説明

プラズマ化学蒸着を行うための装置

【課題】アーキングへの感度が増加されないが積載量の調和(load matching)が改善されているところの、プレアンブルに従う装置を提供する。
【解決手段】主に円筒状である共鳴体2を備えているプラズマ化学蒸着法を行うための装置であって、該共鳴体は、円筒軸Cに関して実質的に回転対称な形状を有する共鳴空洞5を取り囲む、外側円筒状壁4を備えており、該共鳴体は向き合う円筒軸方向において共鳴空洞の境界を定める複数の側壁部分をさらに備えている該装置において、該装置は、該外側円筒状壁を通って共鳴空洞へと延在している端を有するマイクロ波のガイド3をさらに備えており、かつ円筒方向における共鳴空洞の長さは円筒軸までの半径方向の距離の関数として変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に円筒状である共鳴体を備えている、プラズマ化学蒸着法を行うための装置であって、該共鳴体は、円筒軸に関して実質的に回転対称な形状を有する共鳴空洞を取り囲む、外側円筒状壁を備えており、該共鳴体は向き合う円筒軸方向において共鳴空洞の境界を定める複数の側壁部分をさらに備えている該装置において、該装置は、該外側円筒状壁を通って共鳴空洞へと延在している端を有するマイクロ波のガイドをさらに備えている、前記装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラカ コムテク B.V.の名前の欧州特許第1867610号は、光ファイバーを製造するためのそのような装置を開示している。
【0003】
高出力のマイクロ波アプリケーターを長く続く工程のために適用するとき、内部反射及びアーキングへの感度のために、積載量の調和(load matching)に関して問題が起き得る。もし積載量が調和しないと、全体の構成が熱つくなりすぎる可能性がある。そうすると、マイクロ波の出力の一部がプラズマに到達し得ない。さらに、他の装置、例えばオートターナー、もまた熱くなりすぎ、不具合又は破損にさえ至る。さらに、もし共鳴体(アプリケーターともまた呼ばれる)が、アーキングに敏感であるならば、該アプリケーターは適切には使用されることができない。そうすると、使用の間、破損がいくつかの点において起きるだろう。アーキング工程はたくさんのエネルギーを消費するが、このことはプラズマ自身が弱まる、又は一時的にスイッチが切れさえすることを意味し、それは該プラズマ工程により製造されるどんな製品にとってもマイナスの結果を有する。
【0004】
積載量の調和の問題に関連して、半径方向における空洞の境界を定める半径方向の内側の環は、実際には薄すぎて、該環を冷却するために、そこに水冷却装置を適用することができないことに留意されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アーキングへの感度が増加されないが積載量の調和が改善されているところの、プレアンブルに従う装置を提供することが本発明の目的である。これに対して、本発明に従うと、円筒方向における共鳴空洞の長さが、円筒軸までの半径方向の距離の関数として変化する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空洞の構造(geometry)が変更されて、アーキングを誘発し得る鋭いエッジの発生を避けると同時に、積載量の調和を改善することができるという洞察に、部分的に基づいている。円筒方向における共鳴空洞の長さ(空洞の幅とも呼ばれる)を円筒軸への半径方向の距離の関数として変えることにより、マイクロ波のガイドと共鳴体の間の電磁気的カップリングを可能にする構成を維持することを可能にしつつ、改善された積載量の調和が得られることができる。本発明の特徴に従うと、即ち空洞の形状は、追加の鋭いエッジを導入することなく変更されて、調和を改善し、アーキングのさらなるチャンスを除去する。
【0007】
特に有利な実施態様において、共鳴空洞は、共鳴体の円筒軸と実質的に一致する長手方向の軸を有し、空洞の反対の側表面へ向けて次第に細くなっている円錐の表面により、少なくとも部分的に円筒方向において境界を定められており、調和と最小アーキングの条件の両方が満たされる。
【0008】
本発明に従う、さらなる有利な実施態様は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【0009】
例としてのみ、本発明の実施態様が添付の図面を参照して今記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従う装置の第一の実施態様の模式的断面図である。
