説明

プリエンファシス自動調整方法及びデータ伝送システム

【課題】回路の簡略化と共に、自動調整時間の短縮化等を図る。
【解決手段】シシングルパルスパターンの信号がシングルパルスパターン発生部11から出力される。セレクタ13を通った信号は、送信回路14で互いに位相が反転した2つの信号にされて受信回路20へ伝送される。Teye判定部21は、上記2つの信号とサンプリングクロック制御部22からサンプリングクロックとによってアイ波形の時間方向のアイ開口を計測する。調整制御部23は、計測されたアイ開口と目標値との大小を判定し、判定結果を送信回路14へ送信する。送信回路14は、判定結果に基づいてプリエンファシスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリエンファシス自動調整方法及び信号伝送送システムに関し、詳しくは高速伝送のためのプリエンファシスに有効なプリエンファシス自動調整方法及び信号伝送送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号伝送システムにおいて、その送信回路で送信しようとする信号に対する高速伝送の必要性から送信信号に対してプリエンファシスを与えて受信回路へ伝送している。
送信回路において信号に与えられるプリエンファシスを最適に設定するために、プリエンファシス強度自動調整も行われている。その従来のプリエンファシス強度自動調整は、次のようにして行われる。
【0003】
従来のプリエンファシス強度自動調整機能を備えた信号伝送システム(以下、従来技術という)は、図5に示すように、送信回路側30にランダムパターン発生部31と、自動調整制御部32と、セレクタ33と、送信回路34とが設けられる一方、受信回路40にVeye判定部41と、サンプリングクロック制御部42と、参照電位発生部43と、調整制御部44とが設けられて構成されている。このシステムにおいて、プリエンファシス強度は、自動的に調整して最適設定値に設定される。その調整が開始されると、ランダムパターンの信号がランダムパターン発生部31からセレクタ33に供給される一方、自動調整制御部32から調整開始の自動調整制御信号がセレクタ33に供給されると、ランダムパターンの信号が差動増幅構成の送信回路34に供給され、送信回路34から正相及び逆相の信号が各別の伝送路を経て受信回路40へ伝送される。
【0004】
Veye判定部41で受信される正相及び逆相の信号は、参照電位発生部43から供給される参照電位と比較される。この比較は、参照電位発生部43による参照電位の低い値から高い値への逐次的な変更とサンプリングクロック発生部42によるサンプリングクロックのアイ開口中央への制御が行われつつ、逐次的に行われる。
この比較により、正相の信号と逆相の信号との間に生ずる信号振方向(電圧方向)のアイ開口(Veye)が判定されて認識される。
【0005】
上記比較は、受信信号の信号レベルの低い方から高い方へ行われるが、それに伴って、調整制御部44から送信回路34へ供給されるプリエンファシス強度調整用信号によって、送信回路34で送信信号に与えられるプリエンファシス強度は、順次上げられる。その調整初期の波形図を図7の(1)に示す。Veyeが最大となったこと(調整最適)(図7の(2))をVeye判定部44が判定したとき、調整制御部44は、調整完了信号を自動調整制御部32に送り、自動調整を終了する。
【0006】
また、特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、アイパターンに関係する技術が開示されている。これらいずれも、アイパターンの振幅方向、すなわち、電圧方向のアイ開口に係る技術である。
また、特許文献4には、光伝送路を経て伝送されるすべての光波長多重信号の性能の均一化に役立つプリエンファシス技術が開示されている。
【特許文献1】特開平07−264248号公報
【特許文献2】特開2005−094172号公報
【特許文献3】特開2001−144819号公報
【特許文献4】特開平08−321824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来技術は、送信回路側30にランダムパターン発生部31を必須要素として装備しなければならない構成となっている。したがって、回路規模が増大し、半導体基板上に必要となる回路面積の増大が避けられないという技術的課題がある。
また、受信アイ開口(Veye)の把握に、参照電位を細かく変化させて比較判定する手順が必要不可欠であり、プリエンファシスの調整に要する時間が長時間掛かるという技術的課題もある。
【0008】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示される技術は、上述のように、いずれもアイパターンの振幅方向、すなわち、電圧方向のアイ開口を問題にしているものであるので、上述の従来技術と同様の技術的課題がある。
また、特許文献4は、プリエンファシスの最適設定に光信号対雑音比を用いているので、上述の従来技術と同様の技術的課題がある。
