔で供給されるので、プラズマの分布を均一化することができる。また、給電用導波管の管内を中空のままにしておくことにより、給電用導波管の口径を小さくし、供給電力を小さくする必要がない。したがって、分配器がマイクロ波を分配可能な導波管スロットアンテナの数は変わらず、装置構成の設計自由度を制約することはない。
【0030】
また、放射用導波管の幅を、給電用導波管の管内波長の略1/2とし、給電用導波管の壁面に形成される開口を、給電用導波管の管内波長と略同一の間隔で配置することにより、給電用導波管から放射用導波管のそれぞれへマイクロ波が同位相で導入されるので、スロットの配置をすべての導波管スロットアンテナで同じにすることができる。
また、互いに略平行に配置された2枚の導体板と、これら2枚の導体板によって形成された空間を仕切る仕切り部材とから放射用導波管および給電用導波管を形成することにより、処理容器の開口部をアンテナで覆うことが容易になる。
また、マイクロ波発振器から出力されるマイクロ波を給電用導波管に導くマイクロ波導波管にインピーダンス整合器を設けることにより、マイクロ波導波管と給電用導波管との接続部でのマイクロ波の反射が抑制され、マイクロ波を給電用導波管へ効率よく導入することができる。
【0031】
また、アンテナアレーと分配器とマイクロ波発振器とを含むマイクロ波供給装置を複数設けることにより、低出力のマイクロ波発振器を用いることが可能となる。マイクロ波発振器は出力電力が大きくなるほど価格が格段に高くなるので、低出力で価格が安いマイクロ波発振器を複数用いることにより、プラズマ処理装置全体の製造コストを低減することができる。
また、処理容器のアンテナアレー側端部を閉塞する誘電体板と、誘電体板を支える補強部材とを備え、この補強部材を隣り合う複数のアンテナアレーの境界に対向するように延在させることにより、アンテナアレーの境界からはマイクロ波が放射されないので、マイクロ波に対する補強部材の影響を小さくすることができる。
【0032】
また、すべての放射用導波管を組み合わせることにより形成される載置台と対向する面の中央部分を除く領域のみにスロットを形成することにより、プラズマ密度が高い載置台の中央部分の上部空間においてプラズマ生成が抑制されるので、プラズマ密度の分布を均一化することができる。
ここで、スロットの数が少ない放射用導波管ほど小さい電力を供給することにより、スロットの数が少ない放射用導波管においてスロットから放射されない電力の損失を低減し、効率よくプラズマを生成することができる。
【0033】
また、スロットより処理容器の内部に円偏波を供給することにより、スロットが形成された面に平行な面内で電界が回転するので、この面内では時間平均で均一なプラズマが生成される。したがって、スロットが形成された面と平行に被処理体を配置することにより、被処理体の表面に均一な処理を施すことができる。
また、処理容器の端部を閉塞する誘電体板にアンテナアレーを接触させた状態でアンテナアレーの温度制御を行うことにより、誘電体板の温度を調整することができる。例えば、アンテナアレーを冷却することにより、プラズマ熱流による誘電体板の破損を防ぐことができる。また、アンテナアレーを加熱することにより、誘電体板へのデポジションを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の図面において、図29および図30に示した構成要素に相当する構成要素については図29および図30と同一符号で示し、適宜その説明を省略する。
【0035】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の全体構成を示す縦断面図である。また、図2は、図1に示すプラズマ処理装置の一部の構成の横断面図である。なお、これらの図では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
図1に示すプラズマ処理装置は、被処理体としてLCD基板3などを載置する載置台2と、載置台2を収容する平面視方形をした有底筒状の処理容器1と、処理容器1の上部開口を閉塞する誘電体板8と、誘電体板8を介して外部から処理容器1内にマイクロ波を供給するマイクロ波供給装置50とを有している。ここで、マイクロ波供給装置50は、導波管スロットアンテナアレー10と、マイクロ波分配器30と、マイクロ波導波管41と、マイクロ波発振器42とから構成されている。
【0036】
図2に示すように、導波管スロットアンテナアレー10は、複数の導波管スロットアンテナ10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10Hから構成されている。導波管スロットアンテナ10A〜10Hは、方形導波管からなる放射用導波管のH面に放射用スロット11が複数形成されたアンテナである。放射用導波管の一端には給電用スロット(開口)12が形成され、他端はショートされている。このような導波管スロットアンテナ10A〜10Hが、放射用スロット11が形成された放射用導波管のH面を載置台2に対向させた状態で、放射用導波管の軸線方向(マイクロ波の進行方向)に直交する幅方向に整列配置されている。
【0037】
導波管スロットアンテナ10A〜10Hの放射用導波管の管内には、誘電体からなる遅波材21が配置されている。遅波材21の比誘電率をεr (>1)、放射用導波管の管内が中空のときの管内波長をλg0とすると、遅波材21が配置されたときの管内波長λg は、
λg=λg0/(εr)1/2 ・・・(1)
となる。なお、給電用スロット12がある側の遅波材21の端部は、厚みが徐々に変化してゆくように勾配21Aが形成されている。
放射用導波管の管内にはまた、ショートされた他端の近傍にマイクロ波吸収材22が配置されている。なお、マイクロ波吸収材22は必ずしも必要ではない。
【0038】
放射用スロット11としては、円偏波を放射するクロススロットが用いられている。クロススロットは、対をなす2個のスロットが互いの中心で交差する構成をしており、それぞれのスロットから放射される電界の大きさが等しく位相が90°異なり偏波方向が直交するように配置される。例えば、放射用導波管内の比誘電率εr が3.6の場合、2個のスロットの長さをそれぞれ2.94cm、3.19cmとし、その2個のスロットを互いに略直角に交差させ、放射用導波管の軸線に対して略45゜傾斜するように配置される。または、2個のスロットの長さをそれぞれ2.80cm、3.83cmとし、その2個のスロットを互いに略107゜の角度で交差させ、放射用導波管の軸線に対して略36.5゜傾斜するように配置されてもよい。このようなクロススロットからなる複数の放射用スロット11は、本実施の形態では放射用導波管の中心軸に対して一方の側に、略λg の自然数倍の間隔で配置される。
【0039】
また、マイクロ波分配器30は、方形導波管からなる給電用導波管のE面(電界に平行な狭い方の側壁)に給電用スロット(開口)12が複数形成されたものである。給電用導波管は、導波管スロットアンテナ10A〜10Hの放射用導波管の幅(幅方向の長さ)の総和と同じ長さを有している。給電用導波管のE面に複数形成された給電用スロット12と放射用導波管の一端にそれぞれ形成された給電用スロット12とが重なるように配置することにより、給電用スロット12で給電用導波管と放射用導波管とが連通する。なお、給電用スロット12は、すべての放射用導波管にマイクロ波が均等に供給されるように調整されている。
