説明

プラズマ処理装置

【課題】プラズマ処理が効率よく行われ、電極の絶縁が容易になり、内壁に沿う沿面放電が抑制されるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置1000は、流路1018を持つチャンバ1010が絶縁体からなる。流路1018の軸方向に非平行な方向に延在する溝1036が流路1018を囲む内壁1034に刻まれる。第2の電極1014及び第3の電極1016は、それぞれ、第1の電極1012より流路1018の上流側及び下流側にある。第1の電極1012と第2の電極1014とは流路1018の軸方向に間隔を置いて対向する。第1の電極1012と第3の電極1016とは流路1018の軸方向に間隔を置いて対向する。第1の電極1012はパルス電源1004の第1の極に電気的に接続され、第2の電極1014及び第3の電極1016はパルス電源1004の第2の極に電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流路の途中に複数の電極を設け、アノードとカソードとの間に電圧を印加し、アノードとカソードとの間の空間にプラズマを発生させるプラズマ処理装置が知られている。特許文献1及び2は、その例である。
【0003】
特許文献1のプラズマ処理装置(排気ガス浄化装置)においては、複数の電極(第1の平板電極、第2の平板電極及び第3の平板電極)が流路の途中に設けられ、アノード(第1の平板電極及び第3の平板電極)とカソード(第2の平板電極)との間に電圧が印加される。
【0004】
特許文献2のプラズマ処理装置(プラズマ生成装置)においては、複数の電極(針状電極及びリング状電極)が流路の途中に設けられ、アノード(針状電極)とカソード(リング状電極)との間に電圧が印加される。
【0005】
しかし、従来のプラズマ処理装置においては、流路を持つ構造物の材質が導電体である場合は、電極と流路を持つ構造物とを絶縁するためにプラズマ処理装置の構造が複雑になる。
【0006】
例えば、特許文献1においては、流路を持つ構造物の材質が導電体であるため(段落0009)、絶縁部材(第1の絶縁部材及び第2の絶縁部材)が設けられる。特許文献2も、複数の電極の絶縁に言及する(段落0033)。
【0007】
この問題を解決するためには、特許文献2も言及するが(段落0033)、流路を持つ構造物の材質を絶縁体とすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−10652号公報
【特許文献2】特開2006−269095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、流路を持つ構造物の材質が絶縁体である場合は、流路を囲む内壁に沿う沿面放電が発生する場合がある。この問題は、特許文献1及び2とは異なる電極構造が採用される場合にも問題となる。特に、プラズマ処理を効率よく行うために沿面放電が起こりやすい電極構造が採用された場合に問題となる。
【0010】
本発明は、この問題を解決するためになされる。本発明の目的は、プラズマ処理が効率よく行われ、電極の絶縁が容易になり、内壁に沿う沿面放電が抑制されるプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の局面によれば、プラズマ処理装置は、流路を有する構造物、第1の電極、第2の電極、第3の電極、パルス電源及び配線を備える。構造物は絶縁体からなり、流路は内壁に囲まれる。流路の軸方向に非平行な方向に延在する溝が内壁に刻まれる。第1の電極、第2の電極及び第3の電極は流路の途中にある。第2の電極は、第1の電極より流路の上流側にある。第3の電極は、第1の電極より流路の下流側にある。第1の電極と第2の電極とは流路の軸方向に間隔を置いて対向する。第1の電極と第3の電極とは流路の軸方向に間隔を置いて対向する。配線により、第1の電極はパルス電源の第1の極に電気的に接続され、第2の電極及び第3の電極はパルス電源の第2の極に電気的に接続される。パルス電源は、第1の極と第2の極との間にパルス電圧を発生する。第1の電極、第2の電極及び第3の電極は、それぞれ、第1のガス通過面、第2のガス通過面及び第3のガス通過面を横切り、第1のガス通過面、第2のガス通過面及び第3のガス通過面の一部のみを占める。
【0012】
本発明の第2の局面によれば、本発明の第1の局面において、溝が流路の周方向に一周する環状溝である。
【0013】
本発明の第3の局面によれば、本発明の第1の局面において、溝が流路の軸方向に進行しながら流路の周方向に周回し流路の周方向に一周以上するらせん溝である。
【0014】
本発明の第4の局面によれば、本発明の第1の局面において、溝が流路の軸方向に進行しながら流路の周方向に進行し流路の周方向に一周しない斜め溝であり、2個以上の斜め溝が流路の周方向に分布する。
【0015】
本発明の第5の局面によれば、本発明の第1から第4までのいずれかの局面において、溝が延在する方向から見て溝が端から中心へ向かって深くなる波形の断面形状を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の局面によれば、ガスが効率よく活性化され、プラズマ処理が効率よく行われる。また、電極と流路を持つ構造物との絶縁が不要になり、電極の絶縁が容易になる。さらに、流路の軸方向に延在する放電経路と溝とが交差し、内壁に沿う沿面放電が抑制される。
【0017】
本発明の第2の局面によれば、内壁の全周にわたって溝が刻まれ、沿面放電がさらに抑制される。
【0018】