【0009】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、高速伝送のためのプリエンファシスの最適設定にアイパターンの時間軸方向のアイ開口を用いるプリエンファシス自動調整方法及び信号伝送送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、信号伝送用の送信回路において、受信回路での受信アイ開口が最大となるように、プリエンファシス強度を最適調整するためのプリエンファシス自動調整方法に係り、上記受信回路側で、上記送信回路から送信されるシングルパルスパターンを受信し、受信した上記シングルパルスパターンから上記受信アイ開口の時間軸大きさを把握し、把握した上記時間軸大きさに基づいて、上記プリエンファシス強度の調整を上記送信回路に指示するための調整信号を生成し、生成した上記調整信号を上記送信回路に転送し、上記送信回路側で、上記受信回路から転送されてきた上記調整信号に基づいて、上記プリエンファシス強度を最適調整することを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明は、信号伝送用の送信回路において、受信回路での受信アイ開口が最大となるように、プリエンファシス強度を最適調整するためのプリエンファシス自動調整方法に係り、上記受信回路側で、上記送信回路から送信されるシングルパルスパターンを受信し、受信した上記シングルパルスパターンから上記受信アイ開口の時間軸大きさを把握し、把握した上記時間軸大きさと予め設定された最適値との比較結果に基づいて、上記プリエンファシス強度の調整を上記送信回路に指示するための調整信号を生成し、生成した上記調整信号を上記送信回路に転送し、上記送信回路側で、上記受信回路から転送されてきた上記調整信号に基づいて、上記プリエンファシス強度を最適調整することを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のプリエンファシス自動調整方法に係り、上記シングルパルスパターンが、互いに位相が反転した2つのシングルパルスパターンからなることを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載のプリエンファシス自動調整方法に係り、上記受信アイ開口の時間軸大きさは、上記シングルパルスパターンの信号レベルが所定の信号レベルを超えている間又は未満にある間の時間であることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、信号伝送用の送信回路において、受信回路での受信アイ開口が最大となるように、プリエンファシス強度を最適調整する手段を有する信号伝送システムに係り、上記受信回路に、上記送信回路から送信されるシングルパルスパターンを受信する受信手段と、該受信手段で受信した上記シングルパルスパターンから上記受信アイ開口の時間軸大きさを把握するアイ開口計測手段と、該アイ開口計測手段で把握した上記時間軸大きさに基づいて、上記プリエンファシス強度の調整を上記送信回路に指示するための調整信号を生成する生成手段と、該生成手段で生成した上記調整信号を上記送信回路に転送する転送手段と、上記送信回路に、上記転送手段から転送されてきた上記調整信号に基づいて、上記プリエンファシス強度を最適調整する調整手段を備えることを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、信号伝送用の送信回路において、受信回路での受信アイ開口が最大となるように、プリエンファシス強度を最適調整する手段を有する信号伝送システムに係り、上記受信回路に、上記送信回路から送信されるシングルパルスパターンを受信する受信手段と、該受信手段で受信した上記シングルパルスパターンから上記受信アイ開口の時間軸大きさを把握するアイ開口計測手段と、該アイ開口計測手段で把握した上記時間軸大きさと予め設定された最適値との比較結果に基づいて、上記プリエンファシス強度の調整を上記送信回路に指示するための調整信号を生成する生成手段と、該生成手段で生成した上記調整信号を上記送信回路に転送する転送手段と、上記送信回路に、上記転送手段から転送されてきた上記調整信号に基づいて、上記プリエンファシス強度を最適調整する調整手段を備えることを特徴としている。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の信号伝送システムに係り、上記シングルパルスパターンが、互いに位相が反転した2つのシングルパルスパターンからなることを特徴としている。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項5、6又は7記載の信号伝送システムに係り、上記受信アイ開口の時間軸大きさは、上記シングルパルスパターンの信号レベルが所定の信号レベルを超えている間又は未満にある間の時間であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、シングルパルスパターンを受信回路へ送信し、受信回路で受信したシングルパルスパターンの受信アイ開口の時間軸方向の大きさを計測し、計測された受信アイ開口の時間軸方向の大きさに基づいて送信回路のプリエンファシス強度を調整しているから、プリエンファシス調整回路の簡略化が達成される。