プラズマ処理装置
【課題】大気圧・窒素中の放電が容易で、長時間のストリーマ放電に耐え、広範囲で均一な処理ができ、対象物に低ダメージの処理ができ、処理時間が短縮されたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】一辺に刃部を設けた複数の板状のアノード埋込ブレード11l-1〜11l-6を、互いの主面を対向させて並列配置した分割型アノード電極と、アノード埋込ブレード11l-1〜11l-6のそれぞれの刃部に対向して配置されたカソードとを備える。アノード埋込ブレードのは、板状のアノード誘電体と、このアノード誘電体の内部に埋め込まれたアノードメタルからなる。複数のアノード埋込ブレードは、長手方向の両端部において、スペーサブロック711〜716,731〜736,721〜726,741〜746を挟む。
【解決手段】一辺に刃部を設けた複数の板状のアノード埋込ブレード11l-1〜11l-6を、互いの主面を対向させて並列配置した分割型アノード電極と、アノード埋込ブレード11l-1〜11l-6のそれぞれの刃部に対向して配置されたカソードとを備える。アノード埋込ブレードのは、板状のアノード誘電体と、このアノード誘電体の内部に埋め込まれたアノードメタルからなる。複数のアノード埋込ブレードは、長手方向の両端部において、スペーサブロック711〜716,731〜736,721〜726,741〜746を挟む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置に係り、特に非熱平衡低温プラズマによるプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマ処理のリアクタ(以下において「プラズマ処理リアクタ」と言う。)として、平板状の陽極と平板状の陰極とを互いに平行に配置した平行平板構造が知られている(特許文献1参照。)。一般には、陽極及び陰極は、それぞれ誘電体の平板に埋め込まれている。そして、2枚の誘電体に埋め込まれた陽極と陰極との間で放電させる。平行平板構造の場合、放電空間の電界は、約5kV/mmに設定されるのが一般的である。
【0003】
このような平行平板構造のプラズマ処理リアクタは、アーク放電に強く、長時間のストリーマ放電に耐える利点を有する。特許文献1は、窒素ガス中に発生したプラズマで対象物を処理することにより、対象物の表面を改質する技術を開示している。
【特許文献1】特開2005−251444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、平行平板構造のプラズマ処理リアクタは、大気圧での放電が困難である欠点を有する。又、表1に示すように、窒素分子の解離エネルギが他のガス分子に比して大きく、平行平板構造のプラズマ処理リアクタでは窒素ガスを放電させるのが困難であり、たとえ放電させても、安定なプラズマ生成が難しかった。特許文献1は、プラズマを発生させる際に、アーク放電を引き起こさないようにすべきことが言及されている。
【表1】
【0005】
平行平板構造のプラズマ処理リアクタの場合、プラズマ放電ギャップを広げるには高真空又は希ガスを混合して放電する必要がある。
【0006】
又、平行平板構造のプラズマ処理リアクタの場合、その構造上、陽極と陰極との間の容量が大きく、陽極と陰極との間にパルス幅の長いパルスを印加する必要がある。陽極と陰極との間にパルス幅の長いパルスを印加すれば、対象物にもダメージが起こる。平行平板構造においては、陽極と陰極とをそれぞれ埋め込んだ誘電体全体に充電させる必要があるので、均一なプラズマ放電を実現するためには、必要なエネルギが大きくなる欠点もある。又、これにより、平行平板構造のプラズマ処理リアクタの場合は、熱損失が大きい問題がある。
【0007】
上記問題点を鑑み、本発明によれば、大気圧・窒素中の放電が容易で、長時間のストリーマ放電に耐え、広範囲で均一な処理ができ、対象物に低ダメージの処理ができ、しかも処理時間が短縮されたプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、(イ)長手方向の一辺にそれぞれ刃部を設けた複数の板状のアノード埋込ブレードを、互いの主面を対向させて並列配置した分割型アノード電極と、(ロ)アノード埋込ブレードのそれぞれの刃部に対向して配置されたカソードとを備えるプラズマ処理装置であることを要旨とする。このプラズマ処理装置において、分割型アノード電極とカソード間に処理ガスを導入して、分割型アノード電極とカソード間に少なくとも形成されるプラズマ処理空間内にプラズマを生成する。そして、アノード埋込ブレードのそれぞれは、板状のアノード誘電体と、このアノード誘電体の内部に埋め込まれたアノードメタルからなり、複数のアノード埋込ブレードは、それぞれの長手方向の両端部において、互いの主面間に絶縁性材料からなるスペーサブロックを挟んで、複数のアノード埋込ブレード間の距離を調整したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大気圧・窒素中の放電が容易で、長時間のストリーマ放電に耐え、広範囲で均一な処理ができ、対象物に低ダメージの処理ができ、しかも処理時間が短縮されたプラズマ処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第4の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
以下に示す第1〜第4の実施の形態に例示した発明に到達するまでに、本発明者は、複数の金属線(裸線)を並列配置した分割型アノード電極と、1枚の誘電体埋込陰極からなるプラズマ処理リアクタを検討した。このプラズマ処理リアクタの放電空間の電界は、約2kV/mmであり、平行平板構造の約5kV/mmよりも低減できる。金属線を並列配置した分割型アノード電極を用いれば、大気圧において、窒素中の放電が容易であり、プラズマ放電ギャップも広いことが確認できた。又、分割型アノード電極にすることにより、陽極と陰極との間の容量が低減され、陽極と陰極との間にパルス幅の短いパルスが印加できることになったので、対象物に低ダメージの処理ができることが確認できた。
【0012】
しかしながら、このように検討した分割型アノード電極は、裸線状態の複数の金属線を並列配置した構造であるため、アーク放電すると分割型アノード電極に用いる金属線が劣化する問題が判明した。又、ストリーマ放電を長時間続けた場合にも分割型アノード電極に用いる金属線が劣化する問題が判明した。特に、酸素混合雰囲気では、分割型アノード電極に用いる金属線の金属劣化が著しく進むことが判明した。
【0013】
このため、以下に示す第1〜第4の実施の形態に例示したような、複数の板状(ブレード状)の誘電体中にアノードメタルを埋め込んだアノード埋込ブレードを並列配置した分割型アノード電極を実現したものである。更に、第2の実施の形態では、複数の板状(ブレード状)の誘電体中にカソードメタルを埋め込んだカソード埋込ブレードを並列配置した分割型カソード電極についても述べる。
【0014】
なお、以下に示す第1〜第4の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ処理リアクタは、箱形のケース22とケース22の下方に位置する底板23とで、バッチ式の反応容器(チャンバ)を構成している。ケース22の上部には、処理ガスを導入する給気配管27が接続されている。一方、ケース22の下方の底板23の近傍にはスリット状の開口部(隙間)を備え、上面の給気配管27から処理ガスが給気され、下面の隙間から処理ガスが排気することができるようになっており、プラズマ処理リアクタの処理圧力は大気圧である。
【0016】
反応容器(チャンバ)を構成している底板23の上には、カソード(24,25)が設けられている。このカソード(24,25)は、カソードメタル24と、カソードメタル24に接してカソードメタル24の上に設けられたカソード誘電体25からなる。カソード誘電体25の上には、処理対象物(サンプル)30が搭載される。プラズマ処理リアクタは、前面に設けられたドアが開かれた状態においては、内部への処理対象物(サンプル)30の収容及び内部からの処理対象物(サンプル)30の取り出しが可能な状態となり、ドアが閉じられた状態においては、内部は、底板23の近傍のスリット状の開口部を除き、ほぼ密閉された状態となる。
【0017】
図1に示すように、プラズマ処理リアクタの内部の上部には、処理ガスの整流板21が水平に設置されている。整流板21には、複数の細管からなる貫通孔がマトリクス状に配置されている。プラズマ処理リアクタでは、処理ガスのタンク(図示省略)から給気配管27を介してケース22の上部に供給された処理ガスが、整流板21を経由してプラズマ処理リアクタの内部へ均一なフローとしてシャワー状に給気される。シャワー状に給気された処理ガスは、プラズマ処理リアクタの内部と外部の圧力差によってプラズマ処理リアクタの内部からスリット状の開口部(隙間)を経由して、プラズマ処理リアクタの外部へ排気される。処理ガスは、プラズマ処理リアクタの処理の内容に応じて、適宜選択可能である。表1に示したように、窒素(N2)分子の解離エネルギが他のガス分子に比して大きく、窒素(N2)プラズマは、これまで安定なプラズマ生成が難しかったが、第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置においては、処理ガスとして高純度窒素ガスを使用することが可能である。但し、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、処理対象物(サンプル)30の殺菌、滅菌等の目的のためには、塩素(Cl2)若しくは塩素を含む化合物のガス、より一般的にはこのような塩化物に限られず、フッ化物、臭化物、沃化物等の他のハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスや希ガス等の混合ガス等他のガスでも構わない。この他のガスには、その表面処理の目的に応じて、酸素(O2)若しくは酸素を含む化合物のガス等でも良い。処理ガスの純度や露点等は、表面処理の目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0018】
プラズマ処理リアクタの内部において、整流板21の下方には、それぞれ長手方向の一辺(一方の長辺)に刃部を設けた複数の板状(ブレード状)のアノード埋込ブレードを互いの主面を対向させて並列配置した分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)が配置されている。図1では、簡略化のため第1のアノード埋込ブレード(9l-1,;11l-1)、第2のアノード埋込ブレード(9l-2,;11l-2)及び第3のアノード埋込ブレード(9l-3,;11l-3)の3枚の板状のアノード埋込ブレードが並列に等間隔で配置された構造が示されているが、例示であり、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置のアノード埋込ブレードの枚数が3枚に限定される理由はなく、4枚以上等、適宜増やすことが可能である(例えば、図4においては、6枚のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6が示されている。)。アノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3のそれぞれの刃部は、その先端がカソードに対向するように配置される。
【0019】
図2及び図3に詳細に示すように、第1のアノード埋込ブレード(9l-1,;11l-1)は板状の第1のアノード誘電体11l-1と、第1のアノード誘電体11l-1の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第1のアノードメタル9l-1から構成されている。第2のアノード埋込ブレード(9l-2,;11l-2)は板状の第2のアノード誘電体11l-2と、第2のアノード誘電体11l-2の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第2のアノードメタル9l-2から構成されている。第3のアノード埋込ブレード(9l-3,;11l-3)は板状の第3のアノード誘電体11l-3と、第3のアノード誘電体11l-3の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第3のアノードメタル9l-3から構成されている。図1、図2及び図3(a)から分かるように、第1のアノード誘電体11l-と、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3は、それぞれの刃部が両刃のくさび型の断面形状をなしている。そして、第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3は、それぞれ、第1のアノード誘電体11l-1、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3の厚さ方向における中央部に埋め込まれている。更に、第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3は、それぞれ、第1のアノード誘電体11l-1、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3の刃部の側に偏在(局在)して埋め込まれている。
【0020】
プラズマ処理リアクタの内部のカソード(24,25)と分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)に電気パルスを印加してカソード(24,25)と分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)の間のプラズマ放電ギャップにプラズマを発生させるために、プラズマ処理リアクタの外部にはパルス電源26が配置されている。パルス電源26と分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)とは陽極配線31Aで接続され、パルス電源26とカソード(24,25)とは陰極配線31Kで接続されている。
【0021】
カソード(24,25)と分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)の間に発生したプラズマに処理対象物(サンプル)30を曝すことにより、処理対象物(サンプル)30の表面が処理される。
【0022】
アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の材質には、プラズマ耐久性に優れた種々の耐熱金属(高融点金属)や耐熱合金が使用可能である。耐熱金属(高融点金属)としては、タングステン(W),モリブデン(Mo),チタン(Ti),クロム(Cr),ジルコニウム(Zr),白金(Pt),パラジウム(Pd),ハフニウム(Hf),タンタル(Ta),ルテニウム(Ru)等が代表的である。耐熱合金としてはニッケル・クロム(Ni−Cr)合金が代表的であるが、Ni−Crをベースとして、更に所定量の鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、シリコン(Si)等の少なくともいずれかが含まれる耐熱合金でも良い。更に、W,Mo,Mn,Ti,Cr,Zr,Fe,Pt,Pd,銀(Ag),銅(Cu)等から選ばれる2種類以上の金属からなる周知の耐熱合金等が使用可能である。また、低温焼成でブレードを製造する場合は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等も使用可能である。
【0023】
アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さは、例えば約5〜800μm程度、更には約6〜200μm程度の範囲において、なるべく薄い値に選ぶのが好ましい。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さが薄い方が電界が集中するので、放電が容易になり、且つ放電の安定性や一様性が得られるからである。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さの下限は、現実には、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の製造技術に依存する。このため、工業的な見地からは、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さは、8〜50μm程度、更には8〜20μmの範囲の厚さがより好ましい。
【0024】
アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さ、即ち図1の紙面に垂直方向に測った長さは、例えば200mm〜500mm程度に設定できるが、これは、基本的にはプラズマ処理するサンプルの大きさにより決めれば良い。したがって、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さを500mm以上にしても構わない。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さが長くなった場合は、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さをそれに比例して薄くすれば、アノードカソード間の容量の増大が防げる。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の高さ、即ち図1に示した断面図において、上下方向に測った長さは、例えば10mm〜50mm程度に設定できるが、これは、特に制限はない。但しあまり高さを大きくするのは、プラズマ処理リアクタの大きさが大きくなるので好ましくない。図1〜図3に示すような、第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3が、それぞれ、第1のアノード誘電体11l-1、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3のカソードに近い側に偏在して埋め込まれている構造であれば、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の高さを10mm〜35mm程度に設定するのがより現実的であろう。
【0025】
板状(ブレード状)のアノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の材質には、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。有機系の樹脂材料としては、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等が、使用可能である。無機系の基板材料として一般的なものはセラミック又はガラスが用いられる。セラミック基板の素材としてはアルミナ(Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ベリリア(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化珪素(SiC)、コーディエライト(Mg2Al3(AlSi5O18))、マグネシア(MgO)、スピネル(MgAl2O4)、シリカ(SiO2)等が使用可能である。典型的には、板状のアノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の厚さはアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さにも依存するが、例えば約0.5〜2mm程度、好ましくは約0.8〜1.5mm程度の範囲においてアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さよりも厚い値に選べば良い。具体的には、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さが9〜150μm程度であれば、アノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の厚さは、0.9〜1.2mm程度の値に選ぶことが可能である。
【0026】
板状のアノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の長さ、即ち図1の紙面に垂直方向に測った長さは、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3が埋め込める長さであれば良く、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さが、例えば200mm〜500mm程度であれば、アノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の長さは、例えば220mm〜520mm程度に設定できる。同様に、アノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の高さ、即ち図1に示した断面図において、上下方向に測った長さは、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3が埋め込める高さであれば良い。図1〜図3に示すような、第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3が、それぞれ、第1のアノード誘電体11l-1、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3のカソードに近い側に偏在して埋め込まれている構造で、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の高さが10mm〜35mm程度であれば、アノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の高さは、例えば、25mm〜75mm程度に設定すれば良い。
【0027】
プラズマ放電空間の大きさは、処理対象物(サンプル)30に応じて適宜設計すれば良い事項である。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さ、即ち図1の紙面に垂直方向に測った長さにより、図1に示したプラズマ処理リアクタの放電空間の奥行きが決まる。図1では、第1のアノード埋込ブレード(9l-1,;11l-1)、 第2のアノード埋込ブレード(9l-2,;11l-2)及び第3のアノード埋込ブレード(9l-3,;11l-3)の3枚の板状のアノード埋込ブレードが並列に等間隔で配置された構造が示されているが、板状のアノード埋込ブレードの配列のピッチ、及び配列の枚数により、図1の紙面の左右方向に測ったプラズマ処理リアクタの放電空間の幅が決まる。典型的な例では、アノード埋込ブレードの配列のピッチは5mm〜50mm程度、好ましくは、10mm〜40mm程度に選べば良い。プラズマ放電ギャップの大きさも処理対象物(サンプル)30の大きさやプラズマ処理の内容に応じて設計すれば良いが、例えば、前後方向に300mm、左右方向に300mmの拡がりを有するプラズマ放電空間であれば、3mm〜40mm程度のプラズマ放電ギャップが設定可能である。
【0028】
図4〜図10は、矩形の枠状のブレードホルダ(51,52,55,56)を用いて、第1のアノード埋込ブレード(9l-1,;11l-1)、第2のアノード埋込ブレード(9l-2,;11l-2)、第3のアノード埋込ブレード(9l-3,;11l-3)、第4のアノード埋込ブレード(9l-4,;11l-4)、第5のアノード埋込ブレード(9l-5,;11l-5)及び第6のアノード埋込ブレード(9l-6,;11l-6)を固定した状態を、それぞれのアノード埋込ブレードの刃部の側を上にして示す。図5に示すように、ブレードホルダ(51,52,55,56)は、互いに平行に配置された第1横材51及び第2横材52と、この第1横材51及び第2横材52にそれぞれ直交する第1縦材56及び第2縦材55とで井桁状に構成されている(なお、どちらを「横材」と呼び、どちらを「縦材」と呼ぶかは、単なる定義の問題であり、90度回転し、符合51,52を縦材と呼び、符合55,56を横材と呼んでも構わない。但し、本明細書では、符合51,52を横材と呼び、符合55,56を縦材として統一する。)。図4に示すように、第1横材51と第1縦材56との接合部の外側の角には、第1電極端子59aが設けられ、第2横材52と第1縦材56との接合部の外側の角には、第2電極端子59bが設けられている。第1横材51、第2横材52、第1縦材56、第2縦材55、第1電極端子59a及び第2電極端子59bを構成する材料は、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。即ち、有機系の樹脂材料としては、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等が、無機系の基板材料として一般的なものはセラミック又はガラスを用いることができる。セラミック基板の素材としてはAl2O3、3Al2O3・2SiO2、BeO、AlN、SiC、コーディエライト(Mg2Al3(AlSi5O18))、マグネシア(MgO)、スピネル(MgAl2O4)、シリカ(SiO2)等が耐圧の点から好ましい。
【0029】
