説明

プリディストーション方式の歪補償装置

【課題】増幅器で発生する歪をプリディストーション方式により補償する歪補償装置で、歪補償精度を向上させる。
【解決手段】メモリレスプリディストーション手段21〜23を有するとともに、メモリプリディストーション手段として、1段以上の遅延処理部、加算手段44、歪付与手段45を有する。遅延処理部のそれぞれは、入力信号のレベルの値を出力するか否かが切り替え可能である遅延選択手段32〜34、遅延選択手段から出力されたレベルの値に応じた補正値を出力するテーブル手段35、38、41、テーブル手段から出力された補正値をサンプル単位の所定時間だけ遅延させて出力する遅延手段36、39、42、テーブル手段から出力された補正値と遅延手段から出力された補正値との差分を検出して当該差分を加算手段44へ出力する差分検出手段37、40、43を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号を増幅する増幅器で発生する歪の逆特性を有する歪(予歪)を与えて歪補償するプリディストーション技術に関し、特に、例えば、プリディストーション方式の歪補償を用いた送信増幅器などにおいて、メモリ効果の補償で考慮する過去の入力サンプル数の範囲を適切に設定し、増幅器のばらつきに影響されることなく効率的な歪補償を行い、歪補償精度を向上させることができるプリディストーション方式の歪補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムに備えられた基地局装置では、物理的に遠く離れた移動局装置の所まで無線信号を到達させる必要があるため、信号を増幅器で大幅に増幅することが必要となる。しかしながら、増幅器はアナログデバイスであるため、その入出力特性は非線形な関数となる。特に、飽和点と呼ばれる増幅限界以降では、増幅器に入力される電力が増大しても出力電力がほぼ一定となる。そして、この非線形な出力によって非線形歪が発生させられる。増幅前の送信信号は希望信号帯域外の信号成分が帯域制限フィルタによって低レベルに抑えられるが、増幅器通過後の信号では非線形歪が発生して希望信号帯域外(隣接チャネル)へ信号成分が漏洩する。隣接チャネルヘの電力の漏洩は他システムヘの無線通信の妨害となることから、隣接チャネルヘの漏洩電力の大きさは厳しく規定されており、このような隣接チャネル漏洩電力をいかにして削減するかが大きな問題となっている。
【0003】
歪補償方式の一つにプリディストーション方式があり、近年では増幅効率を重要視するため、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのデジタル回路内で構成でき、精度の高い歪補償を行うことができるデジタルプリディストーション方式がよく用いられている。
【0004】
プリディストーション方式で歪を低く抑えるためには、プリディストータにより瞬時電力に対する増幅器のAM(Amplitude Modulation)/AM特性、AM/PM(Phase Modulation)特性の逆特性の歪を予め与えておき、逆特性を与えた信号を増幅器に入力することを行い、これによって、増幅器の出力は非線形な領域が相殺されて線形な特性となり、効率を高く保ったまま歪を低く抑えることが可能となる。最近では、送信信号の帯域が広帯域化するのに伴って、瞬時電力に対する逆特性を与えるだけでは、十分な歪補償結果を得ることができず、メモリ効果と呼ばれる過去の入力の影響を持つように見える現象の対策が必須となってきており、プリディストーション回路においても過去の入力も考慮して歪補償を行わなければならない。
【0005】
図4には、背景技術に係るプリディストーション歪補償機能付き増幅装置の構成例を示してある。本例のプリディストーション歪補償機能付き増幅装置は、例えば、基地局装置の送信機に設けられている。
本例のプリディストーション歪補償機能付き増幅装置は、デジタル変調部201、プリディストーション部(本例では、デジタルの処理部)202、D/A(Digital to Analog)コンバータからなるD/Aコンバータ部203、周波数変換部204、増幅器からなる増幅部205、アンテナ206、周波数変換部207、A/D(Analog to Digital)コンバータからなるA/Dコンバータ部208、信号同期部209、歪補償制御部210、方向性結合器211を備えている。
【0006】
本例のプリディストーション歪補償機能付き増幅装置における動作の一例を示す。
デジタル変調部201は、入力されるI成分及びQ成分からなるベースバンド信号(送信対象となる信号)に対して、帯域制限や、各キャリア周波数についてのデジタル直交変調を行い、マルチキャリア合成を行い、これらの処理結果の信号をプリディストーション部202及び歪補償制御部210へ出力する。
プリディストーション部202は、増幅部205で発生する非線形特性の逆特性を入力信号に与えて、D/Aコンバータ部203へ出力する。
【0007】
その後、D/Aコンバータ部203は、入力信号をデジタル信号からアナログ信号へ変換して、周波数変換部204へ出力する。
周波数変換部204は、入力信号を無線周波数(RF:Radio Frequency)帯の信号へ周波数変換して増幅部205へ出力する。
増幅部206は、入力信号を増幅して、アンテナ206へ出力する。これにより、増幅部205からの出力信号は、増幅部205で発生する歪が予めプリディストーション部202で与えられた歪と相殺される形で歪の無い信号となって、アンテナ206から無線により送信出力される。
【0008】
方向性結合器211は、増幅部205からの出力信号の一部をフィードバック信号として抽出して、周波数変換部207へ出力する。
周波数変換部207は、入力信号を中間周波数(IF:Intermediate Frequency)帯の信号へ周波数変換して、A/Dコンバータ部208へ出力する。
A/Dコンバータ部208は、入力信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換して、信号同期部209へ出力する。
【0009】
信号同期部209は、A/Dコンバータ部208からの入力信号(フィードバック信号)と本例のプリディストーション歪補償機能付き増幅装置への入力側の入力信号(例えば、デジタル変調部201からの出力信号)との間のレベル、遅延、位相差を補正して、これらの処理後のフィードバック信号(I成分及びQ成分からなるもの)を歪補償増幅部210へ出力する。
歪補償制御部210は、デジタル変調部201からの入力信号と信号同期部209からの入力信号(フィードバック信号)とを比較して、これらの誤差が小さくなるような補正パラメータをプリディストーション部202に対して設定や更新する。これにより、温度変化などに追従するための適応制御が行われる。
【0010】
図5及び図6を参照して、図4に示されるプリディストーション部202の構成例を示す。
なお、いずれの構成においても、プリディストーション部301、401(図4に示されるプリディストーション部202に対応するもの)は、瞬時電力に対するAM/AM特性、AM/PM特性の非線形性を補償するメモリレスプリディストーション部(メモリレスPD)311、411と、過去の入力に影響されるメモリ効果による歪を補償するメモリプリディストーション部(メモリPD)312、412を備えて構成される。
【0011】
図5には、背景技術に係るプリディストーション部301の第1の構成例を示してあり、また、デジタル変調部201、D/Aコンバータ部203、歪補償制御部210を示してある。
本例のプリディストーション部301は、メモリレスPD311、メモリPD312を備えている。
メモリレスPD311は、電力検出部(第1の電力検出部)321、メモリレスLUT(Look Up Table)322、複素乗算部323を備えている。
メモリPD312は、電力検出部(第2の電力検出部)331、メモリLUT332、1サンプル遅延部333、差分計算部334、複素乗算部335を備えている。
【0012】
本例のプリディストーション部301における動作の一例を示す。
メモリレスPD311における動作の例を示す。