また、従来のVeyeを用いるプリエンファシスの自動調整においては、Veyeを把握するのに参照電位を細かく変化させ、比較判定する手順が必要であったが、変量を計測し得れば良く、従来のような時間が掛かる処理を必要としないから、自動調整に要する時間の短縮化も達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明は、送信回路において、受信回路での受信アイ開口を最大にするプリエンファシス強度の調整に受信回路で計測される受信アイ開口の時間軸方向の大きさを用いるようにして構成される。
【実施例1】
【0020】
図1は、この発明の実施例1である信号伝送システムの電気的構成を示す図、図2は、同信号伝送システムの受信装置を構成するTeye判定部での動作を説明するための波形図、また、図3は、同信号伝送システムの受信装置を構成する調整制御部での動作を説明するための波形図である。
この実施例の信号伝送システム1は、シングルパルスパターンの受信信号の時間方向のアイ開口を送信信号のプリエンファシスの設定制御に使用するシステムに係り、図1に示すように、送信回路側10に設けられるシングルパルスパターン発生部11と、自動調整制御部12と、セレクタ13と、送信回路14と、受信回路20に設けられるTeye判定部21と、サンプリングクロック制御部22と、調整制御部24とから構成されている。
【0021】
シングルパルスパターン発生部11は、シングルパルスパターンの信号を出力する発生部である。自動調整制御部12は、プリエンファシスの自動調整の開始/完了を制御する手段である。セレクタ13は、送信回路側10から送信される通常のデータ信号とシングルパルスパターン発生部11から発生されるシングルパルスパターンの信号とを択一的に送信回路14へ出力する選択手段である。送信回路14は、セレクタ13でシングルパルスパターンの信号が選択され、後述する調整制御部23からの指示に基づいてプリエンファシス強度を調整して受信回路20へ伝送するほか、セレクタ13で選択された通常のデータ信号を受信回路20へ伝送する回路であり、差動増幅構成でシングルパルスパターンの信号を互いに位相が反転した第1の信号(True)と第2の信号(Compliment)として出力するものである。送信回路14は、以下に説明するTeye判定部21と2本の伝送路15を介して接続されている。
【0022】
Teye判定部21は、受信されるシングルパルスパターンの第1の信号と第2の信号とからなるアイ波形とサンプリングタイミングが遅延制御されたサンプリングクロックとを用いて受信信号に与えられたプリエンファシス強度における受信信号の時間方向のアイ開口(Teye)の大きさを把握する(以下、計測するという)手段である。
サンプリングクロック制御部22は、等間隔でサンプリングタイミングを可変する遅延制御回路23を内臓し、可変されるサンプリングタイミングのサンプリングクロックを出力するクロック発生手段である。
調整制御部23は、Teye判定部21で計測したTeyeと目標値(例えば、1UI(UIはユニットインターバル))との大小比較を行い、送信回路14にプリエンファシス強度調整を指示する調整制御手段である。
【0023】
次に、図1乃至図3を参照して、この実施例の動作について説明する。
この実施例におけるプリエンファシスの自動調整が開始されると、自動調整制御部12が、低レベル(0)の自動調整制御信号をセレクタ13に供給する。これにより、送信回路側10から受信回路20へ伝送されるデータは、セレクタ13において、データ送出部(図示せず)の通常のデータからシングルパルスパターン発生部11の調整時に使用するシングルパルスパターンの信号へ切り替えられて自動調整が開始される。
【0024】
送信装置20から伝送されたシングルパルスパターンの信号は、受信回路20のTeye判定部21に入力される一方、そのTeye判定部21には、等間隔で可変されるサンプリングタイミングのサンプリングクロックが、サンプリングクロック制御部22から入力される。
Teye判定部21は、受信されるシングルパルスパターンの第1の信号と第2の信号とからなるアイ波形と時系列上で等間隔、かつ、順次のサンプリングクロックとの関係から第1の信号及び第2の信号に与えられたプリエンファシス強度における第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形の時間方向のアイ開口(Teye)の大きさを計測する。
上記第1の信号及び第2の信号に与えられたプリエンファシス強度における第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形の時間方向のアイ開口(Teye)は、正相の第1の信号の受信レベルが「1」と判定された区間の遅延変更回数をN回とし、遅延時間をΔT[ps]とすると、当該プリエンファシス強度におけるTeye[ps]は、次式
Teye[ps]=N[回]×ΔT[ps]