図5に示すように、第2縦材55に沿って、オフセットブロック53a,第6補助スペーサブロック726,第6主スペーサブロック716,第5補助スペーサブロック725,第5主スペーサブロック715,第4補助スペーサブロック724,第4主スペーサブロック714,第3補助スペーサブロック723,第3主スペーサブロック713,第2補助スペーサブロック722,第2主スペーサブロック712,第1補助スペーサブロック721,第1主スペーサブロック711が順に並べられている。同様に、第1縦材56に沿って、オフセットブロック54a,第6補助スペーサブロック746,第6主スペーサブロック736,第5補助スペーサブロック745,第5主スペーサブロック735,第4補助スペーサブロック744,第4主スペーサブロック734,第3補助スペーサブロック743,第3主スペーサブロック733,第2補助スペーサブロック742,第2主スペーサブロック732,第1補助スペーサブロック741,第1主スペーサブロック731が順に並べられている。これらのオフセットブロック53a,第6補助スペーサブロック726,第6主スペーサブロック716,第5補助スペーサブロック725,第5主スペーサブロック715,第4補助スペーサブロック724,第4主スペーサブロック714,第3補助スペーサブロック723,第3主スペーサブロック713,第2補助スペーサブロック722,第2主スペーサブロック712,第1補助スペーサブロック721,第1主スペーサブロック711,オフセットブロック54a,第6補助スペーサブロック746,第6主スペーサブロック736,第5補助スペーサブロック745,第5主スペーサブロック735,第4補助スペーサブロック744,第4主スペーサブロック734,第3補助スペーサブロック743,第3主スペーサブロック733,第2補助スペーサブロック742,第2主スペーサブロック732,第1補助スペーサブロック741,第1主スペーサブロック731は、それぞれ底部にU溝を有するU字ブロックである(図7には、第(j+1)主スペーサブロック71j+1,第j補助スペーサブロック72j,第j主スペーサブロック71j,第(j−1)補助スペーサブロック72j-1,第(j−1)主スペーサブロック71j-1及び第(j−2)補助スペーサブロック72j-2の底部のU溝が示されている。)。主スペーサブロック711〜716,731〜736及び補助スペーサブロック721〜726,741〜746を構成する材料も、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。特に、Al2O3、3Al2O3・2SiO2、BeO、AlN、SiC、コーディエライト(Mg2Al3(AlSi5O18))、マグネシア(MgO)、スピネル(MgAl2O4)、シリカ(SiO2)等が耐圧の点から好ましい。
【0030】
図6に示すように、第2縦材55に接しかつ平行に桟プレート60が底板として設けられている。そして、この桟プレート60の上において、ガイドレール59が第2縦材55に平行に延伸している。桟プレート60とガイドレール59とは一体で構成してよく、更に桟プレート60と第2縦材55とを断面がL字型になるように接続し、一体として構成しても良い。即ち、桟プレート60、ガイドレール59及び第2縦材55とは一体で構成しても良い。図6に示すように、オフセットブロック53a,第6補助スペーサブロック726,第6主スペーサブロック716,第5補助スペーサブロック725,第5主スペーサブロック715,第4補助スペーサブロック724,第4主スペーサブロック714,第3補助スペーサブロック723,第3主スペーサブロック713,第2補助スペーサブロック722,第2主スペーサブロック712,第1補助スペーサブロック721,第1主スペーサブロック711のそれぞれは、ガイドレール59に底部のU溝を嵌合するように配列される。図示を省略しているが、第1縦材56に接しかつ平行に桟プレートが底板として設けられている(第1縦材56側においても、第2縦材55側と同様に、桟プレートとガイドレールとは一体で構成してよく、更に桟プレートと第1縦材56とを断面がL字型になるように接続し、一体として構成しても良い。即ち、桟プレート、ガイドレール及び第1縦材56とは一体で構成しても良い。)。そして、この図示を省略した桟プレートの上にガイドレールが第1縦材56に平行に延伸している。こうして、第1縦材56に沿って、オフセットブロック54a,第6補助スペーサブロック746,第6主スペーサブロック736,第5補助スペーサブロック745,第5主スペーサブロック735,第4補助スペーサブロック744,第4主スペーサブロック734,第3補助スペーサブロック743,第3主スペーサブロック733,第2補助スペーサブロック742,第2主スペーサブロック732,第1補助スペーサブロック741,第1主スペーサブロック731がのそれぞれが、ガイドレールに底部のU溝を嵌合するように配列される。
【0031】
図7は、第j補助スペーサブロック72jと第j主スペーサブロック71jとの間のギャップに第jアノード埋込ブレード11l-jの長手方向の一方の端部が装着され、第(j−1)補助スペーサブロック72j-1と第(j−1)主スペーサブロック71j-1との間のギャップに第(j−1)アノード埋込ブレード11l-j-1の長手方向の一方の端部が装着される様子を詳細に示す。図示を省略しているが、第jアノード埋込ブレード11l-jの長手方向の他方の端部は、第j補助スペーサブロック74jと第j主スペーサブロック73jとの間のギャップに装着され、第(j−1)アノード埋込ブレード11l-j-1の長手方向の他方の端部は、第(j−1)補助スペーサブロック74j-1と第(j−1)主スペーサブロック73j-1との間のギャップに装着される。図7には、第(j+1)主スペーサブロック71j+1,第j補助スペーサブロック72j,第j主スペーサブロック71j,第(j−1)補助スペーサブロック72j-1,第(j−1)主スペーサブロック71j-1及び第(j−2)補助スペーサブロック72j-2の底部のU溝と同様なU溝13l-jが、第jアノード埋込ブレード11l-jの長手方向の一方の端部に、U溝13l-j-1が第(j−1)アノード埋込ブレード11l-j-1の長手方向の一方の端部に設けられていることが示されているが、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6は、すべて同様なU溝を長手方向の一方の端部に有し、ガイドレール59にそれらのU溝が嵌合してアノード埋込ブレードの位置合わせをすることを可能にしている。又、主スペーサブロック71j+1,71j,71j-1,……及び補助スペーサブロック72j,72j-1,72j-2,……のそれぞれの厚さを変更することにより、互いに平行に配列される複数のアノード埋込ブレード11l-j,11l-j-1,……の相互の間隔を自由に変更可能である。
【0032】
図8は、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6装着前のブレードホルダを示し、第6補助スペーサブロック726と第6主スペーサブロック716との間にギャップ786が設けられ、第5補助スペーサブロック725と第5主スペーサブロック715との間にギャップ785が設けられ、第4補助スペーサブロック724と第4主スペーサブロック714との間にギャップ784が設けられ、第3補助スペーサブロック723と第3主スペーサブロック713との間にギャップ783が設けられ、第2補助スペーサブロック722と第2主スペーサブロック712との間にギャップ782が設けられ、第1補助スペーサブロック721と第1主スペーサブロック711との間にギャップ781が設けられている。同様に、第6補助スペーサブロック746と第6主スペーサブロック736との間にギャップ776が設けられ、第5補助スペーサブロック745と第5主スペーサブロック735との間にギャップ775が設けられ、第4補助スペーサブロック744と第4主スペーサブロック734との間にギャップ774が設けられ、第3補助スペーサブロック743と第3主スペーサブロック733との間にギャップ773が設けられ、第2補助スペーサブロック742と第2主スペーサブロック732との間にギャップ772が設けられ、第1補助スペーサブロック741と第1主スペーサブロック731との間にギャップ771が設けられていることが示されている。第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6は、これらのギャップ781,782,783,784,785,786及びギャップ771,772,773,774,775,776にそれぞれの長手方向の両端部を挿入して、第1横材51及び第2横材52に平行に、且つ等間隔で配列されている。
【0033】
図1に示した陽極配線31Aの一部は、図5及び図9に示すようにブレードホルダ(51,52,55,56)の表面に形成された第1及び第2の表面配線87,88で実現されている。第1の表面配線87は、第1電極端子59aから第1横材51を経由して、第1縦材56の内側の側壁に導かれ、第1縦材56の側壁を第1縦材56の長手方向に延伸する。そして、第1縦材56の側壁を介して、第1の表面配線87は偶数番の、即ち、第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード11l-2,11l-4,11l-6に電気的に接続される。一方、第2の表面配線88は、第2電極端子59bから第2横材52を経由して、第2縦材55の内側の側壁に導かれ、第2縦材55の側壁を第2縦材55の長手方向に延伸する(図6参照。)。そして、第2の表面配線88は、第2縦材55の側壁を介して、奇数番の、即ち、第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード11l-1,11l-3,11l-5に電気的に接続されている。図1に示したように、パルス電源26から延びる陽極配線31Aに第1電極端子59aにおいて第1の表面配線87を、第2電極端子59bにおいて第2の表面配線88を分岐接続すれば、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6を同一位相で駆動することができる。
【0034】
第1の表面配線87の第6のアノード埋込ブレード11l-6との接続部は第6補助スペーサブロック746と第6主スペーサブロック736とにより挟まれ、第1の表面配線87の第4のアノード埋込ブレード11l-4との接続部は第4補助スペーサブロック744と第4主スペーサブロック734とにより挟まれ、第1の表面配線87の第2のアノード埋込ブレード11l-2との接続部は第2補助スペーサブロック742と第2主スペーサブロック732とにより挟まれ、それぞれ放電空間に露出しないように構成されている。一方、第2の表面配線88の第5のアノード埋込ブレード11l-5との接続部は第5補助スペーサブロック725と第5主スペーサブロック715とにより挟まれ、第2の表面配線88の第3のアノード埋込ブレード11l-3との接続部は第3補助スペーサブロック723と第3主スペーサブロック713とにより挟まれ、第2の表面配線88の第1のアノード埋込ブレード11l-1との接続部は、第1補助スペーサブロック721と第1主スペーサブロック711とにより挟まれ、それぞれ放電空間に露出しないように構成されている。更に、図4及び図8に示すように、表面配線カバー61,62,63を第1及び第2の表面配線87,88の上に被覆することにより、第1及び第2の表面配線87,88が放電空間に露出しないように構成されている。
【0035】
第1及び第2の表面配線87,88としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属薄膜や導電性薄膜が好ましい。密着性が問題となる場合はクロム(Cr)/Cu/Crのような多層構造を第1及び第2の表面配線87,88として採用しても良い。第1及び第2の表面配線87,88は、無電界メッキ法、蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法、スプレー法、ドクターブレード法等の薄膜形成法で形成すれば良い。例えば、Agの導電性薄膜の場合は、感光性Agペーストを印刷、又はペーストコーター等で厚膜塗布した後、フォトリソグラフィーでパターニングしても良い。Cr/Cu/Crの導電性薄膜の場合は、スパッタリング法でCr/Cu/Crを真空中で連続的に堆積した後、フォトリソグラフィーとエッチングでパターニングする等、それぞれの導電性薄膜に適した周知の配線技術が採用可能である。更に、打ち抜き成形やエッチング等で所定の形状にパターニングされた金属テープ(導電性テープ)、例えばAl、Cu、Cu−Fe,Cu−Cr,Cu−ニッケル(Ni)−シリコン(Si),Cu−錫(Sn)等の銅合金、Ni−鉄(Fe)、Fe−Ni−コバルト(Co)等のニッケル・鉄合金、或いは銅とステンレスの複合材料等の導電性テープを第1及び第2の表面配線87,88に用いることが可能である。更に、これらの導電性テープにNiメッキやAuメッキ等を施したものなどから第1及び第2の表面配線87,88を構成しても良い。
【0036】
図7に示すように、第(j−1)のアノード埋込ブレード(9l-j-1,;11l-j-1)のアノード誘電体11l-j-1の長手方向の一方の端部の上部には、アノードメタル9l-j-1への電気的接続を可能にするように、アノード誘電体11l-j-1に矩形のコンタクトホール14l-j-1が開口され、アノードメタル9l-j-1の一部が露出している。このコンタクトホール14l-j-1に導電性バンプが埋め込まれ、導電性バンプを介してアノードメタル9l-j-1と第2の表面配線88とが接続される。具体的には、第(j−1)主スペーサブロック71j-1に、図7に示すように導電性ストリップ82j-1が設けられ、導電性バンプを介してアノードメタル9l-j-1と導電性ストリップ82j-1とが接続される。なお、導電性ストリップ82j-1,82j+1は、図7において主スペーサブロック71j-1,71j+1の側壁に凸部として設けられているが、ダマスカス配線(ダマシン配線)の技術を用い、主スペーサブロック71j-1,71j+1の側壁に設けたダマシン溝に埋め込むように形成しても良い。更に、主スペーサブロック71j-1,71j+1の側壁に設けたダマシン溝にCu等の金属を埋め込んだ後、Au等の金属を電界メッキにより選択的に導電性ストリップ82j-1,82j+1の上に形成し、導電性ストリップ82j-1,82j+1の厚みを増やして、主スペーサブロック71j-1,71j+1の側壁に凸部となるようにしても良い。そして、第(j−1)主スペーサブロック71j-1を第2縦材55に押しつけることにより、第2縦材55の側壁に設けられた第2の表面配線88と導電性ストリップ82j-1とが電気的に接続されるので、アノードメタル9l-j-1と第2の表面配線88とが接続される。第(j−1)のアノード埋込ブレード(9l-j-1,;11l-j-1)と対称構造をなして、第jのアノード埋込ブレード(9l-j,;11l-j)のアノード誘電体11l-jの長手方向の他方の端部の上部には、アノードメタル9l-jへの電気的接続を可能にするように、アノード誘電体11l-jに矩形のコンタクトホール14l-jが開口され、アノードメタル9l-jの一部が露出している。このコンタクトホール14l-jに導電性バンプが埋め込まれ、導電性バンプを介してアノードメタル9l-jと第1の表面配線87とが接続される(図5及び図9参照。)。図示を省略しているが、第j主スペーサブロック73jに、図7に示したのと同様に導電性ストリップが設けられ、導電性バンプを介してアノードメタル9l-jと導電性ストリップとが接続される。そして、第j主スペーサブロック73jを第1縦材56に押しつけることにより、第1縦材56の側壁に設けられた第1の表面配線87と導電性ストリップとが電気的に接続されるので、アノードメタル9l-jと第1の表面配線87とが接続される。導電性バンプとしては、半田ボール、金(Au)バンプ、銀(Ag)バンプ、銅(Cu)バンプ、ニッケル/金(Ni−Au)バンプ、或いはニッケル/金/インジウム(Ni−Au−In)バンプ等が使用可能である。半田ボールとしては、直径100μm乃至250μm、高さ50μm乃至200μmの錫(Sn):鉛(Pb)=6:4の共晶半田等が使用可能である。或いは、Sn:Pb=5:95の半田でも良い。
【0037】
なお、図10に示すように、第6補助スペーサブロック726と第6主スペーサブロック716との間にアノード埋込ブレード11l-6を挟んでボルト等の固定部材426で機械的に締め付け、第5補助スペーサブロック725と第5主スペーサブロック715との間にアノード埋込ブレード11l-5を挟んで固定部材425で締め付け、第4補助スペーサブロック724と第4主スペーサブロック714との間にアノード埋込ブレード11l-4を挟んで固定部材424で締め付け、第3補助スペーサブロック723と第3主スペーサブロック713との間にアノード埋込ブレード11l-3を挟んで固定部材423で締め付け、第2補助スペーサブロック722と第2主スペーサブロック712との間にアノード埋込ブレード11l-2を挟んで固定部材422で締め付け、第1補助スペーサブロック721と第1主スペーサブロック711との間にアノード埋込ブレード11l-1を挟んで固定部材421で締め付けて圧接構造にすれば、第2の表面配線88とアノードメタル間の電気的な接触抵抗が低減できるとともに、機械的強度や安定性が向上する。同様に、第6補助スペーサブロック746と第6主スペーサブロック736との間にアノード埋込ブレード11l-6を挟んで固定部材416で締め付け、第5補助スペーサブロック745と第5主スペーサブロック735との間にアノード埋込ブレード11l-5を挟んで固定部材415で締め付け、第4補助スペーサブロック744と第4主スペーサブロック734との間にアノード埋込ブレード11l-4を挟んで固定部材414で締め付け、第3補助スペーサブロック743と第3主スペーサブロック733との間にアノード埋込ブレード11l-3を挟んで固定部材413で締め付け、第2補助スペーサブロック742と第2主スペーサブロック732との間にアノード埋込ブレード11l-2を挟んで固定部材412で締め付け、第1補助スペーサブロック741と第1主スペーサブロック731との間にアノード埋込ブレード11l-1を挟んで固定部材411で締め付けて圧接構造にすれば、第1の表面配線87とアノードメタル間の電気的な接触抵抗が低減できるとともに、機械的強度や安定性が向上する。
【0038】
図11は、図1に示す第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3のいずれかを等価的な陽極81で表し、カソードメタル24を等価的な陰極82で表した場合において、等価陽極81及び等価陰極82間への電気パルスの印加によって引き起こされる放電の状態と電気パルスの電圧概略波形(無負荷時)とを模式的に示す図である。
【0039】
図11において、電気パルスの電圧概略波形は、電圧V(縦軸)の時間t(横軸)に対する変化を示すグラフによって表されている。図11に示すように、電気パルスのパルス幅Δtが概ね100nsに達すると、正イオンが等価陰極82に衝突する際に放出された2次電子が処理ガス分子を電離させて新たな正イオンを発生させるグロー放電が引き起こされる。一方、電気パルスの立ち上がり時の電圧Vの時間上昇率dV/dtが概ね30〜50kV/μsである場合、パルス幅Δtが概ね100nsに達すると、等価陽極81から等価陰極82へ向かうストリーマ83の成長が始まる。そして、パルス幅Δtが概ね100〜400nsである場合、ストリーマ83の成長は、等価陽極81と等価陰極82との間に短いストリーマ83が散点する初期段階で終了する。一方、パルス幅Δtが概ね500〜1000nsである場合、ストリーマ83が本格的に成長し、等価陽極81と等価陰極82との間に枝分かれした長いストリーマ83が存在する状態となる。本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置では、ストリーマ83の成長が進んで等価陽極81と等価陰極82とが導通してしまわないように、ストリーマ83の成長の初期段階で放電を停止するファインストリーマ放電を用いる。
【0040】
放電の均一性に優れるファインストリーマ放電を用いれば、表面処理を均一に実施することができるからである。更に、パルス幅Δtが概ね1000nsに達すると、局部的な電流集中がおき、最終的にアーク放電が引き起こされる。
【0041】
上述の説明で、パルス幅Δtや立ち上がり時の電圧Vの時間上昇率dV/dtの範囲について「概ね」としているのは、これらは、等価陽極81及び等価陰極82間の間隔、等価陽極81及び等価陰極82の構造ならびに窒素雰囲気の圧力等のプラズマ処理装置の具体的構成に依存して変化するためである。したがって、ファインストリーマ放電となっているか否かは、パルス幅Δtや立ち上がり時の電圧Vの時間上昇率dV/dtだけでなく、実際の放電を観察して判断すべきである。
【0042】
又、電気パルスの電圧概略波形について「無負荷時」としているのは、同じ条件でパルス電源を動作させても、等価陽極81及び等価陰極82間の間隔ならびに等価陽極81及び等価陰極82の構造等のプラズマ処理装置の具体的構成が変化すれば、等価陽極81及び等価陰極82間に実際に印加される電気パルスの電圧概略波形が異なってくるからである。
【0043】
パルス電源26は、アーク放電を引き起こさずにファインストリーマ放電を引き起こす電気パルスを、カソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間に繰り返し印加する。具体的には、パルス電源26は、パルス幅が半値幅で50〜300nsの電気パルスをカソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間に繰り返し印加する。パルス電源26がカソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間に印加する電気パルスの電圧波形及び電流波形の一例を図12に示す。図12には、電気パルスの電圧V2及び電流I2(縦軸)の時間(横軸)に対する変化が示されており、パルス幅は、半値幅で約100nsとなっている。
【0044】
パルス電源26には、静電誘導型サイリスタ(以下、「SIサイリスタ」と言う。)を用いた誘導エネルギ蓄積型電源回路(以下、「IES回路」と言う。)を、採用することが望ましい。IES回路は、SIサイリスタのクロージングスイッチ機能の他、オープニングスイッチング機能を用いてターンオフを行い、当該ターンオフによりSIサイリスタのゲート・アノード間に高圧を発生させている。なお、IES回路の詳細は、飯田克二、佐久間健:「誘導エネルギ蓄積型パルス電源」,第15回SIデバイスシンポジウム(2002)に記載されている。
【0045】
まず、図13を参照して、IES回路(パルス電源)13の構成について説明する。IES回路13は、低電圧直流電源131を備える。低電圧直流電源131の電圧Eは、IES回路13が発生させる電気パルスの電圧のピーク値より著しく低いことが許容される。例えば、後述するインダクタ133の両端に発生させる電圧VLのピーク値VLPが数kVに達しても、低電圧直流電源131の電圧Eは数10Vであることが許容される。電圧Eの下限は後述するSIサイリスタ134のラッチング電圧以上で決定される。IES回路13は、低電圧直流電源131を電気エネルギ源として利用可能であるので、小型・低コストに構築可能である。IES回路13は、低電圧直流電源131に並列接続されるコンデンサ132を備える。コンデンサ132は、低電圧直流電源131のインピーダンスを見かけ上低下させることにより低電圧直流電源131の放電能力を強化する。
【0046】
更に、IES回路13は、インダクタ133、SIサイリスタ134、MOSFET135、ゲート駆動回路136及びダイオード137を備える。IES回路13では、低電圧直流電源131の正極とインダクタ133の一端とが接続され、インダクタ133の他端とSIサイリスタ134のアノードとが接続され、SIサイリスタ134のカソードとFET135のドレインとが接続され、FET135のソースと低電圧直流電源131の負極とが接続されている。又、IES回路13では、SIサイリスタ134のゲートとダイオード137のアノードとが接続され、ダイオード137のカソードとインダクタ133の一端(低電圧直流電源131の正極)とが接続される。FET135のゲート及びソースには、ゲート駆動回路136が接続される。
【0047】
SIサイリスタ134は、ゲート信号に応答して、ターンオン及びターンオフが可能である。FET135は、ゲート駆動回路136から与えられるゲート信号Vcに応答してドレイン・ソース間の導通状態が変化するスイッチング素子である。FET135のオン電圧又はオン抵抗は低いことが望ましい。又、FET135の耐圧は低電圧直流電源131の電圧Eより高いことを要する。ダイオード137は、SIサイリスタ134のゲートに正バイアスを与えた場合に流れる電流を阻止するため、即ち、SIサイリスタ134のゲートに正バイアスを与えた場合にSIサイリスタ134が電流駆動とならないようにするために設けられる。インダクタ133は、自己インダクタンスを有する誘導性素子として機能しており、その両端には、負荷139が並列接続される。負荷139は、図1のカソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間が対応する。なお、昇圧トランスの1次側をインダクタ133として用いて、昇圧トランスの2次側の両端に負荷139を接続すれば、電圧のピーク値がより高い電気パルスを得ることができる。
【0048】
続いて、図14を参照して、IES回路13の動作について説明する。図14は、上から順に、(a)FET135に与えられるゲート信号Vcの時間(横軸)に対する変化、(b)SIサイリスタ134の導通状態の時間(横軸)に対する変化、(c)インダクタ133に流れる電流ILの時間(横軸)に対する変化、(d)インダクタ133の両端に発生する電圧VLの時間(横軸)に対する変化、(e)SIサイリスタ134のアノード・ゲート間の電圧VAG(縦軸)の時間(横軸)に対する変化を示している。
【0049】