本発明の第3の局面によれば、内壁の全周にわたって溝が刻まれ、沿面放電がさらに抑制される。また、溝の中を流体が流れ、溝の中に堆積した異物が流体により流され、異物に起因する沿面放電が抑制される。
【0019】
本発明の第4の局面によれば、内壁の全周にわたって溝が刻まれ、沿面放電がさらに抑制される。また、溝の中を流体が流れ、溝の中に堆積した異物が流体により流されやすくなり、異物に起因する沿面放電が抑制される。
【0020】
本発明の第5の局面によれば、溝の中を流体が流れ、溝の中に堆積した異物が流体により流され、異物に起因する沿面放電が抑制される。
【0021】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態のプラズマ処理装置の模式図である。
【図2】第1実施形態のリアクタの斜視図である。
【図3】第1実施形態のリアクタの断面図である。
【図4】第1実施形態のリアクタの断面図である。
【図5】第1実施形態のリアクタの断面図である。
【図6】第1実施形態のパルス発生回路の回路図である。
【図7】ダイレクト方式によるガスの処理を説明する図である。
【図8】ダイレクト方式による固体構造物の処理を説明する図である。
【図9】リモート方式による固体構造物の処理を説明する図である。
【図10】第2実施形態のリアクタの斜視図である。
【図11】第2実施形態のリアクタの断面図である。
【図12】第3実施形態のリアクタの斜視図である。
【図13】第3実施形態のリアクタの断面図である。
【図14】第4実施形態のリアクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
{第1実施形態}
(概略)
第1実施形態は、プラズマ処理装置に関する。
【0024】
図1は、第1実施形態のプラズマ処理装置の模式図である。図1は、プラズマ処理装置のリアクタの断面及びリアクタの付属物を示す。図2から図5までは、リアクタの模式図である。図2は、斜視図である。図3から図5までは、それぞれ、図1のA−A、B−B及びC−Cにおける断面図である。
【0025】
図1に示すように、プラズマ処理装置1000は、リアクタ1002、パルス電源1004、配線1006及びガス供給系1008を備える。また、図1から図5までに示すように、リアクタ1002は、チャンバ1010、第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016を備える。
【0026】
図1に示すように、第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016は流路1018の途中にある。第2の電極1014は、第1の電極1012より流路1018の上流側にある。第3の電極1016は、第1の電極1012より流路1018の下流側にある。配線1006により、アノード1060となる第1の電極1012はパルス電源1004の正極1020に電気的に接続され、カソード1062となる第2の電極1014及び第3の電極1016はパルス電源1004の負極1022に電気的に接続される。図3から図5までに示すように、第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016は、それぞれ、第1のガス通過面1024、第2のガス通過面1026及び第3のガス通過面1028の一部のみを占める。
【0027】
ガス供給系1008から供給されるガスは、流路1018の入口1030から入り、流路1018を流れ、流路1018の出口1032から出る。流路1018を流れるガスは、第2のガス通過面1026、第1のガス通過面1024及び第3のガス通過面1028を順に通過する。パルス電源1004が正極1020と負極1022との間に発生したパルス電圧は、アノード1060とカソード1062との間に印加される。
【0028】
プラズマ処理装置1000においては、ガスが流路1018を流れているときにアノード1060とカソード1062との間にパルス電圧が印加され、アノード1060とカソード1062との間の空間に発生したプラズマによりガスが活性化される。これにより、ガスが効率よく活性化され、プラズマ処理が効率よく行われる。
【0029】
「活性化」とは、化学種をより高いエネルギー順位へ励起すること、イオンを生成すること、ラジカルを生成すること等のガスの反応性を向上することをいう。
【0030】
(チャンバの材質及び構造)
チャンバ1010は絶縁体、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)又はアルミナからなる。これにより、第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016とチャンバ1010との絶縁が不要になり、リアクタ1002の構造が簡略化される。
【0031】
チャンバ1010は流路1018となる円筒孔が形成された構造物である。チャンバ1010は、流路1018を持つ構造物であればよく、円筒孔が形成された構造物以外であってもよい。流路1018の断面形状も円形でなくてもよい。
【0032】
(沿面放電の抑制)
図1から図5までに示すように、流路1018は内壁1034に囲まれる。チャンバ1010が絶縁体からなる場合は内壁1034が絶縁体面になり、流路1018の軸方向A1に平行な電界が流路1018には印加される。流路1018の軸方向A1とは、流路1018が延在する方向、すなわち、ガスが流れる方向をいう。このため、リアクタ1002においては、沿面放電の抑制策がとられないと、第1の電極1012と第2の電極1014との間、第1の電極1012と第3の電極1016との間、第1の電極1012と流路1018の入口1030の外側にある導電体との間、第1の電極1012と流路1018の出口1032の外側にある導電体との間等に沿面放電が起こりやすい。