となり、この式の値にり、時間方向のアイ開口を計測する(図2)。
【0025】
調整制御部23は、Teye判定部21で計測したTeyeと目標値(例えば、1UI(UIはユニットインターバル))との大小比較を行い、プリエンファシス強度調整用信号を送信回路14へ伝送してプリエンファシス強度の調整を指示する。ここで、第1の信号及び第2の信号のビットレートが10bpsなら、1UIは100psである。
認識されたTeyeが1UIより小さい場合はプリエンファシス強度が不足していると判断し(図3の(1))、強度を上げるプリエンファシス強度調整用信号を送信回路14へ送信してプリエンファシス強度を上げさせる指示を行う。
【0026】
逆に、Teyeが1UIより大きい場合はプリエンファシス強度が過大であると判断し(図3の(3))、強度を下げるプリエンファシス強度調整用信号を送信回路14へ送信してプリエンファシス強度を下げさせる指示を行う。
また、Teyeと1UIとが一致した場合には、最適設定と判断し(図3の(2))、調整制御部23は、調整完了信号を自動調整制御部12に対して送信する。
調整完了信号を受信した自動調整制御部12は、自動調整制御信号を高レベル(1)に変える。これにより、セレクタ13の選択は、通常データ伝送に切り替えられて自動調整は終了する。
【0027】
このように、この実施例の構成によれば、プリエンファシスの自動調整にシングルパルスパターンの第1の信号と第2の信号とを使用しているから、その発生回路の簡略化が達成される。また、従来のVeyeを用いるプリエンファシスの自動調整においては、Veyeを把握するのに参照電位を細かく変化させ、比較判定する手順が必要であったが、第1の信号の受信レベルが「1」を超えている時間を計測し得れば良く、従来のような時間が掛かる処理を必要としないから、自動調整に要する時間の短縮化も達成することができる。
【実施例2】
【0028】
図4は、この発明の実施例2である信号伝送システムの電気的構成を示す図である。
この実施例の構成が、実施例1のそれと大きく異なる点は、サンプリングクロックの間隔に粗密を与えるようにした点である。
すなわち、この実施例の信号伝送システム1Aは、図4に示すように、遅延制御回路23Aを内臓するサンプリングクロック制御部22Aから出力されるサンプリングクロックの時間間隔を次のように構成したことにその特徴部分がある。
遅延制御回路23Aでの遅延間隔は、シングルパルスパターンの第1の信号と第2の信号とからなるアイ波形が始まるクロスポイントより前所定の時刻から該クロスポイント後の所定の時刻までの間は短い時間間隔とし、上記該クロスポイント後の所定の時刻から上記アイ波形が終るクロスポイントより前所定の時刻までの間は上記短い時間間隔よりも長い時間間隔とし、そして上記アイ波形が終るクロスポイントより前所定の時刻から当該クロスポイント後の所定の時刻までの間は短い時間間隔とする。
Teye判定部21Aは、受信されるシングルパルスパターンの第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形と時系列上で時間間隔を異にした順次のサンプリングクロックとの関係から上記第1の信号及び第2の信号に与えられたプリエンファシス強度における第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形の時間方向のアイ開口(Teye)の大きさを計測する。
この構成以外のこの実施例の構成は、実施例1と同じであるので、同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その逐一の説明は省略する。
【0029】
次に、図4を参照して、この実施例の動作について説明する。
この実施例の動作は、次の点を除いて、実施例1で説明したところと同じである。
すなわち、送信回路側10から伝送されたシングルパルスパターンの第1の信号及び第2の信号は、受信回路20のTeye判定部21Aに入力される一方、そのTeye判定部21Aには、時間間隔が上述した間隔で可変とされるサンプリングクロックが、サンプリングクロック制御部22Aから入力される。
Teye判定部21Aは、受信されるシングルパルスパターンの第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形と時系列上で時間間隔を異にした順次のサンプリングクロックとの関係から上記第1の信号及び第2の信号に与えられたプリエンファシス強度における第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形の時間方向のアイ開口(Teye)の大きさを計測する。
【0030】