デジタル変調部201からのI成分及びQ成分の信号が、電力検出部321、複素乗算部323に入力される。
電力検出部321は、入力されたI、Qデジタルデータの信号に対して、信号のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を計算し、その結果をメモリレスLUT322へ出力する。
【0013】
メモリレスLUT322は、電力検出部321で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を複素乗算部323へ出力する。ここで、メモリレスLUT322は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
複素乗算部323は、デジタル変調部201からの入力信号とメモリレスLUT322からの補正値との複素乗算を行うことで、AM/AM特性、AM/PM特性の歪補償を行い、その結果をメモリPD312へ送信(出力)する。
【0014】
メモリPD312における動作の例を示す。
メモリレスPD311の複素乗算部323からのI成分及びQ成分からなる出力信号が、電力検出部331、複素乗算部335に入力される。
電力検出部331は、入力されたI、Qデジタル信号に対して、信号のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を計算し、その結果をメモリLUT332へ出力する。
メモリLUT332は、電力検出部331で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を1サンプル遅延部333、差分計算部334へ出力する。ここで、メモリLUT332は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
【0015】
1サンプル遅延部333は、メモリLUT332からの入力信号を1サンプル分遅延させて、差分計算部334へ出力する。
差分計算部334は、メモリLUT332からの入力信号と1サンプル遅延部333からの入力信号との差分を取り、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)を複素乗算部335へ出力する。
複素乗算部335は、メモリレスPD311の複素乗算部323からの入力信号と差分計算部334からの入力信号(差分値)との複素乗算を行うことで、メモリ効果の補償を行い、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)をD/Aコンバータ部203へ出力する。
【0016】
ここで、メモリレスPD311のメモリレスLUT322やメモリPD312のメモリLUT332の記憶内容(信号レベルと補正値との対応)は、歪補償制御部210により、入力側からの入力信号とフィードバック信号との誤差が小さくなるように、適応的に更新される。
【0017】
図6には、背景技術に係るプリディストーション部401の第2の構成例を示してあり、また、デジタル変調部201、D/Aコンバータ部203、歪補償制御部210を示してある。
本例のプリディストーション部401は、メモリレスPD411、メモリPD412、電力検出部421、補償データ加算部429、複素乗算部430を備えている。
メモリレスPD411は、メモリレスLUT422を備えている。
メモリPD412は、1サンプル遅延部423、メモリLUT(第1のメモリLUT)424、2サンプル遅延部425、メモリLUT(第2のメモリLUT)426、3サンプル遅延部427、メモリLUT(第3のメモリLUT)428を備えている。
【0018】
本例のプリディストーション部401における動作の一例を示す。
デジタル変調部201から入力されたI、Qデジタルデータの信号(I成分及びQ成分の信号)が、電力検出部421、複素乗算部430に入力される。
電力検出部421は、入力されたI、Qデジタルデータの信号に対して、信号のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を計算し、その結果を出力する。電力検出部421からの出力は、分配されて、メモリレスPD411のメモリレスLUT422、及び、メモリPD412の1サンプル遅延部423、2サンプル遅延部425、3サンプル遅延部427に入力される。
【0019】
メモリレスPD411では、メモリレスLUT422は、電力検出部421で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部429へ出力する。これにより、AM/AM特性、AM/PM特性の逆特性を与える。ここで、メモリレスLUT422は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
【0020】
メモリPD412では、1サンプル遅延部423は、電力検出部421から入力された信号レベルを1サンプル分遅延させて、メモリLUT424へ出力する。
メモリLUT424は、1サンプル遅延部423から入力された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部429へ出力する。
また、2サンプル遅延部425は、電力検出部421から入力された信号レベルを2サンプル分遅延させて、メモリLUT426へ出力する。
メモリLUT426は、2サンプル遅延部425から入力された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部429へ出力する。
また、3サンプル遅延部427は、電力検出部421から入力された信号レベルを3サンプル分遅延させて、メモリLUT428へ出力する。
メモリLUT428は、3サンプル遅延部427から入力された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部429へ出力する。
これらにより、メモリ効果の逆特性を与える。
【0021】
補償データ加算部429は、各LUT422、424、426、428から入力された補正値を加算して、その結果(I成分及びQ成分からなるもの)を複素乗算部430へ出力する。
複素乗算部430は、デジタル変調部201からの入力信号と補償データ加算部429からの入力信号との複素乗算を行うことで、メモリレスとメモリ効果の歪補償を行い、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)をD/Aコンバータ部203へ出力する。
【0022】
ここで、メモリレスPD411のメモリレスLUT422やメモリPD412のメモリLUT424、メモリLUT426、メモリLUT428の記憶内容(信号レベルと補正値との対応)は、歪補償制御部210により、入力側からの入力信号とフィードバック信号との誤差が小さくなるように、適応的に更新される。
【0023】
なお、本例のメモリPD412では、3サンプル前の信号まで考慮した場合を示したが、デジタル回路内に遅延部とLUTを増やすことによって、更に過去の信号まで考慮して歪補償を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2007−243549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
図5や図6に示されるようなプリディストーション部301、401に関して、それぞれの従来手法では、メモリPD312、412でどのくらい過去の時間まで考慮に入れるかが問題となる。例えば、図5に示される構成のように考慮する過去の入力が少な過ぎると、歪補償性能が十分に得られず、図6に示される構成のように考慮する過去の入力が多過ぎてもパラメータが膨大になってしまうことにより、収束するまでの時間が長くなる、或いは、収束しないといった問題が考えられる。
【0026】
ここで、考慮に入れるべき過去の入力は、増幅器のデバイスや調整のばらつきによって変わる可能性があるが、従来では、適応的に制御するのではなく、予め回路として搭載していなければならなかったため、歪補償の対象となる増幅器のばらつきに対応することができなかった。
