説明

プラノプロフェン含有水性組成物

【課題】 本発明の目的は、水存在下でのプラノプロフェンの分解、特に光による分解が抑制されており、しかも長期間保存しても水性組成物中に沈殿物や不溶化物が生じることのなく澄明性を保持できるプラノプロフェン含有水性組成物を提供することである。
【解決手段】 プラノプロフェン又はその塩を含有する水性組成物であって、該水性組成物中に、(A)ソルビン酸又はその塩を0.001〜2w/v%、(B)エチレンジアミン四酢酸又はその塩を0.0005〜0.5w/v%、及び(C)非イオン界面活性剤を0.001〜2w/v%の割合で含有することを特徴とする、水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性が改善されたプラノプロフェン含有水性組成物に関する。より詳細には、プラノプロフェンの分解、特に光による分解が抑制されており、長期間にわたって組成物が澄明な状態を保持できるプラノプロフェン含有水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラノプロフェンは、優れた抗炎症効果を持ち、しかも安全性の高い非ステロイド系抗炎症剤として知られており、シロップ剤等の内服剤や点眼剤などの液剤の形態で広く使用されている。
【0003】
しかしながら、プラノプロフェンは、水の存在下では不安定になり、経時的に分解されてしまうという問題点があった。特に、プラノプロフェンは、水の存在下で光に晒されると著しく分解されてしまうという問題点があった。加えて、プラノプロフェンを含有する水性組成物は、沈殿物や不溶化物が生じやすいため、長期間保存すると溶液の澄明性が損なわれ、外観形状が悪化してしまうという問題点もあった。そのため、プラノプロフェンを含有する水性組成物には、プラノプロフェンに安定性を付与すると共に、組成物の澄明性を長期間保持させることが求められている。
【0004】
従来、プラノプロフェンの安定性を備えさせた水性組成物について、種々提案されている。例えば、炭酸塩(特許文献1)、有機アミン(特許文献2)、抗酸化剤(特許文献3)、プロピレングリコール(特許文献4)等の成分を配合したプラノプロフェン含有水性組成物が報告されている。しかしながら、従来のプラノプロフェン含有水性組成物では、プラノプロフェンに付与されている光安定性が不十分であったり、或いは沈殿物や不溶化物が生じたりするという欠点があった。更には、従来のプラノプロフェン含有水性組成物の中には、刺激があり、安全性の観点から好ましくないものもある。
【0005】
このように、プラノプロフェンの安定性と、沈殿物や不溶化物がなく水性組成物が澄明な状態を保持する特性の双方を備えたプラノプロフェン含有水性組成物については、未だ開発されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平5−186349号公報
【特許文献2】特開平8−291065号公報
【特許文献3】特開平7−304670号公報
【特許文献4】特開平10−236951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決することである。詳細には、本発明は、水存在下でのプラノプロフェンの分解、特に光による分解が抑制されており、しかも長期間保存しても水性組成物中に沈殿物や不溶化物が生じることのなく澄明性を保持できるプラノプロフェン含有水性組成物を提供することを目的とする。また本発明は、プラノプロフェン又はその薬学的に許容される塩を含有する水性組成物を安定化する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、プラノプロフェン又はその薬学的に許容される塩を含有する水性組成物に、特定の割合で、ソルビン酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、及び非イオン界面活性剤を含有させることによって、プラノプロフェンの安定性、特に光に対する安定性が格段に改善され、しかも長期間保存しても、水性組成物中に沈殿物や不溶化物が生成することなく、該水性組成物の澄明な状態が保持されることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、プラノプロフェン又はその塩と他の構成成分との無数に存在する組み合わせやその配合割合の中から、上記課題が解決される成分の組み合わせ及び夫々の配合割合を多く実験により見出し、更に検討を重ねることによって完成したものである。
【0009】
本発明は、下記に掲げるプラノプロフェン含有水性組成物である:
項1. プラノプロフェン又はその塩を含有する水性組成物であって、該水性組成物中に、(A)ソルビン酸又はその塩を0.001〜2w/v%、(B)エチレンジアミン四酢酸又はその塩を0.0005〜0.5w/v%、及び(C)非イオン界面活性剤を0.001〜2w/v%の割合で含有することを特徴とする、水性組成物。
項2. プラノプロフェン又はその塩を0.0001〜2w/v%の割合で含有する、項1に記載の水性組成物。
項3. (A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100重量部当たり、(A)成分を0.5〜95重量部、(B)成分を0.1〜80重量部、及び(C)成分を3〜99重量部の割合で含有する、項1又は2に記載の水性組成物。
項4. 更に、(D)クエン酸又はその塩を含有する、項1乃至3のいずれかに記載の水性組成物。
項5.(D)成分を0.001〜5w/v%の割合で含有する、項4に記載の水性組成物。
項6. 更にホウ酸緩衝剤を含有する、項1乃至5のいずれかに記載の水性組成物。
項7. 水性組成物が点眼剤又は洗眼剤である、項1乃至6のいずれかに記載の水性組成物。
項8. プラノプロフェン又はその塩を0.0005〜0.2w/v%、(A)成分を0.005〜0.5w/v%、(B)成分を0.001〜0.2w/v%、及び(C)成分を0.01〜2w/v%の割合で含有する、項1乃至7のいずれかに記載の水性組成物。
項9. 更に、(D)成分を0.01〜2w/v%の割合で含有する、項8に記載の水性組成物。
項10. プラノプロフェン又はその塩を0.001〜0.1w/v%、(A)成分を0.01〜0.3w/v%、(B)成分を0.002〜0.1w/v%、及び(C)成分を0.05〜1w/v%の割合で含有する、項1乃至7のいずれかに記載の水性組成物。
項11. 更に、(D)成分を0.05〜1w/v%の割合で含有する、項10に記載の水性組成物。
項12. 水性組成物が点眼剤であって、プラノプロフェン又はその塩を0.01〜0.1w/v%、(A)成分を0.05〜0.3w/v%、(B)成分を0.004〜0.1w/v%、及び(C)成分を0.15〜0.5w/v%の割合で含有する、項1乃至7のいずれかに記載の水性組成物。
項13. 更に、(D)成分を0.1〜0.8w/v%の割合で含有する、項12に記載の水性組成物。
項14. 水性組成物が点眼剤であって、プラノプロフェン又はその塩を0.01〜0.05w/v%、(A)成分を0.05〜0.2w/v%、(B)成分を0.01〜0.05w/v%、及び(C)成分を0.15〜0.4w/v%の割合で含有する、項1乃至7のいずれかに記載の水性組成物。
項15. 更に、(D)成分を0.2〜0.5w/v%の割合で含有する、項14に記載の水性組成物。
項16. 水性組成物が洗眼剤であって、プラノプロフェン又はその塩を0.001〜0.01w/v%、(A)成分を0.05〜0.3w/v%、(B)成分を0.004〜0.1w/v%、及び(C)成分を0.15〜0.5w/v%の割合で含有する、項1乃至7のいずれかに記載の水性組成物。