【0040】
給電用導波管には、給電用スロット12が形成されたE面に対向するE面の中央部に開口31が形成されている。この開口31には、矩形導波管からなるマイクロ波導波管41を介して、発振周波数が例えば2.45GHzのマイクロ波発振器42が接続されている。マイクロ波導波管41の管内には、給電用導波管との接続部付近(例えば、給電用導波管の中心軸線から管内波長の1/4程度離間した位置)にアイリス43が設けられている。アイリス43は、マイクロ波導波管41の左右の側壁から垂直に突出する壁からなり、マイクロ波導波管41の管路の幅を調整することにより、マイクロ波導波管41の電源側と負荷側とのインピーダンスを整合させることができる。
また、給電用導波管の管内には、開口31が形成されたE面から給電用スロット12の幅方向の中心に向かって垂直に突出する誘導壁32が、上下のH面の間に延在している。誘導壁32の突出長は給電用導波管の幅の1/5程度とする。給電用導波管の管内には、遅波材は配置されておらず、中空となっている。
【0041】
なお、給電用導波管の管内波長をλg0とすると、放射用導波管の幅は略λg0/2に形成される。このため、給電用スロット12もまた略λg0/2間隔で形成される。したがって、隣り合う放射用導波管には、給電用スロット12を介して給電用導波管からマイクロ波が逆位相で供給されることになる。このため、導波管スロットアンテナ10A〜10Hのすべての放射用スロット11から同じ回転方向の円偏波が放射されるように、隣り合う導波管スロットアンテナの放射用スロット11が放射用導波管の軸線方向に略λg/2 だけずれた位置に配置される。
【0042】
本実施の形態では、導波管スロットアンテナ10A〜10Hの放射用導波管およびマイクロ波分配器30の給電用導波管は、互いに離間して平行に配置された平面視方形の2枚の平板13,14とこれらの平板13,14の周縁部を接続する側壁15,16,17,18とからなる箱体の内部を、側壁15から略λg0/2だけ離間した位置に側壁15,17と平行に配設された仕切り板19で仕切り、仕切り板19と側壁17とに挟まれた領域を、側壁16,18と平行に配設された7つの仕切り板20で略λg0/2間隔で仕切ることによって形成される。なお、平板13,14、側壁15〜18および仕切り板19,20は、銅などの導体で形成される。
【0043】
この場合、平板13,14がそれぞれすべての放射用導波管および給電用導波管のH面となり、側壁15が給電用導波管の一方のE面となり、仕切り板19が給電用導波管の他方のE面かつすべての放射用導波管の一端面となり、側壁17がすべての放射用導波管の他端面となり、側壁16,18のそれぞれの一部が給電用導波管の両端面となり、側壁16,18のそれぞれの他部および仕切り板20が放射用導波管のE面となる。そして、側壁15の中央部に開口31が形成され、仕切り板19に給電用スロット12が複数形成される。また、載置台2に対向する平板14に放射用スロット11が複数形成される。
【0044】
以上のような構成のプラズマ処理装置において、マイクロ波発振器42を駆動すると、マイクロ波がマイクロ波導波管41を介してマイクロ波分配器30の開口31からマイクロ波分配器30の給電用導波管の管内に導入される。マイクロ波導波管41の管内にはアイリス43が設けられ、インピーダンス整合がとれているので、マイクロ波導波管41と給電用導波管との接続部でのマイクロ波の反射は抑制される。
給電用導波管の中央部から管内に導入されたマイクロ波は二分岐し、給電用導波管の両端面に向かって伝播してゆく。そして、マイクロ波の進行方向に略λg0/2の間隔で配設された誘導壁32に誘導され、その誘導壁32に対向する給電用スロット12を介して導波管スロットアンテナ10A〜10Hのそれぞれの放射用導波管に均等に分配される。
【0045】
放射用導波管に導入されたマイクロ波は、遅波材21が配置された管内を伝播しながら、H面に複数形成された放射用スロット11から徐々に放射され、誘電体板8を透過して処理容器1内に供給される。また、放射用スロット11から放射されずに残ったマイクロ波はマイクロ波吸収材22に吸収される。
処理容器1内に供給されたマイクロ波の電界により電子が加速され、処理容器1内のガスが電離、励起、解離され、反応活性種が生成される。この反応活性種により、載置台2上のLCD基板3の表面にエッチングなどの処理が施される。
【0046】
以上のように、本実施の形態では、導波管スロットアンテナ10A〜10Hが整列配置される方向に延びる給電用導波管のE面に給電用スロット12が複数形成された構成のマイクロ波分配器30を用いる。この分配器30は、開口面積を大きくするために導波管スロットアンテナの数を増やしたとしても、すべての導波管スロットアンテナの放射用導波管の幅の総和と同じ長さの給電用導波管を用いればよいだけなので、従来のマイクロ波分配器930ほど装置構成が複雑化かつ大型化することはない。また、導波管スロットアンテナの数が2n 以外の場合にも、給電用導波管の長さを調整するだけで対応できる。よって、導波管スロットアンテナの数を増やして開口面積を大きくするときの装置構成の複雑化および大型化を抑制することができるとともに、装置構成の設計自由度を大きくすることができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、開口面積を大きくするために導波管スロットアンテナの放射用導波管の断面サイズを大きくする必要がないので、放射用導波管として単一モードのマイクロ波導波管を用いることができ、マイクロ波の制御が容易になる。
また、誘電体板8内に表面波を励起する必要がないので、プラズマの分布を均一化することができる。さらに、導波管スロットアンテナ10A〜10Hのスロット面から略垂直方向にマイクロ波が放射され、プラズマ表面に垂直な方向の電界成分が小さいので、基板ダメージや処理容器1内の金属汚染が少ない低電子温度プラズマを実現することができる。
【0048】
また、マイクロ波導波管41の管内にアイリス43を配設し、マイクロ波導波管41の電源側と負荷側とのインピーダンスを整合させることにより、マイクロ波導波管41と給電用導波管との接続部でのマイクロ波の反射が抑制され、マイクロ波を給電用導波管へ効率よく導入することができる。
また、マイクロ波分配器30の給電用導波管の管内に誘導壁32を配設し、給電用導波管を伝播するマイクロ波を給電用スロット12を介して導波管スロットアンテナ10A〜10Hの放射用導波管へ誘導することにより、給電用導波管から軸線方向が直交する放射用導波管へマイクロ波を効率よく供給することができる。
【0049】
また、導波管スロットアンテナ10A〜10Hの放射用導波管の管内に遅波材21を配置することにより、放射用導波管の管内波長が短くなり、管内波長に基づいて設定される放射用スロット11の間隔も短くなる。このため、同じ長さの放射用導波管に、管内を中空とした場合より多くの放射用スロット11を形成することができる。したがって、処理容器1内に、管内を中空とした場合より小電力のマイクロ波を短い間隔で供給し、プラズマ密度の分布を均一化することができる。
【0050】