(イ)まず、図14(a)に示すように、時刻t0にゲート信号VcがOFFからONに切り替わると、FET135のドレイン・ソース間は導通状態となる。これにより、SIサイリスタ134のゲートがアノードに対して正バイアスされるので、図14(b)に示すように、SIサイリスタ134のアノード・カソード(A−K)間は導通状態となり、図14(c)に示すように、電流ILが増加し始める。
【0050】
(ロ)電流ILがピーク値ILPに達するあたりの時刻t1に、図14(a)に示すように、ゲート信号VcがONからOFFに切り替わると、FET135のドレイン・ソース間が非導通状態となり、図14(b)に示すように、SIサイリスタ134のアノード・ゲート(A−G)間が導通状態となる。これにより、図14(b)に示すように、時刻t2から時刻t3にかけて、SIサイリスタ134における空乏層の拡大に同期して、図14(c)に示すように、電流ILが減少するとともに、図14(d)に示す電圧VL及び図14(e)に示す電圧VAGが急激に上昇する。
【0051】
(ハ)そして、時刻t3において図14(d)に示す電圧VL及び図14(e)に示す電圧VAGがそれぞれピーク値VLp及びピーク値VAGpに達して、図14(c)に示すように、電流ILの向きが反転する。その後は、図14(b)に示すような時刻t3から時刻t4にかけて、SIサイリスタ134における空乏層の縮小に同期して、図14(c)に示すように、電流ILが増加するとともに、図14(d)に示す電圧VL及び図14(e)に示す電圧VAGが急激に低下する。
【0052】
(ニ)そして、時刻t4において、図14(b)に示すように、SIサイリスタ134が非導通状態となると、図14(c)に示すように、時刻t5に向かって電流ILが減少するとともに、図14(d)に示す電圧VL及び図14(e)に示す電圧VAGは0になる。
【0053】
図1、図2及び図3(a)においては、第1のアノード誘電体11l-1と、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3の断面形状は、それぞれカソードに対向する側の一辺(長辺)に設けられる刃部が両刃のくさび型をなす構造を例示したが、アノード誘電体の断面形状は刃部が両刃のくさび型をなす構造に限定されるものではなく、図15に示すような種々の断面形状であっても、分割型アノード電極を構成することにより、陽極と陰極との間の容量が低減できるので、陽極と陰極との間に短いパルス幅のパルスが印加でき、大気圧で且つ窒素中の放電が安定して一様に実現でき、処理対象物(サンプル)30に対し低ダメージの処理ができる利点を有する。更に、図15に示すような種々の断面形状であっても、分割型アノード電極の構造を採用することにより、陽極と陰極との間の容量が低減され、パルス周波数を高くでき、プラズマ処理の処理時間が短縮できるという有利な効果を奏するものである。又、当然ながら、アノードメタル9a〜9rが、それぞれアノード誘電体11a〜11rに埋め込まれているため、長時間のストリーマ放電に耐えるという第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタに特有な効果を奏することができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタにおいては、カソード(24,25)が、カソードメタル24と、カソードメタル24に接してカソードメタル24の上に設けられたカソード誘電体25からなる一体構造として説明したが、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ処理リアクタ図16及び図17に示すように、陰極側の構造を4つに分割して分割型カソード電極(25s-1,25s-2,25s-3,25s-4)を構成する。図16及び図17では、4枚のカソード埋込ブレードが並列に等間隔で配置された構造が示されているが、例示であり、図18では6枚のカソード埋込ブレードが並列に等間隔で配置されている。即ち、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置のカソード埋込ブレードの枚数は、仕様に応じて、任意に設計可能である。
【0055】
詳細な構造の図示は省略するが、図3に示したのと同様に、第1のカソード埋込ブレードは板状の第1のカソード誘電体25s-1と、第1のカソード誘電体25s-1の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第1のカソードメタルから構成されている。第2のカソード埋込ブレードは板状の第2のカソード誘電体25s-2と、第2のカソード誘電体25s-2の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第2のカソードメタルから構成されている。第3のカソード埋込ブレードは板状の第3のカソード誘電体25s-3と、第3のカソード誘電体25s-3の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第3のカソードメタルから構成されている。図16及び図17から分かるように、第1のカソード誘電体25s-1、第2のカソード誘電体25s-2、第3のカソード誘電体25s-3(更には第3のカソード誘電体25s-4)は、それぞれアノードに対向する側の一辺(長手方向の一辺)が刃部をなし、この刃部が、両刃のくさび型をなしている。そして、第1のカソードメタル、第2のカソードメタル、及び第3のカソードメタルは、それぞれ、第1のカソード誘電体25s-1、第2のカソード誘電体25s-2及び第3のカソード誘電体25s-3の厚さ方向における中央部に埋め込まれている。カソード誘電体を構成する材料は、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。
【0056】
図18は、矩形の枠状のブレードホルダ(84,85,86)を用いて、第1のカソード埋込ブレード25s-1、第2のカソード埋込ブレード25s-2、第3のカソード埋込ブレード25s-3、第4のカソード埋込ブレード25s-4、第5のカソード埋込ブレード25s-5及び第6のカソード埋込ブレード25s-6を固定した状態を、それぞれのカソード埋込ブレードの刃部を上にして示す(以下においては、特にカソードメタルを図示していないので、本来、カソード誘電体を示す図面の符合25s-1〜25s-6で、便宜的にカソード埋込ブレードを示す図面の符合25s-1〜25s-6とする。)。図18に示すように、ブレードホルダ(84,85,86)は、互いに平行に配置された第1横材84及び第2横材85と、この第1横材84及び第2横材85にそれぞれ直交する第1縦材86及び第2縦材とで井桁状に構成されている(「第2縦材」は表面配線カバー92の陰になり図示されていないが、図5の第2縦材55と同様な構成である。なお、どちらを「横材」と呼び、どちらを「縦材」と呼ぶかは、単なる定義の問題であり、90度回転し、符合84,85を縦材と呼んでも構わない。但し、本明細書では、符合84,85を横材と呼び、符合86を縦材として統一する。)。図4と同様に、第1横材84と第1縦材86との接合部の外側の角には、第1電極端子89aが設けられ、第2横材85と第1縦材86との接合部の外側の角には、第2電極端子89bが設けられている。第1横材84、第2横材85、第1縦材86、第2縦材、第1電極端子89a及び第2電極端子89bを構成する材料は、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。
【0057】
図16及び図17から分かるように、分割型アノード電極(11d-1,11d-2,11d-3,)と分割型カソード電極(25s-1,25s-2,25s-3,25s-4)との組み合わせは種々のトポロジーが採用可能である。そのため、図18に示すブレードホルダ(84,85,86)の配向は、例えば、図16に示したのと同様にカソード埋込ブレードの長手の方向と、アノード埋込ブレードの長手の方向とを共に平行にしても良く、図17に示すように、カソード埋込ブレードの長手の方向と、アノード埋込ブレードの長手の方向とが互いに直交するようにしても良い。図16では、4枚のカソード埋込ブレードの配列の中央部に、3枚のアノード埋込ブレードの刃部が配列配列されるように刃部の位置が1/2周期ずれて交互に配列されている。
【0058】
図18に示すように、第2縦材に沿って、オフセットブロック83a,第6補助スペーサブロック486,第6主スペーサブロック476,第5補助スペーサブロック485,第5主スペーサブロック475,第4補助スペーサブロック484,第4主スペーサブロック474,第3補助スペーサブロック483,第3主スペーサブロック473,第2補助スペーサブロック482,第2主スペーサブロック472,第1補助スペーサブロック481,第1主スペーサブロック471及びオフセットブロック83bが順に並べられている。同様に、第1縦材86に沿って、オフセットブロック,第6補助スペーサブロック,第6主スペーサブロック,第5補助スペーサブロック,第5主スペーサブロック,……,第1補助スペーサブロック,第1主スペーサブロック及びオフセットブロックが順に並べられているが、表面配線カバー91の陰になり図示されていない。これらのオフセットブロック83a,第6補助スペーサブロック486,第6主スペーサブロック476,第5補助スペーサブロック485,第5主スペーサブロック475,第4補助スペーサブロック484,第4主スペーサブロック474,第3補助スペーサブロック483,第3主スペーサブロック473,第2補助スペーサブロック482,第2主スペーサブロック472,第1補助スペーサブロック481,第1主スペーサブロック471等は、それぞれ底部にU溝を有するU字ブロックである。
【0059】
図6に示したのと同様に、第2縦材に接しかつ平行に桟プレートが底板として設けられている。そして、この桟プレートの上において、ガイドレールが第2縦材に平行に延伸している。図18に示すように、オフセットブロック83a,第6補助スペーサブロック486,第6主スペーサブロック476,第5補助スペーサブロック485,第5主スペーサブロック475,第4補助スペーサブロック484,第4主スペーサブロック474,第3補助スペーサブロック483,第3主スペーサブロック473,第2補助スペーサブロック482,第2主スペーサブロック472,第1補助スペーサブロック481,第1主スペーサブロック471及びオフセットブロック83bのそれぞれは、ガイドレールに底部のU溝を嵌合するように配列される。図示を省略しているが、第1縦材86側も同様な構造である。主スペーサブロック471〜476及び補助スペーサブロック481〜486を構成する材料も、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。特に、Al2O3、3Al2O3・2SiO2、BeO、AlN、SiC等が耐圧の点から好ましい。
【0060】
図1に示した陰極配線31Kは、図5及び図9に示したのと同様に、ブレードホルダ(84,85,86)の表面に形成された表面配線(図示省略)で実現されている。第1の表面配線は、第1電極端子89aから第1横材84を経由して、第1縦材86の内側の側壁に導かれ、第1縦材86の側壁を第1縦材86の長手方向に延伸する。そして、第1縦材86の側壁を介して、第1の表面配線は第2,第4及び第6のカソード埋込ブレード25s-2,25s-4,25s-6に電気的に接続される。一方、第2の表面配線は、第2電極端子89bから第2横材85を経由して、第2縦材の内側の側壁に導かれ、第2縦材の側壁を第2縦材の長手方向に延伸する。そして、第2の表面配線は、第2縦材の側壁を介して、第1,第3及び第5のカソード埋込ブレード25s-1,25s-3,25s-5に電気的に接続されている。
【0061】
第2の表面配線の第5のカソード埋込ブレード25s-5との接続部は第5補助スペーサブロック485と第5主スペーサブロック475とにより挟まれ、第2の表面配線の第3のカソード埋込ブレード25s-3との接続部は第3補助スペーサブロック483と第3主スペーサブロック473とにより挟まれ、第2の表面配線の第1のカソード埋込ブレード25s-1との接続部は、第1補助スペーサブロック481と第1主スペーサブロック471とにより挟まれ、それぞれ放電空間に露出しないように構成されている。第1の表面配線側も同様である。更に、図18に示すように、表面配線カバー91,92,93を表面配線の上に被覆することにより、表面配線が放電空間に露出しないように構成されている。表面配線としては、Au、Ag、Cu、Al等の金属薄膜や導電性薄膜が好ましい。密着性が問題となる場合はCr/Cu/Crのような多層構造を表面配線として採用しても良い。更に、例えばAl、Cu、Cu−Fe,Cu−Cr,Cu−Ni−Si,Cu−Sn等の銅合金、Ni−Fe、Fe−Ni−Co等のニッケル・鉄合金、或いは銅とステンレスの複合材料等の導電性テープを表面配線に用いることが可能である。更に、これらの導電性テープにNiメッキやAuメッキ等を施したものなどから表面配線を構成しても良い。
【0062】
図示を省略しているが、図7に示したのと同様に、カソード埋込ブレードのカソード誘電体の一方若しくは長手方向の他方の端部の上部には、カソードメタルへの電気的接続を可能にするように、カソード誘電体に矩形のコンタクトホールが開口され、カソードメタルの一部が露出している。このコンタクトホールに導電性バンプが埋め込まれ、導電性バンプを介してカソードメタルと表面配線とが接続される。
【0063】
なお、図10に示したのと同様に、第6補助スペーサブロック486と第6主スペーサブロック476との間にカソード埋込ブレード25s-6を挟んでボルト等の固定部材で機械的に締め付け、第5補助スペーサブロック485と第5主スペーサブロック475との間にカソード埋込ブレード25s-5を挟んで固定部材で締め付け、……、第1補助スペーサブロック481と第1主スペーサブロック471との間にカソード埋込ブレード25s-1を挟んで固定部材で締め付けて圧接構造にすれば、第2の表面配線とカソードメタル間の電気的な接触抵抗が低減できるとともに、機械的強度や安定性が向上する。第1の表面配線側も同様である。
【0064】
図16及び図17に示すように、分割型アノード電極(11d-1,11d-2,11d-3,)と分割型カソード電極(25s-1,25s-2,25s-3,25s-4)とを組み合わせることにより、図1等において示した平板状の1枚のカソード(24,25)と分割型アノード電極との組み合わせに比して更に、陽極と陰極との間の容量が低減できるので、陽極と陰極との間に更に短いパルス幅のパルスが印加でき、大気圧で且つ窒素中の放電が更に安定して一様に実現でき、処理対象物(サンプル)30に対し更に低ダメージの処理ができる利点を有する。
【0065】
更に、図16及び図17に示すように、分割型アノード電極(11d-1,11d-2,11d-3,)と分割型カソード電極(25s-1,25s-2,25s-3,25s-4)とを組み合わせることにより、図1等において示した平板状の1枚のカソード(24,25)と分割型アノード電極とを組み合わせる場合に比して、陽極と陰極との間の容量が更に低減されるので、更にパルス周波数を高くでき、プラズマ処理の処理時間が更に短縮できるという有利な効果を奏するものである。又、当然ながら、アノードメタルは、それぞれアノード誘電体に埋め込まれており、カソードメタルは、それぞれカソード誘電体に埋め込まれているため、長時間のストリーマ放電に耐えるという第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタに特有な効果も奏することができる。
【0066】
(第3の実施の形態)
図19は、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの内部構造を示す模式的な断面図である。図19に示すように、プラズマ処理リアクタは、図1と同様なバッチ式の反応容器となっており、上面の給気配管27から処理ガスを給気し、下面の排気配管28から処理ガスを排気することができるようになっている。プラズマ処理リアクタは、前面に設けられたドアが開かれた状態においては、内部への処理対象物(サンプル)30の収容及び内部からの処理対象物(サンプル)30の取り出しが可能な状態となり、ドアが閉じられた状態においては、内部が密閉された減圧状態を維持できるようになっている。
【0067】
図19に示すように、プラズマ処理リアクタの内部には、整流板21が水平に設置されている。整流板21には、複数の細管からなる貫通孔がマトリクス状に配置されている。それぞれのアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3には、パルス電源26が接続される。プラズマ処理リアクタでは、処理ガスのタンク(図示省略)から整流板21を経由してプラズマ処理リアクタの内部へ処理ガスが均一なフローとしてシャワー状に給気され、排気配管28に接続された排気ポンプ29によって、プラズマ処理リアクタの内部から排気配管28を経由して処理ガスが排気される。プラズマ処理リアクタの内部の圧力は圧力ゲージ(図示省略)によって測定することができる。図19では図示を省略しているが、詳細には圧力ゲージ及び排気コンダクタンスを調整するバリアブルコンダクタンスバルブ等を排気ポンプ29の上流側に設ければ良いことは、当業者に容易に理解できるであろう。例えば、圧力ゲージ及び流量を制御するマスフローコントローラを図19に示す給気配管27に設け、排気コンダクタンスを調整するバリアブルコンダクタンスバルブを図19に示す排気配管28に設けるようにしても良い。又、圧力ゲージを排気配管28側に設けても良い。
【0068】
本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタでは,反応容器の内部の気体圧力を、大気圧(101kPa)と等しいか80〜90kPa程度の大気圧よりも極く僅か低い値に下げるような条件でも安定した放電が可能であるが、排気ポンプ29によって反応容器の内部を10kPa〜50kPa(大気圧の1/10〜1/2)、より望ましくは、20kPa〜40kPaまで減圧することによって、カソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間の間隔を拡げ(典型的には、大気圧の場合の5倍以上)、立体的な処理対象物(サンプル)30に付着した毒素も不活化することができることも可能になる。このように減圧下でファインストリーマ放電を引き起こすことは、ラジカルの寿命を延ばし(典型的には、大気圧下の場合の10倍以上)、処理対象物(サンプル)30に付着した毒素を効率的に不活化することにも寄与している。
【0069】
図1に示した構造とは異なり、反応容器(チャンバ)を構成している底板23の上には、断熱材32が配置され、この断熱材32の上に、電気的に絶縁されたヒータ33が設けられている。カソード(24,25)を構成するカソードメタル24とは、電気的に絶縁されたヒータ33の上に配置され、ヒータ33によりカソードメタル24を加熱することが可能になっている。そして、カソードメタル24に接してカソードメタル24の上には、カソード誘電体25が配置され、カソード誘電体25の上には、処理対象物(サンプル)30が搭載される。処理対象物(サンプル)30は、ヒータ33により所望の温度まで加熱されることが可能である。
【0070】
例えば、2の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタにおいて、プラズマ放電ギャップを40mmとして、処理圧力45kPaとなるように、処理ガスとして窒素(N2)ガスを反応容器の内部に導入し、バイオロジカルインジケーターを使った滅菌処理をした結果、プラズマ処理時間8分で滅菌できた。この際、ヒータ33により75℃まで加熱したが、この加熱時間及び減圧時間を含めても12分で滅菌できた。一方、蒸気滅菌121℃のオートクレーブでは、加熱冷却時間を込みで60分以上必要であるので、滅菌装置として極めて有効であることが分かる。
【0071】
このように、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置によれば、処理対象物(サンプル)30の表面処理や滅菌が効率的に実現できることが分かる。第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置は、窒素中の放電が容易であり、しかも大気圧に近い圧力で安定した放電が可能である。
【0072】
更に、第1及び第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置と同様に、長時間のストリーマ放電に耐える利点や、広範囲で均一な処理ができる利点を有する。
【0073】
更に、第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置は、第1及び第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置と同様に、分割型アノード電極にすることにより、陽極と陰極との間の容量が低減され、陽極と陰極との間に短いパルス幅のパルスが印加できるので、処理対象物(サンプル)30に対し低ダメージの処理ができ、パルス周波数を高くできるため、処理時間が短縮できるという有利な効果を奏するものである。
【0074】
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態において、図1のパルス電源26から延びる陽極配線31Aに第1電極端子59aにおいて第1の表面配線87を、第2電極端子59bにおいて第2の表面配線88を分岐接続すれば、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6を同一位相で駆動することができると説明したが、互いに異なる位相のパルスを伝送する第1及び第2の陽極配線を用意し、第1電極端子59aにおいて第1の表面配線87を第1の陽極配線に、第2電極端子59bにおいて第2の表面配線88を第2の陽極配線にそれぞれ独立に接続すれば、偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5とを、異なる位相で駆動できる。
【0075】
本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置においては、パルス電源を2つ用意しても良く、1つのパルス電源から異なる位相のパルスを出力するようにしても良い。第1の実施の形態のように、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6を同一位相で駆動した場合、プラズマ放電空間には、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の配列の周期性に対応した電界強度の分布が存在する。即ち、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の先端の直下の電界強度は強いが、それぞれの第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の配列の中央部の電界強度が弱いという強度分布が存在する。このため、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の先端の直下には、プラズマストリーマが直接照射されるホットスポット(ゾーン)が生じ、それぞれの第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の配列の中央部の直下には、プラズマストリーマが弱い若しくは、直接照射されないコールドスポット(ゾーン)が生じるため、均一な表面処理ができない場合がある。
【0076】
第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置においては、図20に示すように、偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5とを異なる位相のパルスで駆動すれば、偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5とを、第1の実施の形態の場合より近づけても、電界分布の不均一が生じず、放電空間の全体を均一にプラズマ照射できる。図20(a)は、パルス電源26がアーク放電を引き起こさずにファインストリーマ放電を引き起こす第1の電気パルスを、カソードメタル24と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5との間に繰り返し印加するタイミング図を示す。図20(b)は、パルス電源26が第1の電気パルスとは同一繰り返し周波数で、位相が1/2周期異なり、アーク放電を引き起こさずにファインストリーマ放電を引き起こす第2の電気パルスを、カソードメタル24と偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6との間に繰り返し印加するタイミング図を示す。図20(a)及び(b)において、第1の電気パルス及び第2の電気パルスのパルス幅は、半値幅で50〜300ns程度である。
【0077】
偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5とにそれぞれ印加する第1の電気パルスと第2の電気パルスとの位相のずれは、1/2周期に限定されない。図21に示すように、1/2周期以下の短い位相のずれでも、同様に、奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5と偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6とを近づけても、電位分布の重畳が可能となるので、電界分布の不均一が生じず、放電空間の全体を均一にプラズマ照射できる。図21(a)は、カソードメタル24と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5との間に印加する第1の電気パルスの波形を示す。図21(b)では、図21(a)に示した第1の電気パルスとは同一繰り返し周波数で、位相が1/2周期より小さな位相ずれの第2の電気パルスを、カソードメタル24と偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6との間に繰り返し印加することを示している。図21(a)及び(b)においても、第1の電気パルス及び第2の電気パルスのパルス幅は、半値幅で50〜300ns程度である。図21のようなパルス制御をし、第1の電気パルスと第2の電気パルスとの位相のずれ(遅延時間)が、第1の電気パルスで生成されたプラズマの活性種の寿命よりも短いタイミングになるように選べば、放電電圧を図20の場合より低くしても放電できるため、処理対象物(サンプル)30に対して同じ効果を少ない電力で達成できる。
【0078】
パルス電源26には、2系列IES回路を採用することが、高速スイッチングを実現する上で望ましい。2系列IES回路は、2系列のSIサイリスタのクロージングスイッチ機能の他、オープニングスイッチング機能を用いて2系列のターンオフを行い、2系列のSIサイリスタのターンオフによりそれぞれのSIサイリスタのゲート・アノード間に高圧を発生させている。
【0079】
先ず、図22を参照して、2系列IES回路(パルス電源)の構成について説明する。2系列IES回路は、共通の低電圧直流電源V0を備える。低電圧直流電源V0の電圧Eは、2系列IES回路が発生させる第1及び第2の電気パルスの電圧のピーク値より著しく低いことが許容される。例えば、後述する第1のインダクタL1又は第2のインダクタL2の両端に発生させる電圧VLのピーク値VLPが数kVに達しても、低電圧直流電源V0の電圧Eは数10Vであることが許容される。電圧Eの下限は後述する第1のSIサイリスタ134-1又は第2のSIサイリスタ134-2のラッチング電圧以上で決定される-2系列IES回路は、共通の低電圧直流電源V0を電気エネルギ源として利用可能であるので、小型・低コストに構築可能である。図示を省略しているが-2系列IES回路は、共通の低電圧直流電源V0に並列接続されるコンデンサを備えるようにすることが好ましい。並列接続されるコンデンサは、低電圧直流電源V0のインピーダンスを見かけ上低下させることにより低電圧直流電源V0の放電能力を強化する。
【0080】
更に、図22に示すように-2系列IES回路は、ゲート駆動回路136と、第1の電気パルスを生成する第1のインダクタL1、第1のSIサイリスタ134-1、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1、第1のダイオード137-1、及び第2の電気パルスを生成する第2のインダクタL2、第2のSIサイリスタ134-2、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2、第2のダイオード137-2とを備える-2系列IES回路では、第1の電気パルスを生成するために、低電圧直流電源V0の正極と第1のインダクタL1の一端とが接続され、第1のインダクタL1の他端と第1のSIサイリスタ134-1のアノードとが接続され、第1のSIサイリスタ134-1のカソードと第1のMOS電界効果トランジスタ135-1のドレインとが接続され、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1のソースと低電圧直流電源V0の負極とが接続されている。又-2系列IES回路では、第1のSIサイリスタ134-1のゲートと第1のダイオード137-1のアノードとが接続され、第1のダイオード137-1のカソードと第1のインダクタL1の一端(低電圧直流電源V0の正極)とが接続される。第1のMOS電界効果トランジスタ135-1のゲート及びソースには、ゲート駆動回路136が接続される。
【0081】
同様に、第2の電気パルスを生成するために、図22に示すように、低電圧直流電源V0の正極と第2のインダクタL2の一端とが接続され、第2のインダクタL2の他端と第2のSIサイリスタ134-2のアノードとが接続され、第2のSIサイリスタ134-2のカソードと第2のMOS電界効果トランジスタ135-2のドレインとが接続され、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2のソースと低電圧直流電源V0の負極とが接続されている。又-2系列IES回路では、第2のSIサイリスタ134-2のゲートと第2のダイオード137-2のアノードとが接続され、第2のダイオード137-2のカソードと第2のインダクタL2の一端(低電圧直流電源V0の正極)とが接続される。第2のMOS電界効果トランジスタ135-2のゲート及びソースには、ゲート駆動回路136が接続される。
【0082】
第1の電気パルスを生成する第1のSIサイリスタ134-1は、ゲート信号に応答して、ターンオン及びターンオフが可能である。第1のMOS電界効果トランジスタ135-1は、ゲート駆動回路136から与えられる第1ゲート信号Vc1に応答してドレイン・ソース間の導通状態が変化するスイッチング素子である。第1のMOS電界効果トランジスタ135-1のオン電圧又はオン抵抗は低いことが望ましい。又、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1の耐圧は低電圧直流電源V0の電圧Eより高いことを要する。第1のダイオード137-1は、第1のSIサイリスタ134-1のゲートに正バイアスを与えた場合に流れる電流を阻止するため、即ち、第1のSIサイリスタ134-1のゲートに正バイアスを与えた場合に第1のSIサイリスタ134-1が電流駆動とならないようにするために設けられる。第1のインダクタL1は、自己インダクタンスを有する誘導性素子として機能しており、その両端には、第1の負荷139aが並列接続される。第1の負荷139aは、図1のカソードメタル24と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5との間が対応する。ゲート駆動回路136が第1ゲート信号Vc1を第1のMOS電界効果トランジスタ135-1に印加することにより、図23に示すように、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1がターンオンし、これにより、第1のSIサイリスタ134-1が導通状態となり、第1のインダクタL1に電流i1が流れ、これにより第1の負荷139aに出力1のパルスが発生する。なお、昇圧トランスの1次側を第1のインダクタL1として用いて、昇圧トランスの2次側の両端に第1の負荷139aを接続すれば、電圧のピーク値がより高い第1の電気パルスを得ることができる。
【0083】
同様に、第2の電気パルスを生成する第2のSIサイリスタ134-2は、ゲート信号に応答して、ターンオン及びターンオフが可能である。第2のMOS電界効果トランジスタ135-2は、ゲート駆動回路136から与えられる第2ゲート信号Vc2に応答してドレイン・ソース間の導通状態が変化するスイッチング素子である。ゲート駆動回路136は、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1に与える第1ゲート信号Vc1から一定の遅延時間を有して、第2ゲート信号Vc2を、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2に印加する。第2のMOS電界効果トランジスタ135-2のオン電圧又はオン抵抗は低いことが望ましい。又、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2の耐圧は低電圧直流電源V0の電圧Eより高いことを要する。第2のダイオード137-2は、第2のSIサイリスタ134-2のゲートに正バイアスを与えた場合に流れる電流を阻止するため、即ち、第2のSIサイリスタ134-2のゲートに正バイアスを与えた場合に第2のSIサイリスタ134-2が電流駆動とならないようにするために設けられる。第2のインダクタL2は、自己インダクタンスを有する誘導性素子として機能しており、その両端には、第2の負荷139bが並列接続される。第2の負荷139bは、図1のカソードメタル24と偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6との間が対応する。ゲート駆動回路136が、第2ゲート信号Vc2を第2のMOS電界効果トランジスタ135-2に印加することにより、図23に示すように、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2がターンオンし、これにより、第2のSIサイリスタ134-2が導通状態となり、第2のインダクタL2に電流i2が流れ、これにより第2の負荷139bに出力1のパルスから一定時間遅延した出力2のパルスが発生する。なお、昇圧トランスの1次側を第2のインダクタL2として用いて、昇圧トランスの2次側の両端に第2の負荷139bを接続すれば、電圧のピーク値がより高い第2の電気パルスを得ることができる。
【0084】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第4の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0085】
例えば、図4〜図10及び図18において、矩形の枠状のブレードホルダを例示したが、ブレードホルダの形状は矩形に限定されるものではない。例えば、6角形、8角形等の多角形、円形、楕円形等で枠を構成してブレードホルダとしても構わない。円形等で枠を構成したブレードホルダの場合、アノード埋込ブレードやカソード埋込ブレードが円等を平行に切る長手方向の長さが異なることは、幾何学的に明らかである。
【0086】
図7では、一枚のブレード形状のアノード誘電体11l-j-1の端部に、アノード誘電体11l-j-1に矩形のコンタクトホール14l-j-1を開口し、このコンタクトホール14l-j-1に導電性バンプを埋め込み、導電性バンプを介してアノードメタル9l-j-1と第2の表面配線88とが接続される構造を示したが例示に過ぎない。
【0087】
例えば、図24に示すように、第jのアノード埋込ブレードを、アノードブレード本体部11al-jとそのスペーサ部11bl-jとで分離した組み立て構造で構成しておき、アノードブレード本体部11al-jの長手方向の一方の端部の上部にアノードメタルへの電気的接続を可能にするように、アノードブレード本体部11al-jに矩形のコンタクトホールを開口し、アノードメタルの一部を露出させるような構造でも構わない。この場合は、このコンタクトホールを介して、金属等の導電性材料からなる取り出し電極99jをアノードメタルにロウ付けし、取り出し電極99jを介してアノードメタルと第2の表面配線88とが接続される。取り出し電極99jは、コバールや銅(Cu)等の導電率の高い金属等が好ましく、取り出し電極99jの表面は金(Au)等の導電率が高く、且つ耐食性の高い材料で鍍金しておくのが更に好ましい。
【0088】
図25では明示していないが、第j主スペーサブロック71jに、図7に示したのと同様に導電性ストリップ等の表面配線パターンを設けておき、取り出し電極99jを介してアノードメタルと導電性ストリップとが接続される(導電性ストリップ82j-1は、図7では、主スペーサブロック71j-1の側壁に凸部として設けられているが、ダマスカス配線(ダマシン配線)の技術を用い、主スペーサブロック71j-1の側壁に設けたダマシン溝に埋め込むように形成しても良い。更に、主スペーサブロック71j-1の側壁に設けたダマシン溝にCu等の金属を埋め込んだ後、Au等の金属を電界メッキにより選択的に導電性ストリップ82j-1の上に形成し、導電性ストリップ82j-1の厚みを増やして、主スペーサブロック71j-1の側壁に凸部となるようにしても良い。)。
【0089】
図26に示すように、第j補助スペーサブロック72jのスペーサ部11bl-jの取り出し電極99jに対応する位置には、取り出し電極99jの挿入を可能にするように、円形の貫通孔98jが設けられている。第j補助スペーサブロック72jの厚みは、取り出し電極99jよりも1〜10μm程度薄くしておくのが好ましい。そして、図27に示すように、第j補助スペーサブロック72jの円形の貫通孔98jに取り出し電極99jが挿入されるようにして、第j補助スペーサブロック72jと第j主スペーサブロック71jとの間に、スペーサ部11bl-jとアノード埋込ブレード11al-jとを挟んで圧接構造にすれば、第j補助スペーサブロック72jの円形の貫通孔98jから取り出し電極99jの頭が極僅か(1〜10μm)程度突出する。
【0090】
図25及び図27では明示していないが、第(j+1)主スペーサブロック71j+1に、図7に示したのと同様に導電性ストリップ等の表面配線パターンを設けてある。このため、図27に図示した状態において、第j補助スペーサブロック72jの上に、第(j+1)主スペーサブロック71j+1を積層すれば、第j補助スペーサブロック72jの円形の貫通孔98jから頭が突出した取り出し電極99j+1に第(j+1)主スペーサブロック71j+1の導電性ストリップとが接触する(導電性ストリップ82j-1は、図7では、主スペーサブロック71j-1の側壁に凸部として設けられているが、ダマスカス配線(ダマシン配線)の技術を用い、主スペーサブロック71j-1の側壁に設けたダマシン溝に埋め込むように形成しても良い。更に、主スペーサブロック71j-1の側壁に設けたダマシン溝にCu等の金属を埋め込んだ後、Au等の金属を電界メッキにより選択的に導電性ストリップ82j-1の上に形成し、導電性ストリップ82j-1の厚みを増やして、主スペーサブロック71j-1の側壁に凸部となるようにしても良い。)。このようにして、第2の表面配線88とアノード埋込ブレード11al-jのアノードメタル間の電気的な接続が、取り出し電極99j及び第(j+1)主スペーサブロック71j+1の導電性ストリップを介して実現される。
【0091】
同様に、図27に示したように、第(j−1)補助スペーサブロック72j-1の円形の貫通孔に取り出し電極(図示省略。)が挿入されるように、第(j−1)補助スペーサブロック72j-1と第(j−1)主スペーサブロック71j-1との間に、スペーサ部11bl-j-1とアノード埋込ブレード11al-j-1とを挟んで圧接構造にし、第2の表面配線88とアノード埋込ブレード11al-j-1のアノードメタル間の電気的な接続が、取り出し電極99j及び第j主スペーサブロック71jの導電性ストリップを介して実現される。更に、第2の表面配線88とアノード埋込ブレード11al-j-2のアノードメタル間の電気的な接続が、取り出し電極99j及び第(j−1)主スペーサブロック71j-1の導電性ストリップを介して実現される。
【0092】
又、第1〜第4の実施の形態で説明したそれぞれの技術的思想を互いに組み合わせることも可能である。例えば、第1の実施の形態に示した陽極の構造や、第2の実施の形態で示した陰極の構造との組み合わせを第3の実施の形態や第4の実施の形態に適用しても良いことは勿論である。
【0093】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの内部構造を示すの模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの分割型アノード電極の構造を3枚のアノード埋込ブレードで便宜的に説明する模式的な鳥瞰図である。
【図3】図2に示したアノード埋込ブレードの構造を説明する模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタに用いる分割型アノード電極の具体的な構造を説明する鳥瞰図である。
【図5】図4に示した分割型アノード電極において、表面配線カバーを取り外して表面配線及び組み立て構造の詳細を説明する鳥瞰図である。
【図6】図5に示した表面配線カバーを取り外した構造において、特に、第2縦材の近傍を詳細を説明する鳥瞰図である。
【図7】図4に示した分割型アノード電極の組み立て方法を説明する鳥瞰図である。
【図8】図4に示した分割型アノード電極のアノード埋込ブレード装着前のブレードホルダを示す鳥瞰図である。
【図9】図4に示した分割型アノード電極の表面配線と、その上の表面配線カバーを説明する鳥瞰図である。
【図10】図4に示した分割型アノード電極において、補助スペーサブロックと主スペーサブロックとの間にアノード埋込ブレードを挟んで固定部材で機械的に締め付けた構造を説明する鳥瞰図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの第1〜第3のアノードメタルのいずれかを等価的な陽極で表し、カソードメタルを等価的な陰極で表した場合において、等価陽極及び等価陰極間への電気パルスの印加によって引き起こされる放電の状態と電気パルスの電圧概略波形(無負荷時)とを模式的に示す図である。
【図12】パルス電源がカソードメタルとアノードメタルとの間に印加する電気パルスの電圧波形及び電流波形の一例を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタのパルス電源に用いる誘導エネルギ蓄積型電源回路の構造を説明する回路図である。
【図14】図13に示した誘導エネルギ蓄積型電源回路の動作を説明するタイミング図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの分割型アノード電極に用いることの可能な種々のアノード埋込ブレードの断面形状を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタにおいて、分割型アノード電極と分割型カソード電極を用いた場合の構成の一例を説明する模式的な鳥瞰図である(その1)。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る他のプラズマ処理リアクタにおいて、分割型アノード電極と分割型カソード電極を用いた場合の他の構成を説明する模式的な鳥瞰図である(その2)。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る分割型カソード電極の具体的な構造を説明する鳥瞰図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの内部構造を示すの模式的な断面図である。
【図20】図20(a)は、カソードメタルと奇数番のアノード埋込ブレードとの間に繰り返し印加する第1の電気パルスを、図20(b)は、カソードメタルと偶数番のアノード埋込ブレードとの間に繰り返し印加する第2の電気パルスを示すタイミング図である。
【図21】図21(a)は、カソードメタルと奇数番のアノード埋込ブレードとの間に繰り返し印加する第1の電気パルスを、図21(b)は、カソードメタルと偶数番のアノード埋込ブレードとの間に繰り返し印加する第2の電気パルスを示すタイミング図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置のパルス電源に用いる2系列誘導エネルギ蓄積型電源回路(2系列IES回路)の構造を説明する回路図である。
【図23】図22に示した2系列IES回路の動作を説明するタイミング図である。
【図24】他の実施の形態に係るプラズマ処理装置の説明として、アノード埋込ブレードを、アノードブレード本体部と、そのスペーサ部とに分離した組み立て構造を説明する模式図である。
【図25】主スペーサブロックに、図24に示したアノードブレード本体部を取り付けた構造を説明する模式図である。
【図26】他の実施の形態に係るプラズマ処理装置に係り、補助スペーサブロックのスペーサ部の取り出し電極に対応する位置に設けられた貫通孔を説明する模式図である。
【図27】図26の補助スペーサブロックの貫通孔から取り出し電極の頭が突出した状態を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0095】
9l-1,9l-2,9l-3,9a〜9r…アノードメタル
11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6,11a〜11r,11aa〜11ae,11s,11t,11u〜11x…アノード誘電体
13…IES回路
13l-j、13l-j-1…U溝
14l-j、14l-j-1…コンタクトホール
21…整流板
22…ケース
23…底板
25s-1,25s-2,25s-3,25s-4,25s-5,25s-6,…カソード埋込ブレード
26…パルス電源
27…給気配管
28…排気配管
29…排気ポンプ
31A…陽極配線
31K…陰極配線
32…断熱材
33…ヒータ
411〜416,421〜426…固定部材
471〜476,711〜716,731〜736…主スペーサブロック
481〜486,721〜726,741〜746…補助スペーサブロック
51,84…第1横材
52,85…第2横材
53a,53b,54a,54b,83a,83b…オフセットブロック
55…第2縦材
56,86…第1縦材
59…ガイドレール
59a,89a…第1電極端子
59b,89b…第2電極端子
60…桟プレート
61,62,63,91,92,93…表面配線カバー
771〜776,781〜786…ギャップ
81…等価陽極
82…等価陰極
83…ストリーマ
87,88…表面配線
88j+1,88j-1…導電性ストリップ
131…低電圧直流電源
132…コンデンサ
133…インダクタ
134…SIサイリスタ
135…FET
135…MOSFET
136…ゲート駆動回路
137…ダイオード
139…負荷
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置に係り、特に非熱平衡低温プラズマによるプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマ処理のリアクタ(以下において「プラズマ処理リアクタ」と言う。)として、平板状の陽極と平板状の陰極とを互いに平行に配置した平行平板構造が知られている(特許文献1参照。)。一般には、陽極及び陰極は、それぞれ誘電体の平板に埋め込まれている。そして、2枚の誘電体に埋め込まれた陽極と陰極との間で放電させる。平行平板構造の場合、放電空間の電界は、約5kV/mmに設定されるのが一般的である。
【0003】
このような平行平板構造のプラズマ処理リアクタは、アーク放電に強く、長時間のストリーマ放電に耐える利点を有する。特許文献1は、窒素ガス中に発生したプラズマで対象物を処理することにより、対象物の表面を改質する技術を開示している。
【特許文献1】特開2005−251444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、平行平板構造のプラズマ処理リアクタは、大気圧での放電が困難である欠点を有する。又、表1に示すように、窒素分子の解離エネルギが他のガス分子に比して大きく、平行平板構造のプラズマ処理リアクタでは窒素ガスを放電させるのが困難であり、たとえ放電させても、安定なプラズマ生成が難しかった。特許文献1は、プラズマを発生させる際に、アーク放電を引き起こさないようにすべきことが言及されている。
【表1】
【0005】
平行平板構造のプラズマ処理リアクタの場合、プラズマ放電ギャップを広げるには高真空又は希ガスを混合して放電する必要がある。
【0006】
又、平行平板構造のプラズマ処理リアクタの場合、その構造上、陽極と陰極との間の容量が大きく、陽極と陰極との間にパルス幅の長いパルスを印加する必要がある。陽極と陰極との間にパルス幅の長いパルスを印加すれば、対象物にもダメージが起こる。平行平板構造においては、陽極と陰極とをそれぞれ埋め込んだ誘電体全体に充電させる必要があるので、均一なプラズマ放電を実現するためには、必要なエネルギが大きくなる欠点もある。又、これにより、平行平板構造のプラズマ処理リアクタの場合は、熱損失が大きい問題がある。
【0007】
上記問題点を鑑み、本発明によれば、大気圧・窒素中の放電が容易で、長時間のストリーマ放電に耐え、広範囲で均一な処理ができ、対象物に低ダメージの処理ができ、しかも処理時間が短縮されたプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、(イ)長手方向の一辺にそれぞれ刃部を設けた複数の板状のアノード埋込ブレードを、互いの主面を対向させて並列配置した分割型アノード電極と、(ロ)アノード埋込ブレードのそれぞれの刃部に対向して配置されたカソードとを備えるプラズマ処理装置であることを要旨とする。このプラズマ処理装置において、分割型アノード電極とカソード間に処理ガスを導入して、分割型アノード電極とカソード間に少なくとも形成されるプラズマ処理空間内にプラズマを生成する。そして、アノード埋込ブレードのそれぞれは、板状のアノード誘電体と、このアノード誘電体の内部に埋め込まれたアノードメタルからなり、複数のアノード埋込ブレードは、それぞれの長手方向の両端部において、互いの主面間に絶縁性材料からなるスペーサブロックを挟んで、複数のアノード埋込ブレード間の距離を調整したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大気圧・窒素中の放電が容易で、長時間のストリーマ放電に耐え、広範囲で均一な処理ができ、対象物に低ダメージの処理ができ、しかも処理時間が短縮されたプラズマ処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第4の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
