説明

プリフォーム用吸着ヘッド、及びこれを用いたプリフォーム搬送装置並びにプリフォーム検査装置

【課題】比較的簡素な構成で全体を上下方向に移動させることなくプリフォーム内に一部を挿入した状態でそのプリフォームを保持したり、その保持を解除したりすることが可能なプリフォーム用吸着ヘッドを提供する。
【解決手段】プリフォーム100の口部103を真空吸着することによりプリフォーム100を吸引保持する吸着ヘッド20であって、下端にはプリフォーム100の口部103と対向する下面21bに開口する突出部収容穴21aが、内部には突出部収容穴21aと連通する吸引路32がそれぞれ設けられたロータ21と、吸引路32と接続されるガス通路36の一端が開口し、かつ吸引保持時にプリフォーム100内に挿入される突出部22cを下端に有し、突出部22cがロータ21の下面21bより突出する突出位置と突出部22cがロータ21内に後退する後退位置との間で移動可能なように突出部収容穴21aに設けられる可動部材22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET(ポリエチレンテレフタレート)製の容器、いわゆるペットボトルの予備成形品であるプリフォームの口部を真空吸着することによりそのプリフォームを吸引保持するプリフォーム用吸着ヘッド、及びこれを用いたプリフォーム搬送装置並びにプリフォーム検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PET製の容器(ペットボトル)は、プリフォームと呼ばれるものに予備成形され、そのプリフォームを加熱成形することによってボトル状に成形される。一般に、このプリフォームは、底部が球面状であるとともに口部が平坦であり、かつ口部の下の首部につばが設けられた有底筒状の形状を有している。このプリフォームを検査する検査装置として、プリフォームの口部を吸着ヘッドで真空吸着して、吸着ヘッドを自転させながら公転させるメインロータを備え、自転しているプリフォームの胴部をカメラで撮影して検査する検査装置において、吸着ヘッドの下面に下方に突出する凸部が設けられ、この凸部をプリフォームの口部に係合させ、かつその凸部の下端に開口している連通孔から吸引を行うことによりプリフォームを吸着ヘッドに保持させるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3859323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査装置に設けられているメインロータの吸着ヘッドは、凸部が下面に突出しているため、吸着ヘッドにプリフォームを保持させる際に凸部がプリフォーム内に挿入されるように吸着ヘッド全体を上下方向に移動させる必要がある。吸着ヘッドで保持していたプリフォームを下流の搬送装置に搬出する際も同様に、この下流の搬送装置にプリフォームが移動したタイミングで凸部がプリフォームから抜けるように吸着ヘッド全体を昇降させる必要がある。このように特許文献1のメインロータでは、プリフォームの受け渡し時に吸着ヘッド全体を昇降させるための機構が必要であり、装置の構造が複雑になる。
【0005】
そこで、本発明は、比較的簡素な構成で全体を上下方向に移動させることなくプリフォーム内に一部を挿入した状態でそのプリフォームを保持したり、その保持を解除したりすることが可能なプリフォーム用吸着ヘッド、及びこれを用いたプリフォーム搬送装置並びにプリフォーム検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリフォーム用吸着ヘッドは、プリフォーム(100)の口部(103)を真空吸着することによりそのプリフォームを吸引保持する吸着ヘッド(20)であって、下端にはプリフォームの口部と対向する下面(21b)に開口する突出部収容穴(21a)が、内部には前記突出部収容穴と連通する吸引路(32)がそれぞれ設けられたヘッド本体(21)と、前記吸引路と接続されるガス通路(36)の一端が開口し、かつ吸引保持時にプリフォーム内に挿入される突出部(22c)を下端に有し、前記突出部が前記ヘッド本体の下面より突出する突出位置と前記突出部が前記ヘッド本体内に後退する後退位置との間で移動可能なように前記突出部収容穴に設けられる可動部材(22)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明のプリフォーム用吸着ヘッドによれば、突出部がヘッド本体の下面より突出する突出位置とその突出部がヘッド本体内に後退する後退位置との間で可動部材を移動させることができる。そのため、例えば可動部材を後退位置に移動させ、ヘッド本体の下面から突出するものが無い状態にすることで、吸着ヘッドをプリフォームの上方に水平移動させることができる。そして、突出部収容穴の開口部がプリフォームの口部の上方に位置するように吸着ヘッドを水平移動させた後、可動部材を突出位置に移動させることにより突出部をプリフォーム内に挿入することができる。