【0027】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、例えば、プリディストーション方式の歪補償を用いた送信増幅器などにおいて、メモリ効果の補償で考慮する過去の入力サンプル数の範囲を適切に設定し、増幅器のばらつきに影響されることなく効率的な歪補償を行い、歪補償精度を向上させることができるプリディストーション方式の歪補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
(以下、図1に対応した構成例)
上記目的を達成するため、本発明では、増幅器で発生する歪をプリディストーション方式により補償するプリディストーション方式の歪補償装置において、次のような構成とした。
すなわち、メモリレスプリディストーション手段が、AM/AM特性及びAM/PM特性の歪補償に関して、入力信号のレベルの値に応じた歪(プリディストーションのための予歪)を当該入力信号に与える。
また、メモリプリディストーション手段が、メモリ効果の歪補償に関して、入力信号のレベルの値に応じた歪(プリディストーションのための予歪)を当該入力信号に与える。このメモリプリディストーション手段では、1段以上の遅延処理部を備えており、加算手段が全ての遅延処理部からの出力(差分)を加算(合成)し、歪付与手段が当該加算手段による加算結果に応じた歪(プリディストーションのための予歪)を前記入力信号に与える。
【0029】
前記遅延処理部のそれぞれでは、遅延選択手段が前記入力信号のレベルの値を出力するか否かが切り替え可能であり、テーブル手段が当該遅延選択手段から出力されたレベルの値に応じた補正値を出力し、遅延手段が当該テーブル手段から出力された補正値をサンプル単位の所定時間だけ遅延させて出力し、差分検出手段が前記テーブル手段から出力された補正値と前記遅延手段から出力された補正値との差分を検出して当該差分を前記加算手段へ出力する。
【0030】
また、前記遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延選択手段は、次段の遅延処理部がある場合には、前記入力信号のレベルの値を出力する状態において、当該次段の遅延処理部に備えられた遅延選択手段へ前記入力信号のレベルの値を出力する。
また、前記遅延処理部が2段以上ある場合には、前記遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延手段は、前記遅延処理部のそれぞれ毎に異なる時間だけ前記テーブル手段から出力された補正値を遅延させる。
【0031】
従って、遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延選択手段からの出力の有無を切り替えることにより、例えば、プリディストーション方式の歪補償を用いた送信増幅器などにおいて、メモリ効果の補償で考慮する過去の入力サンプル数の範囲を適切に設定し、増幅器のばらつきに影響されることなく効率的な歪補償を行い、歪補償精度を向上させることができる。
【0032】
ここで、メモリレスプリディストーション手段は、例えば、入力信号のレベルの値を検出するレベル検出手段と、当該レベル検出手段により検出されたレベルの値に応じた補正値を出力するテーブル手段と、当該テーブル手段から出力された補正値に応じた歪(プリディストーションのための予歪)を前記入力信号に与える歪付与手段と、を備える。
【0033】
また、メモリプリディストーション手段は、例えば、入力信号のレベルの値を検出するレベル検出手段を備える。
また、メモリプリディストーション手段に設けられる1段以上の遅延処理部としては、例えば、1段の遅延処理部が設けられる構成が用いられてもよく、好ましくは、2段以上の遅延処理部が設けられる構成が用いられる。遅延処理部の段数は、任意であってもよい。
また、遅延処理部が2段以上設けられる場合には、一例として、遅延手段の遅延時間(サンプル単位の所定時間)について、1段目は1サンプル分の時間、2段目は2サンプル分の時間というように、i(iは1以上の整数値)段目はiサンプル分の時間とする構成を用いることができる。
【0034】
なお、メモリレスプリディストーション手段とメモリプリディストーション手段との配置関係としては、例えば、メモリレスプリディストーション手段の後段にメモリプリディストーション手段を配置する構成が用いられてもよく、或いは、メモリプリディストーション手段の後段にメモリレスプリディストーション手段を配置する構成が用いられてもよい。
【0035】
また、一構成例として、歪補償装置は、メモリレスプリディストーション手段に備えられるテーブル手段の記憶内容(信号のレベルの値と補正値との対応)や、メモリプリディストーション手段に備えられるテーブル手段の記憶内容(信号のレベルの値と補正値との対応)を更新する更新制御手段を備える。この更新の制御は、種々な情報に基づいて行われてもよく、例えば、歪補償後の信号(フィードバック信号)と入力信号との誤差又は歪補償後の信号に含まれる残歪(補償しきれずに残った歪)の量などに基づいて、歪補償の精度を更に向上させるように行われる。
【0036】
また、一構成例として、歪補償装置は、遅延処理部のそれぞれに備えられる遅延選択手段からの出力の有無(オン/オフ)を切り替える遅延選択制御手段を備える。この制御は、種々な情報に基づいて行われてもよく、例えば、歪補償後の信号(フィードバック信号)と入力信号との誤差又は歪補償後の信号に含まれる残歪(補償しきれずに残った歪)の量などに基づいて、十分な歪補償の精度を実現するように行われる。一例として、初期状態では全ての遅延処理部の遅延選択手段の出力を無し(オフ)に設定し、そして、1段目の遅延処理部から段数の順に、歪補償の精度が不十分であると判定した場合に、次の段の遅延処理部の遅延選択手段の出力を有り(オン)に切り替えていくような制御手法を用いることができる。
(以上、図1に対応した構成例)
【0037】
(以下、図3に対応した構成例)
上記目的を達成するため、本発明では、増幅器で発生する歪をプリディストーション方式により補償するプリディストーション方式の歪補償装置において、次のような構成とした。
すなわち、メモリレスプリディストーション手段が、AM/AM特性及びAM/PM特性の歪補償に関して、入力信号のレベルの値に応じた補正値を出力する。
メモリプリディストーション手段を構成する1段以上の遅延処理部が、メモリ効果の歪補償に関して、前記入力信号のレベルの値に応じた補正値を出力する。
加算手段が、前記メモリレスプリディストーション手段から出力された補正値及び前記メモリプリディストーション手段を構成する全ての遅延処理部から出力された補正値を加算(合成)する。
歪付与手段が、前記加算手段による加算結果に応じた歪(プリディストーションのための予歪)を前記入力信号に与える。
【0038】
前記遅延処理部のそれぞれでは、遅延選択手段が前記入力信号のレベルの値を出力するか否かが切り替え可能であり、遅延手段が当該遅延選択手段から出力されたレベルの値をサンプル単位の所定時間だけ遅延させて出力し、テーブル手段が当該遅延手段から出力されたレベルの値に応じた補正値を出力する。
【0039】
また、前記遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延選択手段は、次段の遅延処理部がある場合には、前記入力信号のレベルの値を出力する状態において、当該次段の遅延処理部に備えられた遅延選択手段へ前記入力信号のレベルの値を出力する。
また、前記遅延処理部が2段以上ある場合には、前記遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延手段は、前記遅延処理部のそれぞれ毎に異なる時間だけ前記遅延選択手段から出力されたレベルの値を遅延させる。
【0040】
従って、遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延選択手段からの出力の有無を切り替えることにより、例えば、プリディストーション方式の歪補償を用いた送信増幅器などにおいて、メモリ効果の補償で考慮する過去の入力サンプル数の範囲を適切に設定し、増幅器のばらつきに影響されることなく効率的な歪補償を行い、歪補償精度を向上させることができる。