【0033】
そこで、図1及び図2に示すように、沿面放電の抑制策として環状溝1036が内壁1034に刻まれる。
【0034】
(溝の延在方向)
環状溝1036は流路1018の周方向C1に延在する。これにより、流路1018の軸方向A1に延在する放電経路と環状溝1036とが垂直に交差し、沿面放電が抑制される。当該放電経路と環状溝1036とが交差するためには、流路1018の軸方向A1に非平行な方向に溝が延在すればよく、環状溝1036の全体が流路1018の周方向C1に延在していなくてもよい。
【0035】
(環状であることの利点)
環状溝1036は、流路1018の周方向C1に一周する。流路1018の周方向C1とは、流路1018の軸方向A1の位置を保ったまま流路1018の中心軸のまわりを周回する方向をいう。これにより、内壁1034の全周にわたって溝が刻まれ、沿面放電がさらに抑制される。ただし、途切れがない環状溝1036に代えて途切れがある不完全環状溝が内壁1034に刻まれる場合も沿面放電の抑制効果は維持される。2個以上の不完全環状溝が流路1018の軸方向A1に間隔をおいて繰り返し刻まれる場合は、望ましくは、溝が途切れる位置が不完全環状溝ごとに周方向C1にずらされる。これにより、溝が不完全環状溝であっても内壁1034の全周にわたって溝の群が刻まれ、沿面放電がさらに抑制される。
【0036】
(環状溝が刻まれる区間)
望ましくは、図1に示すように、第1のガス通過面1024と第2のガス通過面1026との間の区間1038、第1のガス通過面1024と第3のガス通過面1028との間の区間1040、第2のガス通過面1026と流路1018の入口1030との間の区間1042及び第3のガス通過面1028と流路1018の出口1032との間の区間1044の全部に環状溝1036が刻まれる。さらに望ましくは、区間1038,1040,1042及び1044の各々に2個以上の環状溝1036が刻まれる。これにより、沿面放電がさらに抑制される。しかし、区間1038,1040,1042及び1044の一部に環状溝1036が刻まれていない場合、例えば、区間1038,1040,1042及び1044のうちの相対的に沿面放電が起こりにくいところに環状溝1036が刻まれていない場合も沿面放電の抑制効果は維持される。
【0037】
(溝の断面形状並びに深さ及び幅)
環状溝1036は、延在方向から見て深さが一定の角形の断面形状を有する。
【0038】
角形の断面形状を有する溝の深さは、望ましくは、1〜4mmである。深さがこの範囲より浅くなると、沿面放電の抑制効果が不十分になりやすいからである。深さがこの範囲より深くなると、溝に異物が堆積しやすくなり、異物に起因する沿面放電が起こりやすいからである。
【0039】
角形の断面形状を有する溝の幅は、望ましくは、2〜3mmである。幅がこの範囲外となると、沿面放電の抑制効果が不十分になりやすいからである。
【0040】
(第2の電極及び第3の電極の接地)
第2の電極1014及び第3の電極1016は、望ましくは、接地される。これにより、接地された第2の電極1014及び第3の電極1016で高電圧の第1の電極1012が挟まれ、第2の電極1014よりも流路1018の上流側に放電が進展することが抑制され、第3の電極1016よりも流路1018の下流側に放電が進展することが抑制される。しかし、第2の電極1014及び第3の電極1016に代えて第1の電極1012が接地されてもよい。
【0041】
(放電)
プラズマ処理装置1000においては、第1の電極1012と第2の電極1014とが流路1018の軸方向A1に間隔を置いて対向し、第1の電極1012と第3の電極1016とが流路1018の軸方向A1に間隔を置いて対向する。これにより、第1の電極1012と第2の電極1014との間には第1の電極1012から第2の電極1014へ向かい流路1018の軸方向A1に平行な電界が印加され、第1の電極1012と第3の電極1016との間には第1の電極1012から第3の電極1016へ向かい流路1018の軸方向A1に平行な電界が印加される。また、第2の電極1014の下流側及び第3の電極1016の上流側にイオンシース層が発生し、第1の電極1012と第2の電極1014との間及び第1の電極1012と第3の電極1016との間に放電が起こり、第1の電極1012と第2の電極1014との間の空間及び第1の電極1012と第3の電極1016との間の空間にプラズマが発生する。
【0042】
上記の説明とは逆に、第1の電極1012がパルス電源1004の負極1022に接続され、第2の電極1014及び第3の電極1016がパルス電源1004の正極1020に接続されてもよい。この場合は、第1の電極1012がカソードとなり、第2の電極1014及び第3の電極1016がアノードとなる。これにより、第1の電極1012と第2の電極1014との間には第2の電極1014から第1の電極1012へ向かい流路1018の軸方向A1に平行な電界が印加され、第1の電極1012と第3の電極1016との間には第3の電極1016から第1の電極1012へ向かい流路1018の軸方向A1に平行な電界が印加される。また、第1の電極1012の上流側及び下流側にイオンシース層が発生し、第1の電極1012と第2の電極1014との間及び第1の電極1012と第3の電極1016との間に放電が起こり、第1の電極1012と第2の電極1014との間の空間及び第1の電極1012と第3の電極1016との間の空間にプラズマが発生する。
【0043】
(電極によるガス通過面の横断)