この際に吸引路に吸引力を作用させることにより、吸着ヘッドにプリフォームを吸引保持させることができる。また、可動部材が突出位置にあり、プリフォーム内に突出部が挿入されている状態から可動部材を後退位置に移動させることにより、突出部をプリフォームから取り出すことができるとともにヘッド本体の下面から突出するものを無くすことができる。そして、この際に吸引路への吸引力の作用を停止させることにより、その後は吸着ヘッドを水平移動させるのみで吸着ヘッドをプリフォームの上方から移動させることができる。このように、本発明の吸着ヘッドによれば、比較的簡素な構成で全体を上下方向に移動させることなく、プリフォーム内に突出部を挿入した状態でそのプリフォームを保持したり、その保持を解除したりすることができる。
【0008】
本発明のプリフォーム用吸着ヘッドの一形態においては、前記可動部材が前記後退位置に移動するように前記可動部材を付勢する付勢手段(23)と、保持対象のプリフォームを吸引保持させるために前記吸引路に作用させた吸引力を利用して前記可動部材を前記付勢手段に抗して前記突出位置に移動させる駆動手段(S1、S2)と、を備えていてもよい。この場合、吸着ヘッドにプリフォームを吸引保持させる必要がないときは付勢手段で可動部材を後退位置に移動でき、吸着ヘッドにプリフォームを吸引保持させるべく吸引路に吸引力を作用させたときにはその吸引力を利用して可動部材を突出位置に移動させることができる。また、吸引路に作用させた吸引力を利用して可動部材を突出位置に移動させるので、新たに可動部材を駆動するためのモータやアクチュエータなどの駆動源を設ける必要がない。そのため、コストを低減できる。
【0009】
この形態においては、前記突出部収容穴が中空円筒状に形成されるとともに、前記可動部材には半径方向外周に突出して前記突出部収容穴を上下方向に仕切るフランジ部(22b)が設けられ、前記突出部収容穴の内部には、前記フランジ部の上面と前記突出部収容穴の底部とによって前記フランジ部より上側に形成され、かつ外部と連通する空気導入室(S1)と、前記可動部材の側面、前記フランジ部の下面、及び前記突出部収容穴の内面によって前記フランジ部より下側に形成され、かつ前記吸引路と接続される減圧室(S2)と、が設けられ、前記駆動手段は、前記減圧室及び前記空気導入室であってもよい。この場合、吸引路に吸引力を作用させると減圧室から空気が吸引されるので、減圧室の圧力が低下する。一方、空気導入室は外部と連通しているので、空気導入室の圧力は大気圧に維持される。そのため、この減圧室の圧力と空気導入室の圧力との差によって可動部材を突出位置に移動させることができる。この形態では、吸着ヘッドの外部に駆動手段を設ける必要がないので、吸着ヘッドをコンパクトにすることができる。
【0010】
また、前記ガス通路の他端が前記減圧室を形成する前記可動部材の側面に開口し、前記減圧室は、前記ガス通路と前記吸引路との間の空気吸引経路を形成していてもよい。この場合、減圧室の他に吸引路とガス通路とを接続する通路をヘッド本体に設ける必要がない。そのため、吸着ヘッドの構造をさらに簡略化できる。また、製造する際の加工の手間を軽減できる。
【0011】
本発明のプリフォーム用吸着ヘッドの一形態において、前記突出部は、先端に向かうに従って外径が漸次減少する円錐状に形成されていてもよい。このように突出部を円錐状に形成することにより、プリフォーム内に突出部を速やかに挿入することができる。
【0012】
本発明のプリフォーム用吸着ヘッドの一形態において、前記ガス通路の一端は、前記突出部の先端に開口していてもよい。この場合、プリフォーム内の空気を速やか吸引できるので、吸着ヘッドにプリフォームを迅速に吸引保持させることができる。
【0013】
本発明のプリフォーム搬送装置は、所定の搬送経路に沿ってプリフォームを搬送するプリフォーム搬送装置において、上述したプリフォーム用吸着ヘッド(20)と、前記吸着ヘッドを前記所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段(13、14)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0014】
本発明のプリフォーム搬送装置によれば、上述した本発明の吸着ヘッドを備えるので、少なくとも吸着ヘッド全体を上下方向に移動させることなく吸着ヘッドにプリフォームを吸引保持させたり、その保持を解除させたりすることができる。これにより、この際に吸着ヘッド全体を上下方向に移動させるための機構を無くすことができるので、装置の構造を簡略化することができる。従って、比較的簡素な構成で、吸着ヘッドにプリフォームを吸引保持させたり、その保持を解除させたりすることができる。
【0015】