以下に示す第1〜第4の実施の形態に例示した発明に到達するまでに、本発明者は、複数の金属線(裸線)を並列配置した分割型アノード電極と、1枚の誘電体埋込陰極からなるプラズマ処理リアクタを検討した。このプラズマ処理リアクタの放電空間の電界は、約2kV/mmであり、平行平板構造の約5kV/mmよりも低減できる。金属線を並列配置した分割型アノード電極を用いれば、大気圧において、窒素中の放電が容易であり、プラズマ放電ギャップも広いことが確認できた。又、分割型アノード電極にすることにより、陽極と陰極との間の容量が低減され、陽極と陰極との間にパルス幅の短いパルスが印加できることになったので、対象物に低ダメージの処理ができることが確認できた。
【0012】
しかしながら、このように検討した分割型アノード電極は、裸線状態の複数の金属線を並列配置した構造であるため、アーク放電すると分割型アノード電極に用いる金属線が劣化する問題が判明した。又、ストリーマ放電を長時間続けた場合にも分割型アノード電極に用いる金属線が劣化する問題が判明した。特に、酸素混合雰囲気では、分割型アノード電極に用いる金属線の金属劣化が著しく進むことが判明した。
【0013】
このため、以下に示す第1〜第4の実施の形態に例示したような、複数の板状(ブレード状)の誘電体中にアノードメタルを埋め込んだアノード埋込ブレードを並列配置した分割型アノード電極を実現したものである。更に、第2の実施の形態では、複数の板状(ブレード状)の誘電体中にカソードメタルを埋め込んだカソード埋込ブレードを並列配置した分割型カソード電極についても述べる。
【0014】
なお、以下に示す第1〜第4の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ処理リアクタは、箱形のケース22とケース22の下方に位置する底板23とで、バッチ式の反応容器(チャンバ)を構成している。ケース22の上部には、処理ガスを導入する給気配管27が接続されている。一方、ケース22の下方の底板23の近傍にはスリット状の開口部(隙間)を備え、上面の給気配管27から処理ガスが給気され、下面の隙間から処理ガスが排気することができるようになっており、プラズマ処理リアクタの処理圧力は大気圧である。
【0016】
反応容器(チャンバ)を構成している底板23の上には、カソード(24,25)が設けられている。このカソード(24,25)は、カソードメタル24と、カソードメタル24に接してカソードメタル24の上に設けられたカソード誘電体25からなる。カソード誘電体25の上には、処理対象物(サンプル)30が搭載される。プラズマ処理リアクタは、前面に設けられたドアが開かれた状態においては、内部への処理対象物(サンプル)30の収容及び内部からの処理対象物(サンプル)30の取り出しが可能な状態となり、ドアが閉じられた状態においては、内部は、底板23の近傍のスリット状の開口部を除き、ほぼ密閉された状態となる。
【0017】
図1に示すように、プラズマ処理リアクタの内部の上部には、処理ガスの整流板21が水平に設置されている。整流板21には、複数の細管からなる貫通孔がマトリクス状に配置されている。プラズマ処理リアクタでは、処理ガスのタンク(図示省略)から給気配管27を介してケース22の上部に供給された処理ガスが、整流板21を経由してプラズマ処理リアクタの内部へ均一なフローとしてシャワー状に給気される。シャワー状に給気された処理ガスは、プラズマ処理リアクタの内部と外部の圧力差によってプラズマ処理リアクタの内部からスリット状の開口部(隙間)を経由して、プラズマ処理リアクタの外部へ排気される。処理ガスは、プラズマ処理リアクタの処理の内容に応じて、適宜選択可能である。表1に示したように、窒素(N2)分子の解離エネルギが他のガス分子に比して大きく、窒素(N2)プラズマは、これまで安定なプラズマ生成が難しかったが、第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置においては、処理ガスとして高純度窒素ガスを使用することが可能である。但し、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、処理対象物(サンプル)30の殺菌、滅菌等の目的のためには、塩素(Cl2)若しくは塩素を含む化合物のガス、より一般的にはこのような塩化物に限られず、フッ化物、臭化物、沃化物等の他のハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスや希ガス等の混合ガス等他のガスでも構わない。この他のガスには、その表面処理の目的に応じて、酸素(O2)若しくは酸素を含む化合物のガス等でも良い。処理ガスの純度や露点等は、表面処理の目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0018】
プラズマ処理リアクタの内部において、整流板21の下方には、それぞれ長手方向の一辺(一方の長辺)に刃部を設けた複数の板状(ブレード状)のアノード埋込ブレードを互いの主面を対向させて並列配置した分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)が配置されている。図1では、簡略化のため第1のアノード埋込ブレード(9l-1,;11l-1)、第2のアノード埋込ブレード(9l-2,;11l-2)及び第3のアノード埋込ブレード(9l-3,;11l-3)の3枚の板状のアノード埋込ブレードが並列に等間隔で配置された構造が示されているが、例示であり、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置のアノード埋込ブレードの枚数が3枚に限定される理由はなく、4枚以上等、適宜増やすことが可能である(例えば、図4においては、6枚のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6が示されている。)。アノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3のそれぞれの刃部は、その先端がカソードに対向するように配置される。
【0019】
図2及び図3に詳細に示すように、第1のアノード埋込ブレード(9l-1,;11l-1)は板状の第1のアノード誘電体11l-1と、第1のアノード誘電体11l-1の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第1のアノードメタル9l-1から構成されている。第2のアノード埋込ブレード(9l-2,;11l-2)は板状の第2のアノード誘電体11l-2と、第2のアノード誘電体11l-2の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第2のアノードメタル9l-2から構成されている。第3のアノード埋込ブレード(9l-3,;11l-3)は板状の第3のアノード誘電体11l-3と、第3のアノード誘電体11l-3の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第3のアノードメタル9l-3から構成されている。図1、図2及び図3(a)から分かるように、第1のアノード誘電体11l-と、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3は、それぞれの刃部が両刃のくさび型の断面形状をなしている。そして、第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3は、それぞれ、第1のアノード誘電体11l-1、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3の厚さ方向における中央部に埋め込まれている。更に、第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3は、それぞれ、第1のアノード誘電体11l-1、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3の刃部の側に偏在(局在)して埋め込まれている。
【0020】
プラズマ処理リアクタの内部のカソード(24,25)と分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)に電気パルスを印加してカソード(24,25)と分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)の間のプラズマ放電ギャップにプラズマを発生させるために、プラズマ処理リアクタの外部にはパルス電源26が配置されている。パルス電源26と分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)とは陽極配線31Aで接続され、パルス電源26とカソード(24,25)とは陰極配線31Kで接続されている。
【0021】
カソード(24,25)と分割型アノード電極(9l-1,9l-2,9l-3;11l-1,11l-2,11l-3)の間に発生したプラズマに処理対象物(サンプル)30を曝すことにより、処理対象物(サンプル)30の表面が処理される。
【0022】
アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の材質には、プラズマ耐久性に優れた種々の耐熱金属(高融点金属)や耐熱合金が使用可能である。耐熱金属(高融点金属)としては、タングステン(W),モリブデン(Mo),チタン(Ti),クロム(Cr),ジルコニウム(Zr),白金(Pt),パラジウム(Pd),ハフニウム(Hf),タンタル(Ta),ルテニウム(Ru)等が代表的である。耐熱合金としてはニッケル・クロム(Ni−Cr)合金が代表的であるが、Ni−Crをベースとして、更に所定量の鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、シリコン(Si)等の少なくともいずれかが含まれる耐熱合金でも良い。更に、W,Mo,Mn,Ti,Cr,Zr,Fe,Pt,Pd,銀(Ag),銅(Cu)等から選ばれる2種類以上の金属からなる周知の耐熱合金等が使用可能である。また、低温焼成でブレードを製造する場合は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等も使用可能である。
【0023】
アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さは、例えば約5〜800μm程度、更には約6〜200μm程度の範囲において、なるべく薄い値に選ぶのが好ましい。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さが薄い方が電界が集中するので、放電が容易になり、且つ放電の安定性や一様性が得られるからである。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さの下限は、現実には、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の製造技術に依存する。このため、工業的な見地からは、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さは、8〜50μm程度、更には8〜20μmの範囲の厚さがより好ましい。
【0024】
アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さ、即ち図1の紙面に垂直方向に測った長さは、例えば200mm〜500mm程度に設定できるが、これは、基本的にはプラズマ処理するサンプルの大きさにより決めれば良い。したがって、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さを500mm以上にしても構わない。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さが長くなった場合は、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さをそれに比例して薄くすれば、アノードカソード間の容量の増大が防げる。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の高さ、即ち図1に示した断面図において、上下方向に測った長さは、例えば10mm〜50mm程度に設定できるが、これは、特に制限はない。但しあまり高さを大きくするのは、プラズマ処理リアクタの大きさが大きくなるので好ましくない。図1〜図3に示すような、第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3が、それぞれ、第1のアノード誘電体11l-1、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3のカソードに近い側に偏在して埋め込まれている構造であれば、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の高さを10mm〜35mm程度に設定するのがより現実的であろう。
【0025】
板状(ブレード状)のアノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の材質には、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。有機系の樹脂材料としては、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等が、使用可能である。無機系の基板材料として一般的なものはセラミック又はガラスが用いられる。セラミック基板の素材としてはアルミナ(Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ベリリア(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化珪素(SiC)、コーディエライト(Mg2Al3(AlSi5O18))、マグネシア(MgO)、スピネル(MgAl2O4)、シリカ(SiO2)等が使用可能である。典型的には、板状のアノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の厚さはアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さにも依存するが、例えば約0.5〜2mm程度、好ましくは約0.8〜1.5mm程度の範囲においてアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さよりも厚い値に選べば良い。具体的には、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の厚さが9〜150μm程度であれば、アノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の厚さは、0.9〜1.2mm程度の値に選ぶことが可能である。
【0026】
板状のアノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の長さ、即ち図1の紙面に垂直方向に測った長さは、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3が埋め込める長さであれば良く、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さが、例えば200mm〜500mm程度であれば、アノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の長さは、例えば220mm〜520mm程度に設定できる。同様に、アノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の高さ、即ち図1に示した断面図において、上下方向に測った長さは、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3が埋め込める高さであれば良い。図1〜図3に示すような、第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3が、それぞれ、第1のアノード誘電体11l-1、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3のカソードに近い側に偏在して埋め込まれている構造で、アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の高さが10mm〜35mm程度であれば、アノード誘電体11l-1,11l-2,11l-3の高さは、例えば、25mm〜75mm程度に設定すれば良い。
【0027】
プラズマ放電空間の大きさは、処理対象物(サンプル)30に応じて適宜設計すれば良い事項である。アノードメタル9l-1,9l-2,9l-3の長さ、即ち図1の紙面に垂直方向に測った長さにより、図1に示したプラズマ処理リアクタの放電空間の奥行きが決まる。図1では、第1のアノード埋込ブレード(9l-1,;11l-1)、 第2のアノード埋込ブレード(9l-2,;11l-2)及び第3のアノード埋込ブレード(9l-3,;11l-3)の3枚の板状のアノード埋込ブレードが並列に等間隔で配置された構造が示されているが、板状のアノード埋込ブレードの配列のピッチ、及び配列の枚数により、図1の紙面の左右方向に測ったプラズマ処理リアクタの放電空間の幅が決まる。典型的な例では、アノード埋込ブレードの配列のピッチは5mm〜50mm程度、好ましくは、10mm〜40mm程度に選べば良い。プラズマ放電ギャップの大きさも処理対象物(サンプル)30の大きさやプラズマ処理の内容に応じて設計すれば良いが、例えば、前後方向に300mm、左右方向に300mmの拡がりを有するプラズマ放電空間であれば、3mm〜40mm程度のプラズマ放電ギャップが設定可能である。
【0028】
図4〜図10は、矩形の枠状のブレードホルダ(51,52,55,56)を用いて、第1のアノード埋込ブレード(9l-1,;11l-1)、第2のアノード埋込ブレード(9l-2,;11l-2)、第3のアノード埋込ブレード(9l-3,;11l-3)、第4のアノード埋込ブレード(9l-4,;11l-4)、第5のアノード埋込ブレード(9l-5,;11l-5)及び第6のアノード埋込ブレード(9l-6,;11l-6)を固定した状態を、それぞれのアノード埋込ブレードの刃部の側を上にして示す。図5に示すように、ブレードホルダ(51,52,55,56)は、互いに平行に配置された第1横材51及び第2横材52と、この第1横材51及び第2横材52にそれぞれ直交する第1縦材56及び第2縦材55とで井桁状に構成されている(なお、どちらを「横材」と呼び、どちらを「縦材」と呼ぶかは、単なる定義の問題であり、90度回転し、符合51,52を縦材と呼び、符合55,56を横材と呼んでも構わない。但し、本明細書では、符合51,52を横材と呼び、符合55,56を縦材として統一する。)。図4に示すように、第1横材51と第1縦材56との接合部の外側の角には、第1電極端子59aが設けられ、第2横材52と第1縦材56との接合部の外側の角には、第2電極端子59bが設けられている。第1横材51、第2横材52、第1縦材56、第2縦材55、第1電極端子59a及び第2電極端子59bを構成する材料は、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。即ち、有機系の樹脂材料としては、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等が、無機系の基板材料として一般的なものはセラミック又はガラスを用いることができる。セラミック基板の素材としてはAl2O3、3Al2O3・2SiO2、BeO、AlN、SiC、コーディエライト(Mg2Al3(AlSi5O18))、マグネシア(MgO)、スピネル(MgAl2O4)、シリカ(SiO2)等が耐圧の点から好ましい。
【0029】
図5に示すように、第2縦材55に沿って、オフセットブロック53a,第6補助スペーサブロック726,第6主スペーサブロック716,第5補助スペーサブロック725,第5主スペーサブロック715,第4補助スペーサブロック724,第4主スペーサブロック714,第3補助スペーサブロック723,第3主スペーサブロック713,第2補助スペーサブロック722,第2主スペーサブロック712,第1補助スペーサブロック721,第1主スペーサブロック711が順に並べられている。同様に、第1縦材56に沿って、オフセットブロック54a,第6補助スペーサブロック746,第6主スペーサブロック736,第5補助スペーサブロック745,第5主スペーサブロック735,第4補助スペーサブロック744,第4主スペーサブロック734,第3補助スペーサブロック743,第3主スペーサブロック733,第2補助スペーサブロック742,第2主スペーサブロック732,第1補助スペーサブロック741,第1主スペーサブロック731が順に並べられている。これらのオフセットブロック53a,第6補助スペーサブロック726,第6主スペーサブロック716,第5補助スペーサブロック725,第5主スペーサブロック715,第4補助スペーサブロック724,第4主スペーサブロック714,第3補助スペーサブロック723,第3主スペーサブロック713,第2補助スペーサブロック722,第2主スペーサブロック712,第1補助スペーサブロック721,第1主スペーサブロック711,オフセットブロック54a,第6補助スペーサブロック746,第6主スペーサブロック736,第5補助スペーサブロック745,第5主スペーサブロック735,第4補助スペーサブロック744,第4主スペーサブロック734,第3補助スペーサブロック743,第3主スペーサブロック733,第2補助スペーサブロック742,第2主スペーサブロック732,第1補助スペーサブロック741,第1主スペーサブロック731は、それぞれ底部にU溝を有するU字ブロックである(図7には、第(j+1)主スペーサブロック71j+1,第j補助スペーサブロック72j,第j主スペーサブロック71j,第(j−1)補助スペーサブロック72j-1,第(j−1)主スペーサブロック71j-1及び第(j−2)補助スペーサブロック72j-2の底部のU溝が示されている。)。主スペーサブロック711〜716,731〜736及び補助スペーサブロック721〜726,741〜746を構成する材料も、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。特に、Al2O3、3Al2O3・2SiO2、BeO、AlN、SiC、コーディエライト(Mg2Al3(AlSi5O18))、マグネシア(MgO)、スピネル(MgAl2O4)、シリカ(SiO2)等が耐圧の点から好ましい。
【0030】
図6に示すように、第2縦材55に接しかつ平行に桟プレート60が底板として設けられている。そして、この桟プレート60の上において、ガイドレール59が第2縦材55に平行に延伸している。桟プレート60とガイドレール59とは一体で構成してよく、更に桟プレート60と第2縦材55とを断面がL字型になるように接続し、一体として構成しても良い。即ち、桟プレート60、ガイドレール59及び第2縦材55とは一体で構成しても良い。図6に示すように、オフセットブロック53a,第6補助スペーサブロック726,第6主スペーサブロック716,第5補助スペーサブロック725,第5主スペーサブロック715,第4補助スペーサブロック724,第4主スペーサブロック714,第3補助スペーサブロック723,第3主スペーサブロック713,第2補助スペーサブロック722,第2主スペーサブロック712,第1補助スペーサブロック721,第1主スペーサブロック711のそれぞれは、ガイドレール59に底部のU溝を嵌合するように配列される。図示を省略しているが、第1縦材56に接しかつ平行に桟プレートが底板として設けられている(第1縦材56側においても、第2縦材55側と同様に、桟プレートとガイドレールとは一体で構成してよく、更に桟プレートと第1縦材56とを断面がL字型になるように接続し、一体として構成しても良い。即ち、桟プレート、ガイドレール及び第1縦材56とは一体で構成しても良い。)。そして、この図示を省略した桟プレートの上にガイドレールが第1縦材56に平行に延伸している。こうして、第1縦材56に沿って、オフセットブロック54a,第6補助スペーサブロック746,第6主スペーサブロック736,第5補助スペーサブロック745,第5主スペーサブロック735,第4補助スペーサブロック744,第4主スペーサブロック734,第3補助スペーサブロック743,第3主スペーサブロック733,第2補助スペーサブロック742,第2主スペーサブロック732,第1補助スペーサブロック741,第1主スペーサブロック731がのそれぞれが、ガイドレールに底部のU溝を嵌合するように配列される。
【0031】
図7は、第j補助スペーサブロック72jと第j主スペーサブロック71jとの間のギャップに第jアノード埋込ブレード11l-jの長手方向の一方の端部が装着され、第(j−1)補助スペーサブロック72j-1と第(j−1)主スペーサブロック71j-1との間のギャップに第(j−1)アノード埋込ブレード11l-j-1の長手方向の一方の端部が装着される様子を詳細に示す。図示を省略しているが、第jアノード埋込ブレード11l-jの長手方向の他方の端部は、第j補助スペーサブロック74jと第j主スペーサブロック73jとの間のギャップに装着され、第(j−1)アノード埋込ブレード11l-j-1の長手方向の他方の端部は、第(j−1)補助スペーサブロック74j-1と第(j−1)主スペーサブロック73j-1との間のギャップに装着される。図7には、第(j+1)主スペーサブロック71j+1,第j補助スペーサブロック72j,第j主スペーサブロック71j,第(j−1)補助スペーサブロック72j-1,第(j−1)主スペーサブロック71j-1及び第(j−2)補助スペーサブロック72j-2の底部のU溝と同様なU溝13l-jが、第jアノード埋込ブレード11l-jの長手方向の一方の端部に、U溝13l-j-1が第(j−1)アノード埋込ブレード11l-j-1の長手方向の一方の端部に設けられていることが示されているが、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6は、すべて同様なU溝を長手方向の一方の端部に有し、ガイドレール59にそれらのU溝が嵌合してアノード埋込ブレードの位置合わせをすることを可能にしている。又、主スペーサブロック71j+1,71j,71j-1,……及び補助スペーサブロック72j,72j-1,72j-2,……のそれぞれの厚さを変更することにより、互いに平行に配列される複数のアノード埋込ブレード11l-j,11l-j-1,……の相互の間隔を自由に変更可能である。