図1、図2及び図3に示すように、第1の電極1012は、棒形状を有し、第1のガス通過面1024を横切る。これにより、損傷しやすい第1の電極1012の末端が第2の電極1014及び第3の電極1016と対向して放電の始点又は終点となることが抑制され、第1の電極1012の耐久性が向上する。
【0044】
図1、図2、図4及び図5に示すように、第2の電極1014及び第3の電極1016は、平板形状を有し、それぞれ、第2のガス通過面1026及び第3のガス通過面1028を横切る。これにより、損傷しやすい第2の電極1014の末端及び第3の電極1016の末端が第1の電極1012と対向して放電の始点又は終点となることが抑制され、第2の電極1014及び第3の電極1016の耐久性が向上する。
【0045】
「横切る」とは、内壁1034の一の場所から出て、流路1018を経由して、内壁1034の他の場所に入ることをいう。第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016が、それぞれ、第1のガス通過面1024、第2のガス通過面1026及び第3のガス通過面1028を横切る場合は、第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016が流路1018の内壁1034の近くに存在するため沿面放電が起こりやすい状況にある。しかし、プラズマ処理装置1000においては、沿面放電の抑制策がとられているので、第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016が流路1018の内壁1034の近くに存在していても沿面放電が起こりにくい。
【0046】
第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016の耐久性が向上することは、リアクタ1002に大きなエネルギーを投入することを可能にし、プラズマ処理を効率よく行うことを可能にする。
【0047】
(ガスの透過)
図3に示すように、第1の電極1012は、流路1018の軸方向A1に垂直な第1の方向D1に延在し、流路1018の軸方向A1に垂直であって第1の方向D1に垂直な第2の方向D2に疎らに配列される。第1の電極1012の配列間隔は一定であってもよいし一定でなくてもよい。第1の電極1012の全部又は一部が非平行に配列されてもよい。一の第1の電極1012と他の第2の電極1012とが交差してもよい。第1の電極1012が枝分かれを有してもよい。
【0048】
図4及び図5に示すように、第2の電極1014及び第3の電極1016は、第2の方向D2に延在し、第1の方向D1に疎らに配列される。第2の電極1014及び第3の電極1016の配列間隔は一定であってもよいし一定でなくてもよい。第2の電極1014の全部又は一部が非平行に配列されてもよく、第3の電極1016の全部又は一部が非平行に配列されてもよい。一の第2の電極1014と他の第2の電極1014とが交差してもよく、一の第3の電極1016と他の第3の電極1016とが交差してもよい。第2の電極1014及び第3の電極1016が枝分かれを有してもよい。第2の電極1014及び第3の電極1016が流路1018の軸方向A1に延長又は短縮されてもよい。
【0049】
「疎らに」とは、隣接する第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016が密着することなく、隣接する第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016の間にガスが通過する開口があることをいう。
【0050】
配列された第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016は、それぞれ、第1のガス通過面1024、第2のガス通過面1026及び第3のガス通過面1028を不完全に閉塞する不完全閉塞体であってガス透過性を有する。これにより、配列された第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016の開口をガスが透過するときに第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016の近傍に発生したプラズマによりガスが効率よく活性化され、プラズマ処理が効率よく行われる。
【0051】
第1の電極1012の延在方向と第2の電極1014の延在方向とが垂直でなくてもよい。また、第1の電極1012の延在方向と第3の電極1016の延在方向とが垂直でなくてもよい。さらに、第2の電極1014の延在方向と第3の電極1016の延在方向とが異なってもよい。
【0052】
(ガス通過面の開口率)
流路1018の軸方向A1から見た第1のガス通過面1024、第2のガス通過面1026及び第3のガス通過面1028の面積に対する開口の面積の比率は、望ましくは、30%以上である。比率がこの範囲より小さくなると、圧力損失が増加し、プラズマ処理が効率よく行われにくいからである。
【0053】
(絶縁体による被覆及びストリーマ放電)
図3に示すように、第1の電極1012においては、導電体棒1048が絶縁体被覆1050で被覆される。また、図4に示すように、第2の電極1014においては、細長導電体板1052の末端以外が絶縁体被覆1054で被覆される。さらに、図5に示すように、第3の電極1016においては、細長導電体板1056の末端以外が絶縁体被覆1058で被覆される。配線1006により、導電体棒1048はパルス電源1004の正極1020に電気的に接続され、細長導電体板1052及び1056はパルス電源1004の負極1022に電気的に接続される。
【0054】