本発明のプリフォーム検査装置は、所定の搬送経路に沿ってプリフォームを搬送しつつ搬送中のプリフォームを撮像し、得られた画像に基づいてそのプリフォームの異常の有無を検査するプリフォーム検査装置において、上述したプリフォーム用吸着ヘッド(20)と、前記吸着ヘッドを前記所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段(13、14)とを有するプリフォーム搬送装置(10)と、前記プリフォーム搬送装置にて搬送されているプリフォームを撮像する撮像手段(5)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0016】
本発明のプリフォーム検査装置によれば、上述した本発明の吸着ヘッドを有するプリフォーム搬送装置を備えるので、比較的簡素な構成で吸着ヘッド全体を上下方向に移動させることなく吸着ヘッドにプリフォームを吸引保持させたり、その保持を解除させたりすることができる。そのため、例えばこのプリフォーム搬送装置に搬入されてから搬出されるまでの間、プリフォームをほぼ同じ高さで搬送することができる。この場合、撮像手段によって撮像可能な搬送区間が制限されるなどプリフォームの検査に関して無駄な制約が課されることを抑制できる。
【0017】
本発明のプリフォーム検査装置の一形態においては、口部が上を向いた状態でプリフォームを支持してそのプリフォームを前記プリフォーム搬送装置に供給する供給装置(3)をさらに備え、前記移動手段は、前記供給装置に支持されているプリフォームの口部に前記ヘッド本体の下面が接触せず、かつ前記可動部材を前記突出位置に移動させたときに前記突出部が前記供給装置に支持されているプリフォーム内に挿入される所定高さで前記吸着ヘッドが前記所定の搬送経路に沿って移動するように前記吸着ヘッドを支持してもよい。吸着ヘッドをこのような所定高さで移動手段に支持させることにより、可動部材の移動のみで供給装置のプリフォームに突出部を挿入してそのプリフォームを吸引保持することができる。
【0018】
本発明のプリフォーム検査装置の一形態において、前記撮像手段は、前記吸着ヘッドに吸引保持されているプリフォームの口部を撮像し、前記吸着ヘッドの前記突出部の外面の色が、光を反射する色であってもよい。一般にプリフォームは透明であるため、このような色の突出部をプリフォームの口部に挿入することにより、この口部の反射光を得ることができる。そのため、撮像手段によるプリフォームの口部の撮像を適切に行うことができる。
【0019】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
以上に説明したように、本発明によれば、突出部がヘッド本体の下面より突出する突出位置とその突出部がヘッド本体内に後退する後退位置との間で移動可能な可動部材をヘッド本体に設けたので、比較的簡素な構成で吸着ヘッド全体を上下方向に移動させることなく、プリフォーム内に突出部を挿入した状態でそのプリフォームを吸着ヘッドに保持させたり、その保持を解除させたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の一形態に係るプリフォーム検査装置を示している。このプリフォーム検査装置1は、図2に一例を示したプリフォーム100に対して検査を行うものである。プリフォーム100は、PET製の容器いわゆるペットボトルの予備成形品として知られる周知のものである。図2に示したようにプリフォーム100は、有底筒状であり、球面状の底部101を有する胴部102を備えている。胴部102の上端には口部103が開口しており、その口部103の下の首部104にはつば105が設けられている。
【0022】
プリフォーム検査装置1は、このプリフォーム100を所定の搬送経路に沿って搬送しつつその搬送中のプリフォーム100に対して種々の検査を行うものである。検査としては、例えばプリフォーム100の外観の異常の有無を検査する外観検査が行われる。プリフォーム検査装置1は、プリフォーム100を所定経路に沿って搬送させるために搬送方向上流側から順に、スクリュー式搬送装置2、供給装置としての入口スターホイール式搬送装置3、メインロータ装置10、及び出口スターホイール式搬送装置4を備えている。また、プリフォーム検査装置1は、搬送されているプリフォーム100の外観を撮像する撮像手段としての複数のカメラ5と、メインロータ装置10にて搬送されているプリフォーム100をメインロータ装置10の内周側から照明する照明装置6とを備えている。各カメラ5は、プリフォーム100の互いに異なる部分をミラー5aを介して撮像するように設けられている。これら複数のカメラ5で撮像する部分としては、胴部102の側面、口部103及び首部104の側面などが設定される。出口スターホイール式搬送装置4から排出されたプリフォーム100は、搬出コンベア7にて下流の工程に搬送される。
【0023】