【0041】
ここで、メモリレスプリディストーション手段やメモリプリディストーション手段は、例えば、入力信号のレベルの値を検出するレベル検出手段を備え、また、このようなレベル検出手段は、メモリレスプリディストーション手段とメモリプリディストーション手段とで共通なものを備えることが可能である。
また、メモリレスプリディストーション手段は、例えば、入力信号のレベルの値に応じた補正値を出力するテーブル手段を備える。
【0042】
また、メモリプリディストーション手段に設けられる1段以上の遅延処理部としては、例えば、1段の遅延処理部が設けられる構成が用いられてもよく、好ましくは、2段以上の遅延処理部が設けられる構成が用いられる。遅延処理部の段数は、任意であってもよい。
また、遅延処理部が2段以上設けられる場合には、一例として、遅延手段の遅延時間(サンプル単位の所定時間)について、1段目は1サンプル分の時間、2段目は2サンプル分の時間というように、i(iは1以上の整数値)段目はiサンプル分の時間とする構成を用いることができる。
【0043】
また、一構成例として、歪補償装置は、メモリレスプリディストーション手段に備えられるテーブル手段の記憶内容(信号のレベルの値と補正値との対応)や、メモリプリディストーション手段に備えられるテーブル手段の記憶内容(信号のレベルの値と補正値との対応)を更新する更新制御手段を備える。この更新の制御は、種々な情報に基づいて行われてもよく、例えば、歪補償後の信号(フィードバック信号)と入力信号との誤差又は歪補償後の信号に含まれる残歪(補償しきれずに残った歪)の量などに基づいて、歪補償の精度を更に向上させるように行われる。
【0044】
また、一構成例として、歪補償装置は、遅延処理部のそれぞれに備えられる遅延選択手段からの出力の有無(オン/オフ)を切り替える遅延選択制御手段を備える。この制御は、種々な情報に基づいて行われてもよく、例えば、歪補償後の信号(フィードバック信号)と入力信号との誤差又は歪補償後の信号に含まれる残歪(補償しきれずに残った歪)の量などに基づいて、十分な歪補償の精度を実現するように行われる。一例として、初期状態では全ての遅延処理部の遅延選択手段の出力を無し(オフ)に設定し、そして、1段目の遅延処理部から段数の順に、歪補償の精度が不十分であると判定した場合に、次の段の遅延処理部の遅延選択手段の出力を有り(オン)に切り替えていくような制御手法を用いることができる。
(以上、図3に対応した構成例)
【発明の効果】
【0045】
以上説明したように、本発明に係るプリディストーション方式の歪補償装置によると、例えば、プリディストーション方式の歪補償を用いた送信増幅器などにおいて、メモリ効果の補償で考慮する過去の入力サンプル数の範囲を適切に設定し、増幅器のばらつきに影響されることなく効率的な歪補償を行い、歪補償精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施例に係るプリディストーション部の構成例を示す図である。
【図2】歪補償制御部により行われる処理の手順の一例を示すフローチャートの図である。
【図3】本発明の第2実施例に係るプリディストーション部の構成例を示す図である。
【図4】背景技術に係るプリディストーション歪補償機能付き増幅装置の構成例を示す図である。
【図5】背景技術に係るプリディストーション部の第1の構成例を示す図である。
【図6】背景技術に係るプリディストーション部の第2の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
本実施例では、図4に示されるものと同様な構成を有するプリディストーション歪補償機能付き増幅装置に本発明を適用した場合を示し、特に、図4に示されるプリディストーション部202や歪補償制御部210の構成例や動作例を示す。
以下では、図4を参照して説明した構成や動作とは異なる部分について主に説明し、同様な部分については詳しい説明を省略する。
【実施例1】
【0048】
本発明の第1実施例を説明する。
第1実施例では、図5に示されるプリディストーション部301に対応した構成例を示す。
図1には、本発明の一実施例に係るプリディストーション部1(図4に示されるプリディストーション部202に対応するもの)の構成例を示してあり、また、デジタル変調部201、D/Aコンバータ部203、歪補償制御部2(図4に示される歪補償制御部210に対応するもの)を示してある。
【0049】
本例のプリディストーション部1は、メモリレスPD11、メモリPD12を備えている。
メモリレスPD11は、電力検出部(第1の電力検出部)21、歪補償テーブルを構成するメモリレスLUT22、複素乗算部23を備えている。
メモリPD12は、電力検出部(第2の電力検出部)31、遅延選択部(第1の遅延選択部)32、遅延選択部(第2の遅延選択部)33、遅延選択部(第3の遅延選択部)34、歪補償テーブルを構成するメモリLUT(第1のメモリLUT)35、1サンプル遅延部36、差分計算部(第1の差分計算部)37、歪補償テーブルを構成するメモリLUT(第2のメモリLUT)38、2サンプル遅延部39、差分計算部(第2の差分計算部)40、歪補償テーブルを構成するメモリLUT(第3のメモリLUT)41、3サンプル遅延部42、差分計算部(第3の差分計算部)43、補償データ加算部44、複素乗算部45を備えている。
【0050】
本例のプリディストーション部1における動作の一例を示す。
メモリレスPD11における動作の例を示す。
デジタル変調部201からのI成分及びQ成分の信号が、電力検出部21、複素乗算部23に入力される。
電力検出部21は、入力されたI、Qデジタルデータの信号に対して、信号のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を計算し、その結果をメモリレスLUT22へ出力する。
【0051】
メモリレスLUT22は、電力検出部21で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を複素乗算部23へ出力する。ここで、メモリレスLUT22は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
複素乗算部23は、デジタル変調部201からの入力信号とメモリレスLUT22からの補正値との複素乗算を行うことで、AM/AM特性、AM/PM特性の歪補償を行い、その結果をメモリPD12へ送信(出力)する。
【0052】
メモリPD12における動作の例を示す。
メモリレスPD11の複素乗算部23からのI成分及びQ成分からなる出力信号が、電力検出部31、複素乗算部45に入力される。
電力検出部31は、入力されたI、Qデジタル信号に対して、信号のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を計算し、その結果を遅延選択部32へ出力する。
【0053】
遅延選択部32では、入力データ(電力検出部31で計算された信号レベル)を以降のブロック(処理部)に通すか否かを制御する。この制御の設定は、歪補償制御部2から遅延選択部32に指定される。具体的には、遅延選択部32は、過去の入力を考慮する場合(オン(ON)の場合)には、入力データ(電力検出部31で計算された信号レベル)をそのまま後段の遅延選択部33、メモリLUT35へ出力し、また、過去の入力を全く考慮しない場合には、0を後段の遅延選択部33、メモリLUT35へ出力することによって、メモリPD12をオフ(OFF)状態にする。
【0054】
メモリLUT35は、遅延選択部32から入力された電力検出部31で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を1サンプル遅延部36、差分計算部37へ出力する。ここで、メモリLUT35は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
1サンプル遅延部36は、メモリLUT35からの入力信号(入力データ)を1サンプル分遅延させて、差分計算部37へ出力する。
