説明

プラズモン効果による光学符号化装置およびこの装置を使用した認証方法

【課題】本発明の目的は改ざん不可能で独自の光学符号化装置を提供することである。
【解決手段】この光学符号化装置は、発光により赤外線、可視または紫外線光線を放射するのに適した複数の凝集体を含んでおり、前記凝集体の少なくとも1つは少なくとも1つの発光団を含んでいる。この凝集体はさらに、表面プラズモン効果材料からなる少なくとも1つの粒子を含んでおり、前記発光団および前記粒子は相互作用を開始するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線、可視および/または紫外線範囲での発光により放射することが可能な複数の凝集体を備えた光学符号化装置に関する。発光のこのような適性は、これらの凝集体内の1つまたは複数の発光団の存在によるものである。
【0002】
したがって本発明に含まれる光学符号化装置は、例えば偽造品または模造品の検出に関する、製品認証および追跡可能性の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
製品を追跡および認証するための様々な技術的手段が今日知られている。この製品は、美術品、商業消費財、確認書類、支払手段などであってもよい。
【0004】
したがってこのような製品は、例えば、紙、織物、革、プラスチックなどを含む1つまたは複数の材料からなっていてもよい。このような製品を追跡および認証するために今日利用されている手段の中で、バーコード、光学的に復号化しなければならないホログラム、電磁方法によって復号化される電子ラベル(時々、「高周波識別データ」の頭文字RFIDによって示される)の説明を行なうことができる。また、暗号化した数字コードが認証される製品に起因することからなる暗号法、またはまさに認証される物体または製品の構造におけるトレーサ(発光、磁気、化学など)などの特定の要素の挿入が知られている。
【0005】
本発明は後者の領域に関し、より詳細には、発光トレーサにより製品を追跡または認証する方法に関する。
【0006】
それ自体が知られている方法では、このような発光トレーサは、物体または製品を認証するために読み取られなければならない光学コードを形成する。普通、認証される製品の表面に直接、1つまたは複数の発光団、すなわち発光材料の小さな粒子、分子または粒子を含んでいる混合物が塗布される。
【0007】
製品の認証中に、外部発光源がこのように被着された発光団を励起するのに使用され、脱励起によって再び放射する光線が集められる。これらの発光団によって再び放射される発光スペクトルの分析は、これらの発光団に関連して認証される物体に起因した光学コードを測定するように正確に働く。
【0008】
米国特許第4146792号明細書は、信用器具を認証するように設計されたこのような光学符号化の例を提供している。それ自体知られている方法で、発光団の原子の電子は光源の光子によって励起され、その後、脱励起中に、波長が入射光線により光子を放射する。この場合、発光団によって放射された蛍光スペクトルは染料によって部分的に吸収され、それによって純粋な光子機構が必要である。したがって、このような発光団の性質を認証することは難しい。それゆえ、信用器具の認証ははるかに信頼性がある。
【0009】
しかし、このような認証応用例のために設計された発光団は、(発光材料によって吸収される光子の数に対する発射される光子の数の比として定義される)高い発光収率を有し、発光によって永続的に放射することが可能であるように十分頑丈でなければならない。実際、これらの収率および頑丈性を有する発光団は限られた数だけ存在し、それによって光学コードを形成する可能な組合せも数が限られる。蛍光スペクトル、特にピークが既に知られて挙げられている限り、その後、使用した発光団を作る発光材料を特定し、それによって光学コードを偽造することは比較的簡単である。
【0010】
さらに、使用される発光材料が比較的知られていないまれな場合、発光団を含む材料の物理化学スペクトルを分析することは比較的容易である。これにより、光学符号化装置を模造し、それによって認証物体を改ざんすることが可能になる。
【0011】
米国特許公開第2005/142605号は、媒体を作ることを意図した化学基板の吸収または蛍光性を大きくするための、表面プラズモン効果を有するナノ粒子の使用を記載している。したがって、感光材料により低い励起を加えることが可能である。
【特許文献1】米国特許第4146792号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2005/142605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は改ざん不可能で独自の光学符号化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この光学符号化装置は、従来技術の欠点を避ける、特に認証される物体に関連する発光凝集体によって再び放射される発光スペクトルの回顧分析を防ぐ基本的な目的を有する。