入口スターホイール式搬送装置3は、スターホイール3aの外周に等間隔で設けられた複数のポケット3b(図4参照)にプリフォーム100を取り込んで搬送する周知のものである。この際、プリフォーム100は口部103が上を向いた状態でスターホイール3aに支持される。出口スターホイール式搬送装置4も同様の搬送装置であり、スターホイール4aの外周に等間隔で設けられた複数のポケット(不図示)にプリフォーム100を取り込んで搬送する周知のものである。スクリュー式搬送装置2は、スクリュー2aによってプリフォーム100同士の間隔を下流の入口スターホイール式搬送装置3のポケット間のピッチに揃える周知のものである。そのため、これらの搬送装置2、3、4についての詳細な説明は省略する。また、プリフォーム検査装置1による外観検査の方法は、複数のカメラ5で撮像したプリフォーム100の各部の画像に基づいてプリフォーム100の外観の異常の有無を検査する周知の検査方法でよいため、詳細な説明は省略する。
【0024】
図3及び図4は、メインロータ装置10を示した図である。なお、図3はメインロータ装置10の断面を示し、図4はメインロータ装置10の斜視図を示している。メインロータ装置10は、本発明の一形態に係る吸着ヘッド20でプリフォーム100を吸引保持し、この吸着ヘッド20で保持したプリフォーム100を自転させつつ所定の搬送経路に沿って搬送するものである。図3に示したようにメインロータ装置10は、床Fに固定される架台11と、架台11に回転自在に支持される回転軸12と、回転軸12と同軸に設けられて回転軸12と一体に回転する第1ディスク13と、架台10に回転不可に固定される第2ディスク14と、第2ディスク14に支持部材15を介して支持される複数の吸着ヘッド20とを備えている。第1ディスク13の外周には周方向に等間隔で全周に亘って上下方向に貫通する貫通孔13aが設けられており、吸着ヘッド20はこの貫通孔13aに回転可能に挿入されている。支持部材15は、吸着ヘッド20を回転自在に支持している。支持部材15の側面にはローラ15aが設けられており、このローラ15aは第2ディスク14の外周に全周に亘って設けられたレール14a上を走行する。レール14aは、ローラ15aが走行する走行面が床Fから同じ高さになるように第2ディスク14に設けられている。
【0025】
また、メインロータ装置10は、吸着ヘッド20によるプリフォーム100の保持及びその保持の解除を切り替えるための切替弁16を備えている。切替弁16は、吸引源としての真空ポンプ(不図示)と吸着ヘッド20との間の空気吸引経路の途中に設けられ、メインロータ装置10でプリフォーム100を搬送すべき区間において吸着ヘッド20に吸引力が作用するように真空ポンプと吸着ヘッド20との接続及び遮断を切り替える周知のものである。そのため、詳細な説明は省略する。
【0026】
図5を参照して吸着ヘッド20について詳しく説明する。なお、図5は吸着ヘッド20の一部を拡大して示した図である。図5に示したように吸着ヘッド20は、ヘッド本体としてのロータ21と、ロータ21の下端に設けられ、ロータ21の下面21bに開口する中空円筒状の突出部収容穴21a内に上下方向に移動可能に挿入される可動部材22と、可動部材22を上方に付勢する付勢手段としてのスプリング23とを備えている。図5に示したように突出部収容穴21aはロータ21と同軸に形成される。そのため、ロータ21と可動部材22とは同軸に設けられ、可動部材22の下端がロータ21の下面21bの中央部に配置される。また、図5から明らかなようにロータ21の下面21bがプリフォーム100の口部103と対向する吸着ヘッド20の下面となる。
【0027】
ロータ21は、軸線CL回りに回転可能なように支持部材15に支持されるロータ軸24と、ロータ軸24の下端にロータ軸24と一体回転するように取り付けられるフランジ部25と、フランジ部25の下面を覆うように設けられる円盤状の蓋部26と、蓋部26の下面に取り付けられ、中心部に可動部材22が挿入される挿入孔27が設けられる円筒状のケース部28とを備えている。ロータ軸24とフランジ部25との間にはこれらの隙間を介して空気が吸引されないようにOリング24aが設けられている。これらロータ軸24、フランジ部25、蓋部26、及びケース部28は、それぞれステンレス鋼などの金属製である。図4に示したようにロータ軸24、フランジ部25、蓋部26、及びケース部28は軸線CLと同軸に設けられる。また、フランジ部25、蓋部26、及びケース部28のそれぞれの外径は同じである。蓋部26及びケース部28は、周方向に所定の間隔で設けられる複数(図5では2本のみを示す。)のボルト29でフランジ部25に固定される。このようにケース部28を蓋部26に取り付けることにより、挿入孔27及び蓋部26によって突出部収容穴21aが形成される。図3に示したようにロータ軸24にはロータ21を軸線CL回りに回転させるためのプーリ20aが取り付けられている。プーリ20aは第1ディスク13の回転経路の一部に設けられたベルト8と噛み合い、そのベルトの走行に伴って回転駆動される。