項17. 更に、(D)成分を0.1〜0.8w/v%の割合で含有する、項16に記載の水性組成物。
項18.水性組成物が洗眼剤であって、プラノプロフェン又はその塩を0.001〜0.005w/v%、(A)成分を0.05〜0.2w/v%、(B)成分を0.01〜0.05w/v%、及び(C)成分を0.15〜0.4w/v%の割合で含有する、項1乃至7のいずれかに記載の水性組成物。
項19. 更に、(D)成分を0.2〜0.5w/v%の割合で含有する、項18に記載の水性組成物。
項20.340nm〜380nmの吸光度が1以上である容器に収容されてなる、項1乃至19のいずれかに記載の水性組成物。
項21.容器が内部視認可能なものである、項20に記載の水性組成物。
項22.容器の420〜450nmの吸光度が1以下である、項21に記載の水性組成物。
項23.容器が、更に紫外線遮断剤を含有するものである、項20乃至22のいずれかに記載の水性組成物。
項24.項1乃至19のいずれかに記載の水性組成物が、340nm〜380nmの吸光度が1以上である容器に収容されてなることを特徴とする、容器入り水性組成物。
項25. 容器が内部視認可能なものである、項24に記載の容器入り水性組成物。
項26.容器の420〜450nmの吸光度が1以下である、項25に記載の容器入り水性組成物。
項27.容器が、更に紫外線遮断剤を含有するものである、項24乃至26のいずれかに記載の容器入り水性組成物。
【0010】
更に本発明は、下記に掲げるプラノプロフェン含有水性組成物の安定化方法である:
項28.プラノプロフェン又はその塩を含有する水性組成物の安定化方法であって、該水性組成物に(A)ソルビン酸又はその塩を0.001〜2w/v%、(B)エチレンジアミン四酢酸又はその塩を0.0005〜0.5w/v%、及び(C)非イオン界面活性剤を0.001〜2w/v%の割合で配合することを特徴とする、上記水性組成物の安定化方法。
項29.更に、前記水性組成物を、340nm〜380nmの吸光度が1以上である容器に収容する、項28に記載の安定化方法。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書中、w/v%は、質量対体積百分率を示し、溶液100mLに溶けている各成分(溶質)の重量gを意味するものである。また、コンタクトレンズという語句は、特記しない限り、ハード、酸素透過性ハード、ソフト等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する意味で用いる。また、本明細書において、水性組成物とは、組成物中に水を少なくとも5重量%以上、好ましくは20重量%以上、更に好ましくは50重量%以上含有するものを意味する。
(I) 水性組成物
本発明の水性組成物は、プラノプロフェン又はその塩に加えて、特定の割合で下記(A)〜(C)成分を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の水性組成物に含有されるプラノプロフェン、即ちα−メチル−5H−[1]ベンゾピラノ[2,3-b]ピリジン−7−酢酸は、公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0013】
また、プラノプロフェンの塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として、特に制限されるものではない。このような塩としては、例えば、無機塩基との塩[例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等]や、有機塩基との塩[例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機塩基との塩]などが挙げられる。これらのプラノプロフェンの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0014】
また、プラノプロフェン又はその塩は、水和物の形態でも使用できる。
【0015】
本発明の水性組成物には、これらのプラノプロフェン及びその塩を、1種単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましくはプラノプロフェンである。
【0016】
本発明の水性組成物では、後述する(A)〜(C)成分が特定の割合で存在することによって、プラノプロフェン又はその塩が光に対して安定に存在でき、しかも該組成物の澄明な状態が保持される。故に、本発明の水性組成物中のプラノプロフェン又はその塩の配合割合は、特に制限されるものではなく、該組成物の用途や形態等に応じて適宜設定できる。水性組成物中のプラノプロフェン又はその塩の配合割合の一例として、これらが総量で0.0001〜2w/v%、好ましくは0.0005〜0.2w/v%、更に好ましくは0.001〜0.1w/v%となる割合が例示される。より具体的には、水性組成物が点眼剤であれば、プラノプロフェン又はその塩が総量で、特に好ましくは0.01〜0.1w/v%、更に特に好ましくは0.01〜0.05w/v%が例示される。また、水性組成物が洗眼剤であれば、プラノプロフェン又はその塩が総量で、特に好ましくは0.001〜0.01w/v%、更に特に好ましくは0.001〜0.005w/v%が例示される。
【0017】
本発明の水性組成物は、(A)成分としてソルビン酸又はその塩を含有する。ソルビン酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。ソルビン酸の塩としては、例えば、無機塩基との塩[例えばアンモニウム塩;アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アルミニウム塩等の金属との塩]、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機塩基との塩)等が例示され、特にナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。(A)成分として、好ましくはソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウムを挙げることができる。
【0018】
(A)成分として、これらのソルビン酸及びその塩を、1種単独で使用してもよく、またこれらを任意に2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明の水性組成物中の(A)成分の配合割合は、(A)成分の総量で、通常0.001〜2w/v%である。好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.3w/v%、特に好ましくは0.05〜0.3w/v%、更に特に好ましくは0.05〜0.2w/v%が例示される。
【0020】
本発明の水性組成物は、(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸又はその塩を含有する。
【0021】
エチレンジアミン四酢酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されず、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム等のアルカリ金属塩を挙げることができる。
【0022】
エチレンジアミン四酢酸又はその塩は、水和物の形態で使用することもできる。水和物の形態のものとして、具体的には、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの2水和物が例示できる。
【0023】