第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016が、それぞれ、絶縁体被覆1050、1054及び1058を備えることは、放電を誘電体バリア放電とし、アーク放電を抑制し、ガスを効率的に活性化するストリーマ放電を安定して発生させることに寄与する。しかし、導電体が直接的に対向しなければ、絶縁体被覆1050、1054及び1058の一部が省略されてもよい。
【0055】
(プラズマグランディング)
図4及び図5に示すように、細長導電体板1052及び1056の末端は、それぞれ、絶縁体被覆1054及び1058で被覆されずに、第2のガス通過面1026及び第3のガス通過面1028の縁部において流路1018に露出する。細長導電体板1052及び1056の末端は、イオンシース層の端部に接触し、イオンシース層に接地電位を付与し、イオンシース層に電子を供給する。これにより、イオンシース層に電子が供給されやすくなり、プラズマ処理が効率よく行われる。細長導電体板1052及び1056の末端が流路1018に露出する場合は、細長導電体板1052及び1056の末端を起点とする沿面放電が起こりやすい状況にある。しかし、プラズマ処理装置1000においては、沿面放電の抑制策がとられているので、細長導電体板1052及び1056の末端が流路1018に露出していても沿面放電が起こりにくい。
【0056】
第1の電極1012がアノードとなり、第2の電極1014及び第3の電極1016がカソードとなる場合は、細長導電体板1052及び1056に代えて導電体棒1048の末端が、第1のガス通過面1024の端部において流路1018に露出する。
【0057】
「縁部」とは、イオンシース層に接触する範囲を意味し、第1のガス通過面1024、第2のガス通過面1026及び第3のガス通過面1028の外周の近傍にある幅を有する範囲である。
【0058】
(電極の材質)
導電体棒1048並びに細長導電体板1052及び1056の材質は、望ましくは、耐久性及び耐熱性が高い金属又は合金から選択される。耐久性及び耐熱性が高い金属の例はPt(白金)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)等であり、耐久性及び耐熱性が高い合金の例はニッケル−クロム(Ni−Cr)合金等のニッケル基合金、WC(タングステンカーバイド)等のタングステン基合金等である。
【0059】
絶縁体被覆1050、1054及び1058の材質は、望ましくは、耐久性及び耐熱性が高い樹脂又はセラミックスから選択される。耐久性及び耐熱性が高い樹脂の例はフッ素樹脂、ポリイミド系樹脂等であり、耐久性及び耐熱性が高いセラミックスの例はアルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、炭化珪素(SiC)、マグネシア(MgO)等である。
【0060】
導電体棒1048に代えて半導体棒が使用され、絶縁体被覆1050が省略されてもよい。また、細長導電体板1052及び1056に代えて細長半導体板が使用され、絶縁体被覆1054及び1058が省略されてもよい。
【0061】
半導体棒及び半導体板の材質は、望ましくは、耐久性及び耐熱性が高いセラミックスから選択される。耐久性及び耐熱性が高いセラミックスの例は、Si含浸炭化ケイ素等である。
【0062】
(パルス電圧の波形とイオン及びラジカルの密度との関係)
パルス電圧のパルス幅Δtが短く立ち上がり時の電圧Vの時間変化率dV/dtが大きい場合は、イオンシース層が薄くなり、イオン及びラジカルの密度も高くなる。一方、パルス電圧のパルス幅Δtが長く立ち上がり時の電圧Vの時間変化率dV/dtが小さい場合は、イオンシース層が厚くなり、イオン及びラジカルの密度も低くなる。このため、アノードとカソードとの間には、望ましくは、パルス幅Δtが短く立ち上がり時の電圧Vの時間変化率dV/dtが大きいパルス電圧が印加される。
【0063】
(パルス発生回路)
パルス電源1004には、望ましくは、パルス幅Δtが短く立ち上がり時の電圧Vの時間変化率dV/dtが大きいパルス電圧を容易に発生する誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路(IES回路)が内蔵される。誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路においては、望ましくは、スイッチング素子としてSI(静電誘導)サイリスタが選択される。しかし、誘導エネルギー蓄積型以外のパルス発生回路がパルス電源1004に内蔵されてもよく、SIサイリスタ以外がスイッチング素子として選択されてもよい。
【0064】
図6は、誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路の回路図である。
【0065】
図6に示すように、パルス発生回路1100は、直流電源1102と、トランス1104と、SIサイリスタ1105と、MOSFET(酸化金属半導体電界効果トランジスタ)1106と、ダイオード1108と、駆動回路1110と、キャパシタ1112と、を備える。直流電源1102は、内蔵されてもよいし、外付けされてもよい。
【0066】
直流電源1102の正極から負極へ至る直流供給経路1114には、トランス1104の1次側巻線1116と、SIサイリスタ1105のアノード・カソード間と、MOSFET1106のドレイン・ソース間と、が挿入される。トランス1104の1次側巻線1116の一端は直流電源1102の正極に接続され、トランス1104の1次側巻線1116の他端はSIサイリスタ1105のアノードに接続され、SIサイリスタ1105のカソードはMOSFET1106のドレインに接続され、MOSFET1106のソースは直流電源1102の負極に接続される。MOSFET1106のゲートには駆動回路1110から駆動信号が与えられる。直流供給経路1114は、SIサイリスタ1105、MOSFET1106及びゲート駆動回路1110からなるスイッチにより開閉される。