【0028】
ケース部28の挿入孔27には、上方から順に、可動部材22のフランジ部22bの外径とほぼ同じ内径で形成され、その可動部材22のフランジ部22bが挿入される大径部27a、可動部材22と挿入孔27との間に空間が形成されるように可動部材22の胴部22aの外径より大きく、かつ可動部材22のフランジ部22bの外径より小さい内径で形成される空間形成部27b、及び可動部材22の胴部22aの外径とほぼ同じ内径で形成され、可動部材22の胴部22aが挿入される摺動部27cが設けられる。
【0029】
ケース部28の上端には、半径方向に延びてケース部28の内周面と外周面とにそれぞれ開口する空気導入孔30が設けられている。蓋部26の中央には、頭部31aが突出部収容穴21a内に突出するように取り付けられる後退位置調整部材31が設けられる。図5に示したように、後退位置調整部材31の頭部31aの高さは、可動部材22がスプリング23で上方に付勢され、可動部材22の上面が後退位置調整部材31と当接しているときに、可動部材22の下端の高さがロータ21の下面21bの高さとほぼ同じになるように設定される。以降、このように可動部材22の下端の高さがロータ21の下面21bの高さとほぼ同じになる位置を可動部材22の後退位置と称することがある。
【0030】
図5に示したようにロータ21は、その内部に吸引路32を備えている。吸引路32は、ロータ軸24の内部に設けられる第1吸引路33、フランジ部25と蓋部26にて形成される第2吸引路34、及びケース部28に設けられる第3吸引路35にて形成される。第1吸引路33は、ロータ軸24の軸線上、すなわち吸着ヘッド20の軸線CL上に形成されている。図3に示したように吸着ヘッド20の上端には第1吸引路33の上端と接続される継ぎ手17が取り付けられ、吸引路32はこの継ぎ手17に接続された配管チューブ18を介して切替弁16と接続される。第2吸引路34は、フランジ部25の下面に半径方向外周に延びるように設けられた溝25aと、蓋部26に上下方向に貫通するように設けられた貫通孔26aとによって形成される。
【0031】
図5に示したように溝25aは、フランジ部25の中心から半径方向外周に延び、蓋部26の貫通孔26aが配置される位置まで、すなわちフランジ部25の外周面に達することがないように設けられる。そのため、蓋部26をフランジ部25の下面に取り付けることにより、溝25aと蓋部26とによって通路を形成することができる。そして、第2吸引路34は、この通路と貫通孔26aとによって形成される。図5に示したように第3吸引路35は、ケース部28の上面から下方に向かって形成され、挿入孔27の空間形成部27bに設けられた溝部27dと連通するように設けられている。そして、これら第1吸引路33、第2吸引路34、及び第3吸引路35を接続することにより、図5に示したようにロータ軸26から突出部収容穴21aの底部を迂回して挿入孔27の空間形成部27bすなわち突出部収容穴21aの側面に開口する吸引路32を形成することができる。
【0032】
可動部材22は、ステンレス鋼などの金属製であり、円柱状の胴部22aと、胴部22aの上端に設けられて半径方向外周に突出する円盤状のフランジ部22bと、胴部22aの下端に設けられる突出部22cとを備えている。胴部22aの直径は、プリフォーム100の口部103の内径より若干小さい。胴部22aの内部には、一端が突出部22cの先端中央に開口し、他端が胴部22aの側面に開口するガス通路36が形成されている。図5に示したように突出部22cは、先端に向かうに従って外径が漸次減少する円錐状に形成されている。突出部22cの外面は、光を反射する色、例えば白色に塗装されている。そのため、この突出部22cをプリフォーム100の口部103に挿入することにより、この口部103の反射光を得ることができる。そのため、カメラ5によるプリフォーム100の口部103の撮像を適切に行うことができる。
【0033】
図5に示したように、この可動部材22を突出部22cが下方を向くようにロータ21の突出部収容穴21a内に挿入することにより、突出部収容穴21aを可動部材22のフランジ部22bで上下方向に仕切り、突出部収容穴21aの内部に空気導入室S1及び減圧室S2を形成することができる。空気導入室S1は、図5に示したように突出部収容穴21aの底部と可動部材22のフランジ部22bの上面とによってこのフランジ部22bの上側に形成される。上述したようにケース部28の上端には空気導入孔30が設けられているため、この空気導入室S1は外部と連通している。一方、減圧室S2は、図5に示したように可動部材22の胴部22aの側面、フランジ部22bの下面、及び空間形成部27bによってフランジ部22bの下側に形成される。上述したように空間形成部27bには吸引路32が開口している。また、可動部材22の胴部22aの側面には、ガス通路36が開口している。そのため、減圧室S2は、吸引路32とガス通路36との間の空気吸引経路となる。また、図5に示したようにスプリング23は、フランジ部22bの下面に設けられた座金37とケース部28の下部とに挟まれるように減圧室S2内に設けられている。