(B)成分として、これらのエチレンジアミン四酢酸及びその塩を、1種単独で使用してもよく、またこれらを任意に2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の水性組成物中の(B)成分の配合割合としては、(B)成分の総量で、通常0.0005〜0.5w/v%である。好ましくは0.001〜0.2w/v%、更に好ましくは0.002〜0.1w/v%、特に好ましくは0.004〜0.1w/v%、更に特に好ましくは0.01〜0.05w/v%が例示される。
【0025】
本発明の水性組成物は、(C)成分として非イオン界面活性剤を含有する。当該非イオン界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。当該非イオン界面活性剤の一例として、ポリオキシエチレン(POE)−ポリオキシプロピレン(POP)ブロックコポリマー(例えば、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188 など);エチレンジアミンのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー付加物(例えば、ポロキサミン);モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン (ポリソルベート80)、ポリソルベート60等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE(60)硬化ヒマシ油等のPOE硬化ヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。これらの中で、好ましくはポロクサマー407、ポリソルベート80、POE(60)硬化ヒマシ油、特に好ましくはポリソルベート80である。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0026】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明の水性組成物中の(C)成分の配合割合としては、(C)成分の総量で、通常0.001〜2w/v%である。好ましくは0.01〜2w/v%、更に好ましくは0.05〜1w/v%、特に好ましくは0.15〜0.5w/v%、更に特に好ましくは0.15〜0.4w/v%が例示される。
【0028】
本発明の水性組成物の好ましい実施態様の一例として、(A)成分を0.05〜0.3w/v%、(B)成分を0.004〜0.1w/v%、及び(C)成分を0.15〜0.5w/v%の割合で含有する水性組成物において、該水性組成物が点眼剤であればプラノプロフェン又はその塩を0.01〜0.1w/v%含有するものが例示され、該水性組成物が洗眼剤であればプラノプロフェン又はその塩を0.001〜0.01w/v%含有するものが例示される。
【0029】
本発明の水性組成物は、前記割合で、上記(A)〜(C)成分が一体となって含有されていることにより、水性組成物中でプラノプロフェンの光による分解を抑制し、且つ該水性組成物に沈殿物や不溶化物を生じさせることなく、澄明な状態を長期間に亘って維持することが可能となる。
【0030】
更に、本発明の水性組成物は、上記(A)〜(C)成分の夫々の配合割合を充足し、且つ下記の(A)〜(C)のそれぞれの配合比を満たしていれば、上記効果を一層顕著に奏することができる:(A)、(B)及び(C)成分の総量100重量部に対して、(A)成分が0.5〜95重量部、(B)成分が0.1〜80重量部、及び(C)成分が3〜99重量部;好ましくは(A)成分が1〜85重量部、(B)成分が0.2〜55重量部、及び(C)成分が15〜98重量部;更に好ましくは(A)成分が7〜60重量部、(B)成分が0.5〜35重量部、及び(C)成分が30〜91重量部;特に好ましくは、(A)成分が10〜56重量部、(B)成分が1.5〜20重量部、及び(C)成分が37〜87重量部;更に特に好ましくは(A)成分が10〜30重量部、(B)成分が5〜15重量部、及び(C)成分が50〜75重量部。
【0031】
本発明の水性組成物に含有される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等を使用できる。これらの定義は第14改正日本薬局方に基づく。
【0032】
本発明の水性組成物は、上記(A)〜(C)成分に加えて、更に(D)クエン酸又はその塩を含有していてもよい。クエン酸又はその塩を配合することにより、プラノプロフェンの熱安定性を更に向上させることができる。本発明の水性組成物に配合されるクエン酸又はその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。クエン酸の塩としては、無機塩や有機塩が挙げられる。具体的には、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム)、クエン酸二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸トリエチル等が挙げられる。(D)成分として、好ましくはクエン酸ナトリウムである。これらのクエン酸又はその塩は、1種単独で(D)成分として使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて(D)成分として使用してもよい。
【0033】
本発明の水性組成物中の(D)成分の配合割合としては、(D)成分の総量で、通常0.001〜5w/v%である。好ましくは0.01〜2w/v%、更に好ましくは0.05〜1w/v%、特に好ましくは0.1〜0.8w/v%、更に特に好ましくは0.2〜0.5w/v%が例示される。
【0034】
本発明の水性組成物は、更に緩衝剤を含有していてもよい。本発明の水性組成物に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩などが挙げられる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明の効果を一層効率的に奏させる観点から、上記緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤及びリン酸緩衝剤は好適であり、ホウ酸緩衝剤が特に好適である。当該ホウ酸緩衝剤の具体例として、ホウ酸及びその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂など)が例示される。特に、ホウ酸、ホウ砂が好適である。
【0035】
本発明の水性組成物に緩衝剤を配合する場合、該緩衝剤の配合割合については、使用する緩衝剤の種類や期待される効果等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、水性組成物において、該緩衝剤が0.01〜3w/v%、好ましくは0.1〜2w/v%、更に好ましくは0.3〜2w/v%、特に好ましくは0.5〜2w/v%となる割合が例示される。
【0036】
また、本発明の水性組成物は、プラノプロフェン又はその塩の化学的安定性が著しく損なわれない範囲で、生体に許容される範囲内のpHに調節することができる。適切なpHは、該水性組成物の適用部位、剤形等により異なるが、通常6〜9、好ましくは6.5〜8.5、更に好ましくは6.8〜8.2、特に好ましくは7〜8程度である。かかる範囲内から著しく逸脱すると、プラノプロフェンまたはその塩の安定性が低下する可能性がある。pHや浸透圧の調節は、前記緩衝剤、或いは後述するpH調整剤、等張化剤、塩類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。
【0037】