【図2A】本発明に従う装置の第二の実施態様の模式的断面図である。
【図2B】本発明に従う装置の第三の実施態様の模式的断面図である。
【図2C】本発明に従う装置の第四の実施態様の模式的断面図である。
【図2D】本発明に従う装置の第五の実施態様の模式的断面図である。
【図2E】本発明に従う装置の第六の実施態様の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面は、本発明に従う、単に好ましい実施態様を示しているに過ぎないことに留意されたい。図面において、同じ参照番号は等価又は対応する部分を指す。
【0012】
図1は、本発明に従う装置1の第一の実施態様の模式的な断面図を示す。装置1は主に円筒形の共鳴体2を備える。該装置はマイクロ波を共鳴体2までガイドするためのマイクロ波ガイド3をもまた備える。該マイクロ波ガイド3は、ガイド3と共鳴体2との間に最適なインターフェースが作られることができるように、好ましくは長方形の形状をしている。該装置はプラズマ化学蒸着法を行うために使用されることができる。
【0013】
共鳴体2は、共鳴空洞5を取り囲む外側円筒状壁4が備えられている。該空洞は、円筒軸Cについて実質的に回転体の対称的な形状を有する。該共鳴体2は、向き合う、円筒軸方向C1、C2において共鳴空洞5の境界を定める側壁部分6a、bをさらに備えられている。
【0014】
マイクロ波ガイド3は外側円筒状壁4を通って共鳴空洞5の中へと延在する端7を有する。示された実施態様において、共鳴体2は、円筒軸Cの方へ向かう半径方向Rにおいて、共鳴空洞5の境界を定める内側円筒状壁8をさらに含む。実際、即ち、空洞5は環状である。内側円筒状壁8は、円筒状軸Cの周りに円周方向Ciに延在するスリット9を有する。スリット9を設けることにより、マイクロ波のエネルギーは共鳴空洞5から、共鳴体2により取り囲まれたチューブ状の内側空間10の中へと入り得る。
【0015】
示された実施態様において、基体チューブ11はチューブ状の内側空間10に挿入されている。
【0016】
装置の操作の間、マイクロ波発生装置、例えばマグネトロン又はクリストロン(図示されていない)により発生されたマイクロ波Wがマイクロ波ガイド3(導波路ともまた呼ばれる)の第二の端(図示されていない)の中へと導入され、その後共鳴体2の方へと導波路3を通ってガイドされる。マイクロ波は他の方法においても、例えば追加の導波路のアセンブリを経て、導波路3に入り得ることに留意されたい。共鳴空洞5においてマイクロ波のエネルギーは蓄積し、プラズマ化学蒸着(PCVD)工程を実施する目的のためにプラズマを発生させる。共鳴空洞5において、マイクロ波ガイド3から空洞に入るマイクロ波のエネルギーは、基体チューブ11の内部において発生されるプラズマを供給する。適切なガスフローを条件づけ、共鳴体2を基体チューブ11の長さに亘って往復させることにより、ガラス物質が基体チューブ11の内側の表面11a上に堆積され、そうすることにより、内部に堆積された多数のガラス層を有するチューブを与える。そのようなチューブは収縮されて、固体のプレフォーム又はコアロッドを形成し、それらはガラスファイバを製造するためにさらに加工されることができる。
【0017】
アーキングへの感度を下げるために、共鳴体の設計において鋭い外側エッジは回避される。第一の外側エッジは導波路3と空洞5との間のインターフェースにおいてしばしば遭遇される。示された実施態様において、空洞の幅、即ち円筒軸Cに沿った内側の長さは、導波路3の対応するサイズ、即ち3.4インチ、86.38mmの標準的な寸法、とたいていは同じであり、そうすることにより、一つの外側エッジを回避している。空洞5の幅と導波路3の最も長い辺の差は、好ましくは小さく、即ち10mmより小さく、より好ましくは5mmより小さく、6kW超のエネルギーレベルを使用するときは特に、好ましくは1mmより小さい。インターフェースにおける他の外側エッジのアーキングの効果は、エッジを丸くすることにより最小化されることができる。
【0018】
円筒状共鳴体2の出力は、典型的にはスリット9であり、スリット9自体が(放射状に)小さな放射状導波路である。原則として、スリット9は空洞5自身と同じ幅であるかより小さいことができ、数ミリメートルでさえある。共鳴体スリット9は、空洞5及び共鳴体2の内側、即ちチューブ状の内側空間10、との間に延在する放射状の導波路を形成する。
【0019】