【0034】
この吸着ヘッド20によれば、切替弁16によって吸引路32と真空ポンプとが接続され、吸引路32から空気の吸引が開始されると、減圧室S2から空気が吸い出されて減圧室S2の圧力が低下する、一方、空気導入室S1は外部と連通しているので、大気圧に維持される。そのため、減圧室S2と空気導入室S1との圧力差を利用して可動部材22をスプリング25に抗して下方に移動させることができる。このように可動部材22を駆動することにより、減圧室S2及び空気導入室S1が本発明の駆動手段として機能する。
【0035】
図6は、吸引路32に吸引力を作用させて可動部材22を下方に移動させた状態の吸着ヘッド20を示している。図6に示したように、可動部材22を下方に移動させることにより、可動部材22の突出部22cをロータ21の下面21bよりも下方に突出させることができる。そのため、この突出部22cをプリフォーム100の口部103に挿入し、突出部22cの先端に開口しているガス通路36及び吸引路32を介してプリフォーム100内の空気を吸引することができる。これによりプリフォーム100内の圧力を低下させ、吸着ヘッド20にプリフォーム100を吸引保持させることができる。この際、可動部材22は、そのフランジ部22bが挿入孔27の大径部27aと空間形成部27bと間に形成される段差部27dに当たるまで下方に移動する。上述したように可動部材22が後退位置にあるときは可動部材22の下端の高さとロータ21の下面21bの高さとがほぼ同じである。そのため、可動部材22のフランジ部22bが段差部27dに当たるまで可動部材22が下方に移動したときにロータ21の下面21bから可動部材22が突出する突出量L(図6参照)は、可動部材22が後退位置にあるときの段差部27dと可動部材22の座金37の下面との間の距離G(図5参照)と等しい。そして、この距離Gは、可動部材22のフランジ部22bが段差部27dに当たったときに突出部22cがロータ21の下面21bから突出するように設定される。以降、可動部材22のフランジ部22bが段差部27dに当たる位置を可動部材22の突出位置と称することがある。
【0036】
メインロータ装置10において第2ディスク14は、吸着ヘッド20の下面20bが入口スターホイール式搬送装置3に支持されているプリフォーム100の口部103に接触せず、かつ可動部材22を突出位置に移動させたときに突出部22cが入口スターホイール式搬送装置3に支持されているプリフォーム100内に挿入される所定高さで吸着ヘッド20が移動するように支持部材15を支持する。そして、第1ディスク13が回転軸12と一体に回転することにより、入口スターホイール式搬送装置3からプリフォーム100を受け取る搬入位置P1(図1及び図4参照)及び出口スターホイール式搬送装置4にプリフォーム100を送り出す搬出位置P2(図1参照)が含まれる所定の搬送経路に沿って吸着ヘッド20を移動させる。そのため、第1ディスク13及び第2ディスク14が本発明の移動手段に相当する。
【0037】
次に図4を参照してメインロータ装置10の吸着ヘッド20にプリフォーム100を吸引保持させる手順について説明する。上述したように入口スターホイール式搬送装置3は、口部103が上を向いた状態でプリフォーム100を支持する。吸着ヘッド20にプリフォーム100が吸引保持されていないときは、吸引路32に吸引力が作用していないため、可動部材22は後退位置に移動している。そして、吸着ヘッド20は上述した所定高さに維持された状態で所定の搬送経路に沿って移動しているため、搬入位置P1に到達したタイミングにおいて切替弁16により吸引路32に吸引力を作用させることにより、ロータ21から可動部材22の突出部22cを突出させてこの突出部22cをプリフォーム100内に挿入することができる。この状態においては、プリフォーム100とロータ21の下面21bとの間には隙間があるが、突出部22cをプリフォーム100の口部103に挿入してプリフォーム100の口部103をほぼ閉塞させ、かつ吸引路32及びガス通路36を介してプリフォーム100内の空気を吸引することにより、プリフォーム100内の圧力を低下させることができる。これにより、プリフォーム100を吸着ヘッド20に引き寄せることができるため、吸着ヘッド20にプリフォーム100の口部103を真空吸着させることができる。すなわち、吸着ヘッド20を上下方向に移動させることなく吸着ヘッド20にプリフォーム100を吸引保持させ、入口スターホイール式搬送装置3からプリフォーム100を受け取ることができる。
【0038】