【0014】
したがって、本発明は復号化するのが難しく、侵害するのが実質上不可能である信頼性のある光学符号化装置に関する。
【0015】
この光学符号化装置は、発光によって赤外線、可視または紫外線光線を放射するのに適した複数の凝集体であって、少なくとも1つが少なくとも1つの発光団を含んでいる凝集体を備えており、さらに表面プラズモン効果材料からなる少なくとも1つの粒子を含んでおり、前記発光団および前記粒子は相互作用を始めるのに適切である。
【0016】
すなわち、本発明に含まれる光学符号化装置は、互いに凝集され、これらの1つによる発光の放射中に相互作用する2つのタイプの要素を備えている。
【0017】
前記粒子は、前記発光団の放射スペクトルを全体的にまたは部分的に含むスペクトルを有するエネルギーにより抽出される場合に、表面プラズモン効果を示すのに適切である。
【0018】
本発明の内容では、表面プラズモン効果という表現は、前記粒子を作る原子の伝導バランスで配置された電子の集合的励起のことを意味している。粒子は、発光団のエネルギースペクトル内に含まれるエネルギーによって励起しなければならない。
【0019】
したがって、明らかな相互作用を得て、したがってこのような光学符号化装置を備えた物体を認証するように放射された発光スペクトルを変調することが可能である。
【0020】
本発明の内容では、「発光スペクトルを変調する」という表現は、表面プラズモン効果粒子の存在により、発光団の光学署名(放射または吸収)の特定の部分を選択的に増減させることができることを意味する。
【0021】
発光団の光学署名の変調は特に、表面プラズモン効果粒子と発光団の間の距離、および例えば、発光団のものと比較してプラズモン粒子の寸法により調節可能なプラズモン共振周波数によるものである。
【0022】
したがって、この組合せは、このような変調を引き起こし、この変調に影響を与える様々なパラメータの調節により、利用可能な独自の光学署名の数をかなり多くする。
【0023】
本発明の別の特性によると、凝集体は前記発光団および前記粒子を封入するエンベロープによって形成されている。有利には、このエンベロープは、赤外線、可視または紫外線光線に対して透過性がある材料からなる。
【0024】
そうする際に、発光団および粒子は、このエンベロープ内に「埋め込まれ」、「被覆され」凝集体はビードの形を有する。
【0025】
「符号化粒子」と呼ぶことができる同じ物理的実体内の発光団および粒子の組合せは、以下のような明らかな利点を有する。
この符号化実体は、マーキングされる媒体とは別に、即座に製造することができる。マーキングの際、前記媒体で被着させるまたは一体化させることが十分である。したがってこのような発光団/表面プラズモン効果粒子の組合せは、紙、ガラス、プラスチックなどの異なる材料をマーキングするのに使用することができる。
所定のおよび安定構造を有する物理的実体内の発光団および表面プラズモン効果粒子の共存は、これら2つの分子の間の相互作用、特にスペクトルの変更の際に重要な役割を果たす、その距離を最適に調節するように働く。
【0026】
有利には、この凝集体は200nmより小さい寸法を有する。
【0027】
このような寸法は、認証される物体の細かい材料(特に、フィルムおよび/または繊維)構成部品の機械的性状を変えない比較的小さな凝集体を準備するように働く。実際に、過剰な寸法危険性を有する光学符号化装置は機械的性状を許容せず、したがって認証される物体を局所的に損傷する。
【0028】
さらに、光学符号化装置が60nmより小さい寸法を有する場合、裸眼では検出不可能である。
【0029】
さらに、有利には200nmより小さいこの寸法は、発光団とプラズモン効果粒子の間の短距離相互作用と完全に適合する。
【0030】
実際、および本発明の1つの有利な特性によると、発光団および表面プラズモン効果を有する粒子の間の距離は30nmより短い。このような距離は、粒子と発光団の間の相互作用に有利に働く。
【0031】
この距離はゼロにまで小さくすることができ、発光団および前記粒子は接触している。
【0032】
本発明の別の特性によると、発光団または前記粒子は、前記赤外線、可視または紫外線光線に対して透過性がある材料に由来する別個の層に含まれている。
【0033】
すなわち、スペーサと呼ばれる材料が、発光団と粒子の間に挿入されて、この相互作用に望ましいその間の距離を確立するように働く。
【0034】
本発明によると、表面プラズモン効果粒子は、金、銀、銅、アルミニウムおよびナトリウムからなる群から選択した、高密度および高電子移動性を有する導電金属を含んでいる。
【0035】
このような金属は実際、その原子が赤外線、可視または紫外線範囲内で励起される場合に、表面プラズモンを生成することができる。
【0036】