なお、給電用スロット12がある側の遅波材21の端部に勾配21Aを形成することにより、給電用導波管と放射用導波管との境界における空気から誘電体への誘電率の変化が緩やかになり、この境界でのマイクロ波の反射が低減される。したがって、放射用導波管へマイクロ波を効率よく供給することができる。
ここで、マイクロ波分配器30の給電用導波管の管内には遅波材を配置せず、中空のままにしておくことにより、給電用導波管の口径を小さくし、供給電力を小さくする必要がない。したがって、分配器30がマイクロ波を分配可能な導波管スロットアンテナの数は変わらず、装置構成の設計自由度を制約することはない。
【0051】
また、放射用スロット11としてクロススロットを形成し、処理容器1内に円偏波を放射することにより、導波管スロットアンテナ10A〜10Hの放射用スロット11が形成されたH面に平行な面内で電界が回転するので、この面内では時間平均で均一なプラズマが生成される。したがって、放射用スロット11が形成されたH面と平行にLCD基板3を配置することにより、LCD基板3の表面に均一な処理を施すことができる。
なお、図3に示すマイクロ波供給装置150のように、円偏波を放射する放射用スロット111として、ハの字型スロットを用いてもよい。ハの字型スロットは、一方のスロットの延長線が、他方のスロット上またはその延長線上で交差する構成をしており、それぞれのスロットから放射される電界の大きさが等しく位相が90°異なり偏波方向が直交するように配置される。
【0052】
また、本実施の形態では、マイクロ波分配器30の給電用導波管のE面に開口31および給電用スロット12が形成された例を示したが、給電用導波管のH面に開口および給電用スロットが形成されるマイクロ波分配器もある。この分配器は、放射用導波管のE面に放射用スロットが複数形成された導波管スロットアンテナに対応して用いられる。
【0053】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置は、導波管スロットアンテナアレーのすべての放射用導波管にマイクロ波を同位相で分配するマイクロ波分配器を用いたものである。
図4は、このマイクロ波分配器を含むマイクロ波供給装置の横断面図である。この図では、図2に示した構成要素に相当する構成要素を図2と同一符号で示し、また一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0054】
図4に示すマイクロ波供給装置250が有するマイクロ波分配器230は、導波管スロットアンテナ210A,210B,210C,210D,210E,210F,210G,210Hの放射用導波管にマイクロ波を供給する開口212が方形導波管からなる給電用導波管のE面(仕切り板219)に略λg0の間隔で複数形成されたものである。なお、λg0は給電用導波管の管内波長である。放射用導波管の幅は略λg0/2であるので、開口212をそれぞれ隣り合う2つの放射用導波管の境界領域に形成し、1つの開口212で隣り合う2つの放射用導波管を給電用導波管に連通させる。
【0055】
給電用導波管には、開口212が形成されたE面に対向するE面の中央部に、開口31が形成されており、この開口31にはマイクロ波導波管41を介してマイクロ波発振器42が接続されている。なお、隣り合う2つの放射用導波管の境界領域であって開口212が形成されていない部分の対向位置に開口31を形成してもよい。また、給電用導波管の端面に開口31を形成してもよい。
また、給電用導波管の管内には、開口31が形成されたE面から開口212の幅方向の中心に向かって垂直に突出する誘導壁232が複数配設されている。誘導壁232の間隔も、開口212と同じく略λg0となる。
【0056】
なお、給電用導波管の管内が中空であること、給電用導波管の長さが導波管スロットアンテナ210A〜210Hの放射用導波管の幅の総和と同じであること、開口212がすべての放射用導波管にマイクロ波が均等に供給されるように調整されていることは、図1および図2に示したプラズマ分配器30と同じである。
一方、導波管スロットアンテナ210A〜210Hにおいては、隣り合う2つの放射用導波管にマイクロ波を導入しやすくするために、2つの放射用導波管の境界となるE面(仕切り板220)の開口212側の先端がやや後退している。
【0057】
このように構成することにより、マイクロ波分配器230の給電用導波管から導波管スロットアンテナ210A〜210Hの放射用導波管のそれぞれへマイクロ波が同位相で導入されるので、放射用スロット11の配置をすべての導波管スロットアンテナ210A〜210Hで同じにすることができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置は、導波管スロットアンテナアレーのスロットが形成された面内でマイクロ波の供給電力に分布をもたせたマイクロ波供給装置を用いたものである。
図5は、このマイクロ波供給装置の横断面図である。この図では、図2または図4に示した構成要素に相当する構成要素を図2または図4と同一符号で示し、また一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0059】
図5に示すマイクロ波供給装置350は、第2の実施の形態におけるマイクロ波供給装置250と概ね同じである。ただし、本実施の形態においては、アンテナアレー310を構成する導波管スロットアンテナ310A,310B,310C,310D,310E,310F,310G,310Hの放射用スロット11の配置および数が、その導波管スロットアンテナ310A〜310Hがアンテナアレー310内で配置される位置により異なっている。より具体的には、導波管スロットアンテナ310A〜310Hを組み合わせることにより形成される載置台2と対向する面の中央部分360には放射用スロット11が配置されず、中央部分360を除く領域のみに放射用スロット11が配置される。ここで、放射用スロット11が配置されない部分360は、載置台2の中央部分に対向している。
【0060】
処理容器1内におけるプラズマ密度の分布は、プラズマが定常状態になると、載置台2の中央部分の上部空間で高くなる傾向にある。載置台2の中央部分に対向する部分360にスロット11を配置しなければ、プラズマ密度が高い載置台2の中央部分の上部空間にマイクロ波が放射されないので、この空間でのプラズマ生成が抑制される。したがって、プラズマ密度の分布を均一化することができる。
【0061】
上述したように、導波管スロットアンテナ毎に放射用スロット11の数が異なる場合、すべての導波管スロットアンテナの放射用導波管に均等に電力を分配すると、放射用スロット11の数が少ない放射用導波管において、放射用スロット11から放射されず最終的にマイクロ波吸収材22に吸収される電力が増える。このため、マイクロ波分配器230の分配量を調整し、放射用スロット11の数が少ない放射用導波管ほど小さい電力を供給する。これにより、放射用スロット11から放射されない電力の損失を低減し、効率よくプラズマを生成することができる。ここで、マイクロ波分配器230の分配量は、放射用導波管にマイクロ波を供給する開口212の大きさや、マイクロ波を開口212を介して放射用導波管に誘導する誘導壁232の突出長などにより調整することができる。