一方、プリフォーム100を吸引保持している吸着ヘッド20が搬出位置P2に移動すると、切替弁16が真空ポンプと吸引路32との接続を遮断するので、吸引路32への吸引力の作用が止められる。これによりプリフォーム100内の圧力が大気圧に近付き吸着ヘッド20によるプリフォーム100の保持が解除される。また、これとほぼ同時に減圧室S2内の圧力が大気圧になるため、スプリング23によって可動部材22が後退位置に駆動される。上述したように後退位置では、可動部材22の下端の高さとロータ21の下面21bの高さとがほぼ同じであるため、ロータ21の下面21bから突出するものを無くすことができる。そのため、吸着ヘッド20を上下方向に移動させることなく出口スターホイール式搬送措置4にプリフォーム100を送り出すことができる。このようにプリフォーム100を搬送することによりメインロータ装置10が本発明のプリフォーム搬送装置に相当する。
【0039】
以上に説明したように、本発明の吸着ヘッド20によれば、吸引路32に作用させた吸引力により可動部材22を後退位置と突出位置との間で移動させることができるので、比較的簡素な構成で吸着ヘッド20全体を上下方向に移動させることなくプリフォーム100内に突出部22cを挿入してそのプリフォーム100を吸引保持したり、その保持を解除したりすることができる。また、吸着ヘッド20を上下方向に移動させる必要がないため、配管チューブ18が殆ど変形しない。そのため、この配管チューブ18の劣化を抑制することができる。可動部材22の駆動は、プリフォーム100を吸引保持するために吸着ヘッド20に作用させた吸引力を利用して行うので、この可動部材22を駆動するために新たにモータやアクチュエータなどの駆動源を設ける必要がない。そのため、コストを低減できる。
【0040】
メインロータ装置10では、吸着ヘッド20をほぼ一定の所定高さで移動させるので、メインロータ装置10の搬送時にプリフォーム100が上下方向に殆ど移動しない。そのため、プリフォーム100の検査を行うことが可能な搬送区間が制限されるなど、プリフォーム100の検査に無駄な制約が課されることを抑制できる。また、このように吸着ヘッド20を一定の高さで移動させることにより吸着ヘッド20を昇降させるための機構が不要となるため、吸着ヘッド20の移動速度を高めることができる。例えば、凹凸が滑らかに接続されたカム面に沿って吸着ヘッド20を移動させることによりこの吸着ヘッド20を昇降させる機構では、吸着ヘッド20の移動速度はカム面に沿って吸着ヘッド20が移動する速度に制限される。一方、本発明のメインロータ装置10では、このような吸着ヘッド20の移動速度の制限がない。そのため、吸着ヘッド20の移動速度を高め、従来よりもプリフォーム100を高速で搬送することができる。
【0041】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、可動部材の後退位置は、可動部材の下端とロータの下面とが同じ高さになる位置に限定されない。後退位置には、ロータの下面から可動部材の下端が突出しない位置が設定されていればよく、例えば可動部材の下端がロータの下面よりも高くなる位置を設定してもよい。
【0042】
可動部材を下方に駆動する駆動手段は、減圧室及び空気導入室に限定されない。例えば、内部が減圧されると縮む駆動機構を吸着ヘッドに設け、この駆動機構に吸引力を作用させて可動部材を下方に移動させてもよい。
【0043】
本発明の吸着ヘッドが適用されるプリフォーム搬送装置は、吸着ヘッドを周方向に移動させるロータ搬送装置に限定されない。本発明の吸着ヘッドは、吸着ヘッドを所定の搬送経路に沿って移動させることにより吸着ヘッドに吸引保持させたプリフォームを搬送する種々の搬送装置に適用してよい。また、本発明の吸着ヘッドは、吸着ヘッドを昇降させるための機構を備えた搬送装置に適用してもよい。この場合、カメラで撮像し易い高さにプリフォームを移動させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一形態に係るプリフォーム検査装置を示す図。
【図2】プリフォームの一例を示す図。
【図3】メインロータ装置の断面を示す図。
【図4】メインロータ装置の斜視図。
【図5】本発明の一形態に係る吸着ヘッドの一部を拡大して示す図。
【図6】吸引路に吸引力が作用している状態の吸着ヘッドを示す図。
【符号の説明】
【0045】
1 プリフォーム検査装置
3 入口スターホイール式搬送装置(供給装置)
5 カメラ(撮像手段)
10 メインロータ装置(プリフォーム搬送装置)
13 第1ディスク(移動手段)
14 第2ディスク(移動手段)
20 吸着ヘッド
21 ロータ(ヘッド本体)
21a 突出部収容穴
21b 下面
22 可動部材
22b フランジ部
22c 突出部
32 吸引路
36 ガス通路
100 プリフォーム
103 口部
S1 空気導入室(駆動手段)
S2 減圧室(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームの口部を真空吸着することによりそのプリフォームを吸引保持する吸着ヘッドであって、