本発明の水性組成物は、更に必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は適用部位、剤形等により異なるが、通常0.3〜4.2、好ましくは0.3〜2.1、さらに好ましくは0.5〜1.8、より好ましくは0.6〜1.5、特に好ましくは0.8〜1.5程度である。浸透圧の調整は無機塩及び多価アルコール、糖アルコール、糖類などを用いて行うことができる。
【0038】
本発明の水性用組成物において浸透圧比は、第十四改正日本薬局方に基づき0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を用いて測定する。浸透圧比測定用標準液は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650°Cで40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0039】
本発明の水性組成物は、その形態は任意であり、目的に応じて種々の形態をとることができる。例えば、液状、半固形状(軟膏など)等であってよい。具体的には、液剤、半固形剤(軟膏剤)などの剤形に製剤化することができる。好ましくは液状(液剤)である。
【0040】
本発明の水性組成物は、優れた安全性を有するので、例えば、液剤の場合は、溶液であっても懸濁液であっても、混合又は溶解して使用する組成物であっても良い。半固形剤の具体例としては眼軟膏薬が例示される。液剤の具体例としては、点眼剤(液)[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤(液)を含む]、洗眼剤(液)[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤(液)を含む]、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]、眼軟膏薬等を挙げることができる。これらの中で、好ましくは、点眼剤(液)、洗眼剤(液)であり、更に好ましくは点眼剤(液)である。
【0041】
なお、上記コンタクトレンズ用組成物は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用できるが、特に酸素透過性のハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズに対して吸着し難い成分から構成されているため、上記コンタクトレンズ用組成物は、これらのコンタクトレンズに対してより好適に使用される。
【0042】
本発明の水性組成物は、本発明の効果を妨げないことを限度として、上記成分の他に、種々の成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を組み合わせて含有することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分、殺菌薬成分、糖類、多糖類またはその誘導体、セルロース又はその誘導体又はそれらの塩、前述以外の水溶性高分子、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、緑内障治療薬などが例示できる。本発明において好適な成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0043】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0044】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
【0045】
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0046】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミンなど。
【0047】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロールなど。
【0048】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0049】
抗菌薬成分または殺菌薬成分:例えば、硫酸アミノデオキシカナマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ストレプトマイシン、トブラマイシン、硫酸ミクロノマイシン、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、スルベニシンナトリウム、塩酸セフメノキシム、ベンジルペニシリンカリウム、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、コリスチンメタスルホン酸ナトリウム、エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、キタサマイシン、スピラマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸ポリミキシン、ジベカシン、アミカシン、硫酸アミカシン、アシクロビル、イオドデオキシサイチジン、イドクスウリジン、シクロサイチジン、シトシンアラビノシド、トリフルオロチミジン、ブロモデオキシウリジン、ポリビニルアルコールヨウ素、ヨウ素、アムホテリシンB、イソコナゾール、エコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、ピマリシン、フルオロシトシン、ミコナゾールなど。
【0050】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、トレハロースなど。
【0051】
多糖類又はその誘導体:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。
【0052】
セルロース又はその誘導体又はそれらの塩:例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースなど。
【0053】
前述以外の水溶性高分子:ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドンなど。
【0054】
局所麻酔薬成分:例えば、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなど。
【0055】
ステロイド成分:例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロキシメステロン(hydroxymesterone)、カプロン酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウム、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、メチルプレドニゾロンなど。
【0056】
緑内障治療成分:例えば、イソプロピルウノプロストン、エピネフリン、塩酸アプラクロニジン、塩酸カルテオロール、塩酸ジピベフリン、塩酸ドルゾラミド、塩酸ピロカルピン、塩酸ブナゾシン、塩酸ブプラノロール、塩酸ベタキソロール、塩酸ベフノロール、カルバコール、塩酸レボブノロール、ジピバル酸エピネフリン、臭化ジスチグミン、ニプラジロール、マレイン酸チモロール、ラタノプロストなど。
【0057】
白内障治療成分:例えば、グルタチオン、ピレノキシン、5,12−ジヒドロアザペンタセンジスルホン酸ナトリウム(Sodium5,12-dihydro azapentacene disulfonate)など。
【0058】