差分計算部37は、メモリLUT35からの入力信号と1サンプル遅延部36からの入力信号との差分を取り、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部44へ出力する。
【0055】
遅延選択部33では、入力データ(遅延選択部32から入力された電力検出部31で計算された信号レベル)を以降のブロック(処理部)に通すか否かを制御する。この制御の設定は、歪補償制御部2から遅延選択部33に指定される。具体的には、遅延選択部33は、2サンプル以上の過去の入力を考慮する場合(オンの場合)には、入力データ(電力検出部31で計算された信号レベル)をそのまま後段の遅延選択部34、メモリLUT38へ出力し、また、2サンプル以上の過去の入力を考慮しない場合には、0を後段の遅延選択部34、メモリLUT38へ出力することによって、メモリPD12において2サンプル以上の過去の入力に依存するブロック(処理部)をオフ状態にする。
【0056】
メモリLUT38は、遅延選択部33から入力された電力検出部31で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を2サンプル遅延部39、差分計算部40へ出力する。ここで、メモリLUT38は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
2サンプル遅延部39は、メモリLUT38からの入力信号(入力データ)を2サンプル分遅延させて、差分計算部40へ出力する。
差分計算部40は、メモリLUT38からの入力信号と2サンプル遅延部39からの入力信号との差分を取り、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部44へ出力する。
【0057】
遅延選択部34では、入力データ(遅延選択部33から入力された電力検出部31で計算された信号レベル)を以降のブロック(処理部)に通すか否かを制御する。この制御の設定は、歪補償制御部2から遅延選択部34に指定される。具体的には、遅延選択部34は、3サンプル以上の過去の入力を考慮する場合(オンの場合)には、入力データ(電力検出部31で計算された信号レベル)をそのまま後段のメモリLUT41へ出力し、また、3サンプル以上の過去の入力を考慮しない場合には、0を後段のメモリLUT41へ出力することによって、メモリPD12において3サンプル以上の過去の入力に依存するブロック(処理部)をオフ状態にする。
【0058】
メモリLUT41は、遅延選択部34から入力された電力検出部31で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を3サンプル遅延部42、差分計算部43へ出力する。ここで、メモリLUT41は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
3サンプル遅延部42は、メモリLUT41からの入力信号(入力データ)を3サンプル分遅延させて、差分計算部43へ出力する。
差分計算部43は、メモリLUT41からの入力信号と3サンプル遅延部42からの入力信号との差分を取り、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部44へ出力する。
【0059】
なお、本例のメモリPD12では、3サンプル前の信号まで考慮した場合を示したが、例えば、デジタル回路内に遅延選択部、メモリLUT、遅延部、差分計算部を増やすことによって、更に過去の信号まで考慮して歪補償を行うことができる。
【0060】
補償データ加算部44は、全ての差分計算部37、40、43からの入力信号(全ての分岐の出力)を加算して、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)を複素乗算部45へ出力する。
複素乗算部45は、メモリレスPD11の複素乗算部23からの入力信号と補償データ加算部44からの入力信号(差分値の加算結果からなるメモリ効果歪の補償用データ)との複素乗算を行うことで、メモリ効果の補償を行い、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)をD/Aコンバータ部203へ出力する。
【0061】
ここで、各LUT22、35、38、41の補正パラメータの設定や更新や、各遅延選択部32、33、34のオン/オフの設定は、歪補償制御部2により行われる。
具体的には、メモリレスPD11のメモリレスLUT22やメモリPD12のメモリLUT35、38、41の記憶内容(信号レベルと補正値との対応)が、それぞれ、歪補償制御部2により、入力側からの入力信号とフィードバック信号との誤差が小さくなるように、適応的に更新される。
また、各遅延選択部32、33、34のオン/オフの状態が、それぞれ、歪補償制御部2により設定される。
【0062】
図2を参照して、本例のプリディストーション部1において、歪補償制御部2により行われる処理の手順の一例を示す。
まず、起動すると、初期状態として、メモリレスPD11のみを動作させるために、全ての遅延選択部32、33、34をオフ状態にする(ステップS1)。これにより、メモリレスPD11のみが動作し、メモリレスPD11の適応更新を行って、メモリレスLUT22を更新する(ステップS2)。
【0063】
そして、入力側からの入力信号(送信信号)とフィードバック信号との誤差の改善量が所定の閾値未満(又は、「所定の閾値以下」でもよい)となったか否かで収束したか否かを判定し(ステップS3)、収束していないことを判定した場合には、ステップS2の処理へ戻る。
一方、収束したことを判定した場合には、前記した誤差が十分に小さくなったか否かを判定し(ステップS4)、誤差が十分に小さくなっていることを判定した場合には、メモリPD12を動作させる必要もなく、誤差の劣化を検出するまで更新を停止する(ステップS16)。なお、誤差が十分に小さくなったか否かは、例えば、誤差が所定の閾値未満(又は、「所定の閾値以下」でもよい)となったか否かにより判定することが可能である。
【0064】
一方、誤差が十分に小さくなっていない(誤差がまだ残っている)ことを判定した場合には、遅延選択部32の出力をオン状態にして、1サンプル過去の入力を考慮したメモリPD12を動作させるようにする(ステップS5)。これにより、メモリレスPD11及びメモリPD12が動作し、メモリレスPD11及びメモリPD12の適応更新を行って、メモリレスLUT22及びメモリLUT35を更新する(ステップS6)。
【0065】
そして、入力側からの入力信号(送信信号)とフィードバック信号との誤差の改善量が所定の閾値未満(又は、「所定の閾値以下」でもよい)となったか否かで収束したか否かを判定し(ステップS7)、収束していないことを判定した場合には、ステップS6の処理へ戻る。
一方、収束したことを判定した場合には、前記した誤差が十分に小さくなったか否かを判定し(ステップS8)、誤差が十分に小さくなっていることを判定した場合には、誤差の劣化を検出するまで更新を停止する(ステップS16)。
【0066】
一方、誤差が十分に小さくなっていない(誤差がまだ残っている)ことを判定した場合には、遅延選択部33の出力をオン状態にして、2サンプル過去までの入力を考慮したメモリPD12を動作させるようにする(ステップS9)。これにより、メモリレスPD11及びメモリPD12が動作し、メモリレスPD11及びメモリPD12の適応更新を行って、メモリレスLUT22、メモリLUT35及びメモリLUT38を更新する(ステップS10)。
【0067】
そして、入力側からの入力信号(送信信号)とフィードバック信号との誤差の改善量が所定の閾値未満(又は、「所定の閾値以下」でもよい)となったか否かで収束したか否かを判定し(ステップS11)、収束していないことを判定した場合には、ステップS10の処理へ戻る。
一方、収束したことを判定した場合には、前記した誤差が十分に小さくなったか否かを判定し(ステップS12)、誤差が十分に小さくなっていることを判定した場合には、誤差の劣化を検出するまで更新を停止する(ステップS16)。
【0068】