別の方法では、前記粒子は、前記発光団の発光スペクトルに適切な表面プラズモン効果を示すのに適切な光学共振装置を形成するために、金、銀および銅からなる群から選択した、高密度および高電子移動性を有する導電金属フィルムに含まれる誘電または半導体材料でできているナノ粒子を含むことができる。
【0037】
したがって、このような粒子は発光団の放射スペクトルと一致するように、光学共振によって表面プラズモンを生成するように働く。可能性のある発光の数はしたがって、これらの粒子の寸法、またはこのような粒子でできている光学共振装置フィルムの厚さを変えることによって大きくすることができる。
【0038】
このような材料はしたがって、十分な光学共振装置を準備するように働く。
【0039】
絶縁粒子上の金属層である、プラズモン効果用の光学共振装置ナノ装置の使用が特に好ましい。実際、この代替形態は、例えば共振装置の幾何寸法のみを変えることによって、単一のプラズモンナノ粒子の場合よりもはるかに幅広い共振周波数、普通はIR範囲に対して可視の数百nmを得るように働く。これにより、プラズモン周波数を変えるようにその化学性を変えることが不要になる。
【0040】
本発明によると、発光団は、
・ローダミン-B-イソチオシアネート(RBITC)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、ローダミン、エオシン、ピラミン、アミノGからなる群から選択した有機発光団、
・ZnO、ZnS、CdSe、InGaP、InP、Si、Ge、GaAs、GaP、GaAsPのナノ結晶、
・Y2O3:Eu、Y2O2S:Eu、BaMgAl16O17:Eu、GdBO3:Eu、YGdBO3:Eu、YPVO4:Eu、Gd2O3:Tb、Gd2O2S:Tb、Y3Al5O12:Tb、Y2SiO5:Ce、LaPO4:Tb、Ceなどの希土イオンでドーピングした酸化物、硫化物、リン酸塩またはバナジウム塩基質、および
・ZnS:Mn、ZnS:Au、ZnS:Al、ZnS:Ag、ZnO:Ag、ZnO:Cu、ZnO:Mn、Zn2SiO4:Mn、Al2O3:Cr、Al2O3:Tiなどの遷移金属でドーピングした半導体または酸化物基質
から選択される。
【0041】
このような発光団は、発光により赤外線、可視または赤外線光線を放射するのに適切である。
【0042】
本発明によれば、発光団および/または表面プラズモン粒子を覆う分離層は、ポリマー、またはポリシクロヘキサン(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはアルミナ(Al2O3)などの無機酸化物からなる。
【0043】
このような分離層は、紫外線、可視または紫外線光線に対して透過性があり、発光団と粒子の間の距離を調節するように働く。
【0044】
本発明によれば、発光団および表面プラズモン効果粒子を封入するエンベロープは、ポリシクロヘキサン(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはアルミナ(Al2O3)などの無機酸化物からなる。
【0045】
このようなエンベロープは、紫外線、可視または紫外線光線に対して透過性があり、発光団と前記粒子の間の距離を調節するように働く。
【0046】
本発明はまた、改ざん不可能にするために、特に織物、紙、ガラスまたはプラスチックからなる物体をマーキングする方法に関する。この方法は、前に記載したような光学符号化装置を前記物体に結合するステップからなる。
【0047】
本発明は最後に、このような物体を認証する方法に関する。この方法は、
・赤外線、可視または紫外線光線を放射する光源を使用して前記物体を照射するステップと、
・スペクトル検出器を使用して前記物体によって再び放射される光線を感知するステップと、
・前記物体によって放射された発光スペクトルを基準スペクトルと比較するステップと、
・前記物体の認証または非認証を示すステップと
を含んでいる。
【0048】
本発明を実施することができる方法、および提供する利点はまた、添付の図面と合わせて、非限定的であり情報として提供された、以下に記載する例示的な実施形態から明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
これらの図面を読むのを簡単にするために、発光団表面は黒い領域で示されており、表面プラズモン効果粒子の表面は黒点を含む白い領域で示されており、分離層の表面は斜めの平行線によって示され、封入エンベロープの表面は白い領域で示されている。
【0050】
これは図1から5のユニット要素は個別に番号が付けられておらず、それによって明確な図面を示すことが可能になるからである。
【0051】
図1は、本発明の第1の実施形態による4つの代替実施形態を示している。ここに示された4つの凝集体100、110、120および130は全て、表面プラズモン効果粒子で凝集された発光団からなる。
【0052】