なお、スロット11が配置されない部分360の形状は、四角形状でも円形状でもよい。
【0062】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置は、複数のマイクロ波供給装置を組み合わせて用いるものである。
図6は、複数のマイクロ波供給装置を組み合わせて用いる場合の一構成例を示す図である。この図において、(a)は導波管スロットアンテナアレーの放射用スロットが形成される面を示し、(b)は(a)におけるVIb−VIb′線方向の断面構成を示している。なお、図2または図4に示した構成要素に相当する構成要素を図2または図4と同一符号で示している。
【0063】
複数のマイクロ波供給装置250A,250B,250C,250D,250E,250Fを組み合わせて用いる場合、導波管スロットアンテナアレー210の放射用スロット11が形成される面を連続させる必要がある。したがって、図6(a)に示すように、マイクロ波供給装置250Aと250Bと250Cは、アンテナアレー210の側壁16と18が対向するように配置される。マイクロ波供給装置250Dと250Eと250Fについても同じである。また、マイクロ波供給装置250Aと250Dは、アンテナアレー210の側壁17同士が対向するように配置される。マイクロ波供給装置250Bと250E、250Cと250Fについても同じである。
【0064】
放射用スロット11が放射用導波管の軸線方向に一列に形成されている場合には、マイクロ波供給装置250Aと250Dは、それぞれの放射用スロット11が同一直線上に並ぶように配置される。マイクロ波供給装置250Bと250E、250Cと250Fについても同じである。これにより、スロット配置の規則性が維持されるので、処理容器1内にマイクロ波を均一に供給し、均一なプラズマを生成することができる。
【0065】
本実施の形態のように複数のマイクロ波供給装置250A〜250Fを用いて処理容器1内に電力供給することにより、1個の高出力発振器を用いたときと同等の電力供給を複数の低出力発振器を用いて実現することができる。したがって、大口径の処理容器1を用いてプラズマ処理を行うときなど、処理容器1に大電力を供給しなければならない場合でも、低出力で価格が安いマイクロ波発振器42を複数用いることにより、プラズマ処理装置全体の製造コストを低減することができる。
【0066】
一方、アンテナの大型化に合わせて誘電体板8の面積を大きくする際には、誘電体板8が処理容器1内の高真空に耐えられるように、誘電体板8を補強する必要がある。誘電体板8を補強するには、補強部材として梁を誘電体板8の下側(処理容器1の内部側)に渡し、誘電体板8を下側から支える方法がある。本実施の形態では、隣り合う複数のアンテナアレー210の境界をなす側壁16〜18の付近からはマイクロ波が放射されない。このため、図6(b)に示すように、この境界に対向するように梁81を延在させることにより、マイクロ波に対する梁81の影響を小さくすることができる。
【0067】
図7は、複数のマイクロ波供給装置を組み合わせて用いる場合の他の構成例を示す図である。この図では、図2または図4に示した構成要素に相当する構成要素を図2または図4と同一符号で示している。
この構成例では、第3の実施の形態と同様に、導波管スロットアンテナアレー410の放射用スロット11が形成される面の中央部分460にはスロット11が配置されず、中央部分460を除く領域のみに放射用スロット11が配置される。ここで、放射用スロット11が配置されない部分460は、載置台2の中央部分に対向している。
【0068】
より具体的には、マイクロ波供給装置450A,450C,450D,450Fの導波管スロットアンテナアレー410には全域に放射用スロット11が配置されるのに対し、マイクロ波供給装置450B,450Eの導波管スロットアンテナアレー410には先端領域を除く領域のみに放射用スロット11が配置される(すなわち、放射用導波管のショートされた他端側の領域には放射用スロット11は配置されない)。
このように放射用スロット11を配置することにより、第3の実施の形態と同様に、プラズマ密度が高い載置台2の中央部分の上部空間でのプラズマ生成を抑制し、プラズマ密度の分布を均一化することができる。
【0069】
(第5の実施の形態)
図8は、本発明の第5の実施の形態に係るプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波供給装置の要部構成を示す斜視図である。図9は、図8におけるIX−IX′線方向の縦断面図である。図10は、図9におけるX−X′線方向の横断面図である。
図8〜図10に示すマイクロ波供給装置550は、図示しないマイクロ波発振器と、マイクロ波発振器で生成されたマイクロ波を導く方形導波管からなるマイクロ波導波管541と、マイクロ波導波管541により導かれたマイクロ波を処理容器1内に供給するアンテナ部材570とを有している。
【0070】
ここで、アンテナ部材570は、高さが低い直方体状をした箱体571を有している。箱体571は、互いに離間して略平行に配置された平面視方形の2枚の平板513,514(図9参照)と、平板513,514の周縁部を接続する側壁515,516,517,518(図10参照)とから構成されている。平板513,514および側壁515〜518は、銅などの導体で形成される。
図11に示すように、箱体571の内部は、側壁516,518に平行なY方向に3つのブロック(A,B,C)に分割され、さらに各ブロック(A,B,C)は、側壁515,517に平行なX方向に4つの放射用ブロック(A1,A2,A3,A4、B1,B2,B3,B4、C1,C2,C3,C4)に分割されている。よって、箱体571の内部は合計12の放射用ブロックに分割されている。
【0071】
箱体571の各放射用ブロックの間は、銅などの導体で形成された仕切り部材523,524で仕切られている。ただし、放射用ブロックB1〜B4のそれぞれの境界は完全に開口し、放射用ブロックAiとBiとCiとのそれぞれの境界は一部開口している(i=1,2,3,4)。この結果、図10に示すように、仕切り部材523は2枚の平板をT字型に接続したものからなり、仕切り部材524は1枚の平板からなる。なお、仕切り部材523,524は、アンテナ部材570の箱体を構成する平板513と514との間に延在し、その両方に接続されている。
【0072】
図11に示すように、箱体571の各放射用ブロックは、一辺の長さが略λg/2の正方形をしている。また、図9に示すように、箱体571の高さは略λg/4である。ここで、λg は箱体571の管内波長である。したがって、相互に連通している放射用ブロックB1〜B4はX方向に延びる方形導波管として作用し、同じく放射用ブロックA1〜C1,A2〜C2,A3〜C3,A4〜C4はそれぞれY方向に延びる方形導波管として作用する。
【0073】
箱体571の上面となる平板513には、長方形の開口542が形成され、この開口542の周囲にマイクロ波発振器に繋がるマイクロ波導波管541が接続されている。より具体的に言えば、放射用ブロックB2と放射用ブロックB3との境界線上に、方形導波管からなるマイクロ波導波管541の2つのH面(広い方の壁面)の中間位置がくるように、開口542が形成されている。ここで、マイクロ波導波管541が接続される平板513は、放射用ブロックB1〜B4からなる方形導波管のH面となる。よって、マイクロ波導波管541の管内および箱体571の放射用ブロックB2,B3における磁力線は、それぞれ図12(a)および(b)の矢線で示すようになり、マイクロ波導波管541により導かれたマイクロ波を、放射用ブロックB2と放射用ブロックB3とで位相が逆になるように分配供給することができる。