一方、誤差が十分に小さくなっていない(誤差がまだ残っている)ことを判定した場合には、遅延選択部34の出力をオン状態にして、3サンプル過去までの入力を考慮したメモリPD12を動作させるようにする(ステップS13)。これにより、メモリレスPD11及びメモリPD12が動作し、メモリレスPD11及びメモリPD12の適応更新を行って、メモリレスLUT22、メモリLUT35、メモリLUT38及びメモリLUT41を更新する(ステップS14)。
【0069】
そして、入力側からの入力信号(送信信号)とフィードバック信号との誤差の改善量が所定の閾値未満(又は、「所定の閾値以下」でもよい)となったか否かで収束したか否かを判定し(ステップS15)、収束していないことを判定した場合には、ステップS14の処理へ戻る。
一方、収束したことを判定した場合には、誤差の劣化を検出するまで更新を停止する(ステップS16)。
【0070】
なお、本例のメモリPD12では、3サンプル前の信号まで考慮した場合を示したが、更に過去の信号まで考慮する構成では、本例と同様に、更に過去のサンプルまで考慮するように、過去のサンプルを考慮する範囲を広げていって、更新するメモリLUTを増やしていくことが可能である。
【0071】
以上のように、本例のプリディストーション部1を構成するプリディストーション歪補償回路では、入力デジタルI、Q信号に対して、次のような処理部を備えた。
すなわち、メモリレスPD11の処理部として、信号のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を求める電力検出部21、信号のレベルに応じて補正値を出力するメモリレスLUT22、入力信号と補正値との複素乗算を行う複素乗算部23を備えた。
また、メモリPD12の処理部として、複素乗算部23からの出力のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を求める電力検出部31、メモリ効果の補償において過去の入力を考慮するサンプル数の範囲を切り替えるために電力検出部31からの出力のオン/オフを切り替える複数の遅延選択部32、33、34、各遅延選択部32、33、34からの出力値に応じて補正値を出力する複数のメモリLUT35、38、41、各メモリLUT35、38、41からの出力をサンプル単位で遅延させる複数の遅延部36、39、42、各メモリLUT35、38、41からの出力と各遅延部36、39、42からの出力との差分を計算する複数の差分計算部37、40、43、各差分計算部37、40、43からの出力を合成する補償データ加算部44、複素乗算部23からの出力と補償データ加算部44からの出力との複素乗算を行う複素乗算部45を備えた。
【0072】
また、本例のプリディストーション部1の外部(内部でもよい)には歪補償制御部2が設けられており、歪補償制御部2は、入力側からの入力信号とフィードバック信号との誤差を小さくするようにメモリレスLUT22及び各メモリLUT35、38、41を更新する機能や、この誤差の大きさに応じて各遅延選択部32、33、34のオン/オフの指定を行う機能を有している。
また、本例のプリディストーション部1における歪補償制御の手法(方法)では、誤差の収束状態と収束値に応じて、動作させる回路を増やしていく制御を行う。
【0073】
本例のプリディストーション歪補償機能付き増幅装置では、上記のような本例のプリディストーション部1及び歪補償制御部2を備え、更に、次のような処理部を備えた。
すなわち、デジタルベースバンド信号に対して、帯域制限、キャリア毎に希望のキャリア周波数ヘのデジタル直交変調を行い、マルチキャリア加算を行うデジタル変調部201、デジタル信号をアナログ信号へ変換するD/Aコンバータ部203、RF周波数への周波数変換を行う周波数変換部(アップコンバート部)204、RF信号を増幅する増幅部205、アンテナ206、信号の一部を抽出する方向性結合器211、増幅部205からの出力の一部をフィードバック信号としてIF周波数への周波数変換を行う周波数変換部(ダウンコンバート部)207、アナログ信号をデジタル信号へ変換するA/Dコンバータ部208、送信データとフィードバックデータとの間のレベル、遅延、位相差を調整する信号同期部209を備えた。
【0074】
従って、本例のプリディストーション部1では、最初から全てのLUTを更新するのではなく、必要に応じて考慮する過去のサンプル数を増やしていくことにより、例えば、更新しなくても十分に歪を補償することができる場合には、必要のないLUTは更新されず、また、歪の補償量が足りない場合には、新たなブロック(処理部)を動作させて歪補償を行っていくため、効率良く歪補償を行うことができる。
【0075】
例えば、従来手法では、歪補償に使用する回路は固定であり、各LUTの補正パラメータのみを適応制御していたが、本例では、歪補償の対象となる増幅器などによって、メモリPD12で考慮する過去の入力サンプル数の範囲を変化させながら収束させることにより、メモリPD12において考慮すべき過去の入力の範囲を適切に設定することができ、効率的な歪補償を行えることから、収束速度や歪補償精度を向上させることが可能となる。
【0076】
なお、本例のプリディストーション歪補償機能付き増幅装置(歪補償装置の機能を含むもの)では、図1に示される構成に関し、電力検出部21の機能によりレベル検出手段が構成されており、メモリレスLUT22の機能によりテーブル手段が構成されており、複素乗算部23の機能により歪付与手段が構成されており、これらの機能によりメモリレスプリディストーション手段が構成されている。また、本例では、電力検出部31の機能によりレベル検出手段が構成されており、各遅延選択部32〜34の機能により遅延選択手段が構成されており、各メモリLUT35、38、41の機能によりテーブル手段が構成されており、各遅延部(1サンプル遅延部36、2サンプル遅延部39、3サンプル遅延部42)の機能により遅延手段が構成されており、各差分計算部37、40、43の機能により差分検出手段が構成されている。また、本例では、3段の遅延処理部について、各段の遅延選択部32、33、34、メモリLUT35、38、41、遅延部36、39、42、差分計算部37、40、43から各段の遅延処理部が構成されている。また、本例では、補償データ加算部44の機能により加算手段が構成されており、複素乗算部45の機能により歪付与手段が構成されており、また、これらの機能と、レベル検出手段(電力検出部31の機能)、3段の遅延処理部の機能により、メモリプリディストーション手段が構成されている。また、本例では、歪補償制御部2の機能により、各LUT22、35、38、41の更新制御手段や、各遅延選択部32、33、34の遅延選択制御手段が構成されている。
【実施例2】
【0077】
本発明の第2実施例を説明する。
第2実施例では、図6に示されるプリディストーション部401に対応した構成例を示す。
図3には、本発明の一実施例に係るプリディストーション部101(図4に示されるプリディストーション部202に対応するもの)の構成例を示してあり、また、デジタル変調部201、D/Aコンバータ部203、歪補償制御部102(図4に示される歪補償制御部210に対応するもの)を示してある。
【0078】
本例のプリディストーション部101は、メモリレスPD111、メモリPD112、電力検出部121、遅延選択部(第1の遅延選択部)122、遅延選択部(第2の遅延選択部)123、遅延選択部(第3の遅延選択部)124、補償データ加算部132、複素乗算部133を備えている。
メモリレスPD111は、歪補償テーブルを構成するメモリレスLUT125を備えている。
メモリPD112は、1サンプル遅延部126、歪補償テーブルを構成するメモリLUT(第1のメモリLUT)127、2サンプル遅延部128、歪補償テーブルを構成するメモリLUT(第2のメモリLUT)129、3サンプル遅延部130、歪補償テーブルを構成するメモリLUT(第3のメモリLUT)131を備えている。
【0079】
本例のプリディストーション部101における動作の一例を示す。
デジタル変調部201から入力されたI、Qデジタルデータの信号(I成分及びQ成分の信号)が、電力検出部121、複素乗算部133に入力される。