共鳴体2は、円筒方向C1における空洞5の側表面を少なくとも部分的に画定する環状要素12を備える。示された実施態様において、円錐の表面12aが共鳴体2の円筒軸Cと実質的に一致する長手方向の軸を有し、反対の円筒方向C2における、空洞5の反対の側表面に向かって先細りになっているような(上部を切られた)円錐として環状要素12は、形作られている。言い換えると、円錐12はスリット9に向かって先細りになっており、その結果空洞5の内側の側表面は少なくとも部分的に円錐表面として形づけられている。明らかに、環状要素12は空洞5の反対側の側表面にもまたあることができる。
【0020】
環状要素12を装備することにより、円筒方向C1における共鳴空洞5の長さlは、円筒軸Cまでの半径方向の距離rの関数として変化する。特に、半径方向の距離rのある範囲において、空洞5の円筒方向の長さlは、円筒軸Cに関して増加する半径方向の距離rの関数として増加する。環状要素の物理的効果は、空洞5において鋭いエッジを避け、そうすることによりアーキングのチャンスを下げつつ、共鳴体がプラズマとより適切に調和されることができることである。従って、空洞5に面する、環状要素12の表面12aは、好ましくは滑らかであり、表面の端が、空洞5のさらなる内側の表面になめらかに嵌合する。さらに、共鳴体の冷却性が増大する。
【0021】
示された実施態様において、空洞5は、断面図においては基本的に長方形であり、半径方向Rにおいて高さH及び円筒方向C1における側壁表面の間の長さを有する。先端を切られた円錐12は、長方形の角に嵌り、空洞の内側の表面13の直角13aは2つの鈍角13b、cにより置き換えられる。さらに、円錐の表面12aは好ましくは平らであるが、あるいは滑らかな屈曲、例えば波形の領域及び/又は曲線状の部分、を含み得る。
【0022】
環状要素12は、共鳴体2に存在する別の要素として形成され得る。環状要素12は共鳴体に固定的に接続されることができる。さらに、該環状要素12は共鳴体2のさらなる部品、例えば側壁部分6及び/又は内側の円筒状壁8、と統合的に形成されて、空洞5を形成することができる。
【0023】
チューブ状の内側の空間10への空洞5からのプラズマの導入を妨げないために、スリット9は環状要素12によって覆われていない。即ち、チューブ状の内側空間10及び基体チューブ11へのマイクロ波の導入への障害物は無効にされている。特に、スリット9に直接隣接する内側の円筒状壁8は空洞の内側表面13の一部を形成する。示された実施態様において、空洞の半径方向の内側表面は、ある距離までは、スリット9に隣接する領域26における円筒軸Cと実質的に平行である。しかし、環状要素12の内側に面する表面12aは、スリット9のエッジ25まで延在していてもよい。
【0024】
好ましくは、環状要素12は、内側の円筒状壁8と外側の円筒状壁4との間の半径方向R及び側壁部分6bとスリットのエッジ25との間の円筒方向C1において境界を定められた体積の一部を満たし、ここで、環状要素12により満たされる体積の部分は、約10%〜約95%の範囲にある。示された実施態様において、環状要素12は、スリット9の右側におけるスリットのエッジ25の右側にある。大きさは、断面図において、円筒方向C1において長さL及び半径方向Rにおいて高さHを有する。環状要素12は内側円筒状壁8及び右側の側壁部分6bに配置されている。
【0025】
もし環状要素12がスリットの右又は左において、該体積の95%超を覆うように設計されているならば、入射するマイクロ波Wは妨害されるかもしれない。さもなければ、もし環状要素12が体積の10%未満を覆うように設計されていると、環状要素12の効果は最小になる。
【0026】
有利には、空洞の側表面13は、空洞5の長手方向の端Eにおいては、好ましくは少なくとも約1mmの距離dに沿って、好ましくは外側の円筒状壁4のそばで、円筒軸Cに関して実質的に垂直に延在し、その結果、環状要素12は共鳴体2によく嵌合し、共鳴体2の製造工程の間の構造の問題は無効にされる。
【0027】
共鳴体は上記の成分を収容するモジュールをさらに備えていてもよい。さらに、空洞の内側表面は、少なくとも部分的に電気的に導電性である。従って、壁は好ましくは金属材料、例えばスチール、からできている。
【0028】
図2a〜eは、本発明に従う装置のそれぞれ第二、第三、第四、及び第五の模式的な断面図を示す。
【0029】
図2aは、より単純化された形で、図1に示された装置にほとんど類似している空洞の構成を示す。環状形の空洞5は、断面図において見られたとき、外側円筒状壁4、側壁の2つの部分6a、b及びスリット9を備えられた内側円筒状壁8により囲まれている。図1に示された構成と比較すると、環状要素12は、今、反対側の側壁部分6aに置かれている。
【0030】