下端にはプリフォームの口部と対向する下面に開口する突出部収容穴が、内部には前記突出部収容穴と連通する吸引路がそれぞれ設けられたヘッド本体と、前記吸引路と接続されるガス通路の一端が開口し、かつ吸引保持時にプリフォーム内に挿入される突出部を下端に有し、前記突出部が前記ヘッド本体の下面より突出する突出位置と前記突出部が前記ヘッド本体内に後退する後退位置との間で移動可能なように前記突出部収容穴に設けられる可動部材と、を備えることを特徴とするプリフォーム用吸着ヘッド。
【請求項2】
前記可動部材が前記後退位置に移動するように前記可動部材を付勢する付勢手段と、保持対象のプリフォームを吸引保持させるために前記吸引路に作用させた吸引力を利用して前記可動部材を前記付勢手段に抗して前記突出位置に移動させる駆動手段と、を備えることを特徴とする請求項1にプリフォーム用吸着ヘッド。
【請求項3】
前記突出部収容穴が中空円筒状に形成されるとともに、前記可動部材には半径方向外周に突出して前記突出部収容穴を上下方向に仕切るフランジ部が設けられ、
前記突出部収容穴の内部には、前記フランジ部の上面と前記突出部収容穴の底部とによって前記フランジ部より上側に形成され、かつ外部と連通する空気導入室と、前記可動部材の側面、前記フランジ部の下面、及び前記突出部収容穴の内面によって前記フランジ部より下側に形成され、かつ前記吸引路と接続される減圧室と、が設けられ、
前記駆動手段は、前記減圧室及び前記空気導入室であることを特徴とする請求項2に記載のプリフォーム用吸着ヘッド。
【請求項4】
前記ガス通路の他端が前記減圧室を形成する前記可動部材の側面に開口し、
前記減圧室は、前記ガス通路と前記吸引路との間の空気吸引経路を形成していることを特徴とする請求項3に記載のプリフォーム用吸着ヘッド。
【請求項5】
前記突出部は、先端に向かうに従って外径が漸次減少する円錐状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリフォーム用吸着ヘッド。
【請求項6】
前記ガス通路の一端は、前記突出部の先端に開口していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリフォーム用吸着ヘッド。
【請求項7】
所定の搬送経路に沿ってプリフォームを搬送するプリフォーム搬送装置において、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリフォーム用吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを前記所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段と、を備えることを特徴とするプリフォーム搬送装置。
【請求項8】
所定の搬送経路に沿ってプリフォームを搬送しつつ搬送中のプリフォームを撮像し、得られた画像に基づいてそのプリフォームの異常の有無を検査するプリフォーム検査装置において、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリフォーム用吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを前記所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段とを有するプリフォーム搬送装置と、
前記プリフォーム搬送装置にて搬送されているプリフォームを撮像する撮像手段と、を備えることを特徴とするプリフォーム検査装置。
【請求項9】
口部が上を向いた状態でプリフォームを支持してそのプリフォームを前記プリフォーム搬送装置に供給する供給装置をさらに備え、
前記移動手段は、前記供給装置に支持されているプリフォームの口部に前記ヘッド本体の下面が接触せず、かつ前記可動部材を前記突出位置に移動させたときに前記突出部が前記供給装置に支持されているプリフォーム内に挿入される所定高さで前記吸着ヘッドが前記所定の搬送経路に沿って移動するように前記吸着ヘッドを支持することを特徴とする請求項8に記載のプリフォーム検査装置。
【請求項10】
前記撮像手段は、前記吸着ヘッドに吸引保持されているプリフォームの口部を撮像し、
前記吸着ヘッドの前記突出部の外面の色が、光を反射する色であることを特徴とする請求項8又は9に記載のプリフォーム検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−161268(P2009−161268A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339713(P2007−339713)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】