電力検出部121は、入力されたI、Qデジタルデータの信号に対して、信号のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を計算し、その結果を遅延選択部122、メモリレスLUT125へ出力する。
【0080】
メモリレスPD111では、メモリレスLUT125は、電力検出部121で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部132へ出力する。これにより、AM/AM特性、AM/PM特性の逆特性を与える。ここで、メモリレスLUT125は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
【0081】
遅延選択部122では、入力データ(電力検出部121で計算された信号レベル)を以降のブロック(処理部)に通すか否かを制御する。この制御の設定は、歪補償制御部102から遅延選択部122に指定される。具体的には、遅延選択部122は、過去の入力を考慮する場合(オン(ON)の場合)には、入力データ(電力検出部121で計算された信号レベル)をそのまま後段の遅延選択部123、1サンプル遅延部126へ出力し、また、過去の入力を全く考慮しない場合には、0を後段の遅延選択部123、1サンプル遅延部126へ出力することによって、メモリPD112全体をオフ(OFF)状態にする。
【0082】
遅延選択部123では、入力データ(遅延選択部122から入力された電力検出部121で計算された信号レベル)を以降のブロック(処理部)に通すか否かを制御する。この制御の設定は、歪補償制御部102から遅延選択部123に指定される。具体的には、遅延選択部123は、2サンプル以上の過去の入力を考慮する場合(オンの場合)には、入力データ(電力検出部121で計算された信号レベル)をそのまま後段の遅延選択部124、2サンプル遅延部128へ出力し、また、2サンプル以上の過去の入力を考慮しない場合には、0を後段の遅延選択部124、2サンプル遅延部128へ出力することによって、メモリPD112において2サンプル以上の過去の入力に依存するブロック(処理部)をオフ状態にする。
【0083】
遅延選択部124では、入力データ(遅延選択部123から入力された電力検出部121で計算された信号レベル)を以降のブロック(処理部)に通すか否かを制御する。この制御の設定は、歪補償制御部102から遅延選択部124に指定される。具体的には、遅延選択部124は、3サンプル以上の過去の入力を考慮する場合(オンの場合)には、入力データ(電力検出部121で計算された信号レベル)をそのまま後段の3サンプル遅延部130へ出力し、また、3サンプル以上の過去の入力を考慮しない場合には、0を後段の3サンプル遅延部130へ出力することによって、メモリPD112において3サンプル以上の過去の入力に依存するブロック(処理部)をオフ状態にする。
【0084】
メモリPD112では、1サンプル遅延部126は、遅延選択部122からの入力信号(入力データ)を1サンプル分遅延させて、メモリLUT127へ出力する。
また、メモリLUT127は、1サンプル遅延部126から入力された電力検出部121で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部132へ出力する。ここで、メモリLUT127は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
また、2サンプル遅延部128は、遅延選択部123からの入力信号(入力データ)を2サンプル分遅延させて、メモリLUT129へ出力する。
また、メモリLUT129は、2サンプル遅延部128から入力された電力検出部121で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部132へ出力する。ここで、メモリLUT129は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
また、3サンプル遅延部130は、遅延選択部124からの入力信号(入力データ)を3サンプル分遅延させて、メモリLUT131へ出力する。
また、メモリLUT131は、3サンプル遅延部130から入力された電力検出部121で計算された信号レベルに対応した補正値(I成分及びQ成分からなるもの)を補償データ加算部132へ出力する。ここで、メモリLUT131は、信号レベルと補正値との対応をメモリに記憶している。
これらにより、メモリ効果の逆特性を与える。
【0085】
なお、本例のメモリPD112では、3サンプル前の信号まで考慮した場合を示したが、例えば、デジタル回路内に遅延選択部、遅延部、メモリLUTを増やすことによって、更に過去の信号まで考慮して歪補償を行うことができる。
【0086】
補償データ加算部132は、各LUT125、127、129、131から入力された補正値を加算して、その結果(I成分及びQ成分からなるもの)を複素乗算部133へ出力する。
複素乗算部133は、デジタル変調部201からの入力信号と補償データ加算部132からの入力信号(歪の補償用データ)との複素乗算を行うことで、メモリレスとメモリ効果の歪補償を行い、その結果の信号(I成分及びQ成分からなるもの)をD/Aコンバータ部203へ出力する。
【0087】
ここで、各LUT125、127、129、131の補正パラメータの設定や更新や、各遅延選択部122、123、124のオン/オフの設定は、歪補償制御部102により行われる。
具体的には、メモリレスPD111のメモリレスLUT125やメモリPD112のメモリLUT127、129、131の記憶内容(信号レベルと補正値との対応)が、それぞれ、歪補償制御部102により、入力側からの入力信号とフィードバック信号との誤差が小さくなるように、適応的に更新される。
また、各遅延選択部122、123、124のオン/オフの状態が、それぞれ、歪補償制御部102により設定される。
【0088】
ここで、本例のプリディストーション部101において、歪補償制御部102により行われる処理の手順の一例としては、例えば、図2に示されるフローチャートと同様なものを用いることができる。
【0089】
以上のように、本例のプリディストーション部101を構成するプリディストーション歪補償回路では、入力デジタルI、Q信号に対して、次のような処理部を備えた。
すなわち、信号のレベル(例えば、電力値又は振幅値)を求める電力検出部121、信号のレベルに応じて補正値を出力するメモリレスLUT125、メモリ効果の補償において過去の入力を考慮するサンプル数の範囲を切り替えるために電力検出部121からの出力のオン/オフを切り替える複数の遅延選択部122、123、124、各遅延選択部122、123、124からの出力をサンプル単位で遅延させる複数の遅延部126、128、130、各遅延部126、128、130からの出力値に応じて補正値を出力する複数のメモリLUT127、129、131、メモリレスLUT125からの出力と各メモリLUT127、129、131からの出力を合成する補償データ加算部132、デジタル変調部201からの出力と補償データ加算部132からの出力との複素乗算を行う複素乗算部133を備えた。
【0090】
また、本例のプリディストーション部101の外部(内部でもよい)には歪補償制御部102が設けられており、歪補償制御部102は、入力側からの入力信号とフィードバック信号との誤差を小さくするようにメモリレスLUT125及び各メモリLUT127、129、131を更新する機能や、この誤差の大きさに応じて各遅延選択部122、123、124のオン/オフの指定を行う機能を有している。
また、本例のプリディストーション部101における歪補償制御の手法(方法)では、誤差の収束状態と収束値に応じて、動作させる回路を増やしていく制御を行う。
【0091】
本例のプリディストーション歪補償機能付き増幅装置では、上記のような本例のプリディストーション部101及び歪補償制御部102を備え、更に、次のような処理部を備えた。
