説明

プラント監視制御装置の画面表示方法

【課題】プラント全体を連続的に表示し、任意範囲の画面表示と拡大/縮小表示の機能を実現する画面表示方法を提供する。
【解決手段】プラント監視制御装置において、運転員により入出力装置2から入力された操作指示を受け付ける画面操作入力処理手段11と、操作指示に従って画面を表示する画面表示処理手段12と、画面を表示するための作画データベース15とを備え、作画データベース15に、表示装置の表示枠より大きい仮想領域画面に、プラント全体の設備系統図を一枚の画面データとして作成した画面データ22と、画面に描画した各表示項目について、拡大/縮小表示に伴う画面表示内容の変更方法を定義した表示レベルデータ23を設け、運転員から指示された画面表示範囲と表示レベルに従い、設備系統図を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの監視及び制御を行うプラント監視制御装置において、プラント機器の運転状態などの表示や制御のための操作を行う画面表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電プラント等の監視制御装置における運転画面は、表示装置(ディスプレイ等)の物理的な広さの制約から、系統単位、機器単位などに分け、プラント全体を複数に分割して個別画面を設けていた。またプラント全体を表示するサマリ画面などは、別画面として用意し、画面を切り替えることにより表示していた。そのため、発電プラントなど大規模プラントの監視制御装置の場合、画面枚数が多くなり、プラントの運転員が画面を表示してプラントの運転を行う際には、画面間の関連を意識しながら画面切り替えを行っていた。
【0003】
また、基本的に画面の表示内容は固定化されており、配管情報、弁・ポンプ等の機器情報や、圧力・流量・水位等のプラントの計測情報が、画面内情報として各画面に定義され、配置されている。これら画面内の情報は、プラントの運転に必要な情報を表示する一方、画面が煩雑になることを避けるために、詳細な配管や機器情報を省略して主要部分を表示するなどの工夫がされている。そのため、表示対象とする配管などの系統図や設備、機器の構成図の詳細度や、画面内の表示情報について個別に検討し、画面を構築していた。
【0004】
これらの機器情報や計測情報は、現場に設置されたセンサ等からの信号を電気的または電子的な情報として監視制御装置に入力され、運転画面に短時間周期で表示更新することでプラントの状態をリアルタイムに監視している。また、弁やポンプ等の機器は、画面内の表示部をタッチパネルによる画面への接触やマウス等で選択するなどの操作により、弁の「開」「閉」指示や、ポンプの「起動」「停止」指示を行うことで、画面操作による現場機器の制御を可能としている。ところが、このように画面から機器の制御を行った場合に、その制御による影響を確認するため、広範囲の設備、機器の状態を確認する場合、関連する画面を表示切り替えすることにより確認を行う必要があった。
【0005】
このように、従来の画面表示方法の場合、画面表示範囲の物理的制約から1画面内の情報量が制限されるため、プラント運転に必要な情報を網羅しようとすると、複数の画面を構成する必要があった。そのため、発電プラントのような大規模プラントの場合、画面枚数が多くなる傾向にあった。画面枚数が増大すると、配管など面的な広がりを持つ系統の画面では、画面間の取合い部が多数存在することになり、プラント全体の一連の系統の状態を把握しようとした場合に、画面を切り替えながら情報を把握する必要があった。
【0006】
また従来の固定画面を切り替え表示する画面表示方法には以下の特徴があった。
(A)画面内に一定の情報を集約するため、画面の設計時に画面内情報量の選定、配置の検討などに多大な設計時間を要する。
(B)画面が多数存在するため画面間の取合い部が多く、画面切り替え作業が頻繁になる。また取合い先画面との取合い部を認識させるために、視認性を向上させるための工夫(色替え、点滅など)を行う必要がある。
(C)機器の動作状況や計測情報を局所的に詳細確認したい、または広範囲の主要情報の全容を把握したいといった運転員の要求に対し、個別の固定画面では表示できない場合、複数の固定画面を切り替えながら表示し、確認する必要がある。また、同じ情報を複数の画面に重複して表示するなどといった対応が必要となる。
(4)広範囲の主要情報の確認のために、まとめ画面(サマリ画面)を個別画面として別に用意する場合が多く、大規模プラントにおいてはサマリ画面が多数存在し、更にサマリ画面に対しても上位のサマリ画面が存在するなど、階層的な画面体系になることがある。
【0007】