水性組成物中のこれらの成分の配合量は製剤の種類、活性成分の種類などに応じて適宜選択され、内服用、外皮用、粘膜用製剤などにおける各種成分の配合量は当該技術分野で既知である。例えば、製剤全体に対して0.0001〜30w/v%、好ましくは、0.001〜10w/v%程度の範囲から選択できる。
【0059】
また、本発明の水性組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、香料または清涼化剤、キレート剤、緩衝剤などの各種添加剤を挙げることができる。
【0060】
以下に本発明の水性組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0061】
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。
【0062】
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリンなど。
【0063】
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0064】
界面活性剤:例えば、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。
【0065】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニドなど)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
【0066】
pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
【0067】
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
【0068】
香料又は清涼化剤:例えば、カンフル、ゲラニオール、ボルネオール、メントール、リュウノウ、ウイキョウ油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0069】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、クエン酸など。
【0070】
緩衝剤:アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など。具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂 、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど。
【0071】
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなど。
【0072】
溶解剤、基剤:オクチルドデカノール、オリーブ油、ゴマ油、酸化チタン、臭化カリウム、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パラフィン、ヒマシ油、プラスチベース、ラッカセイ油、ラノリン、ワセリンなど。
【0073】
本発明の水性組成物は、公知の方法により製造できる。
【0074】
本発明の水性組成物は、その用途や形態に応じて、当業界で通常使用されている形状の容器に収容して、保存、使用される。本発明の水性組成物を収容する容器については、特に制限されないが、好適な容器一例として、340nm〜380nmの吸光度が1以上である容器が挙げられる。
【0075】
ここで、340nm〜380nmの吸光度が1以上である容器とは、340nm、350nm、360nm、370nm、380nmの吸光度の平均が1以上である容器である。好ましくは2以上、さらに好ましくは2.5以上、特に好ましくは3以上、さらに特に好ましくは3.5以上であるとよい。このような光吸収特性を備える容器であれば、一層効果的にプラノプロフェンの安定化を図ることができる。
【0076】
なお、容器の上記吸光度は、第十四改正日本薬局方「プラスチック製医薬品容器試験法 4.透明性試験」に準拠して、次の方法により測定する。容器胴部からできるだけ湾曲が少なく厚さが均一な部分をとって、縦2〜4cm、横0.9〜1.1cmの大きさに切断したものを、それぞれ水を満たした紫外線吸光スペクトル測定用セルに浸し、水だけを満たしたセルを対照として、各測定波長について紫外可視吸光度測定法により吸光度を測定する。
【0077】
容器の上記光吸収特性は、容器の構成材料となる合成樹脂自体が有する光吸収特性に応じて、使用する合成樹脂の種類や配合割合、容器の厚みを適宜設定することにより備えさせることができる。具体的には、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリイミド及びこれらの共重合ポリエステルには、340nm〜380nmの光を吸収する性質があるので、これらのポリマーを適宜配合して容器を調製することにより、上記光吸収特性を備えさせることができる。このような容器の一例として、ポリイミドとポリエチレンテレフタレートの共重合体(ポリイミド:ポリエチレンテレフタレート=10〜30:70〜90(モル比))を5重量%程度含む容器、或いはポリエチレンナフタレートを10重量%程度含む容器が例示される。
【0078】
更に、容器の上記光吸収特性は、340nm〜380nmの光を吸収する物質を容器に配合することによっても備えることもできる。
【0079】
上記容器に配合される「340nm〜380nmの光を吸収する物質」(以下、「特定光吸収物質」と表記する)としては、容器に上記光吸収特性を備えさせることができる限り、特に制限されないが、該物質の一例として、酸化亜鉛、酸化チタン、ベンゾトリアゾール系化合物(商品名チヌビン(R)328、チヌビン(R)384-2、チヌビン(R)400、チヌビン(R)400-2、チヌビン(R)900、チヌビン(R)928、チヌビン(R)1130等)、トリアジン系化合物〔2(4, 6−ジフェニル−1,3 ,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等〕、アントラキノン系色素(1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、アントラキノン系イエロー、アントラキノン系ブルー、アントラキノン系グリーン等)、フタロシアニン系色素[フタロシアニンブルー(C.I. Pigment Blue 15;C.I. 74160;青色404号)などが挙げられる。上記の酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウムは、シリカ、シリコン、ケイ酸亜鉛、ステアリン酸、アルミナ、フッ素系化合物等で被覆されているものであってもよい。
【0080】
これらの特定光吸収物質は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0081】
特定光吸収物質を容器に配合する場合、その配合量としては、該物質の種類、容器の構成材料の種類、容器の形状等によって異なるが、容器の総重量に対して、該物質が0.00001〜0.1重量%、好ましくは0.0001〜0.05重量%、更に好ましくは0.001〜0.05重量%となる割合が例示される。
【0082】
上記特定光吸収物質を含有する容器は、例えば、容器の構成材料中に特定光吸収物質を練り込み、これを所定の容器形状に成形する方法(第1法);ガラスや合成樹脂等を所定の容器形状に成型した後に、この容器に特定光吸収物質をコーティングする方法(第2法);シート状に成形した合成樹脂に対して特定光吸収物質をコーティングし、これを所定の容器形状に成形する方法(第3法);特定光吸収物質を練り込んだフィルムを所定形状の容器に装着する方法(第4法)等の製法で製造される。
【0083】