観察することができるように、発光団および粒子の寸法およびそれぞれの位置は、一実施形態から別の実施形態まで変わることができる。したがって、凝集体100は、例えば3つの表面プラズモン効果粒子を有するファンデルワールス力によって結合された、2つの結合発光団を含んでいる。凝集体100の場合、発光団および粒子は同様の寸法を有する。
【0053】
逆に、凝集体110は、その上に4つの発光団が凝集された(少なくとも、この凝集体の断面を構成するシートの平面内で)大きな表面プラズモン効果粒子を含んでいる。
【0054】
凝集体130は、3つの小さな粒子が1つの「大きな」発光団に関連する、凝集体110の逆の状況に対応する。
【0055】
凝集体120は、表面プラズモン効果粒子が大きな発光団内に直接収納されるので、異なる元の構造である。
【0056】
発光団および凝集体100、110、120および130を作る粒子が互いに接触している限り、すなわちこれらがゼロの距離だけ離れている限り、例えば物体の認証中に光源によって放射される赤外線、可視または紫外線光線に曝される場合に相互作用を開始することが可能である。発光団はその後、表面プラズモン効果粒子との相互作用によって変調される特徴発光スペクトルを再び放射する。このような変調は、図6と合わせて以下に説明する。
【0057】
図2は、本発明の第2の実施形態による5つの代替実施形態を示している。5つの凝集体200、210、220、230および240は全て、表面プラズモン効果粒子と組み合わされた発光団を含んでいる。全体は、赤外線、可視または紫外線光線に対して透過性がある材料でできているエンベロープ内に封入されているまたは埋め込まれている。図2で観察することができるように、エンベロープによって封入されるクラスタは、図1に示す凝集体100、110、120および130と同一である。したがって、凝集体200はエンベロープ内に埋め込まれた凝集体100との2つの同一の組合せを含んでいる。同様に、凝集体210は、エンベロープなどに埋め込まれた凝集体110との2つの同一の組合せを含んでいる。
【0058】
凝集体240は、凝集体100、110、120および130とそれぞれ同一である4つの組合せを封入するエンベロープを含んでいる。
【0059】
その結果、図1の各凝集体100、110、120および130が独自の改ざん不可能な発光スペクトルを有する光学符号化装置を構成することが可能であるのと同様に、凝集体200、210、220、230および240は、独自の改ざん不可能な光学符号化装置を構成することが可能である。
【0060】
図3は、凝集体300、310および320が全て1つまたは複数の発光団、1つまたは複数の表面プラズモン効果粒子からなっており、全体が図2の凝集体200、210、220、230および240を作るものと同様であるエンベロープに封入されている、本発明の第3の実施形態に対応する。
【0061】
しかし、図3の場合、発光団および粒子は各エンベロープ内で離されている。
【0062】
本発明によると、発光団と粒子の間の距離は、数十ナノメートルより短い、好ましくは最大30nmである。既に上に記したように、この距離により、発光によって再び放射される発光スペクトルを変調するために、粒子および発光団が相互作用することが可能になる。発光団と粒子の間のこの距離または間隔を調整するために、混合中にこのエンベロープを作る発光団、粒子および材料の相対的割合を調整することが望ましい。
【0063】
図1の場合と同様に、図3の凝集体300、310および320の構成要素は、様々なそれぞれの寸法および位置を有する。したがって、凝集体300は「大きな」発光団および3つの小さな粒子を含んでおり、凝集体310は「反対称」構造を有し、凝集体320は同様の寸法の発光団および粒子を有する。
【0064】
図4は、発光団および/または表面プラズモン効果粒子が、赤外線、可視または紫外線光線に対して透過性がある材料でできている分離層によって個別に覆われている、本発明の第4の実施形態に対応する。
【0065】
したがって図4は、それぞれの位置および寸法の多くの可能な組合せとして示す、10個の凝集体400、410、420、430、440、450、460、470、480および490を示している。したがって、分離層は凝集体400、420および480の場合のように、粒子のみを覆うことができる。分離層はまた、凝集体430および490の場合のように、発光団のみを覆うことができる。また、発光団および粒子を覆うことができる(凝集体410、440および470)。最後に、凝集体450および460に示された、凝集体110または130と同様の組合せを含むことができる。
【0066】
図4でさらに観察することができるように、粒子および発光団の相対寸法は変えることができ、それによって可能な組合せを充実させることができ、したがって発光スペクトルがこれらの各光学符号化装置によって放射される。
【0067】
上に記したように、各分離層、または「スペーサ」材料は、発光団と粒子の間の調整距離を維持するように働く。この距離は、発光団と表面プラズモン効果粒子の間の相互作用を容易にするために、30nmより短いことが好ましい。