上記の様に、固定画面を切り替え表示する画面表示方法は、設計段階においては多大な画面設計工数が必要であった。また、画面枚数が多く、画面構成も複雑になることから、運用段階においては画面操作が煩雑になるという問題があった。
【0008】
これらの問題を解決するために、画面の拡大/縮小表示機能を設け、画面拡大/縮小時に表示するプラント機器などのシンボルの表示サイズを適正な大きさに調整したり、集約表示したりする機能や、画面に表示する機器情報や計測情報を自動的に選択して表示させるなどの機能を有する表示方法が提案されている。これにより、プラントの状況を局所的に詳細確認したり、広範囲の状況を把握したりするための画面操作が容易になる。
【0009】
特許文献1には、プラントの全体系統図を表示する際に、階層データを基に拡大/縮小率に応じた表示要素のサイズの変更や表示/消去を行うことにより、監視画面の視認性を保つ画面表示方法の例についての開示がある。
【特許文献1】特開平11−73292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来の画面の拡大/縮小表示機能は、基本的には特定範囲の設備、機器や系統に区切って表示した固定画面を基に拡大/縮小しているため、依然として固定画面を切り替え表示する画面操作は必要である。そのため、画面の切り替え操作の煩雑さや、画面設計時に多大な工数を要するなどの問題を十分解消するものではない。
【0011】
また、プラント全体の設備系統図を仮想画面上に描画し、全体系統図を1枚の画面として表示する方法も提案されているが、プラントの監視または制御操作を行う機能はないため、全体系統図からブロック分割したブロックウィンドウを表示し、監視、操作を行う必要があった。そのため、画面操作の煩雑さを十分に解消できない。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、プラント全体を連続的に表示し、任意範囲の画面表示と拡大/縮小表示の機能を実現することで、固定画面の切り替え操作を更に削減し、運転員のプラント運転時の操作性の向上を図るとともに、プラント監視機能を向上させる画面表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、プラント監視制御装置において、運転員により入出力装置から入力された操作指示を受け付ける画面操作入力処理手段と、画面操作入力処理手段からの要求により画面を表示する画面表示処理手段と、画面を表示するための作画データベースとを備え、作画データベースに、表示装置の表示枠より大きい仮想領域画面に、プラント全体の設備系統図を一枚の画面データとして作成した画面データと、画面データに描画した各表示項目について、拡大/縮小表示に伴う画面表示内容の変更方法を定義した表示レベルデータを設け、画面表示処理手段により、運転員から指示された画面表示範囲と表示レベルに従い、画面データと表示レベルデータを基に設備系統図を表示するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、プラント全体の設備系統図を連続的に表示するとともに、任意範囲の画面の拡大/縮小表示を可能とすることで、個別画面の切り替え操作削減による操作性の向上を図る。また、拡大/縮小に合わせた表示レベルデータを基に機器や配管などの表示有無、表示色やサイズなどを変更し表示することで、画面の視認性を向上させることができる。また、当該設備系統図画面において、表示対象機器の運転状態を監視し、制御操作を行うことを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1に、本例によるプラント監視制御装置の構成例を示す。図1を参照し、本例によるプラント監視制御装置の構成例について説明する。
【0017】
プラント監視制御装置は、プラント機器4の状態を監視し、機器の制御を行うための監視制御サーバ1と、プラント機器4の情報を表示し、運転員からの制御指示を受け付けるための入出力装置2と、中央運転制御室などに設置し、プラント全体の状態を監視するための大型表示装置3から構成する。
【0018】
次に、監視制御サーバ1の構成例について説明する。なお、ここでは、主に画面表示処理に関する処理手段について説明し、プラント機器の監視制御処理、監視結果の記録処理などの処理は、従来と同様に構成するため説明を省略する。本例による監視制御サーバ1は、運転員が入出力装置2を介して入力した操作を受け付ける画面操作入力処理手段11と、入出力装置2及び大型表示装置3へ画面を表示する画面表示処理手段12と、運転員からの操作指示に従ってプラント機器4への制御情報を出力する制御出力処理手段13と、プラント機器4への制御情報の出力及びプラント機器の情報を入力するための伝送処理手段14と、画面表示のためのデータを保管する作画データベース15と、画面表示情報を保管する画面保管データ16と、伝送処理手段14により収集した情報を保管するプラントデータ17から構成する。