すなわち、デジタルベースバンド信号に対して、帯域制限、キャリア毎に希望のキャリア周波数ヘのデジタル直交変調を行い、マルチキャリア加算を行うデジタル変調部201、デジタル信号をアナログ信号へ変換するD/Aコンバータ部203、RF周波数への周波数変換を行う周波数変換部(アップコンバート部)204、RF信号を増幅する増幅部205、アンテナ206、信号の一部を抽出する方向性結合器211、増幅部205からの出力の一部をフィードバック信号としてIF周波数への周波数変換を行う周波数変換部(ダウンコンバート部)207、アナログ信号をデジタル信号へ変換するA/Dコンバータ部208、送信データとフィードバックデータとの間のレベル、遅延、位相差を調整する信号同期部209を備えた。
【0092】
従って、本例のプリディストーション部101では、最初から全てのLUTを更新するのではなく、必要に応じて考慮する過去のサンプル数を増やしていくことにより、例えば、更新しなくても十分に歪を補償することができる場合には、必要のないLUTは更新されず、また、歪の補償量が足りない場合には、新たなブロック(処理部)を動作させて歪補償を行っていくため、効率良く歪補償を行うことができる。
【0093】
例えば、従来手法では、歪補償に使用する回路は固定であり、各LUTの補正パラメータのみを適応制御していたが、本例では、歪補償の対象となる増幅器などによって、メモリPD112で考慮する過去の入力サンプル数の範囲を変化させながら収束させることにより、メモリPD112において考慮すべき過去の入力の範囲を適切に設定することができ、効率的な歪補償を行えることから、収束速度や歪補償精度を向上させることが可能となる。
【0094】
なお、本例のプリディストーション歪補償機能付き増幅装置(歪補償装置の機能を含むもの)では、図3に示される構成に関し、電力検出部121の機能によりレベル検出手段が構成されている。また、本例では、メモリレスLUT125の機能によりテーブル手段が構成されており、この機能と、レベル検出手段(電力検出部121の機能)によりメモリレスプリディストーション手段が構成されている。また、本例では、各遅延選択部122〜124の機能により遅延選択手段が構成されており、各遅延部(1サンプル遅延部126、2サンプル遅延部128、3サンプル遅延部130)の機能により遅延手段が構成されており、各メモリLUT127、129、131の機能によりテーブル手段が構成されている。また、本例では、3段の遅延処理部について、各段の遅延選択部122、123、124、遅延部126、128、130、メモリLUT127、129、131から各段の遅延処理部が構成されている。また、本例では、レベル検出手段(電力検出部121の機能)、3段の遅延処理部の機能により、メモリプリディストーション手段が構成されている。また、本例では、補償データ加算部132の機能により加算手段が構成されており、複素乗算部133の機能により歪付与手段が構成されている。また、本例では、歪補償制御部102の機能により、各LUT125、127、129、131の更新制御手段や、各遅延選択部122、123、124の遅延選択制御手段が構成されている。
【0095】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0096】
1、101、202、301、401・・プリディストーション部、 2、102、210、311・・歪補償制御部、 11、111、312、411・・メモリレスPD、 12、112、412・・メモリPD、 21、31、121、321、331、421・・電力検出部、 22、125、322、422・・メモリレスLUT、 23、45、133、323、335、430・・複素乗算部、 32〜34、122〜124・・遅延選択部、 35、38、41、127、129、131、332、424、426、428・・メモリLUT、 36、126、333、423・・1サンプル遅延部、 37、40、43、334・・差分計算部、 39、128、425・・2サンプル遅延部、 42、130、427・・3サンプル遅延部、 44、132、429・・補償データ加算部、 201・・デジタル変調部、 203・・D/Aコンバータ部、 204、207・・周波数変換部、 205・・増幅部、 206・・アンテナ、 208・・A/Dコンバータ部、 209・・信号同期部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅器で発生する歪をプリディストーション方式により補償するプリディストーション方式の歪補償装置において、
AM/AM特性及びAM/PM特性の歪補償に関して、入力信号のレベルの値に応じた歪を当該入力信号に与えるメモリレスプリディストーション手段を有するとともに、
メモリ効果の歪補償に関して、入力信号のレベルの値に応じた歪を当該入力信号に与えるメモリプリディストーション手段として、1段以上の遅延処理部と、全ての遅延処理部からの出力を加算する加算手段と、当該加算手段による加算結果に応じた歪を前記入力信号に与える歪付与手段と、を有し、
前記遅延処理部のそれぞれは、前記入力信号のレベルの値を出力するか否かが切り替え可能である遅延選択手段と、当該遅延選択手段から出力されたレベルの値に応じた補正値を出力するテーブル手段と、当該テーブル手段から出力された補正値をサンプル単位の所定時間だけ遅延させて出力する遅延手段と、前記テーブル手段から出力された補正値と前記遅延手段から出力された補正値との差分を検出して当該差分を前記加算手段へ出力する差分検出手段と、を備え、
前記遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延選択手段は、次段の遅延処理部がある場合には、前記入力信号のレベルの値を出力する状態において、当該次段の遅延処理部に備えられた遅延選択手段へ前記入力信号のレベルの値を出力し、
前記遅延処理部が2段以上ある場合には、前記遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延手段は、前記遅延処理部のそれぞれ毎に異なる時間だけ前記テーブル手段から出力された補正値を遅延させる、
ことを特徴とするプリディストーション方式の歪補償装置。
【請求項2】
増幅器で発生する歪をプリディストーション方式により補償するプリディストーション方式の歪補償装置において、
AM/AM特性及びAM/PM特性の歪補償に関して、入力信号のレベルの値に応じた補正値を出力するメモリレスプリディストーション手段と、
メモリ効果の歪補償に関して、前記入力信号のレベルの値に応じた補正値を出力するメモリプリディストーション手段を構成する1段以上の遅延処理部と、
前記メモリレスプリディストーション手段から出力された補正値及び前記メモリプリディストーション手段を構成する全ての遅延処理部から出力された補正値を加算する加算手段と、
前記加算手段による加算結果に応じた歪を前記入力信号に与える歪付与手段と、を有し、
前記遅延処理部のそれぞれは、前記入力信号のレベルの値を出力するか否かが切り替え可能である遅延選択手段と、当該遅延選択手段から出力されたレベルの値をサンプル単位の所定時間だけ遅延させて出力する遅延手段と、当該遅延手段から出力されたレベルの値に応じた補正値を出力するテーブル手段と、を備え、
前記遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延選択手段は、次段の遅延処理部がある場合には、前記入力信号のレベルの値を出力する状態において、当該次段の遅延処理部に備えられた遅延選択手段へ前記入力信号のレベルの値を出力し、
前記遅延処理部が2段以上ある場合には、前記遅延処理部のそれぞれに備えられた遅延手段は、前記遅延処理部のそれぞれ毎に異なる時間だけ前記遅延選択手段から出力されたレベルの値を遅延させる、
ことを特徴とするプリディストーション方式の歪補償装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−135143(P2011−135143A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290212(P2009−290212)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】