【0068】
したがって、これらの相互作用により、各凝集体400、410、420、430、440、450、460、470、480、490は、独自の改ざん不可能な発光スペクトルを放射する。
【0069】
図5は、本発明の第5の実施形態によるいくつかの実施形態を示している。この場合、図4に示すのと同様の組合せはまた、赤外線、可視または紫外線光線に対して透過性があるエンベロープを使用して封入される。したがって例えば、凝集体500は、分離層で覆われた2つの発光団および3つの粒子によって形成された凝集体400と同様の2つの組合せを含んでいる。
【0070】
同様に、凝集体520は、凝集体400、470および420と同様の3つの組合せを封入するエンベロープを含んでいる。これらの凝集体の様々な構成要素の位置および寸法の他の組合せが実現可能であり、この第5の実施形態に一致する。
【0071】
図6は、発光放射波長の関数として発光スペクトルの強度を示すグラフである。このグラフは、発光団と相互作用する表面プラズモン粒子の影響を示している。
【0072】
この場合、発光団はローダミン-B-イソチオシアネート(RBITC)からなり、粒子は金ナノ粒子からなる。
【0073】
ここに示す3つの発光スペクトルは、380nmの波長で放射する光源によって照射される3つの異なるサンプルによって放射される反応に対応する。これらの3つのサンプルのうち、その1つは、有機発光団、この場合、エンベロープの役割を果たすポリシクロヘキサン(SiO2)のビードに封入されたローダミン-B-イソチオシアネート(RBITC)を含む基準サンプルである。380nmの波長を有する光線によって照射される場合、この基準サンプルは発光によって、破線で示し、589nmの波長に対する光強度ピークを示す発光スペクトルを再び放射する。
【0074】
他の2つの発光スペクトルは、本発明による光学符号化装置を含むサンプルに対応している。したがって、実線で示し、596nmの波長に対して光強度ピークを示す発光スペクトルは、基準サンプルとして同じ有機発光団(RBITC)、および本発明を特徴付ける表面プラズモン効果粒子を構成する金ナノ粒子を含む凝集体を含む光学符号化装置の発光放射から導かれる。この第2のサンプルの凝集体はさらに、基準サンプルと同様に、ポリシクロヘキサン(SiO2)のエンベロープに封入されている。
【0075】
図6の観察により、第2のサンプルに対応する光学符号化装置によって放射される発光スペクトルが高い波長に向かってシフトされることが示されている。すなわち、これらの2つの発光スペクトル(589および596;破線および実線)は明らかに、互いに別個である。
【0076】
第3の発光スペクトル(612;点線)は、本発明による光学符号化装置にも対応する第3のサンプルの発光放射を示している。この第3のサンプルは、第2のサンプル(596)を含むものと同様の凝集体を含んでおり、唯一の違いは金ナノ粒子がより大きな寸法を有することである。実際、第2のサンプル(596)の粒子を作る金ナノ粒子は8nmの中間直径を有し、第3のサンプルの粒子を作る金ナノ粒子は16nmの中間直径を有する。
【0077】
実際、図6を観察することによって分かるように、これらの粒子の寸法を二重にすることによってまた、高い波長に向かった「滑り」またはシフトが生じる。
【0078】
比較によって、表面プラズモン効果粒子を含んでいない基準サンプル(589)は、より低い波長に集中されたより狭いスペクトルを有する。
【0079】
したがって、図6によって示される実験により、発光団の発光スペクトルへの表面プラズモンの影響が明らかになる。この影響は、上に記すように、粒子と発光団の間のナノメートルスケールで生じる相互作用によるものである。
【0080】
したがって、本発明の光学符号化装置は、発光団と表面プラズモン効果材料からなる粒子の間の特定の元の物理的相互作用を実施する。これは、改ざんするのが難しい、発光における新規のスペクトル署名を作り出すように働く。
【0081】
この目的で、上に記すように、光学符号化装置は互いの相互作用において少なくとも2つの異なる材料を含んでいなければならず、これらの2つの材料は互いから数十nmの距離に位置決めされている。実際、2つの材料の間の間隔が大きくなり、特性の値を超えると、粒子と発光団の間のさらなる相互作用はなく、それによって元の、したがって独自の発光スペクトルは得られない。
【0082】
さらに、本発明による光学符号化装置は、認証する物体と結合可能にするために、小さな寸法を有していなければならない。これらの光学符号化装置は、この物体の表面の全てまたは一部に取り付けることができる。これらはしたがって、正確な点に配置することができる、またはこの物体の表面全体にわたって広げることができる。
【0083】