【0019】
次に、本例の画面表示処理手段12による画面表示処理例について説明する。運転員が入出力装置2を操作し、画面表示要求を行うと、画面操作入力処理手段11により入力された画面表示要求の内容を解析し、画面表示処理手段12へ画面表示要求を行う。画面表示処理手段12は、要求内容を基に作画データベース15から画面情報を生成し、入出力装置2へ画面表示を行う。表示する画面がプラントの監視画面の場合は、プラントデータ17を参照し、表示対象の機器情報をプラントの監視画面に表示する。また、表示する画面が画面保管データ16に保管された画面パターンの場合は、画面保管データ16を参照し、画面表示する。
【0020】
次に、本例による作画データベース15の構成と、それを用いた画面表示方法について説明する。作画データベース15は、基本図形データ21、画面データ22、表示レベルデータ23から構成する。
【0021】
基本図形データ21は、弁やポンプなどのプラント機器を表すシンボルや表示要素をドット単位の図形として作成し、登録したものである。これを画面データ作成時の部品として用いる。
【0022】
画面データ22は、作画データ、動作表示情報、表示レベル設定情報から構成する。作画データは、基本グリッド上に弁やポンプなどのシンボルや配管の線を配置した画面の情報で、シンボルを配置した座標情報やシンボルの縦横のサイズ情報などを定義している。図2に、基本グリッド上にシンボルを配置した作画データ201の画面イメージの例を示す。本例では、従来のように表示装置の物理的制約に応じた作画ではなく、プラント全体を1枚の画面として作画するため、画面左上部に基準点202(x,y)=(0,0)を設け、X方向、Y方向ともに制限を設けず、仮想領域にシンボルや線を配置し、作画する。動作表示情報は、シンボルや配管などに対応するプラント機器4からの入力信号による表示方法(色替え、フリッカ等)の情報や、プラント機器4への制御情報(開/閉指令、起動/停止指令、数値制御指令等の有無やその種別)を登録する。表示レベル設定情報は、後述する表示レベルデータを基に、各表示属性に関する設定パターンを定義したものである。
【0023】
なお、グリッドとは、シンボルや配管ラインなどを配置する際のベースとして、縦横に等間隔で区切ったマス目のことである。グリッドの最小単位は画面の最小解像度であるドットであるが、画面の配置や作画の詳細具合に応じて、例えば2、4、8、16、32ドット単位のグリッドを設定する。本例では、作画における最小のグリッドを1グリッド=2ドット単位とし、これを基本グリッドと呼び、プラント全体を表す設備系統図画面の作画において、基本グリッドをベースに作画する。
【0024】
次に、表示レベルデータ23について説明する。表示レベルデータ23は、画面内の表示項目について、拡大/縮小表示に伴う画面表示内容の変更方法を定義したものである。本例では、設備系統図画面の拡大/縮小表示時に、シンボルや配管ラインなどを表示倍率に比例して単純に拡大/縮小するのではなく、表示倍率を複数のレベルに分け、各レベルに対応した表示方法を定義することで、シンボルなどが必要以上に拡大/縮小されることを防ぎ、レベルに応じて省略したり、詳細表示化したり、また表示色を変更したりすることで、画面の視認性を向上させる。
【0025】
本例では、レベルを5段階に分けた場合を例に説明する。各レベルの目安は次の通りとする。なお、表示レベルはこれに限らず、監視対象とするプラントの特性に応じて設定することでよい。
・レベル5:最も詳細な表示レベル。原子力発電所の例としては、設計図面である配管計装線図の記載レベルとし、基本的に弁やポンプ等の機器は全て表示する。流量、圧力などの計測情報は基本的に全計測点を表示対象とする。
・レベル4:レベル5とレベル3の間の詳細度による表示レベル。レベル5の表示より、逆止弁などの不動作機器の表示を省略し、動作対象の機器のみを表示するレベル。計測情報は基本的に全計測点を表示対象とする。
・レベル3:一般的な運転画面として使用する表示レベル。プラント運転において、制御対象となる主要弁、ポンプなどに絞り込んだ機器を表示する。計測情報についても主要監視情報に絞り込んだ項目を表示する。
・レベル2:系統全体を広範囲に監視することを目的とする表示レベル。機器、計測情報などの表示項目をレベル3より更に絞り込み、主要部分のみを表示対象とする。
・レベル1:プラント全体の主要機器や計測情報を表示する表示レベル。原子力発電所の例としては主蒸気流量や給水流量、給水温度、原子炉圧力など、プラントの中央制御室などに設けた大型表示盤に表示する情報レベルとする。