【0067】
SIサイリスタ1105のゲートは、ダイオード1108を経由してトランス1104の1次側巻線1116の一端に接続される。ダイオード1108のアノードはSIサイリスタ1105のゲートに接続され、ダイオード1108のカソードはトランス1104の1次側巻線1116の一端に接続される。
【0068】
トランス1104の2次側巻線1118の一端はパルス電源1004の正極1020に接続され、トランス1104の2次側巻線1118の他端はパルス電源1004の負極1022に接続される。トランス1104がインダクタに置き換えられ、インダクタの両端からパルス電圧が直接的に取り出されてもよい。
【0069】
キャパシタ1112は、直流電源1102に並列接続される。
【0070】
(パルス発生回路の動作)
駆動回路1110からMOSFET1106のゲートへのオン信号の入力が始まりMOSFET1106がターンオンすると、SIサイリスタ1105のゲートが正バイアスされ、SIサイリスタ1105もターンオンする。これにより、直流供給経路1114が閉じられる。直流供給経路1114が閉じられると、トランス1104の1次側巻線1116への直流の供給が始まり、トランス1104への誘導エネルギーの蓄積が始まる。
【0071】
駆動回路1110からMOSFET1106へのオン信号の入力が終わり、MOSFET1106がターンオフすると、トランス1104の1次側巻線1116に流れていた電流がSIサイリスタ1105に転流してSIサイリスタ1105のゲートが負バイアスされ、SIサイリスタ1105が高速にターンオフする。これにより、直流供給経路1114が高速に開かれる。直流供給経路1114が高速に開かれると、相互誘導により2次側巻線1118に誘導起電力が発生し、パルス電源1004の正極1020と負極10222との間に立ち上がり時の電圧Vの時間上昇率dV/dtが大きいパルス電圧が出力される。
【0072】
(パルス電圧の波形の概略)
望ましくは、パルス電圧のパルス幅は半値全幅(FWHM)で概ね10〜1000nsであり、立ち上がり時の電圧Vの時間変化率dV/dtは概ね30〜3000kV/μsであり、単位時間あたりの繰り返し数は概ね100pps〜数十kppsであり、ピーク電圧は概ね10〜30kVである。望ましい範囲について「概ね」と述べているのは、リアクタ1002の構造、リアクタ1002の材質、ガスの圧力、ガスの流量等によっては、望ましい範囲が上述の範囲よりも広くなる場合もありうるからである。
【0073】
(ダイレクト方式によるガスの処理)
図7は、ダイレクト方式によるガスの処理を説明する図である。
【0074】
図7に示すように、プラズマ処理装置1000がダイレクト方式でガスを処理する場合は、ガス供給系1008から流路1018の入口1030に処理されるガスが供給され、処理されるガスが流路1018に流される。また、アノード1060とカソード1062との間にパルス電圧が印加される。これにより、ガスが活性化される。
【0075】
活性化されたガスは、燃焼炉、焼成炉等の供給先へ供給される。活性化されたガスが燃焼炉へ供給される場合は、活性化されたガスは燃焼効率の向上等に寄与する。活性化されたガスが焼成炉へ供給される場合は、活性化されたガスは熱処理の促進に寄与する。
【0076】
(ダイレクト方式による固体構造物の処理)
図8は、ダイレクト方式による固体構造物の処理を説明する図である。
【0077】
図8に示すように、プラズマ処理装置1000がダイレクト方式で固体構造物Wを処理する場合は、プラズマが発生する空間に処理される固体構造物Wが配置される。また、ガス供給系1008から流路1018の入口1030にガスが供給され、ガスが流路1018に流される。さらに、アノード1060とカソード1062との間にパルス電圧が印加される。これにより、ガスが活性化され、活性化されたガスが固体構造物Wに作用し、固体構造物Wが処理される。固体構造物Wの処理には、表面のぬれ性を向上する処理(改質)、表面に付着した微生物を死滅させる処理(滅菌又は殺菌)等がある。
【0078】
(リモート方式による固体構造物Wの処理)
図9は、リモート方式による固体構造物の処理を説明する図である。
【0079】
図9に示すように、プラズマ処理装置1000がリモート方式で固体構造物Wを処理する場合は、流路1018の外側のガスの吹きつけ先に固体構造物Wが配置される。また、ガス供給系1008から流路1018の入口1030にガスが供給され、ガスが流路1018に流される。さらに、アノード1060とカソード1062との間にパルス電圧が印加される。これにより、ガスが活性化され、活性化されたガスが固体構造物Wに作用し、固体構造物Wが処理される。
【0080】
(ガスの種類及び液体の使用)
ガスとしては、例えば、空気、窒素(N2)、水(H2O)、過酸化水素(H22)、テトラフルオロメタン(CF4)、トリフルオロメタン(CHF3)等が選択される。ガス供給系1008に代えて液体供給系が設けられ、ガスに代えて液体が使用されてもよい。液体としては、例えば、水、アルコール、酸性水溶液、アルカリ性水溶液等が選択される。より一般的には、ガス、液体等の流体が流路1018に流される。
【0081】
{第2実施形態}
(概略)
第2実施形態は、第1実施形態のリアクタに代えて使用されるリアクタに関する。
【0082】
図10及び図11は、第2実施形態のリアクタの模式図である。図10は、斜視図である。図11は、断面図である。