しかし、これらの光学符号化装置の組合せが、認証される物体の機械的および/または美的性状を変えることを避けることが重要である。したがって、これらの光学符号化装置を作る凝集体が200nmより小さい寸法を有することが望ましい。加えて、表面プラズモン効果は、小さな粒子、すなわちナノメートル寸法を有する粒子で得ることしかできない。その結果、2つの寸法限界は適合しており、ナノメートル光学符号化装置の製造においてその限界に達する。
【0084】
さらに、本発明はプラズモンと発光団の間の相互作用の特定の多様性の利点がある。したがって、表面プラズモン効果粒子の寸法を変えることによって、これらの粒子が発光団と相互作用する波長範囲は、利用する材料の化学的性質を変えることなく変更することができる。このように、それぞれ独自の署名または発光スペクトルを有する、多くの光学符号化装置を製造することができる。利用する材料の化学的分析によることを含む、全体的に異なる相互作用によるこのような幅広い多様性により、光学コードの改ざんが実質的に不可能になる。
【0085】
さらに、発光団とプラズモン効果粒子の間の相互作用は、発光スペクトルの強度ピークを「滑らせる」だけでなく、スペクトルの他の部分の光強度を、特にその端部で特定の方法で増減させるように働く。光強度のこのような増減は、発光団と表面プラズモン効果粒子の間の距離による。
【0086】
したがって、本発明は相互作用する材料の間の距離を最適化するために、分離層および/または封入エンベロープを使用することを提案している。図2から5に示すように、多くの可能性が特定の間隔を画定するために、したがって、独自の発光スペクトル、すなわち元の署名を有する光学符号化装置を準備するのに利用可能である。
【0087】
さらに、分離層および/または封入エンベロープの使用は、例えば、耐摩耗性がより大きい光学符号化装置を作る凝集体を作るように働く。
【0088】
図1から5にさらに示すように、本発明は、したがって再現するのがさらに複雑な多数の相互作用を得るために、異なるタイプの複数の発光団または異なるタイプのいくつかの材料を組み合わせるように働く。
【0089】
さらに、光学符号化装置を形成する凝集体に含まれた発光団と相互作用する、上に記したような光学共振装置を形成する粒子を使用する可能性は、発光団と粒子の間の干渉の範囲の波長間隔をさらに延ばすように働く。したがってこれはまた、同じ基材を使用しながら、新しい発光スペクトルを作り出すことによって、光学符号化の可能性を大きくするように働く。
【0090】
他の実施形態は、必ずしも本発明の範囲を超える必要なく実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1の実施形態による4つの代替実施形態の略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による5つの代替形態の略断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態による3つの代替形態の略断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態による10の代替形態の略断面図である。
【図5】本発明の第5の実施形態による3つの代替形態の略断面図である。
【図6】それぞれ8および16nmのプラズモン共振を有する金ナノ粒子、および金粒子のないナノトレーサをそれぞれ備えた、有機発光団RbITC間の相互作用による蛍光スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0092】
100 凝集体
110 凝集体
120 凝集体
130 凝集体
200 凝集体
210 凝集体
220 凝集体
230 凝集体
240 凝集体
300 凝集体
310 凝集体
320 凝集体
400 凝集体
410 凝集体
420 凝集体
430 凝集体
440 凝集体
450 凝集体
460 凝集体
470 凝集体
480 凝集体
490 凝集体
500 凝集体
520 凝集体
612 発光スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光によって赤外線、可視または紫外線光線を放射するのに適した複数の凝集体であって、少なくとも1つが少なくとも1つの発光団を含んでいる凝集体を備えており、さらに表面プラズモン効果材料からなる少なくとも1つの粒子を含んでおり、前記発光団および前記粒子は相互作用を始めるのに適切である光学符号化装置であって、前記凝集体は、前記発光団と前記表面プラズモン効果粒子を封入し、赤外線、可視または紫外線光線に対して透過性がある材料からなるエンベロープを含んでいることを特徴とする光学符号化装置。
【請求項2】
前記発光団および前記表面プラズモン効果の間の距離は30nmより短いことを特徴とする、請求項1に記載の光学符号化装置。
【請求項3】
前記発光団および前記表面プラズモン効果は接触していることを特徴とする、請求項1から2の一項に記載の光学符号化装置。
【請求項4】