【0026】
本例では、表示レベル毎にシンボルや配管ラインなどを表示する時の色や線種、画面上に表示する文字情報に関する文字サイズやフォントなどを変更するが、表示する対象によって、表示レベルに対する表示方法が異なる。そのため、色、線種などの表示属性について、表示レベルに対する設定の異なる複数パターンの設定情報を定義し、これを表示レベルデータと呼ぶ。シンボルなどの各表示項目については、色、線種などの属性毎にどのパターンを採用するかを設定し、これを画面データ22の表示レベル設定情報として定義する。
【0027】
図3に表示レベルデータ23の例を示す。図3は、表示属性のうち、色について表示レベル毎の設定パターンを定義した表示レベルデータ例301である。弁やポンプなどの機器シンボルは、基本的に表示レベル毎に色を変えることはないが、配管は、レベル5などの詳細レベルで表示する場合、主要配管と計装配管(主要でない個別配管)の表示が混在して煩雑になることから、色を変更できるように設定する。例えば、ある配管を設定パターン1で設定した場合、表示レベル1〜3ではシアン色で表示し、表示レベル4〜5では青色で表示する。これは、表示レベル3までは一般的な運転画面に相当し、主要配管だけが表示されるため、特に色替えを必要としないが、表示レベル4、5では詳細レベルの配管も混在して表示されるため、主要部を強調するために青色に変更して画面表示する。また、設定パターン5に設定した場合は、表示レベル1〜4は非表示とし、表示レベル5はシアン色で表示する。これは、当該配管が計装配管などで、通常の運転時には監視対象としないような配管で、最も詳細な表示レベル5のみ表示するような場合である。
【0028】
このように、画面に表示するシンボルなどの全ての要素には、色やサイズなどの表示属性について、図3に示したような表示レベルと設定パターンの組み合わせにより表示レベル設定情報を定義する。表示属性としては、線種(線の太さや実線/点線/破線などの線の種類)、シンボルサイズ、文字サイズ、文字フォントなどを定義する。また、計測情報についても、“色”と同様に表示レベル毎の表示方法を定義する。計測情報は、一般的に、流量や圧力などのプロセス値をディジタル値として数値表現するが、一部の主要情報についてはバーチャート表現する場合がある。そのため、計測情報については、表示レベル毎の表示方法(数値表示/バーチャート表示)を設定するとともに、付属情報として、数値表示の場合は表示する数値の文字サイズ、文字フォント、色等、バーチャートの場合は縦型/横型、サイズ等の種類を設定パターンとして定義する。
【0029】
次に、上記説明した作画データベース15を基に、画面表示処理手段12による画面表示方法について説明する。なお、ここでは、拡大/縮小表示が可能な設備系統図の表示について説明するが、その他の画面表示は従来の表示方法により表示するものとし、説明を省略する。本例による設備系統図の画面表示時は、運転員が表示レベルと画面表示範囲を指定し、表示要求を行う。本例では、設備系統図の拡大/縮小表示は、表示時に画面内のシンボルを単純に比例拡大/縮小するのではなく、上記で説明した5段階の表示レベルのうち表示したいレベルを選択して表示する、レベル別画面表示と呼ぶ表示を行う。そのため、運転員は、画面表示時に、表示したい表示レベルを指定する。
【0030】
また、本例では、画面の表示レベルの変更方法として2つの方法を可能する。第1の方法は、現在の画面表示範囲を対象に表示レベルを変更する方法で、運転員がマウスやキーボード、操作釦などの入力装置を用いて表示したい表示レベルを選択指示し、その指示に従って、画面中央を中心点として表示レベルの変更を行う。第2の方法は、特定部分を詳細に表示するなどのために、表示したい画面範囲を指定して表示レベルを変更する方法である。この場合は、運転員が表示中の画面において任意の範囲を表示範囲(始点/終点)としてマウスなどにより指定し、指定した表示範囲の中央を中心点として表示レベルの変更を行う。
【0031】
運転員により指定された表示レベルと画面表示範囲は入出力装置2を介して入力し、画面操作入力処理手段11により指定内容を解析して画面表示処理手段12へ受け渡し、画面表示要求を行う。画面表示処理手段12では、まず、画面のシンボルや配管ラインなどの画面データに設定された表示レベル設定情報を基に、シンボルなどの表示/非表示を決定する。表示レベル設定において、非表示と設定されたレベルでは画面表示せず、表示設定されたレベルの画面にのみ表示する。
【0032】