【0083】
図10及び図11に示すように、リアクタ2002は、チャンバ2004、第1の電極2006、第2の電極2008及び第3の電極2010を備える。
【0084】
第1実施形態のリアクタ1002と第2実施形態のリアクタ2002との違いは、流路2018を囲む内壁2012に刻まれる溝にある。第2実施形態の第1の電極2006、第2の電極2008及び第3の電極2010は、第1実施形態の第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016と同じものである。
【0085】
(らせん溝による沿面放電の抑制)
内壁2012には角形の断面形状を有するらせん溝2014が刻まれる。らせん溝2014は、流路2018の軸方向A2に進行しながら流路2018の周方向C2に周回する。らせん溝2014は、流路2018の軸方向A2に非平行に延在し、流路2018の軸方向A2に延在する放電経路と交差する。これにより、沿面放電が抑制される。
【0086】
(らせん溝に堆積した異物の除去)
らせん溝2014は流路2018の軸方向A2に非垂直な方向に延在する。これにより、ガスが流路2018を流れると、らせん溝2014の中をガスが流れ、らせん溝2014の中に堆積した異物がガスにより流され、異物に起因する放電が抑制される。
【0087】
(らせん溝が刻まれる区間)
望ましくは、図11に示すように、第1のガス通過面2020と第2のガス通過面2022との間の区間2030、第1のガス通過面2020と第3のガス通過面2024との間の区間2032、第2のガス通過面2022と流路2018の入口2026との間の区間2034及び第3のガス通過面2024と流路2018の出口2028との間の区間2036の全部にらせん溝2014が刻まれる。しかし、区間2030,2032,3034及び2036の一部にらせん溝2014が刻まれていない場合、例えば、区間2030,2032,3034及び2036のうちの相対的に沿面放電が起こりにくいところにらせん溝2014が刻まれていない場合も沿面放電の抑制効果は維持される。区間2030,2032,3034及び2036の全部又は一部に二重らせん溝等の多重らせん溝が刻まれてもよい。
【0088】
(隣接する区間に刻まれたらせん溝の接続)
望ましくは、隣接する区間に刻まれたらせん溝2014は接続され、隣接する区間の境界におけるらせん溝2014の途切れは排除される。これにより、らせん溝2014の中に堆積した異物が隣接する区間の境界に滞留しにくくなり、異物に起因する沿面放電が抑制される。しかし、隣接する区間に刻まれたらせん溝2014が接続されていない場合も沿面放電の抑制効果は維持される。
【0089】
(らせん溝の周回数)
らせん溝2014は流路2018の周方向C2に1周以上する。これにより、内壁2012の全周にわたって溝が刻まれ、沿面放電がさらに抑制される。区間2030,2032,3034及び2036の全部又は一部において、らせん溝2014は、望ましくは、流路2018の周方向C2に2周以上する。これにより、沿面放電がさらに抑制される。
【0090】
{第3実施形態}
(概略)
第3実施形態は、第1実施形態のリアクタに代えて使用されるリアクタに関する。
【0091】
図12及び図13は、第3実施形態のリアクタの模式図である。図12は、斜視図である。図13は、断面図である。
【0092】
図12及び図13に示すように、リアクタ3002は、チャンバ3004、第1の電極3006、第2の電極3008及び第3の電極3010を備える。
【0093】
第1実施形態のリアクタ1002と第3実施形態のリアクタ3002との違いは、流路3016を囲む内壁3012に刻まれる溝にある。第3実施形態の第1の電極3006、第2の電極3008及び第3の電極3010は、第1実施形態の第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016と同じものである。
【0094】
(斜め溝による沿面放電の抑制)
内壁3012には角形の断面形状を有する斜め溝3014が刻まれる。斜め溝3014は、流路3016の軸方向A3に進行しながら流路3016の周方向C3に進行する。斜め溝3014は、流路3016の軸方向A3に非平行に延在し、流路3016の軸方向A3に延在する放電経路と交差する。これにより、沿面放電が抑制される。斜め溝3014は、第2実施形態のらせん溝2014と異なり、流路3016の周方向C3に1周しない。その代わりに、2個以上の斜め溝3014が周方向C3に分布して刻まれる。これにより、1個の斜め溝3014が内壁3012の全周にわたって刻まれることはないが、2個以上の斜め溝3014の群が内壁3012の全周にわたって刻まれ、沿面放電がさらに抑制される。2個以上の斜め溝3014は、望ましくは、流路3016の周方向C3に均一に分布する。
【0095】
(斜め溝に堆積した異物の除去)
斜め溝3014は、流路3016の軸方向A3に非垂直な方向に延在する。これにより、ガスが流路3016を流れると、斜め溝3014の中をガスが流れ、斜め溝3014の中に堆積した異物がガスにより流され、異物に起因する放電が抑制される。
【0096】
(斜め溝が刻まれる区間)
望ましくは、第1のガス通過面3018と第2のガス通過面3020との間の区間3028、第1のガス通過面3018と第3のガス通過面3022との間の区間3030、第2のガス通過面3020と流路3016の入口3024との間の区間3032及び第3のガス通過面3022と流路3016の出口3026との間の区間3034の全部に斜め溝3014が刻まれる。しかし、区間3028,3030,3032及び3034の一部に斜め溝3014が刻まれていない場合、例えば、区間3028,3030,3032及び3034のうちの相対的に沿面放電が起こりにくいところに斜め溝3014が刻まれていない場合も沿面放電の抑制効果は維持される。