【0032】
図8は、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6装着前のブレードホルダを示し、第6補助スペーサブロック726と第6主スペーサブロック716との間にギャップ786が設けられ、第5補助スペーサブロック725と第5主スペーサブロック715との間にギャップ785が設けられ、第4補助スペーサブロック724と第4主スペーサブロック714との間にギャップ784が設けられ、第3補助スペーサブロック723と第3主スペーサブロック713との間にギャップ783が設けられ、第2補助スペーサブロック722と第2主スペーサブロック712との間にギャップ782が設けられ、第1補助スペーサブロック721と第1主スペーサブロック711との間にギャップ781が設けられている。同様に、第6補助スペーサブロック746と第6主スペーサブロック736との間にギャップ776が設けられ、第5補助スペーサブロック745と第5主スペーサブロック735との間にギャップ775が設けられ、第4補助スペーサブロック744と第4主スペーサブロック734との間にギャップ774が設けられ、第3補助スペーサブロック743と第3主スペーサブロック733との間にギャップ773が設けられ、第2補助スペーサブロック742と第2主スペーサブロック732との間にギャップ772が設けられ、第1補助スペーサブロック741と第1主スペーサブロック731との間にギャップ771が設けられていることが示されている。第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6は、これらのギャップ781,782,783,784,785,786及びギャップ771,772,773,774,775,776にそれぞれの長手方向の両端部を挿入して、第1横材51及び第2横材52に平行に、且つ等間隔で配列されている。
【0033】
図1に示した陽極配線31Aの一部は、図5及び図9に示すようにブレードホルダ(51,52,55,56)の表面に形成された第1及び第2の表面配線87,88で実現されている。第1の表面配線87は、第1電極端子59aから第1横材51を経由して、第1縦材56の内側の側壁に導かれ、第1縦材56の側壁を第1縦材56の長手方向に延伸する。そして、第1縦材56の側壁を介して、第1の表面配線87は偶数番の、即ち、第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード11l-2,11l-4,11l-6に電気的に接続される。一方、第2の表面配線88は、第2電極端子59bから第2横材52を経由して、第2縦材55の内側の側壁に導かれ、第2縦材55の側壁を第2縦材55の長手方向に延伸する(図6参照。)。そして、第2の表面配線88は、第2縦材55の側壁を介して、奇数番の、即ち、第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード11l-1,11l-3,11l-5に電気的に接続されている。図1に示したように、パルス電源26から延びる陽極配線31Aに第1電極端子59aにおいて第1の表面配線87を、第2電極端子59bにおいて第2の表面配線88を分岐接続すれば、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6を同一位相で駆動することができる。
【0034】
第1の表面配線87の第6のアノード埋込ブレード11l-6との接続部は第6補助スペーサブロック746と第6主スペーサブロック736とにより挟まれ、第1の表面配線87の第4のアノード埋込ブレード11l-4との接続部は第4補助スペーサブロック744と第4主スペーサブロック734とにより挟まれ、第1の表面配線87の第2のアノード埋込ブレード11l-2との接続部は第2補助スペーサブロック742と第2主スペーサブロック732とにより挟まれ、それぞれ放電空間に露出しないように構成されている。一方、第2の表面配線88の第5のアノード埋込ブレード11l-5との接続部は第5補助スペーサブロック725と第5主スペーサブロック715とにより挟まれ、第2の表面配線88の第3のアノード埋込ブレード11l-3との接続部は第3補助スペーサブロック723と第3主スペーサブロック713とにより挟まれ、第2の表面配線88の第1のアノード埋込ブレード11l-1との接続部は、第1補助スペーサブロック721と第1主スペーサブロック711とにより挟まれ、それぞれ放電空間に露出しないように構成されている。更に、図4及び図8に示すように、表面配線カバー61,62,63を第1及び第2の表面配線87,88の上に被覆することにより、第1及び第2の表面配線87,88が放電空間に露出しないように構成されている。
【0035】
第1及び第2の表面配線87,88としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属薄膜や導電性薄膜が好ましい。密着性が問題となる場合はクロム(Cr)/Cu/Crのような多層構造を第1及び第2の表面配線87,88として採用しても良い。第1及び第2の表面配線87,88は、無電界メッキ法、蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法、スプレー法、ドクターブレード法等の薄膜形成法で形成すれば良い。例えば、Agの導電性薄膜の場合は、感光性Agペーストを印刷、又はペーストコーター等で厚膜塗布した後、フォトリソグラフィーでパターニングしても良い。Cr/Cu/Crの導電性薄膜の場合は、スパッタリング法でCr/Cu/Crを真空中で連続的に堆積した後、フォトリソグラフィーとエッチングでパターニングする等、それぞれの導電性薄膜に適した周知の配線技術が採用可能である。更に、打ち抜き成形やエッチング等で所定の形状にパターニングされた金属テープ(導電性テープ)、例えばAl、Cu、Cu−Fe,Cu−Cr,Cu−ニッケル(Ni)−シリコン(Si),Cu−錫(Sn)等の銅合金、Ni−鉄(Fe)、Fe−Ni−コバルト(Co)等のニッケル・鉄合金、或いは銅とステンレスの複合材料等の導電性テープを第1及び第2の表面配線87,88に用いることが可能である。更に、これらの導電性テープにNiメッキやAuメッキ等を施したものなどから第1及び第2の表面配線87,88を構成しても良い。
【0036】
図7に示すように、第(j−1)のアノード埋込ブレード(9l-j-1,;11l-j-1)のアノード誘電体11l-j-1の長手方向の一方の端部の上部には、アノードメタル9l-j-1への電気的接続を可能にするように、アノード誘電体11l-j-1に矩形のコンタクトホール14l-j-1が開口され、アノードメタル9l-j-1の一部が露出している。このコンタクトホール14l-j-1に導電性バンプが埋め込まれ、導電性バンプを介してアノードメタル9l-j-1と第2の表面配線88とが接続される。具体的には、第(j−1)主スペーサブロック71j-1に、図7に示すように導電性ストリップ82j-1が設けられ、導電性バンプを介してアノードメタル9l-j-1と導電性ストリップ82j-1とが接続される。なお、導電性ストリップ82j-1,82j+1は、図7において主スペーサブロック71j-1,71j+1の側壁に凸部として設けられているが、ダマスカス配線(ダマシン配線)の技術を用い、主スペーサブロック71j-1,71j+1の側壁に設けたダマシン溝に埋め込むように形成しても良い。更に、主スペーサブロック71j-1,71j+1の側壁に設けたダマシン溝にCu等の金属を埋め込んだ後、Au等の金属を電界メッキにより選択的に導電性ストリップ82j-1,82j+1の上に形成し、導電性ストリップ82j-1,82j+1の厚みを増やして、主スペーサブロック71j-1,71j+1の側壁に凸部となるようにしても良い。そして、第(j−1)主スペーサブロック71j-1を第2縦材55に押しつけることにより、第2縦材55の側壁に設けられた第2の表面配線88と導電性ストリップ82j-1とが電気的に接続されるので、アノードメタル9l-j-1と第2の表面配線88とが接続される。第(j−1)のアノード埋込ブレード(9l-j-1,;11l-j-1)と対称構造をなして、第jのアノード埋込ブレード(9l-j,;11l-j)のアノード誘電体11l-jの長手方向の他方の端部の上部には、アノードメタル9l-jへの電気的接続を可能にするように、アノード誘電体11l-jに矩形のコンタクトホール14l-jが開口され、アノードメタル9l-jの一部が露出している。このコンタクトホール14l-jに導電性バンプが埋め込まれ、導電性バンプを介してアノードメタル9l-jと第1の表面配線87とが接続される(図5及び図9参照。)。図示を省略しているが、第j主スペーサブロック73jに、図7に示したのと同様に導電性ストリップが設けられ、導電性バンプを介してアノードメタル9l-jと導電性ストリップとが接続される。そして、第j主スペーサブロック73jを第1縦材56に押しつけることにより、第1縦材56の側壁に設けられた第1の表面配線87と導電性ストリップとが電気的に接続されるので、アノードメタル9l-jと第1の表面配線87とが接続される。導電性バンプとしては、半田ボール、金(Au)バンプ、銀(Ag)バンプ、銅(Cu)バンプ、ニッケル/金(Ni−Au)バンプ、或いはニッケル/金/インジウム(Ni−Au−In)バンプ等が使用可能である。半田ボールとしては、直径100μm乃至250μm、高さ50μm乃至200μmの錫(Sn):鉛(Pb)=6:4の共晶半田等が使用可能である。或いは、Sn:Pb=5:95の半田でも良い。
【0037】
なお、図10に示すように、第6補助スペーサブロック726と第6主スペーサブロック716との間にアノード埋込ブレード11l-6を挟んでボルト等の固定部材426で機械的に締め付け、第5補助スペーサブロック725と第5主スペーサブロック715との間にアノード埋込ブレード11l-5を挟んで固定部材425で締め付け、第4補助スペーサブロック724と第4主スペーサブロック714との間にアノード埋込ブレード11l-4を挟んで固定部材424で締め付け、第3補助スペーサブロック723と第3主スペーサブロック713との間にアノード埋込ブレード11l-3を挟んで固定部材423で締め付け、第2補助スペーサブロック722と第2主スペーサブロック712との間にアノード埋込ブレード11l-2を挟んで固定部材422で締め付け、第1補助スペーサブロック721と第1主スペーサブロック711との間にアノード埋込ブレード11l-1を挟んで固定部材421で締め付けて圧接構造にすれば、第2の表面配線88とアノードメタル間の電気的な接触抵抗が低減できるとともに、機械的強度や安定性が向上する。同様に、第6補助スペーサブロック746と第6主スペーサブロック736との間にアノード埋込ブレード11l-6を挟んで固定部材416で締め付け、第5補助スペーサブロック745と第5主スペーサブロック735との間にアノード埋込ブレード11l-5を挟んで固定部材415で締め付け、第4補助スペーサブロック744と第4主スペーサブロック734との間にアノード埋込ブレード11l-4を挟んで固定部材414で締め付け、第3補助スペーサブロック743と第3主スペーサブロック733との間にアノード埋込ブレード11l-3を挟んで固定部材413で締め付け、第2補助スペーサブロック742と第2主スペーサブロック732との間にアノード埋込ブレード11l-2を挟んで固定部材412で締め付け、第1補助スペーサブロック741と第1主スペーサブロック731との間にアノード埋込ブレード11l-1を挟んで固定部材411で締め付けて圧接構造にすれば、第1の表面配線87とアノードメタル間の電気的な接触抵抗が低減できるとともに、機械的強度や安定性が向上する。
【0038】
図11は、図1に示す第1のアノードメタル9l-1、第2のアノードメタル9l-2、及び第3のアノードメタル9l-3のいずれかを等価的な陽極81で表し、カソードメタル24を等価的な陰極82で表した場合において、等価陽極81及び等価陰極82間への電気パルスの印加によって引き起こされる放電の状態と電気パルスの電圧概略波形(無負荷時)とを模式的に示す図である。
【0039】
図11において、電気パルスの電圧概略波形は、電圧V(縦軸)の時間t(横軸)に対する変化を示すグラフによって表されている。図11に示すように、電気パルスのパルス幅Δtが概ね100nsに達すると、正イオンが等価陰極82に衝突する際に放出された2次電子が処理ガス分子を電離させて新たな正イオンを発生させるグロー放電が引き起こされる。一方、電気パルスの立ち上がり時の電圧Vの時間上昇率dV/dtが概ね30〜50kV/μsである場合、パルス幅Δtが概ね100nsに達すると、等価陽極81から等価陰極82へ向かうストリーマ83の成長が始まる。そして、パルス幅Δtが概ね100〜400nsである場合、ストリーマ83の成長は、等価陽極81と等価陰極82との間に短いストリーマ83が散点する初期段階で終了する。一方、パルス幅Δtが概ね500〜1000nsである場合、ストリーマ83が本格的に成長し、等価陽極81と等価陰極82との間に枝分かれした長いストリーマ83が存在する状態となる。本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置では、ストリーマ83の成長が進んで等価陽極81と等価陰極82とが導通してしまわないように、ストリーマ83の成長の初期段階で放電を停止するファインストリーマ放電を用いる。
【0040】
放電の均一性に優れるファインストリーマ放電を用いれば、表面処理を均一に実施することができるからである。更に、パルス幅Δtが概ね1000nsに達すると、局部的な電流集中がおき、最終的にアーク放電が引き起こされる。
【0041】
上述の説明で、パルス幅Δtや立ち上がり時の電圧Vの時間上昇率dV/dtの範囲について「概ね」としているのは、これらは、等価陽極81及び等価陰極82間の間隔、等価陽極81及び等価陰極82の構造ならびに窒素雰囲気の圧力等のプラズマ処理装置の具体的構成に依存して変化するためである。したがって、ファインストリーマ放電となっているか否かは、パルス幅Δtや立ち上がり時の電圧Vの時間上昇率dV/dtだけでなく、実際の放電を観察して判断すべきである。
【0042】
又、電気パルスの電圧概略波形について「無負荷時」としているのは、同じ条件でパルス電源を動作させても、等価陽極81及び等価陰極82間の間隔ならびに等価陽極81及び等価陰極82の構造等のプラズマ処理装置の具体的構成が変化すれば、等価陽極81及び等価陰極82間に実際に印加される電気パルスの電圧概略波形が異なってくるからである。
【0043】
パルス電源26は、アーク放電を引き起こさずにファインストリーマ放電を引き起こす電気パルスを、カソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間に繰り返し印加する。具体的には、パルス電源26は、パルス幅が半値幅で50〜300nsの電気パルスをカソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間に繰り返し印加する。パルス電源26がカソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間に印加する電気パルスの電圧波形及び電流波形の一例を図12に示す。図12には、電気パルスの電圧V2及び電流I2(縦軸)の時間(横軸)に対する変化が示されており、パルス幅は、半値幅で約100nsとなっている。
【0044】
パルス電源26には、静電誘導型サイリスタ(以下、「SIサイリスタ」と言う。)を用いた誘導エネルギ蓄積型電源回路(以下、「IES回路」と言う。)を、採用することが望ましい。IES回路は、SIサイリスタのクロージングスイッチ機能の他、オープニングスイッチング機能を用いてターンオフを行い、当該ターンオフによりSIサイリスタのゲート・アノード間に高圧を発生させている。なお、IES回路の詳細は、飯田克二、佐久間健:「誘導エネルギ蓄積型パルス電源」,第15回SIデバイスシンポジウム(2002)に記載されている。
【0045】
まず、図13を参照して、IES回路(パルス電源)13の構成について説明する。IES回路13は、低電圧直流電源131を備える。低電圧直流電源131の電圧Eは、IES回路13が発生させる電気パルスの電圧のピーク値より著しく低いことが許容される。例えば、後述するインダクタ133の両端に発生させる電圧VLのピーク値VLPが数kVに達しても、低電圧直流電源131の電圧Eは数10Vであることが許容される。電圧Eの下限は後述するSIサイリスタ134のラッチング電圧以上で決定される。IES回路13は、低電圧直流電源131を電気エネルギ源として利用可能であるので、小型・低コストに構築可能である。IES回路13は、低電圧直流電源131に並列接続されるコンデンサ132を備える。コンデンサ132は、低電圧直流電源131のインピーダンスを見かけ上低下させることにより低電圧直流電源131の放電能力を強化する。
【0046】
更に、IES回路13は、インダクタ133、SIサイリスタ134、MOSFET135、ゲート駆動回路136及びダイオード137を備える。IES回路13では、低電圧直流電源131の正極とインダクタ133の一端とが接続され、インダクタ133の他端とSIサイリスタ134のアノードとが接続され、SIサイリスタ134のカソードとFET135のドレインとが接続され、FET135のソースと低電圧直流電源131の負極とが接続されている。又、IES回路13では、SIサイリスタ134のゲートとダイオード137のアノードとが接続され、ダイオード137のカソードとインダクタ133の一端(低電圧直流電源131の正極)とが接続される。FET135のゲート及びソースには、ゲート駆動回路136が接続される。
【0047】
SIサイリスタ134は、ゲート信号に応答して、ターンオン及びターンオフが可能である。FET135は、ゲート駆動回路136から与えられるゲート信号Vcに応答してドレイン・ソース間の導通状態が変化するスイッチング素子である。FET135のオン電圧又はオン抵抗は低いことが望ましい。又、FET135の耐圧は低電圧直流電源131の電圧Eより高いことを要する。ダイオード137は、SIサイリスタ134のゲートに正バイアスを与えた場合に流れる電流を阻止するため、即ち、SIサイリスタ134のゲートに正バイアスを与えた場合にSIサイリスタ134が電流駆動とならないようにするために設けられる。インダクタ133は、自己インダクタンスを有する誘導性素子として機能しており、その両端には、負荷139が並列接続される。負荷139は、図1のカソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間が対応する。なお、昇圧トランスの1次側をインダクタ133として用いて、昇圧トランスの2次側の両端に負荷139を接続すれば、電圧のピーク値がより高い電気パルスを得ることができる。
【0048】
続いて、図14を参照して、IES回路13の動作について説明する。図14は、上から順に、(a)FET135に与えられるゲート信号Vcの時間(横軸)に対する変化、(b)SIサイリスタ134の導通状態の時間(横軸)に対する変化、(c)インダクタ133に流れる電流ILの時間(横軸)に対する変化、(d)インダクタ133の両端に発生する電圧VLの時間(横軸)に対する変化、(e)SIサイリスタ134のアノード・ゲート間の電圧VAG(縦軸)の時間(横軸)に対する変化を示している。
【0049】
(イ)まず、図14(a)に示すように、時刻t0にゲート信号VcがOFFからONに切り替わると、FET135のドレイン・ソース間は導通状態となる。これにより、SIサイリスタ134のゲートがアノードに対して正バイアスされるので、図14(b)に示すように、SIサイリスタ134のアノード・カソード(A−K)間は導通状態となり、図14(c)に示すように、電流ILが増加し始める。
【0050】
(ロ)電流ILがピーク値ILPに達するあたりの時刻t1に、図14(a)に示すように、ゲート信号VcがONからOFFに切り替わると、FET135のドレイン・ソース間が非導通状態となり、図14(b)に示すように、SIサイリスタ134のアノード・ゲート(A−G)間が導通状態となる。これにより、図14(b)に示すように、時刻t2から時刻t3にかけて、SIサイリスタ134における空乏層の拡大に同期して、図14(c)に示すように、電流ILが減少するとともに、図14(d)に示す電圧VL及び図14(e)に示す電圧VAGが急激に上昇する。
【0051】
(ハ)そして、時刻t3において図14(d)に示す電圧VL及び図14(e)に示す電圧VAGがそれぞれピーク値VLp及びピーク値VAGpに達して、図14(c)に示すように、電流ILの向きが反転する。その後は、図14(b)に示すような時刻t3から時刻t4にかけて、SIサイリスタ134における空乏層の縮小に同期して、図14(c)に示すように、電流ILが増加するとともに、図14(d)に示す電圧VL及び図14(e)に示す電圧VAGが急激に低下する。
【0052】
(ニ)そして、時刻t4において、図14(b)に示すように、SIサイリスタ134が非導通状態となると、図14(c)に示すように、時刻t5に向かって電流ILが減少するとともに、図14(d)に示す電圧VL及び図14(e)に示す電圧VAGは0になる。
【0053】
図1、図2及び図3(a)においては、第1のアノード誘電体11l-1と、第2のアノード誘電体11l-2及び第3のアノード誘電体11l-3の断面形状は、それぞれカソードに対向する側の一辺(長辺)に設けられる刃部が両刃のくさび型をなす構造を例示したが、アノード誘電体の断面形状は刃部が両刃のくさび型をなす構造に限定されるものではなく、図15に示すような種々の断面形状であっても、分割型アノード電極を構成することにより、陽極と陰極との間の容量が低減できるので、陽極と陰極との間に短いパルス幅のパルスが印加でき、大気圧で且つ窒素中の放電が安定して一様に実現でき、処理対象物(サンプル)30に対し低ダメージの処理ができる利点を有する。更に、図15に示すような種々の断面形状であっても、分割型アノード電極の構造を採用することにより、陽極と陰極との間の容量が低減され、パルス周波数を高くでき、プラズマ処理の処理時間が短縮できるという有利な効果を奏するものである。又、当然ながら、アノードメタル9a〜9rが、それぞれアノード誘電体11a〜11rに埋め込まれているため、長時間のストリーマ放電に耐えるという第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタに特有な効果を奏することができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタにおいては、カソード(24,25)が、カソードメタル24と、カソードメタル24に接してカソードメタル24の上に設けられたカソード誘電体25からなる一体構造として説明したが、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ処理リアクタ図16及び図17に示すように、陰極側の構造を4つに分割して分割型カソード電極(25s-1,25s-2,25s-3,25s-4)を構成する。図16及び図17では、4枚のカソード埋込ブレードが並列に等間隔で配置された構造が示されているが、例示であり、図18では6枚のカソード埋込ブレードが並列に等間隔で配置されている。即ち、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置のカソード埋込ブレードの枚数は、仕様に応じて、任意に設計可能である。
【0055】
詳細な構造の図示は省略するが、図3に示したのと同様に、第1のカソード埋込ブレードは板状の第1のカソード誘電体25s-1と、第1のカソード誘電体25s-1の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第1のカソードメタルから構成されている。第2のカソード埋込ブレードは板状の第2のカソード誘電体25s-2と、第2のカソード誘電体25s-2の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第2のカソードメタルから構成されている。第3のカソード埋込ブレードは板状の第3のカソード誘電体25s-3と、第3のカソード誘電体25s-3の内部に埋め込まれた板状(薄膜状)の第3のカソードメタルから構成されている。図16及び図17から分かるように、第1のカソード誘電体25s-1、第2のカソード誘電体25s-2、第3のカソード誘電体25s-3(更には第3のカソード誘電体25s-4)は、それぞれアノードに対向する側の一辺(長手方向の一辺)が刃部をなし、この刃部が、両刃のくさび型をなしている。そして、第1のカソードメタル、第2のカソードメタル、及び第3のカソードメタルは、それぞれ、第1のカソード誘電体25s-1、第2のカソード誘電体25s-2及び第3のカソード誘電体25s-3の厚さ方向における中央部に埋め込まれている。カソード誘電体を構成する材料は、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。
【0056】