なお、上記第3法において、使用するシート状の合成樹脂は、合成樹脂から直接シート状に成形したものであっても、また合成樹脂をフィルム状に成形し、このフィルムを接着積層させることによりシート状にしたものであってもよい。また、上記第4法には、特定光吸収物質を練り込んだ熱収縮性フィルム(シュリンクフィルム)を包装体に被せ、これを加熱することにより該フィルムを容器に密着被覆させる方法が包含される。
【0084】
また、上記第2法及び第3法において、特定光吸収物質のコーティングは、例えば、特定光吸収物質とコーティング基材を含むコーティング剤を、成形された容器やシート状合成樹脂に塗布することによって行うことができる。ここで、コーティング基材としては、ラジカル重合系のアクリル型(例えば、ポリエステルポリアクリレート、ウレタンポリアクリレート、エポキシポリアクリレート、ポリエーテルポリアクリレート、側鎖アクリロイル型アクリル樹脂等)、チオールエン型(例えば、ポリチオールアクリル型オリゴマー、ポリチオールスピロアセタール型等)、不飽和ポリエステル又はカチオン重合系のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0085】
また、上記範囲の340nm〜380nmの吸光度を備える容器は、更に、容器内部を肉眼で観察可能な程度の内部視認性(透明性)を備えていることが望ましい。内部視認性を備える容器としては、具体的には、容器の420nm〜450nmの吸光度が1以下、好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.4以下、さらに特に好ましくは0.2以下であるものが例示される。420nm〜450nmの吸光度が上記範囲内であれば、水性組成物の性状や残存量を容器の外部から肉眼により容易に確認することが可能になる。なお、容器の420nm〜450nmの吸光度とは、420nm、430nm、440nm及び450nmにおける吸光度の平均値を意味する。また、該吸光度については、340nm〜380nmの吸光度に関する前記測定方法と同様の方法で測定される。
【0086】
なお、上記の内部視認性(420nm〜450nmの吸光特性)は、少なくとも容器の一部分に確保されていれば、容器内の水性組成物を視認できるので、この内部視認性については、必ずしも容器の全面において確保されている必要はない。例えば、水性組成物が点眼剤である場合には、日本薬局方における点眼剤の製剤総則の規定に従って異物検査を実施するために、容器の側面の面積の少なくと60%以上、好ましくは90%以上において、内部視認可能(透明)部分が占められていればよい。ここでいう容器の側面とは、容器の側面部分、即ち、容器の全表面から容器のふたに被覆される部位と底に相当する部位を除いた部分を意味する。また、例えば、流通段階であれば、使用される容器は、容器表面に成分や商品名を表示するためのラベルやシュリンクフィルムによって容器の内部視認性が損なわれていることを妨げるものではないが、該容器において、内部視認性を有する部分が、使用者にとって容器内部の水性組成物の量を確認できる程度に確保されていることが望ましい。
【0087】
上記容器は、上記の光吸収特性を備える限り、その構成材料については制限されず、ガラス製又はプラスチック製のいずれをも使用することができる。スクイズ性及び耐久性の観点からは、プラスチック容器が好ましい。
【0088】
プラスチック製容器の材質としては、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂[ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)等]、セルロースアセテート類等の合成樹脂が例示できる。
【0089】
これらの合成樹脂の内、好ましくは、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びこれらの共重合ポリエステルが挙げられる。ここで、共重合ポリエステルとは、エチレン−2,6−ナフタレート単位、アリレート単位、エチレンテレフタレート単位、プロピレン単位、及びエチレン単位のいずれか1種を主体として、他のポリエステル単位を含む共重合ポリエステルである。該共重合ポリエステル中の共重合酸成分の例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アジピン酸等が挙げられる。また、該共重合ポリエステル中の共重合グリコール成分の例としては例えば、1,3−プロパンジオール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等が挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート及びこれらの共重合ポリエステルは、前述するように、340nm〜380nmの波長の光を吸収する作用があるので、特に好適である。
【0090】
上記容器には、上記合成樹脂のいずれか1種単独から構成されたものであっても、また2種以上の混合体で構成されたものであってもよい。
【0091】
本発明の水性組成物を収容する容器の内、特に好適なものとして、下記(i)〜(iii)の容器が具体的に挙げられる:(i)ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリイミド又はこれらの共重合ポリエステルで構成された容器、(ii)ポリエチレンナフタレート及びポリアリレート及びポリイミド又はこれらの共重合ポリエステルのいずれか1種以上と、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びポリエチレンのいずれか1種または2種以上の混合体で構成された容器;好ましくはポリエチレンナフタレートとポリエチレンテレフタレートの混合体、或いはポリイミドとポリエチレンテレフタレートの共重合体と、ポリエチレンテレフタレートの混合体で構成された容器、(iii)ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びこれらの共重合ポリエステルから選択される1種又は2種以上の混合体で構成され、更に特定光吸収物質が添加された容器。
【0092】
本発明の水性組成物を収容する容器は、上記成分に加えて、更に他の紫外線遮断剤を含む容器であっても良い。紫外線遮断剤の容器への配合は、上記特定光吸収物質を容器に配合する方法と同様の方法で行うことができる。
【0093】
このような紫外線遮断剤としては、トリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、置換アクリロニトリル系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ニッケル錯体系化合物、ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ケイ皮酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;オキシベンゾン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;グアイアズレン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、パラヒドロキシアニソール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシル等が挙げられる。
【0094】
上記紫外線遮断剤の中で、好ましくは、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0095】