【0097】
(隣接する区間に刻まれた斜め溝の接続)
望ましくは、隣接する区間に刻まれたら斜め溝3014は接続され、隣接する区間の境界における斜め溝3014の途切れが排除される。これにより、斜め溝3014の中に堆積した異物が隣接する区間の境界に滞留しにくくなり、異物に起因する沿面放電が抑制される。しかし、隣接する区間に刻まれた斜め溝3014が接続されていない場合も沿面放電の抑制効果は維持される。
【0098】
{第4実施形態}
(概略)
第4実施形態は、第1実施形態のリアクタに代えて使用されるリアクタに関する。
【0099】
図14は、第4実施形態のリアクタの模式図である。図14は、断面図である。
【0100】
図14に示すように、リアクタ4002は、チャンバ4004、第1の電極4006、第2の電極4008及び第3の電極4010を備える。
【0101】
第1実施形態のリアクタ1002と第4実施形態のリアクタ4002との違いは、流路4016を囲む内壁4012に刻まれる溝にある。第4実施形態の第1の電極4006、第2の電極4008及び第3の電極4010は、第1実施形態の第1の電極1012、第2の電極1014及び第3の電極1016と同じものである。
【0102】
(断面形状)
内壁4012に刻まれる環状溝4014は、環状溝4014が延在する方向から見て、周辺から中心へ向かって深くなる波形の断面形状を有する。これにより、環状溝4014の中をガスが流れやすくなり、環状溝4014の中に堆積した異物が流体により流されやすくなり、異物に起因する沿面放電が抑制される。
【0103】
{その他}
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての局面において例示であって限定的ではない。しがって、本発明の範囲からはずれることなく無数の修正及び変形が案出されうると解される。特に、一の実施形態の技術的事項と他の実施形態の技術的事項とを組み合わせることは当然に予定されている。例えば、第1実施形態の環状溝、第2実施形態のらせん溝及び第3実施形態の斜め溝のうちの2種類以上の溝が混在して刻まれること等が予定されている。また、第2実施形態のらせん溝及び第3実施形態の斜め溝が波形の断面形状を有してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1000 プラズマ処理装置
1002,2002,3002,4002 リアクタ
1004 パルス電源
1006 配線
1010,2004,3004,4004 チャンバ
1012,2006,3006,4006 第1の電極
1014,2008,3008,4008 第2の電極
1016,2010,3010,4010 第3の電極
1018,2018,3016 流路
1034,2012,3012,4012 内壁
1036,4014 環状溝
2014 らせん溝
3014 斜め溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置であって、
絶縁体からなり、内壁に囲まれる流路を持ち、前記流路の軸方向に非平行な方向に延在する溝が前記内壁に刻まれた構造物と、
前記流路の途中にあり、第1の流体通過面を横切り、前記第1の流体通過面の一部を占める第1の電極と、
前記流路の途中にあり、前記第1の電極より前記流路の上流側にあり、第2の流体通過面を横切り、前記第2の流体通過面の一部を占め、前記流路の軸方向に間隔を置いて前記第1の電極と対向する第2の電極と、
前記流路の途中にあり、前記第1の電極より前記流路の下流側にあり、第3の流体通過面を横切り、前記第3の流体通過面の一部を占め、前記流路の軸方向に間隔を置いて前記第1の電極と対向する第3の電極と、
第1の極と第2の極との間にパルス電圧を出力するパルス電源と、
前記第1の電極を前記第1の極に電気的に接続し、前記第2の電極及び前記第3の電極を前記第2の極に電気的に接続する配線と、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1のプラズマ処理装置において、
前記溝が前記流路の周方向に一周する環状溝である
プラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1のプラズマ処理装置において、
前記溝が前記流路の軸方向に進行しながら前記流路の周方向に周回し前記流路の周方向に一周以上するらせん溝である
プラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1のプラズマ処理装置において、
前記溝が前記流路の軸方向に進行しながら前記流路の周方向に進行し前記流路の周方向に一周しない斜め溝であり、
2個以上の前記斜め溝が前記流路の周方向に分布する
プラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかのプラズマ処理装置において、
前記溝が延在する方向から見て前記溝が端から中心へ向かって深くなる波形の断面形状を有する
プラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−69448(P2012−69448A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214778(P2010−214778)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】