【0074】
放射用ブロックB2,B3に供給されたマイクロ波は、それぞれ放射用ブロックB1,B4に伝播する。また、放射用ブロックB1〜B4のマイクロ波は、開口512を介して放射用ブロックA1〜A4および放射用ブロックC1〜C4に分配される。各放射用ブロックの一辺の長さは略λg/2であるから、各放射用ブロックにおける磁力線は図10に示すようになる。
【0075】
図10に示すように、箱体571の下面となる平板514には、放射用スロット511が形成されている。この例では、箱体571の各放射用ブロックに、2つのスロット511A,511Bからなるハの字型スロットが形成されている。長さが短いスロット511Aは磁力線が左方向に向かう位置に配置され、長さが長いスロット511Bは磁力線が下方向に向かう位置に配置されており、2つのスロット511A,511Bはその延長線上で直交する。したがって、放射電界の位相をスロット511Aで+45゜、スロット511Bで−45°とすることにより、スロット511A,511Bから放射されるマイクロ波は円偏波となる。
【0076】
なお、各スロット511A,511Bの放射電力は、直線偏波を放射する場合の略1/2とする。これにより、円偏波の電力は直線偏波を放射する場合と同等になるが、各スロット511A,511Bの放射電力が小さくなるので、各スロット511A,511Bで放電が起こる危険が減少する。
【0077】
このような構成のアンテナ部材570において、箱体571の放射用ブロックB1〜B4からなる方形導波管および開口512は、第1の実施の形態におけるマイクロ波分配器30と同様に、放射用ブロックA1〜A4,C1〜C4にマイクロ波を分配供給する作用を有する。また、放射用ブロックA1〜A4および放射用ブロックC1〜C4は、第1の実施の形態における導波管スロットアンテナアレー10と同様に、マイクロ波分配器30から導入されたマイクロ波を放射用スロット511を介して処理容器1の内部に供給する作用を有する。したがって、アンテナ部材570は、第1の実施の形態におけるマイクロ波分配器30の両側に導波管スロットアンテナアレー10をそれぞれ設け、さらにマイクロ波分配器30の給電用導波管の下面(すなわち、載置台2に対向する壁面)に放射用スロット511を形成したもとの捉えることができる。
【0078】
したがって、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、導波管スロットアンテナの数を増やして開口面積を大きくするときの装置構成の複雑化および大型化を抑制することができるとともに、装置構成の設計自由度を大きくすることができる。また、導波管スロットアンテナの放射用導波管の断面サイズを大きくする必要がなく、放射用ブロックの数を増やすことで大面積化が可能であり、高次モードを励起させることなく、マイクロ波の制御が容易になる。さらに、誘電体板8内に表面波を励起する必要がないので、プラズマの分布を均一化し、また基板ダメージや処理容器1内の金属汚染が少ない低電子温度プラズマを実現することができる。
これに加えて、本実施の形態ではマイクロ波分配器30のみの作用を有する部材が不要となるので、第1の実施の形態よりも更に装置構成の簡単化および小型化が可能となる。
【0079】
次に、アンテナ部材570の変形例について説明する。
まず、仕切り部材について説明する。
図13は、アンテナ部材570に使用可能な仕切り部材の平面形状を示す図である。この図において、点線は箱体571の各放射用ブロックの境界線を表している。
【0080】
仕切り部材としては、図13(a),(b)に示すような1枚の平板からなる仕切り部材525A,525Bの他、図13(c)に示すような平面視T字型をした仕切り部材525C、図13(d)に示すような平面視十字型をした仕切り部材525D、図13(e)に示すような平面視L字型をした仕切り部材525Eを用いることができる。図10における仕切り部材523,524は、それぞれ図13(c),(a)に示した仕切り部材525C,525Aと同型である。
また、図11において、放射用ブロックA1〜A4,C1〜C4のそれぞれの境界は開口してもよいので、図13(f)に示すような柱状の仕切り部材525Fを用いることもできる。
【0081】
次いで、放射用スロット511の他の例について説明する。
図14は、放射用スロット511の他の配置例を示す図である。この図に示す放射用スロット511もまた、2つのスロット511C,511Dからなるハの字型スロットである。ただし、スロット511C,511Dは、放射用ブロックAi,Bi,Ci(i=1,2,3,4)からなる方形導波管の軸線に対して略45°の角度をなしている。
【0082】
図15は、図14に示した放射用スロット511の設計例を示す図である。また、図16は、放射用スロットのマイクロ波放射特性を示す図である。横軸はスロットの長さをマイクロ波の自由空間波長(周波数が2.45GHzのマイクロ波で122mm)λ0で割った値、縦軸はスロットからの放射電界の相対利得[dB]または位相[deg]を示している。
図15に示す例では、2つのスロット511C,511Dのなす角度を90°とし、それぞれの長さを0.43λ0,0.51λ0とする。スロット511C,511Dのそれぞれの長さを0.43λ0,0.51λ0とすると、図16から分かるように、放射電界の位相が+45°,−45°となる。よって、スロット511C,511Dから放射されるマイクロ波を円偏波にすることができる。
【0083】
図17は、放射用スロットの更に他の配置例を示す図である。この図に示す放射用スロット511Eは各放射用ブロックにおいて磁力線が下方向に向かう位置に配置されており、放射されるマイクロ波は直線偏波となる。
なお、アンテナ部材570における放射用スロット511の位置により偏波を変えてもよい。例えば、処理容器1の側壁付近に放射されるマイクロ波をその側壁に平行な直線偏波にすることにより、マイクロ波の漏洩を低減することができる。また、処理容器1の内部で生成されるプラズマの状態に応じて、偏波を設定してもよい。例えば、電子温度を上げたい場合には、敢えて直線偏波にするとよい。
【0084】
次いで、放射用ブロックの配置のバリエーションについて説明する。
本実施の形態では、箱体571の内部を複数の放射用ブロックに分割し、各放射用ブロックの間を必要に応じて仕切り部材で仕切る構成をとっている。したがって、箱体571の大きさや形状などによって、放射用ブロックの数や配置を自在に変更することができる。
例えば、図18に示すようなX方向の長さがλg 、Y方向の長さが3×λg/2の箱体571Cについては、箱体571Cの内部を2×3=6個の放射用ブロックに分割することができる。
【0085】
また、図19に示すようなX方向およびY方向の両方の長さが3×λg/2の箱体571Dについても、アンテナ部材570の使用態様によっては、箱体571Dの内部を2×3=6個の放射用ブロックに分割してもよい。この際、1つの放射用ブロックのX方向、Y方向の辺の長さをそれぞれax,ayとすれば、