図18は、矩形の枠状のブレードホルダ(84,85,86)を用いて、第1のカソード埋込ブレード25s-1、第2のカソード埋込ブレード25s-2、第3のカソード埋込ブレード25s-3、第4のカソード埋込ブレード25s-4、第5のカソード埋込ブレード25s-5及び第6のカソード埋込ブレード25s-6を固定した状態を、それぞれのカソード埋込ブレードの刃部を上にして示す(以下においては、特にカソードメタルを図示していないので、本来、カソード誘電体を示す図面の符合25s-1〜25s-6で、便宜的にカソード埋込ブレードを示す図面の符合25s-1〜25s-6とする。)。図18に示すように、ブレードホルダ(84,85,86)は、互いに平行に配置された第1横材84及び第2横材85と、この第1横材84及び第2横材85にそれぞれ直交する第1縦材86及び第2縦材とで井桁状に構成されている(「第2縦材」は表面配線カバー92の陰になり図示されていないが、図5の第2縦材55と同様な構成である。なお、どちらを「横材」と呼び、どちらを「縦材」と呼ぶかは、単なる定義の問題であり、90度回転し、符合84,85を縦材と呼んでも構わない。但し、本明細書では、符合84,85を横材と呼び、符合86を縦材として統一する。)。図4と同様に、第1横材84と第1縦材86との接合部の外側の角には、第1電極端子89aが設けられ、第2横材85と第1縦材86との接合部の外側の角には、第2電極端子89bが設けられている。第1横材84、第2横材85、第1縦材86、第2縦材、第1電極端子89a及び第2電極端子89bを構成する材料は、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。
【0057】
図16及び図17から分かるように、分割型アノード電極(11d-1,11d-2,11d-3,)と分割型カソード電極(25s-1,25s-2,25s-3,25s-4)との組み合わせは種々のトポロジーが採用可能である。そのため、図18に示すブレードホルダ(84,85,86)の配向は、例えば、図16に示したのと同様にカソード埋込ブレードの長手の方向と、アノード埋込ブレードの長手の方向とを共に平行にしても良く、図17に示すように、カソード埋込ブレードの長手の方向と、アノード埋込ブレードの長手の方向とが互いに直交するようにしても良い。図16では、4枚のカソード埋込ブレードの配列の中央部に、3枚のアノード埋込ブレードの刃部が配列配列されるように刃部の位置が1/2周期ずれて交互に配列されている。
【0058】
図18に示すように、第2縦材に沿って、オフセットブロック83a,第6補助スペーサブロック486,第6主スペーサブロック476,第5補助スペーサブロック485,第5主スペーサブロック475,第4補助スペーサブロック484,第4主スペーサブロック474,第3補助スペーサブロック483,第3主スペーサブロック473,第2補助スペーサブロック482,第2主スペーサブロック472,第1補助スペーサブロック481,第1主スペーサブロック471及びオフセットブロック83bが順に並べられている。同様に、第1縦材86に沿って、オフセットブロック,第6補助スペーサブロック,第6主スペーサブロック,第5補助スペーサブロック,第5主スペーサブロック,……,第1補助スペーサブロック,第1主スペーサブロック及びオフセットブロックが順に並べられているが、表面配線カバー91の陰になり図示されていない。これらのオフセットブロック83a,第6補助スペーサブロック486,第6主スペーサブロック476,第5補助スペーサブロック485,第5主スペーサブロック475,第4補助スペーサブロック484,第4主スペーサブロック474,第3補助スペーサブロック483,第3主スペーサブロック473,第2補助スペーサブロック482,第2主スペーサブロック472,第1補助スペーサブロック481,第1主スペーサブロック471等は、それぞれ底部にU溝を有するU字ブロックである。
【0059】
図6に示したのと同様に、第2縦材に接しかつ平行に桟プレートが底板として設けられている。そして、この桟プレートの上において、ガイドレールが第2縦材に平行に延伸している。図18に示すように、オフセットブロック83a,第6補助スペーサブロック486,第6主スペーサブロック476,第5補助スペーサブロック485,第5主スペーサブロック475,第4補助スペーサブロック484,第4主スペーサブロック474,第3補助スペーサブロック483,第3主スペーサブロック473,第2補助スペーサブロック482,第2主スペーサブロック472,第1補助スペーサブロック481,第1主スペーサブロック471及びオフセットブロック83bのそれぞれは、ガイドレールに底部のU溝を嵌合するように配列される。図示を省略しているが、第1縦材86側も同様な構造である。主スペーサブロック471〜476及び補助スペーサブロック481〜486を構成する材料も、アノード誘電体と同様な、有機系の種々な合成樹脂、セラミック、ガラス等の無機系の高耐圧の絶縁性材料が使用可能である。特に、Al2O3、3Al2O3・2SiO2、BeO、AlN、SiC等が耐圧の点から好ましい。
【0060】
図1に示した陰極配線31Kは、図5及び図9に示したのと同様に、ブレードホルダ(84,85,86)の表面に形成された表面配線(図示省略)で実現されている。第1の表面配線は、第1電極端子89aから第1横材84を経由して、第1縦材86の内側の側壁に導かれ、第1縦材86の側壁を第1縦材86の長手方向に延伸する。そして、第1縦材86の側壁を介して、第1の表面配線は第2,第4及び第6のカソード埋込ブレード25s-2,25s-4,25s-6に電気的に接続される。一方、第2の表面配線は、第2電極端子89bから第2横材85を経由して、第2縦材の内側の側壁に導かれ、第2縦材の側壁を第2縦材の長手方向に延伸する。そして、第2の表面配線は、第2縦材の側壁を介して、第1,第3及び第5のカソード埋込ブレード25s-1,25s-3,25s-5に電気的に接続されている。
【0061】
第2の表面配線の第5のカソード埋込ブレード25s-5との接続部は第5補助スペーサブロック485と第5主スペーサブロック475とにより挟まれ、第2の表面配線の第3のカソード埋込ブレード25s-3との接続部は第3補助スペーサブロック483と第3主スペーサブロック473とにより挟まれ、第2の表面配線の第1のカソード埋込ブレード25s-1との接続部は、第1補助スペーサブロック481と第1主スペーサブロック471とにより挟まれ、それぞれ放電空間に露出しないように構成されている。第1の表面配線側も同様である。更に、図18に示すように、表面配線カバー91,92,93を表面配線の上に被覆することにより、表面配線が放電空間に露出しないように構成されている。表面配線としては、Au、Ag、Cu、Al等の金属薄膜や導電性薄膜が好ましい。密着性が問題となる場合はCr/Cu/Crのような多層構造を表面配線として採用しても良い。更に、例えばAl、Cu、Cu−Fe,Cu−Cr,Cu−Ni−Si,Cu−Sn等の銅合金、Ni−Fe、Fe−Ni−Co等のニッケル・鉄合金、或いは銅とステンレスの複合材料等の導電性テープを表面配線に用いることが可能である。更に、これらの導電性テープにNiメッキやAuメッキ等を施したものなどから表面配線を構成しても良い。
【0062】
図示を省略しているが、図7に示したのと同様に、カソード埋込ブレードのカソード誘電体の一方若しくは長手方向の他方の端部の上部には、カソードメタルへの電気的接続を可能にするように、カソード誘電体に矩形のコンタクトホールが開口され、カソードメタルの一部が露出している。このコンタクトホールに導電性バンプが埋め込まれ、導電性バンプを介してカソードメタルと表面配線とが接続される。
【0063】
なお、図10に示したのと同様に、第6補助スペーサブロック486と第6主スペーサブロック476との間にカソード埋込ブレード25s-6を挟んでボルト等の固定部材で機械的に締め付け、第5補助スペーサブロック485と第5主スペーサブロック475との間にカソード埋込ブレード25s-5を挟んで固定部材で締め付け、……、第1補助スペーサブロック481と第1主スペーサブロック471との間にカソード埋込ブレード25s-1を挟んで固定部材で締め付けて圧接構造にすれば、第2の表面配線とカソードメタル間の電気的な接触抵抗が低減できるとともに、機械的強度や安定性が向上する。第1の表面配線側も同様である。
【0064】
図16及び図17に示すように、分割型アノード電極(11d-1,11d-2,11d-3,)と分割型カソード電極(25s-1,25s-2,25s-3,25s-4)とを組み合わせることにより、図1等において示した平板状の1枚のカソード(24,25)と分割型アノード電極との組み合わせに比して更に、陽極と陰極との間の容量が低減できるので、陽極と陰極との間に更に短いパルス幅のパルスが印加でき、大気圧で且つ窒素中の放電が更に安定して一様に実現でき、処理対象物(サンプル)30に対し更に低ダメージの処理ができる利点を有する。
【0065】
更に、図16及び図17に示すように、分割型アノード電極(11d-1,11d-2,11d-3,)と分割型カソード電極(25s-1,25s-2,25s-3,25s-4)とを組み合わせることにより、図1等において示した平板状の1枚のカソード(24,25)と分割型アノード電極とを組み合わせる場合に比して、陽極と陰極との間の容量が更に低減されるので、更にパルス周波数を高くでき、プラズマ処理の処理時間が更に短縮できるという有利な効果を奏するものである。又、当然ながら、アノードメタルは、それぞれアノード誘電体に埋め込まれており、カソードメタルは、それぞれカソード誘電体に埋め込まれているため、長時間のストリーマ放電に耐えるという第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタに特有な効果も奏することができる。
【0066】
(第3の実施の形態)
図19は、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの内部構造を示す模式的な断面図である。図19に示すように、プラズマ処理リアクタは、図1と同様なバッチ式の反応容器となっており、上面の給気配管27から処理ガスを給気し、下面の排気配管28から処理ガスを排気することができるようになっている。プラズマ処理リアクタは、前面に設けられたドアが開かれた状態においては、内部への処理対象物(サンプル)30の収容及び内部からの処理対象物(サンプル)30の取り出しが可能な状態となり、ドアが閉じられた状態においては、内部が密閉された減圧状態を維持できるようになっている。
【0067】
図19に示すように、プラズマ処理リアクタの内部には、整流板21が水平に設置されている。整流板21には、複数の細管からなる貫通孔がマトリクス状に配置されている。それぞれのアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3には、パルス電源26が接続される。プラズマ処理リアクタでは、処理ガスのタンク(図示省略)から整流板21を経由してプラズマ処理リアクタの内部へ処理ガスが均一なフローとしてシャワー状に給気され、排気配管28に接続された排気ポンプ29によって、プラズマ処理リアクタの内部から排気配管28を経由して処理ガスが排気される。プラズマ処理リアクタの内部の圧力は圧力ゲージ(図示省略)によって測定することができる。図19では図示を省略しているが、詳細には圧力ゲージ及び排気コンダクタンスを調整するバリアブルコンダクタンスバルブ等を排気ポンプ29の上流側に設ければ良いことは、当業者に容易に理解できるであろう。例えば、圧力ゲージ及び流量を制御するマスフローコントローラを図19に示す給気配管27に設け、排気コンダクタンスを調整するバリアブルコンダクタンスバルブを図19に示す排気配管28に設けるようにしても良い。又、圧力ゲージを排気配管28側に設けても良い。
【0068】
本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタでは,反応容器の内部の気体圧力を、大気圧(101kPa)と等しいか80〜90kPa程度の大気圧よりも極く僅か低い値に下げるような条件でも安定した放電が可能であるが、排気ポンプ29によって反応容器の内部を10kPa〜50kPa(大気圧の1/10〜1/2)、より望ましくは、20kPa〜40kPaまで減圧することによって、カソードメタル24とアノードメタル9l-1,9l-2,9l-3との間の間隔を拡げ(典型的には、大気圧の場合の5倍以上)、立体的な処理対象物(サンプル)30に付着した毒素も不活化することができることも可能になる。このように減圧下でファインストリーマ放電を引き起こすことは、ラジカルの寿命を延ばし(典型的には、大気圧下の場合の10倍以上)、処理対象物(サンプル)30に付着した毒素を効率的に不活化することにも寄与している。
【0069】
図1に示した構造とは異なり、反応容器(チャンバ)を構成している底板23の上には、断熱材32が配置され、この断熱材32の上に、電気的に絶縁されたヒータ33が設けられている。カソード(24,25)を構成するカソードメタル24とは、電気的に絶縁されたヒータ33の上に配置され、ヒータ33によりカソードメタル24を加熱することが可能になっている。そして、カソードメタル24に接してカソードメタル24の上には、カソード誘電体25が配置され、カソード誘電体25の上には、処理対象物(サンプル)30が搭載される。処理対象物(サンプル)30は、ヒータ33により所望の温度まで加熱されることが可能である。
【0070】
例えば、2の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタにおいて、プラズマ放電ギャップを40mmとして、処理圧力45kPaとなるように、処理ガスとして窒素(N2)ガスを反応容器の内部に導入し、バイオロジカルインジケーターを使った滅菌処理をした結果、プラズマ処理時間8分で滅菌できた。この際、ヒータ33により75℃まで加熱したが、この加熱時間及び減圧時間を含めても12分で滅菌できた。一方、蒸気滅菌121℃のオートクレーブでは、加熱冷却時間を込みで60分以上必要であるので、滅菌装置として極めて有効であることが分かる。
【0071】
このように、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置によれば、処理対象物(サンプル)30の表面処理や滅菌が効率的に実現できることが分かる。第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置は、窒素中の放電が容易であり、しかも大気圧に近い圧力で安定した放電が可能である。
【0072】
更に、第1及び第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置と同様に、長時間のストリーマ放電に耐える利点や、広範囲で均一な処理ができる利点を有する。
【0073】
更に、第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置は、第1及び第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置と同様に、分割型アノード電極にすることにより、陽極と陰極との間の容量が低減され、陽極と陰極との間に短いパルス幅のパルスが印加できるので、処理対象物(サンプル)30に対し低ダメージの処理ができ、パルス周波数を高くできるため、処理時間が短縮できるという有利な効果を奏するものである。
【0074】
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態において、図1のパルス電源26から延びる陽極配線31Aに第1電極端子59aにおいて第1の表面配線87を、第2電極端子59bにおいて第2の表面配線88を分岐接続すれば、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6を同一位相で駆動することができると説明したが、互いに異なる位相のパルスを伝送する第1及び第2の陽極配線を用意し、第1電極端子59aにおいて第1の表面配線87を第1の陽極配線に、第2電極端子59bにおいて第2の表面配線88を第2の陽極配線にそれぞれ独立に接続すれば、偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5とを、異なる位相で駆動できる。
【0075】
本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置においては、パルス電源を2つ用意しても良く、1つのパルス電源から異なる位相のパルスを出力するようにしても良い。第1の実施の形態のように、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6を同一位相で駆動した場合、プラズマ放電空間には、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の配列の周期性に対応した電界強度の分布が存在する。即ち、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の先端の直下の電界強度は強いが、それぞれの第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の配列の中央部の電界強度が弱いという強度分布が存在する。このため、第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の先端の直下には、プラズマストリーマが直接照射されるホットスポット(ゾーン)が生じ、それぞれの第1〜第6のアノード埋込ブレード11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6の配列の中央部の直下には、プラズマストリーマが弱い若しくは、直接照射されないコールドスポット(ゾーン)が生じるため、均一な表面処理ができない場合がある。
【0076】
第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置においては、図20に示すように、偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5とを異なる位相のパルスで駆動すれば、偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5とを、第1の実施の形態の場合より近づけても、電界分布の不均一が生じず、放電空間の全体を均一にプラズマ照射できる。図20(a)は、パルス電源26がアーク放電を引き起こさずにファインストリーマ放電を引き起こす第1の電気パルスを、カソードメタル24と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5との間に繰り返し印加するタイミング図を示す。図20(b)は、パルス電源26が第1の電気パルスとは同一繰り返し周波数で、位相が1/2周期異なり、アーク放電を引き起こさずにファインストリーマ放電を引き起こす第2の電気パルスを、カソードメタル24と偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6との間に繰り返し印加するタイミング図を示す。図20(a)及び(b)において、第1の電気パルス及び第2の電気パルスのパルス幅は、半値幅で50〜300ns程度である。
【0077】
偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5とにそれぞれ印加する第1の電気パルスと第2の電気パルスとの位相のずれは、1/2周期に限定されない。図21に示すように、1/2周期以下の短い位相のずれでも、同様に、奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5と偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6とを近づけても、電位分布の重畳が可能となるので、電界分布の不均一が生じず、放電空間の全体を均一にプラズマ照射できる。図21(a)は、カソードメタル24と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5との間に印加する第1の電気パルスの波形を示す。図21(b)では、図21(a)に示した第1の電気パルスとは同一繰り返し周波数で、位相が1/2周期より小さな位相ずれの第2の電気パルスを、カソードメタル24と偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6との間に繰り返し印加することを示している。図21(a)及び(b)においても、第1の電気パルス及び第2の電気パルスのパルス幅は、半値幅で50〜300ns程度である。図21のようなパルス制御をし、第1の電気パルスと第2の電気パルスとの位相のずれ(遅延時間)が、第1の電気パルスで生成されたプラズマの活性種の寿命よりも短いタイミングになるように選べば、放電電圧を図20の場合より低くしても放電できるため、処理対象物(サンプル)30に対して同じ効果を少ない電力で達成できる。
【0078】
パルス電源26には、2系列IES回路を採用することが、高速スイッチングを実現する上で望ましい。2系列IES回路は、2系列のSIサイリスタのクロージングスイッチ機能の他、オープニングスイッチング機能を用いて2系列のターンオフを行い、2系列のSIサイリスタのターンオフによりそれぞれのSIサイリスタのゲート・アノード間に高圧を発生させている。
【0079】
先ず、図22を参照して、2系列IES回路(パルス電源)の構成について説明する。2系列IES回路は、共通の低電圧直流電源V0を備える。低電圧直流電源V0の電圧Eは、2系列IES回路が発生させる第1及び第2の電気パルスの電圧のピーク値より著しく低いことが許容される。例えば、後述する第1のインダクタL1又は第2のインダクタL2の両端に発生させる電圧VLのピーク値VLPが数kVに達しても、低電圧直流電源V0の電圧Eは数10Vであることが許容される。電圧Eの下限は後述する第1のSIサイリスタ134-1又は第2のSIサイリスタ134-2のラッチング電圧以上で決定される-2系列IES回路は、共通の低電圧直流電源V0を電気エネルギ源として利用可能であるので、小型・低コストに構築可能である。図示を省略しているが-2系列IES回路は、共通の低電圧直流電源V0に並列接続されるコンデンサを備えるようにすることが好ましい。並列接続されるコンデンサは、低電圧直流電源V0のインピーダンスを見かけ上低下させることにより低電圧直流電源V0の放電能力を強化する。
【0080】
更に、図22に示すように-2系列IES回路は、ゲート駆動回路136と、第1の電気パルスを生成する第1のインダクタL1、第1のSIサイリスタ134-1、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1、第1のダイオード137-1、及び第2の電気パルスを生成する第2のインダクタL2、第2のSIサイリスタ134-2、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2、第2のダイオード137-2とを備える-2系列IES回路では、第1の電気パルスを生成するために、低電圧直流電源V0の正極と第1のインダクタL1の一端とが接続され、第1のインダクタL1の他端と第1のSIサイリスタ134-1のアノードとが接続され、第1のSIサイリスタ134-1のカソードと第1のMOS電界効果トランジスタ135-1のドレインとが接続され、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1のソースと低電圧直流電源V0の負極とが接続されている。又-2系列IES回路では、第1のSIサイリスタ134-1のゲートと第1のダイオード137-1のアノードとが接続され、第1のダイオード137-1のカソードと第1のインダクタL1の一端(低電圧直流電源V0の正極)とが接続される。第1のMOS電界効果トランジスタ135-1のゲート及びソースには、ゲート駆動回路136が接続される。
【0081】
同様に、第2の電気パルスを生成するために、図22に示すように、低電圧直流電源V0の正極と第2のインダクタL2の一端とが接続され、第2のインダクタL2の他端と第2のSIサイリスタ134-2のアノードとが接続され、第2のSIサイリスタ134-2のカソードと第2のMOS電界効果トランジスタ135-2のドレインとが接続され、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2のソースと低電圧直流電源V0の負極とが接続されている。又-2系列IES回路では、第2のSIサイリスタ134-2のゲートと第2のダイオード137-2のアノードとが接続され、第2のダイオード137-2のカソードと第2のインダクタL2の一端(低電圧直流電源V0の正極)とが接続される。第2のMOS電界効果トランジスタ135-2のゲート及びソースには、ゲート駆動回路136が接続される。
【0082】
第1の電気パルスを生成する第1のSIサイリスタ134-1は、ゲート信号に応答して、ターンオン及びターンオフが可能である。第1のMOS電界効果トランジスタ135-1は、ゲート駆動回路136から与えられる第1ゲート信号Vc1に応答してドレイン・ソース間の導通状態が変化するスイッチング素子である。第1のMOS電界効果トランジスタ135-1のオン電圧又はオン抵抗は低いことが望ましい。又、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1の耐圧は低電圧直流電源V0の電圧Eより高いことを要する。第1のダイオード137-1は、第1のSIサイリスタ134-1のゲートに正バイアスを与えた場合に流れる電流を阻止するため、即ち、第1のSIサイリスタ134-1のゲートに正バイアスを与えた場合に第1のSIサイリスタ134-1が電流駆動とならないようにするために設けられる。第1のインダクタL1は、自己インダクタンスを有する誘導性素子として機能しており、その両端には、第1の負荷139aが並列接続される。第1の負荷139aは、図1のカソードメタル24と奇数番のアノード埋込ブレード(第1,第3及び第5のアノード埋込ブレード)11l-1,11l-3,11l-5との間が対応する。ゲート駆動回路136が第1ゲート信号Vc1を第1のMOS電界効果トランジスタ135-1に印加することにより、図23に示すように、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1がターンオンし、これにより、第1のSIサイリスタ134-1が導通状態となり、第1のインダクタL1に電流i1が流れ、これにより第1の負荷139aに出力1のパルスが発生する。なお、昇圧トランスの1次側を第1のインダクタL1として用いて、昇圧トランスの2次側の両端に第1の負荷139aを接続すれば、電圧のピーク値がより高い第1の電気パルスを得ることができる。