上記容器の好適な態様の一例として、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートの内の1種又は2種以上から構成され、酸化亜鉛が添加された容器が挙げられ、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートから構成され、酸化亜鉛が添加された容器が挙げられる。
【0096】
紫外線遮断剤の配合割合としては、該容器の総量に対して、例えば0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%が例示される。
【0097】
また、本発明の水性組成物を収容する容器は、上記成分の他、更に色素を含有していてもよい。色素の種類としては特に制限されないが、一例として、リボフラビン、カーボンブラック、ペリノン系色素(ペリノン系レッド等)が挙げられる。
【0098】
(II) 安定化方法
前述するように、プラノプロフェン又はその塩に、水性組成物中で、(A)ソルビン酸又はその塩、(B)エチレンジアミン四酢酸又はその塩、及び(C)非イオン界面活性剤を共存させることにより、プラノプロフェンに光安定性を付与し、水性組成物の澄明性を長期にわたり保持することが可能になる。故に、本発明は、別の観点から、プラノプロフェン又はその塩を含有する水性組成物に、(A)ソルビン酸又はその塩、(B)エチレンジアミン四酢酸又はその塩、及び(C)非イオン界面活性剤を配合することを特徴とする、プラノプロフェン又はその塩含有水性組成物の安定化方法を提供する。当該安定化方法において、上記水性組成物を340nm〜380nmの吸光度が1.0以上である容器に収容することにより、安定化効果を一層高めることもできる。
【0099】
当該安定化方法において、使用するプラノプロフェン又はその塩の種類、(A)〜(C)成分の種類、水性組成物中のプラノプロフェン又はその塩の濃度、(A)〜(C)成分の濃度や配合比率、その他の配合成分の種類や配合濃度、水性組成物の形態、水性組成物を収容する容器等については、前記「(I)水性組成物」の場合と同様である。
【発明の効果】
【0100】
本発明によれば、プラノプロフェン又はその塩を水性組成物中で、安定化させることができる。また、本発明によれば、水性組成物中で、プラノプロフェンの分解、特に光による分解が抑制されており、プラノプロフェンが安定に保持される。また、本発明の水性組成物では、熱による分解も抑制され、プラノプロフェンが安定に保持される。
【0101】
更に、本発明によれば、水性組成物中での沈殿物や不溶化物の生成が防止されている。そのため、本発明の水性組成物を長時間保存しても、該水性組成物の澄明性が保持され、外観形状を良好な状態に保つことができる。
【0102】
上記のような水性組成物の安定化効果は、該水性組成物を340nm〜380nmの吸光度が1以上である容器に収容することにより一層増強されるので、このような容器に上記水性組成物を収容することによって、卓越した安定性を備えるプラノプロフェン含有製剤を提供することが可能になる。
【0103】
また、本発明の水性組成物は、刺激が少なく、使用感や安全性の点においても優れている。
【0104】
本発明において、上記格別の効果は、(A)〜(C)成分と各成分の配合比率が一体不可分の関係になって奏されるものであり、これらの配合成分の一つでも欠けると上記格別の効果は、奏されなかったり、低減したりしてしまう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
以下に、実施例、試験例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0106】
試験例1 プラノプロフェン含有水性組成物の安定性評価試験−1
表1に記載の処方に従い、プラノプロフェン含有水性組成物を調製した(実施例1−3、及び比較例1−5)。これらのプラノプロフェン含有水性組成物を用いて、以下の試験を行い、その安定性について評価した。
【0107】
【表1】

【0108】
各々のプラノプロフェン含有水性組成物を透明ガラス製スクリュー管(容量10mL)に7mLずつ充填し、これらを試験サンプルとした(n=3)。この試験サンプルに対して、光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65ランプを光源として、室温25℃の下、0.5万lxの光を6時間連続照射し、試験溶液を積算照射量3万lx・hrの光に曝光した。光照射前と後の試験サンプル中のプラノプロフェン濃度を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。測定した各試験サンプルのプラノプロフェン濃度から、下記式に従って、プラノプロフェンの分解率(%)を算出した。
【0109】
【数1】

【0110】
また、光照射後の各試験サンプルの性状(白濁の程度)を下記基準に従って、目視にて評価した。
<評価基準>
+++:重度に白濁している
++ :やや白濁している
+ :僅かに白濁している
− :白濁がなく、澄明である
得られた結果を表2に示す。この結果、比較例1−5の水性組成物では、プラノプロフェンが高い割合で分解してしまい、更に組成物が白濁し、澄明性が損なわれることが確認された。これに対して、プラノプロフェンと共に、ソルビン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、及びポリソルベート80を組み合わせて配合することによって、プラノプロフェンの光安定性が飛躍的に改善され、しかも水性組成物が長期間に亘り澄明な状態を維持して、外観形状を良好に保持できることが確認された(実施例1−3)。
【0111】
【表2】

【0112】
試験例2 プラノプロフェン含有水性組成物を収容する容器の検討
プラノプロフェン含有水性組成物を収容する容器について検討するために、表3に示す各種容器(A〜E)を用いて、以下の試験を行った。本試験に先立って、本試験に使用した容器の光吸収特性を評価するために、各容器を平面状(縦2〜4cm、横0.9〜1.1cmの大きさ)に切り取り、これを水を満たした紫外線吸光スペクトル測定用セルに浸し、水だけを満たしたセルを対照として、各測定波長について紫外可視吸光度測定法により吸光度を測定し(図1〜5参照)、予め340〜380nmの吸光度及び420〜450nmの吸光度を求めておいた。
【0113】
表3に示す各種容器(容量:容器A、D及びEは13mL、容器B及びCは30mL)に、実施例3のプラノプロフェン含有水性組成物の所定量(容器A、D及びEに対しては13mL、容器B及びCに対しては30mL)を収容して、容器を密閉した。斯くして得られた各種容器入りプラノプロフェン含有水性組成物に、光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65蛍光ランプを光源として、室温25℃の下、0.5万lxの光を24時間連続照射することにより、各水性組成物に積算照射量12万lx・hrの光を曝光した。その後、各水性組成物中のプラノプロフェン濃度を高速液体クロマトグラフィーで分析し、プラノプロフェンの残存濃度を定量した。測定したプラノプロフェンの残存濃度から、上記式に従ってプラノプロフェンの分解率(%)を算出した。また、光照射後の水性組成物について、その外観性状(白濁の程度)の変化についても目視にて確認した。
【0114】
得られた結果を表3に併せて示す。この結果から、光照射量が12万lx・hrの過酷条件下でも、340〜380nmの吸光度が1以上である容器に収容することによってプラノプロフェンが高い残存率で保持されることが確認された。また、光照射後において水性組成物の性状変化は認められず、澄明な状態を維持して、外観形状も良好に保持されていることが確認された。なお、本試験に使用した各種容器は、いずれも420〜450nmの吸光度が0.6以下であり、肉眼でも内部の水性組成物の性状を十分に視認可能なものであった。