λg=λ0/{1−(λ0/2ax)21/2
λg/2=ay
の関係式を好ましくは満たすように設定する。
【0086】
また、第1の実施の形態における導波管スロットアンテナアレー10として作用する部分(図11では放射用ブロックA1〜A4,C1〜C4)のY方向の長さを延ばし、Y方向に複数の放射用ブロックを配置してもよい。図20には、導波管スロットアンテナアレー10として作用する部分AA,CCのY方向の長さをλgとし、Y方向にそれぞれ2個の放射用ブロックを配置した例を示している。
また、図21に示すように、導波管スロットアンテナアレー10として作用する部分AAを、マイクロ波分配器30として作用する部分Bの片側のみに設けてもよい。
【0087】
このように、放射用ブロックの数や配置は自由度が大きいので、処理容器1の開口部の口径および形状に合わせて箱体571を選び、その内部をブロック化することにより、処理容器1の開口部の全域に放射用ブロックを配置することができる。よって、本実施の形態によれば、複数の放射用導波管を組み合わせてアンテナを構成するよりも容易に、処理容器1の開口部をアンテナで覆うことが可能となる。
【0088】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態に係るプラズマ処理装置は、第5の実施の形態におけるマイクロ波供給装置550を複数組み合わせて用いるものである。
図22は、マイクロ波供給装置550を複数組み合わせて用いる場合の一構成例を示す平面図である。図23は、マイクロ波供給装置550のアンテナ部材570の寸法を示す図である。図24は、図22におけるXXIV−XXIV′線方向の断面図である。この図では、図1に示した構成要素に相当する構成要素を図1と同一符号で示している。
【0089】
図22に示すように、LCD基板3の寸法が1100mm×1300mmの場合には、例えば、口径が1500mm×1500mmの処理容器1を用いる。また、処理容器1の開口上部に、346.4mm×346.4mmの箱体571を有するアンテナ部材570をマトリックス状に3×3=9個配置する。なお、図23に示すように、この箱体571の内部は86.6mm×86.6mmの放射用ブロックに16分割されている。
このように、マイクロ波供給装置550を複数用いることにより、上述した第4の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、各マイクロ波供給装置550のマイクロ波発振器として低出力で価格の安いものを用いることができ、結果としてプラズマ処理装置全体の製造コストを低減することができる。
【0090】
本実施の形態でも第4の実施の形態同様に、処理容器1の上部開口を1枚の誘電体板8で閉塞し、その誘電体板8の上に複数のアンテナ部材570を配置してもよいが、図24に示すように各アンテナ部材570の下部のみを誘電体板8Aで構成してもよい。この場合には、誘電体板の面積を大きくする必要がないので、誘電体板の強度を維持できる。アンテナ部材570の下部のみに配置された誘電体板8Aは、処理容器1の上部開口に梁渡された梁1Aにより支持される。誘電体板8Aと梁1Aとの間、および、梁1Aの基部と処理容器1の側壁上面との間には、Oリングなどのシール部材1Bを介在させ、処理容器1内の気密性を確保する。
また、処理容器1内にガスを導入するガス導入管7Aを梁1Aに設けてもよい。さらに、載置台2の上部空間に金属性のシャワープレート(図示せず)を配置し、ガス導入管7Aから導入されたガスを均一化するようにしてもよい。
【0091】
また、アンテナ部材570の放射用スロット511が形成された下面を、誘電体部材8Aに接触させてもよい。この場合、アンテナ部材570の温度制御を行うことにより、誘電体板8Aの温度を調整することができる。アンテナ部材570を冷却して誘電体板8Aを冷却することにより、プラズマ熱流による誘電体板8Aの温度上昇を抑え、熱膨張による誘電体板8Aの破損を防ぐことができる。また、例えばフロロカーボンガスのようなデポ性のガスを用いたプロセスを行う際に、アンテナ部材570を加熱して誘電体板8Aの温度を150℃程度にすることにより、誘電体板8Aへのデポジションを防ぎ、プロセスを安定させることができる。
【0092】
(第7の実施の形態)
第5の実施の形態では、マイクロ波供給装置550のマイクロ波導波管541として方形導波管を用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば同軸導波管を用いてもよい。この同軸導波管を用いる例を、本発明の第7の実施の形態として説明する。
図25は、本発明の第7の実施の形態に係るプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波供給装置の要部構成を示す縦断面図である。図26は、図25におけるXXVI−XXVI′線方向の横断面図である。これら図では、図8〜図10に示した構成要素に相当する構成要素を図8〜図10と同一符号で示している。
図25および図26に示すマイクロ波供給装置650は、図示しないマイクロ波発振器と、マイクロ波発振器で生成されたマイクロ波を導く同軸導波管からなるマイクロ波導波管641と、マイクロ波導波管641により導かれたマイクロ波を処理容器1内に供給するアンテナ部材670とを有している。
【0093】
アンテナ部材670の箱体671の上面となる平板513には、円形の開口642が形成されている。開口642は箱体671内部のある放射用ブロックの中央部分に形成され、開口642の周囲にマイクロ波導波管641の外部導体641Aが接続さている。外部導体641Aと同軸に配置された内部導体641Bは、開口642を通って箱体671内部にまで延びている。内部導体641Bの先端は、図25(a)に示すように箱体671の下面となる平板514に接続されていてもよいし、図25(b)に示すように接続されていていなくてもよい。前者の場合には、内部導体641Bの先端にテーパー643を付けることにより、マイクロ波導波管641からアンテナ部材670へのインピーダンス変化を緩やかにし、マイクロ波導波管641とアンテナ部材670との接続部でのマイクロ波の反射を小さくすることができる。
【0094】
マイクロ波導波管641の管内における磁力線は、図27(a)の矢線で示すように内部導体641Bを中心に回転している。よって、上述したように放射用ブロックの中央部にマイクロ波導波管641を接続することにより、その放射用ブロックでの磁力線は図27(b)の矢線で示すようになり、図26に示すように全ブロックへマイクロ波を分配することができる。
第6の実施の形態と同様に、このマイクロ波導波管641として同軸導波管を用いたマイクロ波供給装置650を複数組み合わせて用いてもよい。その一構成例を図28に示す。この図では、処理容器1の開口上部に、マイクロ波供給装置650のアンテナ部材670をマトリックス状に3×3=9個配置している。
【0095】