分離層は前記発光団および/または前記表面プラズモン効果粒子を覆い、前記分離層は、赤外線、可視または紫外線光線に対して透過性がある材料からなることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の光学符号化装置。
【請求項5】
前記凝集体は、200nmより小さい寸法を有することを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の光学符号化装置。
【請求項6】
前記粒子は、前記発光団の放射スペクトルを全体的にまたは部分的に含むエネルギーを有するスペクトルにより励起される場合に、表面プラズモン効果を示すのに適切であることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の光学符号化装置。
【請求項7】
前記粒子は、金、銀、銅、アルミニウムおよびナトリウムからなる群から選択した、高密度および高電子移動性を有する導電金属を含んでいることを特徴とする、請求項6に記載の光学符号化装置。
【請求項8】
前記表面プラズモン効果粒子は、前記発光団の前記発光スペクトルに適切な表面プラズモン効果を示すのに適切な光学共振装置を形成するために、金、銀および銅からなる群から選択した、高密度および高電子移動性を有する導電金属フィルムに含まれる誘電または半導体材料でできているナノ粒子を含んでいることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の光学符号化装置。
【請求項9】
前記ナノ粒子は、ポリマー、またはポリシクロヘキサン(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはアルミナ(Al2O3)などの無機酸化物を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の光学符号化装置。
【請求項10】
前記発光団は、
ローダミン-B-イソチオシアネート(RBITC)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、ローダミン、エオシン、ピラミン、アミノGからなる群から選択した有機発光団、
ZnO、ZnS、CdSe、InGaP、InP、Si、Ge、GaAs、GaP、GaAsPのナノ結晶、
Y2O3:Eu、Y2O2S:Eu、BaMgAl16O17:Eu、GdBO3:Eu、YGdBO3:Eu、YPVO4:Eu、Gd2O3:Tb、Gd2O2S:Tb、Y3Al5O12:Tb、Y2SiO5:Ce、LaPO4:Tb、Ceなどの希土イオンでドーピングした酸化物、硫化物、リン酸塩またはバナジウム塩基質、および
ZnS:Mn、ZnS:Au、ZnS:Al、ZnS:Ag、ZnO:Ag、ZnO:Cu、ZnO:Mn、Zn2SiO4:Mn、Al2O3:Cr、Al2O3:Tiなどの遷移金属でドーピングした半導体または酸化物基質
から選択されることを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の光学符号化装置。
【請求項11】
前記分離層は、ポリマー、またはポリシクロヘキサン(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはアルミナ(Al2O3)などの無機酸化物からなることを特徴とする、請求項4から10の一項に記載の光学符号化装置。
【請求項12】
前記エンベロープは、ポリシクロヘキサン(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはアルミナ(Al2O3)などの無機酸化物からなることを特徴とする、請求項1から11の一項に記載の光学符号化装置。
【請求項13】
織物、紙、ガラスまたはプラスチックなどの物体をマーキングする方法であって、前記物体に請求項1から12の一項に記載の光学符号化装置を結合させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
赤外線、可視または紫外線光線を放射する光源を使用して前記物体を照射するステップと、
スペクトル検出器を使用して前記物体によって再び放射される光線を感知するステップと、
前記物体によって放射された発光スペクトルを基準スペクトルと比較するステップと、
前記物体の認証または非認証を示すステップとを含むことを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の光学符号化装置を一体化する、織物、紙、ガラスまたはプラスチックなどの前記物体を認証する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−185580(P2008−185580A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−301058(P2007−301058)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】