各レベルの表示は、レベル3=通常の運転画面、レベル2=系統全体、レベル1=プラント全体のように、基本となる監視範囲を予め想定し、その監視範囲の情報を適切に表示できる大きさのシンボルになるように、表示レベル設定情報にシンボルサイズを設定しておく。一方、表示レベルにおける1グリッドのドット数は、図4に示す表示レベル別グリッドサイズの例401のように、表示レベル毎に設定しておく。通常は、各表示レベルにおいて、図5の(A)に示す作画例501のように、基本グリッドの上に作画された機器シンボルや配管ラインを、グリッドの拡大/縮小に応じて拡大/縮小することにより画面表示する。例えば、図5の(B)に示す作画例502のように、基本グリッド=2ドットの設定を1グリッド=16ドットに拡大することで、画面上の機器シンボルや配管ラインを比例拡大して表示する。ただし、機器シンボルや配管ラインは、基本グリッドの拡大に比例して縦横比を単純に比例拡大するのではなく、表示レベル設定情報に定義された設定情報を反映して表示する。画面表示時は、表示色、線の種類などを設定情報に基づいて変更し、表示するとともに、表示サイズについても、表示レベル設定情報にサイズ指定されている場合は、図5の(C)に示す作画例503のように1グリッドのドット数を大きくした場合でも、シンボルのサイズは指定サイズで表示する。このように表示することで、表示範囲を拡大することができる。
【0033】
これにより、単純な比例拡大では画面内のシンボルが不用に大きな表示となり、監視範囲を拡大するための表示としては適切でなかったが、本例のように、表示レベル毎に基本グリッドを設定しておき、基本グリッドを基に拡大/縮小表示することで監視範囲を拡大/縮小するとともに、レベルに応じた大きさのシンボル表示や、選択表示することにより、より見やすい画面表示を行うことができる。
【0034】
また、本例における画面表示については、従来実施している運転画面の比例拡大/縮小表示機能や、画面を上下左右の任意方向へ移動させる機能などは、従来と同様に実現する。
【0035】
また、本例では、運転員の要求により、上記のように表示した画面の表示状態を保存し、画面保管データ16として保存する機能を設ける。画面保管データ16には、マルチウィンドウのウィンドウ位置、画面表示範囲、表示レベルなどの情報を保存登録し、運転員の表示要求に応じて保存した画面情報を基に画面を再表示することで、運転員がプラント運転状況に応じた画面構成を任意に構成し、表示することを可能とする。これにより、運転員が自分の好みの運転画面を個別に構築し、容易な操作で表示することができるため、プラント運転時の操作性を向上させることができる。
【0036】
また、本例では、上記の設備系統図画面を運転員がプラント運転時に個別に表示、操作する操作卓の表示装置に表示するだけでなく、中央運転制御室などに設けた大型表示装置3にも表示するよう構成する。発電プラントなどでは、中央運転制御室における運転員の情報共有化の観点から、操作卓に設置した表示装置の他に、中央運転制御室の一面に大型ディスプレイを用いた表示パネルなどを設置することが一般的になってきている。従来は、運転員全員が参照できるような大型表示盤を設け、プラント全体の系統図を固定表示し、主要な弁やポンプなどの可動部の状態や計測値などの情報をランプや表示パネルなどのハード機器を用いて表示していた。最近では、大型表示盤の代わりに大型ディスプレイを用いた表示パネルを設置するようになってきたが、これらの大型ディスプレイは高解像度化が進んでおり、さらにマルチディスプレイ化することで、従来の表示装置では実現できなかった表示が可能となっている。
【0037】
本例では、大型ディスプレイを用いた表示パネルにも、操作卓の表示装置と同様の画面表示を可能とする。これにより、通常運転中は大型ディスプレイ全体に表示レベル1の画面(プラント全体の設備系統図)を表示することで、運転員全員がプラントの全体状況を共有することが可能となり、機器の操作実施時や、異常発生時など、一部の機器を重点的に監視する必要がある場合などにおいては、監視対象範囲を大型ディスプレイにマルチウィンドウで拡大表示(詳細レベル化)することで、運転操作に伴う監視対象の情報を全体共有することが可能となる。
【0038】
図6に画面及び大型表示装置3の表示パネルの表示例を示す。図6の(A)は、操作卓の表示装置に表示した設備系統図画面の表示例である。画面601は、設備系統図画面の表示レベル3の表示例である。ここで、図中の太線で示した部分を範囲指定し、例えば表示レベル4に表示レベル変更した場合、画面602に示すウィンドウを表示し、表示レベル4へ詳細化した設備系統図を表示する。この場合、表示レベル3の画面601では、弁、ポンプが1台ずつ表示され、流量などの計測値の情報を数値情報607として表示していたが、表示レベル4の画面602では、弁、ポンプが実際の機器に対応して3台ずつ表示され、計測情報もバーチャート情報608として表示している。また、画面601には、レベル別画面表示の操作の他に、機器操作用の画面操作エリアを設け、設備系統図画面から操作対象の機器を選択し、制御指令を行うことを可能とする。