以上、本発明の種々の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態に含まれる技術思想を相互に組み合わせたものも本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のプラズマ処理装置は、エッチング装置、CVD装置、アッシング装置などに利用することができる。また、本発明のプラズマ処理方法は、例えばエッチング、アッシング、CVDなどの処理に利用することができる。さらに、これらのプラズマ処理装置および方法は、LCDなどのフラットパネルディスプレイ装置の製造にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波供給装置の構成の横断面図である。
【図3】放射用スロットの構成例を示す横断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波供給装置の構成を示す横断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波供給装置の構成を示す横断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置において、複数のマイクロ波供給装置を組み合わせて用いる場合の一構成例を示す図である。
【図7】複数のマイクロ波供給装置を組み合わせて用いる場合の他の構成例を示す図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係るプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波供給装置の要部構成を示す斜視図である。
【図9】図8におけるIX−IX′線方向の縦断面図である。
【図10】図9におけるX−X′線方向の横断面図である。
【図11】箱体内部の放射用ブロックの配置例を示す図である。
【図12】マイクロ波導波管の管内およびマイクロ波導波管が接続された放射用ブロックにおける磁力線を示す図である。
【図13】アンテナ部材に使用可能な仕切り部材の平面形状を示す図である。
【図14】放射用スロットの他の配置例を示す図である。
【図15】図14に示した放射用スロットの設計例を示す図である。
【図16】放射用スロットのマイクロ波放射特性を示す図である。
【図17】放射用スロットの更に他の配置例を示す図である。
【図18】箱体内部の放射用ブロックの他の配置例を示す図である。
【図19】箱体内部の放射用ブロックの他の配置例を示す図である。
【図20】箱体内部の放射用ブロックの他の配置例を示す図である。
【図21】箱体内部の放射用ブロックの他の配置例を示す図である。
【図22】マイクロ波供給装置を複数組み合わせて用いる場合の一構成例を示す平面図である。
【図23】マイクロ波供給装置のアンテナ部材の寸法を示す図である。
【図24】図22におけるXXIV−XXIV′線方向の断面図である。
【図25】図25は、本発明の第7の実施の形態に係るプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波供給装置の要部構成を示す縦断面図である。
【図26】図25におけるXXVI−XXVI′線方向の横断面図である。
【図27】マイクロ波導波管の管内およびマイクロ波導波管が接続された放射用ブロックにおける磁力線を示す図である。
【図28】マイクロ波供給装置を複数組み合わせて用いる場合の一構成例を示す平面図である。
【図29】導波管スロットアンテナアレーを用いた従来のプラズマ処理装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図30】導波管スロットアンテナアレーを含む一部の構成の横断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1…処理容器、1A…梁、1B…シール部材、2…載置台、3…LCD基板、4…マッチングボックス、5…高周波電源、6…排気口、7…ガス導入口、7A…ガス導入管、8,8A…誘電体板、9…シールド材、10,110,210,310,410…導波管スロットアンテナアレー、10A〜10H,110A〜110H,210A〜210H,310A〜310H…導波管スロットアンテナ、11,111,511…放射用スロット、12,212…給電用スロット、13,14,513,514…平板、15〜18,515〜518,517A,517B…側壁、19,20,219,220…仕切り板、21…遅波材、21A…勾配、22…マイクロ波吸収材、30,230…マイクロ波分配器、31…開口、32,232…誘導壁、41,541,641…マイクロ波導波管、42…マイクロ波発振器、43…アイリス(インピーダンス整合器)、50,150,250,250A〜250F,350,450A〜450F,550,650…マイクロ波供給装置、81…梁(補強部材)、511A〜511E…スロット、512…開口、523,524,525A〜525F…仕切り部材、542,642…開口、570,670…アンテナ部材、571,571A〜571F,671…箱体、641A…外部導体、641B…内部導体、643…テーパー、A1〜A4,B1〜B4,C1〜C4…放射用ブロック。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を載置する載置台と、この載置台を収容する処理容器と、放射用導波管にスロットが形成された複数の導波管スロットアンテナが前記放射用導波管の軸線方向に直交する幅方向に整列配置されるとともに前記載置台に対向配置されたアンテナアレーと、前記放射用導波管の一端に接続されそれぞれにマイクロ波を分配する分配器とを備えたプラズマ処理装置において、
前記分配器は、
前記導波管スロットアンテナの前記幅方向に延びる給電用導波管と、
この給電用導波管の壁面に形成された前記放射用導波管と前記給電用導波管とを連通する開口と
を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたプラズマ処理装置において、
前記給電用導波管の前記載置台に対向する壁面にスロットが形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたプラズマ処理装置において、
前記分配器は、前記開口に対向する前記給電用導波管の壁面から前記開口に向かって突出し、前記給電用導波管を伝播するマイクロ波を前記放射用導波管へ誘導する誘導壁を更に有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載されたプラズマ処理装置において、
前記アンテナアレーは、前記給電用導波管の両側にそれぞれに設けられていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載されたプラズマ処理装置において、
前記放射用導波管の管内のみに配置された誘電体からなる遅波材を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたプラズマ処理装置において、
前記遅波材は、前記放射用導波管の前記一端の側の端部に勾配を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載されたプラズマ処理装置において、
前記放射用導波管の幅は、前記給電用導波管の管内波長の略1/2であり、