図2bにおいて、環状要素12は、内側の円筒状壁8、外側の円筒状壁4、側壁の部分6a及びスリット9の間で境界を定められた体積のより小さい方の部分を占める。
【0031】
図2cは、スリットに関して反対側に配置された一対の環状要素12a、bを含む空洞の構成を示す。
【0032】
図2d及び2eにおいて、共鳴体は内側の円筒状壁8なしで与えられている。ここで、環状要素12は、反対側の側壁部分6a、bの隣に配置された一対の丸くされた輪15a、bとして形成されている(図2dを参照のこと)か、又は側壁部分6aの隣に配置された一つの丸くされた輪15cとして形成されている(図2eを参照のこと)。
【0033】
本発明は、本明細書に記載された実施態様に制限されない。多くの変形が可能であることが理解される。
【0034】
環状要素は、共鳴体2の円筒軸Cに関して好ましくは対称である。しかし、原則として、構成は例えばチューブ状の内側空間10を完全には取り巻かずに、単にその周辺部分を取り巻く環状部分を備えることにより、逸脱し得る。
【0035】
環状要素の特定の形状は、内側円筒状壁が適用されるか否かの特徴に関連しないことにもまた留意されたい。
【0036】
共鳴体において配置された環状要素は、特定の用途のために最適化されることができることにさらに留意されたい。あるいは、共鳴体はモジュールに基づいて形成されて、ある範囲の環状要素から、該共鳴体の特定の用途に適する特定の環状要素が選択されることができ、そうすることによって該装置を、広い範囲の用途に適合可能にすることができる。
【0037】
他のそのような変形は当業者に明らかであり、以下の請求項によって定義される本発明の範囲内であると考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に円筒状である共鳴体を備えている、プラズマ化学蒸着法を行うための装置であって、該共鳴体は、円筒軸に関して実質的に回転対称な形状を有する共鳴空洞を取り囲む外側円筒状壁を備えており、該共鳴体は、向き合う複数の円筒軸方向において共鳴空洞の境界を定める複数の側壁部分をさらに備えている該装置において、該装置は、該外側円筒状壁を通って共鳴空洞内へと延在している端を有するマイクロ波のガイドをさらに備えており、かつ円筒方向における共鳴空洞の長さは円筒軸までの半径方向の距離の関数として変化する、前記装置。
【請求項2】
該共鳴体が、円筒方向における空洞の側表面を少なくとも部分的に画定する環状要素を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該共鳴体の円筒軸と実質的に一致する長手方向の軸を有しかつ該空洞の反対方向の側表面に向かって先細りになっている円錐の表面により、該共鳴空洞が円筒方向において少なくとも部分的に境界を定められている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
ある範囲において、円筒軸に関して増加する半径方向の距離の関数として、空洞の円筒長さが増加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
アプリケーターが、円筒軸に向かう半径方向において共鳴空洞の境界を定める内側円筒状壁をさらに備えており、かつ該内側円筒状壁が円筒軸の周りにおける円周方向に延在するスリットを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
該環状要素が、該共鳴体の側壁部分及び/又は内側円筒状壁と一体化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
該空洞の長手方向の端において、該空洞の側表面が円筒軸に関して実質的に垂直に、好ましくは少なくとも約1mmの長さに沿って延在している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
該環状要素が、該内側円筒状壁と該外側円筒状壁との間の半径方向及び側壁部分とスリットのエッジとの間の円筒方向において境界を定められた体積の一部を満たし、該環状要素により満たされた体積部分が約10%〜約95%の範囲である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
該マイクロ波ガイドの第二の端へのマイクロ波発生装置のコネクターをさらに備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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