【0039】
図6の(B)は、表示パネルに表示したプラント全体の設備系統図の表示例である。画面603は、マルチディスプレイで構成した表示パネルに表示レベル1の設備系統図を表示した例である。表示パネルの右側には、画面604、605、606で示したウィンドウに表示レベル3に詳細化した系統図を表示した場合の例を示す。このように、表示パネルには、操作卓の表示装置からの指示により、操作卓の表示装置と同様の画面表示を行うことを可能とするが、表示パネルには表示のみを行う。
【0040】
本例では、操作卓の表示装置に表示している画面と同じ画面を表示パネルへ表示することにより、従来、運転員が汎用モニタを用いて個別画面を切り替えながら確認していた内容を運転員全員が共有可能となり、プラント運転における運転品質の向上が望める。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態による構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態による作画データ例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態による表示レベルデータ例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態による表示レベル別グリッドサイズの例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるシンボルの拡大表示例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態による表示装置への表示例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1…監視制御サーバ、2…入出力装置、3…大型表示装置、4…プラント機器、11…画面操作入力処理手段、12…画面表示処理手段、13…制御出力処理手段、14…伝送処理手段、15…作画データベース、16…画面保管データ、17…プラントデータ、21…基本図形データ、22…画面データ、23…表示レベルデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント監視制御装置において、
運転員により入出力装置から入力された操作指示を受け付ける画面操作入力処理手段と、
前記画面操作入力処理手段からの要求により画面を表示する画面表示処理手段と、
画面を表示するための作画データベースとを備え、
前記作画データベースに、表示装置の表示枠より大きい仮想領域画面に、プラント全体の設備系統図を一枚の画面データとして作成した画面データと、
前記画面データに描画した各表示項目について、拡大/縮小表示に伴う画面表示内容の変更方法を定義した表示レベルデータを設け、
前記画面表示処理手段により、運転員から指示された画面表示範囲と表示レベルに従い、前記画面データと前記表示レベルデータを基に表示を行うことを特徴するプラント監視制御装置の画面表示方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラント監視制御装置の画面表示方法において、
前記プラント監視制御装置に大型表示装置を設け、
前記画面表示処理手段により、前記大型表示装置に画面表示することを特徴とするプラント監視制御装置の画面表示方法。
【請求項3】
請求項1記載のプラント監視制御装置において、運転員から入力された制御操作指示を前記画面操作入力処理手段が受け付け、それを基に出力された制御要求によりプラント機器に対する制御出力処理を行う制御出力処理手段と、
前記制御出力処理手段から出力された制御情報をプラント機器に送信するとともに、プラント機器の運転情報を受信する伝送処理手段とを設け、
前記画面表示処理手段によりプラント機器の運転状態を表示したプラント全体の設備系統図画面を用いて、プラント機器に対する制御を行うことを特徴とするプラント監視制御装置の画面表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−310688(P2008−310688A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159333(P2007−159333)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】