【0083】
同様に、第2の電気パルスを生成する第2のSIサイリスタ134-2は、ゲート信号に応答して、ターンオン及びターンオフが可能である。第2のMOS電界効果トランジスタ135-2は、ゲート駆動回路136から与えられる第2ゲート信号Vc2に応答してドレイン・ソース間の導通状態が変化するスイッチング素子である。ゲート駆動回路136は、第1のMOS電界効果トランジスタ135-1に与える第1ゲート信号Vc1から一定の遅延時間を有して、第2ゲート信号Vc2を、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2に印加する。第2のMOS電界効果トランジスタ135-2のオン電圧又はオン抵抗は低いことが望ましい。又、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2の耐圧は低電圧直流電源V0の電圧Eより高いことを要する。第2のダイオード137-2は、第2のSIサイリスタ134-2のゲートに正バイアスを与えた場合に流れる電流を阻止するため、即ち、第2のSIサイリスタ134-2のゲートに正バイアスを与えた場合に第2のSIサイリスタ134-2が電流駆動とならないようにするために設けられる。第2のインダクタL2は、自己インダクタンスを有する誘導性素子として機能しており、その両端には、第2の負荷139bが並列接続される。第2の負荷139bは、図1のカソードメタル24と偶数番のアノード埋込ブレード(第2,第4及び第6のアノード埋込ブレード)11l-2,11l-4,11l-6との間が対応する。ゲート駆動回路136が、第2ゲート信号Vc2を第2のMOS電界効果トランジスタ135-2に印加することにより、図23に示すように、第2のMOS電界効果トランジスタ135-2がターンオンし、これにより、第2のSIサイリスタ134-2が導通状態となり、第2のインダクタL2に電流i2が流れ、これにより第2の負荷139bに出力1のパルスから一定時間遅延した出力2のパルスが発生する。なお、昇圧トランスの1次側を第2のインダクタL2として用いて、昇圧トランスの2次側の両端に第2の負荷139bを接続すれば、電圧のピーク値がより高い第2の電気パルスを得ることができる。
【0084】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第4の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0085】
例えば、図4〜図10及び図18において、矩形の枠状のブレードホルダを例示したが、ブレードホルダの形状は矩形に限定されるものではない。例えば、6角形、8角形等の多角形、円形、楕円形等で枠を構成してブレードホルダとしても構わない。円形等で枠を構成したブレードホルダの場合、アノード埋込ブレードやカソード埋込ブレードが円等を平行に切る長手方向の長さが異なることは、幾何学的に明らかである。
【0086】
図7では、一枚のブレード形状のアノード誘電体11l-j-1の端部に、アノード誘電体11l-j-1に矩形のコンタクトホール14l-j-1を開口し、このコンタクトホール14l-j-1に導電性バンプを埋め込み、導電性バンプを介してアノードメタル9l-j-1と第2の表面配線88とが接続される構造を示したが例示に過ぎない。
【0087】
例えば、図24に示すように、第jのアノード埋込ブレードを、アノードブレード本体部11al-jとそのスペーサ部11bl-jとで分離した組み立て構造で構成しておき、アノードブレード本体部11al-jの長手方向の一方の端部の上部にアノードメタルへの電気的接続を可能にするように、アノードブレード本体部11al-jに矩形のコンタクトホールを開口し、アノードメタルの一部を露出させるような構造でも構わない。この場合は、このコンタクトホールを介して、金属等の導電性材料からなる取り出し電極99jをアノードメタルにロウ付けし、取り出し電極99jを介してアノードメタルと第2の表面配線88とが接続される。取り出し電極99jは、コバールや銅(Cu)等の導電率の高い金属等が好ましく、取り出し電極99jの表面は金(Au)等の導電率が高く、且つ耐食性の高い材料で鍍金しておくのが更に好ましい。
【0088】
図25では明示していないが、第j主スペーサブロック71jに、図7に示したのと同様に導電性ストリップ等の表面配線パターンを設けておき、取り出し電極99jを介してアノードメタルと導電性ストリップとが接続される(導電性ストリップ82j-1は、図7では、主スペーサブロック71j-1の側壁に凸部として設けられているが、ダマスカス配線(ダマシン配線)の技術を用い、主スペーサブロック71j-1の側壁に設けたダマシン溝に埋め込むように形成しても良い。更に、主スペーサブロック71j-1の側壁に設けたダマシン溝にCu等の金属を埋め込んだ後、Au等の金属を電界メッキにより選択的に導電性ストリップ82j-1の上に形成し、導電性ストリップ82j-1の厚みを増やして、主スペーサブロック71j-1の側壁に凸部となるようにしても良い。)。
【0089】
図26に示すように、第j補助スペーサブロック72jのスペーサ部11bl-jの取り出し電極99jに対応する位置には、取り出し電極99jの挿入を可能にするように、円形の貫通孔98jが設けられている。第j補助スペーサブロック72jの厚みは、取り出し電極99jよりも1〜10μm程度薄くしておくのが好ましい。そして、図27に示すように、第j補助スペーサブロック72jの円形の貫通孔98jに取り出し電極99jが挿入されるようにして、第j補助スペーサブロック72jと第j主スペーサブロック71jとの間に、スペーサ部11bl-jとアノード埋込ブレード11al-jとを挟んで圧接構造にすれば、第j補助スペーサブロック72jの円形の貫通孔98jから取り出し電極99jの頭が極僅か(1〜10μm)程度突出する。
【0090】
図25及び図27では明示していないが、第(j+1)主スペーサブロック71j+1に、図7に示したのと同様に導電性ストリップ等の表面配線パターンを設けてある。このため、図27に図示した状態において、第j補助スペーサブロック72jの上に、第(j+1)主スペーサブロック71j+1を積層すれば、第j補助スペーサブロック72jの円形の貫通孔98jから頭が突出した取り出し電極99j+1に第(j+1)主スペーサブロック71j+1の導電性ストリップとが接触する(導電性ストリップ82j-1は、図7では、主スペーサブロック71j-1の側壁に凸部として設けられているが、ダマスカス配線(ダマシン配線)の技術を用い、主スペーサブロック71j-1の側壁に設けたダマシン溝に埋め込むように形成しても良い。更に、主スペーサブロック71j-1の側壁に設けたダマシン溝にCu等の金属を埋め込んだ後、Au等の金属を電界メッキにより選択的に導電性ストリップ82j-1の上に形成し、導電性ストリップ82j-1の厚みを増やして、主スペーサブロック71j-1の側壁に凸部となるようにしても良い。)。このようにして、第2の表面配線88とアノード埋込ブレード11al-jのアノードメタル間の電気的な接続が、取り出し電極99j及び第(j+1)主スペーサブロック71j+1の導電性ストリップを介して実現される。
【0091】
同様に、図27に示したように、第(j−1)補助スペーサブロック72j-1の円形の貫通孔に取り出し電極(図示省略。)が挿入されるように、第(j−1)補助スペーサブロック72j-1と第(j−1)主スペーサブロック71j-1との間に、スペーサ部11bl-j-1とアノード埋込ブレード11al-j-1とを挟んで圧接構造にし、第2の表面配線88とアノード埋込ブレード11al-j-1のアノードメタル間の電気的な接続が、取り出し電極99j及び第j主スペーサブロック71jの導電性ストリップを介して実現される。更に、第2の表面配線88とアノード埋込ブレード11al-j-2のアノードメタル間の電気的な接続が、取り出し電極99j及び第(j−1)主スペーサブロック71j-1の導電性ストリップを介して実現される。
【0092】
又、第1〜第4の実施の形態で説明したそれぞれの技術的思想を互いに組み合わせることも可能である。例えば、第1の実施の形態に示した陽極の構造や、第2の実施の形態で示した陰極の構造との組み合わせを第3の実施の形態や第4の実施の形態に適用しても良いことは勿論である。
【0093】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの内部構造を示すの模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの分割型アノード電極の構造を3枚のアノード埋込ブレードで便宜的に説明する模式的な鳥瞰図である。
【図3】図2に示したアノード埋込ブレードの構造を説明する模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタに用いる分割型アノード電極の具体的な構造を説明する鳥瞰図である。
【図5】図4に示した分割型アノード電極において、表面配線カバーを取り外して表面配線及び組み立て構造の詳細を説明する鳥瞰図である。
【図6】図5に示した表面配線カバーを取り外した構造において、特に、第2縦材の近傍を詳細を説明する鳥瞰図である。
【図7】図4に示した分割型アノード電極の組み立て方法を説明する鳥瞰図である。
【図8】図4に示した分割型アノード電極のアノード埋込ブレード装着前のブレードホルダを示す鳥瞰図である。
【図9】図4に示した分割型アノード電極の表面配線と、その上の表面配線カバーを説明する鳥瞰図である。
【図10】図4に示した分割型アノード電極において、補助スペーサブロックと主スペーサブロックとの間にアノード埋込ブレードを挟んで固定部材で機械的に締め付けた構造を説明する鳥瞰図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの第1〜第3のアノードメタルのいずれかを等価的な陽極で表し、カソードメタルを等価的な陰極で表した場合において、等価陽極及び等価陰極間への電気パルスの印加によって引き起こされる放電の状態と電気パルスの電圧概略波形(無負荷時)とを模式的に示す図である。
【図12】パルス電源がカソードメタルとアノードメタルとの間に印加する電気パルスの電圧波形及び電流波形の一例を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタのパルス電源に用いる誘導エネルギ蓄積型電源回路の構造を説明する回路図である。
【図14】図13に示した誘導エネルギ蓄積型電源回路の動作を説明するタイミング図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの分割型アノード電極に用いることの可能な種々のアノード埋込ブレードの断面形状を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタにおいて、分割型アノード電極と分割型カソード電極を用いた場合の構成の一例を説明する模式的な鳥瞰図である(その1)。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る他のプラズマ処理リアクタにおいて、分割型アノード電極と分割型カソード電極を用いた場合の他の構成を説明する模式的な鳥瞰図である(その2)。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る分割型カソード電極の具体的な構造を説明する鳥瞰図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理リアクタの内部構造を示すの模式的な断面図である。
【図20】図20(a)は、カソードメタルと奇数番のアノード埋込ブレードとの間に繰り返し印加する第1の電気パルスを、図20(b)は、カソードメタルと偶数番のアノード埋込ブレードとの間に繰り返し印加する第2の電気パルスを示すタイミング図である。
【図21】図21(a)は、カソードメタルと奇数番のアノード埋込ブレードとの間に繰り返し印加する第1の電気パルスを、図21(b)は、カソードメタルと偶数番のアノード埋込ブレードとの間に繰り返し印加する第2の電気パルスを示すタイミング図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置のパルス電源に用いる2系列誘導エネルギ蓄積型電源回路(2系列IES回路)の構造を説明する回路図である。
【図23】図22に示した2系列IES回路の動作を説明するタイミング図である。
【図24】他の実施の形態に係るプラズマ処理装置の説明として、アノード埋込ブレードを、アノードブレード本体部と、そのスペーサ部とに分離した組み立て構造を説明する模式図である。
【図25】主スペーサブロックに、図24に示したアノードブレード本体部を取り付けた構造を説明する模式図である。
【図26】他の実施の形態に係るプラズマ処理装置に係り、補助スペーサブロックのスペーサ部の取り出し電極に対応する位置に設けられた貫通孔を説明する模式図である。
【図27】図26の補助スペーサブロックの貫通孔から取り出し電極の頭が突出した状態を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0095】
9l-1,9l-2,9l-3,9a〜9r…アノードメタル
11l-1,11l-2,11l-3,11l-4,11l-5,11l-6,11a〜11r,11aa〜11ae,11s,11t,11u〜11x…アノード誘電体
13…IES回路
13l-j、13l-j-1…U溝
14l-j、14l-j-1…コンタクトホール
21…整流板
22…ケース
23…底板
25s-1,25s-2,25s-3,25s-4,25s-5,25s-6,…カソード埋込ブレード
26…パルス電源
27…給気配管
28…排気配管
29…排気ポンプ
31A…陽極配線
31K…陰極配線
32…断熱材
33…ヒータ
411〜416,421〜426…固定部材
471〜476,711〜716,731〜736…主スペーサブロック
481〜486,721〜726,741〜746…補助スペーサブロック
51,84…第1横材
52,85…第2横材
53a,53b,54a,54b,83a,83b…オフセットブロック
55…第2縦材
56,86…第1縦材
59…ガイドレール
59a,89a…第1電極端子
59b,89b…第2電極端子
60…桟プレート
61,62,63,91,92,93…表面配線カバー
771〜776,781〜786…ギャップ
81…等価陽極
82…等価陰極
83…ストリーマ
87,88…表面配線
88j+1,88j-1…導電性ストリップ
131…低電圧直流電源
132…コンデンサ
133…インダクタ
134…SIサイリスタ
135…FET
135…MOSFET
136…ゲート駆動回路
137…ダイオード
139…負荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一辺にそれぞれ刃部を設けた複数の板状のアノード埋込ブレードを、互いの主面を対向させて並列配置した分割型アノード電極と、
前記アノード埋込ブレードのそれぞれの刃部に対向して配置されたカソードと、
を備え、前記分割型アノード電極と前記カソード間に処理ガスを導入して、前記分割型アノード電極と前記カソード間に少なくとも形成されるプラズマ処理空間内にプラズマを生成し、前記アノード埋込ブレードのそれぞれは、板状のアノード誘電体と、該アノード誘電体の内部に埋め込まれたアノードメタルからなり、前記複数のアノード埋込ブレードは、それぞれの長手方向の両端部において、互いの主面間に絶縁性材料からなるスペーサブロックを挟んで、前記複数のアノード埋込ブレード間の距離を調整したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記分割型アノード電極が、絶縁性材料からなり、前記複数のアノード埋込ブレードを囲む枠状のブレードホルダを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記分割型アノード電極が、前記ブレードホルダの表面に設けられ、前記複数のアノード埋込ブレードのそれぞれのアノードメタルに電圧を供給する表面配線を更に備えることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記分割型アノード電極は、前記スペーサブロックと前記アノード埋込ブレードとの間に挟まれた導電性ストリップを各アノード埋込ブレード毎に更に備え、該導電性ストリップを介して、前記アノードメタルのそれぞれと前記表面配線とが電気的に接続されることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記分割型アノード電極が、
前記ブレードホルダの表面に設けられ、前記複数のアノード埋込ブレードの内の偶数番のアノード埋込ブレードのそれぞれのアノードメタルに電圧を供給する第1の表面配線と、
前記ブレードホルダの表面に設けられ、前記複数のアノード埋込ブレードの内の奇数番のアノード埋込ブレードのそれぞれのアノードメタルに電圧を供給する第2の表面配線と、
を更に備えることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の表面配線が同一位相のパルスで駆動されることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の表面配線が、互いに異なる位相のパルスで駆動されることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記カソードが、長手方向の一辺にそれぞれ刃部を設けた複数の板状のカソード埋込ブレードを、互いの主面を対向させて並列配置した分割型カソード電極であり、前記カソード埋込ブレードのそれぞれは、板状のカソード誘電体と、該カソード誘電体の内部に埋め込まれたカソードメタルからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記分割型カソード電極が、絶縁性材料からなり、前記複数のカソード埋込ブレードを囲む枠状のブレードホルダを更に備えることを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記分割型カソード電極が、前記ブレードホルダの表面に設けられ、前記複数のカソード埋込ブレードのそれぞれのカソードメタルに電圧を供給する表面配線を更に備えることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記分割型カソード電極は、前記スペーサブロックと前記カソード埋込ブレードとの間に挟まれた導電性ストリップを各カソード埋込ブレード毎に更に備え、該導電性ストリップを介して、前記カソードメタルのそれぞれと前記表面配線とが電気的に接続されることを特徴とする請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記処理ガスとして窒素ガスを導入し、窒素ガスプラズマを前記プラズマ処理空間に生成することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記プラズマ処理空間が、大気圧であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記プラズマ処理空間が、減圧状態であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
SIサイリスタを使ったパルス電源を更に備え、該パルス電源から前記分割型アノード電極と前記カソード間にパルス電圧が印加されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項1】
長手方向の一辺にそれぞれ刃部を設けた複数の板状のアノード埋込ブレードを、互いの主面を対向させて並列配置した分割型アノード電極と、
前記アノード埋込ブレードのそれぞれの刃部に対向して配置されたカソードと、
を備え、前記分割型アノード電極と前記カソード間に処理ガスを導入して、前記分割型アノード電極と前記カソード間に少なくとも形成されるプラズマ処理空間内にプラズマを生成し、前記アノード埋込ブレードのそれぞれは、板状のアノード誘電体と、該アノード誘電体の内部に埋め込まれたアノードメタルからなり、前記複数のアノード埋込ブレードは、それぞれの長手方向の両端部において、互いの主面間に絶縁性材料からなるスペーサブロックを挟んで、前記複数のアノード埋込ブレード間の距離を調整したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記分割型アノード電極が、絶縁性材料からなり、前記複数のアノード埋込ブレードを囲む枠状のブレードホルダを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記分割型アノード電極が、前記ブレードホルダの表面に設けられ、前記複数のアノード埋込ブレードのそれぞれのアノードメタルに電圧を供給する表面配線を更に備えることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記分割型アノード電極は、前記スペーサブロックと前記アノード埋込ブレードとの間に挟まれた導電性ストリップを各アノード埋込ブレード毎に更に備え、該導電性ストリップを介して、前記アノードメタルのそれぞれと前記表面配線とが電気的に接続されることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記分割型アノード電極が、
前記ブレードホルダの表面に設けられ、前記複数のアノード埋込ブレードの内の偶数番のアノード埋込ブレードのそれぞれのアノードメタルに電圧を供給する第1の表面配線と、
前記ブレードホルダの表面に設けられ、前記複数のアノード埋込ブレードの内の奇数番のアノード埋込ブレードのそれぞれのアノードメタルに電圧を供給する第2の表面配線と、
を更に備えることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の表面配線が同一位相のパルスで駆動されることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の表面配線が、互いに異なる位相のパルスで駆動されることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記カソードが、長手方向の一辺にそれぞれ刃部を設けた複数の板状のカソード埋込ブレードを、互いの主面を対向させて並列配置した分割型カソード電極であり、前記カソード埋込ブレードのそれぞれは、板状のカソード誘電体と、該カソード誘電体の内部に埋め込まれたカソードメタルからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記分割型カソード電極が、絶縁性材料からなり、前記複数のカソード埋込ブレードを囲む枠状のブレードホルダを更に備えることを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記分割型カソード電極が、前記ブレードホルダの表面に設けられ、前記複数のカソード埋込ブレードのそれぞれのカソードメタルに電圧を供給する表面配線を更に備えることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記分割型カソード電極は、前記スペーサブロックと前記カソード埋込ブレードとの間に挟まれた導電性ストリップを各カソード埋込ブレード毎に更に備え、該導電性ストリップを介して、前記カソードメタルのそれぞれと前記表面配線とが電気的に接続されることを特徴とする請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記処理ガスとして窒素ガスを導入し、窒素ガスプラズマを前記プラズマ処理空間に生成することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記プラズマ処理空間が、大気圧であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記プラズマ処理空間が、減圧状態であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
SIサイリスタを使ったパルス電源を更に備え、該パルス電源から前記分割型アノード電極と前記カソード間にパルス電圧が印加されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
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【図22】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2009−199953(P2009−199953A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42087(P2008−42087)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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