上記第1の信号及び第2の信号に与えられたプリエンファシス強度における第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形の時間方向のアイ(Teye)は、正相の第1の信号の受信レベルが「1」と判定された区間の時間、すなわち、シングルパルスパターンの第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形が始まるクロスポイントの時刻後の短い時間間隔のサンプリングクロック数×短い時間間隔と、上記クロスポイント後の所定の上記短い時間間隔よりも長い時間間隔のサンプリングクロック数×長い時間間隔と、そして上記アイ波形が終るクロスポイントより前であって正相の第1の信号の受信レベルが「1」にある時刻までの短い時間間隔のサンプリングクロック数×時間間隔との和として得られる。
このようにして得られる第1の信号及び第2の信号からなるアイ波形の時間方向のアイ開口(Teye)は、目標値と実施例1と同様の比較を行い、その結果に従ってプリエンファシス強度の調整を行い、最適設定となるとき、自動調整は終了する。
【0031】
このように、この実施例の構成によれば、実施例1と同様、時間方向のアイ開口を測定することができる。そして、回路の簡略化と共にこの簡略化による調整時間の短縮化が得られる。
【実施例3】
【0032】
図5は、この発明の実施例3である信号伝送システムの電気的構成を示す図である。
この実施例の構成が、実施例1のそれと大きく異なる点は、送信装置からシングルパルスパターンの単一の信号を送信し、受信装置でシングルパルスパターンの単一信号と目標直流電位とを比較してシングルパルスパターンの単一信号の信号レベルが最適値にあるか否かを判定するようにした点である。
すなわち、この実施例の信号伝送システム1Bは、図5に示すように、シングルパルスパターンの信号をそのままシングルパルスパターンの単一信号として受信回路20Bへ送信する送信回路14Bを送信回路側10Bに設ける一方、シングルパルスパターンの単一信号と直流電位出力回路22Bからの目標直流電位とを比較して判定するTeye判定部21Bと、Teye判定部21Bの判定結果を受けて判定結果に応じて決まるプリエンファシス強度調整用信号を送信信号回路14Bへ返送する調整制御部24Bとを受信回路20Bに設け、送信回路側10Bと受信回路20Bとは一本の伝送路15Bを介して接続されてこの実施例の特徴部分が構成されている。
この構成以外のこの実施例の構成は、実施例1と同じであるので、同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その逐一の説明は省略する。
【0033】
次に、図5を参照して、この実施例の動作について説明する。
この実施例の動作は、次の点を除いて、実施例1で説明したところと同じである。
すなわち、送信回路側10Bの送信回路14Bから伝送されたシングルパルスパターンの単一の信号が伝送路15Bを介して受信回路20BのTeye判定部21Bに入力される一方、そのTeye判定部21Bには、目標直流電位が直流電位出力回路22Bから入力される。
Teye判定部21Bは、シングルパルスパターンの単一の信号と目標直流電位とを比較し、その判定結果を調整制御部24Bに出力する。この判定結果は、信号の信号レベルが目標直流電位に対して大きいか少ないかに応じてプリエンファシスの過大又は不足、或いは最適を示す。
調整制御部24Bは、判定結果に応じて決まるプリエンファシス強度調整用信号を送信回路14Bへ返送し、送信回路14Bは、判定結果に応じてプリエンファシスの強度を調整する。
【0034】
このように、この実施例の構成によれば、シングルパルスパターンの信号の信号レベルと目標直流電位とを比較判定し、その判定結果に応じたプリエンファシスの強度の調整を行うことができる。したがって、回路の簡略化と共にこの簡略化による調整時間の短縮化が得られる。
【0035】
以上、この発明の実施例を、図面を参照して詳述してきたが、この発明の具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらはこの発明に含まれる。
例えば、シングルパルスパターンの信号のパルス間隔は等間隔である例について説明したが、必ずしもこれに限られない。そのパルス間隔は異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ここに開示しているプリエンファシス自動調整方法及び信号伝送システム等は、各種の伝送系、例えば、情報処理システムの装置間、光伝送システム等で利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施例1である信号伝送システムの電気的構成を示す図である。
【図2】同信号伝送システムの受信装置を構成するTeye判定部での動作を説明するための波形図である。
【図3】同信号伝送システムの受信装置を構成する調整制御部での動作を説明するための波形図である。
【図4】この発明の実施例2である信号伝送システムの電気的構成を示す図である。
【図5】この発明の実施例3である信号伝送システムの電気的構成を示す図である。
【図6】従来の信号伝送システムの電気的構成を示す図である。
【図7】同信号伝送システムの受信装置を構成する調整制御部での動作を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0038】
1、1A、1B 信号伝送システム
10 送信回路側
11 シングルパルスパターン発生部