前記開口は、前記給電用導波管の管内波長と略同一の間隔で配置され、それぞれ隣り合う2つの放射用導波管を前記給電用導波管に連通させることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載されたプラズマ処理装置において、
互いに略平行に配置された2枚の導体板と、
前記2枚の導体板の間に延在し、前記2枚の導体板によって形成された空間を仕切る導体からなる仕切り部材とを備え、
前記2枚の導体板と前記仕切り部材とから前記放射用導波管および前記給電用導波管が形成されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載されたプラズマ処理装置において、
マイクロ波を発生するマイクロ波発振器と、
このマイクロ波発振器から出力される前記マイクロ波を前記給電用導波管に導くマイクロ波導波管と、
このマイクロ波導波管に設けられ、電源側と負荷側とのインピーダンスを整合させるインピーダンス整合器と
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載されたプラズマ処理装置において、
前記インピーダンス整合器は、前記給電用導波管と前記マイクロ波導波管との接続部付近に設けられ、前記マイクロ波導波管の管路を狭めるアイリスからなることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載されたプラズマ処理装置において、
前記アンテナアレーと前記分配器とこの分配器に前記マイクロ波を供給するマイクロ波発振器とを含むマイクロ波供給装置を複数有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載されたプラズマ処理装置において、
2つのマイクロ波供給装置は、それぞれが有する放射用導波管の他端が対向するとともに、それぞれが有する前記放射用導波管に形成された前記スロットが同一直線上に並ぶように配置されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載されたプラズマ処理装置において、
複数のアンテナアレーは、前記処理容器の外部に配置され、
前記処理容器の前記アンテナアレー側端部を閉塞する誘電体板と、
隣り合う複数のアンテナアレーの境界に対向するように延在し前記誘電体板を支える補強部材と
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載されたプラズマ処理装置において、
前記放射用導波管に形成される前記スロットの数は、その放射用導波管が前記アンテナアレー内で配置される位置により異なることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項15】
請求項14に記載されたプラズマ処理装置において、
前記スロットは、すべての放射用導波管を組み合わせることにより形成される前記載置台と対向する面の中央部分を除く領域のみに形成されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載されたプラズマ処理装置において、
前記分配器は、前記スロットの数が少ない放射用導波管ほど小さい電力を供給することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項17】
請求項1に記載されたプラズマ処理装置において、
前記導波管スロットアンテナは、前記スロットより前記処理容器の内部に円偏波を供給することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項18】
請求項2に記載されたプラズマ処理装置において、
前記導波管スロットアンテナおよび前記分配器は、前記スロットより前記処理容器の内部に円偏波を供給することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項19】
放射用導波管にスロットが形成された複数の導波管スロットアンテナが前記放射用導波管の軸線方向に直交する幅方向に整列配置されたアンテナアレーを用いて処理容器内にマイクロ波を供給し、前記処理容器内に供給された前記マイクロ波によって生成されたプラズマを利用して前記処理容器内に収容された載置台上の被処理体を処理するプラズマ処理方法において、
分配器を構成する給電用導波管にマイクロ波を供給し、前記給電用導波管の側壁に複数形成された開口を介して前記放射用導波管のそれぞれに前記マイクロ波を供給し、前記放射用導波管に形成された前記スロットを介して前記マイクロ波を前記処理容器内に供給することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項20】
請求項19項に記載されたプラズマ処理方法において、
前記放射用導波管の管内のみに誘電体からなる遅波材を配置し、前記放射用導波管に複数形成されるスロットの間隔を短くすることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載されたプラズマ処理方法において、
2枚の導体板を互いに略平行に配置し、前記2枚の導体板によって形成された空間を前記2枚の導体板の間に延在する導体からなる仕切り部材で仕切り、前記2枚の導体板と前記仕切り部材とから前記放射用導波管および前記給電用導波管を形成することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか1項に記載されたプラズマ処理方法において、
前記アンテナアレーと前記分配器とこの分配器に前記マイクロ波を供給するマイクロ波発振器とを含むマイクロ波供給装置を複数用いることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか1項に記載されたプラズマ処理方法において、
すべての放射用導波管を組み合わせることにより形成される前記載置台と対向する面の中央部分を除く領域のみに前記スロットを形成することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれか1項に記載されたプラズマ処理方法において、
前記アンテナアレーを前記処理容器の外部に配置し、前記処理容器の前記アンテナアレー側端部を誘電体板で閉塞し、この誘電体板に前記アンテナアレーを接触させた状態で前記アンテナアレーの温度を制御することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項25】
請求項19〜24のいずれか1項に記載されたプラズマ処理方法を用いて、前記被処理体にエッチング、アッシングおよびCVDのうちの少なくとも一つの処理を行うことを特徴とするフラットパネルディスプレイ装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−40609(P2006−40609A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215564(P2004−215564)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000166801)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】