【0115】
【表3】

【0116】
試験例3 プラノプロフェン含有水性組成物の安定性評価試験−2
表4に記載の処方に従い、プラノプロフェン含有水性組成物を調製した(実施例3、及び比較例6−13)。これらのプラノプロフェン含有水性組成物を用いて、光照射条件を0.5万lxの光を16時間連続照射(積算照射量8万lx・hr)に変更すること以外は、上記試験例1と同様の方法で試験を行い、その安定性について評価した。更に、光照射後の各水性組成物の白濁の程度を定量評価するために、その濁度(A420)を測定した。具体的には、紫外線吸光スペクトル測定用セル(光路長1cm)を用いて、照射後の各水性組成物の波長420nmにおける吸光度を測定した。
【0117】
【表4】

【0118】
得られた結果を表5に示す。この結果、比較例6−13の水性組成物では、プラノプロフェンが高い割合で分解してしまい、更に組成物が白濁し、澄明性が損なわれることが確認された。また、上記比較例の水性組成物の中には、組成物自体が黄変する場合もあった。これに対して、プラノプロフェンと共に、ソルビン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、及びポリソルベート80を組み合わせて配合することによって、プラノプロフェンの光安定性が飛躍的に改善され、しかも水性組成物が長期間に亘り澄明な状態を維持して、外観形状を良好に保持できることが確認された(実施例3)。
【0119】
【表5】

【0120】
試験例4 プラノプロフェン含有水性組成物の安定性評価試験−3
表6に記載の処方に従い、プラノプロフェン含有水性組成物を調製した(実施例A及びB)。これらのプラノプロフェン含有水性組成物を用いて、上記試験例1と同様の方法で、光照射(積算照射量3万lx・hr)を行い、プラノプロフェンの分解率(%)を測定した。更に、これらのプラノプロフェン含有水性組成物を用いて、下記の熱安定性試験を行い、70℃、14日間の加熱条件下でのプラノプロフェンの分解率(%)を測定した。
<熱安定性試験>
プラノプロフェン含有水性組成物を透明ガラススクリュー管(容量10mL)に8mLずつ充填し、これらを試験サンプルとした(n=3)。この試験サンプルに対して、恒温器を用いて70℃の下、14日間保存した。70℃保存前と後の試験サンプル中のプラノプロフェン濃度を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。測定した各試験サンプルのプラノプロフェン濃度から、上記数1の式に準じて、プラノプロフェンの分解率(%)を算出した。
【0121】
得られた結果を表6に合わせて示す。この結果、実施例A及びBのいずれにおいても、プラノプロフェン熱安定性試験後の分解率は10%以下と安定であった。特に、クエン酸塩を配合した実施例Bでは、分解率は約5%であり、より一層安定であった。
【0122】
【表6】

【0123】
実施例4−29
以下表7−10に記載の処方で、点眼剤(実施例4−26)、洗眼剤(実施例27)、コンタクトレンズ(CL)装着液(実施例28)及びコンタクトレンズ(CL)消毒液(実施例29)を調製した。
【0124】
【表7】

【0125】
【表8】

【0126】
【表9】

【0127】
【表10】

【0128】
実施例30−55
上記の点眼剤(実施例4−26)、洗眼剤(実施例27)、コンタクトレンズ(CL)装着液(実施例28)及びコンタクトレンズ(CL)消毒液(実施例29)を試験例2で使用した容器Cに充填し、容器入り点眼剤(実施例30−52)、容器入り洗眼剤(実施例53)、容器入りコンタクトレンズ(CL)装着液(実施例54)及び容器入りコンタクトレンズ(CL)消毒液(実施例55)を調製した。
実施例56−81
上記の点眼剤(実施例4−26)、洗眼剤(実施例27)、コンタクトレンズ(CL)装着液(実施例28)及びコンタクトレンズ(CL)消毒液(実施例29)を試験例2で使用した容器Eに充填し、容器入り点眼剤(実施例56−78)、容器入り洗眼剤(実施例79)、容器入りコンタクトレンズ(CL)装着液(実施例80)及び容器入りコンタクトレンズ(CL)消毒液(実施例81)を調製した。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】試験例2において使用した容器Aの各種波長における吸光度を示す図である。
【図2】試験例2において使用した容器Bの各種波長における吸光度を示す図である。
【図3】試験例2において使用した容器Cの各種波長における吸光度を示す図である。
【図4】試験例2において使用した容器Dの各種波長における吸光度を示す図である。
【図5】試験例2において使用した容器Eの各種波長における吸光度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラノプロフェン又はその塩を含有する水性組成物であって、該水性組成物中に、(A)ソルビン酸又はその塩を0.001〜2w/v%、(B)エチレンジアミン四酢酸又はその塩を0.0005〜0.5w/v%、及び(C)非イオン界面活性剤を0.001〜2w/v%の割合で含有することを特徴とする、水性組成物。
【請求項2】
プラノプロフェン又はその塩を0.0001〜2w/v%の割合で含有する、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100重量部当たり、(A)成分を0.5〜95重量部、(B)成分を0.1〜80重量部、及び(C)成分を3〜99重量部の割合で含有する、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項4】
更に、(D)クエン酸又はその塩を含有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項5】
更にホウ酸緩衝剤を含有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項6】
水性組成物が点眼剤又は洗眼剤である、請求項1乃至5のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項7】
340nm〜380nmの吸光度が1以上である容器に収容されてなる、請求項1乃至6のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項8】
容器が内部視認可能なものである、請求項7に記載の水性組成物。
【請求項9】
容器が、更に紫外線遮断剤を含有するものである、請求項7又は8に記載の水性組成物。
【請求項10】
プラノプロフェン又はその塩を含有する水性組成物の安定化方法であって、該水性組成物に(A)ソルビン酸又はその塩を0.001〜2w/v%、(B)エチレンジアミン四酢酸又はその塩を0.0005〜0.5w/v%、及び(C)非イオン界面活性剤を0.001〜2w/v%の割合で配合することを特徴とする、上記水性組成物の安定化方法。
【請求項11】
更に、前記水性組成物を、340nm〜380nmの吸光度が1以上である容器に収容する、請求項10に記載の安定化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−219409(P2006−219409A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33710(P2005−33710)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】