12 自動調整制御部
13 セレクタ
14 送信回路(調整手段)
15 伝送路
20 受信回路
21 Teye判定部(受信手段、アイ開口計測手段の一部)
22 サンプリングクロック制御部(アイ開口計測手段の一部)
23 遅延制御回路(アイ開口計測手段の残部)
24 調整制御部(生成手段、転送手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号伝送用の送信回路において、受信回路での受信アイ開口が最大となるように、プリエンファシス強度を最適調整するためのプリエンファシス自動調整方法であって、
前記受信回路側で、前記送信回路から送信されるシングルパルスパターンを受信し、受信した前記シングルパルスパターンから前記受信アイ開口の時間軸大きさを把握し、把握した前記時間軸大きさに基づいて、前記プリエンファシス強度の調整を前記送信回路に指示するための調整信号を生成し、生成した前記調整信号を前記送信回路に転送し、
前記送信回路側で、前記受信回路から転送されてきた前記調整信号に基づいて、前記プリエンファシス強度を最適調整することを特徴とするプリエンファシス自動調整方法。
【請求項2】
信号伝送用の送信回路において、受信回路での受信アイ開口が最大となるように、プリエンファシス強度を最適調整するためのプリエンファシス自動調整方法であって、
前記受信回路側で、前記送信回路から送信されるシングルパルスパターンを受信し、受信した前記シングルパルスパターンから前記受信アイ開口の時間軸大きさを把握し、把握した前記時間軸大きさと予め設定された最適値との比較結果に基づいて、前記プリエンファシス強度の調整を前記送信回路に指示するための調整信号を生成し、生成した前記調整信号を前記送信回路に転送し、
前記送信回路側で、前記受信回路から転送されてきた前記調整信号に基づいて、前記プリエンファシス強度を最適調整することを特徴とするプリエンファシス自動調整方法。
【請求項3】
前記シングルパルスパターンが、互いに位相が反転した2つのシングルパルスパターンからなることを特徴とする請求項1又は2記載のプリエンファシス自動調整方法。
【請求項4】
前記受信アイ開口の時間軸大きさは、前記シングルパルスパターンの信号レベルが所定の信号レベルを超えている間又は未満にある間の時間であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のプリエンファシス自動調整方法。
【請求項5】
信号伝送用の送信回路において、受信回路での受信アイ開口が最大となるように、プリエンファシス強度を最適調整する手段を有する信号伝送システムであって、
前記受信回路に、
前記送信回路から送信されるシングルパルスパターンを受信する受信手段と、該受信手段で受信した前記シングルパルスパターンから前記受信アイ開口の時間軸大きさを把握するアイ開口計測手段と、
該アイ開口計測手段で把握した前記時間軸大きさに基づいて、前記プリエンファシス強度の調整を前記送信回路に指示するための調整信号を生成する生成手段と、
該生成手段で生成した前記調整信号を前記送信回路に転送する転送手段と、
前記送信回路に、
前記転送手段から転送されてきた前記調整信号に基づいて、前記プリエンファシス強度を最適調整する調整手段を備えることを特徴とする信号伝送システム。
【請求項6】
信号伝送用の送信回路において、受信回路での受信アイ開口が最大となるように、プリエンファシス強度を最適調整する手段を有する信号伝送システムであって、
前記受信回路に、
前記送信回路から送信されるシングルパルスパターンを受信する受信手段と、該受信手段で受信した前記シングルパルスパターンから前記受信アイ開口の時間軸大きさを把握するアイ開口計測手段と、
該アイ開口計測手段で把握した前記時間軸大きさと予め設定された最適値との比較結果に基づいて、前記プリエンファシス強度の調整を前記送信回路に指示するための調整信号を生成する生成手段と、
該生成手段で生成した前記調整信号を前記送信回路に転送する転送手段と、
前記送信回路に、
前記転送手段から転送されてきた前記調整信号に基づいて、前記プリエンファシス強度を最適調整する調整手段を備えることを特徴とする信号伝送システム。
【請求項7】
前記シングルパルスパターンが、互いに位相が反転した2つのシングルパルスパターンからなることを特徴とする請求項5又は6記載の信号伝送システム。
【請求項8】
前記受信アイ開口の時間軸大きさは、前記シングルパルスパターンの信号レベルが所定の信号レベルを超えている間又は未満にある間の時間であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の信号伝送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−274139(P2007−274139A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94866(P2006−94866)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】